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シナリオ詳細

<泡渦の舞踏>海上に死者は踊る

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●夜闇の出港
 海原に、渦が巻いていた。
 海洋近郊の海原である。突如として発生した大渦は、瞬く間にそのサイズを肥大化させていく。
 まるで風呂桶の栓を抜いたみたいに、ぐるぐる、ぐるぐると渦は周り、あたりにあるものを飲み込み続ける。
 ふと――その渦より。
 何かが顔を出した。
 中心より、外周へ。水流や物理法則を無視し、それは進む。
 一隻の、船であった。
 外装のあらゆる所が朽ち、ボロボロになってはいたが、しかし本来は豪奢なつくりである事が伺える、巨大な船である。
 船は渦の中心から現れて、外へ、外へと進んだ。やがて渦の外へとすっかりと出てしまうと、身震いするかのように、波に揺れた。
 船の甲板には、人の姿があった。
 いや――それはおそらく、人ではあるまい。その皮膚は醜くただれ、腐り、ぶよぶよとした腹の傷口から、海水がばちゃりと吐き出される。それはまさに、生ける屍であった。
 船の甲板は無数のリビングデッドで埋め尽くされている。船は――幽霊船は静かに軋み、海上を漂っていた。

●幽霊船迎撃
「海洋に謎の大渦が発生しました! どうやら『チェネレントラ』の仕業みたいですね!」
 『小さな守銭奴』ファーリナ(p3n000013)は、集まったイレギュラーズ達へ、そう告げた。
 幻想楽団『シルク・ド・マントゥール』の残党たる魔種『チェネレントラ』。そのチェネレントラが、海洋に大渦を発生させたのだという。
「目的は――本気で馬鹿げているんですが、『殺してもらうため』です。劇的に、気持ちよく――この大渦は、そのための舞台である、と」
 うへぇ、と唸るファーリナ。最高にして最悪の身勝手な自殺。そのために海洋に大渦を起こし、狂気を巻き、破滅をもたらす――なるほど、まさに狂気的と言えるだろう。だが、この破滅を黙って見過ごすわけにはいかない。チェネレントラの目的は、イレギュラーズ達を誘い出すことだが、イレギュラーズでなければ、この件を解決することはできないだろう。企みに乗るわけではないが、動かなければならない。
「さて、皆さんにお願いしたいのは、大渦周辺に出現した幽霊船に乗り込んで、内部に潜むアンデッドを全滅させる……というお仕事です」
 チェネレントラの仕業だろう、大渦周辺に突如出現した幽霊船は、内部にアンデッドを乗せ、大渦付近で待機している。未だ動きは見られないが、どんな危険がもたらされるかはわからない以上、これを見過ごすことはできない。この幽霊船を攻撃し、無力化する必要があるのだ。
「移動用の船などは手配しておりますので、乗り込むこと自体は簡単でしょう。あとは内部のアンデッドを全滅させればいいわけです! 敵地での戦いになりますから、充分にお気をつけて。さぁ、しっかり働いて、しっかり稼ぎましょう!」
 そういって、ファーリナはイレギュラーズ達を送り出すのであった。

GMコメント

 お世話になっております。洗井落雲です。
 海上に出現した幽霊船。
 これに乗り込み、内部のアンデッドたちを無力化してください。

●成功条件
 幽霊船内部のアンデッドすべてを撃退する

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●状況
 海洋近辺に出現した『大渦』。そのすぐ近くに浮かぶ『幽霊船』が舞台です。
 この幽霊船に侵入し、内部のアンデッドをすべて撃退してください。
 内部構造はシンプルで、特に迷ったりするようなものではありません。
 幽霊船は木造の大型船ですが、魔力的なもので守られているのか、幽霊船そのものを破壊することができません(内部の壁などは破壊できますが、船そのものが崩壊するようなダメージを受け付けないということです)。ただし、アンデッドをすべて撃退すると、船体が崩壊し始めるようです。
 幽霊船までは、海洋の船乗りが船を出してくれます。接舷までうまくこなしてくれますので、幽霊船に乗り込むことはたやすいです。接舷後は、船乗りは皆さんの指示に従います。

