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シナリオ詳細

<ジーニアス・ゲイム>木蛇のヤカル

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●木蛇のヤカル
 なあ、イレギュラーズよ、初めて人を殺したのはいつだった?
 ひょっとすると、殺したことなんてねぇかもな。
 俺は生まれた時だった。
 俺は、母親の腹を裂いて生まれた。
 別に、同情して欲しいってわけじゃねぇ。してくれるっていうならもらっておくが、それがなくたって、俺は悪党になってたろう。
 その分強くなれと、アル中の親父は気まぐれに言ったもんだ。
 死んだ分まで強くなれと。
 つまりは、殺した分だけ強くなれと。
 命には感謝しろ。
 俺は親父が嫌いだが、これだけは、実にもっともだと思う。
 だから、俺は感謝してる。俺が殺してきたすべての人間に!
「ありがとう」ってな!

 俺が蠍に入る前、傭兵をやってた。
 略奪、殺し、金がもらえりゃなんでもやった。
 俺は誰かの下につくつもりはなかった。
 だが……あの人は、キング・スコルピオは、盗賊団っていうちんけなまとまりよりも、もっと先を見てた。
 狙いは国盗り。
 キング・スコルピオからそれを聞いたとき、俺は震えたね。
 すぐ目の前まできた。
 俺たちが狙うは幻想王都メフ・メフィート。俺たちが狙うは、正真正銘王の座だ。俺は、それを見届けたい。キングが、王になる日を……。

 お前たちを前にして、俺は心から喜んでいる。
 互いの顔を見るのも、ここでおしまいだ。
 だから、あばよ、イレギュラーズ。俺は、もちろん嬉しいが……ちょっとばかり、残念にも思うんだぜ。お前たちと戦うのは楽しかったからな。
 今までほんとにありがとな。

●ウィンストン大橋
『黒猫の』ショウ(p3n000005)は険しい顔で情勢図を示した。
 蠍の軍勢、いや、すでに「軍隊」と呼べる規模になった蠍の一隊は、幻想南部の領土を侵している。
「今回こちらが狙いたいのは、ここの補給路だ」
 ショウが示したのは、一つの道。幻想南部のウィンストン大橋である。
 このウィンストン大橋は、幻想の取引の要でもあったが、今は蠍の補給路となってしまっている。
「ここを落とせれば、蠍の軍隊的には大きな打撃。巨大な軍勢を維持することが難しくなるだろう……しかし、相手もそれをわかって、部下を配置している。将は『木蛇のヤカル』、そして手下を含めて30名だ」
 ショウは軍勢を示すピンを刺した。
「もちろん、イレギュラーズが30名全部を相手にするということはない。友軍貴族が兵を貸してくれている。
 ただ、北方領土の守りに気をとられ、十分とは言い難い数だ。それでも、足止めくらいにはなる。これが、橋を使わずに回り込み、蠍の軍隊を相手取っている間に……イレギュラーズには、最も難しい仕事……”木蛇のヤカル”を含めた本隊の討伐を頼みたい、と、こうだ」
 ショウの表情が、真剣な危険を物語っていた。
「これは、危険な依頼だ。気をつけろ、と言っておくよ……」

GMコメント

●Danger!
 当シナリオにはパンドラ残量に拠らない死亡判定が有り得ます。
 予めご了承の上、参加するようにお願いいたします。

●目標
・敵軍リーダー、『木蛇のヤカル』の討伐
・補給路『ウィンストン大橋』の奪還

●場所
 ウィンストン大橋……幻想の南部に位置する橋。頑丈な石製の橋。
 崖と崖を渡すように橋がかかっており、遙か下は川が流れている。
 両側に小さな砦があり、橋の中央よりも自軍側に、遠距離以上の射程の攻撃を行うことができる。攻め込んでいけば直接至近に寄って射手を叩くことも可能。敵もしかり。
 複数人が横並びで戦う余裕はある。

●状況
 現在、橋のこちら側の半分は幻想が、もう半分は蠍が占拠している。放っておけば陥落するのは時間の問題だ。
 友軍が回り込み、蠍を迎撃している間に、橋を渡りきり、主力部隊を叩くのが目標。

●「飛行」について
 飛行戦闘で橋の一本道の地形を無視して進むことができますが、飛行戦闘のペナルティを受けます。また、敵の集中砲火を受ける可能性もあります。ご注意ください。

