シナリオ詳細
<ゲノム解析>生かすは難し、殺すは
オープニング
●そのころのイヌ
「……食べないのかい?」
イヌは食べ物に口をつけたが、半分も食べずに残してしまった。老夫婦は顔を見合わせ、ため息をつく。
イヌは鼻をすんすんとさせ、よたよたとかごへと戻っていった。
「そんなせまいところにいなくてもいいのにねぇ……」
このイヌは<悪性ゲノム>一連の騒動で、悪性ゲノムに感染したイヌである。
かつては死に瀕していたが、イレギュラーズたちの努力で一命をとりとめ、今は老夫婦のもとで保護されている。
名前をレギュラーという。
だが、どうにも最近元気がない。
それが悪性ゲノムの後遺症……いや、治り切っていないがゆえだ。
●サンプル
「学者集団が『ゾンビ病』の調査に乗り出したという話は聞いているかい?」
『黒猫の』ショウ(p3n000005)はイレギュラーズたちの顔を見回し、頷いた。
「そう、彼らの手を借りて、抗体や特効薬を作ろうという動きがある。今回の依頼もその手のものだけど、『ゾンビ病』とはまた違った方向からのアプローチさ。
<悪性ゲノム>事件の初期において、動物たちが感染した方の悪性ゲノム……。そっちの方からでも、有用な情報が得られるんじゃないかという目論見がある。まあ、何事もデータは大事だからね。で、ちょうどよく、悪性ゲノムに感染し、……森の奥で、逃げおおせた個体……いや、”生まれてなかった”というべきか……」
ショウは意味ありげに言葉を切った。
「先日、幻想のとある辺境の村の近くの沼で火事があったのは知っているかな? 沼地で火事があるなんてこともまあ、珍しいんだけどね。焼け跡の真ん中で、奇妙な卵が発見されたんだ。イレギュラーズたちに調査を依頼しようと思ったところで、卵が孵った。おどろおどろしい化け物が生まれ、周りの木々を枯らしながら、村に向かっている……。今もね。
と言うわけで、急ぎの依頼になる。動き自体はゆっくりらしいから、まあ、半日はもつさ。
この個体は生まれながらにして悪性ゲノムに適応した個体。生け捕りにすれば、抗体ができるかもしれない、というのが学者の言い分さ。いっそ倒してしまった方が、手っ取り早いんだろうけどね。まあ、君たちなら、問題なくやってくれると信じているよ」
- <ゲノム解析>生かすは難し、殺すは完了
- GM名布川
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2019年02月01日 21時15分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●レギュラーという名のイヌ
レギュラーは立ち上がりかけたが、力なく崩れ落ちるのみだった。
「はじめまして」
『「国の」盾を説く者』エト・ケトラ(p3p000814)は目線を合わせ、そっと小さな命に触れる。
「……賢い子ね。そして優しい、だからこそいじらしい」
褒められているのが分かるのか、レギュラーはじっと耳を傾ける。
「レギュラー……貴方は必ず助けるから!」
『寄り添う風』ミルヴィ=カーソン(p3p005047)はレギュラーを優しく抱きしめた。
「貴方がまた彼と出会えるよう、最善を尽くしましょう」
僅かな邂逅。……敵は迫っている。
「上手く行けば助けられる生命があるかもしれないんだ! 頑張るよ!」
『希望の蒼穹』アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)はレギュラーを撫でた。
『無影拳』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377) は拳を握って、前足と触れ合った。
●守り神と言われたものは
「ここだね……」
アレクシアは元気のない木々のざわめきに心を痛めた。道なりに植物が枯れている。禍々しい泥が、点々と足跡のように続いている。
「悪性ゲノムねぇ、噂には聞いてたけど随分厄介そうだ」
『蒼ノ翼』ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)は息を吐く。
「悪性ゲノム、関わるのは初めてです。通常の生物があの暗黒の泥の塊のようなものに変わってしまったのであれば、これ以上に恐ろしい現象は知りません」
『渡鈴鳥』Lumilia=Sherwood(p3p000381)は麗しい羽を怖れではなく使命感から震わせた。
「今回の抗体研究で多少は好転するといいけどね。本来無害な生き物ですら変質させるってどういう仕組みなのやら」
「村やまだ枯れてない木々もある……護れるようにするよ!」
「何としてもコウタイを作って、持っていかなきゃね!」
イグナートは頷き、沼地を苦も無く駆けていた。
守れるものはある。
視界が開け、地響きが鳴り響く。
オオミドロが姿を現す。まだこちらには気が付いていない。
動きはのろく、おそらく倒すこと自体はそう難しくはないのだろう。……手段を選ばなければ。
生かすのが難しいならば、殺すのは。
「容易し……というわけか。なるほど」
『Esc-key』リジア(p3p002864)はショウの言葉を脳裏に思い出し、静かに標的を見つめる。
「おぞましい外見。さすがにコレが守り神、って事はないでしょ」
ルチア・アフラニア(p3p006865)は魔術書を開いた。
「近づかなきゃいけないみたいだけど……回復、任せて」
「嗚呼……そういう依頼だ。破壊するのは控える。……それ、くらい……やってみせる」
(また命をもてあそんで!)
