PandoraPartyProject

シナリオ詳細

初雪の舞う

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●六花
「お、」
「雪か」
「初雪じゃのー」
 幻想北側のとある村で、初雪が降り始めた。
 村にいるのは高齢者のみ。若者はこの一帯を治める貴族につい先日、徴兵されたばかりである。
「積もりそうじゃの」
「わしらが雪かきせねばならんのか」
「ろーれっとに頼んどらんかったかの?」
「じじ様が言うとったからなぁ」
 彼らの言う『じじ様』とは村長のことだ。この場に集う高齢者陣よりさらに年を重ねたご老体であるが、今この村では1番快活な人物であろう。
 そのじじ様は不思議なことに、初雪の予報だけは毎年外さない。例年は若者たちが準備しておくのだが、今年ばかりはローレットへ依頼を寄越したのである。
「あまり積もらないと良いがのー」
「寒いとどうしても節々がなぁ」
 帰るか、と溜まり場──集会所からぞろぞろ帰っていく村人たち。
 最後の者が火の後始末をして出れば、あとは雪が静かに降るのみだった。

●情報屋にこう聞いてきたんです。
『皆さん! 雪かきですって! 若い人がいなくて、イレギュラーズが応援に呼ばれたのです!
 村の人たちも手伝ってくれるそうですし、終われば遊んだりあったまったりして行っていいそうですよ!
 ほら、つららをポキポキ落っことすの楽しくないですか? 雪だるまやかまくらも良いですよね! 勿論やること終わってからですが、皆さんなら楽勝なのです!
 いってらっしゃいですよ!』

 ──とローレットの新米情報屋に送り出されたイレギュラーズ。
 目的の村に着いたのは良い。良いのだが。
「「じじ様ーー!!!」」
 ヨボヨボのお爺さんたちが揃って雪の塊に声をあげていた。そこにいるのか、じじ様が。
 唖然としたイレギュラーズに気づかず塊を崩していくお爺さんたち。さらにヨボヨボなお爺さんが雪の中から顔を出す。
「じじ様!」
「じじ様、生きとるか!」
 小さく呻き声。お爺さんたちはあっちへ運べ、婆さんたちは看病を、なんて慌てて動き出す。
 その中で雪かき用のスコップを握る数人のお爺さん。
「じじ様の代わりにわしらがやらんと……」
「そうだ! 儂らだってまだいけるはずじゃ!」
「若者にだって劣りゃせんぞぉ」
 お爺さんたちは鼻息荒く雪に立ち向かっていく。だが。
 ──危なっかしい。
 ヨボヨボなお爺さんたちである。今にも腰とか足とか体中痛めそうな人たちが雪かき作業とか、見ているこっちが耐えられない。
 本人たちもすぐ疲れた様子を見せたが、歳を感じたくないのか「まだまだぁ!」などと声を張り上げる。
「あの、」
 耐えられなかったので声をかけた。
「む? なんじゃおぬしらは」
 イレギュラーズです、と言えばお爺さんたちは考えること暫し。
 ようやく依頼を出したことを思いだして「よく来たのー」と歓迎ムードに。お茶とか進められてるけどあの、依頼で来てるんです。
「慣れんと大変じゃろうが、なあに儂らがいる! 安心して手伝っとくれ!」

 ──いえ、貴方たちが1番不安なんです。

GMコメント

●やること
1.屋根の雪を落とす
2.道の雪を脇へ退ける

●やること以外にできること
・つららを落としたり雪だるま作ったりして遊ぶ
・集会所で温かい飲み物を頂く

●詳細
 雪の積もった村で雪かきをします。朝集合なので超眠くても仕方ありません。それはそれとして仕事ですが。
 屋根はなだらかな三角屋根ばかりです。道は真ん中の大きな通り1本と、そこから各家に続く道が範囲です。
 できれば雪は村の近くを流れる川に捨てて欲しいとのことですが、雪かきは体力勝負なので全部道の脇に積んでもOKです。
 梯子、雪かき用のスコップ等は借りられます。
 じじ様はお婆さんたちが看病しているので心配いりません。
 お爺さんたちはイレギュラーズも手伝おうとしますが、ヨボヨボしてるので危なっかしいです。マジで。彼らは怪我しても自己責任なので、放っておくのもアリです。

