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シナリオ詳細

ウナムーン温泉島とタイラントスノウ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ヤマカシ再び
「幾千の奇跡よりも罪深き邂逅。我と汝を結ぶ運命の――」
「あッらァローレットちゃん久しぶりィ!」
「えっ」
 モーゼル拳銃二丁をスタイリッシュに構えるドーベルマン獣種を遮るように、山羊獣種の男が投げキスをした。
「ンーっま! ゲルマ温泉以来よねー! 今度は一緒にお仕事するわよ! するわよ! ン~~っま!!」

 このやけにキャラの濃い獣種たち。その名もヤマカシ傭兵団。
 獣種ばかりで構成され、各国を渡り歩くフリーの傭兵団である。
 依頼主同士の対立によって偶然コトを構えた過去もあるが、そこはやはり傭兵。恨み辛みは持ち込まない主義であるらしい。
 金にならないなら恨みも忘れるというのは、傭兵の常識だ。
 が、最近まで殺し合った仲が急に合同作業を依頼してくるのは、控えめに見ても好意的な話である。
「あれより拙者ら、温泉巡りがまいぶーむになっておる」
「あちこちの国で仕事しちゃあ近くの温泉につかる日々ってもんよ」
「ま、おかげでお得意様も増えたからいいんだけど……」
「フシュー」
 シカ、熊、羊、トカゲといった獣種たちがつい最近のことを懐かしむ。前に出会ってから半月ほどしか経っていないことを考えると、随分濃密なブームになっているらしい。
 ポメラニアン獣種がつぶらな目を輝かせていった。
「でねでね、ウナムーン温泉島って知ってる!? 今年はタイラントスノウが沢山出る年なんだよ。駆除の依頼を受けたけど人数が足りないの。それでローレットに手伝ってもらおうって、ね!」

●タイラントスノウとウナムーン温泉島
 雪に色づく山々にかかる赤い鉄橋。
 馬車で橋を抜けたなら、大きな温泉宿がいくつも見えるだろう。
 わずかに香る温泉の香りと、立ち並ぶ温泉まんじゅうの屋台。
 それこそが、ウナムーン温泉島。
 豊かな山々に囲まれたこの島は海洋王国の温泉地としても知られ、雪深い今の季節は格別に贅沢な気分にひたれるということで人気が高い。
 その秘密は島に巡る地脈にある。地脈は大地や水の精霊を活性化させ、流れ出る温泉には心や身体を深く癒やす効果があるのだ。
「しかし冬期もかわらず営業するためには、冬場に山から下りてくるモンスターを予め駆除する必要があるのです」
 ロバ獣種の男が眼鏡のフレームを押して資料を取り出した。

 タイラントスノウ。別名『荒ぶる精霊の獣』。
 平均全長2メートル。人型、狼型、鷺型の三形態に変化する能力をもつ。
 地脈によって活性化した精霊の中でも、特に悪い部分が寄り集まった存在だ。
 といっても、これらを駆除してしまえばいい部分しか残らない。精霊たちも適当な対象を見つけて暴れられれば満足らしい。精霊には精霊の価値観があるのだろう。
「人間側からすれば、温泉の恩恵をうけるために払う正当な労働、といったところでしょう。
 けれど12年に一度、タイラントスノウの数が大幅に増えることがあるのです。
 地元の駆除業者だけでは対処しきれなくなりますので、今年は我々が追加戦力として雇われたわけです。
 で、皆さんはその下請けという扱いになりますね」
 下請けと言っても報酬は同額。実質的な合同依頼である。
「我々の担当は南東、クリスタル山岳です。
 昼間のうちに。防寒装備で来てください。
 組み分けや隊列は……そうですね、やりやすいように行きましょう。その時のメンバー次第ということで」
 ロバ獣種は眼鏡を外すと、こくこくと頷いた。
「ではお互い、いい仕事をしましょう。
 あ、仕事がうまく片付けば温泉で遊んで行けますよ」

