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シナリオ詳細

<ジーニアス・ゲイム>刃を砕く

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 ラサから落ち延び、勢力を復活させた『盗賊王』キング・スコルピオの軍勢は今まさに幻想南部にその勢威を見せつつあった。
 ローレットの対応、イレギュラーズの活躍もあり、幻想体制側は彼等の魔手をかなりの局面で挫くことに成功していた。
 しかしながら、それでも少なくない町や拠点が『新生・砂蠍』の手に落ちたのは事実だった。
 陥落せしめた拠点を橋頭堡に幻想王都メフ・メフィートを狙う砂蠍に対して、幻想貴族軍も対応を行いつつあった。
 だが、そんなこの状況下、最悪ともいえるタイミングで鉄帝国軍『塊鬼将』ザーバ・ザンザが動き出す。
 結果、幻想貴族軍は主戦力を北方戦線へ配置せざるを得なくなった。

「――撃て」
 タイミングをじっと待ち続け、静かに声を出す。合図が戦場に響き、銃声が遥かに人数の多い敵兵を貫いていく。敵の悲鳴を無視して、兵に押し返すよう采配を振るう。
  『新生・砂蠍』の一派となった『盗賊頭』エーリック率いる盗賊軍は、『仁将』ヨルクとイレギュラーズの防備を破って拠点を制圧した。
 それから程なく、エーリックはキング・スコルピオの命を受けてメフ・メフィート攻略の邪魔になる中央都市を攻略せんと攻撃を仕掛けてきていた。
「やはりアイツは調子に乗ると面倒だな」
 敵兵を押し返し、側面に出ようとする敵を牽制させながら、一つ息を吐く。
 やがて、双方が押し切れずに互いに間合いを開けて布陣する。
「大将! 援軍の方々が参られました!」
 明日がどうなるかを推察していると、兵士が入ってきた。
「おう、貴族か?」
「いえ、お願いしておりましたローレットの方々です!」
「そうか、ならここに連れてきてくれ」
 兵士を見ることなく告げると、兵士の返答と共に足音が少しだけ離れ、戻ってくる。
「来たか。諸君」
 静かな視線を君達へ投げかけてくる。ヨルクの表情には少しばかり、疲労が見えている。
「諸君にお願いしたいのは、敵に占領された町の解放だ」
 そう言ってヨルクは君達を招き、卓の上に広げる地図を見せる。
「敵の主力は俺が引き付けよう。その間に、君達は敵が占領したこの町を奪い取ってほしい。敵の大将にあたるエーリックは調子に乗らせると面倒くさいことこの上ないが、あれは根本が馬鹿でな。一度調子が狂うとあっという間に折れる」
 自分が義賊を名乗っていた頃は調子に乗らないように徹底的に抑え込んでいたのだと、ヨルクは言う。
「だから、ここまで一直線に伸びてきた敵の出鼻をくじくために、町を解放してほしい」
 そこまで言って、目を閉じる。
「それから今回、エーリックの北上に前回、諸君の仲間にお願いした作戦で、君達の仲間と戦った者達は参戦していないようだ。恐らく、彼らもまた、諸君に攻略してほしい町にいる」
 戦況の打破を目的とする一方、前回のリベンジともいえる作戦、ということになる。
「――やってもらえるだろうか? 諸君らなら、きっとこなせるはずだと思うのだが」
 そう言って、やや疲れ気味の表情をやわらげた。

GMコメント

 こんばんは、春野紅葉です。
さて、そんなわけで全体依頼の一端、前回の雪辱を晴らすときというやつです。

●達成条件
町の内部にいる敵軍を打倒、町を解放する。

●敵性戦力
下記情報は前回依頼において参加した方々が戦いを経て持ち帰ったものという形になります。
<『空き巣の残党頭』インゴ>
冷酷、卑劣、残忍を絵にかいたような人物。
味方を火の中へ飛び込ませるなど平然と行うほか、前衛が少ない場合、回復手を容赦なく狙うよう命じてきます。そのくせ自らは後方で囀る屑野郎です。
前回はありませんでしたが、言動や性格から推察するに戦線が停滞した場合、味方ごと敵の前衛を砲撃するなんてことも平然と行うでしょう。
ウォータクト・軍師
魔力砲撃:神中貫【万能】
冷笑采配:BS回復、HP回復【治癒】
集中分析:自付与、命中、CT


