PandoraPartyProject

シナリオ詳細

洞窟オブザデッド

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ライク・サイモン・ペグ
 追われている。追われている。
 陽の光の届かない暗い洞窟の中を、拾ったカンテラと電池の切れかけている懐中電灯を頼りに。
 複雑な分かれ道を直感だけで決めて、足元の確認すら不確かなまま走り続けている。
 それがどれ程危険な行為であるかは言うまでもないが、仕方がなかった。なにせ、
 追われている。追われている。
「はぁ、はぁ、ちょっと待ってくれ。距離は稼げている。少し休もう」
「……ッ。そう、ッスね」
 走り始めてから、どれ程経過したのか。ふたりとも、体力の限界が近かった。
 足を休めようと、肩を上下させながら壁面に体を預けて座り込む。
 男は息を整えながら、同じく体力を回復させている女に向けてこう言った。
「青雀、ねえ、アレなんとかできないのかい?」
「無茶言わないで欲しいッス。僕は、荒事はビューティーちゃんに任せてるんッスよ」
「だってほら、いつも変な杖とか剣とか持ってるじゃないか」
「儀式具に不思議な力を求めないで欲しいッス。それに、あんな穢れたもの、入り口で捨てたッスよ」
「『穢れたもの』……? ああ、ギフトで切り替わったのか。変な邪神引いて暴走されるよりはマシだけど。君、それもう少しコントロールできないのかい?」
「無茶言わないで欲しいッス。ギルオス君だって、パンツ貰うギフトをコントロールできないじゃないッスか」
「僕のギフトを勝手に変なのにしないでくれ! それに、貰ってるものはパンツばっかりじゃ……いや、ごめん。体力の無駄だね」
「……これ、逃げられてもどうやって帰るッスかね?」
「……それなら問題はないよ。奴らは目が悪く、鼻と耳で獲物を追っているようだったからね。走りながら目印になるものを落としてきたんだ」
「すごい、流石ッスねギルオス君。で、何を落としてきたッスか?」
「…………パンツを」
「ついにパンツを貰うギフトからパンツを操るギフトに……」
「違うから! ああもう、足音だ! 走るよ!」
 逃げてきた道から、どたどたという足音と、呻き声。
 姿を見ることもなく、ふたりはまた洞窟の奥へと走り始めた。

●ゴーン・レディ
 その日、ギルドの一室に集められたイレギュラーズ達は珍しいものを見た。
 普段底抜けに明るい筈の『クソザコ美少女』ビューティフル・ビューティー(p3n000015)がずっと不安げな顔を浮かべているのである。
「青雀さんが、行方不明になってしまいましたの……」
 頭の中に後輩口調の情報屋が浮かぶ。次いで出た感想は皆同じものだった。今回はどんな神様引きやがったんだアイツ。
 当人の意思に一切関係なく信仰対象を変えるという厄介なギフトを持つ彼女は、どんなタイミングで暴走を始めるかわかったものではない。だが、今回はどうやら違うようだった。
「ギルオスさんと一緒に調査にでかけたようなのですが、ふたりとも、それから連絡が途絶えましたの。別の調査員が向かったところ、捜索目的であった洞窟の入り口にこれが……」
 取り出されたものは杖や剣、人形。どれも過剰なほど装飾がなされており、実用性は見受けられない。どう見ても儀式・儀礼用と言えるものだ。
 なるほど、青雀の所持品だと考えられる。
「お願いします。あのふたりを救出してくださいまし……」
 しおらしい美少女が俯いている。断る理由はなかった。

GMコメント

皆様如何お過ごしでしょう、yakigoteです。
映画のプロモのようにこの時点まで仄めかすだけでしたがゾンビものです。
ギルオス・ホリス(p3n000016)と『可愛い狂信者』青雀(p3n000014)が洞窟の中を調査中、ゾンビの群れに遭遇。現在もこれから逃げ回っています。
彼らを無事に救出してください。

【エネミーデータ】
●ゾンビ
・洞窟で大量発生したゾンビ。全体数は不明。いっぱいいる。
・フィジカル面で個体差はありますが、概ね力は生きていた頃よりも強いです。脳のリミッターが云々的なやつだとお思いください。
・目が悪く、鼻と耳は非常に良いタイプです。
・長時間の追いかけっ子をした結果、群れにばらつきが出始めています。道ながらのゾンビを先に進める程度に排除しつつふたりを探すことになるでしょう。
・洞窟内の全てのゾンビが逃げているふたりを追いかけていますが、イレギュラーズ達を発見するとそちらに目標を変更する個体もあるでしょう。
・これらの殲滅が依頼目標ではありません。