GMコメント

【オーダー】
 タイラントスノウ20体以上の撃破(ヤマカシ傭兵団との合計)

 雪の積もった山に入り、適当に徘徊しているであろうタイラントスノウを発見、撃破する。
 内容的には山狩りに近い作業になると思います。

 ヤマカシ傭兵団との合同作戦になりますが、全員混じって一塊でいくか、ヤ・ロ別々で回るか、いっそ両方のグループから1~2人ずつ出し合って混合チームでばらけるか。皆さんの興味と趣味で選んでください。
(※メタ話になりますが、参加PCの能力が偏った時のための保険バランサーとしての役割も兼ねています)

【フィールドデータ】
 雪山。
 すねまで積もった雪が一面広がる山です。
 木々も葉が落ちており一見視界が通りそうな気がしますが、降る雪がブラインドになって遠くまで見通せません。
 敵は戦闘することが目的みたいなところがあるので、発見するかされるかすれば必然的に戦闘になり、逃走されることはほぼないでしょう。

 折角ですので、雪山向けの防寒着をしていきましょう。
 単純に冬コーデを考えてプレイングを書くと楽しいのでは、という意味です。
 防寒がしっかりできていればいるほど判定をオマケします。

【エネミーデータ】
・タイラントスノウ
 精霊の暴力性だけが集まった、歩くストレス。
 なので発散することを目的としており、APやHPが減ることがそのままストレス解消になる、らしい。
 ヒト、オオカミ、トリの三つの形態をもち、戦闘中でも自由に変化が可能。
 近接攻撃しかしないが機動力や反応値が割と高いという特徴をもつ。

【味方データ】
●傭兵チーム『ヤマカシ』
 全員が非戦スキルにアクロバットを持っているのが地味に特徴。
 近接格闘能力が高く、個人によりややばらつきはあるもののスペックがある程度そろっている。平均して高いのは機動力、AP、回避の三つ。
 戦闘メンバーは8人で全員が獣種。
 ドーベルマン獣種がリーダー。

【おまけの温泉】
 仕事が終わったら温泉に浸かって帰ることができます。
 描写幅をどのくらいとるかは考えていませんが、皆さんが(戦闘や探索のプレイングをしっかり書きつつ)どのくらい温泉にプレイングを割くかで決めるつもりです。

【アドリブ度】
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用くださいませ。

  • ウナムーン温泉島とタイラントスノウ完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年02月27日 21時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

猫崎・桜(p3p000109)
魅せたがり・蛸賊の天敵
シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)
白銀の戦乙女
ジェイク・夜乃(p3p001103)
『幻狼』灰色狼
刀根・白盾・灰(p3p001260)
煙草二十本男
ゴリョウ・クートン(p3p002081)
黒豚系オーク
寒櫻院・史之(p3p002233)
冬結
御天道・タント(p3p006204)
きらめけ!ぼくらの
鞍馬 征斗(p3p006903)
天京の志士

