PandoraPartyProject

シナリオ詳細

エスケープ・フロム・スラム

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●汝、窮を凌げ
「感づかれないように見ろ。宿の北側。こちらを見張ってる」
 口元を覆うような灰色の髭と灰色のソフトハット。さらには灰色のコートを着た彼の名は『レーツェルマン』。パサジール・ルメスに所属するキャラバンの一つをまとめる存在であり、いわゆる武器商人であった。
 特に銃器を得意とする彼は常に火薬の臭いに包まれ、灰色の容姿から彼自身が火薬でできているかのように思わせた。
 そんな彼が、宿の窓際に立ってカーテンを開いた。
 煙草を吸うために換気をする。そんな何気ない動作にみせかけて、小さな鏡を窓の縁に翳してみせる。
 覗き込んでみると、確かにガラの悪そうな男たちがこちらを見張っていた。
 安宿の二階。角部屋。そんな部屋を、頭にターバンを巻いた色黒の男性5人が煙草を吸いながらじっと見つめている。
「分かるか? 奴らの目だ。害意と邪心……さしずめ、俺を殺して商品をタダでいただこうってクチだろう。ひとから奪った武器なんぞゴミ同然だということを知らんらしい」
 要するに。
 今から彼らは宿を取り囲んで自分たちを殺そうとしているらしい。

 レーツェルマンの護衛任務。それが今回ローレットのイレギュラーズであるあなたに課せられた依頼内容であった。
 今回の移動はレーツェルマン一人と護衛八人という、過剰な比率とも思える護衛がなされていたが、彼の商品を考えれば無理からぬ。
 彼は武器商人。幻想鉄帝天義にラサ。時には深緑や練達にすら渡りをつける彼のフットワークは武器の品質を約束し、時には非常に協力な武器を扱うこともあった。
 であれば必然的に、『こいつを殺しさえすれば』と思う人間はごろごろと出てくる。
「今回はそう特別な武器を扱わない案件だったからな。油断した。いや、人間の業ってやつをうっかり忘れていた」
 レーツェルマンのそばに守りをつけつつ宿の周りをそれとなく探ってみると、いくつかのことが分かってきた。
 それを、テーブルに広げた図へと書き込んでいく。
「まず、俺たちの部屋は宿の二階。角部屋。監視しやすく、飛行能力でもあれば簡単に突入できる位置だ。向かいの建物から狙撃も可能。戦闘するにも窓辺に立つ時には注意せんとな」
 周囲の地図を大雑把に手書きし、角部屋(現在地)を赤くマルで囲む。
「監視してるのは五人。他の仲間に報告してる様子があるから、宿の周りに三倍以上の敵がいると考えておけ。監視に複数人さけるのは数的余裕の現われだ」
 見張りの位置にマークをつける。部屋の窓から見て向かいの酒場。テラス席だ。
「ついでに、宿にも何人か入り込んでる。俺たちの後から宿泊した奴が5人ほどいるが……おそらくその全部だろう。旅人らしい装備じゃあなかった」
 敵が宿泊しているらしい部屋をマーク。
 隣の部屋と、向かいの部屋。その二つだ。
「宿の主人は知らないか、金を渡されて通報をしないように言われてるか……まあ敵ではないが、こっちの味方にもなりそうにはないな。会話に不自然さがあった」
 宿入り口の受付テーブルにバツをつける。
「通報はされてないだろう。この町の規模に対して人員があれだけいて金にも多少余裕があるとなると、この町で高い発言力を持ってる可能性がある。最悪、住民全てが敵に回るかもしれんが……所詮連中にできることは『味方しない』ことくらいだ。積極的に頼らなければいないも同然。町を急いで抜ければ問題ない。つまり……」
 宿からラインを引き、町の外へ続く大通りのルートを引く。
「今から、見張りや周囲にスタンバイしてる敵を切り抜けて脱出。そのまま外に止めてある馬車を使って町を出る。馬車の点検はできてるな? よし……では、やるぞ」
 てきぱきと作戦をまとめ、レーツェルマンは立ち上がった。
「護衛の担当はお前たちだ。細かいやり方はお前たちに任せる。俺一人と、ここにあるアタッシュケースさえ無事ならそれでいい。頼むぞ」