【シチュエーションデータ】
●洞窟
・複雑な分かれ道が多く、広い洞窟。
・光源がありません。自前で用意する必要があります。
・天井が高く、平均的な成人男性が腕を伸ばしても手が届きません。
・道の途中途中に色んなパンツが落ちているので、救助対象がどのルートを通ったのかを発見するのは容易です。
・できたらパンツは回収してあげてください。あれはギルオス君の大事なものです。

  • 洞窟オブザデッド 完了
  • GM名yakigote
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年12月21日 22時00分
  • 参加人数 8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

キドー(p3p000244)
盗賊ゴブリン
主人=公(p3p000578)
ハム男
トリーネ=セイントバード(p3p000957)
慈愛のペール・ホワイト
雨宮 利香(p3p001254)
雨宿りの
神埼 衣(p3p004263)
狼少女
炎堂 焔(p3p004727)
炎の御子
サイモン レクター(p3p006329)
吸血鬼を狩る吸血鬼
湖宝 卵丸(p3p006737)
湖賊

リプレイ

●スタイル・ジョーンズ
「洞窟の奥に、伝説のハイパーウルトラスペリオルマッスルドラゴンを見た! うーん、胡散臭いッスね」
「そうなんだよね。でもまあ、突っぱねるのは裏を取ってからでいいんじゃないかい?」

 外から見れば、それはただの洞窟だった。
 入り口に文明的な装飾があるわけではなく、何か金銀財宝が眠っているという地図が指し示すわけでもない。
 ただそれでも、近隣の町や村からは、『入った者が二度と出てこない』、そういう洞窟であると言われていた。
 奥は暗くて、照らしても見通すことは出来ない。それでも、ここに情報屋が入っていったことは確実だった。
「困るな……ギルオスには燃える石の弁当を送りつけなきゃいけねえんだよ」
 頭をぽりぽりと掻きながら、『盗賊ゴブリン』キドー(p3p000244)。今見に行ったら料理は勧めないとかあったんだが。
「まあ真面目な話、情報屋が居なくなると作戦も立てられなくなるからな。青雀にもちゃんと弁当送りつけるぜ。安心しなビューティー……あれ?」
 遭難者にヘリで上空から飯だけ落とす感じ。ちゃんと救助もしてあげて。
「あらあら。情報屋さんが危険だなんてよろしくないわね」
『コケコッ砲』トリーネ=セイントバード(p3p000957)がバサリと自分の羽を広げた。実際、情報屋が窮地に立たされているという状況は少ない。あのふたりが不明確な情報に深入りしすぎたというのも間衣が憎い話なのだが。
「いつもお世話になっているもの。ここはさくっと! できる鶏パワーで二人とも助けてあげましょう!」
 鶏パワーってなんだろう。卵かな。
「ただの洞窟ってわけでもなさそうですね。まー青雀さんの事ですし何かの宗教なんでしょう」
『雨宿りの』雨宮 利香(p3p001254)がぼんやりと予想立てた。おそろしく信用のない情報屋である。普段の行動が行動なので仕方がないところだが。
「あの二人には日ごろの恩もありますしね……多少の怪我なんてなんてことないです!」
 情報の正確さ。ギルドに所属していて、その重要性を知らない者は居ない。胸の前でぐっと握りこぶしを作って意気込んでみせた。
「ん。ギルドの人がピンチみたいだし、ちゃんと助ける」
『狼少女』神埼 衣(p3p004263)が気持ちを切り替えた。
「……あと、ゾンビもいっぱい居るみたい。ちょっと楽しみ……!! 違う違う」
 ぶんぶんと頭を振る。わくわくに飲み込まれてはいけない。今回は大切な仲間の命がかかっているのだ。
「目的は最優先は2人の救助。ちゃんとお仕事する……でも視力以外役に立たなそう。見つけたら守る事を一番に考えよう」
「ギルオスくんは色々おかしなものを集めるのが趣味だって噂は聞いてたけど、普段からパンツを持ち歩いてる変態さんだったんだね。それともパンツ風邪っていうのにかかっちゃってるのかな?」
 例の奇病に関して思いを馳せる『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)。せやで。(「嘘をつくな!」)
「青雀ちゃんも一緒みたいだし、ギルオスくんが変態さんでも一応助けてあげないとだよね」
 仕方ないギルオスくんですが、宜しくお願いします。
「やれやれ、こんなにしおらしく頼まれたなら力を貸さねぇわけにはいかねぇぜ」
『吸血鬼を狩る吸血鬼』サイモン レクター(p3p006329)は今にも泣き出してしまいそうな少女の顔を思い出し、仕方がないとばかりに優しく首を振る。いつも底抜けに元気で、どれほどの窮地でも次の日にはけろっとしている少女が、友人のこととなるとああも沈み込んでいた。それだけで、引き受けるには十分な理由になる。
「すぐ見つけて帰ってくるから飯の支度でもして待ってな」
 情報屋が確度の高い情報を得るためには少なからず足を使う必要があり、それには危険の中に身を投じることもあるのだろう。戦力と言えるほどの武威を持たない彼らがリスキーな場面に陥っている。これも互助作用なのだろうと『湖賊』湖宝 卵丸(p3p006737)はひとりごちた。
「そのまま帰ってこれない様だったら大変だ、卵丸、海の男で海賊だから、困ってる人を放ってなんておけないんだからなっ!」
 海賊は人を困らせる方なのでは……
「今回の目的は二人の救出だからね、なるべく戦闘は避けて見つからないようにしよう」
『ハム男』主人=公(p3p000578)が全体の意識を再度確認する。敵の数は多い。それら全てを殲滅すれば確かに安心ではあるかもしれないが、それは今回のオーダーではない。必要であれば誰かが依頼をし、誰かが引き受けるだろう。
 戦うことはあっても、討ち滅ぼすことは今日とは違う物語なのだ。

