シナリオ詳細
木枯らしときみの横顔
オープニング
●きみの横顔を見つめながら
やっちまった。
やっちまった、やっちまった。
よそ事に夢中になってるうちに遅刻3時間。
この雪のちらつく寒い中、きみをずいぶん待たせてしまった。
なんて言い訳をしよう。
なんてご機嫌を取ろう。
それとも直球で謝ろうか。
どれも舌に載せそこねて、ため息になってこぼれ落ちる。
つんとしたきみの横顔はそれはそれで美しい。
街頭に照らされて時に明るく照らされ、時に暗く沈み、不機嫌を振りまきながら、それでも隣りにいてくれるきみ。
なんて言い訳をしよう。
なにでご機嫌を取ろう。
それともすなおに謝ろうか。
大切なきみと、ケンカなんてしたくないけど。
大切なきみと、ちょっとくらいケンカしたって、まっすぐな思いを伝えたいカンジ気分。
さあどうしようか。
凝り固まったこの鉄面皮も、剥がれる5秒前。
![](https://img.rev1.reversion.jp/illust/scenario/scenario_icon/5087/043c2ec6c6390dd0ac5519190a57c88c.png)
- 木枯らしときみの横顔完了
- GM名赤白みどり
- 種別イベント
- 難易度VERYEASY
- 冒険終了日時2019年03月20日 21時00分
- 参加人数19/30人
- 相談7日
- 参加費50RC
参加者 : 19 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(19人)
リプレイ
●
「あああ、どうしよう。ソリの作り方を、教えてもらった、お礼がしたくて……それなのに、遅刻してしまうなんて、ダメダメですね」
迷子になった閠。方向もわからなくなってきた。そのとき。
「あ! 閠さん!」
とびついてくるぬくもりがあった。
「ザスだよ。探しに来たんだ。この先でミョールが待ってるよ」
角を曲がると、遅いわよ! とミョールが叫んだ。
「このあたしを待たせるなんていい度胸じゃない」
「ミョールってば、閠さんが転んで怪我してるかもしれないから探してきてって言ってたじゃん」
「っ、お待たせして、すみません、その、寒くは、なかったですか? まずはどこか、あったかい場所へ。この間のお礼と、それから遅れたお詫びに、ご馳走、させてもらいます、から……」
「ほんと? じゃああれがいい!」
二人同時に指さしたのは、ホットドッグの露天。こんなものでいいのだろうかと思いつつ3人分買い込む。
「おいしいわ!」
「うん、最高だよ閠さん」
しんしんと降る雪の中で立ち食いする暖かなホットドッグは確かにご馳走だった。
猛烈な速さで広場へ走り込んでくる人影があった。それが待ち人だと気づいてグレイルは唇の端を持ち上げる。
「遅くなってごめんなさいグレイルさん!」
「…あ…良かった…入れ違いになったかと思ったよ…こっちも遅れてて…」
「いや、そんな、頭下げないでください、悪いのは僕ですごめんなさい! 僕、待ち時間を勘違いしてて、すみませんすみません!」
「…とにかく…こんな雪の中だし…どこかに入って…お茶にしようかベネラーさん…? …折角だし…何か美味しいものでも食べに行こうよ…」
「いいですね。その、よかったら僕のお小遣いの範囲だとうれしいです」
「…いやいやいや奢るよ…。…気にしないで…」
しばらく押し問答が続いたが、ベネラーはすなおに好意へ甘えることにした。
「…あ…孤児院の子たちにも…お土産買っていかないと…ベネラーさん…他の子たちの好みとか…教えて欲しいな…」
「そうですね、えっと……」
話題は尽きず、雪道にふたりの足跡が続いていく。
ふとリリコが顔を上げた。風の隙間からするりと現れたかのように、武器商人がリリコの前にたたずんでいた。
「寒いだろう。子どもは特に脆い。温かいものでも着るがいいよ」
”ソレ”はリリコに積もった雪を払うと指を鳴らした。真っ白なうさぎの毛皮のコートが現れ、ぽすんとリリコに覆いかぶさる。リリコは感謝をこめて微笑んだ。
「温かいお茶を飲みに行こうか」
「……うん」
「ふむ。もしかして、今日はとても驚く事でもあったかナ? そう、みんなが驚くような事。……あるいはこれから起こるかもしれないね」
何か視たらしく、”ソレ”は意外に鋭い紫の目を前髪の奥で細めた。
「だんだん、皆が歩みだしてきたね。善哉、善哉。世界を識ってキミたちはどうするだろうねぇ。キミたちの誰かが……或いはキミが情報屋になる未来も面白そうだね」
●
部屋の掃除に夢中になっていたらこんな時間!