<空き巣残党兵>
どちらかというと忠誠よりも畏怖、恐怖からインゴに従っています。
インゴがいる間は絶対に降伏せず、文字通り死ぬまで戦い続けます。
ウォードッグ・猟犬
剣、槍(各2名ずつ)
戦闘準備:自付与、命中、物攻、反応
退けず、進めず:BS回復、HP回復【治癒】
死に物狂い:物至単【ブレイク】
やけくそ:物至単【乱れ】

銃(3名)
戦闘準備:自付与、命中、物攻、反応
退けず、進めず:BS回復、HP回復【治癒】
集中砲火:物中単【連】
精密狙撃:物遠単【足止】

全員、皆様と同程度かやや格下の実力を持ちます。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

  • <ジーニアス・ゲイム>刃を砕く完了
  • GM名春野紅葉
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年12月15日 22時45分
  • 参加人数10/10人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

竜胆・シオン(p3p000103)
木の上の白烏
江野 樹里(p3p000692)
ジュリエット
マルベート・トゥールーズ(p3p000736)
饗宴の悪魔
巡理 リイン(p3p000831)
円環の導手
御堂・D・豪斗(p3p001181)
例のゴッド
ウィリアム・M・アステリズム(p3p001243)
想星紡ぎ
射タ風 レン(p3p004728)
コスプレ同好会名誉会員
エゼル(p3p005168)
Semibarbaro
エリーナ(p3p005250)
フェアリィフレンド
コーデリア・ハーグリーブス(p3p006255)
信仰者

リプレイ


 シャイネンナハトも近づくその日、肌寒さを感じながらイレギュラーズはその陣地に訪れた。
 依頼主であるヨルクが敵の主力と交戦する横をすり抜けるようにして、イレギュラーズは目的の町へを目指している。
 『木の上の白い烏』竜胆・シオン(p3p000103)の武器を握る手には力がこもっていた。
(色んな場所で皆頑張照、ここにいる俺以外の9人だって頑張ってるんだ。俺だって頑張らなきゃ……!)
 一見すると少女にも見える可愛らしい風貌をした少年の心は、普段の昼寝好きなそれとはやや趣が異なっている。
 その理由はもう一つ。ちらりと周囲にいる仲間を見やる。今回、この依頼に参加している物の中には何人か、以前にこの地を訪れ、惜しくも敗れた者達がいる。
 彼らの雪辱を果たすための手伝いをするためにも、負けるわけにはいかないのだと。
 『ジュリエット』江野 樹里(p3p000692)もまた、シオンと同じく仲間達の持つ因縁に決着をつける手助けをしようと思う者である。
 祈りを捧げるようなポーズを一度やめて、ハーモニアの少女は小さくほうと手に息をかけた。白くなった息が、手をわずかに温める。
 ナイフとフォークのような形をした槍を軽く振り回しながら、『饗宴の悪魔』マルベート・トゥールーズ(p3p000736)はワインを持参していた。
 盛大な戦争の一幕になっているというのに、あまりにも地味な敵。
 異界の悪魔は、気取らず敵の命を美味しく頂く算段だ。
 『天翔る彗星』ウィリアム・M・アステリズム(p3p001243)は以前、ヨルクが義賊として貴族軍とたたかった際、貴族方としてヨルクを降伏させる依頼に参加していた。
 以前は敵で、今回は味方。きっちりと仕事を全うするのはもちろん、何より、聞くにインゴなる人物の性格は好きではない。きつく灸をすえるつもりだった。
「敵の頭は中々の策士の様でござるが、思い通りにはさせぬことが重要でござるな」
 そういう『元宇宙警察忍者巡査部長中忍』射タ風 レン(p3p004728)は味方から前回の作戦のことを聞いている。
 思い通りにさせない。特に、前衛を厚くして一人一人を確実に倒していくのが今回の作戦の主な戦術だ。
「ふむ、先だってはしてやられたが…このタウンのライフとライフ!奪われたままにはしておけぬ!」
 『神格者』御堂・D・豪斗(p3p001181)は言う。神様である豪斗からすれば、インゴのような輩もまた、嫌いというわけではない。
 もっともそれは物語で言う悪役は、倒されてこそそのロールをコンプリートさせるものだという、ある種の第三者の目線であったりするが。
「ええ。前回は守りきれませんでしたが、今度こそは町を奪還して雪辱を果たさせていただきましょう」
  『フェアリィフレンド』エリーナ(p3p005250)の決意に『Semibarbaro』エゼル(p3p005168)も頷く。
 自らの失態は自らの手で挽回しよう。そう意気込む『信仰者』コーデリア・ハーグリーブス(p3p006255)は一人、ほんの少し残念にさえ思っている。
 彼女が前回、直接対峙したのは、今はヨルクが抑え込んでいる敵主力盗賊集団の長。エーリックなる男だ。
 自ら引導を渡したい男とは直接相まみえることはできないが、少なくとも、町を解放すればエーリックの心をくじくことができると考えれば、少しは気持ちも楽になる。

