PandoraPartyProject

シナリオ詳細

うすいほん(1冊500G)

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 ある酒場にて、その日『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)は見てはならないものを見つけてしまった。
「ええと――……?」
 えぐえぐと泣きながらカタログに蛍光ペンで線を引き続ける『サブカルチャー』山田・雪風(p3n000024)。その様子を尋常なきものとして見詰めていたのは『男子高校生』月原・亮(p3n000006)だ。
「何かあったのです?」
「それがさぁ、山田が調子乗って作った『うすいほん』がバレたらしくって」
「誰に?」
 呆れた様子の亮にユリーカはこてん、と首を傾げる。
「『暗殺令嬢』」
 雪風のサークル『あ45 ゆきりんご』では基本的には情報屋として仕入れた知識を駆使した本とプリティ★プリンセス2ndの薄い本(全年齢)が並んでいる。
 山田君の推し『プリンセスメロン』こと財前美彩(ざいぜんみどり)を中心としたオールキャラ本や、時には『プリンセスレモン』こと藤原うるる(ふじわらうるる)とのカップリング本も用意しているらしい――のだが、時々、練達作成『レンタツッター』によりファンからリクエストが来るらしい。
 つい、それで準備してしまったのだ。
 某傭兵のあの人×暗殺令嬢――リクエストしたのはきっとねこたん。多分ね。
 召喚されるまでは買い専だった雪風とて、プリ★プリの供給不足から自身が生み出しファンを増やす方向にシフトしたというのだが。
「リーゼロッテ嬢にバレて、ふひ……それで、怒られたんスわ……」
「新刊都合によりなくなりました! って感じなんだけど、アーベントロート家にばれないように折角作った新刊を売りたいんだってさ」
 へえ、とユリーカの目が死んでいく。
「それで」
「俺、売り子」
「亮さんが売り子で……」
「売り子もうちょっと欲しいし、アーベントロート怖いし」
 勿論、売り子してくれたなら報酬は弾むからと雪風が泣きながら求めて来たのだそうだ。
「あと、売り子いるなら山田がいろんな人から言われたおつかいも廻ってきて欲しい」

 ~おつかいリスト~
 ・ながみみ愛好ガイド(サークル:sawamin)
 ・黒薔薇の憂鬱(サークル:くろねこたん)
 ・汎用貴族BL本
 ・パルスちゃん本

「これ、どなたからなのです?」
「ト、トップシークレット……」
 真顔で見つめるユリーカに雪風は遠い目をする。
 何にせよ戦場である事には他ならない。ひょっとしたら難易度ナイトメアレベルかもしれないのだ――!
「行き先はコミッショナーマーケット、幻想闇即売会! 幸運を! 祈る!」

GMコメント

 夏あかねです。年末と言えばやっぱこれだね!
 YUKIKAZEはこういうものには必要なのでお借りしてきました。

●成功条件
 1.山田の指定した同人誌を手に入れろ
 勿論、いろんな人からのおつかいも含んでるみたいですよ。(物理で)がんばってください。お金は支給されるから遠慮せずに、ネ!

 2.山田君のサークル『ゆきりんご』の完売
 邪魔するアーベントロート家を(物理で)倒すことがコツかもしれません。

●オタクたち
●アーベントロート家の方たち
 どちらも猛者です。同人誌のために(一方はお嬢様の指示で)狂おしく動いてきます。手を抜く事はできません――コミケを勝ち残るためには……!

●同人サークル
 おつかいリストの同人サークルさんたちです。オタクたちが新刊を買い占めようとしてますので戦闘で何とかしてあげてください。
 ちなみに面白おかしさからか、練達のNPC達が遊びに着たりサークル参加してます。
 おすすめはDr.マッドハッターっぽい人がいるサークル「アリスの噂」です。結構面白いって有名なんですよ。フィールドワークの一環で見に来ていたファンが「意味わかんないです」って言ってましたけどね。

●NPC
 『男子高校生』月原・亮(p3n000006)
 『サブカルチャー』山田・雪風(p3n000024)
 売り子&サークル主として参加致します。但し、山田君はクソザコレベルです。
 亮に関しましてはある程度の戦闘は行えます。売り子だろうが買い子だろうがお任せください。
 ちなみにサークル『ゆきりんご』のメンバーは募集中です。

●備考
 雪風君がとりあえず、2スペース確保したんで合同サークルできるよといってました。
 もしも同人誌作成された方が居ればどうぞ、ご一緒に……。

 宜しくお願いしますねえ。楽しく頑張りましょう!