禍々しい敵の姿に、ミルヴィは怒りを覚えた。
悪性ゲノム。これほどまでのものか。
イレギュラーズは、人里離れた方向にオオミドロを誘導する。
村の反対側から回り込むように迂回し、ゆっくりと進む。
「こっち!」
アレクシアが的確に被害の少なくなるであろう道を選ぶ。
エトの死霊弓がオオミドロの注意を引いた。化け物はぐるりと向きを変える。
オオミドロはイレギュラーズを一度は見失うが、白銀のフルートの音色がした。
ルミリアの演奏に乗る甘い香りが発散して誘惑する。無自覚のギフト。音色と、匂い立つ香りが、オオミドロを引き付ける。
一歩、そしてまた一歩。
イグナートは手頃な石を投げ、敵の歩みを誘導した。
戦乙女のマントをひるがえし、ミルヴィはつかず離れず進みだす。
オオミドロの歩みは次第に早くなり、勢いあまってどうと倒れた。
「このあたりでいいよね!」
イグナートが足を止め、振り返った。オオミドロが迫る。
「誇りタカいユウシャを生かすための戦いなんて負けるワケにはいかないじゃないか」
イグナートは、勢いを殺して正面から攻撃を受け止める。
ミルヴィは風に舞うように、オオミドロの行く手をふさいだ。
「ここなら大丈夫だね」
アレクシアが頷いた。
開けた場所だ。ここならば存分に戦える。
ミルヴィの六方昌の眼差しが矢のようにオオミドロを射抜く。形のしれない化け物の中から、小さな眼が覗いた。
瘴気が辺りを蝕んだ。ミルヴィは退かない。攻撃のチャンスを手にしたとばかり、聖剣イシュラークを振るった。
殺生への抵抗の薄れ。やんわりと精神を蝕む呪いは、この場においては――自らを省みずに誰かを救いたいという思いによって振るわれていた。
(自分の痛みなんて知らない、必ず助ける)
「素早さは大したことがない、か……」
リジアは4つの翼をはためかせ、跳んだ。
Per。Ruina。破壊の力を前にして、恐怖か、畏怖か。オオミドロは身を震わせる。
リジアは低空飛行で間合いを計る。破壊への研ぎ澄まされた理解が正確な攻撃を可能にする。
四つの翼が異形の物体を切り裂いた。
泥を押しのけてのけぞる敵を、イグナートは待ち構えていた。
「いくよ」
ショットガンブロウ。……効いている!
オオミドロは体を震わせ、思い切り上に跳ね上がった。ヘドロがしたたり落ちる。強力な攻撃がそれだけ反動として返ってくるが、エトのシェルピアが毒を癒やす。
柔らかな光だ。
「このオオミドロ自体は悪い生き物ではないはずだけど……ゴメンね!」
アレクシアは致命の優花を放つ。カルミア・ラティフォリアはそうやすやすと枯れはしない。白と桃の優美なる毒花は己を蝕みながらどろどろとした液体を溶かして散る。
そして、不意に。
ルミリアの〈神の剣の英雄のバラッド〉が響き渡る。音色は、ただ、とうとうと。
歌詞を伴わないその演奏は、伴わないからこそはっきりと各々の脳裏に情景を描き出す。神の剣を授かりし英雄の詩曲。
自身が傷つくことも厭わず、ルミリアは美しい音色を奏でていた。
ルミリアから受け取る、聖なる刃。
「悪いけどキミの組織が必要なんだ、大人しく解体されてくれない?」
ルーキスは三七式魔導銃イグニスを向けた。ⅩⅩⅤ:血霧纏う黒翼狼。『グラーシャ・ラボラス』が思うままに敵対者を引き裂いた。
呪いのように泥が飛び散る。弱った獲物をなおも押しつぶそうと蛙はもがいたけれど。
「落としたいってなら、先に私を倒すことね。気力の続く限りは回復するわよ」
ルチアのメガヒールが、勢い仲間を癒していく。
「よし!」
力を得て、イグナートは疾風のように駆けた。
ヘイトレッド・トランプル。憎悪の爪牙を拳に乗せる。
武器は必要ない。拳が武器だ。イルアン・グライベル。……押しつぶすというよりももはや鋭い剣と化した一撃が敵を切り裂いた。
オオミドロが体勢を立て直そうと飛び上がる。その前にミルヴィは動いた。
視線をからめとり、攻撃は誘導される。あるべき位置へ。
六方昌の魔眼。切り裂くような身の痛みも、引き受ける。
引き受けてなお、聖剣イシュラークを振るう。ルミリアの奏でる音楽に合わせて、ミルヴィは戦場を舞っていた。
あたり一面、何もかも枯れ果て、生き物の気配の感じられない場所。
しかし……。〈ルーン・アルメリア〉。ルミリアは短節の呪歌を唱えれば、様子が変わる。
無数の光条が対象を拘束し、凍りつくと同時に、花が咲いたかに思える香りがあたりを舞う。小さな桃色の花は、オオミドロの支配を跳ねのけるように咲き誇る。
