PandoraPartyProject

シナリオ詳細

七色イルカと鮫牙族

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●七色イルカの窮地
 水面が虹のような七色に輝くときが、彼らがやってくる合図だ。
 漁師がビスケットやチョコレートといたお菓子を船から投げてやれば、イルカがぴょんと飛び跳ねて口でキャッチする。
 真珠のようにつやつやの肌。つぶらな瞳。
 海の精霊から祝福を受けているという彼らは、その証として七色の輝きを纏っていた。
「今日もよろしく頼むよ。沢山魚をとろうな」
 帽子を脱いで呼びかける漁師に、七色イルカはキュイキュイと独特の声で返した。肯定と喜び、親愛の意志を込めて。

 港町にいくつも並ぶ立ち飲み酒場。
「七色イルカは俺たちの相棒さ」
 そう語るのは、麦酒のジョッキで台を叩いて上機嫌な漁師だ。
「イルカたちが魚を追い込んで、俺たちがそれを大網でとる。
 とれた魚は俺たち漁師とイルカで半分こにするっていうのがキマリなんだ。
 イルカたちのおかげで俺たちは安定して漁ができるし、あいつたちも沢山魚が食べられる。
 生態系を壊すような外来種が出てきた時はイルカたちが排除してくれるし、ひどいときは俺たちに知らせてくれる。
 逆にイルカに危険が迫ったときは、俺たちが助けるんだ。
 ヘンな話かもしれないが、この辺じゃそういうのが普通なのさ」
 けれど、と、飲み干したジョッキを台に置いた。
「この辺の領海に鮫牙族が侵入してきてるって噂があってな。こればっかりはどうしようもねえんだ」
 鮫牙族とは? そう尋ねられて、漁師は険しい顔をした。
「獰猛なディープシーの一族さ。村から略奪をしたり、山に火をつけるような乱暴な狩猟をする。特に酷いのが漁法でさ、海に電撃を放ったり自分たちには体勢のある毒を撒いたりして魚を乱暴にとっていくんだ。
 そいつらは海を殺して別の海へ。それを繰り返すんだ。
 そんなのって許せるか?
 許せないよな! イルカたちだって、そうさ!」

●鮫牙族を追い払え
「イルカさん、可哀想なのです!」
 うりゃーと言いながらサメさんを迎え撃つ構えをとる『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)。そのままサメさんをやっつけるパンチを虚空に繰り出すと、あなたへと振り返った。
「どうですか! サメさんをやっつける手伝いを、しませんか!」

 依頼主は幻想南にある小さな漁村の漁師組合だ。
 ここではイルカ漁法といって特別なイルカさんと心を交わして魚をとるという漁業が伝統的に行なわれている。
 しかし海洋略奪を主とする一族『鮫牙族』の侵略を受けつつあり、漁場はおろかイルカさんたちまでもが危険にさらされているのだ。
「依頼内容は勿論『鮫牙族』の撃退なのです!
 戦うのは海の上になるのですが……相手は海での戦いがとっても得意なディープシーなのです。
 心得がないと渡り合うのはチョット厳しいのです……。
 しかし!」
 しかしの構えをとるユリーカ。
「七色イルカさんが立ち上がったのです! 精神的ないみで!
 イルカさんたちは鮫牙族との戦いに協力してくれるのです。
 耐久力はともかく攻撃がからっきしのイルカさんなのですが、
 鮫牙族と戦う皆さんを背中に乗せてくれるそうなのです。
 これで、鮫牙族とも戦えるのです!」

 鮫牙族は海での行動に秀でたディープシーの一族だ。
 その中でも特に水上戦闘が得意な個体が集まった連中が集まっている。
「これは怒りなのです! 乱暴で自分勝手な鮫牙族たちへの、イルカさんと漁師さんの怒りを、代行するのです! うりゃー!」
 怒りの構えをとって、ユリーカは依頼書を突きつけた。

GMコメント

 ようこそプレイヤーの皆様、PandoraPartyProjectの世界へ。
 当シナリオはイルカさんに跨がっての水上バトル。
 何かに乗っての戦闘がお得意な方、動物になじみ深い方はいらっしゃいますか?
 勿論海での戦いがお得意な方は、そのまま突き進んで頂いてもOKです!

【依頼内容】
 『鮫牙族の撃退』
 悪いディープシー鮫牙族を戦闘で追い払います。
 流れもとってもシンプル。海上でぶつかり、戦い、倒すのです!