●エネミーデータ
 ゾンビ ×15体
  特徴
   とても足が遅い。
   その代わり、生命力は高い。死ににくく、倒れにくい。
   至近~中距離の、単体物理攻撃を主に行う。距離が近いほどにダメージが高い。
   また、至近距離の攻撃は猛毒を付与する。
   船内に分散しているが、戦闘音を聞き付けて集まってくる。

 以上となります。
 それでは、皆様のご参加お待ちしております。

  • <泡渦の舞踏>海上に死者は踊る完了
  • GM名洗井落雲
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年02月08日 22時00分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ヘルモルト・ミーヌス(p3p000167)
強襲型メイド
キドー・ルンペルシュティルツ(p3p000244)
社長!
アンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)
無限円舞
グレイル・テンペスタ(p3p001964)
青混じる氷狼
コゼット(p3p002755)
ひだまりうさぎ
枢木 華鈴(p3p003336)
ゆるっと狐姫
ラクリマ・イース(p3p004247)
白き歌
ハロルド(p3p004465)
ウィツィロの守護者

リプレイ

●幽霊船へ
 霧けぶる夜闇の中、ぎし、ぎし、と、その船は体を揺らす。
 船体のあちこちが剥がれ落ちた、巨大な船である。常なれば、まともに浮かぶことすら難しそうな外見をしているが、奇妙なことに安定し、波に揺れている。
 見た目通りの、幽霊船である。
 そんな幽霊船へと、一層の大きな船が近づきつつあった。こちらは、見た目からして立派な船だ。海洋の船乗りが操船するその船の甲板には、今まさに迫る幽霊船を睨む、イレギュラーズ達の姿があった。
「幽霊船、か……」
 『盗賊ゴブリン』キドー(p3p000244)知らず、言葉を漏らしている自分に気づいて、舌打ちをした。
 幽霊船、その姿を認めたキドーは、ふと、誰かの顔を思い出したのだ。くそったれ、と、その顔をかき消すように、あえて口にする。
「こいつ等も、絶望の青とやらを探してた海賊か?」
 何かを振り切るために。キドーは意図的に、その言葉に強く棘を乗せた。
「海賊、幽霊船……となると、物語では財宝が付き物ですけどね」
 『白き歌』ラクリマ・イース(p3p004247)苦笑しつつ言う。
「大変な状況で不謹慎ではありますが……少しわくわくしている自分がいますよ」
 そういうラクリマへ、キドーは肩をすくめた。
「さてねぇ。あったら、ま、儲けものだが? 中には死体が満載だからな」
 キドーは気分を切り替えるためにも、雑談に乗った。
「ですよね……探している余裕もないかぁ」
 苦笑するラクリマへ、
「船員さん、の、話だと。昔の、遊覧船、みたい」
 『孤兎』コゼット(p3p002755)が声をかける。つまり、観光客などを、近海に案内していた船という事なのだろう。事故が起きたのか、あるいは不法投棄されたのかは不明だが、流れに流され、大渦近郊に沈んでいたようだ。
「遊覧船……となると、財宝なんかとは、無縁っぽそうですね……」
 肩を落とすラクリマ。
「……お船も、皆も、眠っていたのを、無理矢理起こされた」
 コゼットが、とつとつと語る。
「また、静かに、眠らせてあげたい」
「そう、だね……」
 『青混じる白狼』グレイル・テンペスタ(p3p001964)が、その言葉に頷いた。
