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シナリオ詳細

ウキうきコーヒーブレイク

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●伝説のコーヒー豆
 或る昼下がりの午後、ふらりとローレットの扉を開けて一人の丸眼鏡の女性が入ってきた。
 受付のカウンターに付くなり、女性は口を開く。
「マスター、オススメのコーヒー一杯」
「ここはカフェじゃないわよ。あと私はマスターでもないわ」
 『黒耀の夢』リリィ=クロハネ(p3n000023)が呆れ気味に突っ込むと、女性はガバッと音を立てて、リリィに詰め寄った。
「知っているわ! 知っているからこその『あえて』よ!!
 世界救済に動くギルドローレット! そこの”味”を知りたかったのよーーー!」
「はぁ……(また変なのが来たわね)」
 詰め寄られるままに、リリィは「それで、何のようかしら?」と尋ねると、女性――ミル・ソーサーはその胸の内に秘めるコーヒー愛をつとつとと語り始めた。
「――コーヒー。魅惑の黒い水。
 苦みと酸味、そして芳醇な香りをもつこのコーヒーに魅入られて二十年……。
 あまりにも好きすぎて、私はついにコーヒー治癒術士としての道を歩み始めたわ……」
 またよく分からないジョブが出てきたが、スルーしておく。
「とにかく、最高の一杯を求めて、私は北はゼシュテル、東は海洋と南へいけば深緑と、行けるところへは足を運んで、様々なコーヒーを飲んできたわ。
 どれも、素晴らしいものだった――けれど、まだ足りない、そう、最高の一杯はまだ在るはずだと、探し求めた。そして――」
 ミルは一拍力を溜めて、その丸眼鏡をクイっとあげた。
「幻想西部の山越え谷越え、川流されて――ついに私は見つけたのよ!
 伝説の、エメラルドレッドリバーマウンテンを!」
「エメラルドレッドリバーマウンテン?」
 聞き慣れない言葉に首を傾げるリリィ。
「エレリマ(略語)を知らないの!? 貴方、コーヒー飲まないわね!?」
「えぇ……? まあ苦いのは苦手なのよ。ココアなら好きよ」
「かーっ! これだから紅茶派はっ!!」「いえだからココア……」
 喰い気味に否定するリリィを無視してミルがエレリマについてつとつとと語る。
「エレリマは伝説と言われるほどに奥深い香りをすこし強めの苦みが特徴のコーヒー豆を持つという、コーヒーノキの魔物よ!
 虹色に輝く果実の中に、プリップリッの赤い種を持つの! それを取りだして、精製して――ああっ!! 焙煎したいぃぃぃ――ッ!」
 髪を振り乱すミルにどん引きしつつ、リリィが口を挟む。
「ようやく理解したわ。
 つまりその魔物を退治すればいいのね」
「そう! コーヒー治癒術士たる私は戦闘も可能だけれど、あくまで支援がメイン! 一人でエレリマを倒す事はできなかった!
 だから、あの群生するエレリマを倒す力を貸して欲しいのよ」
「そういうことならば力を貸せると思うわ。
 ギルド員――特異運命座標ちゃんたちに声を掛けるから、待っていて頂戴」
「よぉぉぉし!
 集まるまでここで待たせてもらうわ! お湯はあるかしら、手持ちのコーヒー奢るわよ!」
「いえ、だからココア……」
 こうしてコーヒーへの熱情の律動に揺れる暑苦しいお姉さんミル・ソーサーからコーヒー豆収穫(魔物討伐)の依頼が入るのだった。

GMコメント

 こんにちは。澤見夜行(さわみ・やこう)です。
 コーヒー中毒者が伝説の豆を見つけました。
 美味しい珈琲を飲みつつ、魔物を倒しましょう。

●依頼達成条件
 エメラルドレッドリバーマウンテン十五体の撃破

●依頼失敗条件
 エレリマの果実を五個以上ダメにする

●情報確度
 情報確度はAです。
 想定外の事態は起こりません。

●エメラルドレッドリバーマウンテン(エレリマ)について
 コーヒーノキの魔物。
 一体につき、一つ虹色に輝く果実をつける。
 果実は非常に繊細で、強い衝撃を受けると化学変化を起こし始め、すぐに風味や味が落ちてしまう。ダメになった果実は、その瞬間本体より落ちて腐り出してしまう。
 果実をもぎ取るには、ある程度のダメージを与える必要があり、繊細なこの魔物にどう向き合うかがこの依頼では重要となるでしょう。
 結構陽気で強気な魔物で逃げたりはしません。
 防御技術の低い人を優先的に狙う傾向があります。