●Danger?
 屋根から落ちる、つららを頭に落とす等の危険な行為をプレイングに記載すると、パンドラ減少の可能性があります。
 とはいえ、書かなければ減りません。

●ご挨拶
 愁と申します。風邪を引きました。パンツ風邪じゃないです。
 お爺さんたちを上手くいなしつつ雪かきを終えましょう。終えれば遊び放題ですよ。
 ご縁がございましたら、どうぞよろしくお願い致します。

 余談ですが、つららはスコップで根元をガッてやると落ちます。自分の頭上と周囲に気をつけて。

  • 初雪の舞う完了
  • GM名
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2019年01月04日 21時40分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

シャルレィス・スクァリオ(p3p000332)
蒼銀一閃
フェスタ・カーニバル(p3p000545)
エブリデイ・フェスティバル
主人=公(p3p000578)
ハム子
Q.U.U.A.(p3p001425)
ちょう人きゅーあちゃん
セレネ(p3p002267)
Blue Moon
芦原 薫子(p3p002731)
炎堂 焔(p3p004727)
炎の御子
エル・ウッドランド(p3p006713)
閃きの料理人

リプレイ

●真白

「「「ゆきだー!!!!」」」

 『ちょう人きゅーあちゃん』Q.U.U.A.(p3p001425)、『青き鼓動』シャルレィス・スクァリオ(p3p000332)、『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)の声が重なる。雪へ飛び出していったのはQ.U.U.A.だ。
 きゃーっ! とはしゃいで駆け出せば真白な雪に足跡がいっぱい。連れて来ていた犬も一緒に駆け回る。
「まっしろ! つめたい! シャリシャリ! あしあといっぱい! すっごくたのしい!」
「おぉ、元気じゃのー」
 お爺さんたちはQ.U.U.A.の様子にニコニコ顔。そんな彼らの様子に『雷迅之巫女』芦原 薫子(p3p002731)は小さく呟きを洩らす。
「平和……ですね」
 雪で遊ぶ少女と犬。見守る老人とのどかな風景。さらに、今回課せられた仕事は『雪かき』。
(こんな平和なことをするのは何年ぶりでしょう……)
 ひゅう、と吹く風は冷たいが、殺伐とした空気はそこにない。『百合烏賊キラー』エル・ウッドランド(p3p006713)はその特徴的な耳を赤くしながら小さく息を吐く。あっという間に息は白く染まり、空気に紛れて消えた。
「きゅーあちゃーん! シャルさんも!」
 『エブリデイ・フェスティバル』フェスタ・カーニバル(p3p000545)がQ.U.U.A.とシャルレィスを呼んだ。手を出して、と告げるとそれぞれの手の甲へおまじないのキスを落とす。
 懐かしいね、なんて小さく笑うシャルレィスとフェスタ。初めての依頼で顔を合わせたのは──確か、1年ほど前だっただろうか。
 フェスタはお爺さんたちにも幸運を分けるべく、ギフトの説明と手の甲へのキスを贈る。
「気恥ずかしいのー」
「お嬢ちゃん、儂も儂も」
「あっずるいぞ」
「ふふ、きっと幸運がお爺さんたちを怪我から守ってくれるよ!」
 嬉し恥ずかしといった様子の割に、若い女性と触れ合う機会だとお爺さんたちはフェスタの前に集まっていく。
 そんな様子を見ていてうっかり雪に足を取られ、「わっ」と小さく声を上げたのは『ライバルヒロイン』主人=公(p3p000578)。雪の中から足を出すのは一苦労だ。
(雪の深いところでの雪かきはホント、死活問題だよね)
 若者が不在で、本格的な雪というこの状況。お爺さんたちとしては、自分たちがやらねばと使命感を燃やすくらいには大切なことだ。
 このままにしておけば最悪、家から出られなくなって凍死しかねない。
 フェスタの言葉で全員が準備体操を終え、スコップなどを各々持つ。
 集まったイレギュラーズは若い者ばかり。しかし女性、少女というような年齢の彼女たちにお爺さんたちはやはり一抹の心配があるようで。
「心配いりませんよ。私たちが来たからには、お任せください!」
 そうお爺さんたちに告げてふわりと微笑んだのは雪の妖精──ではなく『blue Moon』セレネ(p3p002267)だ。
 例え女子供でもイレギュラーズ。お爺さんたちが安心できるよう、心配の種となる雪をさっさと片づけて安心させようとセレネは心に誓う。
「よーっし、それじゃあちゃっちゃと始めちゃおうか!
 すいませんが何所から始めてどっちへ進めていけばいいか、指示をお願いしますね」
「おお、おお。任せておくれ」
 公のこの言葉にお爺さんたちが頷き、イレギュラーズたちに着いていく。
 さあ、真白の大掃除。始まり、始まり。