 町へ潜入したイレギュラーズはそのまま進み、広場のような場所に出た。
「ああっ! この前の、後ろで叫んでただけのずるい人ー!」
 こちらを待ち受けるように布陣していた空き巣残党衆、その後衛――インゴの姿を見て、『円環の導手』巡理 リイン(p3p000831)は鎌を突き付け言う。
「前回は数と勢いに押されちゃったけど、今度はしっかりお返ししてあげるからねっ!」
 ぶんとReinterminationを構えて調子を確かめれば、敵に向けて構えを取る。
「あぁ――イレギュラーズですか。お待ちしておりましたよ? もうそろそろ来る頃だろうと」
 インゴがこちらに向けて冷笑し、前衛の部下へ前へ出るように命令を出した。

「まずは挨拶代わりだ」
 ウィリアムが言って、星界の魔杖を輝かせれば、広範囲に向けて、雹が降り注ぐ。腕を、肩を、足を、兵士達が貫かれていく。
「この、間抜けども、以前も同じように貫かれたでしょうが、学びなさい。散開するのです。それとも私に貫かれたいですか?」
 インゴがやや前に出て、喝を発した。驚き、死に物狂いで兵士たちが立ち上がり、やや間合いを開けて散開していく。
 レンはこちらに向かって走り込んできた空き巣兵のうち、剣の空き巣兵の前へ割り込むと、漣のナイフを剣に充てて抑え込む。
 敵の動きは速い。インゴを恐れながら飛び込んでくる兵士達は、その一方で彼の持つ悪性に満ちた采配の影響を強く受けているのだろう。
 敵の攻撃を防ぎ、或いは躱しながら、相手からは視線を外さない。
 空蝉の術を操る忍びは、静かに敵の様子を観察し続ける。
 リインは自らの身体の再生力を活性化させ、レンが抑え込む剣を持った空き巣兵に対して大鎌を薙ぎ、斬り上げる。
 機先は鋭く。しかし、手ごたえはやや浅い。一方で相手から受けた攻撃もやや浅く、一部の傷はあっという間に癒えていく。
 それに続くように、豪斗がゴッドオーラを輝かせ、剣を持つ空き巣兵へと注ぎ込み優しくも強烈な神の輝きに空き巣兵が思わず目をつぶる。
 それに続いたのはマルベートだ。暗黒への贈り物を付与した彼女は楽し気に料理(さつりく)に舌鼓を打っている。
 フォーク型の方で抑え込み、ナイフ型の方でざくざくと切り込みを入れる。手管は卓越しているが、空き巣兵の練度が悪いせいか、傍目には筋張ったあまり上等ではないステーキを食べているかのようにも見える。
 インゴの采配を受けるとはいえど、連続した猛攻により、空き巣兵は瞬くうちに大きな傷を負っていく。
 コーデリアは捨て身ともいえる程に敵の懐にまで潜り込むと、そのまま魔銃の銃身を敵に叩き込み、文字通りのゼロ距離から弾丸をぶち込んだ。
 血を吐き、空き巣兵が崩れ落ちてくる。反動こそ受けるも、戦いは始まったばかり。
 気にとめるほどの傷ではない。
 ボロボロになりながら、悲鳴とも雄叫びとも知れぬ声を上げた空き巣兵が剣を振り下ろさんとした時、エリーナの放った一条の稲妻が戦場を真っ二つに裂いた。
 振り上げていた剣を落とし、一人目の兵士が黒に変じて倒れていく。
「ええい、かこえ、囲うのです! 何をちんたらしているのですか!」
 インゴの声がすれば、倒れた空き巣兵と同一直線上に不運にも立っていた槍持ちの空き巣兵が雄叫びを上げる。
「よろしいでしょう」
 こちらへ向かってくる槍兵に対して、樹里は静かに集中しマジックミサイルを打ち込んだ。
「行くよ」
 シオンはそれに続くように駆け抜け、その槍兵に暴君暴風を叩き込む。防がれこそするも、詩音はそのままそいつの間合いのうちに入り込み、刃を閃かせる。
 今度は、槍兵の胸元に赤い線が舞った。
「盾役など放っておいて一人ずつ潰しなさい。銃兵」
 更なる声。標的となったのは、反動を受けているコーデリアだった。3人の銃兵による集中砲火を一度目を完全に躱し、二度目を二の腕辺りを掠められ、三度目は腹部を撃ち抜かれた。
 しかし、それはエゼルと豪斗によるヒールが瞬く間に癒してしまう。
 インゴの表情には明確な苛立ちが見てとれた。元より存在していた人数の差が、開始早々に開いたのである。その苛立ちは、理解できないわけではない。

