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シナリオ詳細

鉄帝式教育的指導!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●引きこもった息子
 鉄帝貴族ボチャレフ・グラーフゼンは、過去ラド・バウにおいてかなりの上位成績を納めた猛者だ。
 勇猛果敢な戦いぶりは多いのファンを魅了し、その力をもって貴族の地位も勝ち取った。まさに鉄帝ドリームを体現した一人と言えるだろう。
 ラド・バウ引退後も精力的に後進を育て、優秀なラド・バウファイターを排出する優秀なトレーナーとして名を上げていた。
 そんなボチャレフは一つの悩みを抱えていた。
 愛妻との間に授かった息子。ルチャレフの存在である。
 幼き頃のルチャレフは、それはそれは父の存在を誇りに思い、「大きくなったらパパみたく強くなる!」と血気盛んにはしゃぐ子供であった。父譲りのフィジカル、そして才能もあったことで、ラド・バウに名を連ねるのもそう遠くない未来だろうと考えていた。
 しかし、いつの頃からだろうか。
 トレーニングに顔を出さなくなったルチャレフは、どこからか入手した古代兵器いじりに夢中となり、そして見事に引きこもった。
 機械いじりなどすぐに飽きるだろうと思って十五年。ついに成人を迎えてしまった息子は、実家を出て自らの研究所のような物を立て、そこから一切出てこなくなった。
「ルチャレフ! いい加減にしなさい!」
 このままではいけない、と遂に実力行使にでたボチャレフだったが、息子の引きこもる建物は数々の古代兵器によるトラップが満載であり、過去ラド・バウで活躍したボチャレフであっても――その肉体の衰えもあるが――最奥へと至ることは出来なかった。
 モニターしていたルチャレフがスピーカー越しに父親へと言葉を吐き捨てる。
「わりぃな親父! これからの時代自分で戦うなんてーのはアホだぜ! 俺は一生引きこもって楽に生きるわ!」
「ぬぬぬっ! なんたるバカ息子かっ!」
 憤怒に猛るボチャレフは、何としてでも息子を引き摺りだし拳骨の一発でもくれてやらねばなるまいと思案する。
 そして辿り着いた作戦は――


「鉄帝貴族のボチャレフさんより息子を家から引きずり出して欲しい、なんて中々不憫な依頼が来たものね」
 『黒耀の夢』リリィ=クロハネ(p3n000023)が苦笑しながら依頼書を見せる。
 機械いじりに傾倒し重度の引きこもりとなった息子ルチャレフを外へと連れ出す。オーダー自体は簡単そうだが、このルチャレフの引きこもってる建物が厄介極まりない。
「どこからか入手した古代兵器を元に、いろいろ個人で量産したようね。
 建物内はトラップのオンパレードで、大概の人は入口で門前払いされてしまうみたいね。内部には自動人形(オートマタ)なんかもいるみたいだし、なかなか苦労しそうよ」
 トラップに対する備え、そして自動人形との室内戦。いろいろな準備が必要となることは想像に難くない。
「ボチャレフさんを説得して……というのは難しいからオススメはしないわ。するとしても息子のルチャレフさんを引っ張り出してからしたほうが良いでしょう。
 まあ鉄帝人らしくとりあえず殴らないと気は収まらないでしょうしね」
 くすくすと笑ったリリィはそうして依頼書を手渡してくる。
 デッドコピーだが、その元は古代兵器だ。備えは十分に行う必要があるだろう。
 イレギュラーズは依頼書を眺めながら、どんな作戦で行こうか思案を開始するのだった。

GMコメント

 こんにちは。澤見夜行(さわみ・やこう)です。
 引きこもりの息子にパパがブチ切れました。
 トラップ迎撃を潜り抜け息子を家から引きずり出しましょう。

●依頼達成条件
 ルチャレフを建物の外へ連れ出す。
 
●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は起きません。

●ルチャレフの研究所について
 地下三階建ての建物でその室内は広い。
 地下二階半ばまで到達したボチャレフによれば、一階フロアには迎撃システムが多数搭載されており、地下へと至る階段までに駆け抜けても三十秒は掛かるという。
 地下一階はその迎撃システムに加えて自動人形が三体配置されており、これを機能停止させない限り地下二階へは迎えない。
 地下二階は微弱な電磁波によって力が抜ける現象が確認されており、破壊力が低下する。その状況下で自動人形を五体相手にしなくてはならない。
 地下三階の状況は不明だが、罠が待ち受けているのは間違いないだろう。