居候のフィーアと約束した刻限からもう三時間、一刻でも早く到着して怒りを鎮めないと新しい世界を強制的に開かれそうで……ちょっと興味、いいえないない、ありませんから! と、とにかくフィーアを探して……居た!
「ご、ごめん、ね。遅れ、て、ごめんなさい、フィーア」
肩で息をしながら謝る私。少しでも誠意が伝わってくれないでしょうか。うう、下げた私の頭の上で爆弾炸裂五秒前ってところでしょうか? ぎゅっとシャツの端をつかんだ私に聞こえたのは重いためいき。
「問題点の解消を求めます、エル」
顔をあげると、フィーアは怒りと呆れの混じった顔で私を見つめていました。
「問題点の解消を求めます……それしかありません。三時間二分十五秒待ちました、作戦行動における時間厳守は守らなければいけない、違いますか?」
「いいえ、そのとおりです……」
「雪中行軍訓練ならば我慢は出来ますが。……お仕置きを与えなければいけません。本来ならスパンキングで教育する所です」
「え、ええ? それはちょっと」
「三時間二分十五秒」
「ごめんなさい」
「と、いいたいところですが、苺で良いです」
「苺?」
「この近くで営業されている、カフェの特別なストロベリーパフェを所望します」
「了解!」
「苺がたくさんのです」
「なんでも奢ります! お財布の限りは!」
「……そりゃ雪も降るわよね」
そうアニーはぼやいて空を見上げた。
「応竜が三十分程度遅刻するのはよくあることだけど、私が三時間も遅刻なんて……。あいつのことだからまだ待ってるだろうし、行かなかったら……」
明日になっても待っている、多分、イエス、間違いなく。
あいつ相手に謝るのは癪だけど、流石に今回悪いのは自分。ここはひとつ大人になって、しおらしく頭などさげてみよう。そう思ってはいたけれど、待ち合わせ場所でかっこいいポーズのまま立像と化している竜祢の姿を見てがっくりきた。
「ああもう! 半分白いじゃない! てか頭の雪くらい自分ではらいなさいよ、地蔵かあんたは!?」
「鳳凰め、やっと来たか。くくっ待ち遠しかったよ。遅刻とは、あぁ、実に珍しい! しかも三時間もだ! この寒空に■■(秘匿情報)筆頭代理を野放しとはなあ……」
「し、しかたないじゃない。時計が壊れてることに気づかず二度寝しちゃったんだもの」
「とはいえ約束を守ってここへ来たことは評価してやろう。ドタキャン? というのをした暁にはその首を飛ばしてやろうと思ったがどうやら杞憂に終わったようだ」
「さすがにそこまで薄情じゃないですぅー。まあ、とにかく、遅刻したのは私が悪かったわ」
「あぁ、謝る必要はないとも。私は許そう。だが罰は覚悟しておけ?」
「うぐ……」
「さぁ行くぞ。麒麟がカフェでお待ちかねだ。一つの可能性として、今後の話のほうが大事だ。そうそう、待たせた罰だが、後日鳳凰には同条件で三時間佇んでもらおうか、くくっ」
……寒いし、ひとりぼっち。寂しくなった。
親子が広場を横切っていく。楽しげに、うれしげに。胸の奥をギュッと握りつぶされ、Gawの緑色の瞳が潤んだ。その時だった。
「いやー、遅刻遅刻っと。二度寝してたらこんな時間だ」
一番聞きたい声が聞こえてきたのは。
「やあポチ君! ちゃんと待ってるなんてお利口さんだねえ。ご褒美に美味しい餌をあげよう」
脳天気にニコニコしている保護者の姿に、内心ほっとしながら、Gawは首を振って涙を払い落とす。
「そんなんで釣られないやい! 二度寝なんて、どーせそんなことだろうと思ってたぞ!」
「……あれ、おかしいな? 普段ならお菓子ひとつでご機嫌なお前がどうしたんだい?」
言い訳を探そうとしてGawの目は忙しく動く。そして見てしまった。さっきの親子が、手をつないでこちらへやってくるところを。気がつくとGawは冥利の服の裾を掴んでいた。頬を涙で濡らしながら。
冥利はあたりを見渡し、Gawの視線の先を知る。
「ああ、君もああいうのに憧れるんだ。さすが僕の創った使い魔だ。そういうところは僕譲りかも。よし!」
