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シナリオ詳細

<刻印のシャウラ>占領区画の解放を!

完了

参加者 : 8 人

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オープニング

●新生・砂蠍
 ラサ傭兵商会連合で起きた大討伐から逃げ延びた、『砂蠍』のキング・スコルピオ。
 そいつが束ねた幻想の盗賊達は、一大勢力と化していた。
 正体不明の資金力と人脈を発揮し続けている彼らは、勢力を拡大しながら幻想の辺境を中心に荒らし回り、更に力をつけている。
 自分達の利益を最優先にする貴族への対策として中央に牽制を入れつつ動く彼等はさながら盗賊団のレベルを超え、軍隊の如しであった。
 これまで『新生・砂蠍』は収奪等を中心に動いていたが、この程、別の動きが見えてきた。
 彼等はこれまでに溜めた力で強烈な部隊を編成し、幻想南部の貴族領、街、村へ本格的な侵攻を開始したのだ。
 既に失陥した拠点もあるし、まだ耐久している拠点もある。
 幻想貴族達はこの暴挙に怒り、すぐさまに本気の部隊を派遣せんとした。
 ところが、『サリューの王』クリスチアン・バダンデールの諜報によれば、『間が悪いこと』に幻想北部、鉄帝国との国境線で鉄帝国が侵攻の兆しを見せているという。
 北部を抜かれれば国防上に最悪の問題が発生する。故に貴族は国境線に戦力を集中しなければならない。
 『不運にも』挟撃、二面作戦を余儀なくされた貴族達がここぞと頼るのは……ローレット、イレギュラーズである。

●砂蠍の新たな勢力とは……
 『新生・砂蠍』――。
 幻想ローレットの壁には、この名前の載った依頼が並ぶ。
「幻想南部に、この盗賊団が……いえ、軍隊と呼ぶべき集団が侵攻を開始しています」
 この事態に、『穏やかな心』アクアベル・カルローネ(p3n000045)は多少の戸惑いもみせる。
 それでも瞳の奥はしっかりとした眼差しでイレギュラーズ達をみつめているのは、彼女のギフトの影響か。
 場数を踏めば、アクアベルも情報屋としてどんな事態にも万全な対応をしてくれるかもしれない。
 さて、『新生・砂蠍』は最早盗賊団の域を超え、軍隊化している。そして金品ではなく、どうやら国盗りを狙っているようだ。
「謎の資金力、人脈、盗賊王のカリスマ……。現在、『新生・砂蠍』はかなり力をつけています」
 すでに、幻想南部の一部地域では、占領された場所すらある。
 幻想貴族はこの対応に動きたいところだが、『間が悪いこと』に北部国境線で鉄帝が軍を動かし、幻想北部に攻め込もうとしているという。
 その話はとある諜報筋で分かった情報らしいのだが、国防上こちらを優先してせざるを得ない状況だ。
 私もまだ情報屋としてまだまだですが、とアクアベルは前置きして。
「鉄帝と砂蠍に、接点を見出すことが出来ません。鉄帝も気質的にそうした行いを嫌うと思うのですが……」
 ともあれ、現状はイレギュラーズに頼らざるを得ないというのが幻想貴族の現状らしい。

 アクアベルが依頼してきたのは、やはり幻想南部の街に攻め込んできた『新生・砂蠍』の撃退の話だ。
「敵勢力がかなり多いので、街から追い出していただくだけでかまいません」
 それでも、状況はかなり厳しい。
 敵の数は30人ほど。ルボル、アッシラの2部隊が侵攻し、街の一区画をすでに占領してしまっているとのことだ。
 占領した通りの両側を封鎖した敵は街の住民30人ほどを大部屋のある家に集めて人質にしつつ、さらなる攻勢のタイミングをはかっている。いずれは、街を全て我が物とするつもりなのだろう。
「ゆくゆくは領地化を目論んでいると思われますから、進んで住民を手にかけることはないと思います」
 しかしながら、無策で攻め込めばどうなるかは分からない。人質として盾にされ、傷つける恐れすらある。
「ただ、隙もあります」
 どうやら、この2部隊、あまり仲が良くないらしい。
 ルボル部隊は元々盗賊団。アッシラ部隊は元々騎士崩れの砂蠍メンバー。
 両者衝突まではいかないが、どうにもウマが合わない部分もあるらしい。
「非常に難しいですが、うまく相手の衝突を誘えたなら……」
 相手を壊滅させ、人々を救うチャンスが訪れるかもしれない。
 幸い、街の自警団6名が現地で助けてくれる。
 彼らもまだまだ戦闘経験は浅いが、盗賊あがりのルボル部隊員程度なら十分戦う事ができる力量はある。
 自警団を合わせても倍いる相手と対せねばならないが、盗賊団上がりのルボル部隊員はさほど強い部隊ではない。この辺りが今回の事態の突破口ともなるだろう。
「ただ、油断は禁物です。敵はすでに単なる盗賊の域には留まっていませんから」
 真摯な瞳で見つめてくるアクアベル。
 その言葉はギルドマスター、レオンの受け売りだが、彼女が情報屋としての気質を備えているのは間違いないようだ。
 最悪、幻想南部が砂蠍に支配される危険もあるだけに、この作戦には力を入れねばならないと、メンバー達も認識して。
「難しい作戦にはなりますが、どうか、『新生・砂蠍』から街を救ってください」
 最後に一礼し、アクアベルは説明を終えたのだった。