●自動人形について
 古代兵器のデッドコピー。
 格闘戦を主体としながら、銃器による中距離レンジ支配も行ってくる。
 耐久性に優れ、比較的攻撃力は高い。
 反面、反応や防御技術、回避に劣り、物理、神秘ともに有効打となりうる。

●電磁波について
 地下二階一帯を支配する電磁波は全ステータスを低下させる効果がある。
 半減とまでは行かないが、25%程度の低下は見越すべきだろう。
 但し、HPとAPは低下しない。

●戦闘地域
 鉄帝西側にあるルチャレフの研究所になります。
 室内ですが広々としており、通路での戦闘であっても十分レンジは取れるでしょう。
 障害物等なく、戦闘に支障のない場所となります

 そのほか、有用そうなスキルやアイテムには色々なボーナスがつきます。

 皆様の素晴らしいプレイングをお待ちしています。
 宜しくお願いいたします。

  • 鉄帝式教育的指導!完了
  • GM名澤見夜行
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年03月02日 22時35分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ナーガ(p3p000225)
『アイ』する決別
亘理 義弘(p3p000398)
侠骨の拳
ハイゼル=フォージ(p3p001642)
機械狂
ルーミニス・アルトリウス(p3p002760)
烈破の紫閃
オリーブ・ローレル(p3p004352)
鋼鉄の冒険者
ハロルド(p3p004465)
ウィツィロの守護者
エリシア(p3p006057)
鳳凰
リナリナ(p3p006258)

