PandoraPartyProject

シナリオ詳細

吸血鬼狩りを騙る不届き者達へ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 月明かりの夜。
 雪が薄っすらと道を覆う。
 幻想にある小さな町。人気のあまりない場所で、一人の少女が四人組に囲まれていた。
「なんで、なんで私が……私が何をしたって言うの!?」
 貴族であろうか。やや豪奢な衣装と整った化粧を施された少女が、悲痛な声で叫ぶ。
「……黙れ吸血鬼! この穢れた化け物め!!」
 四人組の一人、フードを目深にかぶった女が、静かに声を上げる。
「何のことよ? アンタたち、誰かと勘違いしてない!? 落ち着いて、今ならまだ間に合うわ」
「黙れ黙れ黙れ!! その金色の髪、紅の瞳、鋭い犬歯が何よりの証拠! 貴様のせいで!」
 憎悪に満ちた瞳で、女が少女へ剣を突き付ける。
「ひっ! お、おおお、降ろしなさいよ。その物騒な――」
 声を上げる少女へ女は静かに剣を押し出せば、少女の目が開かれた。
 震えながら少女が女の方を見る。女はそれを見下ろして、ぐりぐりと剣を動かした後、少女に足を置いて――思いっきり引き抜いた。少女の身体が力なく落ちて、そのまま崩れ落ちた。
「吸血鬼なんて、全員死んでしまえばいいのよ」
 女が剣に塗れた血を拭って近くにいた一人に手渡せば、その影が布に火をかけて完全に処分する。
「おい、終わったならずらかるぞ」
 不意に、四人組の向こうから男の声がする。
「分かってるわ。私だってこんな汚らわしい物の前に居たくないわ。で、あんたらの方もちゃんと殺したんでしょうね?」
「当たり前だ。駄弁ってる場合ではないぞ」
 男の更なる催促に女も頷き、その場を立ち去っていく。人々の恐慌と悲鳴が町中に響き始めた。


 からんと鈴が鳴り、一人の女性が入ってくる。フードを目深にかぶっていて容貌は分からない。かろうじて胸元のふくらみから性別がわかるぐらいか。
 店内を見渡して、やがてやや足早にカウンターへ向かう。
 同じようにフードを目深にかぶった人物が、グラスを一つ、女の前に差し出して。スッとメダルを一つ。
「どうだった」
「えぇ、次の奴がかかるのももう少しね」
「ハッ、鉄帝様様だな。力がすべてのこの国ならば、吸血鬼を殺してもそれが勝負なら多少許されるからな」
「えぇ……次も殺さなきゃ。吸血鬼は殺す。絶対に生かしてなんて置くわけにはいかないわ」
 メダルをぎゅっと握って、女が怨嗟に満ちた声を漏らし、男から貰い受けたカップをぐいっと煽る。
 一気に飲み干した後、ぷはぁっと一息もらす。微かな酒気は、酒場の空気に交じって消えた。


 ローレットに訪れたイレギュラーズの前に、警察組織風の女性が立っていた。
「こんばんは、イレギュラーズの皆さま。皆さまもラド・バウへ訪れたことはあると思われます。一つ、そこである八人組をぶちのめしてきていただけませんか」
 沈痛な面持ちで女性が言う。
「実はですね。とある貴族領で殺人事件がありまして。しかもこれが、複数の貴族の領地でもいくつかあったのですが、犯人は捕まりませんでした。捕まらなかったのですが――最近ですね、ラド・バウにて八人組の登場があったのです」
 そう言いながら、彼女は八人分の資料を君達へ差し出した。
「その八人組が、恐らくはこの事件の犯人グループでした。ただ、私は幻想の警察組織の者。国境を越えられたのは腹立たしいのですが、そこはそれ、仕方がありません」
 何の証拠があってそう思っているのか、そう考える君達の視線に気づいたのか、更に別の資料を差し出してくる。
「この事件で狙われていた被害者達は共通して金髪紅眼で犬歯が目立つ少年少女でした。件のラド・バウの出場者たちはこの被害者達と同じ特徴を持つ人物だけは再起不能――それこそ亡くなった方もいるようです。そして彼らがラド・バウへ逃れた辺りから、幻想で事件は起きなくなりました」
 それらの情勢を集めて精査して、彼らが犯人だろうと判断したのだろう。
「……一人、奇跡的に助かった人がおりました。その人物に八人組の顔を見せてあげたそうです。その人物は一人の顔を見た瞬間、一瞬だけ顔を引きつらせたそうです」
 そこまで言って、女性は言葉を切った。

