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シナリオ詳細

食人島遺跡村探索依頼

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●あるはずのなかった村、調査報告
 だれも、その島がどんな名前だったのかを知らない。
 なぜなら、島に関するあらゆる記録は島ごと焼き尽くされ、灰と化してしまったからだ。
 だれも、その島にどんな人が住んでいたのかを知らない。
 なぜなら、島の住民は全てアンデッド化し、海上警備隊によって殲滅し尽くしてしまったからだ。
 もはやこの島には生きている者はなく、霊魂や精霊すらもなく、雑草ひとつ生えることなく、島そのものが巨大な空白地帯と化していた。
 だがそんな島から、夜な夜な悲鳴が漏れ聞こえると付近を通る船や立ち寄った者たちから報告が寄せられた。
「その後一度簡単な調査を行なったところ、島へと何人ものひとびとが移っていることが判明しました。
 むろん空撮を行ないましたが人間が生息している形跡はなく、立ち入った人々がどうしているかはわかりません。
 よって、島への立ち入り調査を行なうことになりました」
 海上警備隊のコムハという人間が、テーブルに資料を並べていく。
 空撮情報や島外部での調査報告。
 そして肝心の、『第一次立ち入り調査報告』。
 記された単語は。
 ――『human is ded』。
 調査員の死亡により、第一次調査は打ち切られたという。

「調査員五名のうち3名が死亡。1名は重傷を負い、残る1名が精神を病みました。
 我々は回復を待って聞き取りを行ないましたが。得られた情報は僅かなものだったのです。
 僅かながら……重大なものだったのです」
 『島には地下迷宮への入り口があった』
 『古代の遺跡に通じていた』
 『中は広く、村のようになっていた』
 『地下の村に、多くの人々が暮らしていた』
 『奴らは人間を喰っていた』
 『仲間は外部の者だとバレて、喰われた』
 『どうか、おまえは俺を喰わないでくれ』
「彼は他人が口を開くことにトラウマをおい開口恐怖症となりました。
 一部の隊員は村を島ごと焼き払うことを提案しましたが、情報もなく攻め込めばどんな失敗を起こすかもわかりません。それに、内部の人間たちの事情を知らずにただ抹殺するのでは警備隊の意味がありません。
 そして……もしこの『食人島』の人々が海洋の島々から移り住んだ人間たちであったなら、海上警備隊の人間は顔が割れているおそれがあります。
 我々はこれ以上調査を行なうことが出来ません。
 外部の人間……それも信頼できる第三者的組織であらねばならない。
 そう。
 あなたがたに、お願いするのです」

 依頼内容は『食人島』の立ち入り調査である。
 決して外部の人間であるとは気づかれぬように、できる限り多くの情報を獲得せよ。
 もし気づかれてしまったなら、追ってを倒しながら全力で島を離脱すること。
 生命の保証は、自らでとらねばならない。
「どうしても生還がかなわないと判断したなら、沖に待機している我々に連絡してください。警備隊の戦力を投入して皆さんを強制的に回収します。ですが、もしその選択をとってしまったなら『外部への調査委託』すらかなわないことになる。できるかぎり、そうはならないように……願っております」

GMコメント

【オーダー】
 通称『食人島』の内部調査を行なう。できるかぎり情報を獲得し、生きて帰ること。

・失敗条件:戦闘不能者、ないしは調査を断念した者が4名以上にのぼること。
 この場合、依頼失敗となりますが海上警備隊が突入をかけ皆さんを強制回収します。
 調査記録の一部が喪われたり、第三次調査ができなくなったり怪我が残ったりするでしょう。
(※海上警備隊との緊急連絡方法は確保されているものとし、依頼失敗時以外では利用することを禁止されています。そのためプレイングその他では触れる必要はありません)

【内部調査】
 今分かっている情報を書き出します。
 これをもとに、調査を行なってください。
・島表面は焼け野原が広がっており無人である。建築物はおろか人が生活している痕跡すら見られない。
・島の地下に古代遺跡らしき空間がある。
・遺跡空間にて人が生活している。
・住民はどうやら人間を食しており、第一次調査隊は食べられた模様。
・生活レベル、人口、生活方法の一切が不明。
・調査隊の生存者は死にものぐるいで戦いながら逃げた模様。その際も何人かつかまり、殺された。
・島への接近は小型のボート数隻を使って隠密に行なう。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はC-です。
 信用していい情報とそうでない情報を切り分けて下さい。
 不測の事態を警戒して下さい。