リプレイ

●雪とウナムーンの香り
 馬車駅を下りてすぐの場所に、温泉の噴水が上がっていた。噴水の前の看板には『ようこそウナムーン温泉街へ』の文字。
 未だ道に雪の残るこの地方でもうもうとあがる湯気と湯の豪快さに、『黒豚系オーク』ゴリョウ・クートン(p3p002081)は思わず身震いした。
「おお……温泉地、やべえな」
「この辺はどこを掘っても温泉が出るって言われるくらいに有名なのよォ」
 山羊獣種が手をぱたぱたさせながらゴリョウたちを手招きした。
「あらやだ豚ちゃん今日はサンタさんなの!?」
「ぶははっ! 季節外れのサンタクロースってやつだ!」
 大鍋を担ぐゴリョウは赤いコートと帽子を纏い、さながらサンタクロースの装いになっている。
 ロバ獣種の男がダッフルコートの裾を引きながら先導する。
「登山道はこの先です。冬場は危険なので一般の通行は禁止されていますがね」
 うっかり人が入らないようにと立てられた検問所に町長からの依頼書を見せて通行許可をとるロバ獣種。
 『女王命』という文字とイザベラ女王の横顔をかたどったエンブレムが描かれたジャンパーを着込み、『女王忠節』秋宮・史之(p3p002233)は高い山の峰を見やる。
 真っ白な山々に、広く曇った空。
「海洋の温泉街……つまり、これも女王陛下のため!」
 グッとやる気を見せる史之。
 鞘に収めた剣の柄を叩き、『煙草二十本男』刀根・白盾・灰(p3p001260)は防寒フードを頭に被った。
「やはり、寒い場所に乗り込んでいくと心が躍りますね」
「わーかるー」
 ポメラニアン獣種の少年がぴょんぴょんしながら灰に同意してきた。
 マフラーを巻き直し、腕組みする『『幻狼』灰色狼』ジェイク・太刀川(p3p001103)。雪の反射をさけるためミラーコートのサングラスを着用していた。
「獣種だけの傭兵団か……俺が昔にいた所はむしろ獣種が少なかったからな、新鮮だぜ」
「フシュー……」
 横に並んで舌をちろちろ出すトカゲ獣種の女。
「……」
「フシュー」
「……」
「フシュー」
「……あー」
「どうやら気にいったらしいな! そいつはワイルドな奴が好みなんだ! ガッハッハ!」
 気軽に肩を組んでくる大柄な熊獣種。
 ジェイクは苦笑して、気持ちだけ受け取っておくよと応えた。

 整備された温泉街と違って山は深く雪に埋もれていた。
 膝が埋まるほどの雪道を、かんじきをはいてざくざくと進む。
「どれ、この辺でいいだろう。誰か火ぃくれ火」
 ゴリョウは背負っていた鍋を下ろすと、中に固めた状態で維持していたシチューに水を加えて加熱し始めた。
「ほう……雪山でシチューを煮込み始めるとは、さすがは豚殿」
「その豚殿って呼び方どうにかなンねえのか」
 感心するシカ獣種に相づちを打ちながら、その一方で史之が暖かい飲み物を配っていく。
「はふー……防寒着はしっかり着てきたけど、やっぱりさむいねー。早く温泉に入りたいや」
 『魅せたがり・蛸賊の天敵』猫崎・桜(p3p000109)は肩をふるわせてホットコーヒーをすすった。
 ゴリョウにちなんでかトナカイの着ぐるみを着込んでおり全身ぽかぽかである。顔以外。
 こんな衣装12月のケーキ売りくらいしか着ないと思っていたが、どうやら案外出番があったらしい。獣種ばかりのヤマカシ傭兵団の中でもなじむし。
「寒ければ寒いほど、温泉のぬくもりが恋しくなるものですよね……」
 貰ったシチューを木のお椀によそい、木のスプーンでふーふーする『言うほどくっころしそうにない』シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)。
 普段の鎧の上にもこっとしたファーのフードつきコートを羽織り、ミトンめいた毛糸の手袋をはいている。普段のスカートスタイルと違って、今日はばっちりパンツスタイルである。
 足のラインがよくでるジーンズパンツとブルーのコートが、シフォリィの神色によくなじんだ。
 一方でふわふわの毛皮にふわふわのロングコートを纏う羊獣種の女が、鮮やかなラメパープルの唇でシチューに口をつけている。
「お腹の中まであったまるわあ」
「うん……」
 『天京の志士』鞍馬 征斗(p3p006903)は食べ終わったお椀をゴリョウに返すと、周りをもう一度見回してみた。
 雪降る山の、雪深い道。
 足跡は自分たちのものばかり。
 黒い外套にマフラーを巻いた、どこかガーリーな征斗。
 黒衣の肩に積もる雪を、征斗は揺するようにして払った。
「そろそろかな?」
「いかにも」
 古くさいモーゼル拳銃を翳し、ドーベルマン獣種がサングラスを光らせる。そして世にもスタイリッシュなポーズをとった。
「白銀の世界を染める罪深き鮮血の儀式。我地獄の――」
「オーッホッホッホッ! さあ始まりますわァ! この」
「えっ」
 被る形で両手をバッと広げ、ジャンプする『きらめけ!ぼくらの』御天道・タント(p3p006204)。
 真っ赤なダッフルコートにウシャンカというもこもこロシア帽を被ったタントは、ねこちゃんマフラーともこった手袋という完全防寒装備で鳥の如く雪上に飛び上がる。
 \きらめけ!/ \ぼくらの!/
   \\\タント様!///
 どこからともなく響き渡る謎の声。
「が――荒ぶる妖精タイラントスノウを、きらっとお相手してみせますわ! オーッホッホもぎゅ!」
 そして雪面に大の字に落ちた。

