シナリオ詳細
ごめん、母さん、今日は帰れそうにないや
オープニング
●ホワイトアウト
目の前に広がるのは白、白、白……。
ホワイトアウトする視界に、キータ・ペテルソン (p3n000049)は若干死を覚悟した。
「こんなところで遭難かよ……!」
おお、見習い情報屋よ。死んでしまうとはなさけない。
いや、まだやるべきことがある……。ここで終わってたまるものか。凍えながらもてくてくスキーで歩いていくと、小さな明かりが見えた。
「人か!? 人がいるのか……。燃えろー、俺のパンドラあああーーー!」
叫びながら必死に足を動かすと、どうやら本当に建物だった。そこは雪山にある、とあるロッジだった。
●さて……。
イレギュラーズであるきみたちは、様々な理由でこの曰く付きのロッジにやってきた。
山での依頼の帰りなのかもしれないし、単なるスキー旅行で巻き込まれたのかもしれない。あるいは、キータのように、イエティがいると聞いてやってきた類のものかもしれない。
このロッジには、様々な曰く付きの噂があった。
曰く、昔に殺人事件が起こっただとか。曰く、蠍の拠点であったとか、いやいや、どこぞの暗殺令嬢の別荘だとか。噂は根も葉もないものばかり。
やれ、眼鏡をかけた蝶ネクタイの少年が遊びにきただとか、じっちゃんの名にかけてとか。それだけではない。台風の日にコロッケを作っただとか、もう訳の分からないくらいのエピソードが履いて捨てるほどあるのだという。
UMA伝説もまたその一つ。
だが、この依頼はEASYである。
この依頼の中で、特に殺人鬼や神話生物やUMAが出るわけではない。
今のところ、ただ帰れないだけだ。
薪はなくなりかけているし、吹雪は止まないし、外部との連絡は取れないし、食材と言えるものはそっけない缶詰みたいな保存食しかなく、吹雪が止むまで……朝になるまで帰れないだけだ。
とにかく確かなのは、このロッジは一晩隔離状態にあることだ。
せっかくだからと皆でワイワイ、トランプして過ごすもよし、部屋に引きこもって範囲内でいちゃつくもよし、いっそ外に出て地獄の寒中水泳としゃれこんでもいいし(運が悪くても重傷で済むだろう、たぶん)、泊り客を軽く脅かしてみるのもいいだろう。
とにかく、奇妙な縁で集まったあなた方は、一晩を共に過ごすことにした……。
- ごめん、母さん、今日は帰れそうにないや完了
- GM名布川
- 種別通常
- 難易度EASY
- 冒険終了日時2019年01月26日 21時45分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●吹雪の山荘
「ふぅ、依頼での帰り道にとんだ猛吹雪に巻き込まれてしまいましたね」
『特異運命座標』ジョージ・ジョンソン(p3p006892)は雪を払いロッジの扉をくぐる。
『特異運命座標』エリザベス=桔梗院=ラブクラフト(p3p001774)がろうそくの明かりに浮かび上がる。
面食らったが、すぐに挨拶を返す。
「どうも。ロッジの方ですか?」
「いいえ。登山をしましたら、この天気で」
「そうですか。他人のロッジを勝手に使うのは少し心がひけますが、緊急時ですし、後で説明して許してもらいましょう。ところで……」
「え? どうしてこんな悪天候の山に、でございますか?」
エリザベスはふっとそこはかとなくいい顔を浮かべる。
「そこに……山があったから……」
「……なるほど」
明確な理由などないのだ。
「吹雪に閉ざされた冬山。寂れたロッジに集う人々。その背後に忍び寄る影……」
エリザベスはひたりひたりと廊下を歩いていく。
「怖いな~怖いな~嫌だな~」
●PM4:00 ロビー
すでに何人かの客がいた。
「巨大雪だるまの退治依頼が終わったと思ったら遭難だなんてぇ……幸い一人じゃないし、飲んだくれていたら一晩くらいすぐよねぇ、きっと」
『宵越しのパンドラは持たない』アーリア・スピリッツ(p3p004400)はソファーによりかかり流れるようにビールの栓を抜いた。中ほどまで金色に染まった髪が一杯目ではないことを物語っている。