●ミル・ソーサーについて
 説明しよう。ミル・ソーサーはコーヒー治癒術士である。
 コーヒー治癒術士とは、その名の通りコーヒーによって支援するすごいジョブなのだ。
 どんなに苦境な状況にあっても、コーヒーブレイクを取る事によって、身体能力の強化、魔力増強、集中力向上、と多彩な恩恵が受けられるのだ!
 但し、コーヒーを挽くのに極度の集中が要される為に戦闘には不向きという欠点もあるのだ!

 ミルは皆さんの好みに合わせてコーヒーを作ってくれます。
 戦闘中でもブレイクタイムを作って、バフを受けましょう。
 酸味、風味、苦み、ご指定の味に合わせたブレンドを淹れてくれます。

●戦闘地域
 幻想西部の山越え、谷越え、川流されて。辿り着く秘境になります。
 時刻は十四時。
 川岸の平原での戦闘になります。視界良好、戦闘がやりやすいことでしょう。

 そのほか、有用そうなスキルやアイテムには色々なボーナスがつきます。

 皆様の素晴らしいプレイングをお待ちしています。
 宜しくお願いいたします。

  • ウキうきコーヒーブレイク完了
  • GM名澤見夜行
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年12月21日 22時00分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

スティーブン・スロウ(p3p002157)
こわいひと
九重 竜胆(p3p002735)
青花の寄辺
コゼット(p3p002755)
ひだまりうさぎ
ホリ・マッセ(p3p005174)
小さい体に大きな勇気を
ユー・アレクシオ(p3p006118)
不倒の盾
ビス・カプ(p3p006194)
感嘆の
藤堂 夕(p3p006645)
小さな太陽
シュテルン(p3p006791)
ブルースターは枯れ果てて