●まぜこぜぽかすか!
「ふんぬ!」
 タイラントスノウの腰へ組み付いた熊獣種が強引に相手を高く持ち上げる。
「今だァ!」
「承知ですわ!」
 輝きをひいて飛び上がったタントのバレーダンスキックが無防備な人型タイラントスノウの頭部を雪だるまのように破壊。
 その勢いのままきめたバックドロップでタイラントスノウが派手に砕け散った。
「ナイスだタント様!」
「もももふも!」
 雪面に大の字に落ちたタントががばっと顔を上げる。
 そこへ狼型のタイラントスノウが三匹まとまって駆け寄ってくる。
 青いコートを翻し、間に割り込むシフォリィ。同じくインバネスコートを纏ったシカ獣種が刀を納めた状態のままザッと割り込む。ブレーキと同時にはじける雪。
 飛びかかる狼タイラントスノウ。
 シフォリィが剣の腹を薄く撫でるように手のひらを引くと、剣に白い炎が伝うように宿っていく。
 引き切った動きをそのままに身を一回転させ、飛びかかってきたタイラントスノウを顎から腹にかけて強引に切り裂いていく。
 ほぼ同時に、シカ獣種も鞘から抜いた刀に電撃を纏わせてタイラントスノウを切断。
 二人は視線の端だけで違いを認識すると、返す刀でもう一体のタイラントスノウを三つに切り裂いた。
 切り裂かれた狼タイラントスノウは砕け散るが、すぐさま寄り集まって一回り小さい狼型タイラントスノウとなって起き上がる。
 攻撃直後のシフォリィたちは無防備だが、なにも一人で全てをしのぐ必要は無い。
「真っ赤なお鼻のトナカイさんからのプレゼントだよ♪」
「ポメさんからもお裾分けだよ♪」
 寝転んだ姿勢でアンチマテリアルライフルをぶっ放す桜。その横でアサルトライフルを抱えて援護射撃を浴びせるポメラニアン獣種。
 桜たちの銃撃によって頭が吹き飛んだ狼タイラントスノウたちはぐらりと傾き、その場に倒れて散った。
 はたと振り返ると、下半身だけになった人型タイラントスノウがばたばたとしている。
 それをおもむろに踏みつけ、灰は剣を握りしめた。
 拳銃をCARシステムの型で構えて叫ぶロバ獣種。
「次、来ます。9字方向!」
「そっちは受け持ちます」
「――了解。援護します」
 灰は剣を握ったまま走り、積雪の上で強引に跳躍。
 飛来する鳥型タイラントスノウめがけて剣を叩き付ける。
 翼を打ち、破壊。回転しながら墜落した鳥形タイラントスノウは翼を振り回して氷の刃を生み出すが、それを灰は盾による防御で弾く。
 灰を障害物代わりにしたロバ獣種は僅かに身を乗り出し、安定した射撃で鳥形タイラントスノウにトドメをさした。
「もう一体見つけました」
 史之は眼鏡の位置を親指で押すようにしてなおすと、レンズに映り込んだナビゲートアイコンにそって走り始める。
 空中に手のひらを翳し、指輪型入力感知デバイスと眼鏡のセンサーを連動させたコマンド入力装置を使って腕時計型力場発生装置を起動。
「雪に交じるように接近するつもりだったみたいだけど――敵意がむき出しだよ!」
 史之はこちらに向けて慌てたように飛びかかってきた狼型タイラントスノウに拳を繰り出した。
 インパクトの瞬間に斥力フィールドを展開。
 激しい衝撃を与え、狼型タイラントスノウを殴り倒した。
「援護を!」
「もうやってる。心配すんな」
 ジェイクは動物的感覚をアテにして、既に狼型タイラントスノウに銃の狙いをつけていた。
 両手でしっかりと握り込んだ銃が三発。連続で発砲。
 その隣ではトカゲ獣種の女がスリングショットに毒矢をつがえて素早く二連射していた。
「フシュー……」
 狼型タイラントスノウは頭と腕、そして胴体をそれぞれ破壊されて沈黙。
 そんな中、天空から突如として降ってきた人型タイラントスノウ。
 突然の襲来と突然のキックを、しかしゴリョウは頭上にどっしりとかざしたシールドで受け止めていた。
「豚ちゃんパスパス~!」
「あいよ。頼むぜ!」
 トランポリンのようなぼよんとした動きでタイラントスノウを投げると、それを山羊獣種がショルダータックルで征斗のほうへ更に突き飛ばす。
「はい次かわいこちゃんパスよォオラア!」
「えっ」
 その呼び名はなに。と聞くよりも早く飛んできたタイラントスノウ。
 征斗は氷の華を生み出すと、四方八方へ狙いを無視して放った。
「雪華よ踊れ、雷光一閃刹那に砕け!」
 唯一その射程圏内にあったタイラントスノウに直撃。刺さった地点と征斗の胸が魔術的につながり、激しい雷撃がタイラントスノウへと伝達される。
 頭からつま先まで連鎖的にはじけていくタイラントスノウ。
 それを見ていたドーベルマン獣種が格好いいポーズをとった。
「地獄と契約せし我が罪深き弾丸。漆黒の閃光が白き銀世界を罪という血で――」
「終わったわよぉ。つぎつぎ」
「えっ」
 まだ若干生きていたタイラントスノウに鉄のかんざしでトドメをさす羊獣種。
 二度見するドーベルマン獣種をよそに、ゴリョウたちはざくざくと次なるポイントへと移動を開始した。
「しっかし固まってると楽だなぁ。連携も慣れてきたし、ちょいと効率を上げてみるか」
「あらいいわねェ~。賛成~!」
 首をぷるぷる振ってリアクションしてくる山羊獣種。
「なら、いい考えがありますわ!」
 タントがずばっと扇子を広げ、おでこをピカッと光らせた。