相手の動きを阻害すれば、それだけ効率よく、且つ、急所を外した上で戦力を削ぎやすくなる。読み通り、オオミドロの動きは明らかに鈍る。
アレクシアがトリテレイアをつけた片手をあげた。致命の優花が咲き誇る。
花が散る。そして咲き誇る。自然とはおよそかけ離れた光景は、美しく幻想的だった。
オオミドロは大きくもがいた。
燃え盛る炎が、イレギュラーズに迫る。
「そうはいかない」
ルチアのアウェイニングが、イグナートの、そしてミルヴィにとりついた禍々しい気配を振り払った。また新しい魔術書のページを試してみようかと、一枚めくる。
●動きは鈍る
ミルヴィの舞いは、次第に苛烈さを極めていく。悲哀の輪舞……自らに返る攻撃を引き受け、まっすぐに相手を斬りつける。
イレギュラーズたちは傷ついてなお、立ち上がる。
「力になります……」
ルミリアのハイ・ヒールがミルヴィを癒した。
(仲間がいる……アタシは、戦える……!)
ルミリアの一面が癒しの天使であるなら、リジアは破壊の天使。
リジアの羽が瞬き、破壊を齎す天使から宙へ放たれた極光。バランスを崩して跳躍したオオミドロを穿った。
「さて、そろそろ様子見かな?」
ルーキスが攻撃の手を休め、ⅩⅩⅩⅥ:蒼梟の天球『ストラス・アーミラリ』を呼び出した。淀んだ空から降り注ぐは、偉大なる悪魔が魂と共に遺した天球儀の光。
零れ落ちた自然の力は、干からびた沼地に息吹を取り戻す。
アレクシアの破邪の聖花が、柔らかく戦場に降り注ぐ。
オオミドロはより一層苛烈に、身を守ろうと燃え盛る。
「狩るだけなら手間もかからないんだけどね。命を狩って命を助ける、矛盾してるのは承知の上さ」
ルーキスが射線を譲る。ルミリアの聖光がオオミドロを包み込む。
戦いは大胆から精密へと戦局を変える。
「まだまだ!」
イグナートは攻撃を受け止めると、拳闘をぶちこんだ。相手の動きはかなり鈍ってきているように思われた。
「最後の抵抗、ってところかな」
ルチアのブレイクフィアーが炎を払い、仲間を奮い立たせていった。
エトの放った威嚇の矢で、オオミドロは数歩下がる。オオミドロは短い咆哮をあげた。
「ゴメンね……もう貴方は救えないけど貴方と同じ可哀想な命は貴方に代わって助けるから……」
――だから、命を恨まないで。
ミルヴィの一撃。黎明剣イシュラーク。殺すためではない剣。
ミルヴィを包んだまばゆい光。
それは、闇を断つ一撃。
ルミリアの聖光が、オオミドロを包み込む。
「こんなところ、か……」
リジアの威嚇術が、オオミドロを地面に縫い付ける。
オオミドロは倒れた。瘴気は失われ、あまりに早いが、戦いの影響で、すでに花が咲き始めていた。
●抗体ともう一つの駆け引き
オオミドロは生きている。……生きている。とうに虫の息ではあるが、かろうじて生をつなぎとめている。
採取をするには、理想的な状態だった。
「残念ながら毒耐性はないんだよね」
イグナートはぐるりと肩を回した。
「でもまあ、オレの機械腕なら痛いだけで指が落ちたりとかはせずに済むだろうし。カコク耐性がちょっとはハタライテくれるといいなぁ……」
「大丈夫だ……押さえておいてくれ」
リジアが歩み出る。
「毒に耐性があるのは私だ。ディープ・グリーンによるものだが……」
手には大粒のエメラルド。
「さて。そもそも宝石で何故毒が無効になるのか本当に謎だがさすが混沌というところか……」
「気になるわね」
ルチアは少し興味深そうにディープ・グリーンを眺めている。
「助かるな。抗体づくりじゃ役に立てないからね」
イグナートははにかんだ。
「アタシも押さえるわ」
ミルヴィが腕を差し伸べた。
「無理はするな……」
「無理を……したいの。できることがあるから」
「わかった……。精一杯サポートするね」
アレクシアが頷いた。
まだ、回復の余裕はある。
「少々こわ……くなどないが、耳腺の摘出は私が執り行う。場所は……だいたいこの辺りだろう」
「はい、どうぞ」
ルーキスはリジアに狩人の護刃を貸し出した。
慎重に刃を差し入れるが、的外れの場所だったようだ。
ミルヴィが息を飲み込む。
「気を付けて……」
「…………教えてくれルーキス……」
「任せて」
ルーキスが描いた弧を、リジアが慎重になぞっていく。痛み。手元が狂いそうになるが、アレクシアの破邪の聖花が傷を癒した。
