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シナリオ詳細

全軍銃帯、コーサイドマーチ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●デミウェポン(亜人兵器)
 首無し人間のシルエットが向かってくる。
 石だらけの荒野を走り抜け、岩を跳躍する。
 飛来する銃弾を腕のひとふりで払いのけ、古代兵器で武装した兵士たちを掴んではなぎ倒し、地面に叩き付けては更なる標的を見つけ向かってくる。
 そんな光景を黒いアイシールドに映した兵は、アサルトライフルの引き金をひいた。
『デミウェポン戦闘圏内突入まで3秒。六実隊は後退しつつ牽制射撃』
「「了解!」」
 彼を含んだ四人組のチームは全く乱れない動きで急速後退。迫り来る首無しのバケモノ――もとい『デミウェポン』に牽制射撃を加えながら引き打ちをしかけた。
 デミウェポンの腕が素早く、そして複雑に変形する。スターキャノンと呼ばれる砲撃モードだ。
 筒状の先端部をこちらに向け、光の砲弾を発射してくる。
 光が赤みを帯びたことで、ヘルメットの集団――六実隊の兵は反応した。
「炸裂弾!」
 一斉に前後左右別々の方向へ飛び退いた。
 ゆるい放物線を描いた赤い光弾が空中で爆発。反応が遅れて爆発に巻き込まれた兵が焼かれ、地面を転がった。
『六実隊被弾』
『十倉隊――やれ』
 スナイパーライフルを装備して伏せていた十倉隊が超レンジから集中攻撃。
 たった三発のライフル弾が命中。その全てがデミウェポンの肉体を致命的に破壊し、大きく歪めた。
「人間をナメたな、首無し野郎」
 女性の声。凄まじい機動力で一気に接近。手にした高周波ブレードでデミウェポンの胴体を真っ二つに切断した。
 ボブカットの髪が遅れて下り、縦に走った右目の傷を露わにした。

 ここは鉄帝北東部の山々に囲まれた孤立した荒野。
 人類を攻撃する古代兵器の軍団『デミウェポン』の侵攻を食い止めるべく展開した、コーサイド部隊の任務地である。

●軍事のなせるわざ
 華やかな闘技場や屈強な市民の印象が強いゼシュテル鉄帝国だが、この国が国として機能する理由がきちんとある。
 それが軍事力であり、軍隊だ。
「闘技場で勝った奴が王になるっつールールだけなら、国はもっとドロドロしてた。力任せの犯罪が横行して、闘技場は裏取引の温床になってる筈だ、そうだろ?」
 煙草をくわえたまま語るボブカットの女、十倉。
 話を振られたヘルメットの女こと六実は銃の整備をしながらちらりとだけ振り返った。
「それ、ジブンに相づち求めてるんスか?」
 がくりと肩をおとす十倉。
「折角あたしが政治的でカッケーこと言ったんだから少しは乗ってこいよ」
「『個が群に、群が軍にかなわない人間力の基本法則が鉄帝国を国家たらしめている』」
「よりによって結論を先に言ってんじゃねーよ」
 縦傷のはいった目をぎらりと開く十倉。
 豊四季はそれを無視して銃の整備を続けた。
 と、その時。
 テントの入り口カーテンが開かれた。
「諸君。いい知らせだ。この防衛ラインに一時的だが追加戦力が投入されることになったぞ」
 髪を後ろにまとめた鎧姿の女性である。畳まれていた黒い翼が広がり、身体が浮き上がる。
「マジすか初富サン!」
「浮くな浮くな。他の部隊は別の防衛ラインに配置されてるんだろーが。おい初富、闘技場くずれのペーペー連れてこられても困るぜ?」
「安心しろ、実績は充分ある」
 そう言って、鎧の女こと初富は依頼書を翳した。
 ローレットへの正式な依頼書であった。

「や、鉄帝から依頼が入ったよ。軍事作戦の追加人員だそうだ」
 時は進んで所も変わり、『黒猫の』ショウ(p3n000005)が酒場で全く同じ依頼書を翳していた。
「依頼内容は南下してくる自律戦闘古代兵器『デミウェポン』との戦闘および破壊。現地の部隊と共同で行なうことになるみたいだね。
 といっても今回はお試し採用。デミウェポン3体との戦闘に加わってアドリブで戦うことになるみたいだ」
 ショウは依頼書をテーブルに置くと、イレギュラーズの側へと滑らせた。
「受けるかどうかは任せるよ。激しい戦闘にはなると思うから、注意してね」