 イレギュラーズは戦闘を終始有利に運びながら、常に敵の――インゴの様子を見ていた。
 回復手を狙えと一度は指示を出したインゴだったが、今回のイレギュラーズに専任の回復役はいない。
 全員が攻め、傷を負った者がいれば、自分の担当相当量のダメージを受けた時点で治療をかけ、それ以外の場面では徹底的に攻撃に集中する。
 接敵直後に一人が減ったことでさらに開いた戦力差により、ブロックなどする余裕もない。
 完全にイレギュラーズの作戦勝ちである。
「槍兵、その女から目を離すな」
 苛立ちを露わに、インゴが叫び、前に出る。
 狙われたコーデリアはその敵の目にありありと浮かぶ恐怖に気付いた。
「来ますか」
 その直後、やや前に出てきたインゴから、魔力砲撃が放たれた。自らを抑え込む兵が怯えながら叫び、腹部を貫かれ、そのまま勢いでコーデリアの腹部にも浅い傷が入る。
「死にたくない死にたくない死にたくない」
 ぶつぶつと繰り返すその空き巣兵を振り払ってコーデリアは一気に後退した。
 血を吐き、自らの傷口を抑えた兵士が痛み止めらしき物を口に含む。
「良い子に生まれ変わってね」
 リインは流石にほんの少しの同情心を覚えながら、少しばかり傷を癒した空き巣兵の上から白き大鎌を振るう。肉を、骨を裂いた輪廻転生の刃が、命を送り出す。
 その横を、蒼く煌めく星の剣が奔った。
 彗星のごとく軌跡を描き貫くは、砲撃のために距離を詰めてきたインゴである。
 洗練された箒星が、敵将の身体を切り刻む。
「……前に出て来るんだ。自分が狙われる事は覚悟の上だろ?」
 ぎろりとこちらを睨むインゴに向けて、ウィリアムは淡々とそう告げた。

