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シナリオ詳細

筋肉裁判 ~マッスル・リーガル~

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●肉肉裁判肉裁判! 筋肉裁判、マッスルリーガル!(映画予告風に)
「手話翻訳のプロであられるシューワ氏は崩れないバベルで分かるにもかかわらずあえて手話で同時通訳し続けるという道を選びました。その覚悟は相当なものであったはずです。そんな彼ですから当日は40度近い熱を出し意識がもうろうとしながらも手話に挑みました。その結果内容が間違ってはいましたが決して意図的ではなかったのです」
 ここは鉄帝の裁判所。
 白く荘厳な建物の中で、ブランド物の高級スーツを纏った黒縁眼鏡の紳士が背筋を伸ばしていた。
 胸に光るは弁護士バッジ。
 眼鏡の縁にてをかけて、紳士は踏み出す。
「つまり、私が言いたいのは……」
 と同時に胸元のボタンがはじけ飛ぶほどに瞬間パンプアップ。
 その勢いのままシャツを上着ごと引きちぎって吹き飛ばすと、証言台の上へと跳躍した。
「被告人の無罪を主張しますッッッッッッ!!」
「異議あァりッッッッッッ!!」
 同じく向かい側の弁護士も瞬間パンアップからのボタンぱしーんからのシャツびりーからの証言台跳躍アンドパンチ。
 屈強な拳と拳が激突し、知的な眼鏡とクールな青色瞳が至近距離でにらみ合った。
 そのまま謎の力(主に筋力)で滞空しながら超高速で拳をぶつけ合いまくる二人の弁護士。
「使われた温度計は故障していた。そもそも彼に手話の資格はない!」
「この国に手話資格などありません! あるとすれば彼の覚悟と心意気、そして確かなのみ!」
「では今彼が同時通訳している内容を言ってみろ!」
「確かにカニカニエビエビと繰り返している! が――」
 眼鏡の奥底が光り輝き、拳にオーラが集中する。
 まばゆさに目を細めた相手に、その拳が顔面を割るほどに直撃した。
「この目は真剣だろうがァッッッ!!」
「はうあ!?」
 クールアイの弁護士が激しく縦回転し、裁判所の壁に激突。横向きのクレーターを作ってめりこんだ。
 スタッと証言台の前に着地する弁護士。
 一度眼鏡を外すと、爽やかに前髪をかき上げてからかけ直した。
「――以上です」
「判決は無罪!」

●強さこそが正義なら、裁判だって強さで決めればよかろうて!
 鉄帝のある町、リーガンガル。
 ここでの地法は『強さ』によって定められ、『勝敗』によって決した。
 裁判がひらかれるたび選出される弁護士および裁判員は原告側被告側に分かれその主張をパゥワーによって通す!
「その裁判員を今回――君たちに依頼しますッ!」
 眼鏡を光らせ、筋肉弁護士ベン・タッツは叫んだ。

 まずは説明しよう!
 ベン弁護士事務所に寄せられた二つの案件。
 これらにローレットは4人一組で筋肉弁護を行なう。
「裁判員制――つまり原告側4人、被告側4人による筋肉裁判で決着をつけるのです。うむ、知っていましたか。この町では常識ですものね!」
 爽やかに前髪をかき上げるベン。
「その際、バトルの中でこちらの主張が正しいと思えるような発言を交え、その正しさを拳や剣、魔術に込めて相手に打ち込むのです。これは筋肉裁判の基本といっていいでしょう」
 この世で正義は勝つと言われているのは、悪い方が『悪いなー自分間違ってるなー』と思っていると正しいこと言ってるやつのパンチが通りやすくなってしまうことがある。この絶大なる隙を生み制することこそ、筋肉裁判の基本であり極意なのだ。
「そう。ただ殴り合って決着をつけるのではありません。『正しさ』こそが勝つのです!
 ですから、自分側の主張がもし自分の思想と異なっていても、まずは信じ正しさを主張することが重要なのです。
 ――おっと、安心してください。皆さんに依頼するのはこちらこそが正しい案件。むしろ相手はイチャモンをつけてこちらの正しさを崩そうとする筈です。それをはねのけ、正しき拳を打ち込んでください!」
 グッと拳を握りしめるベン。
「魔種を殴り倒したその正義の拳、見せて貰いますよ!」

GMコメント

 鉄帝のぜんぶがこうだと思ってくれるな。思ってくれるなよ!
 あと時期柄とか考えずに素直にお楽しみください、ね!

