シナリオ詳細
そうは言っても身体は正直なダンジョン
オープニング
●ククク、上の口ではそう言っていても……!
「俺は歴戦の冒険者、アドベン」
カメラ(?)に向かって顔アップで自己紹介する40台なかばの男。
彼はゆっくりと歩きながら、しかしカメラ(ないけど)に向かって語り続けた。
「今まで攻略したダンジョンは数知れず。チョコイトダンジョン、ゴバーグ坑道、青晶洞窟……俺はあらゆる苦しみに耐えるハートと、あらゆる痛みに耐えるボディを武器にダンジョンを突破する。人呼んで、ダンジョンの鬼!」
効果線までつけてカメラ目線をしかけるダンジョンの鬼ことアドベン。
「そんな俺が攻略する次なるダンジョンは、ここだ」
そういってやっとむさ苦しいおっさんの顔から風景映像へと切り替わった。
岩岩しい入り口には鉄の扉がはめ込まれ、プレートには厳重そうな文字でこうある。
『この扉をくぐるもの。すべての希望をすてよ』
「フッ、見慣れた文句だ。どんな苦痛が待っていようと、この俺は易々と突破し――」
三十分後。
「はにゃああああああああああああああん! ちゅきちゅきいいいい! にゃんこちゃんにゃんこちゃんにゃにゃにゃあああああああああんはにゃあああああああああん! あっはおっほ! おっほっふぉ! にゃんこにゃんのおひげこしょこしょすりゅよおなでなでしよーねなでなで! なでなで! なでなでもっふもふ! あんまんみ! あんまんみ! ふぉふぉっふうううううううう!」
言語を忘れた生物みたいになっていた。
アドベンは大量の子猫になつかれまくり、ひたっすら快楽にひたった後、気づいたらダンジョンの外に裸でペッって放り出された。
「………………」
裸(慈悲として残された褌)でダンジョン前に正座し、アドベンは深く息をついた。
「……あらゆる苦痛に強いこの俺でも、快楽には勝てなかったヨ!」
●下の口ってどこについてるの? お腹?
「というおそろしいだんじょんがあるのです!」
そこまでの内容を紙芝居で説明していた『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)。
「人は苦痛には耐えられても快楽には耐えがたい。誰かがメッてしてくれるまで、お菓子を食べるのをやめられないこのボクのように……」
なんかためになることを言ってるようで言っていない。
ユリーカは目をカッと見開くと、満を持して依頼書を振りかざした。
「そんな『かいらくダンジョン』を攻略すると手に入るという『てぇてぇ玉』を手に入れるのが、今回の依頼なのです!」
依頼主は幻想貴族のコレクターらしいがンなことはどーでもいい。
「ダンジョンの中には大量のトラップが仕掛けられているのです。
これは『快楽の精霊』が起こした現実を区別がつかないくらい巧妙な幻術で、対象者が心からふにゃーっとなっちゃう幻を見せふにゃーってなってる間に身ぐるみはいで場合によってはモツも抜いておんもに放り出しちゃうのです。おそろしいのです……!」
もし快楽の罠を突破してダンジョンの奥まで到達することができたなら、快楽の精霊たちは合体し三つのビッグ精霊となって戦いを挑んでくるだろう。
これを戦闘で撃破すれば、はれて『てぇてぇ玉』を手に入れることが出来るという仕組みだ。
「まあビッグ精霊といっても成人女性くらいの身長しかないですし倒しても微精霊になって散るだけなのですけどね? このダンジョン自体が精霊たちの遊び場みたいなところがあるらしいのですけどね?」
そこにアイテムを取りに行かせる貴族もアレだが、遊びで最悪殺しかねない精霊もアレである。まあ人間と虫みたいに価値観が異なるのはよくある話。難しく考えてもしかたあるめえ。
「皆さんで力を合わせて快楽の罠を突破して! ビッグ精霊を倒し、てぇてぇ玉を手に入れるのです! のです!」
