PandoraPartyProject

シナリオ詳細

動き出す無念のチョコ達

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●大量に破棄されたチョコの怨念
 『グラオ・クローネ』。
 それは無辜なる混沌において、御伽噺の一つであり、大切なヒトに贈り物をして、その絆を形にしようっていう風習だ。
 それが今では、自らの想いをチョコレートに込めて伝え、あるいは互いの愛を確かめ合うことができるきっかけを与えてくれる日ともなっている。
 だからこそ、この世界における乙女達も本気になってチョコを作り、大切な人へと渡す。
 その結果が、きっと渡した本人にとっていいものとならんことを――。
 
 そんな日に、幻想某所の街であらぬ事件が起きている。
 どしん、どしん……。
「な、なんだ?」
 どよめく住民達が目にしたのは、地響きを立ててやってくる茶色の集団。
 それらはなんと、チョコレートで作られたゴーレム達だった。
 そりゃ、泥とか粘土で作られるゴーレムってのはいる……が、さすがにチョコレートでゴーレムを作ることはないだろう。
 しかも、ざっと数えても50体はいる。
 どこぞの傍迷惑な錬金術師が酔狂で作り出したと思われるそれらは、ゆっくりと町へと侵攻してくる。
「ザンネンイウナ……!」
「チョコ、ウラミ……」
「ワタシタチハ、フヨウナンカジャ、ナイ!!」
 口々に恨み節を漏らすそいつらは手近な家から破壊を始め、人々へと殴りかかってくる。
 また、自らの体を球体やキューブ状にして飛ばすこともある。
 それらは固形として弾丸のように撃ちつけてくるだけでなく、液状として浴びせかかってくることもある。
「逃げろ、チョコが襲ってくるぞおおおっ!」
 人々は巻き添えを食わぬよう、我先にと逃げ出していく。
 その後をペタペタと歩くチョコゴーレム達は自らに秘められた負の感情をもって、さらに街を破壊していくのである……。

●全てのチョコゴーレムの殲滅を
 そんなグラオ・クローネの日、昼間。
「お手を貸していただいてもよろしいですか……!?」
 息を切らし、ローレットへと駆けこんできたのは、『穏やかな心』アクアベル・カルローネ (p3n000045)だ。
 どうやら、今この時に一大事が起こっているらしい。
 息を整えるアクアベル。ただ、そんな時でも大きな動揺を見せないのは、彼女がギフト『大海の心』を持っているからだ。
「幻想内のある街で、チョコレートでできたゴーレム達が暴れているようです」
 町は、1000人ほどが住む街道からわずかに外れた町。
 そこに、恨み辛み、悲しみ悔しさ、残念さ無念さといった負の感情が込められたゴーレムが現れ、建物を破壊し、人々を襲うのだという。
「チョコゴーレムは人間サイズで、拳や蹴り、後はチョコレートを弾丸として放つようですね」
 指でつまめるほどの大きさをした弾丸は大きく2種類あり、球状やキューブ状のもの。そして、液体状で相手に浴びせかかるものとある。
 ダメージは同じだが、体が汚れる分、液体の方が迷惑かもしれない。
「ただ、個々の個体はそれほど強い相手ではありません」
 よほどのことがなければ、負けることはない相手。
 この為、周囲に被害が無いよう、片っ端から叩き壊していきたい。
「無事に倒したら、散らばるチョコレートを拾い集めて片付けまでお願いします」
 さすがに地面に散らばるチョコを食べるのは抵抗があるが、大きな破片なら切り分ければ食べられそうだ。
 それを使って、何かチョコ料理を作るのもいいかもしれない。街を救ったイレギュラーズの頼みなら、住民達の台所を貸してくれるだろう。
「以上ですね。ともあれ、町の人達を守ってあげてくださいね」
 そうして、アクアベルは小さく礼をし、他の参加者を探しに向かうのだった。

GMコメント

イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
さりげに初のイージーシナリオだったりします。
なぜこれを2月14日当日に思いつくかなーとか考えつつ、
ノリで運営です。