【オーダー】
 成功条件:2件の筋肉裁判のうち『1件以上』で勝利すること

 まず裁判に参加するにあたって、自分が『案件A』『案件B』のどちらに参加するかをプレイング冒頭に記載して下さい。
 参加定員は4名。この際なのでバランスのよいチーム配分にしてみるとよいでしょう。

【裁判案件】
●案件A『審判ユーズの災難』
 サッカーの審判を勤めるユーズ氏は長年この仕事を続けてきた信頼あるプロ審判である。
 しかしあるとき下したレッドカード判定に対し選手が激昂。
 『ユーズ氏はルールを無視している』といった悪評を流した上、精神的な圧力をかけ続けた。
 その結果ユーズ氏は心を病み仕事を停止。
 名誉毀損、および業務妨害。心的な傷を負わせたとして――慰謝料の請求および町中に貼り付けたネガティブな文言の回収と破棄を求めるものである。

 ローレットチームはこの原告側の4人となり、被告のサッカー選手クジャン及び所属チームB.O.N.が派遣した4人組と対決する。
 4人組はチームメイトのサッカー選手で蹴り技及びオーラサッカーシュートを得意としている。チーム連携も鋭いため敵の火力を集中させないことが肝要だ!

●案件B『偽焼肉請求事件』
 被告デスゴリラ氏はアグレッシブな焼き肉店を経営する善良なゴリラである。
 しかしあるとき、この店の牛が自分の店から盗まれたものだと主張する裁判が巻き起こった。
 原告はハイエン氏。アコギな裏商売をしていると噂の悪人である。
 彼はデスゴリラ氏が自ら育てた立派な牛の所有権を主張して横取りするつもりなのだ。
 ここでデスゴリラ氏の焼き肉店のシステムを紹介しよう。
 店で肉を注文すると奥から暴れ牛が飛び出し、それと戦い殴り倒してナイフで肉をそぎ取りその場で焼くというものだ。
 牛は凄まじい再生能力とタフネスさでちゃっかり復活し次のバトルまだかなー楽しみだなーと考えながら檻にもどるためとてもクリーン。
 デスゴリラ氏はそんな牛を愛情深く、そして強くタフに育てていた。もはやデスゴリラ氏の子供も同然なのだ!

 相手となる原告ハイエン氏の店員たちが敵となる。
 肉切り包丁や狩猟銃。網や鎖鎌といったいかにも俺たち肉狩ってますっていう武器をつかって強引にせめてくるはずだ。
 この猛攻をしのぎきり、敵を打ち倒そう!


【アドリブ度】
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用くださいませ。

  • 筋肉裁判 ~マッスル・リーガル~完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年12月05日 21時55分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

リュカシス・ドーグドーグ・サリーシュガー(p3p000371)
無敵鉄板暴牛
黒杣・牛王(p3p001351)
月下黒牛
咲花・百合子(p3p001385)
白百合清楚殺戮拳
ガーグムド(p3p001606)
爆走爆炎爆砕流
ダークネス クイーン(p3p002874)
悪の秘密結社『XXX』総統
侵略者 ミドゥス(p3p004489)
宇宙の果てから
ルー・カンガ(p3p005172)
カンガルーボクサー
矢都花 リリー(p3p006541)
ゴールデンラバール