  • うすいほん(1冊500G)完了
  • GM名夏あかね
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年01月08日 22時30分
  • 参加人数8/8人
  • 相談4日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

アルプス・ローダー(p3p000034)
特異運命座標
シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)
白銀の戦乙女
セララ(p3p000273)
魔法騎士
宗高・みつき(p3p001078)
不屈の
炎堂 焔(p3p004727)
炎の御子
新田 寛治(p3p005073)
ファンドマネージャ
エリーナ(p3p005250)
フェアリィフレンド
ガーベラ・キルロード(p3p006172)
noblesse oblige

リプレイ


 その日――コミッショナーマーケット1日目が開会されるその日、その時間。
『二輪』アルプス・ローダー(p3p000034)は安堵していた。
「サークルチケットがあってよかったです」
 買い物をするうえで一般参加などになれば大量に並ぶ人々を(物理で)蹴散らす他に選択肢は存在していなかった。スタート地点が大幅に違うだけでこうも安心できるのか、流石はコミッショナーマーケット――略してコミケ!――並の戦場を超えて来た猛者たちでも恐怖に震えるわけだ。
「設営終わったー?  『魔法騎士セララ』第1巻から4巻までここでいいかなー?」
 常と変わらぬ輝く笑顔の『魔法騎士』セララ(p3p000273)に『ゆきりんご』のサークル主である『サブカルチャー』山田・雪風(p3n000024)が「オッケっす」と普段からは感じられない気迫で大仰に頷いている。
「オーホッホッホ! 私、アーベントロート派のキルロード家長女、ガーベラ・キルロードですわ!」
「アッ、アーベントロート派……」
 没落貴族キルロード男爵家のご令嬢、『農家系女騎士令嬢様』ガーベラ・キルロード(p3p006172)は悪役令嬢風味の勝負服に身を包み『あ45』のスペースに立っていた。
「ええ、ええ、アーベントロート派!
 そう! 本来なら私もサークル『ゆきりんご』の営業妨害に参加するべきなのでしょう……!
 ですが! 貴重なリーゼロッテ様本ですわよ! 敬愛すべきお方の一つの可能性。
 物語だからこそ許されるもしもの未来! 嗚呼! 恋愛小説好きとしてこれほど興奮するシチュはないですわ!
 ……まあ、ただしエッチな本でしたら……即暗殺ですが?」
 ちら、とガーベラ様の視線が雪風に注がれる「善良な高校生なのでそれはないっす!」と震えたように叫ぶ山田。OK、山田はちゃんと決まりを守れる良い男だ。
「あ、じゃあ、取り扱いは全部全年齢指定ですか? R-18は……?」
 最初に取り置きお願いしていいですか、とプリティ★プリンセス2ndの『うすいほん』を在庫の中から一冊取り出していた『フェアリィフレンド』エリーナ(p3p005250)は首を傾げる。こういう即売会はちょっとえっちな感じが多いのだろうか――なんて考えていたが山田はPPP倫には確り従う男のようだ。
「エリーナさん、そういう本読むの?」
 設営後の在庫の確認をしていた『男子高校生』月原・亮(p3n000006)にエリーナは「コミッショナーマーケット、一度でいいから参加してみたいなって思ってたんですよね」とにんまりと笑みを浮かべる。
「ええ、参加してみたかったです」
 その言葉は何処か重たい気がするが――『くっころして!』シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)は『ぱんどらのはこ vol.174』を手にいつも通りの姫騎士的笑顔を浮かべていた。
「薄い本の祭典……『ぱんどらのはこ』のようなものがある以上、リーゼロッテ様をネタにしたり、生きている人をテーマにするのは許されるのでしょう……決して悟られず、知られず、というのがこの世界の掟とも聞きますが――本人が手にしている以上は何も言えません」
 シフォリィがやけに早口に、やけに饒舌に語り出す。『ぱんどらのはこ』で自身があられもない『くっ殺せ!』状態だと分かっていても当人が持っている以上最早認められた呪いのアイテムなのではないだろうか。称号からも漂うくっころ感は確かに隠すことも出来ない。
「この手のイベントはそういうのも売ってるんだな。あ、初参加なんだけど、お祭り的な軽いノリかと思ったら、結構ガチなのね……」
 コスプレ更衣室より姿を見せた『不屈の』宗高・みつき(p3p001078)はプリティ★プリンセスの第一作目(雪風は『プリ1』と呼んでいた)に登場するプリンセスライムの衣装を身に纏っている。
「オッ、オオオ~~~~」
 所謂、背の高いオネエサマキャラ。男装の麗人系の衣装な事もあってみつきにはよく似合っているのが印象的だ。
「雪風の心血が注がれた作品が同好の士に渡る様に頑張るよ。それから……プリンセスライムの事もレクチャーよろしくな?」
「勿論勿論。ありがとうございます。ありがとうございます」
 頭を下げ続ける雪風。その様子に『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)はこて、と首を傾げた瞬いた。
「でもでも、皆が見たいって言ったからって怒られる様な本を作ったらいけない……けど、え? パルスちゃんの本?」
 そわ、と焔の心が騒いだのは――気のせいではなかった。鉄帝のアイドル闘士、パルス・パッション。彼女の本があるというならば――ファンブックであろうと同好の士の作成なら絶対最高なのだ――此処で引く訳にはいかないのだ。
「パルスちゃんの本があるなら先に行ってよ!? 任せてよ、ボクが絶対手に入れて来るからね! 他にパルスちゃん本売ってる所あるのかな?」
 す、と亮が差し出したのは本日のカタログ。丁寧にも『回ってきて欲しいサークルリスト』には印がされており……。
「この『ねこねこ魂』ってサークルのある一対がパルスちゃん本があるっぽい所」
「了解だよー!」
 にんまり微笑む焔と頷く亮。その様子を微笑ましそうに見つめている『ファンドマネージャ』新田 寛治(p3p005073)はゆっくりと眼鏡に手を添えた。