●「落下」について
※落下は、敵味方共に、HPが残っている場合は起きません。また、EXF成功時、パンドラ復活時も起きません。
 また、それなりに捨て身で行動していなければ発生しません。
 トドメ的な演出です。

※ここから落下することには、かなりの危険をともないます。飛行能力、もしくはそれに類するカバーや能力があれば幾分か安全かもしれませんが、それでも高所から地面にたたきつけられる危険はあります。
 橋の下は流れの早い、冷たい川です。

●木蛇のヤカル(両手剣)
 二本の曲刀を操って戦う。
 射程は至近のみ。範囲攻撃に加え、さらに毒・麻痺の乗った斬撃を行う。
 負傷から復帰し、万全の状態。

 仲間を巻き込んでも構わず攻撃をすることがある。
 行動不能になった部下を口封じに殺すこともある。

 弱いものは味方であっても文字通り「斬って捨てる」。
 今回、敵、味方問わず、ヤカルがトドメを刺すと「格段に攻撃力が向上」する。

 ヤカルの他、橋の上にはヤカルの側近5名(近接)、射手3名(弓、魔法)。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

 橋は頑丈で、落ちるということはありません。
 ただ、橋からの落下にはくれぐれもご注意ください。

  • <ジーニアス・ゲイム>木蛇のヤカル完了
  • GM名布川
  • 種別通常
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2018年12月14日 21時45分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

アクア・サンシャイン(p3p000041)
トキシック・スパイクス
デイジー・リトルリトル・クラーク(p3p000370)
共にあれ
アレフ(p3p000794)
純なる気配
コラバポス 夏子(p3p000808)
今日も良い日だ
アト・サイン(p3p001394)
観光客
ジェック・アーロン(p3p004755)
お姉チャン
飛騨・沙愛那(p3p005488)
小さき首狩り白兎
ユゥリアリア=アミザラッド=メリルナート(p3p006108)
氷雪の歌姫