リプレイ

●裁判だって決着できる。そう、筋肉ならね。
 ベン弁護士事務所応接室。
 高級なスーツに身を包んだベン・タッツは眼鏡をちゃきってやって振り返った。
「よく集まってくださいました。今から皆さんの筋肉で、勝訴をもぎ取っていただきます」
「なつかしい! 美少女にも似たような制度があったのである! 死ぬまで続けない所とかちょっぴり違うが……鉄帝は肌に合う!」
「HAHAHA――死んだら次の弁護ができないじゃないですか!」
 上半身の筋肉だけでスーツを引き裂くと、ベンはパンプアップして笑った。
「一理あるのである!」
 『白百合清楚殺戮拳』咲花・百合子(p3p001385)も拳を付き合わせて笑った。
 ニィっとチェシャネコ笑いをする『宇宙の果てから』侵略者 ミドゥス(p3p004489)。
「ええなぁ。宇宙生物に関する采配を決めるんならもう俺しかおらへんやろ。違うか?」
 底知れぬ自信があふれるミドゥス。
 一方で『なげやどかり』矢都花 リリー(p3p006541)は頭の上の貝をなでなでしながら部屋の隅っこで体育座りしていた。
(はぁ。裁判とか、メンドーなことするよねぇ……殴ってカタつけた方が、早いし楽だよぉ。そういう意味じゃ、コレちょっとはマシ、かなぁ……?)
 その横で一緒に座り込む『カンガルーボクサー』ルー・カンガ(p3p005172)。
 『爆走爆炎爆砕流』ガーグムド(p3p001606)は白い歯を見せて男らしく笑うと、そんな彼らに活を入れた。
「ペンは拳よりも強いという言葉がある! ならば、ペンも拳も同時に使う分威力も三倍! そうだろう!?」
「えっ、うん……」
「そうだな!」
 圧で押し切るガーグムド。すごく鉄帝ぽい会話だった。
 そんな中、『悪の秘密結社『XXX』総統』ダークネス クイーン(p3p002874)が自分の肌色成分多めな格好を見下ろして片眉をあげた。
「ところで我、この格好で大丈夫?法廷侮辱罪とかで怒られない? なんなら世を忍ぶ仮の――」
 といって振り返ると、上半身と腿から下をフルパージしたベン弁護士が左右の大胸筋を交互にピクピクさせていた。笑顔で。
「うん、大丈夫だな我」
「悩みが解消したようでなにより」
 『月下黒牛』黒杣・牛王(p3p001351)がうんうんと頷いている。
「牛と人との間の事件は、畜生の私としても放ってはおけません。必ずや勝ち取りましょう」
「猪突猛進質実剛健!」
 『拵え鋼』リュカシス・ドーグドーグ・サリーシュガー(p3p000371)は拳を握り、ダンと足を踏みならした。
「正義の拳、全身全霊で奮いマス!」
 猛々しい筋肉裁判員たちが集まった。
 あとは拳をぶつけるのみ。
 いざ、法廷へ!

●サッカー裁判、開廷!
 ズガォン! というとてつもない破壊音が法廷に鳴り響いた。
 裁判官がジャッジメントハンマーで丸太を粉砕した音である。
「これより! 筋肉裁判を始める! 被告、原告――前へ!」
 台の前に立つプロサッカー審判ユーズ氏。
 一方で被告側の台にはクジャン選手とそのチームメイトが立っていた。
「俺のチームメイトは鉄帝サッカーで百人殺しと恐れられた屈強な選手たち。それもぶつかり合いに秀でた四人を選りすぐってきた。たかが審判のあんたに勝ち目はないぜ」
「フッ、どうでしょうかね」
 大胸筋を漲らせたベン弁護士が振り向くと、四人のイレギュラーズがそれぞれ台の前へと並んだ。
 巨大な巻き貝からにゅるんと出てくるリリー。
 無言でにらみをきかせるルー。
 身体からテンションの炎を燃え上がらせるガーグムド。
 身体の金属パーツをがしがしと打ちならすリュカシス。
「なにっ――」
 予想外の弁護団に戸惑うクジャン。リリーはその隙をつくかのようにバールを振り上げ襲いかかった。
「そもそもサッカーって、パリピがプレーするもんっしょ……?」
 ルーが引っ張ってきたホワイトボードにはリリーの言い分がフリップになって貼り付けられていく。
 『パリピ→うるさい』
 『うるさい→ギルティ』
 『サッカー選手→ギルティ』
「でいいんじゃない?」
「サッカー選手全員がパリピではない。うるさくないパリピもいる!」
 リリーの弁論(バールアタック)に対抗弁論(カウンターキック)で対抗するB.O.N選手。
「互角か――ならば!」
 ガーグムドは台を拳で殴りつける勢いで跳躍すると、証言台の上へと舞い上がった。
 炎が尾を引き傍聴席を茜色に染める。おおという歓声に背を押されるように、ガーグムドは拳と弁論を叩き込んだ。
「ユーズ氏がルールを無視したとの事だが、長年の経歴とそこから築き上げた信頼からして、少なくとも故意にそのような事をするとはとてもありえん!」
「そのベテランがルールを無視したのがありえないほどの罪なのだろうが!」
 オーラシュートを繰り出す相手選手。
 ユーズ氏の心を痛めた中傷ワードだ。カミソリのように鋭いボールの勢いに思わず目を瞑るユーズ氏。
 が、ガーグムドはそこへ割り込んでボールにパンチングをしかけた。
「大体ルールを無視していると言い張るなら、それこそ筋肉裁判をすればいいだろうに! 何かできない理由でもあるのか!?」
「ぐっ……!?」
 痛いところをつかれた。そんな顔をした選手めがけ、炎のパンチングショットが炸裂した。
「貴様のでっち上げだからであろう!」
「ぐああ!?」
 吹き飛び、台を倒しながら転がる相手選手。
 リュカシスが証言台へと飛び込み、地元情報誌のスポーツ記者を繰り出した。
 証言台に立たされた記者に質問をしかけるリュカシス。
「クジャン氏は今回の騒動に限らず、もとから横暴な選手として知られていました。そうですネ!?」
「はい。気に入らない選手の悪い噂を流して追い出したり、邪魔な相手選手を活動停止に追い込んだと自慢したこともありました」
「くっ!」
 相手キーパーが防御の姿勢をとる。しかし防御には隙があった。クジャンの性格はそれに晒されていた仲間が一番よく知っているからだ。
「この場合は容赦無しですネ! ユーズ氏のネガティブキャンペーンをするには充分な理由があった――!」
 自らのパーツとした斧を拳のように握り込み、キーパーに直接叩き込む。
 防御をしたはずのキーパーも、耐えきれずに派手に転倒する。
「こうなれば……!」
 クジャン氏の目がぎらりと光った。
 その悪しき光にリュカシスたちは身構える。
 なにか、恐ろしく卑劣な攻撃が来る! そう、確信したのだ!