「遭難しかけた時はどうなるかと思いましたが、拠点を確保できたとなるとこの雪景色を堪能したくなりますね」
エリザベスは満足そうである。
「俺はなんたってこんな雪山のロッジにいるんだろうな。いやロッジにいるのはいいんだ別に」
『アニキ!』サンディ・カルタ(p3p000438)は暖炉に薪を足した。
「吹雪の中閉じ込められるってのはまあまぁドラマチックっちゃそうだよな。そうなんだが、俺用のヒロインって感じのメンバーがな。居ないのがな」
「大切な人が巻き込まれなかったことは良いことだ。ポテトが巻き込まれなくてよかった」
『死力の聖剣』リゲル=アークライト(p3p000442)は微笑んだ。
「おっと、噂をすればカップルか」
『Calm Bringer』ルチアーノ・グレコ(p3p004260)と『白金のひとつ星』ノースポール(p3p004381)がやってきた。
「お邪魔します。折角のスキー旅行なのに遭難だなんてね」
「一応、診ましょうか?」
医者であるジョージが簡単な診察をした。
「……ところで私、近くの酒場で「以前スキー旅行に来たカップルがロッジで凄惨な殺人事件に巻き込まれて…」って聞いたのよねぇ」
「……え?」
「続きはやめておきましょ、カップルもいることだし」
アーリアは言葉を切る。
(カップルの殺人事件があったなんて!! それ以外にも不気味な噂があるの!? うぅ、怖いよ〜〜!)
ポーはびくびくぷるぷると震えた。
「ポーと一緒なら悪くはないよ。何かあっても、僕が必ず守るからね!」
「ルーク……」
ポーはルークにぎゅうと抱き着いた。ぬくもりが伝わってくる。
「……片方が殺されたら悲劇だな。そうならないよう俺が守らなければ」
リゲルは決意を固める。
扉が開き、風が吹き込んできた。
「よかった、人がいた!」
『クソ犬』ロク(p3p005176)がプルプルと身を震わせながら入ってきた。
「幻の肉食獣ミギョルピ・ンンバォの目撃情報があったから来てみたんだけど……吹雪かれちゃった! あー寒い!」
何て?
「ミギョルピ・ンンバォでございますか」
エリザベスがよどみなく復唱した。
「ロッジがあって良かったなあ。なぜか見知った顔が多いんだけどたぶんこれミギョルピ・ンンバォ神の思し召し!」
「まあでもここ無人だしな。何かが出てくるわけでもねー。俺の直感もそう言って……言って……あれ?」
サンディのエネミーサーチが一瞬だけ反応したような気がした。
「どーも調子が悪いのかな。何か出たような気がしたが……まあいっか」
「ほうほう、殺人事件があったロッジに幻の生物……面白い話ですね。僕もこの辺にロッジにみせかけた生物兵器の研究所があるという噂……というか都市伝説ですかね? なら聞いたことがありますね」
「生物兵器!?」
ポーは一層ぷるりと震え、なだめるようにルークが髪を撫でる。
どさりと屋根から雪が落ち、アーリアが一瞬びくりとした。ポーをからかってみたものの、実のところ幽霊は怖い。
「地下研究所の事故で逃げ出した生物兵器に多数の研究者が殺されたとか……怖いですねー。
まあ、そんな物騒な研究所が本当にあったらローレットが動いてるはずですし、きっと旅行者を怖がらせるためのいたずらですね」
「改造肉食獣の崇拝施設かも!?」
●PM5:00 ロッジ
「一旦ロッジを見て回って、まずは落ち着きましょ~」
一行は部屋の設備を確認することにした。
「このロッジには開かずの地下室があるのか?」
リゲルは閉ざされた扉を見つけた。しかし開かない。
「とりつぶされたのか? 不審者や怪物が居たりしないだろうな。今晩は寝ずの番をするぞ! なあキータ」
「あ、俺も!?」
「さて、見たところ食料も心もとないようですね」
エリザベスは食糧庫を開けて首をかしげる。
「ですがこんなこともあろうかと! チョコレートなら結構な数を持ち歩いてますので、よろしければみなさんどうぞ」
懐から、ばらばらとチョコレートが出てきた。異様な用意の良さを発揮する。