●真白を退かす
 どのルートを通れば雪を捨てやすいかお爺さんたちに聞いた公は、川へ続く道の脇に雪を溜めよう、と仲間と共有する。
 そして溜める場所に近い所から雪かきを始めたわけだが──。
「──え、」
 ひゅん、と公の横を風が通り過ぎていく。いや、風ではなくて薫子だ。
 その瞬発力で雪を押し、雪を溜めていく薫子。その動きは素早さだけでなく的確さも持ち合わせている。
(雪かきは力仕事ですし、ちょっとした修行のようにもなって面白いんですよね……)
 仕事と修行を兼ねる、というのは中々にユニークな発想。薫子の思考を公が読み取ることはできないが、その動きに「ボクも頑張ろう」と声が漏れた。
「きゅーあちゃんもがんばるよー!」
 いつでも元気いっぱいな少女は、例え寒い場所でも元気いっぱい。風邪知らずの体とフェスタの幸運を運ぶキスも相まってもはや無敵、といった様子だ。
 バケツを用意したQ.U.U.A.はそこへ雪を入れ、両手に1つずつ、更に頭にも1つ乗せる。
「くるくるー! どうだ!」
 楽し気にくるりくるりと回り、時にスケートの如く凍った雪道を滑るQ.U.U.A.。その楽しそうな様子は仕事をこなしながらも、どこか遊んでいるようにも思わせる。
 川へ雪を捨てたQ.U.U.A.は、後をついてくる犬たちを見て「あ!」と声を上げた。
 折角一緒にいるのだ。犬ぞりがあればそれを借りて、なければ普通のソリを引いてもらって──。
(きょーそーしたらたのしそう!)
「おじいちゃんたちのところまで、きょうそうだよ!」
 拳を突き上げレッツゴー、と踵を返したQ.U.U.A.の後を犬たちは追いかけていった。