【水上戦闘と七色イルカ】
 必然的に水上(海上)での戦闘となります。
 そのまま戦った場合重めのペナルティをくらうことになるでしょう。(水中適応や水中親和があるとペナルティを無視でき、場合によってはボーナスもつきます)
 しかし今回は七色イルカさんが背中に乗せてくれるため、海上での機動力を確保できます。

●七色イルカ
 海の精霊に祝福された特別な動物。とっても希少。
 力強く長生きで、体力も豊富。傷の治りもとても早い。
 独特のキュイキュイ声を通して人と心を通わすことができ、親愛や友好の気持ちを伝えたり肯定や否定といった対話もとることができます。
 いわゆる『歌で会話をする種族』なので細かいニュアンスのやりとりはできませんが、彼らは愛する相手に愛を伝えられるだけで充分なのです。
 勿論というか、漁師さんたちとはとっても仲良しで人間(ディープシーも)に好意的です。
 今回はイレギュラーズの皆さんが漁師さんの代わりに戦ってくれると知って、やる気を出しています。

 この七色イルカさんに騎乗して戦う際、騎乗戦闘があると各種判定にボーナスがつきます。
 他にも動物と仲良くなる技能や七色イルカさんと仲良くする努力をしてみると、ボーナスがついたりします。

【エネミー】
●鮫牙族(こうがぞく)
 ハンマーヘッドシャークのディープシー。
 海洋(ネオ・フロンティア海洋王国)からちょっとはずれた島を中心に、乱暴な漁業や略奪によって生活している。
 とてもお行儀が悪く、話の通じない相手として巷では有名。
 ディープシーのイメージダウンになるとも言われ、特にサメ系の人にはとっても迷惑。ディープシーにはいいひと沢山いらっしゃいますのに。

 人数は8人。
 クラスはフィッシャーマンで統一。エスプリはバラバラ。
 武器は様々ですが、前衛タイプ半数、残りが中衛~後衛タイプといった所です。
 HP回復って考えがないのも特徴のひとつ。

【アドリブ度】
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用くださいませ。

  • 七色イルカと鮫牙族完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年02月15日 20時55分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

クロバ・フユツキ(p3p000145)
深緑の守護者
ギルバート・クロロック(p3p000415)
主人=公(p3p000578)
ハム子
フロウ・リバー(p3p000709)
夢に一途な
清水 洸汰(p3p000845)
理想のにーちゃん
カレン=エマ=コンスタンティナ(p3p001996)
妖艶なる半妖
メルト・ノーグマン(p3p002269)
山岳廃都の自由人
7号 C型(p3p004475)
シーナ