 即売会には鵺が住む――まだ年若き亮と雪風には見せられない『大人の戦い』がそこにはあった。
 ギャングスターオブギャングスター。ファンドマネージャーは分からせオジサンとしてTENGI本だって取り扱える。
 スタッフにコネがあれば造作もないと『地元のダチコー』としてゲットしてきたのは『PPP,Ltd』の企業ブースだ。
「え? ブース? あ、後で行きますね」
 新刊交換しましょう、と雪風が差し出す自作の本。PPPファンドコレクションVol.1には何となく気になるお年頃の男子高校生なのだ。
「俺にファンドする?」
「いえ、男なので」
「デスヨネ」
 ふざけてへらりと笑った亮に寛治は「噂の月原君の先輩ならファンドしましたけど」と冗談めかし、颯爽と自身のスペースへと向かったのだった。
「……ええと……?」
「オーホッホッホ! 戦い方、判ってらっしゃいますわね! 私にも新刊1冊取り置いてくださるかしらっ!?」
 首を傾げたエリーナにアーベントロート派としては是非ファンドコレクション――長いから『ファンコレVol.1』でいいよね――をゲットしたいというガーベラ。彼女が言うのだから彼の戦い方は筋が通っている。
 つまりは雪風のサークルに押し掛け、販売を阻止せんとするアーベントロート派の皆さんを分断して戦力を大幅に削り取るという作戦なのだ。
(――出来る男……! ついでにPPP,Ltdのスペースにもボクの本も委託しておけばより目立つよね!?)
 セララは案外、デキル女なのだった。
『スケブ受け付けます』と机の上にセッティング。雪風が「俺、その、アナログは苦手で」と震える声で言うそれを聞きながらセララは「ふふん」と胸を張った。
「ふっふーん、ボクにかかればお望みのシーンが一瞬でPON! だよ」
「えっ!」
 そわ、としたのは仕方がない。だって、セララの描いたプリプリが見たいんだもの。
「あとで、みらこみ! でいただけますか」
「勿論! さあ、ゆきりんご、頑張るよ~~!」

