シナリオ詳細
<XEOIX>12.328828005938
オープニング
●慚愧せよ群衆のマシン。個は罪と知れ。
雪も降ろうかという寒空に、人々は襟を立てて歩く。
賑やかさも華やかさもない年の瀬の住宅街。
アパートメント住宅が並ぶ町並みを、新聞屋が歩いて行く。
そんな中ふと、不思議な集団に首を傾げた。
粗末な木の槍を掲げ、ぼろきれを旗のように掲げ。
一糸乱れぬ行進と、統一された赤いボロ布の服。
祭りの一種かと目をこらせば分かるだろう。
そのほぼ全員が、首の無い死体であることに。
ボロ布は血にまみれた彼らの服だということに。
だが恐れるべきはさらに上。
彼らをけしかけるように中心を進む黒髭の紳士。
真っ黒な蝶の羽根を優雅に羽ばたかせ、紳士は足を止めた群衆たちに呼びかけた。
「我はギュスターヴ。貴君らは今より我が配下となり、共に行進するのだ。さあ群衆に混じれ! 個を捨てよ!」
大きく腕を広げるギュスターヴ。
途端、首の無い死体たちが周囲の人々へと襲いかかった。
死体の元は老人や子供も交じった一般市民なのだろう。力もさほど強くない。
しかし。しかし。
この群衆に晒されるという光景こそが。
「ああ、なんと個のはかなきこと」
次々と首を切り落とされる人々。
そんな中で、首から上が芋虫となった怪物レギオニーターから掲げられた首を、ギュスターヴは苦々しく受け取った。
「さあ、群衆を進めよう。母様もさぞお喜びになる」
不自然に大きく開いた口で名も知らぬ生首を一口に頬張り、ギュスターヴは群衆を再び行進させた。
さきほど首を切り落とした者たちをも、加えて。
群衆のパレードは進む。
●オートメーションを教授せよ。思慮は罪。孤独は罰である。
「大変なのです! 町が怪物に襲われて……このままじゃ占拠されてしまうのです!」
慌てた様子で酒場に飛び込んできた『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)に、イレギュラーズたちは振り返る。
そして次に告げられた単語に、一部の人間は強く反応した。
「レギオニーターと……その指揮官、アリストクリエイターなのです!」
はじまりは領主城占拠事件。
芋虫頭の怪物レギオニーターの軍勢が城を襲い、人という人を食い散らかした。
その指揮官にあたる『貴族級』と呼ばれる怪物アリストクリエイター9体は、城を守る6体と町へ出る3体に分かれて活動を続行。
領主及び関係者一斉死去ゆえの混乱から、これらの討伐がローレットへと依頼された。
そんな中で、このチームに割り当てられたのは『群衆頭』ギュスターヴとその部下たちの討伐である。
「ギュスターヴには特別な能力があるのです。
それは、自らの『群衆』によって断頭した人間の死体を支配し、『群衆』に加えるというものなのです。
今は既に20人近くの死体が『群衆』化していて、人通りの多い市場へと突入していったのです。
急いで止めなくちゃ、市場の人たちがまとめて『群衆』に呑まれてしまうのです!」
ギュスターブの『群衆』には2体のレギオニーターも加わっており、意味の無い旗を掲げて歩いている。
もし邪魔する者が現われたなら、彼らによる攻撃が始まるだろう。
「依頼主からのオーダーは『ギュスターブと配下の討伐』のみなのです。だから『それ以外』はオーダーの外なのです。けれど……」
ユリーカは何かを言おうとして、首を大きく振った。
「と、とにかく、皆さんまで群衆にとりこまれないように、気をつけてください!」
- <XEOIX>12.328828005938完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2019年01月16日 21時25分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●個を捨て群衆となれ