リプレイ

●辿り着くのに五日かかりました
 幻想西部から南部に連なる険しい山脈を昇り、時に切り立った崖をロープ一本で下り、降り立った先の急流の川をゴムボート一つでもはや流されながら、道無き道を進む事五日。
 既に何の為にここまでするのか分からなくなってきたその先で、遂にイレギュラーズと依頼者ミル・ソーサーは伝説のコーヒーノキ、エメラ以下略マウンテン通称エレリマの群生地にやってきた。
「いたわっ!! あれよ! あれがエレリマよーっ!!」
「ちょっと、静かにしなさいっ、気づかれるでしょうっ」
 此処までの行程をまるで意に介さないミルのテンションとバイタリティの高さは一体どこからくるのか。到達するまでに疲れ切ったイレギュラーズは深く息を吐き出した。
「おめえの入れるコーヒーは確かに美味かった……が、出来ればゆっくりと静かに飲みたかったな」
 ここに来るまでの間四六時中コーヒー話を一人繰り広げるミルに辟易していたイレギュラーズだが、特にコーヒーの味がわかりそうなスティーブン・スロウ(p3p002157)はミルのターゲットにされ寝ても覚めてもコーヒー漬けの毎日だった。過酷である。
「まあコーヒー治癒術士になるまでの話は面白かったけどね。
 それはともかく、エレリマ、結構大きいわね」
 木陰から覗いてみる『一刀繚乱』九重 竜胆(p3p002735)がエレリマの数を確認しながら言葉を零す。ミルが「大きいってことは実も十分に育ってるってことよーっ!」と静かに大声を上げるのでよくよく実を見れば、確かに虹色の実が大きく実っていた。
「それじゃ、すぐ、戦う?
 最初に、ミルさんの、コーヒー飲んで置きたいの、だけど」
「コーヒ-が飲みたいのね!? 良いわ! 最高の一杯を入れてあげるわよ!?」
 ただ一杯のコーヒーを入れるだけなのに、どうしてこうもテンションが上がるのか。
 『孤兎』コゼット(p3p002755)は「苦くなくて、ミルクと砂糖いっぱいで、ぬるめ、がいいな」と注文をつける。
「コゼットちゃんはお子様ねぇー!」とか言いながらしかし注文通りに作るミルの信条は「人の数だけコーヒーの味がある」だ。たとえ山盛りの砂糖をいれようとそれはその人の味なのだと理解する。ただしコーヒー以外は認めないコーヒー至上主義なのがたまに傷だ。
「それにしても、エ”メ”リマね。
 陽気な奴等と聞いたが、本当に陽気に幹の身体を動かしてるな。マラカスでも振りそうだ」
 『小さい体に大きな勇気を』ホリ・マッセ(p3p005174)がそう言うと「エ”レ”リマよ! ホセくん!」とコーヒーを入れてるミルが訂正する。エメラルドレッドで”エレ”、ややこしいですね。
「結構大きいから収穫する際は注意だな。
 ジャンプで届けば良いが……そうだ保護結界はもう張っておこうか?」
 今回収穫組と囮組で分かれて行動するイレギュラーズ。収穫組でブロックを担当する『護り手』ユー・アレクシオ(p3p006118)は保護結界で実を守るのも兼ねている。
「良いんじゃないかい。
 ミルのおねーさんがコーヒー入れ終わればすぐに戦闘になるだろうしね」
 ユーの確認に頷く『感嘆の』ビス・カプ(p3p006194)。
 カプチーノが好きというビスだったが、ミルがカプチーノをコーヒーと見るかどうか、不安もあったがコーヒー豆から作られるエスプレッソはミルの中ではしっかりとコーヒーという判定だった。この五日間で頼んだカプチーノは、ラテアートまで描いてくれる気合いの入れようで、絶品だったことを思い出す。
「過去の収穫事例はあやふやなものが多いですが、果実に強力な攻撃を当てるとすぐにダメになってしまいそうですね。この中だと九重君が攻撃力的に一番強いから注意が必要ですね!」
「ん、そうね。気をつけるようにするわ」
 モンスター知識を駆使してエレリマの情報を仕入れる『JK』藤堂 夕(p3p006645)が、果実への攻撃に注意を喚起する。
 ついでにエレリマの陽気さを確認して、ニンマリとほくそ笑んだ。仕込みが活きるようです。
「あれ、が、すごい、こーひー、に、なる?
 こーひー、にがにが。……でも、あれ、にがにが、じゃ、ない?」
「いえ、あれはもっと苦いわ! でもそれがいいのよ!」
 ここに来るまでの五日間でコーヒー初体験した『星頌花』シュテルン(p3p006791)は、コーヒーに対して苦くて黒い水という印象が強い。その為、もっと苦いと聞いて顔をくしゅっと顰める。シュテルンはミルが作ってくれた、カフェラテやコンデスミルクの入ったコピなど、甘くて美味しいコーヒーの方が好きなようだ。コーヒー初挑戦の描写もしたかったが、そこはご想像にお任せします。
「さぁ、出来たわ! コゼットちゃんとユーさん用のミル・ソーサーマキシマムスペシャルブレンドよっ!」
 コゼットには幻想南部で取れるフルーティな果実の甘みが感じられる豆を使用した砂糖多めのカフェオレを、ユーには鉄帝北部の厳しい環境で育った苦みの強い豆を使用した、砂糖なし大人なカフェオレをそれぞれ提供する。
 魔力を溶け込んでいるこのコーヒーを二人が飲めば、それぞれ希望した能力向上(バフ)が掛かるというわけだ。
「どちらも敏捷性を向上させる魔力を溶け込ませたわ。どう、身体が軽くなった感じがするんじゃない?」
「ん、ごちそうさま。
 確かに、ちょっと、軽くなったかも」
「これは、すごいな。感覚が鋭敏化した感じもある」
「フフン、コーヒーの力は無限大よ!」
 腰に手を当て自慢げに胸を張るミル。コーヒー淹れただけで、と思うかもしれないが、コーヒー一杯でステータスが上昇する奇跡は十分に自慢して良い物だろう。
「さてと、それじゃ行きますか」
 木陰から立ち上がるスティーブンを戦闘にイレギュラーズが武器を構える。
「がんばって! 私ここでコーヒー淹れてるから!
 あ、実は”絶対”に傷つけないでよ!! 傷つけたら報酬なしだからね!!」
 五日間(帰りも併せて十日間)も拘束されて報酬なしは、洒落ではすまない。
 気合いを入れ直したイレギュラーズが、陽気に踊り続けるエレリマへと駆けていく。
「――!?」
 イレギュラーズの接近を感知したエレリマ達が一斉に振り返る。
 シュシュッと枝を腕のように振るうその姿はやる気まんまんだ。
 今、伝説のコーヒーを頂くために、イレギュラーズのコーヒー豆収穫作業が始まった!