「ええ、雪山にいくならチョコレートをもってけと今朝がた宿を出るときに通りすがりのおばさんから言われたのがまさか役に立つとは思いませんでしたよ」
「予言者だったんでしょうか?」
「僕もちょっとだけスキー旅行のお菓子を持ってるんだ。こういう時に助かるよね!」
「お腹すいたな……」
リゲルはロクのほうを見る。
「あっ! リゲルさん! や、やめてね? わたし食べてもおいしくないよ?」
「い、いえ。食べようだなんて考えていませんよ? 仲間じゃないですか!」
「ほ、ほら旅のお供のロバを外に繋いであるから! 食べるならそっち食べて!!」
「この吹雪に外にロバを繋いだのか? 何かに食われてても知らねーぜ」
「大丈夫! ンンバォの主食は熊なんだ」
「大丈夫なのか、それ」
「でもちょっと怖いなぁ! この季節熊って冬眠してるから……腹を空かせたンンバォは……そう、こういう山小屋を群れで取り囲んで、出てきた人間を一人ずつ、食い殺すんだ!」
「ひっ……」
「大丈夫だよ、ポー」
「「ンピョギオオン、ンピョギオオン」って鳴き声が聞こえたら、もうその小屋にいる人間は手遅れ…」なんだって」
「今のところ聞こえないみたいですね」
エリザベスは残念そうだ。
「あら、もしかして薪がピンチ? お風呂も入りたいし、何よりこれじゃあ一晩越せないわぁ!」
「おーっと待ったアーリアさん。薪を取りに行くのは男の仕事だ……!」
すかさずサンディが名乗りを上げる。
「あら、ありがとう。頼もしいわぁ。外で見た気がする小屋に行ってみましょー!」
「力仕事は有難いですね。俺も手伝った方がいいかな?」
「そうだな。後でまた取りに行くのも大変だからな」
「ふむ。冬の風物詩と言えば寒中水泳でございましょう」
エリザベスはしたり顔で言い、ふらふらと玄関に吸い込まれていく。
「あれ? 外からなにかの鳴き声が聞こえてくるね! エリザベスさんも外に行くみたいだし大丈夫でしょう! じゃあみんな、ちょっと幻の生き物探してくるからロッジをよろしくね!」
冗談ではなく吹雪の外に消えてゆく。
残り、PC6人。
●PM7:00 外
「んー、こっちね」
ほとんど暗闇に近いような光景だが、アーリアは目ざとく酒家眼を走らせる。
しかし、寒い。くじけそうになり、ふと横を見ると、吹雪の向こう側に美しいフォームで雪を漕ぐ人影があった。
バタバタと雪をかき分けて泳ぎ、くるくると舞い上がって雪を跳ねのけて、小鹿のように踊る。表面まで浮かび上がると、ドルフィンキックが雪を舞いあげる。
美しいシンクロナイズドスイミング。
水中のみならず雪であっても、それは可能なのだ。
「意外と元気そうだな」
真っ白でもふもふのトロイカ……アーリアのパカラクダは雪にまみれてほぼ擬態していたが、賢く主人についてきていた。サンディは薪を積み上げる。
「あれ、つないだっていうロバがいないな」
●PM7:30 ロッジ
「いやーペンションの主になった気分だな!」
リゲルは台所を探り、簡単な夕食のみつくろいのついでにお茶の支度をする。
「食事は……なんだ、缶詰しかないのか。それでもあるだけ有難いものですね。神よ、感謝します」
「あったまるわぁ。ありがとうねぇ」
アーリアは紅茶を飲んでいる。
「お二人にもどうぞ」
「あぁ、ありがとうございます……!」
ポーはほっと一息つく。
「リゲルさん紅茶も有難う、温まるよー。薪は暖炉に入れればいい?」
「甘い物や温かい物は、心が安らぎますね」
「あら、出かけるの?」
「いや? ちょっとな」
サンディは地下室への扉が気になっていた。
(あの扉、閉じられてはいたが空間は間違いなくありそうだ。となると……このあたりか)
途中で気が付いてはいたが、薪を運ぶ手前後に回していたのだ。
(レディの依頼はしっかりこなさないとな)
壁を叩く。やはり何かがあるようだ。
鋭い音がした。
窓の外には華麗にポーズを決める何者かのシルエットがある。
(外でシンクロやってるやつはほっとこう……)
「おや? 今なにか物音がしませんでしたか? 地下室の方向からがたがたと……まさか噂は本当だった?」
