PandoraPartyProject

シナリオ詳細

騎士VS侍

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 深夜1時。幻想国内のとある平原に、大量の侍と騎士が突如として出現した。彼らは足もちゃんと付いており、普通に触れるが、れっきとした亡霊の一種である。 
 そんな彼らは出現時からそれぞれ侍陣営と騎士陣営にきっちり分かれ、互いに向き合っていた。
 そして騎士の軍勢の中から赤い甲冑を纏った騎士が進み出ると、剣を侍共に突き付ける。
「今日こそ決着を付けさせて貰うぞ、異国の兵士共!! この長きに渡る戦いは、我らの勝利で終わるだろう!!」
 恐らく騎士亡霊のリーダーなのだろう。その宣言に騎士達が一斉に湧き立ち剣を振り上げる。
 対する侍達はその熱気に反比例するかの様に、静寂を保ち続けている。そしてその中からゆっくりと、青の鎧を纏った侍が姿を現した。
「相変わらずの馬鹿騒ぎだな、騎士とやら。だが闘いに必要なのは言葉ではなく、研ぎ澄まされた武の技術だ」
 そう言い青い鎧の侍が刀を抜くと、他の侍たちも一斉に刀を抜く。開戦は間近。場の緊張感はピークに達しようとしていた。
「その生意気な口を叩けるのも今日限りだ!! 己が無力さに打ちひしがれ、消えゆくがいい!!」
「……始めるぞ」
 そして戦いは始まった。剣と刀が打ち合う音が幾重にも響き渡り、騎士共の雄叫びが轟く。
 しかしとにかく亡霊の数が多いこの戦いには全然決着が付かず、開戦からしばらく後に、亡霊共は霧の様に姿を消した。
 不思議な事に彼らは次の深夜1時には昨日と全く同じ数で姿を現し、似たようなセリフと共に開戦し、大体同じくらいの時間に姿を消す。そんな終わりの見えない戦いを延々と繰り返しているのだ。
 まあ本人達にすれば大事な戦いなんでしょうが、ここ最近毎晩の様にこんな音を聞かされ続けている近隣の村の人々はすごく迷惑しているので、村の誰かが不眠症で倒れる前に亡霊共を成仏させてあげた方が良いと思います。


「まあ、そんな訳でね。その近隣の村の村長から、ローレットに依頼が来た訳だよ。亡霊共を成仏させてくれってね」
 『黒猫の』ショウ(p3n000005)はそう言って、集められたイレギュラーず達に説明を始める。
「亡霊達は深夜1時に姿を現し、一定時間戦っていた所で姿を消す。これの繰り返しだ。そんな彼らを成仏させる為には、その一定時間の間に侍と騎士を残らず全滅させる必要がある」
 普段は決着が付かない戦いだが、イレギュラーズ達が加われば十分全滅させる事は可能だろうとショウは言う。
「彼らはとにかく数が多いが、個々の戦闘能力ははっきり言って滅茶苦茶低い。その低い能力の中でも攻撃力の低さはかなりの物でね。彼らの戦いに決着が付かない大きな要因の1つとなっている」
 更に言ってしまえば亡霊共は頭も大して良くは無く、イレギュラーズ達が『加勢する』という旨を伝えれば、何も疑われることなく騎士あるいは侍側の陣営に付くことが出来る。『さっきまで敵に付いてたけどやっぱり裏切ってこっちに付くよ』等の主張も普通に通る。
「その特性を踏まえて、俺からは4つの作戦を提示させてもらうよ」
 ショウが言う4つの作戦の概要は、大体以下の通りである。

(1)騎士勢力に加勢し、侍勢力をこてんぱんに叩きのめす。その後急に裏切って残った騎士達を殲滅する。
(2)侍勢力に加勢し、騎士勢力をぼっこぼこに殴り倒す。その後顔色一つ変えず本性を現し残った侍たちを全滅させる。
(3)未知なる第三勢力として戦いに参加し、手当たり次第にすり潰す。騎士と侍の間の戦いの手が止まるわけでもないので、特に問題はない。
(4)カオス、あるいは混沌。イレギュラーズ達は各々自由気ままに好きな勢力に参加し、敵対勢力の亡霊を叩き潰す。どちらかの陣営が全滅したらやはり残った連中を張り倒す。こちらも戦闘能力の差を考えれば別段問題なし。