「あ、お爺さん達は座っててね♪ 私、がんばるからっ!」
「あまり頑張りすぎないようにねぇ」
 スコップで細かく雪を切り出し、大通りの方へ運ぶフェスタ。玄関で座り、その様子を眺めるお爺さんの視線は孫を見るそれである。
 お爺さんに頑張っていると思ってもらえるように──勿論本当に頑張るつもりだ──一生懸命家の前を綺麗にしていくフェスタ。不意に硬い物にスコップが阻まれる。
「あれ?」
「おお、凍ってきたのかな」
 凍った雪を退かすアドバイスを聞き、再び雪を退かす作業へ。その合間にお爺さんとぽつぽつ話をする。
「そうだ、良い遊び場とか面白い遊びを教えて欲しいな!」
「遊び場と面白い遊びかい?」
「うん! あ、ゆっくりでいいよ? その間に雪かき終わらせるからー!」
 目を瞑ってお爺さんが考えている間に、白い炎で体力を回復させるフェスタ。同じように家から大通りへ続く道の雪かきを行っていたシャルレィスはそわそわと落ち着かないお爺さんたちへ声をかけた。
「ほら、言ったでしょ? 折角来たからには私、雪かきマスターになりたいんだ」
 だから手を出さないで見守っていて、という彼女の言葉にお爺さんは頷いたばかりである。彼らの注意を逸らすべく、シャルレィスもまた雑談に興じた。
「ねえ、この辺で雪遊びするのに良い場所ってないかな?」
「雪遊びのぅ……さて」
 考え込み始めるお爺さん。雪かきから注意が逸れた間にサクサクと作業を進めていくシャルレィス。
 かいた雪は道の脇へ、ソリも借りられたので少し乗せておく。
「助かるよ。ありがとう」
 丁度通りかかった公がソリを引き取っていった。戻ってくる前にもっと雪をかいておこう、とシャルレィスはお爺さんとお喋りしながら雪を順調にかいていった。
 一方、梯子を借りた焔は後から登ろうとするお爺さんへニコリと笑いかけた。
「あのね、雪かきってやったことがないからやってみたいんだ! ここはボク達に任せてよっ!」
「おお、それじゃあお願いしようか」
 うんうんと頷くお爺さん。離れていくのを見て焔は屋根へ登り、一面の雪景色に感嘆の声を上げる。
「本当にこんなに全部真っ白になっちゃうんだね……」
 元いた世界は雪が降るような気温になることなく、混沌へ召喚されてから初めて雪というものを見たのだ。遊んでみたいという思いもむくむくと膨らむが、その前にお爺さんたちが無理をしないように仕事を終わらせねばならない。
「おーい、屋根から落ちないように。あと、下をよく確認して雪下ろししてねー!」
「はーい!」
  焔が下にいた公に向かって手を振る中、隣家の屋根へ子猫姿のセレネが軽やかに登ってくる。
(猫さんになったセレネちゃん、可愛いなぁ)
 ちょっとくらい撫でたりモフったり──と欲望が湧き上がるものの、雪を見れば本日の仕事を思い出して。
(はっ、いけない、ちゃんとお仕事しなきゃ)
 人型に戻ったセレネと互いに頷き、屋根の上から周囲を見渡す。
「誰もいませんかー、落としますよー!」
 セレネの大きな声にも応答なし。周りに人はいなさそうだ。
 落ちないように気をつけながら雪を落とすセレネ。焔は静かに目を伏せ、屋根へ火をつける。
 それは世界からの贈り物であり、弱まった神の炎。焼き焦がすことなく、温める優しい炎は屋根を燃やすことなく雪を溶かす。
 落とされ、集められた雪を川へ運ぶのはエルとQ.U.U.A.の役目。スコップでよいしょ、と雪を押し出せば川の流れへ消えていく。それを見届け、エルは踵を返した。
(これで、少しでも助けになれば良いのですが……)
 雪を放っておけば生活に関わるとエルは知っている。
 村にはこれからも雪は降るだろう。その時までにこの村の若者たちが帰ってくることを願うばかり。エルたちにできるのは、今ある雪を退かすことだけだ。
 村へ戻るエルの視界に向かってくるQ.U.U.A.と彼女の犬たちが見える。どちらもとても楽しそうに──爆走していた。
「きゅーあちゃんの勝ちー!」
 川辺まで辿り着いたのは犬たちよりほんの僅かQ.U.U.A.が早く、大喜びでバケツに溜めた雪を川へ落とす。次いで犬の引いていたソリの雪も。
「よーし、つぎもまけないよ!」
 まだまだやる気満々のQ.U.U.A.に犬たちがワンッと吠えて応える。Q.U.U.A.は視線を上げ、こちらを見つめるエルとばっちり視線が合った。
「──あ! エルさんも乗ってみる?」
「え……!?」
 びしっとQ.U.U.A.が指差したのは犬の引くソリ。確かにこれは人が乗る用ではある。
 エルの視線を受けた犬たちが再びワンッと吠えた。

 だいぶ綺麗になった道を見て、小さく息をつく公。
 善悪問わず依頼を請け負うローレットだが、やはりこうして誰かの為に働くのが──少なくとも公にとっては──ローレットの本業だと思う。
「やれやれ、少しばかり疲れますね。いわゆる殺し合いで感じる疲労とはまた違っているのが新鮮ではありますが」
 一旦手を止めた薫子は額に滲んだ汗を拭った。
 まとわりつく空気は冷たく張りつめているものの、体はこれでもかというくらい暑い。
 不意に、視界の隅で動くものがあった。
「こちらは終わったので、お手伝いしますねー!」
 手を振りながら向かってくるのはセレネと焔。見れば、村の屋根はどれも雪が落とされている。これで屋根が雪の重さに負ける事は無いだろう。
「ええ、お願いします。こちらもあと僅かです」
 真白の大掃除、終わるまでもう少し。