石畳の道を馬の蹄がうち、車輪がはしる。
騎乗マスコット・ラヴの背に跨がった『魔法少女インフィニティハートH』無限乃 愛(p3p004443)は、遠い目的地を見通すように目を細めた。
「いくら虫けらが人間の姿や言葉を真似ようと、そこに愛無くば虫けらに変わりはありません。この私の持つ人類愛にて燻蒸してあげましょう」
虫けら。巨大な芋虫から始まったともいえるこの事件は、やがて首から下を人間に酷似させたレギオニーター。自由な形状を獲得したアリストクリエイターへと発展を遂げ、いままさに幻想の町を恐怖に包もうとしていた。
今回イレギュラーズたちが対応するのはギュスターヴというアリストクリエイターとその配下にあるレギオニーター。そして能力によって生み出された『群衆』という死体の群れである。
「罪のない市民の、それも死体を冒涜するとは……と思いもしますが正直怖いですね、あのレギオニーターの上位種! 恐ろしくて仕方ないです! しかも人の形を真似るなんて夢見が悪い! 気にしてる余裕はなさそうな強さがまたキツい……!」
馬車の御者席でひとり手をわなわなとさせる『屑鉄卿』刀根・白盾・灰(p3p001260)。
後ろの座席では『行く先知らず』酒々井 千歳(p3p006382)がじっと黙って刀の手入れをしていた。顔をあげ、会話に加わるように口を開く。
「自ら仲間を増やして、どんどん侵攻してくる敵か……厄介な事この上ないね。数は力だとは言うけれど、事実その通り。例えば、俺がどれだけ強かろうと俺は一人でしかないし、一度の攻撃で倒せる数には限度もあるし、足止めなんて論外だ」
「既に被害は出ちまってる。これ以上拡大する前に……だな」
『義に篤く』亘理 義弘(p3p000398)は小さく舌打ちをした。
「全てを捕食する化け物相手だが、カタギの方々逃がすためには怯んじゃいられねぇからよ。いつも以上に気合い入れていかねぇとな」
「人喰いの化物……何時ぞやの依頼を思い出すけれど、人喰いと縁でもあるのかしら、私」
『緋道を歩む者』緋道 佐那(p3p005064)の呟きに、『天穹を翔ける銀狼』ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)が咳払いで応える。
「そろそろ到着する頃だ。先行を頼めるか」
「分かりました。リジアさん、一緒に」
『渡鈴鳥』Lumilia=Sherwood(p3p000381)は馬車の後部出入口から飛び出すと、地面につくより早く翼をひろげて飛行。民家の屋根を越えていくようにして、例の市場通りへと飛び込んでいった。
「まだ到着はしていないようだな」
『Esc-key』リジア(p3p002864)が高所より見回し、ギュスターヴと群衆の様子をうかがった。
まだ三桁規模になっていないとはいえ結構な人数だ。長距離を移動するにはそれなりのコストがかかるのだろう。
だが余裕があるとも言っていられない。
「時折、こんな生き物が生まれる。捕食者……別にその存在は否定すまい。だが……」
リジアの目から見て分かるほど、赤い群衆はこちらへと近づいてきている。
「無秩序に喰らうその行為を、赦すと思うな」
行動を、急ぐ必要がある。
●選択と行動と、判断と見落としと、生命
他の通りでもそうであったように、ギュスターヴの軍勢を見た者ははじめ、パレードかなにかだと勘違いする。
あまりに普通に、あまりに自動的に群衆が歩くので、驚異のように見えないのだ。
よく見ればそれが首の無い死体の群れであると分かるし、近づけば嫌が応にも生命の危機を感じるのだが……。
「カタギの皆さんよぅ、俺達の話を聞いてくれ! 今、ここに人を喰う化け物共が押し寄せてくるぞ! 俺達ローレットが奴等を倒す! 誘導に従って早く逃げてくれ!」