「……魔種に利用されている、という意味なら、彼らもまた、被害者だから……」
 グレイルの言葉通りだろう。海の底で、静かに眠る死者たちは、無理矢理起こされたのだ。
「おお、近づいてきたのう!」
 『ゆるっと狐姫』枢木 華鈴(p3p003336)が、声をあげた。その言葉通り、幽霊船は目と鼻の先、という所まで接近している。
 甲板部分には、数匹のゾンビの姿が見える。見張り……というよりは、無目的に突っ立っているように思えた。
「しかし、なんじゃのう? あいつら、何が目的なんじゃろうか。動きがないという話じゃが」
 華鈴が首を傾げた。幽霊船は、出現から現在まで、特に動きを見せていない。それが不気味なのではあるが、その目的が不明となれば、疑問も浮かぼうというものだ。
「そこに在ることが目的、なのかもね」
 『カースドデストラクション』アンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)が答えた。
「仮に、この幽霊船に何の目的も与えられていなかったとして、じゃあ放っておけるか、と言えば、答えはNOだわ。結局、私達は対処に時間を割かなければならない」
 アンナの言葉に、華鈴は「なるほどのう」と、唸って、
「まぁ、あれこれ悩むよりも、動き出す前に倒してしまう他ない、という事じゃな!」
「うん、そういうこと」
 笑う華鈴に、アンナは微笑んで、頷いた。
「イレギュラーズさん達、そろそろ接舷できるぞ!」
 そんなイレギュラーズ達に、船員から声がかかった。イレギュラーズ達の間に、緊張が走る。もう間もなく、敵地へと乗り込むことになるのだ。
「で……アンタたちを送った後は、コイツ? これを、船内に放り込めばいいのか?」
 船員が首をかしげながら、足元を見やる。そこには、『聖剣使い』ハロルド(p3p004465)の持ち込んだ『MKB』……メカ子ロリババアの姿がある。メカ子ロリババアとは……まぁ、機械製の使い魔のようなものだろう。
「ああ。と言っても、無理はしないでくれ」
 ハロルドが言った。
「できるならば、でいい。ないとは思うが、接近しすぎて、こっちの船にアンデッドどもが乗り込んでくるかもしれんしな。アンタらがやられちまったら、俺たちも陸に戻るのに難儀する。それは避けたい」
「心配してもらってる、と受け取っておくぜ。まぁ、俺たちとしても、海にあんなもんが浮かんでるのはごめんだ。協力はさせてもらう」
 笑う船員へと、ハロルドはニッ、と笑って、頷いた。
「助かる」
 ちょうどその時に、別の船員から声がかかった。向こうの船へ、乗り移るための準備ができたらしい。
「では、まいりましょうか」
 『強襲型メイド』ヘルモルト・ミーヌス(p3p000167)が声をあげるのへ、イレギュラーズ達は頷いた。隣り合うように接近した船から、幽霊船へと、板が渡される。いよいよ、作戦開始だ。
 揺れる板の上を、イレギュラーズ達は一気にわたり切った。幽霊船の甲板へと、降り立つ。
 幽霊船の甲板は、遊覧船だったことの名残だろうか、備え付けの椅子のようなものがあちこちに見える。そう言った遊覧船の設備の残骸の合間合間に、3匹のアンデッドが立ち尽くしているのが見えた。アンデッドたちはぼんやりとした様子を見せていたが、イレギュラーズ達の姿を認めるや、ゆっくりとにじり寄ってくる。
「さて。では、まずは甲板から、腐ったゴミのお掃除といたしましょう」
 ヘルモルトの言葉に応じるように、イレギュラーズ達は戦闘態勢をとった。