●coffee awaken the power
 高い反応で先手をとったコゼットがエレリマの注意を引きつける。囮役だ。
「まずは、確認……!」
 地面を蹴り上げて砂利を飛ばすようにして、保護結界の状態を確かめる。魔物の身体の一部ではあるが、今回は、周辺環境と認識されているようだった。これならば狙いがはずれて実を攻撃してしまった際のリスクが低減されるだろう。
「なら、攻撃、だよ」
 枝をボクサーのように振るって襲いかかってくるエレリマ、その攻撃を見事な俊敏さで、くるくると舞いながら避けるコゼット。ミルコーヒーによる能力の覚醒が、得意の回避力を増大させいつも以上にキレのある動きを実現させていた。
 木の幹へと回転しながらコンビネーション良く打撃を放つ。肉薄戦だ。
「結界、ある、でも、果実を、狙わない、する、戦う、ちょっと、むつかしそう……。
 でも、出来る、だけ、無傷、目指す、する、ね!」
 前衛の囮の後ろから、仲間を支援するのはシュテルンだ。
 神秘への親和性を高め、魔力を増幅すると、甘く切ないバラードで前衛で戦う者達の抵抗力を増幅させる。
 主に回復を担当するシュテルンは特に防御技術が低く狙われやすいコゼットや、収穫組を守る動きを見せるユーを支える。
 そして、手が空けば、コーヒーブレイクだ。
「ミル、あれ、飲みたい、くりーむ、あまあま、こーひー」
「シュテちゃんにはこれね! 特性チョコレートのフラッペ&カプチーノ!」
 生クリーム盛りだくさんのその特殊なコーヒーもまたコーヒーなのだ。どこまでも甘いデザートのようなそれを味わいながらシュテルンが飲む。
「苦い、いつか、飲める、かな?」
「挑戦よ! いつだってコーヒーは挑戦するべきものなのよー!」
 よく分からない持論を振り翳すミルを不思議そうに眺めながら、シュテルンはフラッペカプチーノを飲み干した。魔力が高まるのを感じる。
「すごい、身体が軽い……!
 いつまでも戦っていられそうだ」
 エレリマをブロックしながらユーが呟く。コーヒーバフによって、その高い回避力は更に高まり、襲い来るエレリマの攻撃を見事に躱していく。
 ユーが引きつけるのは囮組が釣り出したエレリマで、ダメージを負わせてその実を収穫状態へと近づけたものだ。
「そら、こっちだ――!」
 マジックロープでエレリマを縛り上げ、引っ張る。抵抗するエレリマの力は強いが、なんとか引っ張ってくることができた。
「よし、実が落ちそうだ!
 収穫の準備を――って、その格好は!?」
 振り返ったユーが驚きに目を見開いた。視線の先夕がサングラスを装着して得意げに唇の端を釣り上げていた。

 あなたのっ!(ビシッと指差しポーズ)
 ハートがっ!(両手でハートを作るポーズ)
 欲しいっ!(拳を握り力を込めて手中のものを握り潰すポーズ)
 