リプレイ

●七色イルカと海辺の町
 海鳥のなく港。潮の香りが染みついた石面足場を、黒い金属でできた足が踏みしめた。
 所々に赤いポイントの入った、どこか鋭い印象を受ける人型機械――『シーナ』7号 C型(p3p004475)はT字のアイシールドを暖かく光らせた。
「海の賊、ここに至るまで理由や環境もあったろうが……今回は依頼だ、撃退させて貰う」
 アンテナのように伸びる一本角を上げ、眼前の光景を眺める。
「この素晴らしき共存に祝福を」
 眼前では、美少女の姿をとった『異世界なう』主人=公(p3p000578)が歌いながら水面を滑っていた。
 より厳密に言うなら、イルカの額に足をつけて水面を滑るように進み、弾むような歌をうたっていた。
 イルカのジャンプにあわせて自らも飛ぶと、くるくるとまわりながらわざと海へと落ちていく。
 泳ぎながら戯れる姿は、今日初めて出会ったとは思えないほどだ。
 同じように海をばしゃばしゃと泳ぐ『楽花光雲』清水 洸汰(p3p000845)。
「なーなー、オレにもイルカの歌、教えてくれよ!」
 そんな風に言いながら、イルカのきゅいきゅいとした鳴き声をマネしていた。
 発声器官からして違うので全く同じ声は出ないが、一緒の声を出したいという洸汰の心意気にイルカたちは歓迎の歌をかえした。
 不思議なもので、キュイキュイという高い音が聞こえるだけなのに、イルカたちがどんな気持ちを伝えようとしているのかがわかった。
 そんなイルカたちを前に、ギルバート・クロロック(p3p000415)は海に面した石床に腰を下ろし、魚の切り身を取り出した。
 投げてやると、海面から飛び出したイルカがそれをキャッチする。
 これをギルバートなりの挨拶だと受け取ったイルカがそばに寄ってきたので、イルカの頭を軽く撫でてやった。
 真珠のようにつやめいた肌は陽光をかえして七色に光り、不思議なきらめきがイルカを覆っている。
「このきらめきが、イルカが祝福されている証なんだって」
 『山岳廃都の自由人』メルト・ノーグマン(p3p002269)が同じようにそばにやってきて、お菓子を投げてイルカにあげた。
 メルトは7号C型と一緒に漁師たちに色々と話を聞いてきたようだ。
 石に腰掛けイルカを撫でてやると、『大変だね』と話を切り出した。
 海に攻め込む鮫牙族たちの話だ。
「陸には陸のルールがあるように、海には海のルールがある。それを外れて悔いる気もないんなら、排除される。当然の理だよね」
「海種の尊厳を穢し、釣り人の誇りを持たない賊には罰が必要です」
 メルトの後ろに立った『夢に一途な』フロウ・リバー(p3p000709)は変化の状態を解くと、青い鱗を持った人魚の姿になって海へ飛び込んだ。
 そして自分の持ってきた魚をイルカたちにあげて挨拶を始めた。
 どうやらフロウは海種としても釣り人としても、とても乱暴な行ないをする鮫牙族に対して怒っているようだ。語調や振る舞いを荒げるようなことはしていないけれど、その気持ちが伝わってくる。
 それはイルカたちにとっても、共感できるものであったようだ。
 『双刃剣士・黒羽の死神』クロバ=ザ=ホロウメア(p3p000145)と『妖艶なる半妖』カレン=エマ=コンスタンティナ(p3p001996)が少し遅れてやってきた。
 お菓子が入った袋を二人で持っている。どうやらクロバの手作りのようだ。
「今回の戦いは海か……苦手なんだよな」
「ほう? 妾はそうでもないが……」
 二人がお菓子をぽんとなげてやると、イルカが大きくジャンプしてそれらをキャッチした。
 キュキュとないて感謝の気持ちを伝えてくる。
「よく動くのぅ、乗って戦うのはおもしろそうじゃ」
「そのうえオレの生命線だ。仲良くなっておかないとな」
 クロバは和菓子を取り出すと、イルカにむかって放った。
「こいつは前金代わりだ。無事に帰って来たらパーティと洒落込もうぜ」
 イルカは大きくジャンプをして、それをキャッチして見せた。
 高くあがるしぶきがきらめきに混ざり、広がった。

