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シナリオ詳細

俺はワルだぜ、ワルい奴だぜ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「お、こっちだこっち!」
「くそ、また出たか……! 俺が手塩にかけて育てた野菜が……!」
 とある幻想内の村。根菜が名物のこの村に、毎年恒例の災害が訪れようとしていた。“そいつ”はよく育った根菜をもりもりと食べ、しっぽを振っている。洗い整えられた髪のようなしっぽがふさりと揺れる。
「あいつを追い払うにはアレっきゃねえ」
「けど、そろそろネタ切れなんだよなぁ……あれはやったし、これもやったし」
 物陰から見守る農家二人は、指折り何かを数えている。どうやらそいつが出たのは数えるほどではないようだ。
「そういや近所のセゴどんって猟師がよ、“いやーイレギュラーズは頼りになるべー”っていってたぞ」
「お、本当か? そういえばこの前は戦線でも大活躍だったって聞いたからなぁ。よし、ローレットに頼んでみるか! ローレットで良いんだよな?」
「そうそう、ローレット」
 イレギュラーズの活躍は、この辺境の村にも届いているようだ(情報は曖昧だけど)。
 そいつは農家二人の恨みも知らず、二本の角を揺らして…ブヒヒン、と鳴いた。


「バイコーンという獣を知っているかな」
 グレモリー・グレモリー(p3n000074)は、めずらしく絵具を持たずにイレギュラーズの面々を見回した。その目は疲れ果て、目の下にはクマが出来ている。むにゃむにゃと唇を動かすと、耐えきれずにあくびを一つ。
「ふああ。……失礼。クリスマスの街を見ていたら、アイデアが止まらなくて。書き散らしていたらこんな日になっていた。そう、バイコーンだったね。あれは二本の角を持ったユニコーンだと思ってもらっていい。いわゆる『悪いユニコーン』だと言い伝えているところもあるが、まあ、そんな事はどうでもいい。出たんだ、バイコーンが」
 そもそも実在していたのか、と誰ともなく驚く。
 二本の角がある事以外、大きさや生態は殆どただの馬と変わらない、とグレモリーは言う。……けれど、と付け足した。ほら来たぞ。
「バイコーンを捕まえるには、あれの気を引く必要がある。……そこがちょっと厄介なんだ。バイコーンは『悪い奴』に惹かれる習性があってね。認めた人間には頭を下げて、舎弟になるんだそうだ。……別に、ユニコーンみたいに失格者を突き殺したりはしないけどね」
 思案するように顎を撫でるグレモリー。無精ひげが生えている。服の襟もちょっとよれている。仕事熱心なのはいいが、そこはきちんとしてほしい。
「別に悪い奴のフリでもいいらしいから、とにかく、バイコーンを舎弟にしてくれ。被害を受けているのは辺境の村で、根菜が有名なんだ。このままでは全部食べられてしまう」
 僕はこの時期のニンジンが好きなんだ。
 馬のような事を言って、グレモリーは再び顎を撫でた。

GMコメント

 こんにちは、奇古譚です。
 今回はバイコーンを連れてきました(?)さて、皆さんに悪い奴になって頂きましょう。

●目的
 バイコーンを舎弟にせよ

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●立地
 辺境の村、そこから少し歩いた場所にある畑です。
 村はこの時期が一番豊かなので、嗜好品程度なら村人から譲ってもらえるでしょう。大がかりなものは自分で調達してください。

●エネミー
 バイコーンx1

 悪い奴に引かれる習性があります。もちろん悪いフリで構いませんし、後から態度を変えるような事はしません。
 ※むしろ本当に悪い奴だと判ると逃げてしまうビビリ幻獣です、

 角は薬に使われます。削れば良い値で売れるでしょう。(バイコーンの角採取は成否判定に影響しません)