 バーンとエレリマへポーズを決める夕。ユーはあんぐりと口を開けた。
「エレリマ達にプレゼントがあります! それはずばり『アロハシャツ』です!」
 なんでも夕が元居た世界で果実を栽培している農家が、果実を風や鳥から守る為に袋を掛けるという。
「アロハシャツはそれです!」
 と意気揚々にプレゼントをエレリマに配ろうとする。素敵なパトロンから調達した潤沢な資金で作られたアロハシャツ。ウィッチクラフトによる意思疎通で、僕らは皆友達さ!
 とは、ならなかった。
 ビリビリィッ! とアロハシャツが破かれる。
「ああっ!? そんな!?」
 当然と言えば当然だが、エレリマは植物の魔物であり、意思疎通に用いられるウィッチクラフトでは意思の疎通ができないのだ。
「くっ、植物疎通が必要だったか! ミルくーん、EXA上がるコーヒーくーださーい!!」
 よよよ、とミルの元へと駆けていく夕を尻目にエレリマとの戦い(収穫)は続く。
「今回は、ダメージコントロールが鍵だな……ややこしい相手だぜ」
 ここは確実に当てて行くぜ! と、ホリが紫電を走らせる。連なるエレリマの群れに一定のダメージを与えれば続けて牽制技へと切り替えていく。
「どうだ? 豆は落ちそうか?」
「もうちょっとだな、結構高いところにあって取りづらいね」
「猿が欲しいところだぜ。果実の位置が結構高いからな。
 動物知識はあるが、魔物知識は持っていないしよ」
 愚痴りながらも、弱ってきたエレリマの幹に取り付いて、ホリが果実へと手を伸ばす。
 キャッチすれば全体重を掛けてもぎ取ろうとする。一度大きく枝がしなり、反発力で戻ろうとした矢先、ホリの力に耐えきれず、ついに枝から実が外れた。
「よーし、一つゲットだ。
 そら、大事に持っておきな」
「おぉっ!! これよ!! これ!! 見事な虹色ねぇーー!! あ、早速保存しなきゃ」
 ホリから渡されたエレリマの果実を大事そうにしまうミル。適切な保存をしなければ、風味が損なわれてしまうのだ。
 このようにしてイレギュラーズのエレリマ収穫作業はじっくりと進んでいく。
 範囲攻撃を控え個別にダメージを与えながら、囮役が多くのエレリマを引きつける。
 そして収穫組が少しずつ釣り出して収穫作業を行った。
 地道な作業で長期戦になる戦いだが、果実を確実に収穫する為には中々良い方法に思われた。
「んー、やっぱりカプチーノがいいね。お子様舌には丁度良い」
「ふぅ、こいつはなかなかいい香りだ……頭がさえて来るぜ」
「本当に戦闘中なのにコーヒーブレイクって……まあ確かに能力向上があるし、美味しいからいいけれど」
 前半敵の相手をしていたビス、スティーブン、竜胆もコーヒーブレイクで能力向上を図っていく。
「どんなに忙しいとき、厳しいとき……そう、死の間際であっても、一杯の珈琲を頂く。その心の余裕こそが、道を切り開いていくのよ」
 瞳を伏せコーヒーミルのハンドルをごりごりと回すミルの言葉に、なぜか感心してしまう。
「……いや、死の間際はだめでしょ、さすがに」
 そんな突っ込みはさておき。収穫も山場だ。
「うさぎ要塞なのだー。収穫中に攻撃されてもなんとかなるね」
 体力活力の充填バフを飲み干したビスが、仲間達を回復しながら収穫作業を進めていく。
 落ちそうな果実を狙って飛びかかれば、体重を掛けてもぎ取る。攻撃によって落ちてきた果実も、しっかりと回収だ。
「はい、これで十三個目。
 美味しそうだからって一人で飲んじゃだめだよ」
「大丈夫よ! そうならないために焙煎器具は持ってきてないから!!
 あぁーっ!! 飲みたいわ!! 焙煎したぃいぃぃ!!」
 相変わらずミルのテンションは常時おかしい。
「たーすけてぇー」
 と、おかしなテンションで悲鳴を上げる者がもう一人。スティーブンだ。
 狙われれば、こうして全力で逃げ回り、狙われないとわかればすぐさまマジックロープを放ち捕獲を狙う。
「よーし、捕まえた。
 こっちも収穫いけそうだぜ! ちゃちゃっとやっちまってくれよ!」
 仲間と声を掛け合いながら、収穫作業へと入る。
 マジックロープで痺れさせたエレリマへと一気に近づきジャンプ。果実をキャッチすれば力を入れてもぎ取る。何回かそれを繰り返して、エレリマの果実を収穫すると、ミルの元へと持って行く。
「このくらいで良いのかねぇ……とりあえず取れそうなものはもいで来たが」
「おっけーよ! こっちに置いておいて頂戴!」
 ウキうきと実を預かるミルの様子に苦笑しつつ、スティーブンは残るエレリマの果実を回収に戻っていった。
「はぁっ!! せいっ!!」
 竜胆の気合いの入った一閃がエレリマの幹を斬りつけ揺らす。
 どんなにダメージを負っても強気に迫るエレリマ達だ。果実を取られれば、それはそれは激怒して、死に物狂いで反撃してくる。
 放っておけば、回避型である前衛の二人が多く傷を受けてしまうだろう。
 そうならないために、竜胆は始末人として、果実を失ったエレリマを中心に、その鋭い刃を振るっていた。
「本来なら倒さずに放置したいところだけれど……こうも向かってくるのではね……!」
 ミルが言うにはエレリマはエメラルドという緑のコーヒー豆の変異種らしい。一度果実を付ければそれ以上果実を実らせないという話だが、それを確認した実例はないようだ。
 つまり、放っておけばもう一度果実を実らせる可能性は、ある。
「まったく、まだ生きられるなら逃げればいいのに――!」
 竜胆の言葉とは裏腹に、死ぬ事を恐れない恐れないエレリマ達は自爆覚悟の特攻を繰り返してくる。その一撃を刀で受けいなしながら、身体を捻り反撃の一刀を加えていった。
 多くのエレリマを抑えていたコゼットとユーは、長期戦に及ぶ戦いの中でパンドラの輝きを宿すも、その役目を無事に終えようとしていた。
「と、これが最後ね――!」
 竜胆が刀を鞘に納め、残る一つの果実へと手を伸ばす。体重を掛けてねじれば、大きく撓った枝からもぎ取られる。
「はい、よろしく!」
 と、仲間に投げ渡せば、すぐに刀を抜き放ち、果実を奪われ幹を揺らすエレリマへとその二刀による鋭い斬撃を見舞った。
 こうして、伝説のコーヒー豆エレリマの果実を、イレギュラーズ達は無事収穫することができたのだった。