リプレイ

●トラップ&デストロイ
 鉄帝西側に存在するルチャレフの研究所は広大な敷地の上に建設されていた。
「こりゃ、なんとも金の掛かった施設だな」
 入口から内部の様子を窺う『義に篤く』亘理 義弘(p3p000398)がぼやくように言う。
 鉄帝ドリームを掴んだ父ボチャレフ。貴族となった父の財力を余す事無く投入した息子ルチャレフは、自分の為のおもちゃ箱を手に入れたようだった。
 ボチャレフより二階までの警備状況は入手している。
「あのバカ息子をどうか私の前に引き釣りだしてくれ!」
 そう言ったボチャレフは鉄帝人らしく巨躯のオールドワンだったが、あれだけのフィジカル、気迫を持ってしても潜り抜けられなかったこの施設には、たとえイレギュラーズであったとしても油断は出来ぬだろう。
 古代兵器を解析しデッドコピーを生み出したルチャレフの才能は確かなものであり、それを自覚していればラド・バウファイターへの道を選ばなかったというのも頷ける話だ。
「実に親近感を覚える話だね。
 僕はどちらかと言えばルチャレフ君の方に肩入れしてしまうよ」
 一階フロア、その壁端に設置された機械群を確認しつつ『機械狂』ハイゼル=フォージ(p3p001642)が薄く笑う。同じ趣味を持つ者としては、共感を得ると言うところだろうか。
 ハイゼルは一階フロアに設置された迎撃システムの位置をチェックし終わると、仲間達に地下一階への最小被害の最短ルートを告げる。
「練達製とはまるで別物って分かる機械達よね。古代兵器、浪漫を感じるわね!」
 壁に設置された大仰なシステム群を眺めながら『不屈の紫銀』ルーミニス・アルトリウス(p3p002760)が挑戦的に笑う。
 正面からの突破はイレギュラーズの役目だ。自慢の兵器群を突破してルチャレフに衝撃を与えるのも役目の一つである。
 ルーミニスは事前にボチャレフへと正面以外の出入り口に当たりを付けて貰っていた。ニートとはいえ出入りする事はあるはずとの予想だ。そうでなくても外からの来客(或いは宅配などを受け取る為の)を迎える場所があるはずだ。
 果たして、その裏口とも思える場所は発見される。目立たない取っ手のない扉のような壁にキーパッドが備えられたそこはまさに秘密の入口だ。
「ま、裏から入る事は叶わない以上、ボチャレフにはそこで待ってもらいましょう」
「それでは、自分達も進むとしましょうか。
 迎撃システムの解除が出来ない以上――正面突破しかありませんね」
 長大な両手剣を構え、『特異運命座標』オリーブ・ローレル(p3p004352)がフロアを駆け抜ける準備をする。
 迎撃システムの攻撃がどの程度のものか、それは実際に侵入してみないとわからないが、ボチャレフの言葉によれば、光線による散発的なビーム攻撃だという。大した事はないと言っていたが、それはオールドワンであり鉄帝人である彼の言葉だ。主観的な話すぎるので真に受けない方が身のためだろう。
「さて、存在がバレるかどうか。試させて貰うぞ」
 ロバ・ロボットを足下に配置しつつ、スペクターによってモニタリングから気配を消失させる『聖剣使い』ハロルド(p3p004465)がいくつかカメラに向けて鋭い視線を向けた。
 気配を消失させたモニター越し魔眼は効果があれば回避不能の力となる。今状況を確認しているルチェレフの様子がどうなっているかは分からないが、効果があるものと信じ行動するまでだ。
 準備が出来た者から、一階フロアの突破に掛かる。
 ホールへと踏み出した瞬間、四方より放たれる光線が輝く、瞬時に転がりながら回避、すぐに体勢を整えて奥へと走る。
「左手の壁にいくつかのエネルギー供給ラインがありそうだよ。破壊できるなら壁事壊してもらいたいね」
「オッケー!」「おー、まかせろ!」
 ハイゼルの指示に『矛盾一体』ナーガ(p3p000225)と『原始力』リナリナ(p3p006258)が即座に反応し駆ける。二人は力任せに壁へと攻撃を集中し、破砕するかのように叩き割った。
 小爆発と共に、一部電力が消失する。それに合わせていくつかの迎撃システムが音を立ててから沈黙した。
「散発的な攻撃はまだあるが……これならばそう大きな怪我には繋がるまい」
 仲間達の後をつけて駆ける 『解華を継ぐ者』エリシア(p3p006057)は今回回復の担当だ。
 被害を最小限にできたことで、少なからずホッと息を吐いた。
 先はまだ長い、精神力やスタミナ的なことも考えれば各フロアでの被害は最小限に済ませる事に越した事はないのだ。
「まあ、時間制限はないのが救いか」
 エリシアは事前にボチャレフより制限時間について無制限の許可をもらっている。さすがに何日もかけて攻略……とは行かないが、傷の手当て、疲労の回復などは少なからず行えるであろう。
 一階フロア、地下への階段にイレギュラーズが辿り着くと、迎撃システムが止まった。クリアと言うところか。まるでゲーム感覚だが、ルチャレフの趣味趣向というところだろう。
「次からはこれに加えて自動人形か。
 やれやれ、骨が折れるな」
 別確度の監視カメラを睨み付け魔眼を発動するハロルド。効果があるかは――モニタを監視しているルチャレフのみぞ知ると言うところだろう。
 イレギュラーズは、傷の手当てを行い小休憩を取った後、地下一階へと踏み込んだ。

「ふん、親父め。
 自分一人じゃ無理だと悟って傭兵でも雇ったな?
 だがそんじょそこらの連中がこのルチャレフラボを攻略できると思うなよ?」
 モニタを監視するルチャレフが愉快そうに笑みを浮かべた。
 まるでゲームを楽しむように、ルチャレフは自動人形の起動操作を行うのだった。