●雪かきが終わったら?
「ゆきあそびターイム!」
 万歳するQ.U.U.A.。併せてシャルレィスやフェスタ、焔も両手を上げる。
「おじいちゃん、雪遊びにちょうどいい場所ってないかな?」
 焔が問えば、お爺さんたちは村の脇に大きな空き地があると教えてくれる。雪遊びに興じるメンバーはそこへ移動し、各々雪だるまやかまくらなどを作り始めた。
「よしっ、これで一晩もすれば固まって子供たちが遊べるようになるよ!」
 雪がこんもりと積まれたところをなだらかに、滑り台のように押し固める公。それを満足げに見ると、その隣に雪だるまを作るべく雪玉を地面へ転がす。その傍をQ.U.U.A.が楽し気に、しかしその運搬性能でもって素早く雪玉を転がしていった。……中々に大きな雪玉だ。片方はまだ作る気がないらしい。
 同じように雪だるまを作っていたセレネはポケットから取り出した飴を口の中へ。広がる甘い味に小さく微笑み、丁度誰も踏んでいない綺麗な雪を発見する。
(誰も、見てませんよね?)
 見られていたら恥ずかしいから、周りを確認してこっそりと雪を口元へ。ぱくりと頬張ってしまえば、苺みるくと雪が良い具合に混ざって──。
「……冬のかき氷、ですね」
 ふふ、と笑うセレネ。後に残った飴の味を楽しみつつ、再び雪玉をコロコロと。
 フェスタはせっせと雪を盛り、確りと固めて穴を掘る。かまくらの出来に笑顔を浮かべれば、傍を通りかかったお爺さんが「立派だのぅ」と顔を綻ばせた。
「えへへ、ありがとう♪ そうだ、お爺さんがオススメな雪遊びってある?」
 そう問えば、お爺さんは暫し首を傾げてから辺りを見回す。そして綺麗な雪の残る場所へ行くとゆっくりしゃがみ込んだ。
「こういうところでな、色水を使って絵を描くんじゃよ」
「雪にお絵かき? カラフルになって楽しそう!」
 いつものお散歩メモとは違った雰囲気になりそうだ。色水を用意してくれるというお爺さんの言葉に甘え、フェスタは何を雪に描こうかと頭の中へ思い描き始める。その、一方で。
「きゅーあちゃんとくせい、ツララおとしゲームー!」
 いえーい! とポーズを取るQ.U.U.A.が2人。そう、2人いる。
「うごくターゲットを出すから、タイミングよくツララをおとしてヒットさせてね! いくよ!」
 片方のQ.U.U.A.が掻き消え、代わりに出現したのは兎。雪に紛れないためか、茶色の毛並みをしていた。
「えいっ」
 焔がスコップでツララを落とすものの、兎は間一髪で避けた。薫子も続いて狙いを定めるが、兎はひょいひょいと華麗にツララから逃れる。
「うぅぅ、上手く当てられないよ」
「わりと苦戦しそうだとは思っていましたが……」
「せーのっ、えい! あ、あれ?」
 続くシャルレィスも苦戦を強いられるものの、皆1度で諦めることはない。いつしかお爺さんたちというギャラリーが集まり、イレギュラーズたちへ声援を投げかける。
「惜しい!」
「そこじゃ! 今!」
 そんな声に励まされ、イレギュラーズたちはツララを落とし──やがて1分が過ぎて兎は掻き消えた。
「何回か当てられたー!」
「私も!」
「上手かったぞー!」
 なんて皆で喜び合い、一体感が生まれたのも束の間。続く雪合戦では火蓋が切って落とされる。
「雪合戦は雪玉を投げ合えばいいんだよね。それならこれで──」
「いっくよー!」
 Q.U.U.A.の投げる雪玉が焔の顔面に直撃。わぷ、と言葉が切れ、頭を振って雪を払う。
「つ、つぎこそふにゅっ」
 焔は気を取りして雪玉を振りかぶり──雪に足を取られてずっこけた。顔が冷たさで痛い。
