シナリオ詳細
てのひらツアーズ ラサ・ウォーカー!
オープニング
●『てのひらツアーズ』ピピピ・ピクシー イレギュラーズとはじめてのラサ編!
「はおー! ひっさしぶり! こんな所で出会えるなんてラッキーね!」
ライム酒の瓶によりかかり、手をぱたぱたと振る美女。
身長わずか20センチ程度の、黄色いバタフライウィングをそなえた妖精ウォーカーであった。
「ねえねえ、この後お暇あるかしら? 私と一緒に、旅に出ない?」
赤色商路(レッドライン)。ラサと幻想を繋ぐ開拓された道のひとつ。その中間地点にあたる小さな町クリムゾンズ。
砂漠に面した町にあるのは、馬車駅と鍛冶小屋とウェスタンドアのついた酒場『クリムゾン13』だけ。
かつて悪徳傭兵団ジャスティーン・クラブに占拠され酷く荒れていたこの場所も、今ではすっかり浄化されて賑やかなパーキングエリアと化していた。
そんな町の、酒場の夜。踊り出したくなるようなケルト民謡音楽と暖炉のたき火、そして笑い声が混じり合う中で、あなたとピピピ・ピクシーは出会った。
「この人は有名な商業キャラバンのリーダーなのです。パサジール・ルメスの民ってご存じですか?」
たまたまその場に居合わせた『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)が、本を開いて教えてくれた。
「通称『てのひらツアーズ』。リーダーを覗く全部のメンバーを、国や中継地点につくたびに総入れ替えするのです」
「旅は道連れ世は情け。出会いは多ければ多いほどいいわっ。かわった人ならもっーっといいわね! って、いつも言ってるんだけど!」
羽をぱたぱたとやって飛び回るピピピ。
ユリーカはジュースのカップを手にとって、依頼書をさらさらと書き上げた。
「旅に出るなら、正式な依頼という形にするのです。加わるメンバーは8人。内容はどうしますか?」
「そうねー……」
ピピピは空のカップの縁へ腰掛けると、ぐらぐらと身体をゆらしながら考えた。
「これからラサに向けて出発するの。馬車もそこでレンタルするわ。
交易品を沢山積んで、ながーい旅をするのよ。
旅の間は沢山楽しいことがあったほうがいいし、危険も……うーん、しのげる危険なら、むしろ大歓迎だわ!」
広げられた地図をなぞっていくと、『蠍砂漠』といういかにもな名前の砂漠地帯を横切ることがわかる。ユリーカがとんとんとその場を指でつついた。
「この場所にはオオサソリが沢山出るのです。通過するならこのモンスターを排除できるくらいの戦闘力が欲しいところですよね」
「なら安心じゃない。ここにいる皆が加われば、サソリなんてイチコロよ!」
ぶん、と腕を振ってみせるピピピ。
「さあ、明日の朝になったら早速旅に出ましょ! 私は支度をしてくるから!
おっと――ここからは旅の仲間だもの。今日のお題は私が持つわ! ヨロシクね!」
ピピピは依頼書にサインをすると、皆が飲食する分のコインをマスターに支払ってからひゅるるんと酒場二階の宿へと飛んでいってしまった。
――さあ、明日から早速、旅のはじまりだ!