●コープス・ダンスパーティ
「『死ぬほど疲れてる』だろ? さっさとオネンネしちまいな!」
 キドーが『小鬼の手投弾』を放り投げる。それはゾンビを巻き込んで、爆発した。毒と炎がゾンビを蝕むが、ゾンビはうめき声をあげつつも、歩みを止めない。
「ケッ、話に聞いた通りタフだな! 死んでるのに生命力が高い、っつーのはどういう了見だよ!」
 軽口をたたきつつ、キドー。
「……どうか、おやすみ」
 呟きつつ、『ロップイヤー』の刃をきらめかせ、コゼットの『蹴兎』がゾンビへと突き刺さる。その軽やかながら強烈なウサギの蹴りがゾンビを吹き飛ばし、
「全力で当たらないと、時間を稼がれてしまうわね」
 月光を受けて輝いたアンナの『儚煌の水晶剣』が、無数の斬撃を放ち、ゾンビの体を貫く。飽和攻撃を受けて、ようやく、ゾンビはその身体を地に横たえた。
「ハッ! 殴り甲斐のある死にぞこないで結構!」
 ハロルドは狂暴な笑みを浮かべながら、躊躇なくゾンビを掴み、投げ飛ばした。ハロルドの膂力と重力により、勢いよく甲板へと叩きつけられたゾンビの頭部が、床へとめり込む。ぐちゃ、という音がしたのだから、おそらくは板の下で頭が破裂しているのだろう。
「気持ち悪いモンを見なくて助かったな」
 肩をすくめる。
「残り、1か! わらわも負けておれんのう!」
 華鈴が刃を振るい、踊るような連撃を加える。ゾンビの肉体が切り刻まれ、
「では、私も投げ……魔法をお見せしましょう」
 ヘルモルトがそう言って、ゾンビを掴み、強かな投げ技をお見舞いする。甲板に叩きつけられたゾンビが、一瞬、動きを止めたのちに、再び起き上がろうとするのへ、
「こ、この……っ!」
 グレイルが放つ虚無のオーラが、ゾンビを包んだ。その一撃がようやく、ゾンビの命を絶つ。
「ふう……これで、甲板にいる奴は、全部……だね……」
 グレイルが言った。イレギュラーズ達は、甲板を無事制圧することに成功した。
「お疲れ様。今のうちに回復をしてしまいましょう」
 ラクリマはそう言って、『幻雪のリベラ・メ』を放つ。優しく舞い散る白き雪の幻影と共に、イレギュラーズ達の傷が癒えていった。
「さて、次の手順へとかかるか」
 ハロルドが声をあげるのへ、イレギュラーズ達は頷き、行動を開始した。
 イレギュラーズ達は力を合わせて、あっという間に船内への入り口を、一つを残してふさいでしまったのである。材料は、幽霊船そのものだ。船を構成する木材をあちこちから引っぺがして、簡単なバリケードとする。
「さぁて、お次はお前だ」
 キドーは『練達上位式』と『ファミリア―』を用いて、ネズミを生み出すと、壁に空いた隙間から船内へとネズミを送り込み、意識を集中する。
 イレギュラーズ達のとった作戦は、こうである。まずは、ハロルドのギフトを利用し、可能な限り戦闘音を抑える。これにより、船内の他のゾンビが動き出すのを抑制する。
 続いて、甲板から船内へと通じる通路を、一つを残してつぶす。これで、船内のゾンビが甲板へとあふれ出すことを防止することができる。
 そして、キドーの使い魔を利用し、船内の様子を探るとともに、船内で音を発生させ、ゾンビを分散させる。先ほど船員へと依頼したMKBも、同様に、音を発生させるための囮だ。
 最後は、実際に船内へと向かい、可能な限り少数のゾンビと接触。甲板へと誘い出し、一気に処理する。
「わらわ知ってる、これ、釣りって言うんじゃろ? 釣り……うむ。実に海洋らしい作戦じゃな!」
 華鈴が楽しげに笑う。さて、準備は整った。あとは作戦を実行するのみだ。
「念のため、別ルートの確認は、怠らぬようにしておきましょう」
 ヘルモルトが告げる。いくら封鎖しているとはいえ、強行突破される可能性は捨てきれない。
「一気に囲まれることはないでしょうけど……気を付けてね」
 アンナがそういうのへ、グレイルが頷いた。グレイルは、ハロルド、コゼットと共に、船内へと向かい、ゾンビを誘導する役目を担っている。
「……うん。そっちも、気を付けてね……」
「よし、じゃあ、行くか」
 ハロルドが声をあげるのに、グレイルとコゼットが頷いた。
「じゃあ、いってきます」
 と、コゼット。かくして一行は、船内へと足を踏み入れた。