GMコメント

【これまでのあらすじ】
 武器商人の護衛を依頼されたイレギュラーズ。
 スラム街に宿泊中、町の人間たちに命を狙われることに。
 相手が行動を起こす前に気づけた。襲われる前に行動を起こし、宿と町から脱出しよう。

【オーダー】
・成功条件A:レーツェルマンの生存
・成功条件B:アタッシュケースの無事

 武器商人レーツェルマンは普段から1人で旅をするフットワークの軽い武器商人キャラバンです。(専門の技術や知識を要する時だけ連れを作るので一応キャラバン扱いされています)
 彼は専用のアタッシュケースに大量の武器を収納できるギフト能力をもっており、そのため彼の身とケースさえ無事ならOKなのです。
 逆に言えば、ケースを奪われたり彼自身を殺害されれば護衛任務は失敗となります。

【脱出】
●宿からの脱出
 二階の角部屋から脱出します。
 宿向かいの酒場からは見張りが5人。
 隣と向かいの部屋には合計5人。
 それだけの人員がこちらをマークしています。
 警戒を緩めたり隙をつくるなりして、その隙に逃げ出すか、またはガチガチに装備を固めて強行突破するか。もしくはその間をとるか。
 やり方は相談して決めてください。(集まったメンバー次第で決まると思われます)

●町からの脱出
 宿の前にとめた馬車を使って町から脱出します。
 大通りを只管走れば脱出できますし、町で力を持ってる連中は必然的に隣町での蛮行ができないものです。(似たような連中との縄張り問題になるからです)
 ここからは基本的にチェイスバトル。
 レーツェルマンの馬車を基本とし、もしPCが馬その他の有効アイテムを装備しているなら騎乗戦闘が可能です。
 自前の馬には『陣形を作ることができる』『馬車がぎゅうぎゅうにならず間接的にペナルティ軽減が起こる』『美味しい』など様々なメリットがあります。
 騎乗時、及び馬車搭乗時には状況次第でペナルティが発生しますが、スキルによってはこれの軽減が可能です。

【敵戦力と戦闘について】
 色々不明。総合力で言えば敵側の方が高いはず。
 仮に敵の人数が15人だけだったとして、8人全員で正面から戦えば十中八九敗北します。
 切り抜けること。逃げること。遠ざけることを優先して考えてください。間違っても全滅させてからゆっくり逃げようとは考えないようにしましょう。

 レーツェルマンは最優先保護対象です。
 ただし敵側も戦闘力をもたないレーツェルマンを優先して攻撃するメリットがないので、はじめから必死に庇わなくても問題はないでしょう。逆に『保護対象を庇うだけ』で行動を埋めると浮き駒化する危険があります。
 また、『本当にヤバいときには庇う』はプレイングに書かなくても基礎行動に含まれるものとします。むしろ絶対に庇いたくない場合にだけ『庇わない』と書いてください。

【アドリブ度】
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用くださいませ。

  • エスケープ・フロム・スラム完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年11月28日 21時35分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

日向 葵(p3p000366)
紅眼のエースストライカー
善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000665)
レジーナ・カームバンクル
ルルリア・ルルフェルルーク(p3p001317)
光の槍
七鳥・天十里(p3p001668)
仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)
陰陽式
ミルヴィ=カーソン(p3p005047)
剣閃飛鳥
如月=紅牙=咲耶(p3p006128)
夜砕き
藤堂 夕(p3p006645)
小さな太陽