GMコメント

【オーダー】
 コーサイド部隊と協力してデミウェポン『3体』と戦闘、及び破壊すること。
 これが成功条件となります。
 コーサイド部隊は元々統率のとれた3つの隊で構成されており、そこに加わって試しに戦ってみるという内容になっています。
 依頼としての戦闘難度はやや高め。

【デミウェポン】
 人間に似たフォルムの古代兵器。
 自律戦闘を行ない、人間よりもずっと強力。
 詳しい目的は分からないが、とにかく人間を攻撃し抹殺することを基本としている。例えるならターミネーター。
(――というところまでしか依頼書には書いていない。別に秘密というわけでもないらしいが、これから深く付き合うか分からない相手に詳しく話すのも気が引けるという様子のようだ)

 個体によって性能はある程度定まっているが、今回相手にするのは『アトランタ』と呼ばれる型式。通称首無し。
 首の無い人間のようなフォルムをしており、パワフルな格闘能力と腕を砲台化させて放つ搭載兵器スターキャノンが特徴。
 1体につき2~3部隊(約10人前後)を投入するのが基本とされている。
・パワフルな格闘(近列):相手を掴んで投げたり殴り飛ばしたり振り回したりといった力の使い方が可能。
・スターキャノン青(遠単):砲台化した腕で放つ射撃。光の弾を撃つ。
・スターキャノン赤(遠範):同じく砲台化した腕での射撃。空中で炸裂する弾を撃つ。

【コーサイド部隊】
 鉄帝のもつ軍隊のひとつ。任務は対デミウェポン戦闘におけるコーサイド戦線の維持および防衛。
 初富、六実、十倉の三部隊から構成されている。部隊名はそれぞれリーダーの名前。
 リーダーはローレットのトップチーム程度の実力をもつ。部下たちの能力はピンキリ。

・初富隊
 ハイテレパスによる指示や感覚拡張スキルによる索敵、全部隊の統率などの中心的能力をメインにすえた部隊。戦闘能力は勿論あるが、どちらかというと非戦向き。

・六実隊
 平均オブ平均。よく言えばバランスが良く、悪く言えば器用貧乏。他の部隊と連携する際にはきわめて重要な役割を果たす。
 どのレンジにも対応でき大体のことはこなせる。

・十倉隊
 部下たちが超レンジからのスナイプ集中砲火を浴びせ、リーダーの十倉が至近距離での強襲をかけるという火力に寄ったチーム。
 部隊のメイン火力でもある。

【アドリブ度】
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用くださいませ。

  • 全軍銃帯、コーサイドマーチ完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年11月27日 23時40分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ラノール・メルカノワ(p3p000045)
夜のとなり
明野 愛紗(p3p000143)
リノ・ガルシア(p3p000675)
宵歩
エト・ケトラ(p3p000814)
アルラ・テッラの魔女
ルウ・ジャガーノート(p3p000937)
暴風
ゴリョウ・クートン(p3p002081)
黒豚系オーク
メル・ラーテ(p3p004228)
火砲少女
アニーヤ・マルコフスカヤ(p3p006056)
鋼鉄の村娘