●オートマタ
 地下一階へと踏み込んだイレギュラーズは事前に立てた作戦通りに行動を開始する。
 まずはフロアに設置された迎撃システム、そして敵戦力の偵察だ。
「さあ、お前達行きなさい!
 え、なによその顔は……痛いのはイヤだ? いいから行きなさいっての!」
 偵察に貢献したのはルーミニス(の犬)だ。五感共有から遮蔽物の影に隠れたシステムを暴き出し、敵戦力を確実に把握できた。
「一階よりも迎撃システムの量が多いね。まあ動力系は同じようだから、一階と同じように破壊していこうか」
 システムの作りを予想するハイゼルが、ナーガとリナリナに指示をだす。破壊力に特化したナーガと、とりあえず難しいことができないリナリナにはこうした単純破壊が向いている。
「おー、カンタン! リナリナでもよく分かるゾッ!!」
「こうすればげいげきシステムをアイせるんだね! まかせて!」
 容赦のない破壊活動は確実に迎撃システムの攻撃性をダウンさせていた。
 その間にオートマタと押さえるのは義弘、オリーブ、ハロルドを中心とした前衛メンバーの役目だ。
「大仰な機械人形だが、単純な行動しかできないように見えるな」
 その動きから複雑な攻撃パターンを持ってないと見抜いた義弘が素早く懐へ飛び込んで、暴風を纏って自動人形を薙ぎ倒す。
「続きます、一気呵成に突破しましょう」
 兜に覆われた顔の下からくぐもった声を漏らすオーリブ。長大な両手剣を振るい、自動人形の生体機械めいた身体を叩き潰す。大きく踏み込んだ肉薄戦によって、自動人形の体勢は大きく崩れた。
「狙いは正確だが、殺意がたらんようだな――!」
 自動人形の注意を引いて、その攻撃の多くを引き受けるハロルドが気合い一閃、手にした聖剣を振るう。
 防御面に不安がある仲間を守りながら戦うハロルドのお蔭で、全体的な被害は最小限になっていたと言って良いだろう。
 迎撃システムの動力源を破壊していたナーガとリナリナも加わって、勢いままに自動人形を制圧する。
 重苦しい音を立てながら自動人形達が崩れ落ちると、室内に一際大きな音が響いた。フロア奥、壁のように思えたその場所が自動的に開き、地下への階段が現れたのだ。
「迎撃システムも止まったようだな。
 全員集まってくれ、順番に治療しよう」
 ヒーラーたるエリシアが声を掛け、一同を治療していく。
 分かっている情報だけでも、次は更に自動人形の数が増える。また、力を奪うという電磁波の存在も確認されているフロアだ。
 しっかりと傷を癒やし、休息を取ってから、イレギュラーズは地下二階へと足を踏み入れた。

●対親父撃退最終兵器メカボチャレフ
 地下二階に足を踏み入れて、最初に感じたのは鳥肌が立つような感覚だ。
 それはフロアに近づく程に大きくなって、最後には少しばかりの脱力と倦怠感を感じるようになった。
 なるほど、これは力こそ正義な鉄帝人に対して実に有効なものだと思えた。
「う~しびしびするよー!」
 思うように力の振るえないナーガが不満げに言葉を零す。
「自動人形は上にいた奴と同じだが、無駄に数が多いな」
「どうにか電磁波を止めたいわね! どこかに動力室はないのかしら!」
 自動人形の相手を務める義弘とルーミニスが声を上げる。ハイゼルが壁裏の配線を探るが、迎撃システムと違い動力源は別にあるようだった。
「これだけ大規模なシステムになれば大がかりな動力源があるはずだが――」
 ハイゼルがそう推察する最中、リナリナが何かに気づいたように声を上げた。
「おー、なんか怪しい道みつけたゾ! 引きこもり息子こっちにいるか?」
 猪突猛進リナリナが通路に飛び込み奥へと行くと、そこには巨大な機械――そうまるで何かの心臓部のような――ものが鎮座していた。
「怪しい、怪しい みんなに報告!」
 リナリナの報告にハイゼルが手を打った。
「なるほど、これはこの研究所の動力源本体っぽいね」
 すぐに配線の確認、電源のカットが行われる。妨害しようとした自動人形達は当然戦っていたイレギュラーズに阻まれ動けない。
 ブゥゥ――ン、と震動する音と共に、電磁波が止まるのを感じた。
 力が戻ってくる感覚に、ハロルドが何度か手を握り確かめる。
 漲るイレギュラーズ達の力を前に、感情を持たない自動人形達がしかし一歩後退した。
「反撃開始とさせてもらいますよ」
 武器を構えたオリーブが、気合いと共に自動人形へと肉薄した――