リプレイ

●エスケープ・フロム・スラム
 粗末なカーテンを閉じ、窓から離れる武器商人レーツェルマン。
 灰のような火薬のような、独特のにおいが部屋には満ちている。
「さて、どうするか。全員殺して切り抜けるわけにもいかんな」
「偵察終わったッスよ。連中、目ぇギラギラさせてるッス。ひっでぇ状況になっちまったッスね」
 部屋に戻ってきた『紅眼のエースストライカー』日向 葵(p3p000366)が羽織っていたパーカーをぱたぱたとやってみせる。
 対するレーツェルマンは冷静だった。コーヒーが零れた程度の動揺すら見せていない。
「よくあることだ。武器商人は狙われる。襲撃に対する利益も高いし、殺人や戦争の責任を負わせやすく、非人道的だと見なしやすいからな」
「だが予想していたよりも多いのではないか?」
 穴の空いたソファに腰掛け、足を組む『五行絶影』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)。
「この程度の襲撃は想定していた。だから護衛を八人もつけた。ローレットが無能な肉壁ではないことは、既に証明されている」
「その通りだ。ご依頼通り生かして逃がしてみせよう」
「この様な荒事も依頼の内でござるからな。忍びの矜持にかけて依頼人の命、しっかり守らせて貰うでござるよ」
 『黒耀の鴉』如月=紅牙=咲耶(p3p006128)も頷いて、汰磨羈の考えに同意した。
「全くもう。盗賊だったり強盗だったり、こんなのばっかり」
 七鳥・天十里(p3p001668)が片頬を膨らませてから銃にそっと手をかけた。
「あそこに居る全員の額にバンッてやっちゃいたい所だけど……ま、それは今度だね」
「…………」
 『寄り添う風』ミルヴィ=カーソン(p3p005047)は壁に背をつけて黙っていた。
 武器商人という人種が好きになれないらしく、今回の依頼も気が進んではいないらしい。
 今回は武器がおかしな所へ流れるのを阻止するためになると考えて、自分なりにやる気を出しているようだ。
 主義主張に関わらず依頼を受けたからには達成に努力するというギルドのルールは、こういうときに便利だった。
 レーツェルマンもミルヴィの考えを見抜いている節があったが、それを承知で契約状態を保ってもいた。
「それにしても、危険な仕事ですよね武器商人さんって。ゴロツキさんにタダで物をあげる程イレギュラーズの護衛は甘くないというところ見せてあげましょうっ」
 いわんとすることを半分まで代弁する『偽装職人』ルルリア・ルルフェルルーク(p3p001317)。ぐっと拳を握って見せた彼女に、『レジーナ・カームバンクル』善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000665)が静かに頷いている。
「それじゃあまずは、準備からですよね」
 『特異運命座標』藤堂 夕(p3p006645)は宿に済んでいるらしいネズミとカラスを、魔法の力でネズミげな生物をそれぞれ作り出しはじめた。

 五感の共有を開始。ネズミさんを通して自分を見上げた夕(ネズミ)はチュウとひとなきしてから壁の穴へと侵入。細い光しか入らない壁をわしわしと上りホコリっぽくて虫だらけの天井裏へと到達すると、一度周囲を見回した。
 スラムの連中が襲撃しやすいようにと待機しているのは隣の部屋と向かいの部屋。
 夕(ネズミ)と使い魔は二手に分かれそれぞれの部屋の真上へとやってきた。
 天井にあいた穴から中が覗き見える。
 男たちが部屋でだらだらとしながら、ナイフの様子を確かめたり下品な会話に興じたりしている。
 きっと失敗すると思っていないのだろう。彼らはレーツェルマンたちから色々なものを巻き上げた後のことを、今からもう話していた。
 ドア側にいた男がちらりと外を覗き込む。
「おい、誰か出て行かなかったか」
「いや? 廊下は誰も通ってない」
 二人の男の言うことはどちらも正しい。
 ルルリアは部屋から出て、『直接』真下の部屋へと移動していた。
 あらかじめ部屋の使用者が中にいない時をみはからってである。
 なぜそんなことができたのかと言えば。
(通過成功。あとは任せて)
 天井越しにハンドサインを出すルルリアが、ドアを開くこと無くすり抜けていく。
 天十里はその様子を透視しながら、周囲の様子に目を光らせていた。
 壁越しに男たちが耳を立てているのが分かる。
 天十里は『怪しまれないように普通の会話をしよう』と紙に書いてレーツェルマンへと見せた。
「レーツェルマンさん、好きなものってなあに?」
「武器を売ることだ」
「趣味は?」
「武器を売ることだ」
「将来の目標は……」
「武器を売ることだ」
 なんだこの会話の続かないロボットは。
 と少し思ったが、天十里は笑顔で会話を続けた。
 ルルリアはトイレに入りのろしをセット。いつでも点火できる状態にしている。残るメンバーが配置を完了まで、それは待たねばならない。
「じゃあ、過去一番の失敗はなんだった?」
「それは」
 レーツェルマンが珍しく言葉を途切れさせた。
 重そうな煙草をくわえ、火をつけて煙を吸い込む。
「よその世界で、世界大戦を引き起こしたことだ」
 その時、階下で大声がした。