想いを籠められながらも受け取られず、
あるいは、販売の為に大量生産されるも売れ残り、
そんな失意と残念さで満たされたチョコが人型となって幻想の街を襲ってしまうようです。
片っ端から蹴散らしていただきますよう願います。

●敵
〇チョコゴーレム×たくさん
パンチ、キックなどの肉弾戦と、
チョコレート(液体・個体)をばら撒いてきます。

ざっと50体はいます。
人間サイズが基本ですが、まれに4mくらいのでかいのがいます。
とにかく片っ端から破壊してください。
グラオ・クローネ……別世界ではバレンタインなどと呼ばれる日に関する想いとか、鬱憤とかを全部ぶつけていただければと思います。

〇場所
とある幻想の街。
いきなり現れたチョコレートゴーレムの大群に人々は大慌てしています。
街が破壊されたり、人々がチョコまみれになったりする前に、
チョコゴーレムを倒していただければと思います。

事後、散らばったチョコはお掃除を願います。
大きな破片なら、切り分けることで料理に使えそうです。
ちょっとした手料理を皆で食べ合ってみてはいかがでしょうか。

それでは、よろしくお願いいたします。

  • 動き出す無念のチョコ達完了
  • GM名なちゅい
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2019年02月27日 21時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ハロルド(p3p004465)
ウィツィロの守護者
城之崎・遼人(p3p004667)
自称・埋め立てゴミ
アマリリス(p3p004731)
倖せ者の花束
天之空・ミーナ(p3p005003)
貴女達の為に
リナリナ(p3p006258)
無限乃 恋(p3p006272)
恋の炎を散らす者
エル・ウッドランド(p3p006713)
閃きの料理人
ヨシト・エイツ(p3p006813)
救い手

リプレイ

●暴れるチョコ製人形達
 今日は、楽しい『グラオ・クローネ』。
 ところが、それが台無しになりそうな事件が幻想某所の街で起きているとのこと。
「グラオ・クローネでも色々ある訳か」
 元居た世界ではごく普通の少年だった、学生服着用の『自称・埋め立てゴミ』城之崎・遼人(p3p004667)。
「……しかも、チョコの負の感情って」
 彼は自身の世界のバレンタインで、色々と負の感情を爆発させていた人達を思い出し、一つ溜息をつく。
 ただ、遼人のような考えをしている者だけでなく。
「食べたい……。だから、止める為に来ました」
 茶髪に尖った耳を持つ鉄騎の少女、『イカダ漂流チート第二の刺客』エル・ウッドランド(p3p006713)は単純に食欲を満たす為、この依頼へと参加している。
「分かりやすい依頼は好きだぞ。つまり、平和を乱す輩を皆殺しにすれば良いんだろう?」
 普段はクールな『聖剣使い』ハロルド(p3p004465)だが、戦闘狂である彼は、ただ目の前の相手を倒せばいいという依頼に喜びを見出していたが……。
 持ち前のツッコミ属性をフルで発揮することになろうとは、この時の彼はまだ知る由もなかった。

 どしん、どしん……。
 街で暴れるチョコゴーレムの群れから、住民達は巻き込まれぬよう必死になって逃げ惑う。
「ザンネンイウナ……!」
「チョコ、ウラミ……」
 そのゴーレムの姿に小柄で可愛らしい少女、『原始力』リナリナ(p3p006258)はぽかーんと口を開いて。
「むおぉぉ……チョコ、けっこう怖い生き物」
 この状況に、純真なリナリナはいらぬ情報を刷り込まれてしまって。
「リナリナ、あのチョコ怖い。帰っちゃダメ?」
 いつになく、弱気な原始少女である。
「何があって、どうしてこうなったんだかねぇ……」
 チョコゴーレム達の姿に、やや呆れ顔の『猩々縄張り見極め人』天之空・ミーナ(p3p005003)。
 ただ、彼女はすぐに「ま、いいや」と割り切って。
「私は私のやりたい事をやるだけ。それだけさ」
 すぐさま、手近なゴーレム目掛けて、ミーナは攻撃を仕掛けていく。
「……今日はバレンタイン。人が人に、恋心をこめてチョコを送る、素敵な日……」
 全ての事象を、恋のせいにして解決しようとする『恋の炎を散らす者』無限乃 恋(p3p006272)。
 この事件もまた、恋にとってはこう解釈される。
「つまり、あのチョコ人たちが人型なのは、そう! チョコが人に恋したからに他ならないわ!」
 ところが、ゴーレムの中にはこんな主張をするものも。
「ワタシタチハ、フヨウナンカジャ、ナイ!!」
 流石に放っておけないとこの場へと介入を決めた遼人は、そんな敵の言葉を耳にする。
 自らを『特に世界に必要がないゴミ』と認識する彼は、自身にその必要性を見出さそうとも考えていない。
(……もしかしたら、こいつらの方が僕よりよっぽど『生きてる』のかもね)
 小さく鼻を鳴らした彼は、住民の救出へと動き出すのである。