ジョージはすっと立ち上がる。廊下ではサンディが耳をそばだてていた。応戦のために身構える。
「にゃーん?」
「猫?」
「あ、ああどうやら猫が地下室に閉じ込められているようですね……」
ジョージは猫を抱きあげた。
「こんな天気にこんな小屋に……猫? まあ、奥に宝があるかもしれないな」
●PM8:00 生還者
「あら? どうしたの、トロイカちゃん」
玄関には、ロクのつないでいたロバだけが帰ってきていた。
「何かあったんだろうか? 俺がいる限り死者は出さないぞ! 騎士の矜持にかけて!」
「なんでモップなんだ?」
サンディが尋ねる。
「武器を落としてきてしまったようなんだ。良かったらキータも手伝ってくれないか? 戦場を共にした仲間じゃないか。はい、モップな」
「よ、よし」
外は猛吹雪だ。
リゲルは透視と温度感覚を駆使して人の気配の残る道を探る。アーリアは旗のように突き出した足を見つけた。
「……あの雪から生えた芸術的な手足はエリザベスちゃんかしらぁ」
エリザベスは雪に埋まっていた。なぜかなくした剣を持っている。
アーリアは掘り出して、頬をぺちぺちとたたく。
「寝たら駄目よぉ!」
「はっ、これはいったい……!? ああ、これは泳いでいる最中に見つけたものです。最高の演技ができましたよ。何か光った気がしまして」
「あ、いたいた! おーい!」
ロクが手を振り、戻ってきた。
「ちょうどエリザベスさんの足が見えて戻ってこれたよ」
エリザベスはサムズアップをした。
「……ただいま。おかしいな、何もいなかった」
戻ってきた一同はロクにほっとする。
「いやー、いい湯でございました」
一足先にほかほかと温まっているエリザベス。屈指のサービスシーンをやりとげたと満足げだ。風呂ではない。
「む、肉球なら負けないよ!」
ロクは立ち上がり猫に優位を見せつける。
「見つけたのは木製のぼろぼろに朽ちたスキー板だけ!」
「え?」
「なんだろう、この材質でこのデザインのスキー板って何十年も昔に流行ったやつじゃない?なんでそれが雪も被らずに落ちてたの……?」
「まさかね! ほら、スキー板砕いて薪のかわりにして、みんなで暖取ろうよ!これなら十分燃せるから……あれ? ここにあったスキー板は? 誰か持っていった?」
ロクはきょろきょろと跡をたどる。
「あっ、お風呂場の入口にあった! アーリアさんが持っていったのかなあー?」
「あらー……私じゃないわよ?」
簡単な食事を終え、風呂に入ることになった。
「あったかかったよー!」
ロクは心なしかつやつやだ。
「1人じゃ怖いので……アーリアさん、ご一緒してもいいですか?」
「もちろんよぉ」
めいびー、お約束のお色気シーン。本日、ノルマ二度目の達成だ。
「ちょっと錆びてるかと思ったけど大丈夫そうね。何かが染みた赤い水滴が落ちてきたら怖いわよねぇ、うん」
「えっ、あ、赤い水滴ですか!?」
「うふふ」
(レディの風呂ね。いや、覗きはしねえ。覗きはしねぇさ。そんなのがばれて外につまみ出されたら死んじまう)
外で温度の調節をしながら、サンディはこらえた。
しかし、音と雰囲気だけでも。薪を足しながら、楽しそうな声が聞こえる。
(いや寒いわ)
よい光景ではあるのだが。
●PM9:00 就寝
「わたくし、睡眠機能を切れますので、不寝番くらいのお役には立てますよ。幸い、話し相手には困らなさそうですし。ほら、キータ様の後ろにも……」
「ぴゲあっ!」
カンテラを顎の下から当てたエリザベスが浮かび上がる。
「それにしても、カップルが狙われる殺人事件でございますか。カップルに何か深い恨みを持つ者の犯行? 実に興味深いですね」
「だ、大丈夫だよね?」
「安心したら眠くなってきました、2階の部屋でひと眠りさせてもらいます」
ふと、ジョージは人の部屋に入っていくエリザベスの姿を目撃した。大量のハートの小物や、不思議な枕を抱えている。
(極限の環境では、普段は秘められた人間模様が展開すると聞き及んでおります。貴重なデータ収集の機会となりそうですわね)