「ちなみに戦闘場所はとある平原。開けた場所で、沢山の亡霊以外は特に何もない戦場だね。雪と草はあるかもしれないけど」
 そこまでの説明を終え、ショウはイレギュラーず達に改めて視線をやる。
「……と、まあ説明はこんなところかな。さっきも言った通り、敵は大した戦闘能力を持たない。きちんと攻撃さえしていれば、問題なく依頼を達成することが出来るだろう。亡霊共をきっちり全員蹴散らし、二度と騒音被害を出さないようにして欲しい。頼んだよ」

GMコメント

 のらむです。騎士と侍のプチ戦争に参戦し、彼らをぼっこぼこに殴り倒してきてください。

●成功条件
 亡霊共の全滅

●騎士亡霊
 凄く沢山いる。かなり弱い。
 長剣、盾、ハルバード、フレイル、ライフル等の武器を使い戦う。馬に乗ってる奴もいるが、馬も亡霊の一部。上に乗ってる騎士を倒せば同時に消滅する。

●侍亡霊
 めっちゃいっぱいいる。割とマジで弱い。
 刀、槍、戦槌、大砲、弓等の武器を使い戦う。やはり馬に乗ってるのもいるが、例のごとく亡霊の一部。乗ってる侍を倒せば同時に消滅する。

●シナリオ方針
 気軽に気楽に気兼ねなく、侍あるいは騎士の亡霊共をぶん殴れる依頼です。
 ほぼ確実に勝てます。ルール的に割と不利な感じがする飛行を使っても勝てるでしょう。時間もかなりたっぷりありますし、なんやかんやで勝てます。
 そういう訳ですので細かい戦略を考えてプレイングを書くというよりは、好きな武器を使い好きなスキルを使い好きな様に戦うのがおすすめです。
 使えそうなギフトがあれが使ってみるのも良いですし、使わなくてもいいです。
 如何に自身が格好つけたり格好つけなかったりして立ち回るかをプレイングに書いておけば、楽しく戦えると思います。気軽にご参加下さい。

 以上です。皆様のご参加、お待ちしております。

  • 騎士VS侍完了
  • GM名のらむ
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年02月19日 21時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

デイジー・リトルリトル・クラーク(p3p000370)
共にあれ
シグ・ローデッド(p3p000483)
艦斬り
ケント(p3p000618)
希望の結晶
フィーリエ・アルトランド(p3p000693)
侵食魔剣
Masha・Merkulov(p3p002245)
ダークネス †侍† ブレイド
セティア・レイス(p3p002263)
妖精騎士
ルーミニス・アルトリウス(p3p002760)
烈破の紫閃
エリニュス(p3p004146)
Liberator