- てのひらツアーズ ラサ・ウォーカー!完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2019年03月17日 22時20分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●クリムゾン13
幻想ラサ間に通る無数のルートのひとつ、通称赤色商路。
そのおよそ中間地点にあたる道の駅的ポイント。それがクリムゾンズである。
長年の障害であった盗賊問題がおおむね解決されたことで、このエリアはとても賑やかだ。
ベッドで目を覚まし、角の覆いを外す『朱鬼』鬼桜 雪之丞(p3p002312)。
カーテンから差し込む光と天井の色で、ここがクリムゾン13の宿であることを思い出した。
ベッドの枕元に置いた刀を手に取り今日の予定を思い出す。
「そういえば……本格的にキャラバンに参加するのは初めてですね」
鞄を閉じて手に取り、客室の扉を開く『おばロリババア』レスト・リゾート(p3p003959)。鼻歌交じりに歩くと、これからの予定に胸を躍らせた。
「可愛い妖精ちゃんに頼れるお友達、何だか素敵な旅が始まりそうね~」
「なんだ。機嫌が良さそうだな」
一階の酒場でコーヒーを飲んでいた『濃紺に煌めく星』ラノール・メルカノワ(p3p000045)が、階段を下りてくるレストたちへと振り返る。
「旅糧の買い付けは済ませて置いた。馬車の鍵は……」
「大丈夫。忘れてないわ」
カウンターにコインを支払って、無口な店主から二つの鍵を受け取る『斜陽』ルチア・アフラニア(p3p006865)。
ひとつは駐車場に預けて置いた自分の馬車。もうひとつは旅のために追加したレンタル馬車の分だ。
キーホルダーに指を通して握ると、日用品や貴重品の入った革バッグを肩に斜めがけする。
「ここから、ラサまでだったわよね。馬車の車軸を見ておかないと。油はさしたかしら……」
「三つの馬車で砂漠の旅、ね」
ラノールの向かいでワイングラスを傾けている『霧の舞姫』ネーベル・ヴァルツァー(p3p006958)。
「まだ飲んでるの?」
「ただのジュースよ。お酒は昨晩で充分。楽しく酔えたもの」
ワイングラスの縁に指をはわせるようにして鳴らしてみせるネーベル。
テーブルにコインを置くと、美しく席を立った。
「さ、行きましょうか。外で馬が待ってるわ」
「馬? ああ……」
ラノールは旅の仲間のことを思い出して、ぽんと手を打った。
「オーッホッホッホッホッホ!!」
「ハーッハッハッハッハッハ!!」
「わーっはっはっはっはっは!!」
馬小屋。
馬屋番に代金を払って扉を開けると、藁の上で高笑いする『極限インブリード』トルハ(p3p005489)……の上で高笑いする『きらめけ!ぼくらの』御天道・タント(p3p006204)……の頭上で高笑いするピピピ・ピクシーがいた。
「大陸を渡って幻想の品物がラサのバザールに広まっていく。そのためならば! わたくし――」
タントが指を鳴らすと。
\ブヒーーーーーン!!/
\ブヒヒーーーーーーン!/
\\\ブルルヒヒーーーーーサマ!///
周囲に預けられていた馬たちが一斉に叫びだした。
「最後ちょっとだけ言えてる」
「ハッ、私は何を!?」
我に返って首を振るトルハ。
「が! 一肌二肌脱ぎますわー!」
馬上で激しくのけぞるポーズをとるタント。
ついでに前足を振り上げるトルハ。
あおりをくらって転げ落ちるピピピ。
といっても空を飛べるので問題はないが。
「おいおい、馬小屋の中で暴れるなよ? 壊したら弁償モンなんだからさ」
レンチを手に小屋を覗き込む『隠名の妖精鎌』サイズ(p3p000319)。
タントの後ろ髪につかまってぱたぱた手を振るピピピ。頭をかりかりやって顔をそらすサイズ。