●焼肉裁判、開廷!
 粉砕される丸太。
 身の丈3mの裁判官がラーメン片手に開廷を宣言すると、被告席デスゴリラ氏と原告席ハイエン氏がそれぞれ立ち上がった。
 ハイエン氏の弁護団が肉切り包丁や狩猟銃を手に証言台前へと詰め寄っていく。
「ハイエン氏はあの牛が自分のものであると主張している。正真正銘ハイエン氏の所有物で間違いはない!」
 ぐぬ、と歯を食いしばるデスゴリラ氏。そこへダークネスが立ち塞がった。
「良いか! 弁護人たる者如何なる場合に置いてもふてぶてしく笑っているのである! 逆転しちゃった裁判でそう言っていた! 間違いない!」
 さらには拳を垂直に下げ格闘の構えをとる百合子。
 腕組みをしてニヤニヤと不敵に笑うミドゥス。
 今にも突撃していきそうな牛王。
 その中で先陣をきったのはダークネスだった。
「まずはこのボードを見ろ。これが貴様の物であると主張する牛に相違ないか?」
 ボードに貼り付けられたのは暴れ牛の写真だった、
 『うっ』と言いよどむハイエン氏。
 当然である。ボードに表示されているのは主張した牛の兄弟にあたる別の牛。
 だが、ハイエン氏は牛ならどれでもいいとして適当な牛に所有権を主張していたのだ。
「自分の牛との見分けも付かないとは、どういう事であるか!」
「ぐああっ!」
 ダークネスの繰り出した剣が肉切り包丁マンを切り裂いていく。
「デスゴリラ氏!」
「いいや、これは弟牛のテリーだ。兄のドリーとは違う」
「このように――己が子と等しく愛情を注いだ牛なればこそ、見間違う筈などない!見抜けなかった貴様らとは違うのである!」
 ダークネスの先制攻撃に、ハイエン氏弁護団は劣勢の顔を見せた。そんな中で猟銃マンが抵抗をみせる。
「牛の顔などみな同じ! 今のやりとりとて口裏を合わせれば可能である!」
 猟銃の乱射に対して、ミドゥスは腕組みとニヤニヤ笑いを崩すこと無くずかずかと近づいていった。
「俺も宇宙渡ってきて育てる側と狩る側の違いよう見てきてん。得物の構えからして丸わかりやで? 使うんならまず銃や包丁やのうて鋤から始めんかい!
牛にエサやるでっかいフォークや! おたくらが牛育ててるならわかるやろ!
まだな、まだ野生動物から大事な牛守るっちゅー保守的な攻撃性ならわかんねん。それにしてももっとマシなもんあるやろ! ちっとぐらい偽装する気見せんかい!」
「ぐっ――」
 ミドゥスの堂々たる弁論に猟銃マンの狙いがそれる。
 弾の方からよけて通るだろうとばかりに近づいたミドゥスは大宇宙パンチを猟銃マンの鼻っ面に叩き込んだ。
「一番扱い慣れた得物持ってきましたァ感しかせえへんわ!」
 圧倒的事実! 不当に利益をかすめとろうとした者の罪悪感が大宇宙パンチを無防備に受けてしまった!
 そうして開いた道筋を、百合子が猛然と駆け抜ける。
「こんな牛野生にいるわけないであろ。って視点から攻めるのである! 野生では敗北すなわち死!故に野生動物はバトルを愉しむ等という事はせぬ。しかし、デスゴリラ氏の牛はバトルをこよなく愛する鉄帝っ子である!」
 投げ縄でとらえようとしたロープマンの狙いがそれる。
 野生の牛で同じことをしたら即死んだ経験が胸に刺さったのだ。
「即ち、デスゴリラ氏がこの牛を鍛え上げる中で闘争の愉しさを教えたからに他ならないのである!」
 白百合清楚殺戮拳、正論実直ノ拳がロープマンの腹に深くめり込む。
 呻くロープマン。そしてハイエン。
 そこへ、のしのしと一頭の暴れ牛がやってきた。
 今すぐにでもバトルに加わりたいという意志の強さ故よく店を脱走して町で暴れるドリー。町の住民はそれを鉄の風物詩や縁起物として笑顔で受け入れていた。ある意味、マスコット的存在の牛である。
 そんなドリーの頭を撫でてやる牛王。
「牛殿は何度も食される定めにありました。にも関わらず、デスゴリラ殿は子ども当然のように育ち、今でも生きています。愛情があったからこそ、牛殿も修羅場を超えられるような肉体を得たのです。何故わかるのか? 私も、とある人に育てられた牛ですから」
 ブモーと同意のこえを上げるドリー。牛王はその気持ちが分かったので、深く頷いた。
「ぬかせっ。愛などなくとも牛は食えるわ!」
 鎖鎌を振り回して飛びかかる鎖鎌マン。牛王は振り向きざまの牛王拳で相手を壁までぶっ飛ばした。
「牛の気持ちが分からずに……なにが焼き肉屋ですか!」