緊張に包まれた一瞬が終わると、見事、小さな石のような部位を取り出した。
「……ゴホン。事が無事に済めばそれで良い、それでいいのだ。重要な部位だけ残して破壊……破壊する……」
眠らせてやるには、どこをどうすればいいのか、リジアには見当がついた。
「おやすみなさい……」
エトは目を伏せる。
とどめを刺されたオオミドロは、本来の生き物らしい姿を取り戻していた。
リジアはルーキスに刃を返した。
「これだね」
アレクシアはアナザーアナライズを用いて、未知の成分を解析する。
「さて上手くいってくれるといいんだけど」
ルーキスは首を傾げた。
「ぶっつけ本番っていうのも緊張するね」
●交渉
「ありがとうございました」
事務的に礼を言い、死体を回収する学者たち。
彼らに、ずいとエトが歩み寄った。
「先生の皆様! わたくし達の手で何とか生け捕りにしたのですが、以前にゲノム感染した犬が元気がなくって……この抗体を一部で構わないのです、頂けませんか?」
「ちょっと君、何を……」
制止されるが、エトは聞かなかった。
エトが目を合わせたのは、一番年配の学者。
おそらくはここのまとめ役。相手にするならばここと確信があった。
ルビーのような赤い目に、エトは涙を浮かべている。外見は可憐な少女であるにもかかわらず、ただの少女と無視はできない。
「作成した抗体の有効度を試す場が、ここに」
「このイヌに投与すれば、この場で抗体の効き目がすぐに分かるのではないのかしら」
ルミリアとルチアが加勢する。
「しかし、作ると言っても……時間がかかりますよ」
「その必要はないよ」
アレクシアに注目が集まる。
「完全ではないだろうけれど、解析もした」
「抗体のサンプルは、これだ」
ルーキスが小さな小瓶を振る。
「ま、まさか本当に?」
学者たちはざわめく。大した設備もなく、急ごしらえでこの成果を上げたというのか。
情報は、のどから手が出るほど欲しいものだ。
(それでもっと助けられる動物が増えるならいいしね)
しかしまだ、ためらいがある。
「ありがたいです、けれど……」
エトは相手を凛と見据えて、百を越える年月を生きた感情を言葉1つにすら宿らせる。
「……それとも、イレギュラーズが、国を股に掛けるギルドが、得たものを強硬に収集するつもりかしら? 魔種が跋扈する昨今に?」
強い言葉に射抜かれるように、学者は一瞬動きを止める。
(直接的には言わないわ、権限はないもの)
エトは相手の反応をうかがった。
(けれど賢しい頭のお歴々なら裏を読むでしょう。魔種に蹂躙される自分を、国を見たいのか?とね)
取り巻く空気が、エトに傾くのが分かる。
「分かりました。お譲りしましょう……」
アンプルは一本。
「やったね」
イグナートは微笑んだ。
「絶対に助けてみせるから……!」
ミルヴィはレギュラーの横に膝をついた。
いつか、この子を最初に拾った首輪。今は名の刻まれた首輪を握り締め、話しかける。
「アタシの事覚えてる……?」
レギュラーは瞬いた。
「貴方は今は幸せ?」
それにも、YES。だがためらいを感じた。もっと欲しいものがある、けれど、今はこれでいいとあきらめているような頷きだったから。
「心配はいりません」
エトが優しく言った。
「お願いだからこれを受け入れて……貴方はまだ生きなきゃいけないでしょう? あの人を待つんでしょう……?」
ミルヴィは、レギュラーの感情を読み取った。かすかな怯えが伝わってくる。
「そっか……怖いんだね、大丈夫! また暴走したってアタシ達が何度だって貴方を止めるから……それが貴方をあの時生かした責任」
「そうだよ。オレ、結構強いよ」
「だから貴方は幸せにする、してみせる! もう一度アタシ達を信じて……」
レギュラーは伏せると、じっと目を閉じ、身を任せた。
抗体を投与すると、暫くののちにすやすやと眠り始めた。
「やっぱり、普通の犬ね」
ルチアがそっと額をつついた。寝顔は安らかで、ただのイヌ。
「これがちゃんと効いてくれればいいんだけど。ともあれお疲れ様、後はキミが無事に治ることを願っておくさ」
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
というわけで、<悪性ゲノム>、無事にオオミドロからの抗体を手にすることができました。
お疲れ様でした。
オオミドロの討伐、抗体の採取、サンプルの調達、説得、……お手並み鮮やかでした!