「馬車のメンテは済んだぞ。車軸を重点的に、金具類と立て付けを見た感じだ。さすがにオーバーホールってわけには行かないけど、ラサまでの旅路で多少無茶な走りをしても問題ないはずだぞ」
「さっすがー!」
ピピピは馬車の天幕に飛び乗ると、鞄やリュックサックを手に集まった皆へと振り返った。
「それじゃあみんな。これからラサまで、よろしくね! てのひらツアーズ、出発進行ー!!」
●『旅は長いほど深く、遠いほど美しい』――ラサ商人の格言
砂漠を三台の馬車がゆく。
スナトカゲがみちゆく大きな影を見送るように首を上げ、太陽がそのゆくさきを照らしていた。
向かい風を弱めたり道を踏み固めたりするために、今は縦並びに三台。
先頭をいくのはトルハの馬車だ。
「どうだァ! 私のスーパーハイパーウルトラトルハ号は! 実にミンチな乗り心地だろうフゥーハハハハクッキーウマイウマイ! フッハハー!」
上機嫌に首を振り足を鳴らし跳ねるように進むトルハ……は、半日ほどでバテた。
「競走馬は短距離走に強いがスタミナは極端に低い。馬豆知識だ。覚えておけ」
ゼハーゼハーいいながら荷台に横たわるトルハ。
今は荷車引き用のハイパーメカニカル子ロリババア量産型二台がゆっくりと(当たり前だが)機械のように馬車を引いていた。
「だが安心しろ。スタミナを回復したらまた馬車を引くぞ。そうだなァ……例えば美味い肉を食うとかな!」
馬車に積み込まれたテリヤキチキンを見つめるトルハ。
「売り物なんだから食べちゃだめよ?」
後ろの馬車を御していたルチアが目を細めて言った。
夜になれば視界も悪い。たき火を囲んでキャンプを張る時間だ。
ルチアはポットに沸かしたお湯をカップに注いで、湯気を吹いた。
大地が熱を逃がしすぎるせいで、砂漠の夜はひどく寒い。
分厚いマントを被ってたき火に当たっていないと凍えてしまいそうだった。
だが、どうだろう。
そんな場所だからか、空はまばゆいばかりに広く、星は敷き詰められたビーズのようにキラキラとしていた。
「それなりに旅慣れていたつもりだけど、この世界だと随分事情が違うのね」
ローマ暦ヨーロッパの世界に生きたルチアにとって、これだけ広い砂漠は別世界であった。
「先祖たちは星になって見守っているって話があるけど……こっちでもそういうのはあるのかしら。確か、神話になぞらえる文化があったのよね」
「ギリシャ神話、ですね。むしろ星は吉兆を占う目印だったと思いますが……」
同じように星を見上げる雪之丞。
暮らした文化が違えば、たとえ似通った世界の生まれでも星が違ったものに見えるのだろうか。
お腹に抱えてぬくぬくさせていたネコの大福がわなーんと鳴いた。
パンの端っこを千切って食べさせる雪之丞。
たき火の前に腰を下ろしたピピピは、同じように星を見上げて息をついた。
「そーね。この世界に来て最初にびっくりしたのは星の位置だったかな。なんていうのかな……世界のルールは知ってたけど、その割には空と星がちゃんと存在してるの。
けどこれは大気圏と宇宙空間がある証明にはならない。巨大な天幕が動いてる地動説の世界かもしれないし、この大地と海は巨大な亀の甲羅かもしれない」
「地動説……? 聞いたことがあるな。思春期に大地の形や海の果てについて考えたことはあるが……そういう話だろうか」
鉄のカップでコーヒーをすするラノール。
毛布にくるまっていたサイズが鎌の手入れをしながら視線をむけてくる。
「まあ、人間。自分から遠いことほど興味が無くなるものだよな。それこそ星なんて、空に光ってるものとしか思われない。旅をしてれば位置確認のために気にはなるけど……」
「けど星と太陽の位置だけはちゃんと定まっているから、それさえ覚えていれば旅には困らない」
「だな」
ピピピに言われて、サイズは頷いた。
星と月は、誰もが目にする共通の神秘だ。
ある文明では月は妖怪の覗き穴とされ、星々もまた闇の民がこちらを見ているのだと伝えたという。