 また、当シナリオではきわめて暴力的またはグロテスクな表現、が用いられる場合があります。苦手な方はご注意ください。

  • 食人島遺跡村探索依頼完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年12月06日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ラノール・メルカノワ(p3p000045)
夜のとなり
十夜 縁(p3p000099)
幻蒼海龍
ジーク・N・ナヴラス(p3p000582)
屍の死霊魔術師
寒櫻院・史之(p3p002233)
冬結
ミニュイ・ラ・シュエット(p3p002537)
救いの翼
ヴィマラ(p3p005079)
ラスト・スカベンジャー
ロク(p3p005176)
クソ犬
ユゥリアリア=アミザラッド=メリルナート(p3p006108)
氷雪の歌姫

リプレイ

●まだ知らぬ島
 調査船にふく冷たい風。夜。黒い海に光のない島。
 まるで闇からぬっと浮き出たかのような光景に、『応報の翼』ミニュイ・ラ・シュエット(p3p002537)は奇妙な不気味さを感じていた。
「さて、鬼が出るか蛇が出るか……」
 調査船はできるだけ静粛に接岸し、かけた橋をミニュイたちは渡っていく。
「我々は岸から離れて待機しています。一人でも中に取り残されることがあったら突入しますが……」
「分かっている。そうならないようにしろ、だな」
 『濃紺に煌めく星』ラノール・メルカノワ(p3p000045)はフードを被り島へと上陸を果たした。
「何が起きるともしれん。しっかり気を引き締めていかねばな」
 この島にちゃんとした名前は無い。
 ここにあった筈の村が記録ごと焼き払われてしまったからだ。
 住民全てがアンデッド化してしまったことに起因しているらしく、その焼き払い方の徹底さゆえか土ごと殺すような薬物でも撒いたのか、雑草すらはえぬ空白地帯となっている。
 その中央付近につい最近、古代遺跡への入り口が発見されたというのだ。
「よそ者と見りゃ黙って食おうって、中々クレイジーだねぇ、よっぽど腹減ってんのな! でも生きた人間なんて食べたらお腹こわしそーなのにねぇ」
 『スカベンジャー』ヴィマラ(p3p005079)は周囲を見回してみるが、事前の情報(もとい古い情報)と変わらず霊魂の気配は感じなかった。
 話に聞くとおり、雑草ひとつない空白地帯。死んだ島である。
「人が人を食べるってすごいね! わたしのことも食べるの? 怖いなあ!」
 『脳内お花畑犬』ロク(p3p005176)もまわりの臭いをかいでみるが、海の臭いとやせた土の臭いしかしなかった。
 こんな場所で人間が生きていけるとはとても思えない。
 地下を通じて別の島かなにかとつながっている線も考えたが、もしそうなら虫なり獣なりが種を運んで再び島を雑草まみれにするはずである。それすらないとなると、もはや宇宙で暮らすかのような隔離状態にあることになるのだが……。
「文化? 事情? 彼らは人? 興味深いよね!」
 そんな中で、彼らの話題はもっぱら食人に関するものだった。
「人間を操る魔種がいて、餌を連れ込んでるんだったりして。俺たちみたいな……なんて、ジョークだよ」
 肩をすくめる『特異運命座標』秋宮・史之(p3p002233)。
「いっそ邪教の供犠とかであったほうが、幾分と気が楽ですわねー。ただ叩き潰せばいいだけですものー」
 『特異運命座標』ユゥリアリア=アミザラッド=メリルナート(p3p006108)の言い分に、史之たちはぞくりとした。
 ただ悪いだけの相手なら、はじめ島をこうした時のように遺跡もろとも破壊すれば済む話である。
 もしそうでなかった場合……。
 『屍の死霊魔術師』ジーク・N・ナヴラス(p3p000582)が息を吐くように肩を落とした。
(カニバリズムか、それともアンデッドか……いずれにせよ肉を持たない私は食いちぎられる心配はしなくて済むかな?)
 人を食うアンデッドのたぐいであれば。
 話はきっと楽なのだろうに。
(人が人を食う島とはまたおっかないねぇ。そんなモンが本当にこの海洋にあるなら、早いとこ対処して貰いてぇ所だ。おっさんのゆるーい日常のためにも、よ)
 いつも通りの『水底の冷笑』十夜 縁(p3p000099)を加え、八人はそれぞれ島へと上陸。中央の迷宮入り口を目指す。