リプレイ

●ウィンストン大橋
 橋の両端で、互いの旗がはためいている。
 幻想と蠍の一軍は、橋の上でにらみ合う。
「まだか、まだ増援はこないのか!」
「もうすぐです、もうすぐ……!」
 兵士たちの期待に応えるように、イレギュラーズたちはやってきた。なにやら、……巨大な戦車を率いて。
 いや、それは戦車ではない。幌をかぶった、馬車のような「何か」。
 戦場の渦中に飛び込むために、イレギュラーズたちは策を用意していた。
「この世界で最初に殺したのは子供を攫ったお前らさ」
『観光客』アト・サイン(p3p001394)は不敵に宣言してみせた。
 時間も資材も、潤沢にあるとは言えない中。蠍に対抗するため、イレギュラーズたちは即席の武器をこしらえていた。
「テントセットでも泥でも付けれるだけ付けい!」
 それは家屋の扉を流用し、ありあわせを最大限にまで高めたような不思議な馬車だ。アクアのパカラクダと、 『駆け出し』コラバポス 夏子(p3p000808)の軍馬が足並みをそろえて引いている。
 奇妙な足取りで、ぐいぐいと進むウォーワゴン。戦場に近くなってからは、イレギュラーズたちが押している。
 これはアトと『特異運命座標』ユゥリアリア=アミザラッド=メリルナート(p3p006108)の指揮のもと、イレギュラーズたちの手によって改造された即席のワゴンだ。
 強化のために泥を塗ったため、『トキシック・スパイクス』アクア・サンシャイン(p3p000041)の手はずいぶん汚れている。だが、アクアは気にするそぶりもなかった。もとより工房を持つ職人だ。
 ワゴンは矢避けの役割をみごとに果たしていた。
『大いなる者』デイジー・リトルリトル・クラーク(p3p000370)が巧みに脆い場所を覆い隠し、攻撃されても問題のない個所を目立たせていた。狙い通り、敵の攻撃はやられても痛くはない正面部に集中する。
「これマタ厄介な敵ダネ、やダナー」
 ウォーワゴンに乗っていた『ガスマスクガール』ジェック(p3p004755)は狙いの外れた矢をひらりとかわし、戦場に降りる。
 まだ遠い。距離を測るように一歩引く。
「撃て!」
 正面に取り付けられた板が、矢を問題なく受け止めた。魔法攻撃に揺れるが、濡れたわら束が詰まった馬車だ。重量があるだけに動かすのには苦労するが、それだけの価値はある。
「ひとまずは、びくともしませんわー」
 メリルナートは満足そうに言った。
「成程……大勢の者を継続して戦わせるには多くの兵糧が必要になる。勢力同士の戦いにおいて、抑えておきたい拠点だ……責任重大だな」
『堕ちた光』アレフ(p3p000794)は、透き通った青い目で戦場を見据えていた。激しい戦いとなるだろう。
 敵の将、ヤカルが吠える。
「相当危険な相手よね」
 アクアは、ヤカルの力量を見極めたうえで、だからこそ、と気合を入れる。
「あの人を放っておいたら、幻想の被害が大きくなる。ううん、相手にとっても持て余してる可能性もある。ここで倒さなきゃ!!」
「賢い妾は知っておるぞ」
 ワゴンの後ろ。死角から、幼い……しかし威厳を持ったデイジーの声が響き渡った。スピーカーボム。戦場の爆音をしのぎ響き渡る声だ。
「そこの男、木蛇のヤカルは残忍な仲間殺しじゃ。お主らもせいぜい後ろから斬り捨てられぬよう気を付けることじゃな、くふふ」
「こいつらだって、国のために死ねるなら本望さ、なあ、お前ら?」
 ときの声。
 それは蛮勇ですらない。もはや、狂気に近かった。ここで散ることを本望としているかのような狂った圧。
「アアでも、キミには殺させナイよ、アタシ達がコロすから」
 的の数を数え終えたジェックは、ガスマスクの下で笑いを漏らした。
「環境 縁故 国 金 人……同じ人間でこうまで違っちゃうか。全部違うからそりゃそうなんだろうけど」
夏子は、仲間の拵えたウォーワゴンと共に戦場に躍り出る。
「まだ間に合うんじゃないか、って 甘いんだろうけどそう思いたいことも……ある!」
「止めろ!」
「退きませんわー」
 メリルナートは、ひらりと優雅に戦場に立つ。
 蠍の放った火矢が弧を描き、幌を燃やした。だが、燃えたのは表面だけ。馬車に取り付けられた扉が開く。
 敵は射程に収まった。
 アトは素早く閂をかけ、後ろに下がった。
 ウォーワゴンは立派に、バリケードの役割を果たしている。
 押され気味だった戦線を、見事に半分。あっという間に、こちら側の陣地を確たるものとした。
 ウォーワゴンの影から、白い影が飛び出した。
「おお、知った顔がいるじゃねえか」
『小さき首狩り白兎』飛騨・沙愛那(p3p005488)は、禍津刀「首断」を繰り出した。
「ヤカル……」
「長い付き合いだが、ここでお別とは」
 言い終わる前に、ヤカルの頬を素早く飛翔斬が襲う。
「……マクドランお兄さんにとっての父親の仇だったのですね……」
 沙愛那はヤカルに何度も、何度も攻撃を仕掛ける。
「さぞマクドランお兄さんも無念だったはずです。なので沙愛那はお前を絶対殺すのです。お兄さんの首を狩った責任の一つとして……お兄さんの首に誓って必ず……」
「それがお前の生き方か?」
「首狩り兎の名に懸けて」
 返答は必要ない。ただ、戦うのみだ。