リプレイ

●コーサイド戦線
「これが鉄帝のコーサイド部隊か。本場の戦闘って奴を見せてもらおうじゃねえか!」
 自前の剣を担いで現われた『暴猛たる巨牛』ルウ・ジャガーノート(p3p000937)。
 拠点テントの周囲で様々な作業を行なう隊員たちを一通りに眺めていた。
 鉄帝民は筋トレしてるかバトルしてるかの二択みたいなイメージがあるが、コーサイド部隊の隊員たちは清掃や炊事をはじめとする家事全般とランニングや格闘といった基礎訓練を分刻みの徹底したスケジュールで日夜こなしていた。
 彼らの振るまいは戦士というよりも兵士であり、兵士というよりも軍人であった。つまり、訓練され統率された『軍』という巨大な生物とそのパーツである。
「お待ちしておりました。ギルド・ローレット――イレギュラーズの皆様ですね」
 敬礼をして立つ隊員に、『火砲少女』メル・ラーテ(p3p004228)が略式敬礼で返す。
「久しぶりに戦場らしい戦場に戻って来たなぁ。今回は心強い仲間もいるみてーだし……いっちょブチかまして、首無し野郎共を鉄クズに変えてやるか!」
「はい! スクラップアートを作るのが今から楽しみであります!」
 厳しい訓練と厳格な規律。その中で集団行動をするに当たって必要なコミュニケーション能力。
 鉄帝における軍事国家としての側面が、この場にはあふれていた。
「お、来たな。頼もしい顔つきじゃねーか。俺は十倉だ、よろしくな」
 すらりと背の高いボブカットの女性がやってきて握手を求める。
 『鋼鉄の村娘』アニーヤ・マルコフスカヤ(p3p006056)がそれに応じてやると、二人は口の片端だけを僅かにつりあげた。
「アトランタ型デミウェポン3体の迎撃作戦と聞いております。私たちはその補充人員とも」
「数会わせか救世主かは働きで見せて貰うぜ。『アンタ』にゃ言うまでもなさそうだがな」
 肩を強く叩いて去って行く十倉。
 言い方に含むものを感じた『宵歩』リノ・ガルシア(p3p000675)がわずかに首を傾げた。
「今のは?」
「軍人は手を握れば分かるものです。『どういう理由でなったか』も。彼女は私と同じ穴から出てきた軍人のようです」
 『ふうん?』と詮索をあえてしないように顎をあげて返すリノ。
「なんだか楽しみになってきたわ。銃声は耳について好きじゃなかったけど、ここでなら違って聞こえそうね」
「ああ。傭兵と軍人では似ているようで随分と違うな……」
 『濃紺に煌めく星』ラノール・メルカノワ(p3p000045)は同郷のリノと似たようなことを考えていたようだ。
「私の地元はずいぶんな有様だからな。軍人からは戦争のにおいがすると毛嫌いする者もいるが……」
 フットワークの軽さでいえばラサの傭兵は諸国随一とも言われ、かの大盗賊を追い払った実績にそれが現われている。
 しかし集団としての強固さは、鉄帝の軍人がずっと勝っているように見えた。
「軍人に混ざるのは初めてだが、うまく連携していきたいな」
「そッスねえ。ボクにもうまくできるっすかねえ……」
 右腕の義手をぐーぱーさせて加減を確かめる『自称みんなのコウハイ』明野 愛紗(p3p000143)。
「なに、心配はいらない。『うまくできるかどうか』が分からないからこその混合部隊なのだ。連携の仕方はこれから作っていけばいい」
 会話にさらっと入ってきた黒翼の女。地面から二十センチほど浮いた状態で敬礼をした彼女の胸には『初富隊:初富』と書かれていた。
「この部隊のリーダーを務めている、初富だ。早速だが、編成について話し合おう」