 ハロルド一行を迎えたのは、薄暗く、長い廊下だ。左右には、まばらに扉のようなものが見える。
「どうだ、状況はわかるか?」
「んー……」
 ハロルドの問いに、コゼットが唸る。
 エコーロケーション……超音波による周囲状況の把握スキルを持つコゼットは、索敵と地形把握を行っているのだ。
「大丈夫。ここには、ゾンビたちは、いない」
 しばしの集中の後に、コゼットは頷いた。ハロルドは、ふむ、と唸ると、
「よし。じゃあ、進むか。グレイル、俺のギフトが利いているか、断定はできない。俺とコゼットはスキルの維持に集中するから、お前も周囲の警戒を頼む」
 その言葉に、グレイルは、
「……うん。了解、だよ」
 力強くうなづく。そうして、警戒しながら、一行は内部を慎重に進んで行った。時折、激しい物音がするのは、キドーのファミリア―達によるものだろうか。上手く囮が機能していればいいのだが。そんなことを考えつつ、いくつかの部屋を確認した時、コゼットが声をあげた。
「……この先に、3人、居るよ」
「……3体か……何とかなりそうだね」
 グレイルが声をあげるのへ、ハロルドも頷いた。
「ああ……釣りだすぞ」
 ハロルドの目くばせに、二人は頷いた。