●伝説のコーヒー(大人味)
 それから後しばらく経った頃、ついに焙煎までが終わってコーヒーが淹れられるという話を聞きつけ、イレギュラーズ達がローレットに集まった。もちろんミルも豆を持ってやってきた。
 丁寧にコーヒーミルで豆を砕いて行く。すでに芳醇な香りがローレット内に広がっており、味の方を期待させる。
「それじゃドリップしていくわね。今回はニュートラルにお湯を注ぐだけよ」
 そうして一杯一杯、カップにコーヒーが注がれていく。
「素晴らしい香りだ。
 それ、ちょいと分けてくれねぇか。喫茶店に持っていきてぇ」
「最初はブラックで飲んだほうが良いのかしら?
 余計な味を感じない方がいいわよね?」
 そんなことを確かめ合いながら、出された一杯を口に入れる。
「うぇ……にがー」
「にがにが……」
 お子様舌なコゼットとシュテルンが顔を顰める。かなりの苦みだが、そこから広がる味の深さがこの豆の特徴だ。
「ふふ、素晴らしいわ! 最高よ! この香り、この苦み! まさに大人が選ぶ究極の一杯!! あー生きてて良かったー!!」
 ミルは感激のあまり天へと祈りを捧げた。
「やっぱりちょっと甘いほうがいいな」
「ミルク淹れていいか?」
「あん、もう! お子様ばっかりね!
 でもいいのよ、コーヒーは好きなように飲む! それが一番なんだから!!」
 ミルはもう一度持論を振り翳し笑顔でカップを用意した。
「さぁ、飲みたいものを言ってご覧なさーい! 最高の一杯を淹れてあげるんだから!」
 はい、と手を上げるイレギュラーズの喧噪に包まれて。
 その日のローレットは、カフェのように香り立つ空間となって、出入りするものに一杯のコーヒーが差し出されるのだった。

成否

成功

MVP

コゼット(p3p002755)
ひだまりうさぎ

状態異常

なし

あとがき

澤見夜行です。

コーヒー良いですよね。執筆中も二杯飲みました。これで語彙力が高まるバフでも掛かれば良いのですが、そう上手くは行かないものです。
フラッペ&カプチーノはまとめると商標に引っかかるので注意ですね。でも美味しいですよね、ス○バ。

MVPは高い回避力で攻撃を躱し続けコーヒーもいっぱい飲んだコゼットさんに贈ります。

依頼お疲れ様でした! 素敵なプレイングをありがとうございました!

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