しゃがみこんだ冥利、おいでと誘われてGawはその肩へ乗った。肩車をして、冥利が立ち上がる。視界がぐんと広がった。
「こういうの、人間の父親っぽくて良いだろ? さあこのまま街へ出かけよう」
「うわ、何すんだよ爺! 下ろせ! は、恥ずかしいんだぞ! がうー!!」
「珍しい、アーリアさんが遅れてくるなんて」
そう言ってミディーセラは吐息をこぼした。もこもこミトン手袋をしてもしのげない寒さが忍び寄ってくる。でも待つのは嫌いじゃない。だって待ち合わせは一人ではできないから。こうして待っていれば、きっと会えるのだから。いなくなったわけではないのだから……。
駆け足で近寄ってくる姿を見つけた。長い髪を風になびかせ、ぺたんこになった前髪もかまわず。
「ごめんねみでぃーくん、ほんとにごめん! 支度が早く終わったからおこたで一杯やってたら寝落ちちゃったわぁ……。うわ、ほっぺ冷たい! ごめんねぇ……」
申し訳無さのあまり、ぎゅうぎゅう抱きついてくるアーリアを、ミディーセラはやさしく抱き返した。
「とても、とても寒かったのです」
腕の中のあたたかさをもっと感じたくて、ミディーセラはアーリアに頬ずりする。その声の優しさに、嫌われたかもと思っていたアーリアの心配は溶けて消えた。この熱が伝わればいいと、アーリアも頬を擦り寄せ、腕に力を込めた。
「ごめんねぇ、みでぃーくん」
「ふふ、いいのです。これから、たくさん……たくさん一緒にいるのですから」
「……今日はみでぃーくんのわがまま、何でも聞くからねぇ」
紳士兎が上蓋に刻印された懐中時計を覗き込み、マルクはため息をついて、薄く笑った。約束した時間から、そろそろ三時間。
「これはフラれたかな……」
いやまだ諦めるのは早い。ほら向こうから走ってくるのは彼女。
「……良かった、まだいた」
マルクの目の前まで走り込むと、その勢いでアンナは頭を下げた。
「ごめんな……え?」
「お疲れ様、寒かったよね? とりあえず、どこか入ろうか」
謝罪の言葉を遮って、マルクはアンナの手を取る。冷えきってしまった二人の手に火が灯る。ずっと待っていたのだと知れて、アンナは申し訳無さがつのった。
「遅れてごめんなさい。二度も迷子を見つけてしまったものだから……」
「積もる話はお茶でも……この時間だと夕食でも食べながら、かな?」
さくさくと雪を踏みながら二人は商店街を歩く。
「実はちょっとだけ、フラれたかと思った……来てくれて、ホッとしたよ。ありがとう」
「……何で私がお礼を言われているのかわからないけれど。不安にさせてしまってごめんなさい」
すっぽかされたと思って怒って帰ってもおかしくない時間だったのに。ここまで人が好いと、何だか
逆に困る。苦笑いを見せて、アンナは髪をかきあげた。
ぎゅっと雪を固めて、作る雪うさぎ。近くにあった南天の木から目と耳を拝借して、もう何羽も作り上げて足元には雪うさぎの行進が。
「ウィル、だいじょうぶかなあ」
サンティールは小さくくしゃみをすると手をすり合わせた。心細いのは寒いから。本当は探しに行きたい。でもすれ違ってしまうかも。
そう考えていたところへ、ウィリアムが現れた。全力で走ってきたのだろう。息を乱している。その姿に心にぬくもりを覚えて、サンティールは両手をぶんぶん振った。
「遅いよ!」
「ごめんサティ、やっちまった。こんなの俺も初めてだ。雪の中何時間も待たせてすまねえ」
「ううん、もういいよ。ちゃんと来てくれたもの」
「俺の気がすまねえよ。悪かった。遠目に見たサティの姿がその……なんだか寂しそうだったし」
「……うん。でもね、ウィルの姿を見つけたとたん、僕はひとりぼっちじゃないんだって、安心しちゃって、文句なんてひっこんじゃったよ」
「サティ……」
「ねえウィル、僕あたたかいもの飲みたいな」
「ああ、冷えた体を温めないとな」
二人は手をつないだ。冷えきったサンティールの手に、ウィルは思いを新たにした。
――もう二度と、こんなことが無いようにしよう。
こんな雪の中、リゲルを三時間も待たせてしまった!