 アドリブが多くなる傾向にあります。
 NGの方は明記して頂ければ、プレイング通りに描写します。
 では、いってらっしゃい。

  • 俺はワルだぜ、ワルい奴だぜ完了
  • GM名奇古譚
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2019年01月16日 21時25分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

アラン・アークライト(p3p000365)
太陽の勇者
ジェイク・夜乃(p3p001103)
『幻狼』灰色狼
刀根・白盾・灰(p3p001260)
煙草二十本男
エリザベス=桔梗院=ラブクラフト(p3p001774)
特異運命座標
ニエル・ラピュリゼル(p3p002443)
性的倒錯快楽主義者
リナリナ(p3p006258)
クリストファー・J・バートランド(p3p006801)
荒野の珍味体験者
ヨシト・エイツ(p3p006813)
救い手

リプレイ

●ワルになるために
 さて、辺境の村にて。
 村人たちをひそりと集めて、イレギュラーズは事前打ち合わせをしていた。
「という訳で、カツアゲするのはあくまで演技という事でな!」
「は、はい! お手柔らかにお願いします!」
 村人に交渉しているのは『張子のヒャッハー』ヨシト・エイツ(p3p006813)。ゴーグルとかつけてちょっとワルに見えるけど……なんか善人っぽいんだよなぁ。ギフトのせいかなぁ。そのおかげで村人との交渉役になっている訳なのだけれども。
「怪我させたりとかはしないから安心してくれ! カツアゲ役はこの二人」
「ん」
「おう、宜しくな」
 『勇者の使命』アラン・アークライト(p3p000365)と『『幻狼』灰色狼』ジェイク・太刀川(p3p001103)が頷く。村人は目に見えてビビる。この二人めっちゃ怖いじゃん……ワルそうじゃん……とヒソヒソする奴もいるが、アランの眼差しで一発で黙る。
「畑の草結びと天地返しの許可もありがとうございます。助かります」
「いやぁこちらこそ、村の土が豊かになりますし、バイコーンがなんとかなるのでしたらお安い御用です」
 にこりと笑みを浮かべるのは『屑鉄卿』刀根・白盾・灰(p3p001260)。こう見えて結構ワルに憧れてた時期があるという可愛い人である。
「うん! リナリナ、穴掘るぞ! 穴掘ればいいんだな?」
「ええ。しっかりと深い穴を掘って下さいませ」
 元気よく言う、ワルとは無縁そうな『原始力』リナリナ(p3p006258)。何も考えてないように見えるがちょっとは考えているぞ! そして片手に骨付き肉を持っているが説明不要なギフトだから説明不要だな!
 『特異運命座標』エリザベス=桔梗院=ラブクラフト(p3p001774)がゆるりと頷いて、足元に積み上げた荷物を見下ろす。町から持ってきた小麦粉だ。これの出番はあるのだろうか。
「薬は一旦こっちで解析してから、幾らかお渡しするわねぇ」
「は、はい……」
 辺境の村に悪名は轟いておらずとも、その異様な雰囲気は判る。一見穏やかな少女に見える『性的倒錯者で快楽主義者』ニエル・ラピュリゼル(p3p002443)は、ガチでヤバい奴である。ただ、今回はワルい事はしない。つもりである。つもり。
「という訳だ。こっちは怪我させる気とか悪気は一切ないんで、一発バイコーンをだましてやろうぜって感じで、宜しくお願いしまっす」
 『俺の冒険はこれからだ』クリストファー・J・バートランド(p3p006801)がそう挨拶をして、事前ミーティングは終わる。村人は誰がカツアゲされる役になるかで相談を続けるようだが、イレギュラーズの面々はまずはバイコーンの生態観察から、という事で畑の方へ向かった。