「……アドバイスがあります」
 神妙な顔をしているアルプスに、焔がごくりと生唾を飲む。
「即売会は初めてじゃないんです。夏のギャグ回にそういう回がありました。
 熾烈な争いになるでしょう……他の買い担当の方もご武運を」
 アルプスの言葉に、緊張する特異運命座標はこの異様な空間に圧倒されぬようにやる気を満ち溢れさせている。出発前、しっかりとカタログでマップを確認していたアルプスがん、と唇を尖らせる。
「月原君がプリプリ2のコスプレをするという認識でいいんですか?
 瞳とか赤いんでカラコン入れずに済みますしプリンセストマトがとてもお似合いになる気がしますよ」
「ッ!!!!?」
 その瞬間、亮があんぐりと口を開け、雪風がその手があったと頷いたのがアルプスの視界の端に見える。
「折角、プリンセスライムもいるようですし、月原君がトマトになれば2作揃っていいんじゃないでしょうか?」
「待って」
 待てなかった――。
 こほん、と咳ばらいをしたシフォリィはメモ広げ、そして、周囲に貼られているポスターを五度見している。
「汎用貴族BL本。……汎用貴族ってあの仮面とかつけてる方ですよね。
 何で書いたんですか。……ちょっと気になってたりとかしてませんよ、ええ」
 くっころだけではなく腐女子属性も開花させてしまったのだとしたら罪深い。
 シフォリィが並み居る汎用貴族スキーを掻い潜りながら手にしたのは表紙の加工が『うすいほん』よりも尚素晴らしい、正しく貴族御用達のそれだ。
「ええ……?」
 顔を上げる。売っているサークル主は汎用貴族のコスプレをしている。
 よくローレットの依頼でも見かける仮面をつけた貴族のおっさんだ。
「えええ……?」
 新刊セットには何故か汎用貴族の仮面までついている。ペーパー製で節分の鬼の面の様なテイストだ。
「ええ……?」
 シフォリィの戸惑いは止まらない――
 一方で、
「同じパルスちゃんのファンの人達なら説得して仲良くお買い物出来るようにならないかなぁ。きっとパルスちゃんも自分の本の事で皆が争う事なんて望んでないよ! とか……あれ? でもパルスちゃんて鉄帝の人だし、ラド・バウの闘士だし、もしかしてこの状況が正しいのかな?」
 もしかしたらパルスちゃんは「どんどん争っていこうね!」なんて言うのだろうかと焔がぱちくりと瞬いた。
 もしそうなのだとしたらパルスが望む様に拳を交えて戦う事こそがパルスのためだ。
「パルスちゃん本、全部下さい」
「はっ、だ、ダメだよ! パルスちゃん本はボクのだ――!」
 ついでに新刊セット2つ分下さい!
 黒薔薇の憂鬱を購入するべく全力移動(意味深)するエリーナ。
「アリスの噂も行きたいし買い占めようとするオタクの皆さんは許さないんだから!」
 ぷんすことしながら全力で進むエリーナ。お取り置きしてもらった同人誌も明日の楽しみになるはずだ。すすめ――!!
「って、あれ……?」
 買占めオタクたちの脅威なる動きにエリーナがぞわ、と背筋に奔る冷たさを感じ取る。
 攻撃(物理)で戦う焔は「オタク(?)ってこんなに強いんだ!?」と慌てたように息を飲んだ。



 販売されているのは『PPPファンドコレクション Vol.1』
 これまでの数々のファンドを手掛けて来たPPP社による初の画集!
 企業だからこそ許される特別製の一冊――なんと、表紙を飾るのはリーゼロッテ・アーベントロートだ!
 シャイネンナハトの美しくも妖艶なる暗殺令嬢の姿――メイキング映像やインタビューも特別収録! 『誰も踏み込めなかった地雷原でタップダンスを踊る』ファンドマネージャ、新田寛治責任編集!
「まじか、一冊下さい」
 山田の一声を背に、寛治は悪辣なる『テンバイヤー』対策も怠らなかった。
『※PPP社ブース以外に、コネのある企業やサークルブースで委託販売も行います。通販も後日予定しています』
 おそるべしコネ、おそるべしPPP社。コネでサークルスペースを撮ってくるというその手腕も恐れ入ったが、何より販売している商品は誰もが欲しがる一品だろう。
「……と、これにより販売利益を確保しつつ、アーベントロート家の手勢を分散させる事ができます」

 ふと、寛治のスペースより返ってきたエリーナに目をやった亮が「それは?」と瞬く。
「え、ええっと……『OPPAIマウスパッド 姫騎士シフォリィ』?」
 マウスパッドって何ですか? そう首を傾げたエリーナにみつきは「練達でよくあるやつだよ」と柔らかに笑みを浮かべる。
「寛治さんは『コテクターズアイテム』って言ってました」
「おっぱいマウスパッドって……」
 何所か困ったような顔をするみつき。商品説明にはそれもその筈『モデル本人を至近距離から観察したことにより、再現度の高い双丘を備えたOPPAIマスパッドです』なんて書かれてちゃ、お兄さん、ちょっと照れてしまう。
「こちらは数量限定! お急ぎください! って……」
 その為か、少しゆきりんご周辺の人が減ったのは。そう思いながらもみつきは笑顔で販売に応じていた。
「練達トンデモ技術紹介本とかあるかな? 『アリスの噂』は見ておきたい!」
 みつきに頷くエリーナが更におつかいに繰り出した。まだまだ、戦いは続いているのだ。