●にらみ合う
 敵のふところに、わざわざ入る必要はない。イレギュラーズたちは距離をとったまま、深くは攻め入らない。
「そんなおもちゃで勝った気になってるのか?」
「そのおもちゃでやられちゃ世話ないなー!」
 夏子がワゴンの位置取りを変え、仲間の射線を通す。
「これだけじゃあ勝てないさ」
 読み通りだ。アトは仲間と共に布陣する。
(これは、お前達を中央まで歩かせる装置なのだから……!)
 狙い通りだった。押し広げた戦線を奪い返すように、蠍たちは攻勢に出てくる。
 ジェックは笑い、照準を定めた。
 引き金に指をかけるが……まだ、撃たない。
「スナイパーから殺せ」
「それは無理ですのー」
 メリルナートが、ひらりと星官僚のタクトを振り上げる。眠たげなしゃべり方からは想像もつかぬほどに恐るべき速さを持ったマギシュートを放った。
 ヤカルは吠え声をあげながら、真正面に突っ込んでくる。一刀。そして二刀。
「……っ」
 メリルナートはかろうじて受け止めた。
「狙え」
 そうして、射手に命じるが……。
「くふふ、よもや妾を忘れてはおらんな?」
 ワゴンの陰から、ひょっこりとデイジーが顔を出す。リトルリトル写本がはためき、妖精の牙が射手を斬りつける。
 それでも矢をつがえる前に、夏子がメリルナートにライトフォースを唱えた。
「相手するなら魔種にすりゃ 皆褒めてくれんのに……な!」
「ありがとうございますー」
「しとめ損ねたか……」
 ヤカルは一度下がろうとする。だがその間合いを、沙愛那が即座に埋める。
「!」
 刃と刃がぶつかり合い、衝撃が走った。刀を受け止めると、沙愛那は獲物での攻撃ではなく、容赦なく体術へと切り替えた。
 沙愛那ちゃん★キック。名前に反して威力のある蹴りがヤカルを下がらせる。
「マクドランお兄さんのかわりに貴方を殺す。これはマクドランお兄さんの敵討ち」
 沙愛那は迷いなかった。
 アトは冷静に、Model 1873……異世界より流れ着いた銃を射手に向けた。
「ソレ、イイ銃ダネ?」
「観光客のたしなみってやつだね」
 アトは、ジェックの奇妙なガスマスクが珍しい。
「そっちの世界も観光してみたいな」
「ナイと外も歩けないヨ?」
 どことなくのどかな会話をしながらも、二人の射撃は恐ろしく正確だった。
(ワゴンはただの道具だし。過信のし過ぎは良くないわ)
 敵の攻撃に巻き込まれるワゴンを、アクアはあえて放置する。むしろ、これは勝機と言えた。ヴェノムクラウドで、まとまった蠍に攻勢をかける。
 仲間たちが一通り動き終えると、静かに戦況を見守っていたアレフが動き出した。
「……派手な花火でも一つ見せるとしよう。挨拶代わりにな」
 アレフの魔砲が、蠍を横切り、射手の一体を撃ち、砦からはたき落とした。後ろで矢をつがえていた射手も、片腕を押さえている。