●群がり、暴れるチョコゴーレム達
 それぞれメンバー達が作戦の為に動き出す中、リナリナは戸惑っていた。
「ツライ、クルシイ……」
 ネガティブな感情を剥き出しにするチョコゴーレム。
 それに、彼女は本能で恐怖を感じていたようだ。
「でもお仕事、帰れない……」
 そんなリナリナを尻目に、数人のメンバーが攻め行く。
 ミーナは近場で暴れる1体へと近寄り、凍えるような殺意を指先へと宿し、そっと触れる。
 何かかしらの魔力で維持されていると思われるその体だが、ミーナの一撃に良からぬ予感を抱いたようで、ややその身を硬直させていたようだ。
 チョコゴーレム達は恨み節を吐きながら、液体、個体のチョコをばら撒いてくる。
 しかし、恋は殴る、蹴るといった殴打を受けてなお、それらを好意的に解釈してみせて。
「パンチや弾丸も、不器用でチョコを渡そうとしてるのがそう見えるだけ!」
 相手が負の感情なんて言っても、結局はただの照れ隠し。嫌いは隙の裏返しだと、恋は主張する。
「あたしがその想い、受け止めてあげる!」
 恋は抑えに当たるべく、ゴーレムへと視線を向けていたようだ。
 町中に漂う甘いチョコの香り。それを嗅いだエルは外側を削れば食べられると考える。
「もちろん、これ以上の被害を起こさないように止める為に来ましたけど……」
 ともあれ、チョコを食べるにせよ、街を荒らすゴーレムを止めねばならない。
 まずは抑えとあって、エルは敵から距離を取りつつ集中を研ぎ澄ませる。
 そうして、相手の動きを捉えた彼女は、更に集中してから片手銃『ブルー・インパクト』で相手の脚を撃ち抜いていった。

 一方で、半数のメンバーが避難誘導へと当たる。
「ここから離れてください! イレギュラーズです、ここは任せてください!!」
 王子様風の見た目をした『天義の守護騎士』アマリリス(p3p004731)が住民達を誘導する。
 カリスマを働かせた彼女の言葉に、人々も快く従ってくれていた。
 そのアマリリスとコンビを組むのは、ハロルドだ。
「相手してやる。かかってきな!」
 機動力を活かし、彼は人々を殴る蹴るするゴーレムを引き付け、人々や建物に被害を与えぬよう引き剥がして回っていた。
 同じく、遼人はゴーレムの群れから離れるよう人々を誘導するが、その合間に囲まれて動けなくなっている子供達を発見していた。
 街中で、タイミング悪く子供同士で遊んでいた3人のグループ。
「「うう、ひっく、ひっく……」」
 彼らはゴーレムの出現に怯え、泣き出してしまっていた。
「おっと、俺の出番だな!」
 その遼人と共に行動していた、『張り子のヒャッハー』ヨシト・エイツ(p3p006813)が前に出る。
 オールバックにした赤髪に、サングラスというごろつき風の容姿のヨシトだが、ギフトである『善人臭』と『自分より小さな生物が安らぐ空気』を醸し出すと……。
「カカカッ、安心しな」
 ヨシトは不安がっている子供の頭をガシガシと撫で、落ち着かせる。
 その彼らの鳴き声がゴーレムをおびき寄せていた事もあり、遼人が氷の鎖を伸ばしてやや凍らせて動きを鈍らせていく。
「先輩がたは強ぇのばっかだ。あんなチョコゴーレム程度は物の数じゃねぇよ」
 刻々と頷く子供達は、ヨシトが示す方向へと駆けて避難していくのだった。