価値観や生まれ育ちが関わる割に、皆必ず知っているというのが、月と星の話なのだ。(地下帝国生まれなどの一部例外を除く)
「言われてみれば、そうね~」
紅茶をいれて、ゆっくりとカップを回すレスト。
「深緑のお屋敷でも、ラサの砂漠でも、幻想の町でも、星は見えているのね~」
「だから、皆光り輝くものを尊ぶのかしらね……」
ほう、と熱い息をついて昔を懐かしむネーベル。
彼女の美しさを宝石や星に例える者が過去どれだけいたのかは、定かでは無いが。
「…………」
黙って空を見上げるトルハ。
かつて幼い頃、馬小屋の窓に見た牧場の空。
混沌の星空は、不思議とそれに似ていた気がした。
夏の大三角形すら知らずに育った彼女にとって、夜空に光ればそれは全て同じ星ではあるのだが。
「そうね。折角だから、昔話に花を咲かせてみましょうか」
ネーベルはレストからうけとった紅茶に口をつけて、過ぎ去りし恋の思い出について語り始めた。
夜は恋バナ。9割女子のキャラバンは、大いに盛り上がった。
「俺は昨晩気づいたことがある」
ラノールはレンタル馬車をのんびりと操作しながら、後ろの荷台にのったタントとレストになんとなく話しかけた。
「このキャラバン……男は俺だけなんじゃあないか?」
「あら」
「まあ~」
同時にほっぺに手を当てるタントとレスト。
「ご安心なさってラノール様! わたくし性別は『ひみつ』! 男性の可能性がありましてよ!」
「女風呂に普通に入るがな」
「ハッ――そういえば!」
わたくしのミステリアスな一面がっ、と額を押さえるタント。
旅先の運勢を紅茶占いしていたレストがはたと振り向いた。
「そういえば、サイズちゃんとピピピちゃんは妖精さんなのよね~。性別は無いんじゃないかしら~」
「ああ、まあ、それはそうなんだが……別に女性に囲まれて気まずいというわけじゃないんだ。だからあまり関係はないな」
どこの世界のどこの文明における妖精なのかで話は変わるが、トコロによっては自覚こそが性別であるらしく、オトナの妖精になるにあたって恋をした相手によって性別が変わるという。余談である。
暫くそんな話をしていると、ラノールは馬車を一度止めるように合図を出した。
「あそこに高い杭が見えるだろう。ここからは危険なエリアだというサインなんだ。昔地元でも見たことがある」
ラノールに言われて、レストたちはハンカチに広げていたクッキーを急いで口に頬張ると、それぞれの馬車へと乗り換えていった。
ルチアの馬車へと飛び乗る、ハムスターみたいにほっぺを膨らませたタント。
「もぐぐもぐ! ももも!」
「そうね~。戦闘開始。がんばりましょう~」
「なんで通じてるの」
●オオサソリの巣
ラサの広大な土地をあちこち移動するラサ傭兵連合の人々や商人たちは危険なエリアを知っている。
ここ『蠍砂漠』はその名の通りオオサソリが群生する土地だ。
物騒な名前だが、遠回りするには大きすぎるし、むしろ遠回りすることで(オオサソリが侵入しないほどに)より物騒な危険地帯に入るリスクが生じることもある。
なのでよく、傭兵を雇って突破する手段がとられるのだ。
「この感覚……少し懐かしいな」
ラノールのかつての活動エリアは都市部が主ではあったが、それでも砂漠に囲まれた土地。こうしてモンスターの群れを突っ切る護衛仕事も未経験ではない。
愛用のマトックを担ぎ、馬車の隊列を確認した。
今度は横並び三列。トルハも馬車引きに加わり、左右をトルハとラノールが守る形で突破を狙う。
サソリたちは地面に伝わる振動を感知して危険な場所(特に馬車の前後や真下)には飛び出さないので、必然的に両サイドから飛びかかってくることになるだろうという考えだ。
「全員、準備はいいか!」
「フハハハハ! いつでもッ!」
「うでがなるわね! といっても、なにもできないけど!」