「はっ……」
 ヤカルは部下たちを盾にするように後ろに下がった。
 だが、沙愛那は距離を追い詰めてゆく……。
 遠くから放たれる矢をひらりとかわし、狙いはあくまでもヤカルだ。
「そんな所にずっと居ても私達を殺せないよ? くすくす、だって貴方負けるのが怖いものね。だから安全圏で戦うことしか出来ない臆病者さん」
「……死にな!」
 ヤカルの斬撃を受けてなお、沙愛那は立っていることができた。
(毒も、麻痺も、効かない……だから)
 前にいなくてはならない。
 銃声が響き渡った。一発。
 取り巻きの蠍は、動きの多い戦場で当たるはずがない……と高をくくっていたが。的確に急所を狙ってきている。
 それがまぐれではないことは、すぐに知れた。二発目の弾。D・ペネトレイションは、見事に動脈を貫いていた。
「イイトコロに入ったネ」
 スナイパーズ・ワン。ジェックの研ぎ澄まされた攻撃によるものだ。
「チッ……役に立たない奴だ」
 ヤカルが、部下を斬り伏せようとする。
 メリルナートが反応した。
 助けることも視野のうちではあるが、それが無理なのであれば止めを刺す。そういう覚悟で、メリルナートは戦場に立っている。
「ちょい待ち!」
 その前に、夏子が動いた。
「殺しはナシ! 人死にはゴメンだ!」
 無論、それが状況によっては無理なことも理解している。その時はその時。
 だが、今は「間に合った」のだ。メリルナートがそれを察して、攻撃の手を緩め、無力化に留める。
「ずいぶんと甘いやつだな?」
「俺ぁね! 色んな女の子とイチャつくんだよ!」
 夏子は果敢に名乗りを上げる。
「そのためには世界征服より世界平和なの!」
 矢が降り注ぐ。だが、それでも夏子は立っている。
「怯えて暮らす日常なんて!」
「邪魔すんなよ」
「実効支配なんてダセーってんだあ!」
 押し切るようにして、敵を引き付ける。
 ヤカルの斬撃。
 この力が、正しく振るわれていれば、おそらくは人の役に立ったりもしたことだろう。
「魔種狙おう魔種 魔種の国獲ろうよ……やるよ? 我々は」
「いいなあ、それ。この国を支配した後に考えてやる……さ!」
「うわぁーありがとう! 僕達解り合えた!」
 ヤカルの斬撃は、夏子を狙おうと見せかけて沙愛那を狙ったものだった。だが、夏子は強引に身をねじこんだ。理力障壁が恐ろしい打撃を受け止める。
「お前……」
「やることがあるんだよ!」
 夏子は踏みとどまっていた。
「だから! 倒れ ……ないっ!」
「いったん離れるんだ」
 アトが無造作に酒樽をぶち抜いた。蒸留酒があたりに飛び散る。
「ちいっ、まだ奥の手を隠してやがったのか」
「いくぞ!」
 火炎瓶を投げつけると、ウォーワゴンが派手に燃える。
「良い良い」
 デイジーが歓声を上げ、炎に捧げるようにして歌いだす。ディスペアー・ブルー。美しい歌声が辺りに響き渡り、蠍を蝕む。
「小癪な真似しやがって……! くそ!」
 ヤカルは二刀を繰り出した。だが、アトは素早くそれについてくる。飾り気のない片手剣。ただの剣ではない、と気が付いたのは撃ち合ってからだ。
 そして、アトがただ者ではないことも、身をもって実感していた。
「その動き、テメェも死線をくぐってきたクチかよ?」
 観光客流剣術。
 観光客。それはローグライクでは最弱の職として扱われることも多い。
 しかしそれは。平然と立っている観光客は、”異常”と言うことでもある。
 アトからは、数多の死を乗り越えてきたことが察せられた。異様な冷静さ、そして、人体に対する深い理解。だが、その太刀筋は型にはまったものではない。
 アトを相手取っていたヤカルは、黒鴉空の奇襲を受けた。アクアの式符だ。
「小癪な真似しやがって……」
 イレギュラーズは、射手を無力化しつつ、取り巻きを巻き込みながらも、ヤカルをまっすぐに狙っている。
「お前という頭を潰す事が出来れば敵の動揺も誘える」
 アレフのマギシュートは、連撃を受けたヤカルに直撃する。
「ヤカルよ、貴様がこの戦場において最も危険な男故に」
「撃て!」
 射手の攻撃が降り注ごうとした瞬間、デイジーのブラックドッグが射手を再びなぎ倒した。
「真剣勝負に水を差すのは野暮というものじゃ」
「回復いたしますわー」
 メリルナートのメガ・ヒールが夏子の傷を癒していく。メリルナートも手傷を負っているようだが、仲間の回復に回した。
 その意図を汲み取り、夏子は強く頷いた。この回復で得たインセンティブは、仲間のために使う。
「なら、これ以上は……通さない!」

●明暗
 イレギュラーズはお互いに補い、庇いあう。蠍はヤカルを筆頭にして、使えないものは捨ておき、斬り捨てる。
 だからこそ、初めは仲間への支援を放棄した蠍に手数の分があった。
 だが、ここにきて……じりじりと蠍の戦力は削られていた。
 デイジーのブラックドッグが、蠍にぶち当たる。
「さて、相手はじり貧じゃのう」
(射手がもういねぇのか)
 期待した援護は、もうない。
 仲間に前線を任せられるからこそ、攻撃に集中できるというものだ。
「一気に撃ちぬく」
 アレフは魔砲を放ち、続けてマギシュートをぶつけた。蠍の一体がふらついた。
「それじゃあ、あばよ」
 ヤカルは恐るべき連撃を繰り出し、仲間を斬り払う。その勢いのまま、もう一体を斬りはらおうとした。だが、アトが先だった。
(長く苦しんだ砦の兵士達への道理を通す)
 アトの攻撃は、的確に急所を突いていた。
 ヤカルが舌打ちし、追いかけようとする。だが、アクアの衝撃の青が対象を先に橋から突き落とした。
 ヤカルの刀は空を切る。……安らかであったことだろう。
「くそ、足りねえ、足りねえんだよ!」
 メリルナートに向く凶刃を、夏子がかばう。
「目にモノ見せてやって下さいよぉー!」
 入れ違いに飛び出した沙愛那が、飛翔斬を放った。傷ついた沙愛那を、メリルナートが癒す。
「ありがとうございます。これで、戦えます」
「苛烈……っ!」
 敵陣に躊躇なく身を置く沙愛那の負担を少しでも減らすべく、夏子が敵の攻撃を引き受ける。
「ソレじゃあ」
 射手がいなくなった今、ジェックの標的は目の前のものへと変わる。
「まとめて死んでクレないカナ?」
 再び距離を調整したジェックのD・ペネトレイションが、無防備な一体の息の根を止めた。