GMコメント

 こんばんは、春野紅葉です。
 というわけでヴァンパイアハンターを騙る殺人鬼共にお灸を据えにラドバウでバトルと参りましょう。

<オーダー>
 ヴァンパイアハンターを騙る八人組を倒す。

<敵情報>
・基礎情報
全員が皆様と同等からやや格上です。
回復役2人を用意して、それ以外の全員で殴り続ける分かりやすい脳筋なパーティです。
基本的には弱っている者や非力そうな人から攻撃してきます。
ただし、イレギュラーズの中で
『1:金髪紅眼、鋭利な犬歯』を持つ方
『2:クラス・ブラッドイーター』の方
がいれば優先的に狙ってきます。

・スペック
〔前衛〕
【エドナ】
吸血鬼に対する悪意や執着は八人の中で随一。
茶色の短髪と金色の瞳をした女です。
片手剣を装備しています。
《狂戦士、理性消失》

【ゲルダ】
青色の髪と瞳をした女性です。
ハンマーを装備しています。
《ケンプファー、オーラバトル》

【グラディス】
冷酷で豪快な大男です。
狡猾で自らのためには何でもするタイプ。
武器も武骨な大太刀です。
八人の中では一番強いです。
《剣豪、邪剣》

【セリーヌ】
グラディスの愛人。軽薄な性格をした女です。
マジックガントレットを用いての近接戦闘が得意のようです。
《暗黒魔導、ダークネス》

〔後衛〕
【シェリル】
物静かな物理型スナイパーです。
狙撃手らしく、非常に落ち着いた性格です。
《シュートアデプト、S・スコープ》

【ケネス】
神経質な神秘型です。
神経質すぎて逆に常に切れているタイプ。
《ソーサラー、大魔術》

【ジュリア】
一見すると温厚な回復役です。
ふわふっわした性格。
《ホワイトアデット、賦活》

【シャンタル】
ゲスい性格をした回復役です。
より長く傷を負って苦しむ姿を眺めるために敢えて回復役として活動しています。
《ビショップ、神聖保持》

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

  • 吸血鬼狩りを騙る不届き者達へ完了
  • GM名春野紅葉
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年02月09日 21時50分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧 (8人)

ナーガ(p3p000225)
『アイ』する決別
日向 葵(p3p000366)
紅眼のエースストライカー
レイチェル=ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)
蒼の楔
リースリット・エウリア・ファーレル(p3p001984)
春告げの
ヒィロ=エヒト(p3p002503)
きつねに続け!
シャルロット・D・アヴァローナ(p3p002897)
オトモダチ
サイモン レクター(p3p006329)
パイセン
アトゥリ・アーテラル(p3p006886)
反撃の雷鳴