 その間も、抑えに当たるメンバーは交戦を続ける。
 恋は狙ったゴーレムへとウインクして。
「届け! チョコレートハートも甘く溶けちゃうくらいのあたしの熱い恋!」
 彼女の送る熱視線は、恋する乙女の視線。
 熱線のようなものに貫かれたゴーレムは、恋へと意識を奪われて近づいていた。
 少し離れた場所でも、複数のゴーレムが建物の破壊へと動く。
 それらのゴーレムへと、ミーナが近寄って。
「さあ、悲しき想いの詰まった哀れな仔馬達? 私が相手してあげようか」
 名乗り口上を上げたミーナはアイドルらしくウインクを飛ばし、挑発的に相手を誘う。
 一度では、ゴーレムもチョコを飛ばして追い払おうとしていただけだったが、ミーナがさらに誘えば、気を引いて直接殴り、あるいは蹴りかかろうと近寄ってくる。
「鬼さんこちら。手のなる方へってなぁ!」
 そうして、彼女は死骸盾を使いつつ、うまく仲間の元へと誘導していく。
 誘導する先では、エルが相手の投げつけてくるチョコに対し、銃撃で応戦する。
「おー、リナリナわかったゾッ!」
 仲間達が交戦する中、チョコゴーレムに怯えていたリナリナが突然叫ぶ。
「だったら、逆に全部叩き壊す! 壊す! 壊す!」
 思いっきり吹っ切れた彼女は、ぶっ壊せば問題ないと逆方向にスイッチが切り替わったらしい。
「動かなくなれば、怖くないゾッ! カンタン! カンタン!」
 リナリナは『掘り出し物』という名の剣で、チョコゴーレムどもへと切りかかり始めていた。

 ある程度、避難誘導が進んだところで、ハロルドはアマリリスと共にチョコゴーレムとの交戦を始めていた。
「1体たりとも逃がさない……」
 アマリリスは序盤こそ襲われる人々を解放する為、チョコゴーレムへと炎を発していたが、自律戦闘アーティファクト『マグダラの罪十字』での攻撃に切り替えていたようだ。
 ハロルドも戦いとなれば、血の気を増す。
 だが、聖剣リーゼロットを手にする彼は周囲の建物を巻き込まぬようにと冷静に判断し、チョコゴーレムを一刀両断してしまう。
 できる限り食べられる量を増やせるように倒せば、後々皆で美味しくいただけると配慮していたのだ。
「恋だの愛だの騒ぐより、こういう依頼の方が俺の性に合って――」
 自らの血を沸き立たせ、戦闘狂である自らの本性を解放しようとしたハロルドだったが……。
 そこでアマリリスが戦闘中にもかかわらず、倒したゴーレムから切り取ったチョコを口にしているのを見て、急に熱が冷め、真顔になってしまう。
「……って、食ってる場合か!」
「はわ、これは効率的栄養補給です」
 そう言いつつ、アマリリスは回収していたチョコをボリボリと食べ、再びマグダラの罪十字に攻撃指示を出していたようだった。