●ファーストインプレッション
 迷宮の突破はそう難しいことではなかった。第一次調査隊の記録がそのまま使えたからだ。
 他の誰かが潜んでいないことを確認して、ラノールは考える。
(気になるのは『なぜ人を食べるのか』という点だな。他に食料がないのか、邪悪な儀式の一環なのか、あるいは呪いや病気で人しか食べれないのか……)
 暫く進んてみたが、島にも迷宮内にも捕食可能な植物や生物の気配はなかった。
 どこかに隠れているのだとしても、ロクたちが見つけられないわけはない。
(そもそも。人を食っていたというのは『常に』なのか? 複数の人間が毎日食べ続けることができるほど大量に人肉が備蓄されるようなことがあるのか? もしくは逆に、毎日食べる必要が無いだけなのか……?)
 わいた疑問を解消するためには、まずは調べなければならない。
 ラノールたちは意を決し、迷宮の奥、古代遺跡への扉を開けた。
 差し込む逆光に、目を細める。

 光のまぶしさに慣れるまで数秒かかった。
 ぱちぱちと瞬きをしてみれば、そこは真っ白で広大な空間であることがわかった。
 建造物らしきものはあるが、遠近感がおかしくなるほどに白一色。
 向かって右手側、左手側、奥側にそれぞれ立方体の建物があり、煉瓦のように石を積み上げて作ったものであることが見て取れた。
 目に付く限り人の気配はないが、少なからず物音がするので気配は充分に感じられる。
「んー……」
 ヴィマラはざっと周囲を見回してみたが、ここへ来ても霊魂の存在が感じられなかった。
 更に言うと、ヴィマラ特有のギフト能力『スカベンジャーセンス』を用いてみても、死体を感知できなかったのだ。
 どう思う? とジークに様子を尋ねてみると、ジークも同じようにいぶかしげな態度をとっていた。
「魂を感知できている。それも多数だ。10や20ではないな……」
 この時点でアンデッドの可能性は消えたと言っていいだろう。魂ある怪物である可能性はといえば……まだ残っている。
「そこで何をやっているのですか」
 問いかけられ、ジークたちは顔を隠して振り返った。
 そこに立っていたのは、ボロ布を纏った男性だった。
 無表情のままジークたち八人を見ている。
「今は業務時間の筈です。この場所にいるということは生産係ですか?」
 問いかけの意味は理解しかねるが、ここで外部の人間であることがバレれば終わりだ。とりあえずは肯定しておく必要があるだろう。
「ああ……けれど、腹が減ってしまってな」
 ジークの発言に、男性は頷いた。
「なら尚のこと畜産工場へ行くべきです。私も今から行くところなので、一緒に行きましょう」

 ジークは何人かを一緒に連れて『生産工場』へとやってきた。
「これは……」
 無数の人間たちが何かの作業をしている。
 見たところ、虫のカイコを大量に繁殖させているのがわかった。
 どういうことだ。同行していたヴィマラや十夜たちが問いかけてきたので、ジークは小声で解説することにした。
「栄養素を豊富に含んだ昆虫だ。これを主食にしているとすれば、多数の人間が暮らしている理由も説明がつく」
 十夜は本性を隠しながらその場にいた人間に、『食料になる人間はどうしたのか』と問いかけた。
 相手はどこか不思議そうにしながらも、食肉が必要なら畜産工場へ行くべきだと教えてくれた。
 畜産という言葉に嫌な予感を感じつつも、十夜は他の仲間をつれて教えられた場所へと移動してみた。