 会議テントの中で、『黒豚系オーク』ゴリョウ・クートン(p3p002081)たちはコーサイド部隊に加わるにあたっての編成方針を説明した。
「――って具合に、俺らは新たに2部隊を組んで作戦に当たろうと思う。名前は決めてないが敵の引きつけと耐久を目的として『Aチーム』と、砲撃を目的とした『Bチーム』を組んだ」
「なるほど。既存の部隊構成にうまく増設できそうだな。なんのオーダーもなくよくここまで考えてくれた。これは期待がもてそうだ」
 地図をはりつけたボードにアイコンをはりつけていく初富。
「現在アトランタ型デミウェポン3体が南下してきている。これを迎撃するには通常30人前後が必要とされているが、この部隊に配属している隊員は12名のみだ。ローレットの増援を含めても20」
「戦力不足か?」
「いや、密に連携した部隊は人数以上の強さを発揮する。暴徒11人とサッカーチーム11人の動きの違いを想像してくれればいい」
「なるほどね。それで、アトランタというのは?」
 それまで静かに説明を聞いていた『灰譚の魔女』エト・ケトラ(p3p000814)が写真に写っている首無し人間のシルエットを指さした。
「人を模したのは神経伝達や筋力による細やかな動きを再現し、多様な環境で活動する為。頭部を作らないのは弱点の隠蔽かしら?」
「いい分析だ。奴らは魔力的とはいえ人間と同様の五感を使って状況を感知しているため対人兵器が有効だが、器官を全身に細かく分散しているため極端に感覚を失うということがない」
「無駄のない戦略・殲滅的思考での設計ね……気に喰わないわ」
「その通りだ。奴らの侵攻には愛がない。それに、今回に関しては司令官もいない」
 初富がボードに並べたのは形の異なるデミウェポンたちである。
 小型の蜘蛛めいたものと、大型のムカデめいたものが写っている。
「本来デミウェポンは偵察や爆撃、そして連携をとるための指揮官機が存在する。だが連中の拠点から遠く離れたこの戦線まで発見されずに遠征できるのは人型のアトランタのみなのだ。戦略的には、我々コーサイド部隊をこのラインにとどめるための牽制といったところだろう」
「とはいえ、見過ごせば背後の町が攻撃を受ける、と」
 守らざるを得ない戦線。
 エトは腕組みをして、深く息をついた。
「状況は分かったわ。それじゃあ、早速……」
 テントの隅に置かれたスコップへと、目をやった。

●迎撃作戦
 火薬と砂と曇り空のにおいがした。
 雑草すらも枯れ始めたコーサイド戦線の平野に影。
 人間によく似た首無しシルエット。アトランタ型デミウェポンが落ち着いた歩行でこちらへ接近してくるのが見えた。
 距離にして100メートル強。
 これがどこから来たのか、まだ鉄帝の軍人たちは把握していない。
 北の山岳地帯からある日突然現われ、ここからもう暫く北にある村を一夜のうちに壊滅させたという。
 村あった戦力を含め、全ての住民を殺害して回るデミウェポンの情報をはじめにもたらしたのは、自警団の生首であった。馬の荷に放り込んだ青年の生首が霊魂となってまで届けた敵戦力の情報が、今この戦線を作っている。
『奴らがここまで南下してこれるのは、人間同様長距離移動に適したボディだからだと言われている。だが侮るな。戦闘力は人間の十倍はあるぞ』
 初富からのハイテレパス通信を受けて、エトは深く身構える。
 飛行によって高所をとり、ある程度俯瞰した視点から超視力によって通信を行なっているようだ。8人チームでは見ない、連絡に特化した位置取りである。
「軍隊ならでは……ね」
『六実隊攻撃開始。ローレットAチーム、配置につけ』
「よっしゃあ!」
 特殊警棒で腕甲を叩くと、ゴリョウは先頭に立って走り出した。
「交代だ。【怒り】を撒いてターゲットを引き受ける!」
『了解した。六実隊は援護射撃をかけて回避を妨害』
 初富の指示通り、六実隊の四人はアサルトライフルでデミウェポンに射撃をしかけた。
 回避や防御によってさしたる決定打になっていないように見えるが、これこそ格上相手の基本戦術である。
 集中攻撃による回避ペナルティを発生させゴリョウたちの招惹誘導の成功率を引き上げるのだ。
「テメェらの相手は俺らだ! ちょっと遊ぼうやッ!」
 ゴウ、とえもいえぬ咆哮が響く。
 デミウェポンの一体がゴリョウにターゲットをうつし、固めた拳で殴りかかってくる。
「一体捕まえた。残りを頼む!」
 名乗り口上は広範囲に【怒り】を付与するというとても強力な性能がある一方、クリーンヒットと特殊抵抗突破に成功しなければ空振りも同然。
 ……が、全く同じでは無いのが先程述べた回避ペナルティである。ノーダメージであっても攻撃であるため相手の回避を一発分しっかりと妨害する。
 複数人で同時に仕掛けることに、大いに意味が生じるのだ。
 ラノールが勢いよくゴリョウの右側につくと、同じく左側についたジャガーノートと顔を見合わせ、小さく頷きあった。
「そっちじゃねぇ! こっちだ!」
「かかってこい!」
 残る二体のデミウェポンがラノールとジャガーノートめがけ殴りかかってくる。
 ゴリョウの拳が、ジャガーノートの剣が、ラノールのマトックがそれぞれデミウェポンの拳を受け止めた。
「攻撃対象が分散した」
「いい滑り出しね」
 名乗り口上の付与割合が確実でないにも関わらず集中攻撃の対象になりやすいのは、一度殴った対象へのダメージを放っておくくらいならそのまま集中して殴り続けた方が効率がいい場合があるからだ。
 本当にそうすべきか否かは何度か攻撃を試行しなければ分からない。(俗に述べる『攻撃が通りづらいなら』という条件付けが成立するにも試行を要する。敵も同条件だ)
 その対象がはじめから分散してしまうと、とりあえず全員分試行しなければならなくなってくる。それを大局的に回避できるほどの戦術判断能力を、アトランタ単体では持ち合わせて居なかった。
 エトはストレリチアの花をさかせると、花弁を風にのせるようにしてゴリョウたちへ順繰りに回復を施していく。
 耐久力に関しては平均的なジャガーノートを中心として、回避でダメージを大幅に抑えるラノールと高等な防御性能でダメージを開眼するゴリョウへのヒールカバー。
 デミウェポンの攻撃分散のこともあり、あとしばらくは耐久がききそうだ。
「顔がなきゃイケメンかどうかもわからないし、つまらないわねぇ」
 リノは砲撃担当のBチームと十倉隊に合図を出し、デミウェポンへと攻撃を仕掛けた。
 相手の背後に回り込み、肘関節にナイフをねじ込むように突き立てる。
 ギギギ、という軋む金属音。デミウェポンの銀と黒の混ざったような色合いと丸みを帯びたデザインに、リノは小さく首を振った。
 初富の通信による射撃のカウントダウン。タイミングを合わせてリノが飛び退いたきっかり一秒後、ライフル弾がデミウェポンの腰部分に命中した。