ずっと外で待っていたなら、すごく冷えているはずだ。リゲルに風邪をひかせるようなことをして本当に馬鹿だ私は……。きっと怒ってる。でも怒られるようなことをしたのだから仕方がない。
人混みをすり抜けて全力疾走するポテトは必死の形相だった。
一方リゲルは。
「遅いなあ。真面目なポテトが珍しいな」
と、のんびり雪うさぎを作っていた。そこへ。
「リゲルー!」
商店街の方角から自分の名を呼ぶ声が聞こえた。
「リゲル、リゲ、うわっ!」
雪うさぎに足を取られ、ポテトはつまづいた。倒れ込む、ちょうど、リゲルの胸の中へ。青と白のマフラーがふわりとゆらいだ。
「ごめん……編み物に集中しすぎて、待ち合わせ時間に気づかなかった。すごく待たせた……自分でも情けない」
ポテトがおそるおそる顔をあげる。リゲルは笑顔だった。ポテトの頭を撫でながら言う。
「怒ってないよ。何かあったわけじゃなくて良かったぞ!」
「リゲル……」
「このマフラーが原因か?」
「あ、うん。プレゼントだ」
「ありがとう」
さっそくマフラーを身につけるリゲル。青と白のマフラーは精悼なリゲルによく似合っていた。
「とても暖かいし、きれいな色だな。そのうえポテトの手編みだなんて、本当にうれしいよ」
「有難う……」
リゲルの優しさに涙腺が緩む。
「さ、店によって温かいものでも食べようか」
「おじさま来ない……」
ここにいたら来てくれるよね?
……きて、くれるよ……ね?
おじさま、ルアナの忘れちゃった、元の世界を知ってるただ一人の人。
『貴方が居なくなったら、記憶のない私は世界に独りぼっち』
その頃、おじさまことグレイシアは雪の道を闊歩していた。
「すっかり遅くなってしまったな。――まさかあそこまでしても口を割らんとは。どの道命がないのであれば、早く楽になれば良いと思うのだが……」
物騒なセリフをつぶやき、視線を上げる。その先には街灯の下に佇むルアナがいた。
「おじさま!」
ルアナはグレイシアの腹へぐりぐりと頭を擦り付ける。
「ルアナ……捨てられたかと思った……よかった」
「吾輩がルアナを捨てるなどありえん事だ……要らぬ心配をさせてしまったな」
ルアナの頭を撫で、優しい声をかける。ルアナの動きがピタリと止まった。透明な瞳で、ルアナはグレイシアを見上げた。
「……おじさま、血の匂いがする」
ああ、とグレイシアはうなずいた。『後始末』をもっときちんとしてくるべきだったな、と。
「……来る途中、怪我をした猫の手当をしていた故……その血だろう」
「そうだったんだ」
ルアナは再びグレイシアの腹へ顔を埋め、独り言のように嘯く。
「ねぇおじさま。お仕事とはいえ、血の臭いに慣れてしまったルアナは良い子なのかな? ルアナは勇者になって、元の世界で魔王を倒しておじさまをまもらなきゃなのに」
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
指に怪我をしてお届けが遅くなってしまいました。そのぶん砂糖多めにしあげたつもりです。楽しんでいただけたら幸いです。
GMコメント
みどりです、こんばんは。
このシナリオはペアでの入場を推奨します。あるいは下記NPCを呼び出せます。
単独で入って好きなことをやるのもOKです。イベシナですとも。お好きに参りましょう。
>シチュエーション
あなたは大切な人を雪の中3時間も待たせてしまいました。
あるいはあなたは大切な人を雪の中3時間も待っていました。
どうにか顔を合わせることはできましたが気まずい雰囲気……はて、どういたしましょう?
>書式
1行目:同行者名(PCはIDも)
2行目:フリーダムにどうぞ
>同行NPC
港町ローリンローリンの孤児院の院生たち
12才男ベネラー おどおど
10才男ユリック いばりんぼう
8才男ザス おちょうしもの
8才女ミョール みえっぱり
10才女リリコ 無口
5才女セレーデ さびしがりや
5才男ロロフォイ あまえんぼう
3才女チナナ ふてぶてしい
?才女イザベラ 孤児院の院長 こどもたちのママ
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