- そうは言っても身体は正直なダンジョン完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2019年02月13日 21時30分
- 参加人数8/8人
- 相談8日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●下の口って最初に言ったの誰なの
「チクショウ、なんてダンジョンだ!」
『盗賊ゴブリン』キドー(p3p000244)は壁を殴った。壁って言うか洞窟の岩壁を殴った。
「大抵のダンジョンは潜れる。宝箱や牢屋の鍵だって開けられる。けど……快楽にだけは! 弱い!」
「そのような困難な罠……我なくして攻略できようかいや出来ぬ!」
『悪の秘密結社『XXX』総統』ダークネス クイーン(p3p002874)がかぶせ気味に、そして巻き気味に言い切った。
だろう!? と言って振り返ると。
「………………」
『こげねこ』クーア・ミューゼル(p3p003529)がマッチの炎をじっと見つめる奇行に出ていた。
その炎を横からじっとみつめるユキヒョウ。もといアンシア・パンテーラ(p3p004928)。
この子らに話しかけるのはまずいと察したキドーが、問い詰めようとするダークネスの肩をガシッと掴んだ。
「覚めない眠りに堕とす魔術師とかいたけど、今度はダンジョンの妖精がそういう事するんだね」
『ただでさえ欲に弱いんだから無理はするなよ?』
「うー……分かってるけどさ。まあやるだけやってみるよ」
『不安だな……』
一方で内なるものと会話をしている『穢翼の回復術師』ティア・マヤ・ラグレン(p3p000593)。
「上の口は吸気口、下の口は排気口」
急に関係ないことを言い出した『二輪』アルプス・ローダー(p3p000034)のほうを見てみると、バイクの計器類に混ざってきゅいきゅい動くカメラが右へ左へ回転していた。
「貴族の集めるコレクターズアイテムが依頼の目的というのはよくある事ですが、これまた……変わったダンジョンにあるものですね?」
「とはいえ仕事は仕事。頑張って依頼をこなして、報酬を獲得しましょう」
『特異運命座標』モルセラ・スペアミント(p3p006690)が真面目の塊みたいなことを言うので、アルプスローダーは『はい!!!!』としか言わなくなった。
便乗するというか同意する形でぐっと拳を握ってみせる『木漏れ日の妖精』リディア・ヴァイス・フォーマルハウト(p3p003581)。
「精霊の悪戯で身ぐるみをはがされるわけにはいきません。精霊たちの罠を突破して、見事依頼を果たしましょう!」
ジブン岩でできてますといわんばかりの洞窟と、そこにごってりはめ込まれた鉄の扉。
扉のプレートにはこうある。
『この扉をくぐるもの。すべての希望をすてよ』
イレギュラーズたちは頷き合い、扉を開いた。
●十人十色の快楽
「あー、いい。路面の感じが……あー、いいですー……あー……」
アルプスローダーは地面に横たわり、只管タイヤを回転させ続けていた。
コミュニケーションアバターも消失し、ぱっとみただの事故ったバイクである。
「夢にまでみた鈴鹿ー……風が……チェッカーフラッグがー……」
ぶおんぶおんをエンジンを唸らせるアルプスローダー。
「へへっ、こいつマフラーからこんなに音を出してやがるぜ。だらしなくスピードメーターあげてよお! おらっ、もっとハンドル振れよ!」
キドーが舌をべろんと出しながらげらげら笑った。
「え、なんですそれエロ本の台詞なのです?」
焼きます? と松明を顔に近づけてくるクーア。
キドーはぶんぶん首を振った。
「ちげえよお! 必要だと思ったんだよお! 読者が求めてるんだよお!」
「どこの時空の読者ですか」
クーアはコホンと咳払いすると、竹籠ゲージを開いて飼い猫を抱き上げた。
「ここはねこのもふもふで正気に戻って貰いましょう。誰だってネコをもふれば喜びの声を上げるものなのです。さ、ルード」
ネコをアルプスローダーのシートに置いた、その途端。