抗体を得たことで、レギュラーも食欲を取り戻し、元気にやっていると思われます。
機会がありましたら、また冒険いたしましょう。
GMコメント
●目標
沼の主、『オオミドロ』の生け捕り。
不殺属性の攻撃でとどめを刺した場合、生け捕りにして抗体を作成することができます。
(優れたロールプレイング等で、判定が緩和されたりします)。
なお、抗体作成後、オオミドロは死滅します。抗体を作成するために生け捕りにするという感じです。
●状況
焼け残った湖沼で生まれたオオミドロは、ゆっくりと木々を枯らしながら村方向へと接近中。
村の逆側は林や山地となっている。
おびき寄せることもできるだろう。
●湖沼
ぬかるんだ地面の沼地。湿気が多いが、木々が黒焦げになって燃えている様子もある。
歩き回るのにとくにデータ的なペナルティはない。利用しても良い。
●オオミドロ
どろどろとした粘液のなかから目がのぞいている。生まれそこなったカエルのような姿をしたモンスター。生まれてからすぐカエルの姿をとっていた。
真っ黒な、タール状の粘液をまとった巨大なヒキガエルのような姿をしている。
生き物に反応して近づき、枯らす。意思はない。
捕食はしないようだ。
動きは緩慢だが、ジャンプだけは素早い。ジャンプして押しつぶすような攻撃をするほか、触れたものにダメージを与える。
また、弱ってくると動きがおぼつかなくなっていく。
・ジャンプ……高く飛び上がって移動し、押しつぶします。猛毒を食らう可能性があります。攻撃手段自体は単純ですが、反撃とBSが痛いです。
・燃える背中……業炎(毎ターンHPを最大値の5%失う)を与えます。
・瘴気……傍(至近くらいまで)にいるものに疫病を与えます。
・禍々しい皮膚……反(自分が受けた20%の確定ダメージを与える)属性です。
後頭部の耳腺から抗体を作成できる。
不殺でしとめた後、このドロドロに手を突っ込む必要があるだろう。手で触れると、火傷のような痛みがある。適切な道具や毒耐性があれば、いくらかましかもしれない。
オオミドロは、死ぬと通常のヒキガエルのようなシルエットに戻る。
解放されたその様子はどこか安らかだ。
●近隣の村の言い伝え
「この村では、カエルは村の守り神。守り神様がお怒りなのでは?」と思っている。
ただし「だからと言って殺すな」、という声があるわけではなく、ひたすら恐れ多い、なんとか静まって欲しいと思っているようだ。
●抗体
オオミドロの体と作成した抗体は学者集団が回収していってしまいます。
イヌ(レギュラー)に渡したい場合は、上手く言いくるめるか、ちょろまかすか、ある程度の技能を持って自作する必要があるでしょう。
(※このシナリオ内のみの限定的な抗体に限りますが、作成できます)
●元気のないレギュラー
前回の依頼(<悪性ゲノム>おれのイヌを”助けて”くれ)で救出した黒い犬です。
レギュラーといいます。
弱っていて少し毛並みにつやがありません。走れないようです。
(PL情報)
・体力をつけると暴れ出してしまうため、人を傷つけたくないと思い、自らの意思で食事をあまり食べないようです。檻から出てこないのもその辺が関係しているようです。弱っているのも確かのようです。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
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