●海辺の町と鮫牙族
 水面を滑る八つの影。鋒矢のごとき陣形を組み海原を進むは、七色イルカとイレギュラーズ。
 きらめく軌跡をあとにひき、はるか前方に見える水面下の影に備えた。
 鼻歌混じりに気分を高揚させるギルバート。
「さて――」
 皺の入った顔を味わい深く歪ませ、ギルバートは呪符を手に取った。
 互いに戦闘可能圏内。
 水面を割って金槌を平らにしたような頭が現われた。
 銛と蛮刀が組み合わさった半端な武器を手に、ぎざぎざとした牙を晒して現われる姿は鮫牙族の印象そのままだ。
 陣形はこちらと同じ鋒矢。情報通りに前衛半数、中衛と後衛にそれぞれ二人といったところだ。
 前衛を仲間に任せると、ギルバートはカレンに目配せをした。
「手筈は話した通りじゃ」
「始めるとするかのぅ」
 相手を覆い込むかのように左右に分かれたカレンとギルバード。
 彼らはそれぞれの道具を取り出した。
 ギルバートは呪符を抜き、敵先頭の鮫牙族に向けて術を放った。
 一方でカレンは血の色をしたダイバースーツの胸元からダーツを取り出した。服と同じく血の色をした円錐状のダーツだ。
 ギルバートの術を受けて忌々しげに歯噛みする先頭鮫牙族めがけて鋭く投げ放つ。
 ダーツは空中ではじけ、先頭鮫牙族めがけて降りかかる。
 カレンの狙いはまず猛毒の効果を発揮させることだ。
 継続ダメージは回復手のいない敵陣営にとってひどい痛手となるだろう。
 攻撃を受け、鮫牙族の男は牙を打ち鳴らした。
「イルカだけなら食い散らかせたモンを。港の連中、兵隊を雇いやがった」
「心配ねえ、魚とりだけが取り柄のイルカは敵じゃねえ。乗ってる連中も海じゃからっきしに違いねえ。やっちまおうぜ!」
 海は俺らの独壇場。そう言わんばかりに銛を構えてジャンプする鮫牙族。
 先頭をいくクロバよりも高い位置から、勝ち誇ったように突きを繰り出す――が。
 クロバは上半身を大きく反らすだけでそれを回避してしまった。
 大きく身体は傾くが、イルカからは落ちていない。
 両足でしっかりと馬をはさみ腰の力でよける。騎馬戦闘における突撃回避の技である。飛び込んだ鮫牙族が驚きに目を見開き、そして後悔した。
 クロバは身をそらした姿勢のまま腰から刀をふたふり抜くと、ニッと小さく笑った。
「いくぜイルカ! オレたちの力、見せてやろうぜ!!」
 回避技であると同時に返し技。
 全身をつかった突撃をかわし、隙だらけになった相手の懐に潜り込み、クロバは鋭い斬撃を叩き込んだ。
 鮫牙族はギャッと小さな声を上げて海中へ沈んだ。
 血を混ぜてあがる水柱。
 クロバの紅い黒羽のマフラーが後をおってはためいた。
 鮫牙族の一人がチッと舌打ちする。
「二刀流の奴は騎乗戦闘使いだ、奴から潰すぞ!」
「囲んで一斉に攻撃しちまえばひとたまりもねえはずだ!」
 左右から回り込むかのように同時に飛びかかる鮫牙族たち。
 飛び上がった右舷鮫牙族――の視界が遮られる。
 空中に無理矢理割り込んだメルトがバックラーで銛を受け流していたからだ。
 メルトは予めイルカと共に水中に潜り、勢いよくジャンプしたのだ。
「こいつもか――!」
 しかもクロバ以上に、この状況に適している。
 メルトは無防備になった鮫牙族の脇腹に、剣を思い切り叩き付けてやった。
 まるで放り投げたお菓子をキャッチしていくかのごとく鮫牙族をさらっていくメルト。
 一方の左舷鮫牙族は水中に潜ったフロウが真下から魔力放出を浴びせ軌道をずらし、イルカにのった洸汰による体当たりで派手にはじき飛ばされていた。
「よっし、いいぞ! 一緒に頑張ろうな、相棒!」
 洸汰の呼びかけにキュイっと応え、イルカは挑発的に泳ぎ始めた。
 さあかかってこい。鮫牙族たちを挑発するように手招きする洸汰に、先程突き飛ばした個体とその次を狙おうとしていた個体がそれぞれ襲いかかっていった。
「よっしゃ――」
 銛による攻撃を盾で引き受けにかかる洸汰。
 そんな彼をカバーすべくフロウが外周をまわり、短杖を翳して魔術を連射していく。
 敵味方の前衛が噛み合ったことで、なんとか酷い集中攻撃を受けずにすんだ形だ。前衛担当の数が一人分少なかったが、それも洸汰が引きつけてくれているおかげで後ろに抜ける心配はない。
 フロウは一度水中に潜り込むと、敵味方の陣形を確認するように上向いた。
 虹色の軌跡を描き、公がレイピアを構える。
 まるで決闘でも始めるよに胸の前で垂直に剣を立てると、剣に魔術を絡めていく。
「ボクの体は君に任せるからね、あいつらを追い払うのはボクたちに任せてよ」
 イルカの背に手を添え、公は意識を集中させた。
「鮫牙族からこの海を守るために一緒に頑張ろう!」
 公が鋭く虚空を突くと、魔術が鋭く放たれ先頭の鮫牙族へと突き刺さる。
 こちらの戦力を低く見積もったことを後悔した彼だが、もう遅い。
 水面から飛び出し、血まみれの身体で反撃の一手を打とうと銛を翳すが――。
「武装展開」
 右腕からサイズアームを展開した7号C型が、イルカの加速にあわせるように激しい斬撃を叩き込んだ。
 折れるような裂けるような、そしてまた折れるような、複雑な音がした。
 全てはそのコンマ五秒後にあったもので説明がつく。
 折れた鮫牙族の銛。
 切り裂かれた鮫牙族の身体。
 その横を通り抜け、血しぶきを引きながらアイシールドを淡く光らせる7号C型。
「一人目だ」
 7号C型の黒光りしたボディを、血しぶきが追った。