通りに猛スピードで乗り込んできた馬車から義弘は飛び降り、ただならぬ眼光でもって周囲の人々を威圧。呼びかけを始めた。
千歳や灰もまた同じように馬車から降り、何事かとこちらを見る人々を見回す。
「俺達は正義の味方って訳じゃない、傭兵みたいな物だ。それでもあなた達に助かって欲しくてこうやって接触してる。そこは汲み取って貰えないかな?」
「危機が確かに迫っています、ですが我々ローレットがこの場を収めます! 立ち向かったりせず、我々にお任せください!」
「まあ、そこまで言うなら……」
市場に来ていた客たちは彼らの言い分を信用したらしい。意固地に市場に居続ける理由もないため、それほどの緊張やパニックをおこすことなく市場を離れようとしていく。
が、ただ離れることが危険なことは分かっていない。
「だめです、通りの両側からギュスターヴの軍勢がやってきます。近くの建物の、それも二階へ逃げ込んでください!」
その発現に、市場の者立ちが難色を示した。
「おい待てよ。市場を畳まねえと盗み放題になっちまう。大体この建物はおれの家だぜ。獣の群れかなんかが来るなら適当にどこかへ逃げればいいんじゃないか」
「そういうことを言ってる場合ではないんです。早く中へ!」
客たちはともかく、市場に店を出している人々の全員を一度に納得させることは、今のカードと行動では少々難しい。
が、しかし。
そんな言い合いをしている間に。
「皆、来るぞ」
屋根の上より群衆の接近を観察していたゲオルグが声を張った。
「やあやあ我はギュスターヴ! 貴君らは今より我が配下となり、共に行進するのだ。さあ群衆に混じれ! 個を捨てよ!」
ゲオルグの声に被るように、ギュスターヴが市場通りへと侵入してきた。
反対側からもレギオニーターを先頭にした群衆がどっと押し寄せてくる。
歩く首無し死体の有様に、民衆は悲鳴をあげて市場中央へと逃げ走った。
その様子に気づいた市場の店主たちも、灰のいわんとすることに納得したようだ。
「本当に助けてくれるんだろうな!?」
「全員そのつもりよ。早く入って。扉をしめて、できればバリケードでも作って置いてちょうだい」
佐那ははらうように手を振ると、店主たちを家の中へ。残る客たちもぎゅうぎゅうに詰め込む形で複数の建物の中へ分散して逃げ込ませた。
ハハハと不自然に笑うギュスターヴ。
「恐れる必要はない。思考する必要はない。貴君らはもとより群衆。より効率的な群衆となるだけのこと!」
蝶の羽根を優雅にはばたかせ、ギュスターヴは群衆の上を右へ左へと飛行する。彼にはイレギュラーズたちが脅威に見えていないようだ。もしくは、民衆の一部と認識しているのかもしれない。
「『群衆』たちよ、民衆の閉じこもった全ての扉を破り、彼らを列に加えよ」
道の左右から迫る全ての群衆が、民衆の逃げ込んだ六つの建物へとばらばらに直行した。
「まずい……!」
灰たちの作戦は『民衆を建物に詰め込む』『群衆の片側を全滅させる』『民衆を解放し全滅させた側から逃がす』の三段階でできていた。
しかし群衆がこちらを無視して散らばった以上、作戦の第二段階が強制的に『群衆すべてを破壊する』に変更される。
「さぁて、お待ちかね。ふふ、暴れさせて貰うとしましょうか」
佐那は刀を握り込み、今まさにドアを蹴破ろうとしている群衆たちへと接近。刀に纏わせた炎を叩き付け、自らを中心に激しい爆発を起こした。
吹き飛ぶ首無し死体たち。
それによって蹴破られようとしていた扉が大きく歪んだように思えたが、この一回で全て吹き飛ぶという程ではないらしい。だが(ここから高確率で味方を巻き込むこともあるので)連発は避けた方がいいだろうと踏んだ。
腕や足を失ってもなお起き上がる群衆を蹴飛ばして、佐那は再び剣を振り込む。