リプレイ


 煉瓦が綺麗に敷き詰められたフィールドの真ん中あたりに、十六人の人影がある。
 観客席にいるまばらな人々は、新進の八人組と近頃よく聞くイレギュラーズの戦いを見に来たのか、或いはそれ以外なのか。
(『吸血鬼』さんはナーちゃんもアイしたことあるよ! でもわざわざ『吸血鬼』をねらってアイするヒツヨウはないしとおもうんだけど……? ナーちゃんにはよくわからないや)
 ボーくんを担いだ『矛盾一体』ナーガ(p3p000225)は不思議そうに首をかしげる。
「吸血鬼狩りって言われるとこれは他人事には出来ねぇっスよ。自分の勝手な物差しでイメージ悪く言われちゃこっちだって気分が悪ぃ」
 そういうのは『紅眼のエースストライカー』日向 葵(p3p000366)だ。故郷の世界で吸血鬼と眷属の仮契約を交わした半吸血鬼ともいえる彼としては、イメージを悪化させられるのは気にくわない。とりあえずぶっ飛ばすと決心を固めている。
「……やり過ぎたなら、落とし前は付けねぇとなァ? 殺したのが吸血鬼とは限らねぇ。その罪は大きい」
 そう言う『蒼の楔』レイチェル=ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)は正真正銘の吸血鬼。
 敵が狙ってくるという条件にはほぼ合致しないが、唯一、彼らにとって特徴的とも感知されそうな牙は口元に巻いた布で隠している。
「見た目だけで理由もなく再起不能にされたり――殺されたりなんて、理不尽で非道すぎるよね! そんなの許せないよ!」
 『夢見る狐子』ヒィロ=エヒト(p3p002503)は瞳の色を隠すために用意したサングラスの奥、綺麗な緑色の瞳で敵の八人を見据えている。
「えぇ、狙われたのは全員金髪で紅眼、と。随分と具体的なのは、何かしらの経緯があると言う事なのでしょうが……」
 口元を袖口で隠し、静かに思案する令嬢を言った雰囲気をみせる『終焉語り』リースリット・エウリア・ファーレル(p3p001984)の仕草は、ここにおいては敢えての物。
 真正の吸血鬼の隣で金髪紅眼――敵が標的としている吸血鬼の特徴二つを見せておけば、自分も囮の一人に成りえるという考えからだった。
 そして、その判断は正しかった。八人のうち、茶髪の女――エドナが金色の瞳に殺意をのせてリースリットを含む三人の方を真っすぐに見つめているのだ。
「吸血鬼に私怨があるみてえだが、吸血鬼と一般人の見分けもつかねぇとはとんだ迷惑な素人だな」
 そういうのは『吸血鬼を狩る吸血鬼』サイモン レクター(p3p006329)だ。
 餅は餅屋、魔種にはイレギュラーズ、専門家には専門家を。ならば、吸血鬼には吸血鬼。元の世界では人に仇なす吸血鬼を狩る部隊に所属していた彼枯らしてみれば、彼ら八人はずぶの素人と言えた。
(何を根拠に吸血鬼と断定してるのか、彼らと吸血鬼との間に何があったのかは知らないけど、人違いで無辜の民を傷付けた罪は贖って貰わないと)
 正真正銘の吸血鬼、遍歴の騎士たる『お気に召すまま』シャルロット・D・アヴァローナ(p3p002897)は、悠然と笑みを浮かべていた。
「無関係な人まで襲うのは良くないです。要反省、というやつです」
 ギフトの効果でねこみみを生やした『しろねこ』アトゥリ・アーテラル(p3p006886)は自らの種族的特徴である長い耳を髪を使って上手に覆い隠す。