 別行動をとっていたメリルナートとロク。
 彼女たちはジークとは別行動をとり、集落を散策していた。
 何か感じられることは? そう問いかけたメリルナートに、ロクは首を傾げて返す。
「死臭や腐臭は全然ないんだよね。そのかわりお風呂に入ってない人間の臭いはすごくする。変だな……」
 未知の場所だとはいっても、どんな場所かと事前に想像するのは自然なことである。
 ロクたちは人食いの怪物やグール、ないしはアンデッドのたぐいが集落を作って暮らしている姿を想像していた。
 そこまで知能の高そうなグールというのも……まあ割とありそうには思うが。
 この場所の印象はもっと別の……。
 とにかく沢山働く人間がただただ集まっている。そんな印象だった。
 それが食人とどう関係しているのかは、まだ分かっていない。
「誰かと接触してみる?」
「そうですわねー……」
 メリルナートはできるだけ性的魅力を出せるように、そして異性を誘惑できるような服装に整えて、敵対的でなさそうな男性に声をかけた。
 最近何かありましたか、といったような話だ。
 だが相手は暫くメリルナートの体つきを観察したあと。
「あなたは出産工場の人間ではありませんか? なぜ出歩いているのですか? 出産能力を失ったのですか?」
 世間話への返答としてはあまりにおかしい。
 察するに、メリルナートが『性的魅力』を行使した結果だとは思うが……。
「出産能力を失っていないなら戻るべきです。そうでないなら畜産工場に案内します」
 メリルナートとロクは判断を迫られた。
 だが『畜産』という言葉がひっかかる。
 一度、この目で見ておく必要があるだろう。
 そう、考えた。

 気配を消しこっそりと集落の様子を観察していたミニュイは、史之と共に調査を続けていた。
 史之の調査方法は端的に言ってゴミあさり。つまりは生活環境の調査である。
「…………」
 畜産工場と呼ばれる場所にゴミがまとめられているのを発見し、ミニュイに見張りを頼みながらこっそりと探ってみたが……。
 一般的にいう家庭ゴミにあたるものは全く出てこなかった。
 包装容器や果物の皮など、そういったものが見当たらない。
 その代わりに、砕いた骨や歯といった物体が山のように見つかった。
 恐らく話に聞く食人の形跡だと史之は考えたが……。
「ここまで細かく骨を砕く必要ってあるのかな?」
 ミニュイたちの調査でこの地下遺跡には地下水が流れていて、それを生活に用いていることが分かっている。またジークたちの話を盗み聞きしたことで昆虫を食料にして栄養を得ていることも判明した。
 なにもない島で人々がどうやって暮らしているのかという謎にピースが次々とはまり、この場所の異常性が浮き彫りになっていく。
 だが肝心のピースがまだ埋まっていない。
「中へ踏み込んでみる?」
 ミニュイが小声で問いかけた。
 暫く悩んでいると……十夜やメリルナートたちが畜産工場へ入っていくのを察知した。
 いや、それだけではない。腕を怪我したらしい男性が、ほぼ同時に畜産工場へと入っていく。

 畜産工場。
 その名の通り、家畜がおり、家畜からとれる様々なものがここで生産されている。
 だが。
 その『家畜』が人間であるとまでは。
「…………」
 メリルナートは腹の底からわき上がる嫌悪感をなんとか隠し通した。
「あなたは出産工場から来た方ですね。わかりました、こちらへどうぞ。ああ、あなたが先ですか。では――」
 メリルナートの前に割り込む形で入ってきたのは、腕を酷く怪我した男性だった。
「建設作業中に負傷しました。加工機械を回してください」
 男性は抑揚の無い声でそう述べると、案内される通路の先へと進んでいく。
 メリルナートはその後ろをついていく形になった。
 男性は通路を進み、階段を上り、そしで飛び込み台のような場所からぴょんと飛んだ。
 ことばにすれば単純な動作だが。
 飛んだ先が石で作られた回転粉砕器であれば話は別である。
 人間が自主的に潰れていくというおぞましい音を聞いたメリルナートは、今度こそ腹の底からわき上がるものに耐えかねた。
 口を押さえるメリルナート。
「どうしたのです。出産能力を失ったのであれば、食肉加工を受けるべきです」
 回転粉砕器をまわしている男がメリルナートへ同じようになることを促した。
 ミンチ溶かした男性が機械を通して排出されてくる。
 小刻みに首を横に振るメリルナート。
「なにをしているのです。はやく」
 後ろから現われた二人の男性がメリルナートの両腕を掴んだ。
「おっと、無理強いはよくないねぇ」
 その途端、素早く現われた十夜が男を殴りつけた。