リプレイ


 あと数分で、時計の針は深夜1時を指し示す。そうなればこのいつもの平原にいつもの様に亡霊共が姿を現し、いつもの様に決着の無い戦いを繰り返す。が、今日はいつもと違う点があった。それは、イレギュラーズ達の存在である。
「毎日毎日戦争だなんて、よくもまぁ飽きないものね」
 『Liberator』エリニュス(p3p004146)にとって、戦争とは日常茶飯事の物であった。が、エリニュスに言わせればこの平原で毎晩起きている馬鹿騒ぎは、到底戦争と呼べる代物ではない様だった。
「確かにこの場で起きているのは、永遠に続く不毛な争いだ……だけど。死してなお戦場へと立つ気持ち、自分にはとてもよくわかるよ」
 『希望の結晶』ケント(p3p000618)もまた、戦争とは常に隣り合わせな世界に居たらしい。しかし亡霊達に対する認識は、エリニュスのそれとは大きく異なる様だった。
「……おっと、時間の様だ」
 不意に、平原を包み込む冷たい空気に変化の兆しが見えた。どこからか湧き上がる異様な熱気。それと共に、亡霊共は瞬く間に姿を現した。
「時間通りだな侍共! 今日という今日は決着を……む?」
「……誰だ、こいつらは」
 普段ならば向かい合う形で陣を成す騎士と侍の陣営。しかし今日はイレギュラーズ陣営も加わり、三すくみの形で向かいあっていた。
「サムライ! 憧れのサムラーイがいっぱい! くぅぅ、心が震えるでありますなー!」
 困惑する侍と騎士をよそに、 『ダークネス †侍† ブレイド』Masha・Merkulov(p3p002245)のテンションは爆上がりしていた。まあ普段からこんな感じな気がしないでもないが。
「私たちはイレギュラーズ。この戦いに加わる第三勢力よ――そして、貴方達の戦いは今日で終わりよ。何故なら私達が今日此処に居るのだから……さぁ、武器を取りなさい」
 そして一歩前に進み出た『侵食魔剣』フィーリエ・アルトランド(p3p000693)が、剣を抜き侍と騎士共に宣戦布告する。
 その直後、上空から飛来した人影…… 『妖精騎士』セティア・レイス(p3p002263)が三すくみのど真ん中に着陸すると、抜き身の刀を振るいなんかめっちゃかっこいー感じの構えを取る。
「私もイレギュラーズ。妖精騎士『ミュルグレス』のセティア。いっとくけどこれ、地元じゃさいきょーの構えのまねだから」
 降下する前に思い切り上にぶん投げていた鞘をパシッとキャッチすると、セティアはめっちゃ眠そうな顔でドヤ顔をかました。
「イレギュラーズ……? 面白い。たかだか8人で一勢力を名乗るとはな。だが敵となるのなら、まとめて切り伏せるのみ!!」
「……問題はない」
 騎士と侍のリーダーが言い、それぞれの兵たちが一斉に武器を取ると、
「此度の戦いの味、しっかりと噛み締めるが良い。お主らにとっての最後の戦じゃ……さあ、皆の者。やってしまうのじゃ!」
 『大いなる者』デイジー・リトルリトル・クラーク(p3p000370)が仲間たちを鼓舞する様に高らかに宣告し、ついに開戦する。
「さーて、今日はいつもとは違うわよ。全員、未練も何もかも全部まとめてぶっとばして成仏させてあげるわ! 全力でかかってきなさい!!」
 我先にと敵陣に突っ込んでいった『白銀の大狼』ルーミニス・アルトリウス(p3p002760)。そして勢いのまま大剣で薙ぎ払うと、同じく突撃していた長剣兵を勢いよく斬りつけた。
 直後、ルーミニスの背後から一本の剣――剣に擬態した『KnowlEdge』シグ・ローデッド(p3p000483)が突如として姿を現し、大きく斬られ体勢を崩した長剣兵の胸を一気に貫いた。
「残念ながら騎士道も武士道も、私とは無縁でね」
 シグの呟きと共に、騎兵の身体は消滅した。まずは1体。だがまだまだ敵は存在する。イレギュラーズ達の長い戦いが始まった。