●ワルになりたいお年頃
「あれがバイコーンか……割とレアな感じだと思ったらそうじゃないんだな」
 バイコーンは、今日も元気に畑を荒らしていた。といってもこの畑は生態観察のための囮である。囮役になった村人は泣いていた。
 もりもりと根菜を食べながら、糞を畑にぼとぼと落としている。
「……完全に馬だな。あれでワルに憧れてるとか、可愛いとこあるじゃねぇか」
 ジェイクの言う通り、馬である。ただ角が2本あるだけの馬にしか見えない。可愛いかどうかはさておいて、完全に馬だと判ったところで各々は作戦の準備に取り掛かる。
 バイコーンが根菜を食べ終わり、次の畑を物色し始めたら。それが作戦開始の合図だ。

 さて、バイコーンは腹が減っていた。
 此処の根菜は美味いが、美味いから、食べているとすぐなくなってしまう。次の畑でも探すか、と振り仰ぐと、ふと肉の香りがした。
「もりもりもりもり」
 見れば、髪の毛をオールバックにしてグラサンをかけたリナリナが肉を食べている。何処から出したのかは説明不要である。だが一緒に焼いている野菜は村人から提供されたものである。
 ――なんだこいつ、ワルそうだな……
 興味を持ったのかじっと見つめるバイコーンに、リナリナが言う。
「おう! 何見てんだ、こっちこい! 野菜食え! 野菜!」
 うーん。
 バイコーンは突然の命令に、言うことを聞くかどうか迷っているようだ。リナリナはその間にも肉と野菜をむさぼっている。
「ブヒヒン」
 バイコーンはリナリナに背を向けた。ちょっぴりワルそうだったけど、根は純粋なのを見抜いてしまったのかもしれない。
「あっ! ……いってしまったゾ……だけどリナリナはまだまだだゾ! これからワルの恐ろしさが、バイコーンを襲うゾっ!」

 その通り、次の畑へと足を踏み入れたバイコーンは、さっそく洗礼を浴びる事となる。
「!?」
 いつもより柔らかい土のなか、何かが蹄に引っかかった。大きくよろけた先で、また何かに足を取られる。何かが引っかかっている! 判らないままに大きく暴れ、解放されて何事かと確かめる。……草だ。草が結んである。
 ――なんだこいつは……どこのワルの仕業だ!?
 バイコーンは慄く。今まで畑にこんな仕掛けをした村人など、彼は知らない。村人にとって畑は大事なもので、草結びなんてしてはいけないものだと思い込んでいたからだ。
 しかも一つではない。よくみれば二つ、三つ、いくつも結ばれた草が土に紛れて隠れている。
 ……村人も最早手段を選ばなくなってきたか。だが、このオレにかかれば草結び程度ぉぉぉああああ!?
 バイコーンは心の中で絶叫した。草結びを悠然と避けて歩いていたら見事に落とし穴に引っかかったのである。そりゃ絶叫もする。幸い這い上がれる程度の浅さであったので、時間をかけながらも必死で落とし穴から這い上がった。
 なんだ、なんだこれは。畑の草を結ぶだけじゃなく、土を掘り返して落とし穴だと……!? 畑が使い物にならなくなってもいいのか!?
 この馬は天地返しというものを知らないので、無茶苦茶にビビっている。

「よしよし、結構効いてるみたいだな。じゃあ次、カツアゲ組行ってくれ!」
「おう」
「よっしゃ、いっちょやるか」
 その様子を物陰から見ていたヨシトが計画通りだと頷く。リナリナに引っかからないくらいの勘はあるようだが、ここから先は、どうかな……?