「撤退だ! 急げ!」
 畜産工場から飛び出していくメルナリートやロクたち。
「戦いは?」
「最低限しないでいい!」
「わかった!」
 ロクはくるりと振り返ると、強烈な後ろ回し蹴りで追ってくる男性を蹴り飛ばした。
「どうかしてるよ! ここの人たち!」
「見ればわかりますわー」
 メリルナートも衝撃の青を発射。
 短くはしった歌のリズムが魔力となり、掴みかかろうとする男性を吹き飛ばす。
「迷宮はあっちでだ、走れ!」
 ヴィマラが集落と迷宮を繋ぐ扉の前に陣取り、道を塞ごうと迫ってくる男性にマジックロープを放った。
 オーラの縄が巻き付き、転倒する男性。
 いそげいそげと手招きするヴィマラに続くように、十夜が月の男性へマジックロープを発射した。
「やれやれ、こんなおっさん食ったら腹壊すぜ?」

 迷宮へと飛び込み、出口を目指して走る。
 もし途中で迷うようなことがあればおしまいだが、道順を覚えているのでその心配はない。
 あるとすれば――。
「暫く私が時間を稼ぐ。先にいけ!」
 ラノールは『名乗り口上』を仕掛け、追ってくる住民たちを引きつけようとした。
 そのまま仲間とは別の方向に逃げようとするラノールの腕を、史之ががしりと掴む。
「なにやってるんですか! ここで孤立したら確実に脱出できなくなりますよ!」
「――そうだな、すまない」
 史之はラノールにばかり標的が集中しないように『名乗り口上』を重ね、他の仲間たちのしんがりを勤めることにした。

 迷宮を走るイレギュラーズたち。
 それを追いかける地下遺跡の住人たち。
 島表面へと到達すると、ミニュイは大空へと飛び上がった。
 自分たちを回収するための船を呼ぶためだ。
 待機していたスタッフが船を起動させ、ミニュイは島表面にまで追いかけてきた地下遺跡住民たちを急降下突撃によって打ち払っていった。
「船はすぐそこだよ。全員いるね?」
「ああ、いすぎる程だ」
 ジークが船まで走りながら反転。
 後ろ向きに走りつつ空間に濃密な瘴気を展開させた。それを追いかけてくる住民たちに発射。
 怪しい瘴気にむせる住民たちに背を向け、ジークやラノールたちはそれぞれ船へと飛び移った。
「船を出すんだ。早く!」
 岸のギリギリまで追ってくる住民たちだが船を沖へと出せば、彼らは諦めて立ち止まった。
 全員無事での脱出に、成功したのだ。

●怠惰を忘れた村
「一体、あれはなんだったんだろう……」
 ロクの呟きに、ラノールや史之たちは頷きあって答えた。
「恐らく、怠惰というタガが外れた人間たちだろう」
「毎日限界まで働いて、毎日子供を作り続けて、働けなくなったら食肉加工して住民に配る……」
「食品の質や味は一切考えず、ただ働くための栄養だけをとり続ける、というわけだね」
 ジークはこっそりと回収してきたカイコをミニュイへと渡した。
 ミニュイは村の中をこっそりと探索しては、ヴィマラが死体と認識できないくらい細かく砕いて捨てられた骨や途中で拾ったよくわからないアイテムなどをザックに詰めて回収していた。
「食用の人間をどこから調達してるのかと思ったけど……まさか共食いだったとはね」
「外敵も生かしておく必要がないから殺して食べた、と」
 かたをすくめる十夜。
「おかしいよ……そんな……」
 人間を好んで食べるならまだしも、『社会として効率的だから食べる』という理由に至ったことで、ロクは背筋をぞくりと振るわせた。
 それはメリルナートも同じだった。
 彼女が性的な魅力を発揮したことを、『出産に対し効率的である』と判断されたことを思いだし、そして出産工場という名前からその内部で行なわれていることに想像がついたからだ。
 ヴィマラたちは遠ざかる島を振り返る。
 あの場所に悪人などいない。
 ただ効率的に生活する社会があっただけだ。
 だが、そんな社会など……あってよいものなのだろうか。
 判断するすべを、彼らは持っているだろうか。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete
 true end 1――『非怠惰社会』

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