 もう一人いる槍兵が豪斗の前に張り付いていた。
 更には、後衛にいる銃兵たちが徐々に距離を詰めてきている。
「かしこみかしこみ申し上げます。これは我らの意志也。凡てを貫き、折れぬ不屈の証明」
 距離を詰め、一塊になったのを見た敵陣を見て、樹里は密かに立ち位置を改めていた。
 直線上、そこは銃兵の一人と槍兵、そしてインゴを捉える格好の位置。祝詞を奉れば、祝砲へと集まる祈り。
「――放て、樹里の魔法」
 直後、真魔砲杖に収束させた、全身全霊――極大の魔力が、爆ぜた。
 爆発は線とならずその場で消し飛ぶも、その圧力が敵陣に襲い掛かる。
 それに圧されたようなインゴの視線が、樹里を見た。
「あの、あの女を殺すのです! 銃兵、放て――」
 たおやかに笑んで、樹里は後ろに下がっていき、銃兵の砲火が遠のいたことで、豪斗は続けてゴッドオーラを至近して張り付く槍兵へ照らす。
 更にマルベートがフォーク型の魔槍で貫けば、横合いから踏み込んだシオンが斬り伏せる。


 樹里に狙いを転じた銃兵の3人は、気づかぬうちに一人一人の立ち位置を変じていた。
「お願いします、スティーリア」
 エリーナが言えば、陣より現れた氷の妖精が天を仰いで雲を呼び、無数の氷柱が意図せず固まることになった銃兵たちを蹂躙する。
 氷柱に貫かれ、縫い付けられたようになった銃兵など、格好の的だ。
 続けて放たれた樹里の祝砲が、今度はきっちりと銃兵に彼らでは理解しがたい祝福を与え、蹂躙する。

 レンは他のメンバーが集中的に攻撃していない方の前衛――剣兵とのせめぎあいに従事していたが、徐々に攻め方を変えつつある。
 理由は単純だ。この敵はレンがずっと抑え込み続けていたこともあって、インゴの采配が届かない位置にまで外れつつあるのだ。
 事実上の孤立状態になった剣兵に対して、レンは不意にその手を取ると、一瞬深く懐へ入り、ひょいっと敵の足をさらうと、強かに投げを打った。
 一瞬のことに目を白黒させる剣兵に、レンはそのまま追撃を仕掛けていく。
 それに続くようにリインの鎌が奔り、 彼女本来の得手とする間合いより放たれたコーデリアの精密狙撃が剣兵の心臓を貫いた。


「どいつもこいつも、まるで使い物にならないではありませんか」
 インゴがたった一人になっても、懸命に戦っていた槍兵に向けて魔力砲撃を放つ。槍兵を焼いた砲撃は豪斗も焼いたが、直ぐにウィリアムやエリーナ、それに豪斗自身のヒールによって打ち消した。
 たった一人、残った槍兵はそのまま、反撃とばかりに叩き込まれるイレギュラーズの猛攻をさばき切れず、大地へと伏せていった。

「何をしているのですか――この間抜けども」
 インゴの怒号が響く。コーデリアの挑発に乗った銃兵が、間合いを詰めながら彼女に接近を開始したのを見た彼は、苛立ちと共に銃兵に冷ややかなカツを入れる。
「そちらがそのように笑うならば、私は微笑みと共に、この魔砲を撃ちましょう」
 樹里は相対するようにして微笑みを浮かべ、祝福の祝詞と共に再び樹里の魔法を放つ。
 向かってくる銃兵はもはやインゴの言うことに聞く耳も持たず、遮二無二突っ込んできている。それを狙うのに、何の支障もなかった。
「さぁ、アントレと行こうか」
 マルベートはコーデリアと銃兵の射線上に割り込むと、そのまま双槍を振るう。続くように横合いから切り裂いたシオンと共に、二人は一番コーデリアに近い銃兵との交戦を開始した。
 マルベートとシオンが攻撃を仕掛ける最前列の銃兵を除く2名には、エリーナが再び召喚したスティーリアと、樹里によるマジックミサイルが打ち込まれている。
  