●鮫牙族とイレギュラーズ
 イレギュラーズたちは順調に陣形を構築、維持していた。
 敵前衛を押さえ込みつつ、残った力で集中攻撃をしかけて素早く前衛の壁を削る。
 こちらの戦力を見誤っていた鮫牙族たちの油断に乗じる形で主導権を奪い、敵に防戦を強いる形となった。
 鮫牙族に、劣勢時に適切な連携がとれるだけの冷静さがあれば、まだもう少し戦況はもつれたのかも知れないが……。
「クソッ! クソッ! なんでこんな奴らがいるんだよ! 聞いてないぞ! クソッ!」
 後衛鮫牙族がボウガンを発射。
 対象はギルバートだ。
「ふむ」
 前衛への集中攻撃でもなくヒーラーへの食いつきでもなく、ごく普通の後衛アタッカーを標的にするとは、届く攻撃も少なかろうに。
「終わりじゃの」
 呪符を翳して継続した魔術攻撃を行ないつつ、公たちに目配せを行なう。
 公はうんと頷き回復魔術を詠唱した。
 手のひらに暖かい光を集め、ギルバートめがけてボールのように投げつける。
 そんな公を執拗に狙うのは鎖を振り回す鮫牙族だ。
 自らに巻いていた鎖を公めがけて放ってくる。
 公はそれを盾で受けつつ、すぐそばのフロウへと呼びかけた。
 激しい衝撃にイルカから一瞬はなされる公。
 海中を素早く泳いだフロウは落ちる公をキャッチ。水面に飛び出すと、共に遠術を連射した。
 一方で洸汰とカレンは執拗に食らいつく鮫牙族と戦っていた。
「よ、っと!」
 刀による攻撃を半分受け流し、相手の腕を掴む洸汰。
 一瞬だけ拘束された鮫牙族は彼を振り払おうと強引に身体を揺するが、それが命取りとなった。
「今だ、いけ!」
 洸汰の後ろから飛び出したカレンが、真っ赤な細身剣を逆手に翳したのだ。
 しまった! と言う暇も無く、カレンの剣が鮫牙族に突き刺さる。
 沈む鮫牙族を置き去りにしてカレンは水面に足をつけた。大きく水しぶきが上がり、直線移動をしていたイルカがターンする。
 冷静さを失うとあっけないものだのぅ、とカレンは沈み行く相手を見下ろして呟いた。
 そんなカレンに破れかぶれの射撃を行なう後衛鮫牙族。
 銃撃がカレンに着弾したが、カレンは大きく傾いただけだ。イルカから落ちはしない。
 どころか、哀れなものを見る目をしていた。
 そばを通った7号C型が腕を翳し、回復薬液が入った注射器を射出。カレンに打ち込んで素早く抜けていく。
 後衛鮫牙族は今度はお前だとばかりに7号C型に狙いをつけたが、彼は構わず相手に突っ込んだ。
 銃弾が装甲をはねていく。
 打ち落とされそうになったところを、イルカのひれを掴む形でこらえた7号C型は、そのまま鮫牙族に強烈な斬撃を浴びせてやった。
 銃が跳ね上がり、追って水中へと落ちた。
 傾く板を玉が転がるように、鮫牙族とイレギュラーズの戦いは形勢が変わらぬまま最後の一人を刈り取る段階へと転がり込んでいった。
「覚悟はできてるよね」
「うるせえ! 俺はしなねえ!」
 エモノを構えた鮫牙族が破れかぶれの突撃をしてくる。
 メルトはそれを正面から受けるようにまっすぐ突っ込むと、相手の突撃に対してすくい上げるよな突撃を打ち込んだ。
 ガッ、と声を吐いて宙を回転する鮫牙族。
 そんな相手に、イルカの上に直立したクロバが迫った。
「文字通り――沈め」
 すれ違い、刀を払い、払いきって瞑目する。
 速度を落としたイルカの上で、刀をくるりとやってから鞘に収めた。
 沈む敵を背にしたまま、クロバは左目だけを開けた。

●イレギュラーズと七色イルカ
「善人、悪人、モンスター……全て等しく救おう。巡れ――涅槃寂滅(ニルヴァーナ)」
 7号C型が海に祈るかのように手を翳していた。
 たとえ略奪と暴虐を繰り返した者であっても、すべて救われよとばかりに。
 一方で、ギルバートは海辺の小さな椅子にこしかけフロウと共に釣り糸を垂らしている。
 集まるイルカたちと戯れるように、洸汰やカレンは海を泳ぎ、怪我はないかと問いかけている。
 漁師たちが依頼の成功を祝して一席設けるそうだと、メルトが遠くから呼んでいる。
 クロバは頷き、お菓子を手に取った。
 そして今日のお礼だとばかりにイルカたちへ投げれば、つやめく七色イルカが高くジャンプをした。

 この港からは明日もまた船が出て、イルカたちと共に漁をするのだろう。
 明後日も、明明後日も、まるで永遠のように、祝福の光を水面にひきながら。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 おかえりなさいませ、イレギュラーズの皆様。
 皆様のおかげで港の平和は守られ、イルカたちもさしたる怪我もおうことなく日常を取り戻したようです。
 そのうちに、戦いとは別の用事でこの港を訪れるのもいいかもしれませんね。
 きっと漁師たちも、イルカたちも、皆さんを歓迎することでしょう。

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