●クワイエット・ゾーン
「ギルオス君、また何か届いてるッスよ?」
「あれ、ホントだ。うーん、時間がないし、持って行って出先で開けさせてもらおうかな。貰ったものを放っておくのも良くないし」

 息を殺して、足音さえ気をつけて。それでも確かに急ぎながら、暗い暗い洞窟の中を進んでいく。
 幸いと、本当に入り組んでいるだけの穴であるようで、ありがちな罠の類などは一切見受けられなかった。
 ここまで迷うことはない。踏まれて汚れてはいたものの、道中には一定間隔でパンツが落ちており、要救助者の通ったルートを辿るのは容易なことだった。
 ふと、手を挙げる。
 それに応じて、皆が足を止めた。
 耳を澄ます。呻き声だ。呻き声が聞こえる。

●プライマリー・サム
「めっちゃパンツ入ってた……あのさ」
「いらないッス」
「だよね……」

「ゾンビ共は目が悪く、音と匂いに敏感。成程、この性質を利用すりゃ――」
 キドーは紙巻を一本咥えて火をつける。必要以上に煙を吸い込まぬまま口から離し、ゾンビのいる前方に向かって放り投げた。
 微かな紫煙と匂い。だがそれは、人体の持つそれよりも遥かに鼻につく。思惑通り、ひと塊となっていた奴らの注意が、地面に転がった煙草の方へと向いた。
 それを確認してから口に残った煙を仲間には当てぬように吐き出してしまう。肺には入れない。この場における極度の緊張感はストレスとなって重くのしかかりはするが、リラックスを許してくれる程、現状は甘くないのだ。
 口元を抑えながら、煙草に注意を向けているゾンビらの隣を通り過ぎる。最小限の物音で、抜き足と、忍び足。
 見えなくなる程度には距離を開けて聞き耳を立てたが、後ろからの足音は聞こえない。ほっと一息ついて足元を見ると、パンツが一枚落ちていた。どうやら、道を間違えては居ないらしい。
「……盗賊がパンツ拾いながら人助けってどんな状況だよ」