●判決!
「てかさ、さっきカニとかエビとか聞こえたけど……ヤドカリは? 甲殻類だよ……。無いの? ありえない……ムカつく……うん、そこのサッカーパリピたち、潰すから……」
 すごいカーブを描いた逆ギレを繰り出し、リリーがヤドカリハンドでバールをぶん投げる。
 それを蹴り飛ばしたB.O.N選手は反撃にオーラシュートを繰り出すが、リリーのヤドカリハンドがそれをキャッチする。そこへ加わるルー。
 激しくぶつかる戦いの中で、
「情報誌見たらスキャンダルとかあるっしょ……パリピだしねぇ。それか年棒格差とか……人気の差とか……同じチームでこの差……。恥ずくない?」
 仲間割れを狙おうとするリリー。そこへガーグムドが加わっていった。
 連携キックで吹き飛ばされるリリーたちにかわり、選手の一人を掴んで地面に叩き付けた。
「今のうちに示談を申し出れば罪は軽く済むぞ。だがもし負ければ……裁判に出た選手に責任がなすりつけられるのではないか?」
「くっ」
 審判に文句をつけて追い出すようなクジャン選手だ。もし裁判で負ければその責任を負われる可能性は充分にある。
 選手たちが弱った所で、クジャンのそばについていたキーパーが無数のスポーツ誌スクラップを提示してきた。
「ユーズ氏は過去にも誤審をした経歴があるぞ! 情報通の話によれば意図的にルールを無視したという話もある! こんな噂はまだまだあるんだぞ!」
 審判といえど人間。間違えることもある。だがそこをほじくり返して人格批判に無理矢理つなげ自分たちが悪くないことを主張する者たちがいる。今目の前にいる者たちが、それだ。
「ユーズ氏は我々を負けさせるためにわざとルールをねじ曲げたのだ! きっと賄賂を貰っていたに違いないぞ!」
「なんだと!」
 審判はその立場上、反論や主張をすることを認められていない。選手側は疑惑を一方的に振りかけることができ、騒げば騒ぐほど自分たちに有利にはたらくことを知っていた。
「疑惑は疑惑だ」
「火の無いところに煙は立たないというぞ!」
「火を放ったのは貴様らであろう……!」
 ルーたちが押されることで、ガーグムドも劣勢に立たされつつある。
 追撃を繰り出す選手に割り込み、リュカシスが鉄塊キックで迎撃した。
「クジャン氏、いいえ、あなた方は! 審判のジャッジを不服とし! 悪辣な報復を行う事を良しとなさるチームなのですか! それがスポーツマンのなさることですか! 断じて否! 否デス!!!! 悪辣な報復を行う暇がおありなら、いっそうの技術研鑽に励みなさい!!」
 ハンマーの音が鳴る。
 裁判官は巨大なハンマーを担ぎ、深く頷いた。
「判決。ユーズ氏の訴えの一部を認める!」
 一部。とはいえこれは確かな勝利だ。
 あやうく劣勢に立たされた彼らであったが、なんとか勝訴をもぎ取ったのだ。