「あれ? ポー、フラフラしてるね」
風呂から戻ってきたポーは、すこし具合が悪そうだった。
「スキーの後だものね。疲れるのが当たり前だよ」
ルークはポーをそっと抱きかかえる。お姫様抱っこだ。
「は、恥ずかしいけど、助かるよ。皆さん、お休みなさいっ! お先に、失礼しますね」
「はーい、おやすみなさい」
「吹雪が止むまでの持久戦だもの。ちゃんと休もうね」
「ありがとね、ルーク……♪ ルークがいてくれるなら、全然怖くないよ」
二人はロッジの客室へ入る。
「見知らぬ場所で怖いかな? 大丈夫だよ、僕はずっとここに居るからね」
ルークはベッドの傍の床に、毛布で包まって座る。
「これなら何かあっても対応できるし…っくしゅ!」
「あれっ風邪かな…」
「……って、風邪? 大変、温かくしないと!」
「ううん、なんでもないよ」
それにしてもこの部屋はなぜかハートだらけだ。見知らぬ枕もある。
(なんだろう……)
ポーはそっと布団をめくる。
「……一緒に、寝る?」
「ええっだ、駄目だよ! 一緒のベッドに入るなんて…!」
ルークは慌てて首を振る。けれど不安そうなポーの顔を見て思いとどまった。
「じゃあ、ポーが眠るまで添い寝するね」
「心配しなくても、大丈夫だから。明日にはきっと吹雪も止むからね…お休み、ポー…」
「そうだね……明日には、帰れるよね? おやすみ、るーく……」
激しく窓をたたく雪の音。
(でも……とても温かいね。外は吹雪なのに、不思議な感じだよ)
二人きりの世界。
鼓動がより近く聞こえる。
「さあ、居間で朝まで寝ずの番だ。キータも付き合ってくれるよな!」
「疲れるだろ」
「眠い? なら朝まで話でもしようじゃないか」
リゲルは椅子を持ってきて、促した。
「情報屋の仕事は面白いかい? 戦士としての腕はさび付いたままかい?」
「まあまあだな」
そうはいったが、うまくいっていないのだろう。
「良かったら今ここで、軽く手合わせしてみようか」
「では僭越ながら実況でも致しましょう」
エリザベスが立ち上がった。
二人はモップを構える。きーたは舌を巻いた。リゲルの構えは、お手本のようだ。
「周囲のものを壊すようなら二流止まりだ。行くぞ!」
「頑張るわねぇ」
アーリアはその様子を見ている。
「寝ないのか?」
「飲んでたいときもあるわぁ。べ、別に一人が怖い訳じゃあ……」
「じゃあ、俺も付き合おうかな」
「あら? それは」
「地下で見つけたんだ。まあ、俺には不要のものだからな」
サンディがワインを差し出した。
「うふふ、乾杯ね」
アーリアはふと、道中で落とした人形を思い出した。目が光る人形……。
きらりと光る眼。
きい、と扉が開く。
ジョージの胸に、鋭い重みが圧し掛かった。
「うう……」
ごろごろ言っている。
●AM7:30 朝
恋人の寝顔を見守っていたら、気づいたら朝になっていた。
「寝ちゃったのかな……一緒に一晩明かしちゃった」
なんだか照れ臭かった。
「ポー?」
「……んん?」
ポーは、柔らかい感触を感じた。
瞬いて、それがルークであることを確認すると一気に目が覚める。
「おはよう」
「お、おはようっ!!」
「……全員いますよね? 一応数えてみよう。いるね」
「この子に起こされてしまいましたよ」
ジョージは猫を抱えて苦笑いしている。
「リゲルさん達徹夜してたの? 大丈夫?」
「ああ、問題ない」
リゲルは元気に答えた。
「よーし朝ごはんは僕が準備するよー」
ルークはお茶を淹れて、缶詰を盛り付ける。すでに外は晴れていた。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
あとがき
凄惨なことが起きそうで起きないちょっと物騒な噂のある雪山での一夜、いかがでしたでしょうか。
みなさまが素敵に設定を盛ってきてくださるおかげで私は大変楽しかったです。どうもありがとうございました。
隙がありましたら、また一緒に遭難いたしましょう。それはどうなんだ。
また冒険いたしましょうね!