 チョコゴーレムは数で群がることもあり、個々の個体はさほど強くはない。
「るら~! アクリョウチョコ禁止!」
 リナリナは怖さを吹っ切り、目の前のゴーレムを剣で滅多切りにしていく。
 恋も相手のチョコアタックに、しっかりとチョコのお返し。
 一発当たりのダメージは大きくないが、それでも、数が多いと傷が深まる為、彼女は自己再生や治癒魔術を使うことも忘れない。
 回復に当たるメンバーといえば、遼人は避難する住民の怪我に追われ、なかなか戦線に戻ってこない。
 相方となるヨシトもまた、はぐれのゴーレムの対処に追われ、聖光を放ってゴーレムの牽制を行っていたようだ。
 なかなか仲間の回復に回れぬメンバーも多い中、全力でマグナム弾を放っていたエルへと近づくのは、他個体の倍の大きさがある大型のゴーレム。
 彼女は距離を取ろうとしたが、挟まれる形となる。
 そいつに殴られたエルは強烈な殴打を頭にもらってしまい、卒倒して倒れてしまっていた。
 しかし、大型の存在に気づけば、他のゴーレムを倒したメンバー達も徐々に集まってくる。
 ミーナは他のゴーレム同様にそっと指先で触れ、動きを鈍らせた相手を狂熱的なダンスで翻弄し、霊樹の大剣で切り裂いていく。
 同時に、アマリリスもまた別サイドの巨体を相手に、語り掛けながら切り込む。
「貴方たちは、誰かを幸せにする為に生まれてきたもの」
 それがグラクロの時期を過ぎたからと言って、誰かに想いを届けてはいけないことはないはず。
「プレゼントはいつしたって、良いものだから!」
 そんなアマリリスにハロルドは感心しつつ、聖剣の『魔を討つ光』を解放する。
 そうして、群がるゴーレムを蹴散らした彼が再び視線を向けると……。
「だからといって、体重! 増やさないで!」
 恋人や大事な友人に、アマリリスは体型を気にされたくないという乙女心をぶちまけて。
「いくら騎士だからって、女心が無いと思わないで!!!」
「良いことを言ったと思えば、すぐこれか……」
 そうして、目の前の相手を切り伏せる彼女の姿に、ハロルドは呆れてしまうのだった。

●皆で楽しくチョコ食べよ!
 その後、イレギュラーズ達は全てのチョコゴーレムを討伐していく。
 全て倒した後、街路にはたくさんのチョコレートが取り残されていた。
「掃除、しましょうかっ」
「チョコレートの処理も仕事のうちなのか。なら、さっさと食ってしまうか」
 アマリリスに促され、掃除を始めるハロルド。
 とはいえ、数が数だ。ゴーレムは50ほどもいた上、数体は倍ほどの体躯があった。
 さすがに、自分達だけでは喰い切れそうもない。
「しっかし、派手に暴れてくれたみたいだなぁ」
 ゴーレムの残骸を片付けつつ、ミーナは食べられそうな部分を丁寧に取り分ける。チョコがあったと思わせぬ程に、彼女は綺麗にしていく。
 そばでは、リナリナが豪快そうに見えて、テキパキと掃除を進めていた。
 住民達が戻ってくる中、ヨシトは子供達を説得して。
 大きなチョコの欠片を集め、皆で街の大掃除と後片付け。
 子供達にとって、今回のこの一件が怖い思い出だけではなく、楽しい思い出となる様にとのヨシトの計らいだ。
「あと、一刻も早く元の生活に戻れるようしないとな!」
「「おー!」」
 先ほど避難した子供達は、すっかりヨシトになついていたようだ。
「食べ物にゴミ、というのは気が引けるけど……」
 遼人は地面に接してしまったチョコを集め、自身のギフトで汚れなどを除去したチョコレートを塊に戻していた。
「要はそのままだと、どうしようもなくなった物を原料的な物に戻す力だからね」
 これはこれで、十分に利用できそうだ。
 皆が運び、集まってくるチョコの山。
 それを目にした恋は、これがチョコ人達から街の人達への贈り物なのだと捉えて。
「だったら、あたしたちで立派なバレンタインチョコにして代わりに渡してあげなきゃね!」
「そうだな……」
 恋の言葉を聞いたハロルドは、ちょっとした企画を思いついていた。