 バイコーンはこの畑に根菜はないと判断し、別の畑に移動していた。丁度畑仕事をしている村人がいるが、そんなものは関係ない。どうせ怯えて近寄ってこないのだ、目の前で根菜を半分だけ食べてやるという悪行を犯してやろう。お前は残りの半分を見て絶望するがいい……ククク……!
「おっとお!」
「あっ、すみません」
 悪事を考えていたバイコーンの耳に、そんな声が入ってきた。なんだ? と顔を向けると、いかにもヤバそうなお兄さんが村人にぶつかっている。ついでにそのお兄さんの傍にはグラサンをかけたロバ……? ババア……? みたいな何かがいる。
「いてえな……折れちまったなァこりゃ。治療費が必要だなァ……」
「ええ!? ち、ちょっとぶつかっただけじゃないですか!」
 ジェイクとアランである。ジェイクとか毛皮かぶってて明らかにヤバいお兄さんである。あ、いつもの事でしたね。でも村人はガチでビビってますよ。
「兄貴が折れたっつったら折れたんだよォ! なあ、持ってない訳じゃないんだろ? お・か・ね。少しでいいんだよ、安い医者行くからさァ」
「い、いえ、今は持ち合わせが……」
 アランが一喝を使って声を上げ、バイコーンの目を引く。バイコーンは目が離せない。どきどきと鼓動が高鳴っている。あれはワルのやる事……! そう! カツアゲではないのだろうか……!?
「いいからゼニ出せオラァ!! 隠してても判るんだよ!」
「ひいっ! で、ですから持ってないって……!」
「ジャンプだよ! ジャンプしてみろオラ!」
「兄貴を怒らせると怖いぜ~? 言うとおりにした方がいいと思うぜ~!」
 そこに更にヨシトも参戦する。二人舎弟を引き連れた兄貴という構図。最高にクールである。バイコーン的に。
「ひいっ、ひいいっ……」
 怖がりながらもその場でジャンプする村人。無情にも、ちゃりん、ちゃりんと硬貨の音がした……
「あ~れ~? いま何か音したよなァ。ちゃりーん、ちゃりーんってなァ」
「俺にも聞こえたぜェ! な、兄貴ィ!」
「聞こえたなァ……知ってるか? 嘘つきは天義だと舌を抜かれるんだぜ……」
「ひいっ……すいません、すいません……! 治療費お支払いしますっ……!」
 村人がポケットから硬貨を出して、アランに渡す。アランは見せつけるように、いーち、にーい、と硬貨を数え……足りねェなァ、と呟いた。
「こんなんじゃ兄貴の肩を治すには足りねェよ……骨を治すには滋養強壮にいいものを食べなきゃいけないんだぜ?」
「ああ、俺の肩はもう複雑に折れてるからな……足りないんだったら、此処の作物をもらっていくが……文句はねェよな?」
 ジェイクが村人の畑を顎でしゃくる。無論、この辺りも話は通してある。許可の下りた場所で決められた分だけ根菜を持っていき、後でバイコーンの目の届かない場所で返却する予定だ。
 そのバイコーンはというと、目をきらきらさせてジェイクたちを見ていた。きっと草結びや畑荒らし(だと彼は思っている)も彼らの仕業に違いない。なんてワルなんだ……! 根菜半分だけ食べてやろうなんて、俺はなんてちっぽけなワルだったんだろう!
「ふっ、貴方様もまだまだでございますね……」
 ハッ、何奴!
 後ろに現れたエリザベスを振り返るバイコーン。感じるぜ、この女もどこかしらにワルを隠し持っている。そしてなぜかこの女とは会話が出来る気がする……いや、出来ている……!
 エリザベスはすっと大判のノートを持ち出すと、絵をかいたりジェスチャをしたりして会話を試み始めた。すなわち。
「バイコーン様、貴方様の悪事は全くなっておりません。あれこそが真のワルというもの……民草が痺れて憧れるクールなワルなのでございます」
「ああ、感じるぜ。あの兄貴からはワルを感じるぜ。俺もいつかは……」
「あんな風になりたいのでございましょう? 判ります。大丈夫、あちらも貴方様に気付いたようでございますよ」
 エリザベスの言(?)にバイコーンが振り向くと、ジェイクたちがこちらを見ていた。まるでガンをつけられているようだ……あんな鋭い視線、幾年ぶりに受けただろう……!