「あああああああああああああああああああああ! お客様ああああああああああ困りますお客さあああああああああああああああああああああああああ!」
ハンドルをぶんぶんふってもがきはじめた。
「おや? なんだか予想外な反応が……キドーさん? キドーさ……」
振り返ると、キドーが地面に横たわっていた。
「ヘッヘッヘ、酒池肉林とはこのことだぜェ。いんや酒の海に肉の森だな。なあキョーダイ! やっぱ三賊同盟は最高だぜ……!」
とかいいながら水の入った瓶を寝ながらラッパ飲みしていた。
「大変です! キドーさんも精霊の誘惑に……!」
がくがくと肩を揺すってやるクーア。
「うひょー、ねーちゃんもっとぬげー」
「いい夢を見ているようなのです。放って置いてあげましょう」
「いや、放って置いたらだめですよ!」
スッと手を離したクーアにかわって、リディアがキドーの背中をキャッチした。
「ど、どうしましょう……」
「確かキドーさんは犬がお嫌いだったはず」
「わかりました! やってみます!」
リディアは真面目さ100%の純度でその場にかがみ込むと、両手をついて顔を上げた。
「わんっ!」
「「…………」」
「わんわん! くぅーん……ひゃん!」
寝転がってくねくねとするリディア。
一同は一旦眉間に手を当て、顔をそらした。
「なんだろう。見てはいけないものを見せられている気がする」
アンシアが咳払いすると、キドーが『いぬぅ!』とか言いながら飛び起きた。
「でも可愛いのは正義だと思うな」
ティアがソファに座って岩と戯れていた。
ほんわかした表情のまま岩に抱きついたり岩にほおずりしたりしていた。
首を傾げるアンシア。
「岩とたわむれる趣味が?」
「ち、ちがうとおもいます」
首を傾げるキドー。
「なるほど酒池肉林パターン」
「ちがうとおもいます!」
両手をグーにして上下にぶんぶん振るリディア。
「精霊の誘惑にかかっているんです。誰か目を覚ましてあげてください!」
「よかろう。任せておけ!」
ダークネスが胸を張って前に出た。
カッと目を見開き、顔の前に手を翳す。
「トリプルクロスに伝わる悪の必殺技を今こそ解き放つとき」
「いま必殺っていいました?」
「受けよ……!」
ダークネスはティアの額に右手を叩き付ける……とみせかけておでこをぴんってした。
「だくねすでこぴんっ」
「あうっ」
額をおさえて『わたしはいったい』となっているティアを横目に、モルセラは通路の先へと歩き出した。
「もういいわね。さっさと言って目的の品物を手に入れましょ」
「わんっ!」
「もういいのよ犬のマネはしなく……て……も」
振り返るモルセラ。
寝転がるリディア。
土の塊をとりあげると、胸に抱えてごろごろ転がり始めた。
「あらあら、可愛いでしゅねー。もふもふしてあげましょうねー」
「……」
「わー、こっちにも。みんななでなでしああげますからねー。順番ですからねー」
ごろごろしながら手足をばたばたさせるリディア。
ダークネスがキリッと振り返った。
「必殺技の出番か?」
「いやまて、私にいい考えがある」
アンシアが手を翳し、リディアの前にかがみ込んだ。
リディアのスカートの裾をつまむ。
身体を傾ける。
「もふもふーもふもふー」
「…………」
「もふもふーもふもふー」
「…………」
「もふもふーもふもふー」
「…………」
「もふもふーもふも……」
「…………」
「あの……」
「気にしないでくれ。可愛い下着だな」
「ちょっと!?」
スカートを押さえて跳ね起きるリディア。
「罠にかかったらこうしろという約束だろう。……よくこれで合意できたものだが」
「へんないいかたしないでくださいっ!」
「なるほど合意の上なら犯罪じゃないな」
キドーがうんうんと頷いていると、クーアがまた松明の炎を見つめて目をかっぴらく奇行に出ていた。
日常的に白い粉を吸ってる人みたいな目ぇしていたので揺り起こそうと歩み寄ると……。
「もえるもえるもえるもえるあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあああああああああああああああ」
とか細い声で呟いていた。
『そっとしておこう』
『たたき起こそう』 ←(ぴっ)
ティアがバケツにくんだ水をクーアのあたまからばしゃー。
その隣ではモルセラが椅子に座って安らかに微笑みながらずっと壁を見ていた。
さっきのティアを見た直後なのでかなり危ない人に見えるが、これも精霊の罠。
「どうやら、モルセラは家族の幻を見ているらしいな。里が一番の安らぎってことなんだろう」
キドーはモルセラの肩を掴むと、ゆすりながら大声で呼びかけた。
「オラッ目を覚ませ! お前の側に居るのは家族じゃあねえぞ! 得体の知れねえクソ妖精だ! あと放火魔とかバイクとかゴブリンだ!」
「はっ」
いけないいけないと首を振るモルセラ。
「私まで罠にかかるなんてね。けどもう充分よ。先に進みましょ」
椅子から立ち上がるモルセラ。
ふと見ると、アンシアがなんともいえないかんじになっていた。
なんともいえないというのはこう、なんともいえないかんじである。
「え、これは、え、なに、どういう状態?」
「分からない。本人に聞いてみないと」
モルセラとティアがまわりをくるくる回ってみるが見向きもしない。どうやら何かしらの幻を見ているっぽい。
その一方で、ダークネスが椅子の上に立って高笑いをしていた。
「はーっはっはっはっはっは! 世界征服は目前だ!」
「こっちは分かりやすいな」
「何より見た目が分かりやすいですから」
うんうんと頷くキドーとリディア。
「で、この二人はどうやって目を覚まします?」
「軽い打撃を与えれば目を覚ますんじゃないかしら」
モルセラが分厚い本を持って卓球のラケットのようにぶんぶんし始めた。
「いや、体当たりすくらいでいいのです。怪我してもいけないですし」
「なるほど、話は聞かせて貰いました」
ぶおんと音を立てるアルプスローダー。
「あ、いや」
「いきます」
スーパー反応速度でクーアの制止より早く走り出したアルプスローダーは、ダークネスとアンシアに『たいあたり』をした。
キキーッ、ドウッ。
●バイクにはねられると上下左右の感覚がしばらく無くなるよね。わかるわかる。
なんやかんやでダンジョンの奥へたどり着いたイレギュラーズたち。
「フウ、なかなかしんどいダンジョンだったぜ」
キドーは脂汗をぬぐい、来た道を振り返った。
「ああ、まったくだ。我がついていなければどうなっていたことか」
血まみれの腕を庇うようにしながら目を閉じるダークネス。
「あ、あのー……」
リディアがおずおずと手を上げる。
上げて、モルセラと一緒にゆっくりと振り返った。
だいたい距離50メートル幅15メートルくらいの直線フロアがあった。
「ダンジョンって、本当にこれだけなんでしょうか?」
「これだけなのでしょうね」
クーアがピッと目の前の扉を指さした。
『らすぼす在中』とプレートに書かれていた。
それもなんかカフェの『開店中』みたいな小洒落た木製プレートだった。
「在中て」
「意味は間違ってないかな」
ティアが咳払いでもするように喉を叩いた。
「しかし、距離や時間は関係ない。ここまで来るのに相当な苦労をしたのはまぎれもない事実だ」
アンシアがこっくりとうなずき、赤くなった頬をさすった。
「なんかすみません」
アルプスローダーが申し訳なさそう(?)にアイカメラを向けてきた。
なぜか堂々とした顔で手を翳すダークネス。
「気にするな。悪の総統は怪我をするものだ」
「そうかなあ」
「ヒーローのバイクに撥ねられるのは慣れている」
「そんなピンポイントに……」
「…………」
案外人ごとじゃない、とか思ったアンシアは頬をさすりながら肩をふるわせた。
「まあ、とにかくたどり着いたんだ。最後の戦いに挑むぞ」
おう! とか、はい! とか声をあげてドアを開き、突入する八人!