 塹壕から顔を出すアニーヤ。ガトリングガンの狙いをつけると、デミウェポンめがけて乱射しはじめた。
「どんどんいきましょう」
 その横でライフルをリロードするラーテ。
「おかわりはどうだ、首無し野郎!」
 次々とデミウェポンにライフル弾を打ち込んでいく。
 その更に横では愛紗が突きだした義手の手首を開放するようにして砲化。魔術弾を連射した。
「塹壕からじゃうまいこと射撃ラインをとりづらいっすねえ」
「前衛を仲間に任せて塹壕にこもれるだけ贅沢なものです。と、まずいですね。回避!」
 アニーヤが大きくその場から飛び退くと、デミウェポンが爆発するスターキャノンを発射してきた。
「おいおいこっち狙うの早すぎねえか!」
 ラーテは深めに掘った塹壕の床で身を屈め、愛紗は義手をシールドモードにして防御を固めた。
 穴と土嚢で作った塹壕がたちまちのうちに崩壊する。
 愛紗たちは予め作っておいた別の塹壕へと走り始めた。
「ピンチ!? ボクらピンチっすか!?」
「落ち着いて。むしろ好都合です。敵が攻撃目標を定めていない」
 よく見れば、別のデミウェポンは十倉隊の砲手めがけてスターキャノンを乱射しており、もう一体は斬りかかった十倉やリノたちと至近距離でぶつかり合っていた。列攻撃の特徴を活かそうとしているが、囲まれた状態で無理にそんな攻撃を選択したせいで味方の火力を集中させづらくなっているようだ。
 そうなれば余裕のひとつもわくというもの。
「『獲物を一つやるからお前たちの力を示して見せろ雇われ』とか言われたらどうします?」
「傭兵部隊みたいな言い方っすねえ」
「言われてみれば、確かに」
 アニーヤは塹壕から幻影のデコイを露出させつつガトリングガンを再セット。
 デコイが吹き飛ぶのを確認してから、デミウェポンめがけて再びの射撃を始めた。
「おっ、いい位置っす!」
 愛紗がゆるく噛んだ唇を舌先で舐め、腕を大きな砲台へと変形、展開させた。まるでデミウェポンのスターキャノンだが、性能は全く別。『超砲』と名付けているビーム砲撃である。
 直撃したデミウェポンたちがおおきくのけぞる。
「もらった――!」
 伏せた姿勢で塹壕から横に飛び出したラーテが瞬時に狙いを定め、ライフルのトリガーを引いた。
 ライフル弾がデミウェポンの胸を貫通。大きくぐらつき、そのまま転倒した。