「おう、ついて来いよ。お前もなりたいんだろ? 一流の……悪党ってやつによ」

 あ、兄貴ー!

 ……かくして、バイコーンは見事イレギュラーズのワルさに惚れ込み、舎弟となったのであった。


●真のワルとは
「という訳で、舎弟になったぜ」
「おお! シャテイ! シャテイってなんだ?」
「手下ってことですな」
 仲間にバイコーンを紹介するという体で、ジェイクはイレギュラーズを集めていた。中にリナリナの姿を見つけたバイコーンは、この村はもうジェイクのシマなのかと尊敬のまなざしを送る。
 その中でリナリナにいろいろと説明していた参謀的ワル(だとバイコーンは見ている)――灰がバイコーンによってきて、ふむふむと上から下までを検分する。な、なんだか緊張するぜ。
「駄目だな」
 ……何?
「一流のワルっていうのは、見た目もクールなもんだ。この兄貴を見てみろ、毛皮が最高にクールだろ?」
 灰はジェイクを指して言う。確かに、ワイルドな見た目が非常にワルっぽい。――…でも、毛皮をくれる友達なんていないしなぁ。俺に合うような毛皮となると……
 というバイコーンの微妙なチキンマインドをエリザベスが通訳する。
「と仰っておりますね」
「成る程。大丈夫だ、お前にはその立派な角があるだろ? わた……俺たちに任せてくれればクールに仕立ててやるよ」
 本当ですか兄貴!
「ああ、俺たちに任せとけ! ちょっとそこら辺で彫り師を捕まえてくるからな!」
 いうと、ヨシトは善人っぽさが出る前にすたこらさっさと走っていく。打合せ通り、彫りが出来る二人を連れてくるために。
「鬣ももう少しワイルドにした方がいいな。俺たちにちょっと任せてみろよ」
「ブヒヒン!」
 はい、兄貴! 宜しくオネシャス!

「という訳で連れてこられたわぁ……通りすがりの彫り師よぉ」
「彫り師その2だぜ!」
 ヨシトが連れてきたのはニエルとクリストファー。ちなみにクリストファーも動物疎通のスキルを持っているため、万が一のトラブルは未然に防げるだろう。彫りというのは一事が万事。少しでも失敗すればワルの道をそれてしまうのである……多分。
 ニエルの放つ異様なオーラに気おされるバイコーン。この子本当にヤバくない?
「あはっ。大丈夫よぉ……私は通りすがりの彫り師だから、悪い事なんてしないわぁ……? ちょっとその角をかりかりって、するだけよぉ」
 メスをゆらゆらと振りながら笑うニエル。実際、彼女は「許可の下りている人間」しか殺める事はないのだが、その名声は見事に悪寄りなのだからビビられても仕方がない。
 一方クリストファーは燃えていた。やるなら徹底的にやる。炎とか梵字とか、カッコイイ角にしてやると意気揚々である。
「よし、じゃあお前らに任せるぜ。いい感じに仕立ててやってくれ」
「いいわぁ。任せて……じゃあ簡単な模様は私が彫るから、細かいのをお願い出来る?」
「おう、良いぜ! じゃあちょっと失礼しますよっと!」
 ジェイクが軽くバイコーンの頭を撫でて、頭を下げるように言う。バイコーンは兄貴には逆らわない。ニエルにも届くように頭を下げ、その角を二人に預けた。
 ごりごり、かりかり。二人が真剣に(あるいは楽し気に)角に彫りを入れていく。
 その傍で、ひそひそと一同は話をしていた。

「あとは村人を呼んで終わりだな。」
「ええ。――ですが、どうせなら角を一本にして、ユニコーンにしてもよかったのでは?」
「いや、それは駄目だろう。いずれ小麦粉は取れてしまうし、バイコーンのままの方がいろいろと都合がいい」
「そうですわね。ユニコーン様になられたら、また別の形で悪人に狙われるかもしれません」
「その通り。では取り敢えず、この後も計画通りで」
「リナリナは? リナリナはなにかすることあるか?」
「リナリナさんはバイコーンの見たままを褒めて下されば結構ですよ」
「おー! 褒めるんだな! わかったゾ!」