待ち構えるのは、合体したビッグ精霊三人衆。
「はい次右手を黄色」
「ンッ――もうむり、むりむり!」
ゆけむり精霊とおいしい精霊がツイスターゲームで遊んでいた。
なんかぐねんぐねんに絡まっていた。
ルーレット回す係をしていたもふもふ精霊がハッとして顔をあげ、手のひらにマジック(?)で書いたらしいカンペを読み始めた。
「あっいけないダンジョン攻略されてる! えーっと、よくぞここまで来っ――!?」
キキーッ、ドウッ。
アルプスローダーに撥ねられて壁に頭をめりこませたもふもふ精霊が、じたばた暴れてから首を引っこ抜いた。
「死ぬところだったわ!」
ギプスで腕を吊るして身を乗り出すダークネス。
「むしろなぜ死なない。不死身か!?」
「おまえが言うのか、それ」
「すみません。つい身体が勝手に反応しました」
謝りはするがやめはせんぞ、というスタンスでもう一回撥ねる準備を整えるアルプスローダー。
ぽろろーんとアコースティックギターを弾き始めたリディアが納得したように頷いた。
「わかります。もふもふ精霊さんももふもふですから、飛び込んでいきたくなりますよね」
「ちがうそういうじゃない」
「フッ、これだから総統じゃない者は鍛錬がたらんのだ」
すごくピンポイントなあおり方をするダークネス。
「もふもふとはただもふもふした毛並みのみに非ず! もふもふしもふもふされもふもふし合う事で互いが互いを認め合い引き立てあう行為である! 一方的なもふもふの押し付けなど効かぬ!」
と言いながら、両手がぷるぷるしていた。
同じく手がプルプルしているキドー。
「お前誘惑に負けそうになってないか」
「貴様こそ」
「フヒヒヤバイよ、あのおいしい精霊からあぶり焼き骨付きソーセージのにおいがするんだよ。ビールのにおいもするんだよ!」
「えっそうな――いやいや、いくら美味しかろうと無理に食えば辛いのみ! 食う事は苦行に非ず! 節度を持って楽しむ事こそおいしい料理に対する礼儀である!」
「腹一杯喰った方が幸せに決まってんだルルォ゛!!」
「どっちの味方だ貴様ァ!」
ア゛ア゛!? とにらみ合うダークネスとキドー。
「まあまて、感情を殺せばこの程度の誘惑、なんということもない」
アンシアはキリッとした顔で振り返った。
仰向けに寝転んだ状態で振り返った。
リディアの足下で寝転んだ状態で振り返った。
「ちょっと!?」
「いかん、目がすべった」
「目が!?」
「どうだゆけむり精霊とやら。いやんな気持ちにしようとしても既に満たされた者の前ではもはや無力だろう!?」
「そういうものなの? 魔法って、もっと強引なものだと思うけど……」
モルセラが怪訝そうに精霊のほうを見る、と。
ゆけむり精霊ががっくりと(ツイスターシートに)膝と両手をついていた。
「無力だ!」
「無力なの!?」
「三次元には勝てない!」
「三次元とか言わないでください!」
「はい、私もふもふ対策考えたのです」
クーアがぴーんと手を上げた。
「もふもふにはもふもふをぶつけんだよ! です。なにせ私自身がねこ。このもふり力をもってすれば」
「えっネコ!?」
アルプスローダーのヘッドライトがカッとクーアを照らした。
「ひい!?」
「ひい!?」
瞬間的なトラウマに引きつる二人。
お互いやったかやられたかした過去があるらしい。鉄帝のサーキットとかで。
「とにかく。わたしのもふりぢか――」
「あ、ごめん。やっちゃった」
ティアが魔術の槍をもふもふ精霊にぶっさして壁にピン留めしていた。
サァーっと消えていくもふもふ精霊。
「やっちゃってたのです。ではおいしい精れ――」
「「あっ、ごめん」」
キドーとダークネスが交差斬撃反転見栄切りポーズでこちらへ振り返った。
背後でX字の光に切り裂かれて爆発四散するおいしい精霊。
「やってしまった」
「うまそうでつい」
「ついやってしまったのですか。では残ったゆけむり精れ――」
「あっ、ごめん」
「今度は誰ですか!」
キシャーと振り向くクーアが見たものは。