 雪原ど真ん中。
 熊獣種に肩車された灰が、背負った盾をぎらぎらと光らせていた。
 更には灰に肩車されたタントがY字ポーズでぺかーっと輝いていた。
 光を背に浴びてカッコイイポーズをとっているドーベルマン獣種。
 横ではシフォリィがオカリナを吹いていた。
「我ら白き世界に建てられた強欲の塔。見よ、精霊のダンスホールはここに――あっ」
 人型タイラントスノウの集団がものすごいスピードで突っ込んでくる。
 が、木々の後ろや枝の上に紛れるようにして隠れていたヤマカシのメンバーが次々に飛び出し、タイラントスノウへと襲いかかった。
 羊獣種のアクロバティックな回避が、山羊獣種のタックルが、シカ獣種の剣が襲いかかる。
 対抗するために団子状になってぶつかるタイラントスノウたち。
 一方で雪の中に埋もれるように身を隠していた征斗とゴリョウがタイラントスノウの背後から奇襲をかけた。
 不意を打った招惹誘導がタイラントスノウたちの狙いをバラけさせていく。
「戦う以外が無能だから。色々すまないね……本当に」
 隙を見せたタイラントスノウに斬りかかる征斗。
 そうしている間に側面方向から突撃する史之。
 障壁を使ったタックルとわざと目立ったおびき寄せによって狙いを更に分散させ、そうこうしている間に正面方向からタワー状になった熊獣種たちが一斉に襲いかかる。
 輝くタントを頂点に、光る盾を翳して浴びせる灰。
 襲いかかろうとするタイラントスノウを熊獣種のがっつりした体格がはねのけていく。
 三方挟み撃ち。更に狙いまで分散してしまったタイラントスノウに、シフォリィの斬撃が走った。
「チャンスだよ。一斉射撃ー!」
 桜が銃撃を浴びせ、ポメラニアン獣種やロバ獣種、トカゲ獣種たちが援護射撃を加えていく。
「まさに一網打尽、って具合だな」
 ジェイクは最後に残ったタイラントスノウの頭を至近距離から銃撃で吹き飛ばすと、崩れ落ちた身体を見下ろして満足げに頷いた。
 砕け散ったタイラントスノウはきらきらとした精霊の輝きとなり、大地へとしみこんでいく。
「この精霊たちが温泉地の綺麗な水と土質を保っているのよ。荒ぶる精霊を沈めることは、この土地と暮らす人々と、そして温泉の文化そのものを守ることにつながるのね」
 山羊獣種のそんな言葉に、タントたちはなるほどおと頷いた。