ピピピは中央の馬車から声を上げた。左右の馬車とロープで繋ぎ、中央を挟んで牽引するようにフォローする予定のようだ。もちろんピピピは馬鞭ひとつふるえないので、馬車の中から応援するのみである。
スタートを待つ競走馬のような高揚で地面をかくトルハ。
トルハの馬車制御を任されたルチアは馬鞭を振り上げ、鋭く叫んだ。
「作戦開始!」
馬の尻皮は非常に分厚く、叩かれたことで苦痛を特に感じないが、躾に従って強く走り出す。それはパカダクラも同様である。
戦闘に耐えるパカダクラはその頑丈な足腰で砂地を掴み、中央部の馬車を引いて猛烈に走り出す。
エリアへの侵入を感知したオオサソリたちが砂を払い地上へと姿を現わすが、ルチアは熱砂の嵐を呼ぶ奇跡を呼び起こし、先制してオオサソリたちを払った。
「オーッホッホッホッ! てのひらツアーズのお通りですわ!」
タントは馬車の頑丈な天幕の上に立つと、二本指を立てた両手をおでこに当ててから振り下ろすようにしてビームを放った。
トルハへと襲いかかろうと跳躍したサソリへ直撃。甲を破壊して打ち落とす。
「皆無理したらだめよ~」
ルチアの馬車から身を乗り出し、馬車にしがみつこうとするサソリを鞄で殴ってはらっていくレスト。
「ぐおおお! 足にくっつくな! たたき割るぞ! ミンチにす――フハハハー!」
途中から何かのスイッチが入ったらしいトルハが足下に飛びかかるサソリを踏み砕きながら爆走する。
速度をあわせるべく馬に鞭をうつラノール。
「こう次々出てくるとキリが無いな。いくらか食材にして持ち帰れないものか……」
「た、たべるんですの!?」
天幕の上からタントが身を乗り出した。
中央の馬車から援護すべく飛び込んでくるサイズ。
「商人が道ばたのモノに欲を張るとろくなことないぜ。――そっち頼む」
呪血炎陣の魔術を組み、激しい炎を発射するサイズ。
一方でラノールは馬車に組み付いてくるサソリをマトックでたたき落とした。
落とされたサソリは地面をバウンドし、はるか後方へと過ぎ去っていく。
馬車を追いかけて走るほどの体力はないようで、とにかく走り抜けさえすればいいらしい。
「引きつけるより打ち落とすほうが先決な場面、というやつか」
「もうすぐ抜けるわ。頑張って」
ネーベルは魅力的にウィンクをすると、揃えた二本指を唇に触れた。
投げるように放った魔術が追いすがろうとするサソリに命中し、気を失わせる。
「わたくしのお株が奪われては!?」
「そうか? かなりジャンル違いな気が……コホン」
その様子にまたも身を乗り出すタント。首を傾げるラノール。
「では、そろそろ仕上げと参りましょう」
雪之丞は刀の柄にてをかけて、大量に飛びかかるサソリたちに構えた。
鞘をはしり抜刀。水の魔力が無数の刃となってサソリを切り裂き、返す刀でさらなるサソリを両断し、とどめとばかりにサソリの一匹を串刺しにした。
死体を砂地に放り投げ、ラノールたちに合図を出す雪之丞。
「今のうちです」
「「了解!!」」
馬車は猛烈に速度をあげ、蠍地帯を抜け出した。
●バザールの夕べ
刀を木箱に持ち替えて、雪之丞はバザールの露天に立っていた。
照りつける日差し、競い合うような客引きの声、ジプシーダンサーたちの舞い踊りと陽気なケルトミュージック。
そして鮮やかな色をした天幕が並び、露天がぎゅうぎゅうに詰まった通り。
活気。活気。
ここにはラサの全てが詰まっているようにすら、雪之丞には見えた。
そんな中で、ネーベルはたまたま居合わせた流浪の楽士にコインを支払い情熱的なタンゴリズムを演奏させ、美しいドレスを振り乱しながら舞い踊っている。
締めのポーズに拍手がわき、ここぞとばかりにラノールやタントたちが商品の宣伝をしはじめる。
この辺りではよく見られる宣伝方法だ。
音楽と実物を交互に見せることはどんな世界でも有効なのだろうか。
「うむ!噛んだ瞬間口に広がる肉汁と、タレが掛かっているかのような濃厚な味わい!