「混沌を統べる我が魔導の前に平伏すがよい! いざ! イレギュラーズ、アッセンブル!!」
 他の面々よりも結構な遅れを取り、Mashaもまた敵陣に混沌めいた名乗りを上げる。ロバに乗りながら。
「突撃ー!!」
 そして勢いよく声を上げるが勢いがあるのは声だけだった。ロバはのっそのっそと空気を読まず緩やかに進撃する。仕方ないからとりあえずMashaはその場から深淵なる漆黒の魔刃的な魔術を放っていたが、一向に速くなる気配はない。
「……ん、んー……突撃ー!! と・つ・げ・きーー!!」
 だがこの件に関して非があるのはロバだろうか。ロバは力強く多くの荷物を運んでくれるが、乗る人間はまれだ。そんなまれな人間だったMashaさんにもある程度非があると思う。アレな人間とか思ってないよ。
「……っていうか弱っ! サムライ弱っ! 隙だらけの拙者でも全然勝てちゃう! こんなの拙者のサムライじゃないでござるー!」
 ロバを土台とした半固定砲台と化したMashaは、嘆きながら魔術を撃ちまくっていた。
「アレは……敵を油断させる作戦? いや、多分違うわね……」
 味方の後方に陣を取った為、Mashaの激遅進軍をずっと見せられていたエリニュス。そんなMashaに接近してくる騎士達の存在を確認すると、弓を構え精神を集中させる。
「……さっさと終わらせたいわ」
 第一射。剣を振り上げた騎士の兜の隙間を掻い潜り、矢が命中、消滅。
「次」
 立て続けに第二射。大盾を構えた騎士の一瞬の隙を突き、胸に矢が命中、消滅。
「こうも数が多いと厄介ね、一体ずつ潰さないと」
 だが、しっかりと急所を狙えば一発で倒せる。それをエリニュスは確認した。
 感謝感激でござるよエリニュス殿とかいう叫びを聞きながら、エリニュスは坦々と次の標的を探すのだった。
「斬り捨てる!!」
「やってみなさい!!」
 侍が振り下ろした一刀を、ルーミニスは大剣の柄で軽く受け流す。そのまま力強く踏み込み一気に剣を振り上げると、侍の身体は一瞬で両断され、消滅した。
「ハハ、死んでるにしちゃ元気で愉快な連中ね! 何の因縁かは知らないけれど、まとめてぶっ飛ばしてやるわ!!」
 最前線にて猛攻を続けるルーミニス。その力を脅威と感じた侍と騎士が次々と攻撃を仕掛けてくるが、それらを力づくでねじ伏せていく。
「さぁ、どんどん来なさい! 久々に魂が震えるほどの強烈な一撃を浴びせてやるわ!! ……ってもう魂だけだったわね! まぁいいわ!」
 快活に笑って、ルーミニスは力強く跳躍。落下の勢いを乗せた大剣の振り下ろしで、刀ごと侍を切り伏せた。
「恐らく此方側の戦力の高さは騎士も侍も既に気づいてるでしょうけど……私たちに向け戦力を集中させたりはしてこないみたいね。好都合だわ」
 フィーリエは冷静に戦場の状況を把握しつつ、仲間たちに指示を飛ばしていた。敵兵の個々の戦闘能力は確かに低かったが、それなりの力を持つ兵の姿もいくつか確認できた。
「居たわ……あの槍を持ったデカブツを狙って! あいつは少し厄介よ!」
 フィーリエの呼びかけに応じ、矢やオーラの縄が巨体の侍に降りかかり、フィーリエもまた剣を構え接近する。
「ク……こざかしい真似を!!」
「ここは戦場だもの。敵を効率よく倒す為なら、小賢しい真似位出来なくちゃね」
 動きを阻害された侍の懐に一気に潜り込み、フィーリエは強烈な刺突を放つ。剣先は鎧を突き破り、その心臓の辺りまで一気に達すると、侍の巨体は霧の様に消えていった。
「さて、次ね」
 剣を構えなおしたフィーリエは乱戦エリアから離れ、再び戦場を見渡すのだった。
「やはり、この空気……戦場の空気は好きだな。立っているだけで気分が高揚する……さあ、見せてくれ。君たちの力を、意思を」
 軍馬に跨ったケントは、凄まじい速度と勢いで戦場を駆け抜け、敵兵を次々と切り伏せていた。
 だがケントの目標は歩兵ではなく、自身にとって相手取りやすいであろう騎馬兵だ。真っすぐと駆け抜け、ハルバードを持つ騎馬兵に一気に接近していく。
「来い! 叩き潰してやる!!」
「悪いけど、そう簡単にやらせはしないよ」
 ケントは振り下ろされた刃を短剣で受け流すと、そのまま騎馬兵の側方まで駆け抜けた。
 そして通り過ぎざまに剣を振るうと、一瞬にして撥ね飛ばされた騎馬兵の首が宙を舞い、地面に落下するよりも早く消滅した。
「良い調子だ……この空気、存分に味わうとしよう」
 軽く剣を払い、ケントは更なる進撃を続ける。
「うむ、皆奮戦しておるの。妾もそろそろ任務を果たすとしようかの」
 ふわりと馬から飛び降りたデイジーは、騎士と侍同士がぶつかりあう地点まで移動した。
 漁夫の利を狙う敵の出現かと騎士と侍が警戒したのも束の間、デイジーが放った魔力の弾丸が騎士の顔面を吹っ飛ばした。
「義によって助太刀じゃ、妾を讃えるのじゃ」
「あ、ああ……?」
 その言葉と同時に、デイジーはギフトを発動。普段ならばここまで強力な力を持たないギフトだが、力も頭も弱い亡霊侍はデイジーに恩を感じ、ほとんど無意識の内に武器である大砲を差し出してしまう。
「かような今にも消えてしまいそうな武器。貰ったところで長く使えるわけでも無いのじゃが――お主はもう用済みじゃ」
 そして丸腰となってしまった侍に向けデイジーは遠慮なく魔術を発動。氷の刃がその全身を一瞬にして貫いた。
「ふむ、大砲じゃの……中々に面白そうなのじゃ♪」
 デイジーのお戯れはまだまだ続く。
「さて、木を隠すならば森の中……とね」
 徐々に侍と騎士たちの数も減り、彼らの武器が次々と平原に積み重なっていく。恐らく時間が来ればこれらの武器も消えてしまうのだろうが、シグはこれを利用する事にした。
 剣へと擬態した己の身体を転がった武器の山に潜り込ませ、それに全く気付いていない侍や騎士共を次々と背中から斬りつけた。
「なんだ……一体何が起きている!?」
 謎の襲撃に身構えるシグの周辺に位置する騎士と侍達。自然と互いに背を護る様に、一か所に兵が固まっていく。
「中々良い状況だ。……ボーリングは得意ではなかったのでな……残しがあっても勘弁してほしい所だ」
 この段階でシグは剣形態を解除。丁度至近距離に立っていた侍に向け掌を向けると、放たれた衝撃波が侍の身体を吹き飛ばし、団子状態の騎士たちの身体に直撃させた。
「……スペアなら何とか狙えそうかな?」
 シグはすぐさま次の標的を見つけ、騎士ボウリングを続けるのだった。
「クッ……何なのだこいつは。全く攻撃が当たらない……!!」
「当然。そんな太刀筋、地元じゃ通用しない」
 ルーミニスと同じく、最前線で戦い続けているセティア。振り下ろされた刀を剣で受け流し、撃ち放たれた弾丸を翼を柄で受け止め、槍を構え突撃してきた騎兵の真下をするりと潜り抜けた。
 そして騎兵の下を潜り抜けたセティアは強く地を蹴り急転換。足と翼を用いた急加速で騎兵の背まで追いつくと、一気に剣を振るい。騎兵の背を瞬く間に斬りつけた。
「これが騎兵と歩兵の利点を併せ持つ妖精騎士の戦い方。エルフェンナイトは不可能を可能にする。知ってた? そしてこれがエルフェンナイトの奥義の1つ――」
 軽い口調と裏腹にマジでパネえ戦いを続けるセティアに、侍達は一斉に攻撃を仕掛けるが、セティアは涼しい顔でふわりと跳び、それらの攻撃をことごとく避けていく。
「光の粒子となってしまえば、攻撃なんて当たる筈ない。これ常識だから、覚えといて」
「……光の粒子? そんな風には見え」
「見えないはずないから」
「いや見えな」
「見えるから」
「見え」
「見えます。そして光ってます、話を合わせてください。納得できない気持ちは、わかる。けどこれ、現実だから」
「気持ちは分かるのかヨグゲッ!!」
 どうしても現実を受け入れられない侍に天誅を下し、次の相手を探すセティア。それから数人の侍と騎士に同じ説明をしたのだが、誰も受け入れてくれなかった。なぜだろう。
 そういった具合で次々と騎士と侍を薙ぎ倒していくイレギュラーズ達。一応侍と騎士は互いの数を削りあってはいるものの、イレギュラーズの攻勢は圧倒的であった。
 長きに渡って繰り返された戦いも、ようやく終わりを迎える。この戦場の全ての者達が、それを確信していた。
 