 ヨシトは街のパティシエへと声を掛けていく。
「食えるチョコを皆で食う屋台に、協力してくれねぇか」
 材料は、イレギュラーズの持参。それらを使って美味しい物を作ってほしいとヨシトは説得する。店の名前を入れて宣伝OKなど、利点も勧めることを彼は忘れない。
 遼人もまた、この騒動を楽しいイベントと変えてしまえるようにと、シェフを説得する。
「材料のチョコはタダな訳だし、ここで腕を振るって見せるのもいい宣伝になるんじゃない?」
 ただ働きにはならない。プラス要素は十分。
 街の人々も十分に理解を示し、協力してくれていた。
 人が集まる中、屋台で振る舞うものの製作も進む。
 目を覚ましたエルは手伝いを行いつつ、自分で食べる量も確保する。
 両手で持った分を、彼女は自身のギフトの力でそれらのチョコを干からびたチョコパンへと変化させていた。
「チョコレート100%だから、いい感じですね」
 エルがパンを食べるのを、横目で見ていたリナリナ。
「おー、チョコ食べるのか? 本当に食べるのか?」
 勢いでチョコゴーレムを撃破したリナリナだったが、どことなく、例えようもないどす黒さを感じてしまって。
「このチョコ食べると、お腹壊しそうだゾッ? 怨念の凝縮したダークマターっぽいゾッ?」
 リナリナは今夜気持ちよく眠る為、自分で集めた分に関しては火葬にしていたようである。
 アマリリスは企画立案したハロルドへと、神妙な面持ちで話しかけた。
 用意した魔力で動くフォンデュセットを見せ、これで福利厚生……とのことなのだが。
「ハロルドさま、一大事です。このアマリリス、料理は苦手で……」
 街の人々と協力しつつ、屋台を作るハロルドは少し、いや、かなり嫌な予感に顔を顰める。
(これでは、ハロルドさまに嫌われる)
 それを察したアマリリスは、そばのチョコの塊に向けて剣を抜いて。
「えと、頑張ります! はい! 援護をお願いしますね!!」
「全然大丈夫じゃない。良いから剣はしまっておけ」
 冷静に止めるハロルドは嘆息して一言。
「苦手というレベルではないのは分かった」

 そんなこんなで、屋台は完成して。
「チョコレート、受け取ってね♪」
 自身の感覚で成形した屋台で、恋は呼び子となってチョコを差し出す。
「大丈夫、恋のおまじないでみんな、喜んで受け取ってくれるよ」
 恋は自身が魔眼を働かせていることに気づかず、人々を屋台へと招き入れる。
 屋台の企画者であるハロルドは、アマリリスと作ったチョコレートフォンデュの屋台で人々にチョコレートを振る舞う。
 ハロルドも幻想での自らの名声を活かし、住民を集める。
 ――街の人々に、この甘い味が行き届きますように。
 アマリリスもまた、皆へとチョコレートフォンデュを食べるよう呼び込みを行う。
「ねっ、ハロルドさま! 私たちの分も残しておきましょうね。あとで食べたいです!」
 そこで、ダイエットは明日からと自分に言い聞かせる彼女に、ハロルドはまたも嘆息してしまっていた。
「美味いチョコデザート、腹いっぱい食おうぜ!」
 屋台の設営を手伝ってくれた子供達へ、ヨシトはご褒美にとチョコのデザートを差し出す。
「食べ物は大事に!  勿体無いモンスターが出てくるゾッ!」
 リナリナはもったいないお化けが出るからと、その子供達に言い聞かせる。もちろん、自身もしっかりと食べていたようだ。
「ん……? この依頼を受けた理由?」
 ミーナは住民達に質問されて少し考える。
 チョコ食い放題に引かれたのは間違いないが、それだけではなく。
「可愛い女の子が一世一代の大勝負する日に、暴れる馬鹿者を放っておけねぇってな」
 それが可愛い女の子を愛する、ミーナの生き方なのだそうだ。
 皆、楽しくチョコレートを口にする。
 そのチョコレートは、自分達は不要じゃないと主張していたことを遼人は思い出して。
「街の皆に美味しく食べて貰えたのなら、ちょっとした救いにはなるのかもね」
 どういう意図で作られたかは分からぬが、これならチョコゴーレムの供養になるのではないかと遼人は考えるのである。

成否

成功

MVP

ハロルド(p3p004465)
ウィツィロの守護者

状態異常

なし

あとがき

 リプレイ、公開です。
 MVPはイベント企画、ツッコミと忙しなく動いていたあなたへ。
 ちょっと遅くなりましたが、グラオ・クローネの1日を楽しんでいただけたのなら幸いです。
 参加された皆様、本当にありがとうございました!!

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