「火事だー!」
 変装したルルリアがトイレから飛び出し、遅れて大量の煙があふれ出してくる。
 適切な道具と適切な技術を用いたファインプレーだ。
 狭く奥まったトイレが火元となれば大体の者は近づかない。宿の客は巻き込まれては大変だと遠のき、直接的打撃を主人だけが様子を見るべく口に布を当ててトイレへ駆け込んでいく。
 一方で警戒を限界まで高めたのは見張りの男たちであった。
 獲物を狩ろうとした途端におきたトラブル。これが人為的かもしれないと思うのは仕方のないことである。
 外の見張りたちも宿から飛び出してきた客の様子にそれを察し、レーツェルマンたちの宿泊する二階角部屋を凝視した。
 窓際に人影。
 灰色のコートに灰色のソフトハット。特徴的すぎるその格好は見間違えようも無い。
「奴らが仕掛けたわけじゃないのか?」
「だとしたら火事におびえて部屋に残ってるだけだ」
「チャンスだな。火事場泥棒といこうぜ」
 見張りの一人が屋内へ飛び込んだ途端、部屋から飛び出したミルヴィが階段の手すりをも飛び越え、見張りの男を蹴倒した。
「ヘラオス!」
 呼び声に応じて走ってくる騎乗動物ヘラオス。
「ここはアタシに任せて先に行って! 後はヨロシク!」
 ミルヴィは起き上がろうとする見張りを再び蹴りつけると、仲間へとよびかけた。
 フードパーカーを羽織った男と連れだって、レジーナたちが部屋から飛び出してくる。
 家事と聞いた男たちが隣の部屋と向かいの部屋から飛び出し、廊下を塞いでいる。
「汰磨羈殿。どう思う」
 絡繰暗器を小太刀モードにして逆手に握る咲耶。
「選択肢は一つしかなかろう」
 汰磨羈は霊光器を水平に構え、その両端から円形のエネルギーフィールドを発生。日月乾坤刀の形状をとると、武装した男たちへと突撃した。
「退け! 立ち塞がるなら、死ぬ覚悟が出来ていると見做す!」
 咄嗟に剣で応戦する男を無理矢理押し込み廊下の端まで突き飛ばすと、咲耶がすかさず斬撃を叩き込む。
「今のうちに」
「……」
 パーカーを着た男は階段を駆け下り、表につないでいた馬車のロープを緊急切断。『大罪女王の遣い』で牽制射撃をするレジーナや天十里たちを馬車にのせるとすぐさま走り出した。
「来い、黒檀!」
「走るぞ、パカ!」
 脇を固めるように咲耶と汰磨羈がそれぞれの馬に乗り陣形を組んで表通りへと走る。
 見張りの男が慌てて窓を見上げた。
「武器商人はまだ部屋だぞ。やつら見捨てて逃げる気か」
「俺らがそんな薄情モンに見えたッスか!?」
 窓ががらりと開き、灰色のコートを着た男――武器商人だと見張りたちが思っていた男が顔を見せた。
 濃い緑の入った黒髪に髭のない爽やかな顔立ち。
 そう、葵である。籠城戦をするとみせかけて攻め手をゆるめさせる作戦であった。
「よっ、と!」
 窓から飛び降りる葵。
 同じくそいやといって飛び出した夕がふわりと盾から七色のエネルギーを噴射しながら落下衝撃を緩和。駆けつけてきた馬に跨がると、その後ろに葵を乗せて走り出した。
「脱出成功! 行きましょう!」
 合図を受けたミルヴィは変装を解いたルルリアと協力して包囲を脱すると、それぞれの馬にのり馬車を追いかけて走り始めた。
「馬をだせ! 追いかけろ! 町から出すな!」
 男たちが武器を握りしめ、それぞれの馬へと飛び乗っていく。