 闘いは続いた。大量の存在していた騎士と侍もその数を大きく減らし、両軍の大将の姿を捉えるに至った。
 長い戦いによって疲労こそあれど、イレギュラーズ達に目立った被害は無い。イレギュラーズ達はそれぞれいい具合に分かれ、それぞれの大将と対峙した。
「数えるのも馬鹿らしく思えてくる程の大軍だったけど……ようやくね。私の言った通りになったでしょ? 侍の大将さん。これで終わりよ」
「正直な所……これ程までに力の差があるとは思ってはいなかった。だが……やる事は最後まで変わらない。来い」
 フィーリエが侍側の大将、青い鎧の侍に告げると、青い侍は大太刀を手にしてそう返し、配下の兵と共に突撃する。
「焦る必要はないわ。冷静に取り巻きを倒して、大将を仕留める……それだけよ」
 フィーリエは槍を構え突撃してくる侍の猛攻を避け、取り巻き達を淡々と切り伏せていく。
「観念するでありまするぞ、大将殿!!」
 割とロバにも乗りなれてきたMashaが魔力銃を構え、増幅した自らの魔力を収束させていく。
「真の魔導はサムライの刀を凌駕するのでござる!!」
 そして銃口から放たれた眩い魔力の奔流が、青い侍の全身を焼き付ける。
「やはりやるな……ハッ!!」
 そして青い侍が大太刀を振るう。流石に大将というだけあってそれなりの力を持つのか、これまで攻撃を避け続けてきたセティアの腕を浅く斬りつけた。
「光の粒子に傷つけるとか中々やるじゃん。だけど地元じゃ、もっとパネえ奴がいっぱいいるから」
 そのまま前に踏み込んだセティアは羽を利用して高く跳びあがると、そのまま剣の重みを利用した一撃を青い侍の肩に刻み込む。
「くっ……!!」
 その一撃に思わずよろめく青い侍。しかしその直後、何処からか放たれた2本の矢が青い侍の両脚を貫いた。
「あまり時間をかけさせないで。……馬鹿騒ぎはこれで終わりよ」
 青い侍の両脚を撃ち抜いたエリニュスは、間髪入れずに再び矢を放つ。
 放たれた矢は正確な軌道で弧を描き、青い侍の脳天を撃ち抜いた。手にしていた大太刀が手から零れ落ち、青い侍は地に倒れ伏した。
「……ようやくか」
 そう呟いて、青い侍は塵となって消えた。