「ここは逃げるか」
 踵を返し走り出そうとしたインゴに向けて、銃兵の注意を引いていたコーデリアが挑発めいた狙撃で肩と手、頬を浅く裂いた。
 それを受けたインゴが一瞬動きを止めれば、そこへウィリアムのライトニングが奔る。
「逃がさぬででござるよ」
 遠距離攻撃による足止めもあってインゴに追いついたレンはそのままインゴに至近、相手の動きを見据えて構えた。
「これでも私、怒ってるんですからね~!」
 ぷんすかモードに入ったリインもレンと同じように至近していく。
「ユーにエスケープさせるわけにはいかんのでな」
 豪斗も続くようにしてインゴを囲う。
「く、くそが、死ぬわけには……」
 そういうインゴの表情が明確なまでの焦りに覆われている。
 逃げようにも既にレンの手で退路を断たれている。
 やけくそ気味に放たれた魔力砲撃は至近距離にいるリインに対してはあまり効果がなく、それどころか彼女の有する再生力をもってすれば、すぐに癒えるもので。
 信じられない物を見るような目でリインを見たインゴへ、死神の鎌が振り下ろされ、駄目押しとばかりにレンの柳風崩しで地面にたたきつけられれば、すぐに意識を手放すことになった。

 インゴを縛り上げ、詠唱もされぬよう口にもしっかりとロープをはめると、インゴとの戦いに終始していたメンバーは銃兵の方へと近づいた。
「もうリーダーは倒れたぞ。降伏するなら悪いようにはしねえさ」
 ウィリアムが告げる。銃兵たちがその声を聴いて一斉にウィリアムを見た。
 その表情には、怒りや上官を助けんという意気込みは一切ない。むしろ疲弊しきって今にも死にそうな兵士の、淀んだ瞳だ。
「降伏するなら命までは取らないよ!」
 リインは先程までのぷんすかモードの苛烈さはどこへやら、やや柔らかめの声になって告げる。
「こ、降伏だ! 降参する!」
 マルベートの悪魔らしい苛烈かつ残忍な槍捌きを受けていた銃兵がそう声を上げ、銃を捨てた。
 それに続くように他の2人も捨てていく。ちらりとコーデリアを見れば、彼女は首を振った。
 それを受けて、イレギュラーズ達はそのまま銃兵を捕虜にすると、ひとまずヨルクの下へと帰還した。


 陣屋を訪れたイレギュラーズはヨルクの歓待を受けた。
「まぁ、普通に無罪は難しいだろうな。俺は良く分からんが、あいつらは砂蠍とやらの一派なんだろ? 恐らくは……相当な罪になるだろうよ」
 捕虜がヨルクの後方にある中央都市へ厳重な警戒の下連行されていくのを見届けた後、ヨルクに問えばそう返ってきた。
「さっそく、少数の兵をやって町に旗を掲げさせる。そうなればエーリックはあっという間に崩れるだろう」
 そこまで言って、感謝の言葉を残したヨルクは、そのまま少しだけ考えて。
「……せっかくなら、一つ、ぶち抜いていってみるか?」
 そう、視線を向けられる。その意味が何となく理解できたのは、コーデリアや前回、戦いに負けたイレギュラーズだけだった。
 やがて頷いたイレギュラーズを伴い、疲労感の見える将軍は部下へと指示を飛ばし始めた。

 数時間後、後方をエーリック率いる盗賊連合軍は、後方を断たれて動揺し、浮足立つ中で撤退せざるを得なくなった。
 後退していく軍を、悪魔が生贄には足らぬと楽しげに屠り、幾つもの魔法がきらめいた。
 その最後に一手、貴族軍の陣屋からエーリックを的確に撃ち抜いた弾丸があった。
 調子に乗った盗賊頭は、その一撃に脳天を射抜かれてその場で崩れ落ちたという。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

エゼル(p3p005168)[重傷]
Semibarbaro

あとがき

お疲れ様でした、イレギュラーズの皆様。

無事に町を解放することに成功しました。

只管真っ向から、1人ずつ各個で殴る、書く方としてもシンプルでスカッとする戦い方で恐れ入りました。

地味に勝手に回復する攻撃手って怖いなって思いました。

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