「『闇の蠢動を撃ち払う愛の光条! 魔法少女インフィニティハート、ここに見参!』」
愛は扉を破ろうとしている群衆たちをピンク色のマジカルボムで一度吹き飛ばすと、くるくるとマジカルサイズを回して距離を詰める。
起き上がる首無し死体を鎌にひっかけて投げ飛ばすと、真顔で扉の前に陣取った。
「さて、行きましょうか」
「こっちは任せて」
千歳は刀をふたふりとも抜き放ち、旋風のように群衆へと突撃していった。
首無し死体の腕を次々と切り落としていく。
とはいえギュスターヴによって操られている死体だ。急所などというものはない。
扉を蹴破ることはできなくなったが、その代わりに千歳へと標的をかえ掴みかかったり鉄パイプで殴りかかったりといった行動に出た。
掴まれた腕を振り払い、相手の両足を切断。転倒させる。
「一瞬でカタが付く……ってわけでもなさそうだね」
「しばらくは耐えましょう。いいえ、耐えるほかありません」
Lumiliaはパニックのなか路上に取り残された子供を守るべく、群衆に立ちはだかっていた。
短節の呪歌を作り、無数の瑠璃色の光弾を群衆へと次々に打ち込んでいく。
このままここで戦っていては限界がある。Lumiliaは子供を抱えて飛行。民衆が逃げ込んだ民家の二階へと窓を破る形で侵入し、子供を中の人々に預けた。
「暫くここに居てくださいね。私は、外を片付けてきますので」
飛び出すと、扉の前では義弘が群衆相手に戦っていた。20人程度の群衆が6組以上に分割されているのでたいした数ではないが、いくら殴りつけても起き上がりしがみついてくるさまはあまりに厄介だった。
「くっ……!」
包丁を腹に突き立てられながらも、義弘は女性の腕を掴んで振り回す。
首の無い女性をそのまま武器にして、周りの群衆たちをはねのけた。
その一方で、ギュスターヴ側の群衆を押さえるつもりだった灰は……。
「ふむ。ただの個人ではないようだが……っまーあ、良い! 貴殿も群衆となれ!」
「そういうわけにはいきません!」
扉を蹴破ろうとする群衆へと飛び込んでいく。
名乗り口上によって引きつける作戦も考えたが、この段階で空振りを起こせばかなりの痛手になる。命中値の不安もあるのであえてブロッキングバッシュで群衆を殴り倒すことにした。
既に死体となった群衆は簡単に吹き飛ばされたが、しかし簡単に起き上がる。
「ギュスターヴに操られた死体……頭が無い時点で生命活動はしていないようですが、五体バラバラにでもすれば動かなくなるでしょうか?」
剣で切り落とした腕が地面をはね、ころがり、指だけをかたかたと動かして這いずっていく。
モンスターと仮定した場合たいした戦闘力はない。雑魚の群れと表現していいレベルだ。
しかし非人間的にタフで、狙いが一定して『群衆を増やすこと』にあるのが厄介だった。
放っておけば建物に侵入し民衆を殺し始めるだろう。かといって無力化するにはかなり念入りにバラさねばならない。
そして中でも特に厄介なのが――。
「それ以上は行かせない」
ゲオルグが対応しているレギオニーターであった。
ぼろきれの旗をつけた鉄のポールを叩き付けてくるレギオニーター。そのパワーにあばら骨を砕かれるが、ゲオルグは歯噛みでこらえ、身体を吹き飛ばそうとする衝撃は空中を蹴ることで無理矢理こらえた。
これだけのパワーで扉へ迫られれば何十秒ももってはくれまい。
ゲオルグはレギオニーターの腰にタックルをしかけ、それ以上前へ進めないように押し込んだ。
「これは、なるほど……まずいな」
リジアも事情を理解し、もう一体のレギオニーターに流星のようなショルダータックルをしかける。
はじき飛ばされたレギオニーターは地面をひっかくようにブレーキをかけ、獣のように手足を使ってリジアへ飛びかかってくる。
かわすか? いや、そうすれば後ろの民家が狙われる。