「グ……!! まさか本当に8人でこの戦いに決着を付けるというのか……!! 信じられん……!!」
 騎士側の大将、赤い鎧の侍は苦々しく呟くと、配下と共に剣を構えイレギュラーズ達と対峙する。
 そしてケントもまた剣を構え、赤い騎士と向き合った。そして1つの問いを投げかけた。
「確かにもうすぐ決着が付く……この不毛な争いに。だがその前に、1つ聞いておきたい……何故、戦う?」
「……さあ。考えた事も無かった。だがこの地に現れた瞬間から、目の前の相手が敵だと互いに理解していた。確かなのはそれだけだ……無駄話は終わりだ。行くぞ、イレギュラーズ共!!」
「……そうか。どうやら自分に出来るのは、終わらせることだけらしい。……戦場(ここ)に立つべきなのは、君たち死者ではない。もう、戦わなくたって良いんだ」
 向かってくる騎士達を斬り返しながら、ケントは静かに呟いた。
「ふわあ……妾はそろそろ眠くなってきたのじゃ。早く此奴らを片付けてしまうのじゃ」
 デイジーは後方にて呪術を発動。呪いが込められた赤黒い風が放たれ、取り巻きの最後の1体を包み込むと永遠に葬った。
「いい加減諦めるのじゃ……妾の為にも」
「グッ……!! 悪いが私はしぶといぞ! 貴様こそ諦めろ!!」
 デイジーが放った魔力の弾丸を受けながら、赤い騎士はそう返した。そして剣を構え、一気にイレギュラーズに突撃する。
「……っと、危ない危ない……確かにしぶといみたいだけど、流石にもう終わりだよ」
 突き出された剣を僅かに身を逸らして回避したシグ。そのまま両の掌に魔力を集中させていく。
「あれだけ派手にやっていたんだ。最期も派手にいこうじゃないか」
 そして至近距離から放たれた火花が赤い騎士の全身に直撃し、大きな爆発と共に吹き飛んだ。
「グ……おかしな術ばかり使う奴らだ……!!」
 そう叫び、負けじと再び剣を構え突撃する赤い騎士。大きく振り下ろした剣を、ルーミニスの大剣が受け止めた。
「バカ騒ぎする夢もお終いよ。成仏するまで相手してあげるからアンタもいい加減眠りなさいな」
 そう言って剣を押し返したルーミニス。恐らく次の攻撃で最後。そう直感したルーミニスは、そのまま凄まじい勢いで赤い騎士に飛び掛かる。
「これがアタシの全力よ……受けきれるものなら、受けてみなさい!!」
 渾身の力を込め振り下ろした大剣の一撃。赤い騎士はそれを受け止めようと剣を構えたが、余りに強烈な一撃は赤い騎士の剣を粉々に打ち砕き、鎧ごとその身体を断ち切った。
「ク……グ……!! ようやく終わったか……だがどうせなら、勝利というものを味わってみたかったものだ……」
 赤い騎士は最後まで立ち続けようともがいていたが、最後にはそう言い残し、消滅していった。


 闘いは終わった。全ての侍と騎士は掻き消え、戦場に転がっていた武具も跡形もなく消え去った。
 もう二度と、彼らがこの地に現れる事は無いだろう。
 骨も遺品も名前も無い。そんな亡霊達の為、ルーミニスを含む数人のイレギュラーズの手で墓が作られた。
 死して尚戦い続けた彼らに、せめてもの安息が訪れる様にと。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

これにて依頼完了です、お疲れさまでした。
またのご参加、お待ちしております。

PAGETOPPAGEBOTTOM