「吸血鬼……今、貴様ら吸血鬼といったか?」
 エドナが怨嗟に満ちた声で吐き捨てる。
「えぇ、我は宵闇の国より招かれし吸血鬼、シャルロット。噂のヴァンパイアハンターたち、今日は本物が相手よ」
 シャルロットが剣を抜いて、敵を見る。血走った眼を見せるエドナが何かに弾かれるように走り出し、シャルロット、リースリット、サイモンがいる方向へと突っ込んでくる。それが開戦の合図となった。
 静かに、ゆるりと。相手の動きに対して自らの核の違いをみせるようにシャルロットは剣を振り上げる。
「貴女たちは吸血鬼と思い込んでいただけ、本物と対峙した時、何が起きるか、思い知りなさい」
 あくまで穏やかに告げて剣を振り下ろす。不可視の斬撃が駆け抜け、シャルロットへ真っすぐ突っ込んでくるエドナの肉体を切り裂いた。
 身体を引き裂く強烈な一撃に、エドナが小さな悲鳴を上げる。それを見届けたシャルロットは、今度は自分が闘技場の端へ広がるように走り出す。
「逃げるのか! 吸血鬼め!」
「エドナさん、待ってください!」
 シャルロットを追ってエドナ、それに続くようにゲルダが着いていく。
 その一方で、シャルロットへ向かわなかった敵の多くはサイモンに向かって突っ込んできた。
「じゃあ、悪そうなお兄さん。私と遊びなさいな!」
「捕まってたまるかよ」
 両手に魔術的な刻印を刻んだガントレットをする女――セリーヌが笑えば、サイモンはそう返して笑って、思いっきり走り出す。
 金色の瞳を輝かせ、レイチェルは闘技場で動き始めた敵味方双方の動きが見えるように位置を取り、大きく視野を広げていた。
「――憤怒、そして復讐の焔こそ我が刃。復讐の果てに燃え尽きるのが我が生なり」
 呪文を紡げば、半身に宿る文様が緋色に輝いた。憎悪に染まった血で描かれた陣から放たれた紅蓮の焔は渦を巻いて跳ね上がり、敵の後方にいる聖印と盾を手に白色の僧侶服を着た女性――ジュリアへと降り注ぐ。
「ひゃあ!?」
 攻撃を受けたジュリアが自らへと何やら祝福の囁きを施していく。
 それに対する報復なのか、レイチェルへ向けて放たれたのは、後方にいるケネスによるライトニングだ。レイチェルがその場で手をかざせば、呼び起こされた高質化した血液が盾となって彼女を守る。
 微かな衝撃が貫通してレイチェルを焼くが、それは気にするほどの傷にはなりえない。
「こんなもんか?」
 少しばかり瞳を開いて、しかし自らの正体をまだ悟らせぬように、マスク代わりの布の下でレイチェルは獰猛に笑む。
 グラディスの前、ヒィロは超人的な反応速度で走りこむと、その小さな身体に確かな闘志を燃やして岩のような大男を見上げた。
「なんだ? 嬢ちゃんは俺とか?」
「うん――ここは一歩も通さない! ボクが相手だよ!」
「ハハッ! ならばやってみせろ!」
 長大な大剣による振り下ろしを、逆手に握った三日月砂丘で添えるようにして防げば、そのまま刀身を滑った大剣が闘技場の床を破砕、破片がわずかにヒィロの身体を傷つける。しかし、その微かな傷は瞬く間に癒えていく。
「正義無き力はいつだって義に依って立つ力に勝てないんだから!」
 目を見開いて声を上げれば、グラディスが凄絶に笑みを浮かべた。
 その横を、リースリットが駆け抜けていく。
「ヴァンパイアハンター……だとか。見当違いの相手を狩って狩人気取りとは、何とも……無様ですね」
 リースリットの挑発に反応したのは逃げ回るサイモンに狙いを定めていた狙撃手シェリルだった。
 直撃すれば致命傷になりうる強烈な弾丸を危なげなく回避したリースリットは、口元に添えていた袖口を降ろす。
 そのまま半ば戦場のど真ん中ともいえる位置にて、炎が如き緋色に輝く魔晶の剣を抜いた。
 続くように敵の後衛の方へ、無数の赤い鎖型エネルギー弾が飛んでいく。それに囚われたシャンタルとケネスが葵の方へ視線を巡らせる。
 シャンタルの頬とケネスの手の甲に南京錠のマークが浮かび上がる。しかし、シャンタルは自らへ何やら自らへ癒しの光を施して冷静さを取り戻してしまう。
 アトゥリはその様子を見つめながら、指輪に魔力を込めていく。
「私も見た目で苦労する事はあるですが……見た目だけで判断してたら足元をすくわれるという事を、教えてあげるのです」
 手を掲げれば、やがてジュリアの上に呼び起こされた魔力が収束し――爆ぜた。
 雷霆にも似た爆音と閃光が鮮やかにジュリアを真上から焼き付けていく。彼女の周囲にある床が砕け散り、土煙が舞っていく。
 ボロボロになり始めたジュリアへ最初に近接できたのはナーガだった。
「アイしてあげるよ!」
 幼げな口調で告げれば、ナーガはそのまま拳を握り、足ががくがくになりつつあるジュリアの鳩尾へと叩き込む。
「かっ」
 そのまま口元を抑えながら崩れ落ちたジュリアはそのまま血と何か色々が入り混じったものを吐き出す。
 エドナを孤立させた状態で引き連れていたシャルロットはふと立ち止まり、その手に自らの血を作りだすと、今度は自ら近づいて静かにエドナを貫いた。
「貴女の血は独りよがりの正義と、復讐の味ね、何があったのかしら?」
「黙れ黙れ黙れ!! 吸血鬼がぁ! 死ねえぇぇ!!!! お前などと話すことは何もない!! あぁぁぁああああぁぁ!!!!」
 飛んできた血しぶきをちろりと舐めてエドナへ問うと、エドナから返ってきたのは発狂と片手剣による振り下ろしだった。
 それを軽く払って振りほどき、そのまま再び後退を開始する。