「これで良いだろう。さあ、最後の階へと向かおうか」
 エリシアが肩を叩き治療を終えた事を合図する。
 自動人形達を片付けたイレギュラーズは、これまでと同じように治療をし、疲労を回復させてから開いた地下三階への階段を降りていった。
 暗がりの道を注意しながら進むと、大きな広間へとでた。
 視線の先、一体の自動人形が腕を組み立っていた。
 その姿は――
「ふはは、良く来たな! ”七人”の無謀なる愚か者ども!
 親父に唆されたのか、金を積まれたのかは知らないが、俺をここから引っ張りだそうだなんて無理と知りな!」
 壁に設置されたスピーカーからルチャレフが声を上げる。フロアは最下層だ、となれば奥に見えるあの扉の先にルチャレフが居るはずだ。
「だが、ここまでだ。いきなり電源を落とされた時はどうしようかと思ったが、非常電源はまだ生きている!
 お前達はその目の前にいる僕の最高傑作、対親父撃退最終兵器メカ親父(ボチャレフ)の前に引き返すことになるのだ!!」
 言いたい事だけ言ってスピーカーが切れる。同時にメカボチャレフが腕組みを時軽快なステップを踏みながら拳を構えた。
 メカボチャレフ。
 ラド・バウ上位に入賞した過去のその姿を彷彿とさせる自動人形は、まさに当時のボチャレフを再現したかのように鬼神の如き勇猛果敢な攻めを見せる。
 それはまるで衰えた自身の父に当てつけるような、嫌味を含むルチャレフの遊び心か。
「まったく父親が好きなのか嫌いなのか、わからんな――!」
 高い反応を見せる義弘がメカルチャレフと至近での殴り合いを見せる。互いに譲らぬ肉薄戦は渾身の力を籠めた拳がぶつかり合って、勢いままに肉体を後退させ合った。
「援護する。その身を焦がせ――」
 隙を見たエリシアが自身の持つ権能を行使する。燃え尽きぬ業炎がメカボチャレフを包み込み尽きぬ責め苦を与えていく。
 その動きに呼応するようにナーガが動いた。
「ナーちゃんのイッパイのアイ、うけとって!」
 壁を構成する鉄板を引きちぎり、全力を持って投げつける。殺傷能力伴う投擲をメカボチャレフが拳で弾き飛ばす。しかしその時にはすでにナーガはメカボチャレフの背後へと回り込んでいた。彼女の”愛情表現”は古代兵器より生み出された生体機械をアイし打ち砕く。
 身体の損傷を感じながら、しかし感情持たぬ自動人形は自身の肉体硬度を無視した全力を叩きつけいく。
「くっ、とんでもない力だな――ッ!」
 これまでの戦いで完全な治療がなされたわけではない。攻撃を一身に受け止めるハロルドが強烈な一撃を叩き込まれ膝を付く。尽きぬ闘志はパンドラの輝きとなってもう一度戦う力を与えていく。
「るら~! 敵、大トマト! やっぱりぜんぜんトマトっぽく無いなっ! どの辺がトマトなんだ?」
 自動人形(オートマタ)を大トマトと勘違いするリナリナも、戦いの舞をきらさずに脳筋的突撃を繰り返す。
 野性的なリナリナの突撃は、機械の計算の埒外であり、効果的にダメージを与えていった。
「機械で上乗せされた力もあるとは思いますが――さすがに強敵ですね」
 無骨な両手剣で打ち合うオリーブは、常に一撃必殺の短期決戦を狙う。体力消耗のない機械が相手だ、長期戦になればこちらが不利なのは明白である。
 剣と拳が互いに弾き合い、緊迫の攻防を演出する。
「機械には機械、こっちも利用させてもらおうかな」
 ハイゼルはこれまでの戦いで打ち倒したオートマタの残骸を改造し作り出した固定砲台を起動する。そう威力の高いものではないが、援護射撃にはなるだろう。
 ハイゼル自身もまた、マジックロープによる援護を試みて、自動人形の神経回路を麻痺させていった。
「オォォ――ッ!!」
 気合いと共に聖剣を振るうハロルド。斬りつける度に光が聖剣へと収束し、それは超高熱を帯びるほどに圧縮されていく。
 横薙ぎの一閃がメカボチャレフの腹を割いた。業炎が迸り、傷口から燃え広がっていく。
 大きくバランスを崩したメカボチャレフにルーミニスが肉薄する。
「これで――終わりよ!!」
 放たれるヴァナルガンド・インパクト。全てを貫く衝撃波は恍惚というなの隙を与える。そこに踏み込んだルーミニスの憎悪の爪牙が、耐える事も許さぬ圧倒的な蹂躙を与え、遂にメカボチャレフの動力を停止させるのだった。