 ゾンビを引きつけるためにギトーが残していった紙巻きを、衣が後ろ髪を引かれる気持ちでちらちらと見ていた。
 探索開始から早二時間。堪えられないほどではないが、ヘビースモーカーの彼女には口が寂しくなる頃合いである。
「我慢我慢……」
 火を点けるためとはいえ、少しだけでも吸えた仲間を羨ましく思いながら。
 道筋を示すパンツを辿っていく。洞窟の内部は入り組んでおり、ここまで何度も分かれ道があったが、その度に落ちていたパンツを目印にここまでこれたのだ。
「というか、なんで沢山パンツがあるの……?」
 ひとの趣味はそれぞれだ。周りに迷惑をかけていない以上は、そっとしておいてあげるのも素敵なレディのエチケットである。(「やめろぉ!」)
 曲がり角の向こうにまたゾンビ。人間を食らう、動く死体。
 戦ってみたいのは山々だが、目的まであとどれほどかわからず、音にも配慮しなければいけないこの状況。
 おあずけを食らって逸る気持ちを抑え、こっそりと、忍び足。

「ふむふむ。静かに行動ね。了解よ!」
 声を極力抑えているトリーネは、大事なことに気がついた。
「あれ? もしかして鳴けない?」
 ゾンビ共は音に敏感だと聞いている。こんなところで鶏鳴を響かせれば、見つからぬようやり過ごすことなど不可能だ。
「に、鶏パワーが使えない。私は今日は無力だわ、ただの鳥だわ……」
 がくりと項垂れるトリーネ。世界初、卵にも肉にも目覚ましにも使っちゃいけない鶏。一体どうすればいいんだ。
 ならばと布を被せたカンテラを咥えて運ぶ役目を引き受けた。喉を使えないなら嘴が塞がっても問題はないのである。
 なお、布はパンツが落ちていたのでこれ幸いと使わせていただいた。パンツ被せたカンテラ咥えた鶏の図。お、風邪か?
「……あれ、今のところ私ただのカンテラ役じゃ?」
 このままではいけないと、拾ったパンツの代わりに羽毛をおいていく。
「うん、これでよし」
 隙間風とか吹いていないだろうなここ。

「どうも中はぱんつがたくさん落ちているようですね……なんでだか」
 手元のランタンで照らしながら、分岐路の度に落ちているパンツに、利香は呆れた物言いで頬を掻いた。
 他に目印になるものがなかったのだろうか。いや、単に目印にはなるがこの場では全く役に立たないものがこれだったのかもしれない。パンツでゾンビは倒せないし。あ、臭いがある場合は……より危ないか。
 救助対象の持ち物だろう。どっちのかは敢えて聞かないでおくが、せっかくだから拾っていく。
「乙女のパンツがあったらくすねてやるんですが……」
 ぼそりと呟きつつ、目印代わりには持ってきたパンを地面に刺しておいた。こういう場合に食料を使うのはNGだと童話にも在るが、刺さるほど硬いならきっと大丈夫。
 と、仲間が足を止めたのに釣られて、自分も歩みを止める。前方にまたゾンビの集団。
 合図をし、光源を抑え、甘い甘い匂いを残す。オンオフを切り替え、匂いを点在させれば、ゾンビ共はそれを辿り右往左往し始めた。

 狭い空間でかつ、光源が一切ないという環境。
 限定的な状況ではあるが、焔の持つギフトは今この場においては非常に有用なものだった。
 ゴツゴツした壁面に添えた手を離すと、そこに火が灯っている。燃焼せず、痕を残さない炎。だが、陽の光の一切が届かぬこの場所では、十二分以上の働きを見せていた。
 ポーチから紙切れを取り出して、シンプルな紙飛行機を折る。その機首をZ字に曲げると、そこに火を灯した。
 紙飛行機を、視界の通らない暗い暗い奥へと飛ばす。火は旗印のように揺れながら、行先をほんのりと明く照らして進んでいく。
 奥に、動く死体の一団。その最後尾の頭にこつんとぶつかると、紙飛行機は推進力を失って地面に落下した。
 ゾンビが振り向いているのが見える。だが視力が弱いせいだろう。こちらに気づいてはいないようだ。
 あまりの多さに辟易していたところ、ゾンビが踏んづけてしまったのだろう。火がふつりと消えて、洞窟がまた元の暗闇を取り戻した。