リジアは破壊のフィールドを作り出し、レギオニーターの接近を阻んだ。
ばぎり、とフィールドが破壊され、突きだしていたリジアの腕が手首まで朽ち千切られる。
「随分と獰猛な生物だ……」
はた、と。
リジアは危険を察知した。
背後より迫る敵。
蝶の羽根を優雅にはばたかせるアリストクリエイター、ギュスターヴだ。
咄嗟に振り向き破壊の衝撃を放つ――が、ギュスターヴはそれを回避。リジアへ反撃をすることなく、そのまま飛行して民家の二階。その窓を突き破って中へと侵入していった。
「――!」
バリケードを組んで外からの侵入を拒んでいた民衆たちは、逆に逃げ出すこともできない。
「ここをお願いします!」
Lumiliaは扉を守る役目を灰に任せ、ほぼ垂直な飛行で破られた二階の窓へと突入。
すると。
「ああ、なんと個のはかなきこと」
ギュスターヴは千切った子供の生首を不自然に大きく開けた口の中に放り込み、むしゃむしゃと咀嚼した。
ゆらゆらと起き上がる首無し死体たち。おそらく残る人々が一階へ逃げたのだろう。それを追って、死体たちは手近な武器らしきものを掴んで追っていく。
耳をさくような悲鳴が聞こえるなか、ギュスターヴはLumiliaの首を掴んだ。
「貴殿も群衆となれ。個など無意味ではないか」
「なにを、ばかな……!」
そこをどけ。とでも言わんばかりの衝撃をはなつが、ギュスターヴはそれをはねのけ、Lumiliaの腹を蹴りつけた。
窓枠ごと破壊し、外へと蹴り出されるLumilia。
地面を弾み、転がる。
顔を上げると、建物のバリケードを内側から破壊した『新たなる群衆』が飛び出してきた。
「さて、次へ行こうか」
「そうは――」
「させん!」
群衆の後ろから現われ、別の建物の二階から侵入しようと飛び立ったギュスターヴ。
それを阻むように、リジアと愛が同時に襲いかかった。
愛はマジカルボムを連射。窓から侵入しようとするギュスターヴへと命中させる。
ピンク色の爆煙を払い、飛び退くギュスターヴ。
そこへリジアが弾丸のように突撃し、鋭く螺旋を描く破壊エネルギーを叩き込んだ。
対するギュスターヴはぐわんと口を巨大に開き、リジアの腕を肩までまるごと食いちぎっていく。
右手首と左腕をそれぞれ失ったリジアはバランスを崩して墜落。地面をえぐるようにバウンドし、おびただしい血液をまき散らした。
「ン、ンー……いかんいかん。いかん。つい食べ過ぎてしまうな。頭だけにしようと決めていたのに。これだから個はいかん」
首を振るギュスターヴ。彼の腕は激しく損傷し、血を流していた。リジアの攻撃が直撃したがゆえのものだ。が、それが先程の捕食によって修復されていく。
「誰が頭などくれてやるものですか」
愛はマジカルサイズをライフルモードに変形させると、ピンクの魔力砲を連射した。
そんな愛の背後から、口を大きく広げてとびかかるレギオニーター。
咄嗟に振り向いた愛はマジカルサイズの柄を翳して防御するが、伸びた芋虫めいた首が愛の肩を囓り、肉とわずかな骨を食いちぎっていった。
がくりと肩から力が抜ける。
結果腕力によって押し込まれ、レギオニーターに突き飛ばされた。
「これは……なるほど、そういうこと」
佐那は状況の悪さを再認識した。
「食う方も食われる方も御免だったのだけど……」
そうも言っていられない状況になってきた、らしい。
佐那は『群衆』の手足を次々に切り落とし実質的に行動を不能にしつつ、ギラリとギュスターヴのほうをにらんだ。
三つ目の扉が内側から破られる。
「群衆を愛せよ。個に価値はない。群衆こそが――」
「うるせえ」
義弘の拳がギュスターヴに迫る。顔面を打つ拳。直後、横から割り込んできたレギオニーターの蹴りが義弘の腹を打った。
よろめきはしない。しっかりと地に足をつけた義弘はその身体も目の光りも弱らせたりはしなかった。