 一方甲板では、待機中のイレギュラーズ達が、緊張の面持ちで唯一船内へと通じる出口を見張っている。
「……夜の海だとますます不気味ね。肝試しにはいささか早すぎると思うのだけど」
 あたりを見回しながら、アンナが独り言ちる。雰囲気だけなら最高の場所と言えるだろう。ここは、文字通りの幽霊船なのだ。
「さて、仲間の事は信頼はしている……とはいえ、心配ですね」
 ラクリマが声をあげる。三人が船内へと侵入し、しばしの時間が経過していた。
「それもやむを得んの。事実、危険と隣り合わせの状態じゃからな」
 華鈴が言う。細心の注意を払っているとはいえ、敵地で孤立しているようなものだ。
「しかし、信じて待つほかにありません……キドー様、使い魔たちの状況はどうでしょうか?」
 ヘルモルトは言いつつ、キドーへと尋ねる。
「あー、とりあえず、上手い事動いてはくれている……クソっ、メカ子ロリババアが追い詰められてんな……」
 舌打ちしつつ、キドーが頭を振った。
「あんまり長くは引っ張れそうにねぇぞ。ハロルドたちはどうなってる?」
 キドーの言葉に、ヘルモルトは、
「今のところ、動きは……いえ、少しお待ちください」
 そう言って、通路の奥へと視線をやる。刹那、ヘルモルトはゆっくりと頷き、
「――来ます。皆様、用意を」
 そう言って、構える。それに応じ、イレギュラーズ達も身構えた。
 それから、数秒。勢いよく、ハロルド、コゼット、グレイルの三名が飛び出し、それを追うように、三体のゾンビが飛び出してきた!
「おいでなすったか!」
 キドーが叫び、黒鴉を生み出した。不吉のカラスがゾンビへと体当りを敢行し、ゾンビを打ち付ける。
「一気に叩くわ!」
 アンナが水晶剣で流れるような斬撃をお見舞いし、
「おお、これは大物というやつじゃな!」
 続く華鈴の斬撃が、ゾンビの頭部を切り離す。
「では、釣った魚は締めさせてもらいましょう」
 ヘルモルトはゾンビへと飛び掛かると、その頭部を両足できつく挟み込んだ。そのまま、バック宙をするように回転し、ゾンビを足で投げ、その頭部を甲板へと叩きつける。いわゆるフランケンシュタイナーを放たれたゾンビは、その頭部を一撃で破壊され、戦闘不能に陥った。
「これで、どうです!」
 ラクリマが放つのは、魔力で編まれた鞭の一撃だ。その鞭はゾンビを強かに打ち付け、その苦痛を吸い上げる。ゾンビはうめき声をあげつつ、最後の抵抗とばかりにグレイルへとつかみかかる。とっさに突き出したグレイルの右手を、ゾンビは握りしめた。
「……くっ……う……!」
 思いのほかに強い握力と、爪にこびりつく猛毒に、グレイルが苦痛のうめきをあげる。
「放して……!」
 コゼットが、思い切りゾンビを蹴りつける。その衝撃に、ゾンビは両手を離し、転び倒れた。そこにアンナの斬撃が決まり、トドメとなった。
「大丈夫ですか?」
 尋ねるラクリマへ、グレイルは苦笑を浮かべながら、
「……うん。大丈夫だよ」
 答える。
「上手くいきましたね」
 ヘルモルトが言うのへ、
「ああ。じゃあ、また釣ってくるか」
 ハロルドが頷く。
「今度は、俺が行きますよ」
 ラクリマが、グレイルの代わりを買って出る。ハロルドは頷くと、コゼットとラクリマと共に、再び船内へと向かった。
 その後、再度の釣りだしには成功したものの、さすがに囮役のファミリア―達が限界を迎えた。その結果、都合5体の集団は、同時に相手取る事となった。
 船内で戦う事は、船が崩壊することを考えると、望ましくはない。ハロルドたちは攻撃に耐えつつ、5体のゾンビを甲板へと釣り上げる。そして甲板にて、最後の戦いが始まった。多数のゾンビと戦う結果となったわけだが、しかしこれで終わりであると考えれば、イレギュラーズ達の士気も落ちない。
「まったく、さすがにゾンビは、ダンスの相手として、今までで最悪ね……!」
 ゾンビの攻撃を受け止めながら、アンナはぼやく。敵はタフネスはもちろん、その攻撃力も馬鹿にはできない。とはいえ、ゾンビたちは少しずつ、その数を減じている。
「だが、もうすぐこの馬鹿げたパーティも終わりだ!」
 不吉のカラスを放ちながら、キドーが声をあげた。カラスの突撃を受け、また一体、ゾンビが倒れる。
「はははっ! どうした? おら、掛かってこいよ死に損ないども!」
 挑発するように言いながら、ハロルドはゾンビにつかみかかった。そのまま、掌に光を凝縮させ、高熱のエネルギーを叩きつける。光に焼かれ、ゾンビが爆散する。
「残りは、一人……!」
 コゼットが呟き、跳躍。落下の勢いを乗せた跳び蹴りを、ゾンビに見舞う。ゾンビは派手に後方へと弾き飛ばされ、
「では、これで仕舞じゃな!」
 華鈴の斬撃がとどめを刺した。甲板に、静寂が訪れる。イレギュラーズ達は、ついにすべてのゾンビを撃退することに成功したのである。
 途端、グラグラと、船が大きく揺れだした。ぎりぎりで保っていた船体は軋み、ぱらぱらと破片をまき散らして崩壊していく。
「……船体の崩壊が始まりましたか……!」
 ヘルモルトが声をあげる。そこへ、
「おい、イレギュラーズさん達! 早くこっちへ!」
 隣、海洋の船から声がかかる。
「急ぎ脱出しましょう。あまり長居をしては、あちらの船も巻き込まれかねません」
 ヘルモルトの言葉に、
「そうですね。ここまで来て、船と運命を共にするのはごめんです!」
 ラクリマが頷く。
「皆、走って……!」
 グレイルの声を合図に、イレギュラーズ達は走り出した。崩落する床を跳び、避け、一気に甲板を駆け抜ける。イレギュラーズ達が海洋の船に飛び移っるのと、幽霊船の甲板に大きく穴が開くのは、ほぼ同時だった。
「全員居るな!? 幽霊船から離れるぞ! 掴まれ!」
 海洋の船乗りが大声をあげ、船を操る。船が距離を開けたころには、幽霊船はその身体の半分を海へと沈めていて、それからほどなくして、完全に、海中へと沈んでいった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ご参加ありがとうございました。
 イレギュラーズ達の活躍により、幽霊船の脅威は無事、除かれました。
 今は、船は死者と共に、再びの静かな眠りについています。

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