GMコメント
●目標
朝まで生き延びる!
●状況
外は猛吹雪で、視界はホワイトアウトしています。
一晩中はこの天気になるようです。ここから出るのは難しいでしょう。出たとしても何らかの力により、吹雪で元の場所に戻ってきそうな予感がします。
ロッジがあるおかげで生き延びることはできそうですが、ロッジの中は必ずしも快適とは言えません。
●ロッジ
スキー場から離れた場所にポツンとある便利なロッジです。
ロッジは現在、無人ですが、この状況ならば使うのもやむなし……。あとで許してもらえるでしょう。
●様々なうわさ
このロッジには、混沌らしくカオスなうわさがたくさんあります。勝手につけ足したり引いたりしてお好きにロールプレイしてください。
相互にプレイングがいりそうなものは相互にプレイングしておいてくださるとありがたいです(例:幽霊騒ぎをしておどかしてみる、等)。
当方ではとくに危ない仕掛けは用意してないんですが、罠があることにすると罠が生えてくるかもしれません。7年前に事件が起きたことにすると7年前に事件が起きてることになります。お好きに盛ってください。
財宝があるというとフレーバー程度に財宝があるかもしれません。でもあくまでもフレーバーだったり、結局はローレットに回収されて持ち主のもとに戻ったりするんでしょう。なにもなければなにもないでただのロッジです。
●間取り
建物は2階建てで、1階が共用部、2階が客室などがある部屋だ。
ロビー…暖炉のあるロビー。広くソファーがいくつかと、簡単な家具。マガジンラック。
お風呂場…薪で沸かす式のお風呂があります。大浴場のようです。
地下室…あるようですが、なぜかあきません。
客室…人数分あったり、やむなく色々な事情で相部屋しかなかったりするかもしれません。各自都合の良い部屋割りでどうぞ!
ロッジを出て、少し離れたところに薪をためておくための倉庫があります。そこに行けば少しは薪があるかもしれません。
●備品
・水は出ます
・一晩を過ごすには心もとない薪と暖炉
・味気ない保存食がいくつか
・ボロボロの毛布
・古いマガジンや新聞
ほか、探せば何かあるかもしれません。おんぼろのロッジや設定にちなんだものならあったことにして構いません。
また、持ち物も持ち込んで構いません。
●登場
キータ・ペテルソン……情報屋。スキー場に出るというUMAを結構軽い気持ちで調査しに来た。スキー装備で遭難しかける。
基本的には裏方で、プレイングで何かあれば登場します。
ノリが良く、察しの悪い、たいていの事にはひっかかるNPCです。何か悪戯したいけど、ほかの人にやるのはなあ……みたいな場合にお気軽に使ってください。
●情報精度
このシナリオの情報精度はEです。
無いよりはマシな情報です。グッドラック。
※不意打ちで死んだりとかそういうのはないです。EASYです。
Tweet