●温泉!
 さて、おまちかね。
「やっと温泉だー♪ふふふ、この為に依頼に来たんだから入らない手はないよねー♪」
 やっほーと叫んで露天風呂に飛び込む桜。
 既に使っていたタントがおでこからぷかあっと浮き上がり、完全脱力ポーズで頬をぽかぽかにそめた。
「ふひぃ~……おしょとしゃむかったですわぁ……そのぶん、溶けますわねぇ~」
「わかるわぁ……」
「フシュー……」
 うっとりと温泉を堪能する羊獣種とトカゲ獣種の女たち。
 シフォリィは頭にタオルを乗せたまま、露天風呂の縁に身を乗り出した。
 遠い山々はまだ白く。湯気のあがる向こうには広い温泉街の景色。
「たまにはこういうのも、いいですね」

 一方で、桐でできたこじんまりした湯船につかる征斗。
 ぷかあっと浮かんできた羊獣種(男性)がちらりと彼の方を見た。
「ひとつ聞いてもいいかしら」
「なに……?」
「なんでアナタ女の子の格好してるのよ。そういう文化圏なの?」
「ええと、それは……」

 場面を移してジェイクと熊獣種。
 二人は露天風呂につかってお盆に浮かべた米酒をつぎかわした。陶器製の小さなカップを打ち合わせ、ぐいっと飲み干す。
 胸を通るカッとした暑さと肌からしみこむ湯の熱が、身体の芯で混じり合う。
「「あ゛~~~~」」
「ぷはー、いいですなー! 露天風呂で呑む酒は!」
「然様。樽一杯は行けるでござる」
「それでこの前沈んでたじゃないですか。あなたそういうところですよ」
 灰とシカ獣種、ロバ獣種もそれぞれ瓶に入れた麦酒をぐいぐいいっている。
 離れた所ではばしゃばしゃしてるポメラニアン獣種と、一人シリアスな顔をして遠くを見ているドーベルマン獣種。
 ゴリョウと史之はそんな光景を見ながら、ざぷんと露天風呂に足からつかった。
 雪深い温泉街の。
 あがる湯煙に包まれての、露天風呂。
「「あ゛~……」」
 二人はとっくりと目を閉じ、湯の魅力に心まで浸かった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 おかえりなさいませ。今回も楽しい温泉旅行に……いえ、依頼になったようですね。
 精霊の討伐とはいうものの、実質的には環境浄化であったようで。とても立派なことでございます。
 こんな風に、またあちこちの温泉街を巡りながら依頼を受けて回るのも、楽しいことかもしれませんね。

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