「成程……成程! ええ、そう言う事もありましょう!」
 プリティ★プリンセス2ndの敵役として登場する『アリエッタ』はオペラグラスを身に着け、鞭を手にした悪役令嬢を思わせる。そのアリエッタのコスプレを見に包んでいたガーベラは切なげに、目を細め「リーゼロッテ様」と呼んだ。
「本は欲しい……ええ、それが貴女様への裏切りだとしても――貴重なるリーゼロッテ様本! その為なら……私は今回だけサークル『ゆきりんご』の盾となりましょう! ですから、私の分のリーゼロッテ様本は残しておいてくださいましね!」
「大丈夫です!」
 PPP社のも取り置きましたと叫ぶ雪風に仰々しくも頷くガーベラがアーベントロート派(みうち)を蹴散らしにかかる。
 もしも、身バレしたとしても家には迷惑をかけぬようにとガーベラは心に刻んでいた。よくある悪役令嬢没落物語になる理由が薄い本なんて――絶対あってはならないのだ!
「オーホッホッホ! サークル『ゆきりんご』の新刊、宜しければ買ってくださいませ!」
 ガーベラがはっと顔を上げ「さては貴方――!」と見覚えあるアーベントロート派の刺客に目をむいた。
「させるかッ――スティミュレートスプラッシュ!」
「おおっと、あれは! プリ1アニメの13話でライムがラズベリーを救うために放ったという……!」
 冷静に解説する山田氏。セララが地面を踏み手にしていたスケブとペンをプリンセストマトに扮する亮(目が死んでる)に手渡した。
「これは任せるよ! 『サークル・ゆきりんごをよろしくねスラッシュ』!」
 叫ぶセララの頭の上でリボンがぴょこりと揺れている。
「ライムビターショック!」
 続くみつきの必殺技。ぐわあ、と声を上げて倒れていくアーベントロート派。しかし、まだまだ、その勢いはとどまる所を知らない。
「月原君、ながみみ愛好ガイドは任せました!」
 手渡すアルプスがゆっくりとポーズを決める。練達の資料庫で一応見たけど、よくわかんない技になりました。
 そういうアルプスはゆっくりと口を開く。
「『いいんです。私がばかにされたって……。
 でも、友達を莫迦にするのは許さない! 負けられないの――見てってください、この渾身の――一撃!』」
「ま、まさか……!」
 雪風が叫ぶ。
 まるで、神でも見たかのように。
 まるで、あり得ざるものがそこにあったかのように。
「――――『プリンセスエンジェリックビーム』!」
 どうして。
 どうして、その技を使えたのだろうか。いや、恐らくは山田雪風が狂おしい勢いで語ったプリプリ劇場版の話をアルプスが小耳に挟んだからなのかもしれない。
「うっ―――」
 詰る雪風にガーベラが「どういたしましたの?」と振り仰ぐ。
「あああああ、すごい。今の見ました? セララさん、ガーベラさん、みつきさん、みましたか。みた? 月原も見た? やば、やばない? え、語彙力ないんだけど、ああああ、ほんと?」
 倒れたアーベントロート派。それを見遣りセララはスケブやります、と声を張り上げた。
「さっきの戦闘シーンの同人誌、今作った出来たてほやほやだよー! 見ていってー! あのアーベントロート家が回収しに来るような本を(襲撃者撃退して)売れるのはサークルゆきりんごだけ! 超レアなプレミア本間違いなしだよー!」
 セララのその声を聴き、お小遣いいっぱいいっぱいにパルス本を買い込んでいた焔と練達サークルを回ってきたエリーナがゆきりんごの本が完売しかけている事を知る。
「……ところでなんで私のマウスパッドが売られているんでしょうか。ダメですよ!? 発売中止です中止!」
「結構な収益でした」
 ――一方で、PPP社前で慌てるシフォリィは『そっくりさん』だとか『めちゃくちゃ本人ですよね!? なコスプレの人』として視線を集めていたのだった。

「完売ありがとうございました! 打ち上げもありますんで、また!」
「焼肉!?」
 焔の声に「いいねぇ」と警戒に笑ったみつきが大きく頷く。穏やかな笑みでリーゼロッテ様本を抱えたガーベラは「よろしくてよ」と微笑んでいた。
「それじゃ、A5和牛でお願いします」
 アルプスの声に山田雪風(ゆきりんごサークル主)はがっくりと項垂れたのだった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 お疲れさまでしたイレギュラーズ!
 コミケ1日目、楽しかったですね~!また、山田くんを手伝いに行きましょうね……!がんばるぞ!

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