「今までが真正の吸血鬼でなくて良かったですね。この程度では、本物にあっさり潰されていたのではないですか?」
 リースリットによる二度目の挑発が聞こえたのか、シャルロットの方へ向かっていたゲルダの足が止まる。
「貴女に――何がわかるのですか!!」
 絶叫。
 急速に近づいてきたゲルダが地面にハンマーを叩き込めば、地面を焔が這ってリースリットに駆け抜ける。
 リースリットはそれを魔晶剣を指揮棒のように振るって捌き、そのまま近づいてきたゲルダともつれあうように戦いへ突入する。
「そこっす!」
 青く美しい荒波模様が特徴的なボールを葵が飛ばす。
 しなりの効いた強烈な蹴りがボールをたわませ、はじけるように真っすぐと飛んでいく。
 正確無比のコントロールで闘技場を突っ切ったシュートは、一条の光線となってシャンタルへと吸い込まれるように突き刺さった。
 そのまま跳ね返ったボールは、術式の作用で葵の元へきゅるきゅると回転しながら無事に帰還を果たす。そのまま葵はドリブルしつつ、シャンタルとの間合いを調整していく。

「小娘が!!」
 牽制のつもりか放たれたグラディスの剣をヒィロは受け止める。斬るというより、叩きつけるといった方が正しいその一撃を、ヒィロは体捌きで重症にならないように調整しながら対応していた。
「そのおっきな刀は弱い者いじめにしか使えないのかな!」
 ひょいと敵の太刀へ飛び乗って、跳ね上げられた刀に合わせるように身体を宙へ躍らせると、そのまま三日月砂丘をグラディスの頭部めがけて振り下ろした。グラディスの右目を、剣先がさっくりと開かせる。
「ぐぁああ」
 よろめき、後退した大男に、着地を終えたヒィロは更なる一撃を打ち込まんと踏み込んだ。
「そっちが吸血鬼っぽい人達を付け狙ったように、ボクもお前を絶対に逃がさない!」
 そういうと、少女は美麗な曲刀を大男の首筋目掛けて走らせた。


「ったく、なんで私がこんなに狙われなきゃいけないんだ! おい、しっかりしな!」
 遙かな敵の後方で、苛立ち気味にシャンタルが吠え、自らを中心において、後衛のケネスとシェリルに喝を与えている。
「私ゃ、自分が傷つくのはごめんなんだよ! ケネス、アンタ、アレうちなアレ!」
「うるさい、黙っていろ……言われなくても撃つ! 舐めやがって!!」
 ケネスが苛立ちを隠さずイレギュラーズの方へ視線を向け、リースリットと葵の方へと走りこんでいく。その手に握る銃へ収束する高密度の魔力。
 二人は彼が何をしようとしているのか何となく察しを付けた。静かに構えられた銃口から、轟と魔力が無数の弾丸となってぶちまけられた。
 弾丸は弾幕を形成し、可視化した魔力による波となって襲い掛かってくる。味方であるゲルダをも撃ち抜きながらぶちまけられた無数の弾丸が、リースリットの肩を、膝を、撃ち抜いていく。
「くっ――!」
 自分以上に大ダメージを負ったゲルダから少しずつ間合いを取りながら、リースリットは真っすぐにケネスを見る。
「くはははっ、ざまぁないね! そのままやっちまい……なぁ!?」
 嘲り笑うシャンタルは、不意に自らを差した影にぽかりと大口を開ける。
 だが、もう遅い。そのタイミングは、既にナーガの射程から逃れられる時ではない。
「ひえっ」
「ナーちゃんの全部でアイしてあげるよ!」
 大きく身体を広げたナーガが、そのままシャンタルをぎゅっと抱き寄せ――その並々ならぬ膂力がシャンタルの肉体をごりごりとすりつぶした。
「ぎゃあぁあ…………」
 人体が本来曲がるはずのない形にぐにゃりとなって、女は息絶えた。