「おう、どうだ? 痛くないか?」
 あれからどれくらい経っただろう。クリストファーの問いかけに、バイコーンは大丈夫だというようにか、確かめるようにか、その首を振るった。粉が落ちてこないのは、ニエルが削り粉をこっそり回収してあるからだ。
「じゃ、通りすがりの彫り師はこれで……ね」
 彼女はバイコーンの角を解析するため、いったん退場する。タイミングを計り、ジェイクたちがバイコーンの方へとやってきた。
「おー!!! すごいゾ!! 角、かっこいいな! いっぱい文字とか彫ってあるゾ!」
 リナリナが言う。バイコーンの角は見事に、繊細な模様と炎や梵字に当て字などが相俟って禍々しく(?)なっていた。これにはジェイクも本気で頷かざるを得ない。
「なかなかイカすじゃねえか! なあヨシト」
「おう! あとは鬣をちょいちょいと立てたら最高よ! 最高のワルだぜ! 勿論兄貴の次にな!」
「この姿を見れば村人もイチコロだな。……お前に提案がある、聞いてくれるか? エリザベス、通訳してもらっていいか」
「ええ、勿論ですわ」


●ワルい護衛がやってくる
「すごいねぇ……溶かして軟膏にすれば外傷にも効くし、軽い炎症くらいなら飲んで寝てればよくなる……こんな良薬中の良薬、見たのは初めてかもねぇ…」
「ありがとうございます。これで村人もたすかります」
 ニエルはバイコーンの角から取れた粉末を解析し、村人に渡していた。むろん己のポケットにないないしたものもあるが、村人に渡したものに比べれば少量の、当然の報酬であるといえよう。
「と、来たね……」
「おう、待たせたな」
「ひっ、ひえぇぇぇ……!? ば、バイコーン!」
 村人はジェイクたちの後ろにいる存在を見て慄く。角を魔改造されたバイコーンは、しかし村人たちに攻撃する意思はないようだった。
 打ち合わせをしてあるとはいえ、村人にとってバイコーンは恐ろしい存在。それを改めて確認すると、灰は頷いて話し始めた。
「よし、村人にも話は通してある。これから村人たちはお前の舎弟だ。兄貴ってのは舎弟を守るモンだ、判るな」
「ブルル」
「村人には“みかじめ料”として作物をお前に渡すように言ってある。お前はその代わり、この村を守るんだ。それが舎弟を守る兄貴の務めだ。誰彼構わず喧嘩を売ったりするのももうやめとけ、ワルの世界じゃ身が持たないぜ」
 こくり、とバイコーンが頷く。角を彫り、本物の兄貴を見たことで、ワル(?)としての自覚が出てきたのだろう。
 アランが村人に向かって頷くと、村人の一人が売るには使えない人参をかご一杯に持ってきた。
「バ……あ、兄貴。今回の、みかじめ? です」
「ブルル」
 バイコーンは根菜の質にはこだわらないようだ。

 かくして、バイコーンはただの不良から村を守るワルへと進化した。
 エリザベスはその様子を見て……木陰に隠してある小麦粉を使えなかったと溜息を一つ。ある意味、角一本を削り取ろうとした彼女こそ本当のワルだったのかもしれない。

成否

成功

MVP

エリザベス=桔梗院=ラブクラフト(p3p001774)
特異運命座標

状態異常

なし

あとがき

お疲れさまでした。
皆さんの見事なワルっぷりにバイコーンは感服したようです。
寧ろ私も感服。なんてワルなんだ……
これから村はバイコーンとうまくやっていくことでしょう!
お疲れさまでした!

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