 一方こちらはデスゴリラ対ハイエンの焼き肉裁判。
「ハイエン殿からは、近づけば魂ごと木っ端微塵にされる程の殺意を感じます。特に銃持ちの方。もし、牛殿の体に弾丸が残ったまま回復したら、弾丸に残る痛みを延々と味わったり、うっかり弾丸の入ったまま焼肉を……と考えたことはありませんか? 牛を育てる者として失格かと」
 飛来する銃弾を盾で弾きおとし、牛王は相手をにらみ付けた。
「人だけが選ぶのでは無い。牛でも相手を選ぶのです! 今の牛殿が、デスゴリラ殿を選んで付いていくのなら、デスゴリラ殿への所有権は十分に御座います!」
 一理ある! そう思ってしまったが最後だ。猛る牛となった牛王の突撃に、猟銃マンは派手に撥ね飛ばされていった。
「肉切り包丁はまだしも、それ以外の武器は牛を狩る事は出来て料理する事など不可能。対し被告はナイフ一本で牛を料理する、これは被告の牛に対する理解と付き合いの深さを物語っているのである!」
 自在剣を分解し、大砲モードにするダークネス。
「因って、この牛は紛れもなく被告の所有物である! ――世界征服砲!」
「ぐおおっ!?」
 猟銃マンと鎖鎌マンがまとめて吹き飛ばされた。
「自分のおりたい場所について一番知っとるのは牛やろ。確実な正義やん。牛がゴリラんとこ絶対嫌やっちゅーなら俺はこの勝負降りたるわ。ホワイトな宇宙人やからな。どや、牛のドリーがアンタんとこにおるメリットはなんや?」
 ジャケットのポケットに手を突っ込み、ゆっくりと近づいていくミドゥス。
 ハイエン氏は口ごもり、目をそらす。
「か、金は払う……だから」
 振り返れば、ドリーは顔を背け、デスゴリラ氏を熱く見つめていた。頷き会うデスゴリラ氏とドリー。二人の間には確かに心が通っていた。
「一目瞭然。出直してきいや!」
 ギャラクシーアッパーカットが炸裂し、ハイエン氏のロープマンが吹き飛んでいく。
 転がる武器を指さす百合子。
「ハイエン氏らの武器を見て見よ! それらは牛を殺す武器であって鍛えるための武器ではない! あれらでは牛は無残にも有限焼肉になり果てるだけ! デスゴリラ氏の牛による無限焼肉の世界を再現するのは難しいであろう! そもそも猟銃や網を使わねばならぬのが軟弱である! 戦士たるもの狩りの得物くらい裸締めでもって傷一つなく捕らえるべきであろう!」
「き、詭弁だ! そんなことできるわけがねえ!」
 肉切り包丁マンが襲いかかる。
 が、百合子は繰り出される包丁を両サイドから拳を打ち付けることで強制停止、かつ粉砕した。
「この様な者たちにこの牛はもったいない!」
 首を片手で締め上げてつるすと、泡を吹いた割れ包丁マンを放り捨てた。
「判決――!」
 ハンマーの音。裁判官は深く頷き、デスゴリラ氏を見た。
「暴れ牛ドリーはデスゴリラ氏のもので間違いない。偽りの権利を主張し彼らの絆を引き裂こうとしたハイエンよ、即刻この場から立ち去れぃ!」

 ――かくして、二つの筋肉裁判はイレギュラーズたちの勝利となった。
 だが裁判はこの日だけでは終わらない。
 筋肉弁護士たちは次々と舞い込む依頼のなかで明日も拳を唸らせるだろう。
「君たちの腕の確かさが分かった。またいずれ、君たちの手を借りることもあるだろう! その時は、よろしく頼む!」

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete!
 ――nice bulk!

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