さらなる打撃を――と振りかぶった拳が、また別のレギオニーターによって食いちぎられる。
「ぐ、ぐ……!」
歯を食いしばり、血を吐きながらものこる腕でレギオニーターを押さえ込んだ。
「刀根!」
「はい……!」
義弘が無理矢理押さえ込んだレギオニーターの首を切り落とす灰。
その直後に、血まみれの佐那と千歳が二人の上を飛び越え、レギオニーターの両腕と首を切断する。
崩れ落ちるレギオニーター。
最後の力を振り絞ってタックルをしかけるゲオルグと、マジカルサイズを叩き付ける愛。
ギュスターヴは二人の腕を引きちぎると、それを食らおうと口を開いた。
リジアとLumiliaが飛びかかり、蹴り飛ばすことで捕食を強制的に回避。
直後に繰り出されたギュスターヴの腕によって二人まとめて吹き飛ばされた。
「それ以上は、喰わせません、よ……!」
ずるり、と差し込まれる灰の剣。
頭を貫いた剣に、ギュスターヴはぎこちなく笑った。
「これ、こそ。ぐん、しゅう、の」
崩れ落ちたギュスターヴ。
ゲオルグたちはよろよろと起き上がり、周りを見た。
それまで動き回っていた群衆の全てがただの死体となりはて、道ばたに転がっている。
「はは、は」
灰はその場にへたりこみ、剣を取り落とした。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
あとがき
アリストクリエイター、ギュスターヴ――討伐完了
GMコメント
こちらはとある連動シナリオ。『ギュスターヴ編』です。
オーダーはギュスターヴとその配下の討伐です。
【エネミーデータ】
●ギュスターヴ
帝王面で羽化した貴族級(アリストクリエイター)。黒髭をたくわえ、蝶の羽根をもつ紳士に見える。
高い戦闘能力と飛行能力、味方集団を強化する複数のスキルを持つ。
・群衆のマシン
死体を支配下におき、『群衆』のひとつとする。
支配するのに首を落とす必要はなく、支配した段階で首が自動的に切断される仕組み。
死亡したターンの次ターン、ギュスターヴ手番時に一括で支配が完了する。
群衆に意志はなく、ギュスターヴによって操られている。
(ゆえに、ギュスターヴを倒せば『群衆』はすべて死体に戻ると推測される)
●レギオニーター×2
ボロ布を纏った芋虫頭の怪物。
意味の無い旗を掲げており、この旗をポールウェポンとして使用する。
●『群衆』
ギュスターヴに操られた首のない死体たち。
武器らしい武器はもっていないが。煉瓦や棒、パイプ、肉切り包丁などを武器に襲いかかってくる。
★飢餓感
・レギオニーター及びアリストクリエイターが戦闘開始からある程度のターン経過、ないしダメージを負うことで陥る特殊ステータス。
・主行動に追加で【捕食】を行います。
・一定回数の【捕食】を行うことでのみ解除されます。
★捕食
・周辺の木々、石、肉、その他口に入れば何でも食べようとします。
・HPが回復します。
・アリストクリエイターがこれを行った場合、追加でHP最大値、物理攻撃力、防御技術、命中が上昇します。
・肉を食べた場合、この上昇値が増加します。
【フィールドデータ】
市場。二階建ての煉瓦作りの建物に挟まれた広い一本通り。
人通りが多く、群衆が近づいていることに対して危機感が広まっていない。
一斉に逃げようとした場合パニックになる恐れがある。
また、人々をかきわけて進むのは苦労するため、移動方法に工夫が必要。
『群衆』は市場通りの両端から挟むように攻め込むとみられている。
ギュスターヴやレギオニーターがどのように配置されるかは不明。
『群衆』によって市場の人々を殺害し、支配下におく予定。
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