白米と共に食べたらさぞ旨いのだろうな……こんなにうまい天然テリヤキチキンがこの値段で買えてしまうとは……」
いっそ露骨なまでに大胆な演出でテリヤキチキンを囓るラノール。
「ふふふふふははははは……! なんて楽しい料理なのだ。ミンチミンチミンチミンチほら食べるんだ食べろミンチ私の極上デリシャスミンチを食べるんだ!」
横でなんか猟奇的な料理を作っているトルハ。
「なんとこのトリ、そのまま食べて美味しいのよ。調理要らずの旅の友ね!」
一方で真面目に商売文句を述べていくルチア。
「今日のラッキーアイテムはクッキーみたいね~。
あらあら偶然~、こんな所にせいけんくんクッキーが~。良かったら買っていかない~?」
レストたちはといえば、クッキーを売りながら占いサービスをしたり。
「んん! やっぱり美味しいですわー! ハッ、箱にせいけんくんのレアカードが!」
タントがてーれっててーとおでこを光らせて宣伝してみたり。
「ほいうずまきコイン100グラム。毎度」
サイズがソロバン片手にめっちゃ商人していたり。
キャラバンは大賑わいのうちに商品を売り尽くし、その日は町の宿で乾杯をした。
ピピピは数日町に滞在してから、また別のキャラバンを組んで旅に出るという。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
おかえりなさいませ、イレギュラーズの皆様。
ラサは他とは違う風土と活気があって、よいところと聞いております。
よい旅は、できましたでしょうか。
GMコメント
【今回の相談会場】
酒場『クリムゾン13』。
ウェスタンドアのついた砂漠の酒場。
義手の右手をもつ物静かなマスターが経営している。あたりの土地を管理しているのも、なにげに彼。
あなたはもしかしたら、この場所や彼のことを知っているかもしれない。
https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/299
(※当依頼では巡り会った仲間と街角感覚のロールプレイをはさんでの依頼相談をお楽しみ頂けます。互いのPCの癖や性格も把握しやすくなりますので、ぜひぜひお楽しみくださいませ)
【オーダー】
ラサまでの旅の護衛と協力。
商人であるピピピのキャラバンメンバーとなって、ラサまでの旅を楽しみます。
旅が楽しければ楽しいほど、依頼主は喜ぶでしょう。
メンバーの中にアイテム『馬車』と『馬(ないしはそれに代わる動物系アイテム)』を装備しているPCがいるばあい、それを適用して旅をすることができます。
お気に入りの馬車で快適に過ごしましょう。馬車を2~3台に増やしてもOKですが、全部で最大4台までにしてください。
道中『蠍砂漠』というエリアを通過しますが、
ここを通過する際は馬車を結構なスピードで走らせ、砂からザッと出てきてはとびかかるサソリたちを迎撃しながら進む形になります。いわゆる戦闘パートです。
【旅路のパート】
ラサへ続く旅路を馬車でじっくり進みます。
星や太陽を見て方角をはかるすべがピピピにはあるので、道に迷う心配はありません。
しかしピピピはとっても小さく、一人では木箱一個運べません。
【戦闘パート】
蠍砂漠を突っ切ります。
蠍たちは別に統率がとれているわけではないので、砂から出ては一番近い馬車に飛びかかるようになります。
なので馬車が多ければそれだけダメージ分散ができ、あまりダメージを受けたくないメンバーを中央の馬車に集めることでダメージ軽減が図れます。
オオサソリは1メートル前後の大きさを持つ砂漠のモンスターで、すみかの近くを通る馬とか馬車とかを見つけると結構な跳躍力で飛びかかり、攻撃してきます。
武器は両腕のハサミとしっぽの針。
ハサミには【出血】、しっぽには【毒】のBS効果がついています。
命中能力は低めなので一発二発は気になりませんが、集中攻撃を受ける係がいる場合BS発生のリスクを念頭に置いたほうがいいでしょう。
エリアを抜ければ戦闘終了。
この後は安全な行程になります。
【商売パート】
ラサに到着したら、ラサのバザールに飛び入りして幻想で仕入れた商品を販売します。
このパートへの参加は自由ですが、『やってみたいな!』と思ったらピピピと一緒に商品販売をしてみましょう。
売る品目は以下の通り
・うずまきコイン:魔力の籠もったコイン状の鱗。電池みたいに使う。一袋いくらで売るもの。
・天然テリヤキチキン:幻想モスバ村の山に生息する動物。ニワトリみたいにコッコと鳴いている。このまま食えるのが特徴。味は名前通り。
・せいけんくんクッキー:サナ・ギーク観光村で売られているお土産。保存が利きやたら美味しいのでこうしてよそでも売られている。
【おまけ解説】
●ピピピ・ピクシー
パサジール・ルメスの商人キャラバン『てのひらツアーズ』のリーダー。
一旅おえるたびにメンバーを総入れ替えしては新たな出会いを楽しんでいる。彼女個人ではとっても非力だが、それをむしろ楽しんでいるらしい。
過去に一度ローレットとお仕事したことで、信頼もちょっと厚い。
https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/1199
Tweet