(うぅ、やっぱり水とか雪とかは相性が悪いみたいだよ……)
 このまま雪に触れていたら、多少は相性も良くなるだろうか。
 雪に埋もれたままの焔の頭上では雪玉があちらこちらへ飛び交っている。
「負けないぞー!」
「こっちだって!」
 シャルレィスは対抗意識を燃やしたフェスタへ当てようと雪玉を振りかぶる。その視界の隅を、白銀の子猫がちょろちょろと。
「……ってセレネさんずるい!」
 投げられる雪をぴょこぴょこと避け、シャルレィスの死角に回り込んで人間種の姿を取る。
「こっちですよ!」
 素早く雪玉を投げつけるセレネ。
(子猫姿が可愛すぎて狙いがそれちゃう……!)
 なんてすっかり隙だらけなシャルレィスは、直球でやってきた雪玉によって雪塗れになった。
(雪合戦と言えば、良い感じに盾とか障害物を作ってやる本格的なのもありましたね)
 今回はそうではないようだが──。
「──みせてあげましょう」
 力強い雪を蹴る音。一同がはっと振り向けば、機敏な動きを見せた薫子はそこにいない。死角に回り込まれ次々と投げられる雪玉にエルやシャルレィスは腕を交差して身を護る。セレネは雪玉が顔面に当たり、ぽすんと雪に埋もれた。
 これが大人──なんて大人げない!
「遊びも全力でした方が、面白いでしょう?」
「ふふ、そうだね! 負けないぞー!」
 フェスタの声と共にセレネも人型に戻り、他の面々も雪玉を手に大乱闘。もはや誰の雪玉が辺り、自分の雪玉は誰に当たったのか。
 暫しの後、疲れ切った一同は雪の上へ寝転がっていた。
「たのしかった! じゃあつぎは、おーっきなゆきだるまつくるよ!」
 疲れ知らず風邪知らずのQ.U.U.A.を除き、他の面々は1度休憩のため集会所へ足を運ぶ。
「わ、あったかー」
 焔が室内の空気にほっと表情を緩める。囲炉裏の火を囲むお爺さんたちの他に、公も先に火に手をかざして暖を取っていた。
「この辺だと、冬を過ごすときの定番の食べ物とかは何がありますか?」
「食べ物……食べ物ねぇ。酒を飲んで温まったりはするかの?」
「お酒ですか?」
 お爺さんの答えに薫子が食いつく。雪見酒もできるかと問えば、お爺さんはニコニコと頷いた。
「おお、できるぞ。どれ、1本持ってくるかの」
「ありがとうございます」
 席を立ったお爺さんを待っている傍ら、フェスタが水筒を取り出す。
「私、梅昆布茶持ってきたんだ~♪」
「あ、私も欲しい! そこで焼いてるお餅も貰えるかな?」
「もう少ししたら焼けるよ」
「私も、梅昆布茶をいっぱい頂いてもいいでしょうか?」
 皆で持ち合い譲り合い、お餅と梅昆布茶で体を温めて。ほっこりぽかぽかと、全員の表情が緩んだ。
「ふぅ……疲れました。久し振りに楽しく遊ぶことができましたね……」
「お疲れさまでした。どれも、楽しかったですね」
 薫子の言葉にセレネがふわりと微笑んで、薫子もつられるように笑みを浮かべる。
 どこから「みんなー! みてみて!」というQ.U.U.A.の声が聞こえて、一同は外を覗き込んで。

 真白の大掃除、おしまい。雪との戯れは──まだ、もう少し。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 お疲れさまでした。
 皆様の働きにより道は雪が退かされ、また雪だるまやかまくらなどが村に散見されます。戻って来た若者たちが驚くことでしょう。

 またご縁がございましたら、どうぞよろしくお願い致します。

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