さびっさびになったアルプスローダーと申し訳なさそうにこっちを見るゆけむり妖精だった。
「入れたらどうなるか知りたくてついやっちゃった」
「ついやっちゃったのですかー」
とかいいながらすかさずクーアアイアンクロー。
「恍惚とかやめてほしいのです。お色気とかガラじゃないのです」
「アイアンクロー(顔面を鷲づかみにするプロレス技)かけながら言う台詞じゃないわね」
「すまん。微力ながらフリには応えておく」
アンシアが華麗なスライディングかつシリアス100%の決め顔でクーアの足下に滑り込んだ。
「無理にやれとはいってないのです!」
サラァっと消えていくゆけむり妖精。
それを見届けて、モルセラは部屋の奥に設置されていた『てぇてぇ玉』を手に取った。
「えっと……もう帰っていいのよね?」
「「いーよー」」
分散してばらばらになっていた精霊たちがフツーに応えた。
こうして、イレギュラーズたちは無事(?)『てぇてぇ玉』を手に入れることに成功したのだった。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
めでたしめでたし!
GMコメント
【快楽の罠】
ダンジョンの途中には幻覚を見せる罠が仕掛けられています。
罠っていうか、空気中の精霊が『本人にしかわからない幻覚』をダイレクトに見せてくるので避けようがありません。
なんやかんや工夫してものっすごく頑張ると避けられますがその場合リプレイの美味しいところを食べ損ないます。
この罠を突破するために、プレイングに以下の二つを書きましょう。
・自分だったら逃れられないであろう快楽のパターンを書く
→子猫に囲まれたり、好きな食べ物に囲まれたり、温泉でのびたり。
・幻覚にとらわれている仲間を正気に戻すためのアクションを書く
→頬をベシッてしたり、なにか苦しいおもいをさせたり、大声でがたがた揺すったり。
また、相談の時に『実は俺、○○だけはだめなんだ』とカミングアウトしておくことで仲間が解除アクションをかけやすくなり、『この人の担当はこの人』って具合に決めておくと解除アクションを絞れるので(7人分書くと絶対キャパオーバーで死ぬので)とってもお勧めです。
要するに、解除する相手を決めておきましょうという話です。
特定の快楽にピンポイントで効きそうな技術をもっている人、とかもいると思うので、お互いの技能を提示しあっていい具合にきめておきましょう。
最悪ビンタでもいいです。ダメージかさみますが。
※ないとは思いますが、もし罠を突破できない場合ダンジョンのそとにぺいってされた上パンドラが減ります。かつ、この後の戦闘に参加できなくなります。
【ビッグ精霊との戦い】
よくぞここまでたどりついたーとか言いながら精霊たちが合体。ビッグ精霊となって勝負を挑んできます。
・ゆけむり精霊
温泉の暖かさと女湯や男湯のロマンを詰め込んだ精霊。あっつい煙【業炎】やいやんな心【恍惚】をぶつけてくる。ちょっとした誘因効果もある。
・もふもふ精霊
にゃんこやうさぎやひよこちゃんなどのもふもふした生き物のもふもふ感だけを詰め込んだ精霊。めっちゃもふもふしてくることで謎の精神ダメージが入る。具体的には【崩し】や【弱点】といった攻撃をする。
・おいしい精霊
誰だって美味しい者には弱い。そんなおいしさの要素を大量に詰め込んだ精霊。相手のお腹をぱんぱんにして動けなくしたり【麻痺】、口に沢山詰め込んでしゃべれなくしたりします【封印】。
あえて撃破順とか決めずに『攻撃への対応策』を優先して書いておくことをお勧めします。
なんでかっつーと誰が残ってても同じくらいに面倒だからです。あと多分楽しいからです。
【アドリブ度】
ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用くださいませ。
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