『十字砲火だ。六実隊、ローレットAチーム、被害を押さえつつ確実に仕留めろ』
「任せて頂戴」
 エトは花弁を沢山握り込むと、傷ついたジャガーノートへと撒いていく。
 攻撃するにも仕方というものがある。被害覚悟で火力を投入する時は倒せる見込みが確実にあるときだ。格上相手ではその見込みが崩れることが往々にしてあり、最悪こちらの戦力を大幅にえぐり取られ逆転されてしまうことがある。
 手負いの虎を倒すように、トドメをさすその一瞬まで慎重さをならないのだ。
「俺の一撃だ! 有難く喰らえガラクタ共ォ!」
 ジャガーノートの剣がデミウェポンの鋼めいた腕を豪快に切断する。
 続けてラノールのマトックが胸に突き刺さり、動きを無理矢理に固定させる。
「ゴリョウ殿!」
「応ッ!」
 オーク必殺『囲んで棒で殴る』。
 戦術の基本であり人類が道具を用いてはじめに行なったとされる集団戦術である。
 多くの生物は前後左右すべてを同時に対応するようにできていない。ゆえに囲んでの連続攻撃がシンプルに強いのだ。
 それを突き詰めたとも言える幻棍『咸燒白』。エルフ鋼によって形成された棍棒がデミウェポンの頭部……もとい首の付け根を粉砕した。
 膝から崩れ落ちるデミウェポン。
 仲間の敵討ち……という情緒があるようには見えない残りの一体が、ゴリョウの首を掴んで無理矢理に振り回した。
 ラノールたちが薙ぎ払われ、エトにキャッチされる。
『引くな、踏み込め』
「「当然」」
 十倉のブレードがデミウェポンの腕に食い込み、無理矢理に脇腹を晒させる。
 ナイフをあえて両手でしっかりと握ったリノはそのまま突撃の構えでぶつかった。
 デミウェポンの脇腹にリノのナイフが深々と刺さり、黒い柄に光る星の彫刻だけが残った。
 よたり、よたり、と後退するデミウェポン。
 もはや反撃の力がないことを察したリノは、二本指を唇へとつけた。
「こっちみたいにステキなリーダーさんがいなくて、残念だったわね」
 デミウェポンの胸に二本指を押しつけ、突き放すように押してやると……その力のままにデミウェポンは仰向けに倒れて動かなくなった。
 デミウェポンの迎撃作戦は、こうして終了したのだった。

●交流
 と、これで終わりではない。
「ぶはははっ、腹いっぱい食って明日の活力にしてくんな!」
「スペアリブと卵焼きまであるのね? 嬉しいわぁ」
「うう、美味しそうな匂いがするけど我慢よ……って、皆もう食べるの!? ずるいわ、わたくしの分も残しておいて頂戴!」
 ゴリョウが自慢の料理道具を使ってコーサイド部隊のメンバーに料理を振る舞っていた。リノやエトたちが集まり、早速一緒にありついている。
 ひたっすらに食べるラノールやジャガーノートや、好きなメニューを探してみる愛紗やアニーヤ。
「牛さんないんすかねビーフ」
「鉄帝の牛は危険ですから」
 そんな中で、スペアリブにがっつくラーテに初富が声をかけてきた。
「お見それした、ローレット。素晴らしいチームプレイだ。この分なら指揮を任せてもいいかもしれないな」
「ふーんまあ……あ、指揮!?」
 ライスボールを頬張って頷く十倉。
「今度後方の学兵に会わせてやんよ」

 コーサイド部隊との付き合いは、まだまだ続きそうだ。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete!
 ――連携の精度の高さにより初富隊、十倉隊、六実隊の信頼を得ました。
 ――シナリオライン『デミウェポン編』が解放されました。
 ――隠しシナリオライン『学兵編』が解放されました。

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