●チェイス
 宿から飛び出す際になぜああも都合良く馬が駆けつけたのかといえば、レジーナが予め放って置いた使い魔が縄を切っていたからである。
 そのレジーナは今、旅の荷物がごっそりと積まれた馬車にのって追いかけてくる無数の男たちに『天鍵:緋璃宝劔天』で応戦していた。
 粗末なライフルによる射撃が馬車へ浴びせられ、レーツェルマンは身を屈めた。
「整備のなってないゴミ武器だ。盗品でも使ったか」
「ものは大事にしないと――ねっ!」
 天十里は鉄棒の要領で馬車の天幕へよじ登ると、追いかけてくる男たちを端から順に射撃で打ち落としていった。
 地面に転落して転がる男たち。
 と同時に、空へカラスが舞い上がった。
 夕が飛ばしたものに違いない。こちらの位置を確認し合流を始めたということである。
 一方で、土地を知り尽くしているであろう地元の悪党たちが細道を駆使して大通りへと割り込んできた。馬車をとめるべく前方へと陣取っている。
 御者席へと振り返る天十里。
「合流までもう少しかかりそう。しのげる?」
「出来るかどうかではない」
「然様――」
 汰磨羈と咲耶が馬の速度をあげる。
「「やるのだ!」」
 馬上から銃を構える男へ急接近をかける咲耶。絡繰暗器から鎖分銅を発射すると、相手の腕に絡みつかせて馬上より引きずり下ろした。
「戦意無き者は退け! 尚も相対する者共は、命を捨てに来い!」
 パカダクラを加速させた汰磨羈が馬上に立ち乗りし、前方を塞ぐ男へと跳躍。マナジェットの回転蹴りで側頭部をかるように馬上から飛ばすと、大通りに面した果物屋へとシュートした。
 減速した相手の馬を足場にしてターン。
「連中の武器もたいしたことはないな」
「いや、そうでもない」
 レーツェルマンがちらりと後ろを向く。
 先程の果物屋を裏から破壊して飛び出してきたのは、四馬力で走る戦車であった。要するに馬四頭で引く馬車であり、大砲が備え付けられている。
「だがあれもゴミだ。人から買わない武器はいかんな」
「言ってる場合か!」
 砲撃。
 馬車へと直撃。
 大きく傾いた馬車が片輪で走行する。
 大砲が次弾を装填し、いざトドメをさそうと手にかけたその時。
 男の手にサッカーボールが直撃した。
「うおっ!?」
 思わずのけぞる男。
 露天を飛び越え、夕たちの馬が大通りへと合流してきた。
「お待たせしました!」
 夕のルーン・Hが戦車へ叩き込まれ、葵がバットバーストを連射する。
 続いてミルヴィとルルリアが鶏小屋を破壊しながら馬車の背後へと登場。
 舞い散る羽根にまみれながら、ルルリアは黒光りする魔銃を構えた。
「道を譲ってもらいますよっ!」
 連射。そのまま戦車の真横につけると、白い銃を抜いて魔力弾を連射していく。
 反対側をはさむように横付けしたミルヴィが曲刀で切りつける。
 戦車に乗っていた男たちは転げ落ち、砂だらけの地面を転がった。
「待ちやがれ!」
 顔をあげる男たち。その上を駆け抜ける無数の馬たち。無数のライフルが狙いをつける。
 ミルヴィは『先へ行って』の合図を出して、男たちを引き受けた。

 馬上の戦いは、決していつまでも続く者では無かった。
 隣町に近づくにつれ人数は減り、明確なラインを超えた所で誰も追ってこなくなった。
 隣町へ入った商人を襲ったとあれば縄張り問題となる。法に縛られない者たちほど、ルールには敏感なのだ。
 やがて速度を落とした馬車に、ミルヴィたちがおいついてくる。
 傾いたままぎしぎしと走る馬車を見て葵や夕が苦笑した。
「いやあ、ひどい有様ッスね」
「どこかで修理していきますか?」
「それがいいだろう。今度は襲撃されない宿も見つけないといかんが……まあ、どちらもスラムを抜けてからだ」
 仲間たちもそれがいいと頷いて、馬やパカダクラを平常運転に整えた。
 きしむ馬車の上で、天十里はすとんと荷物に背をつける。
「ねえ、レーツェルマンさん。人に武器を売ったこと、後悔してる?」
「まさか」
 レーツェルマンは灰色の髭をなで、懐から出した煙草をくわえた。
「人間には武器が必要だ。それを正しく選ぶ人間と、売る人間が必要だ。私は審判のラッパが吹かれるその日にすら、武器を売り続けるだろう」
「なぜ」
 ほんの興味で出た咲耶の言葉に、レーツェルマンは表情を変えずに振り返る。
「全ての人間に武器が行き渡れば、世界は平和になると思わんか」

成否

成功

MVP

なし

状態異常

善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000665)[重傷]
レジーナ・カームバンクル

あとがき

 ――mission complete!
 ――congratulation!

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