「……にしてもパンツが目印か。緊張感が薄れちまうな」
 ぼりぼりと頭を掻くサイモン。状況は非常に困難だ。救助対象は武力を全くと言っていい程所持しておらず、その上急がねば相対距離は開くばかり。加えて、自分たちも前後門の虎狼よろしく、ゾンビに囲まれているのだ。互いの距離が接敵のそれでは無いというだけで、安易な逃げ道が存在しないことに変わりはしない。
 だがそれでも、度々落ちているパンツが目印で、それを見逃さぬよう足元を気にして進むという光景は、些か間の抜けた話であるのも事実だった。
 それでも、
「そんな、ギルオス君のパンツの霊圧が消えたッス!」
「パンツの霊圧って何さ!? 普通に使い切っただけだから!」
 確実に前には進んでいたようで、気を張り巡らせていた甲斐もあったのだろう。
 ふたりの姿はまだ見えない。ゾンビの数が多く、前が見えないのだ。だがここまできて、なおやり過ごすという選択肢はなかった。
 手に爆弾。目標は死者の群れ。いざ道を開け。

「爆発!?」
「ついにユニークゾンビッスか!?」
 未だゾンビのせいで姿の見えない救助対象が、爆発音を聞いて慌て始めた。
 軽口を叩きあっているように見えて、今最も生命の危機に立たされているのはあのふたりだ。異常がおきれば、敏感に反応もするだろう。
「急ごう! 殺傷力の高い個体がいるのかもしれない!」
「待って待って、卵丸達ゾンビじゃないよ、逃げないで!」
 これには卵丸もまた慌てた。このままではまた距離が離れてしまう。もうパンツも無いと言っていた。この先は正確に辿れるかもわからないのだ。
「ギルオス君、人の声ッス!」
「そうか、救助隊か!」
 声は届いたようだ。ほっとするが、先に意識を目の前のゾンビ共に合わせなければならない。既に音は立てている。早急に道を開かねば、後のゾンビも追いついてきてしまうだろう。
 抜刀一閃。手近な一体の首をハネる。ここからは戦いだ。刃のように心を研ぎ澄ませ。
 推通る。

 死体を潰し、穿ち、切り飛ばし。
 そうして開いた活路の奥に、ギルオスと青雀のふたりの姿を見つけて。
 手を伸ばし、それを引いて十分な距離を空けたところで一息をついた。
 自分たちは平気だが、情報屋のふたりは荒い呼吸を懸命に整えている。もとより、荒事の専門では無い中で、極度の緊張状態。体力も限界に近かったはずだ。
「いや、ありがとう、助かったよ」
「もうダメかと思ってたッスよ!」
 礼を言うふたり。だが、まだ終わりではない。ここからまた来た道を戻らねばならないのだ。
 それはつまり、やり過ごしてきたゾンビ共を、もう一度抜ける必要があるということだった。
 情報屋のふたりに、公はどこかハイライトの失った瞳で『それ』を差し出した。
 悪臭に、ふたりが嫌そうな顔をする。
「ボクもこれは最後の手段にしたかったんだけど……」
「いやいやいや、他の方法があるはずだ、そうだろう……?」
「すぐ慣れますよ」
 心を鬼にして、『それ』――ゾンビの体液をふたりに塗り込んだ。

●ノット・アンディ
「はい、先輩方がちゃんと拾ってくれてたッスよ」
「…………うん、ありがとう」

「嗚呼、陽の光が久しく感じるよ!」
「依頼を出してくれたのはビューティーちゃんッスかねえ。あとでお礼言わないとッス」
 あの後、何事もなくゾンビの群れを回避し、ようやく洞窟の入口まで引き返してこれた頃。丁度、朝日が登る瞬間だった。
 洞窟の中では吹かなかった風が、肌に痛いほど突き刺さる。だがそれは生きていることを実感させ、あの薄暗い闇の中から脱出できたことを示すものでもあった。
「とりあえず、ギルドに戻って報告ッスかねえ。調査そのものはハズレだったッス」
「それよりも先に休みたいよ。もうへとへとだ。臭くて仕方ないしね」
 ふと、後を振り返る。
 洞窟は今もぽっかりと口を開け、中を見通すことは出来ない。
 それでもずっと、ずっと、誰かを待っている。誰かを待ち構えている。
 なんだか身震いを感じたが、それを冬のせいにして、歩き始めた。

 了。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

どうやって群れを維持しているんだろう。

PAGETOP