 アトゥリはシャンタルの身体が地面に落ちていくのを見届けるよりも前に、既に視線を次の目標へ向けていた。
 アトゥリは自らの血を媒介に影の魔弾を作り出すと、それをサイモンを追い続けながらフィールドを走り回るセリーヌと打ち込んだ。
 完全にこちらを気にしてなかったのだろう。ガントレットを握る女は、アトゥリの弾丸で肩口を貫かれて小さな声を上げて立ち止まる。
 そこへ向けて、レイチェルは静かに憤怒の焔を放つ。ようやっとこちらに視線を向けたセリーヌはガントレットから生み出した魔法陣でそれを防ごうとして――防ぎきれずにその身体を煌々と燃え盛る紅蓮の焔に包み込まれていく。
「やってくれるじゃないの!!」
 セリーヌの放つ明確なる殺意を、レイチェルは静かに受け止める。
「じゃあまぁ、今度はこっちからだな」
 さんざん逃げ続けてきたサイモンは敵の回復役が二人ともフィールドに潰れているのを見て取ると、コールブラッドに弾丸を装填し、打ち込んだ。
 銃口を抜けた弾丸は自立式の爆弾に変質してこちらへ向かってきていたセリーヌを吹き飛ばした。

「我が世界にはこんな言葉がある、困難な敵に立ち向かう時は仲間から目を反らすな。反らしたなら二度と会えないと知れ――ってね」
 エドナを引き連れて走り回っていたシャルロットは不意に立ち止まる。
 自らの身体へ修復を施しながら、ゆるりと笑みを絶やさない。
 エドナは既に、完全な孤立と化していた。ここならば、最早シェリルによる援護射撃さえ怖くはない。
 シャルロットは再びエドナから間合いを変えると、斬撃を飛ばす。
 遮二無二突っ込んでくるエドナには、既に回避などと言う言葉はなく、その肉体を刃が切り裂いていく。
「あっ、あぁぁぁ……なんで、私が……あぁ……やっと……」
 エドナがばっさりと裂かれた腹部を床に向けて倒れていった。


 戦いは徐々にイレギュラーズ側に傾いてきつつあった。
 回復役に徹する者がいないことで、やや危ういところがあったりもしつつ、初手から敵の回復役二人を潰せたこと、一番の脅威であるグラディスをヒィロが上手く抑え続けることが出来たのが大きかった。
 想定通りの順番で倒せこそしなかったところもあったが、今イレギュラーズの前に立つのは二人だけ。
 その二人の片割れ――シェリルもまた、葵とリースリットによる注意の引き合いに惑わされて充分な狙いをつけることもできず翻弄されていた。
「……ごめんなさい。私いくわ」
 シェリルに追いついたナーガのひだりてが細身の狙撃手へと振り下ろされる。大量の血を吐いて膝をついたシェリルへと、アトゥリは追撃とばかりに怨念を一条に束ねた黒色の矢を打ち込む。それは最後まで立っていた後衛の首筋に風穴を開けた。
「……こりゃあ無理だ。聞いたことはあったが、なるほど……イレギュラーズってのはどいつもこいつもこうなのか?」
 ヒィロを越えて、グラディスが苦々しげに表情を引きつらせている。
「ボクはお前を許さない!」
「ハッ、許してもらう気はねえさ……まぁ、年貢の納め時だぁな」
 片方だけになっためを見開いて、大男が猛る。
「――終いだ」
 サイモンは前衛群がるグラディスの胸元へ目掛けて弾丸を放つ。
 弾丸は動いたグラディスの右胸へと吸い込まれていく。
 アトゥリの神鳴りがさらに降り注ぎ、レイチェルの焔が食らい尽くす。
 最後に残った一人へ、イレギュラーズ渾身の一撃が連続して打ち込まれていく。


 戦いが終わった後、なぜ彼らが吸血鬼を狙っていたのか問おうと考えていたイレギュラーズに対して、敵の中で生き残ったグラディスとゲルダはたった一つを除いて別の存在の事を語った。
「俺はただの雇われだ。ゲルダの方は故郷を焼かれた。エドナだっけかは……家族を慰み者にされたって聞いたか。つまりさ、そういうことだ。俺達八人は別に、同じ奴に狙われたんじゃない」
 ただナニカに襲われて――それを便宜上吸血鬼として付け狙い続けたと。いつの日か、自分達を狙った本物をあぶりだすために。
 ただ――そのために積み上げたものは、同情の余地がない程に醜くて、卑劣で、残酷だった。
「さぁてね。あんた等の思う吸血鬼ってのも、俺達にゃ分かんねえさ。あいつらだってもう、探してる奴らが分かんなくなってただろうよ」
 けらりと笑って、そのあと、グラディスは口を閉ざしたという。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

返却が遅れ申し訳ございません。

吸血鬼、私は個人的には好きです……

PAGETOPPAGEBOTTOM