●ニートに情け容赦はいらない
「ば、ばかな――! メカ親父が負けるなんて!!」
 自室でモニタしていたルチャレフが頭を抱えて叫びをあげた。
「ど、どうする……このままでは俺の悠々自適な生活が暑苦しい肉体言語生活になっちまう!」
 オロオロと部屋の中を歩き回るルチャレフは考えに考え抜いて――そして。
「……よし、こっそり逃げよう」
 まるで現実逃避するかのように、無茶な逃走手段を選択した。
 音を立てぬように扉を開き、身を滑らせる。忍び足で一歩また一歩と裏口へと進もうとして……。
「おい」
「グェ」
 首根っこをハロルドに掴まれて悲鳴を上げた。
「う、うわぁ離せ……! って、誰だお前!?」
 ハロルドの事をモニター出来ていなかったルチャレフは初めて見る厳つい顔に二重の驚きで声を上げた。
「ま、姿は見せんようにしていたからな。
 ともかく部屋を出てきた以上、そのまま外にも出て貰うぞ」
「やめろー! 離せー! 自由を奪うな-!」
 ルチャレフの抗議の声を無視して、首根っこ捕まえたまま外へと連れ出していくイレギュラーズ。
 抵抗の意思を示しながら暴れていたルチャレフだったが、引き釣り役がナーガに変わった途端諦めるように無抵抗となった。
 諭すようにハイゼルがルチャレフに話しかける。
「ぐうたら上等、君の行動理念はこの道にいる物としては至極真っ当だ……しかし、それにはまず周りを黙らせないとな。
 戦いに使えそうな技術を売り込み、成果をあげれば、君が何をしてようが、文句を言う者はいなくなるだろう、行き詰ったなら、僕も協力するよ、ていうかさせろ」
 最後は古代兵器に魅せられた自分の欲ではあったが、この言葉には技術者らしさを感じて共感したようだった。
 エリシアも言葉をかける。
「大体の場合にて親は子より先に死ぬものだ。そうなってからでは遅い…一度顔を突き合わせ、満足行くまで語り合うのが吉だぞ」
「ま、一度満足するまで話して見る事だな」
 義弘も言葉を重ねる。
「アンタら親子って極端よね……お互いの良い所や凄い所を活かそうとか認めようとかしてみたらどうなの?」
 ルーミニスの呆れた言葉が投げかけられ、そして一同はボチャレフの待つ外へとでた。
「このバカ息子が――!」
 開口一番拳骨が放たれルチャレフが吹き飛ぶように見えて――その威力は最大限加減されたものだった。
「ふん、最後の最後で自分の力を発揮できんから外へ連れ出されるのだ。
 お前の才能も、実力も理解した。だが、それとお前自身が鍛えないことは別問題だ。
 明日から鉄帝的(誤字ではない)に扱いてやるから覚悟しろ!」
「ひぇぇー! 勘弁してくれぇ!!」
 才能は認めるとも、語り合うはやはり拳になるか。
 鉄帝式教育的指導の行く末を、イレギュラーズは想像するだに呆れるのだった。

成否

成功

MVP

リナリナ(p3p006258)

状態異常

なし

あとがき

 澤見夜行です。

 細かな点で作戦が良く練り上げられていて、大きな問題も無く成功となりました。動力源を探ったりするプレイングはとても良かったと思います。
 最後の門番が父親に似せたものであったりルチャレフ君は大分ファザコンダト思います。

 MVPは丹念に捜索を行っていたリナリナさんに送ります。息子は見つけられませんでしたが、代わりに動力室見つけたのでね。グッドでした。
 犬の酷使したルーミニスさんには称号が贈られます。わんちゃん労ってやってください。

 依頼お疲れ様でした! 素敵なプレイングをありがとうございました!

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