「ったく、どいつも、こいつもよお!」
「っ……」
 ヤカルは怒りに任せて沙愛那を斬りつけた。アレフのマギシュートが2発、的確にヤカルを貫いた。
「しまいだ!」
 だが、白兎は沈まない。立ち上がり、蹴りを交えて、刀に手を伸ばす。
(テメェの手の内は分かってんだよ、首狩り兎!)
 だが、ヤカルの予想は外れた。
「かはっ……」
 クラッシュホーン。重い衝撃が、びりびりと身体を走り抜ける。
「弱者を切り捨て悦に浸ることしか出来なかった貴方に贈る一撃だよ、さよならヤカル。ただ死ね」
「死ぬのは、テメェだ!」
 思い切り斬りつける。デイジーが素早く駆け付け、沙愛那を引き寄せる。アクアが後ろに庇う。
 そして、ヤカルの追撃は夏子が肩代わりする。
「死なせないっ!」
 メリルナートの治癒が、仲間たちを癒していく。
 一刀を振ろうとした。
 だが、黒鴉がヤカルを蝕んだ。手数の多さが逆にあだとなった。
 アクアの衝撃の青が、ヤカルを吹き飛ばす。がむしゃらに振るわれる一刀を、アトが的確に受け流す。
 血意変換。生命力を犠牲に戦う力を取り戻し、そしてその失われた生命力は、リジェネレイトにより賄われる。
 余裕がある。深追いはしない。
 仲間たちがいるのだから……。
「オマタセ」
 ジェックの死の凶弾が、ヤカルをぶち抜いた。
「まだ……まだだ」
 ヤカルはうめいた。死が迫っているのを感じていた。とめどなく血が流れ落ちる。デイジーのフロストチェインが、動きを封じた。
「行け!」
 ヤカルの凶刃は、直接的に夏子を狙う。夏子は崩れ落ちるが、希望を失ってはいなかった。止めを刺そうとした、ヤカルの刃が閃く。こんどはメリルナートがぐいと後ろに下げた。アクアが再び後ろに庇う。
「これで……これで勝ちだ!」
 アトが、最後の一撃をくわえる。
(死ぬのか?)
 身体が宙を舞う。叩きつけられる。もはや防ぎようはなかった。
「くそが!」
 蛇の最後の抵抗だろう。
 投げつけた刀を、ジェックが撃ち落とす。
「さようなら」
 伸ばした手を、アクアの衝撃の青が払い落とした。

●決着
「お前達のリーダーはもう居ない。覚悟を決めるというなら相手はしても構わないが」
 残った蠍は、わずか一名。
 アレフが厳かに勧告するが、降りる気はないようだった。
「うっそ、まだ戦うの?」
「望みとあらば」
「お相手しますわー」
 アレフとメリルナートのマギシュートが交錯する。
 今度は、むやみに命をとるつもりはなかった。
「なんとか無力化できましたのー」

「ヒャー疲れたツカれた」
 ジェックはぱたぱたと顔を仰ぐが、ガスマスクを脱ぐ気配はない。
「ちえ、弓と魔法じゃセンリ品にも期待できナイか」
 最後に残った一人。そして……夏子が後ろに庇い、気絶した一人。
「二人、かあ……」
「いや、二人「も」と言うべきじゃろうな」
 仲間たちは手傷を負ってはいるものの、全員無事だ。
 幻想の増援が、反対側の拠点を落としていく。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

コラバポス 夏子(p3p000808) [重傷]
今日も良い日だ
飛騨・沙愛那(p3p005488) [重傷]
小さき首狩り白兎
ユゥリアリア=アミザラッド=メリルナート(p3p006108) [重傷]
氷雪の歌姫

あとがき

蠍の討伐、ハード成功、おつかれさまです!
橋から落ちたヤカルは生死不明……なんてことはなく、しっかりとトドメを刺されておりますので、ご安心ください。
今回はほとんどが純粋な、戦闘シーンが中心のリプレイでした。
しかし、それでもプレイングに描かれる戦略が、色鮮やかで……いつもいつも、みなさんのプレイングを読むのがとっても楽しいです。
機会がありましたら、また一緒に冒険いたしましょう。……ウォーワゴンで!

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