GMコメント

イレギュラーズの皆様、こんにちは。
GMのなちゅいと申します。
ハード依頼ですので、お覚悟を願います。

●目的
「新生・砂蠍」団の撃退。

●敵……新生・砂蠍
 2部隊が展開し、街道沿いの街の一区画を占拠しております。
 なお、今回隊を率いると思われる少年ライナーの姿は確認できません。

◎ルボル部隊
 「<蠢く蠍>盗賊団を指揮する少年」に登場した盗賊団が
 部隊に昇格しております。
 とはいえ、盗賊然とした身なりは変わらないようです。
 
○部隊長……ルボル
 大柄でガタイのよい40歳前後の大男です。
 1mもある刃がついた大斧を担ぎ、攻撃してくる脳筋です。
・爆砕斬(物至単・火炎)
・轟烈断(物近列)
・雷撃波(神遠扇・痺れ)

○部隊員……20人
いずれも、柄の悪い20~30代男性。
個々の力は冒険者の皆様と同等かそれ以下。
近距離主体のナイフ持ち12体(護身銃も所持)、
遠距離主体の弓使い8体(護身用サーベルも所持)おります。

◎アッシラ部隊
 20代の元男性騎士のみで構成された部隊。
 砂蠍メンバーである少年ライナーが目をかけるアッシラを中心とした部隊。今回は一部の部隊員のみ参加しています。
 ルボル部隊とは馬が合わない様子です。

○部隊長……アッシラ
 禍々しい鉾を持つ赤い軽装鎧の男です。
 元々からの砂蠍メンバーであり、ライナーに従っております
 今回は、ルボル部隊を支援する形で展開しています。
 よそ者であるルボル部隊員の監視も兼ねているようです。
・ローリングスラスト(神遠扇・崩れ)
・ブレイブリークリーブ(物近列)
・デスペネトレーション(物中貫・致命)

○部隊員……6人
 動きやすいよう軽装鎧を纏い、槍、鉾槍を遣う者達。
 力量はルボル部隊員よりやや格上です。

●NPC
◎自警団……6人
 この集落の自警団。
 剣2人(リーダー含む)、弓2人、術士2人。
 ルボル部隊員なら1対1でも引けは取りません。

●状況
 現場は石畳の町で、住居も岩、レンガで造られた区画。
 敵部隊は街の一区画、500m程度ある街路を占拠し、さらなる攻勢の機会を窺っています。
 通りに砂蠍の部隊員達が散開し、イレギュラーズ達などの奇襲に備えています。部隊長2人の居場所は不明です。
 また、捕えた30名ほどの住民を大部屋のある家に集めているようです。
 
●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。


 それでは、よろしくお願いいたします。

  • <刻印のシャウラ>占領区画の解放を!完了
  • GM名なちゅい
  • 種別通常
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2018年11月15日 21時00分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ランドウェラ=ロード=ロウス(p3p000788)
黄昏夢廸
夜乃 幻(p3p000824)
『幻狼』夢幻の奇術師
リカ・サキュバス(p3p001254)
瘴気の王
ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)
月夜の蒼
クローネ・グラウヴォルケ(p3p002573)
幻灯グレイ
アベル(p3p003719)
失楽園
シュリエ(p3p004298)
リグレットドール
レン・ドレッドノート(p3p004972)

リプレイ

●厄介事の前に
 幻想南部のとある石畳の街に、イレギュラーズ達は姿を現す。
「死にたい奴らがいるようだ」
 両目を細め、『黄昏夢廸』ランドウェラ=ロード=ロウス(p3p000788)は露骨に嫌悪感を示す。
「蠍か、惜しいな」
 レン・ドレッドノート(p3p004972)は本音で呟く。アウトローな奴らなら、出会い方が違えば、良き隣人になったのではないかと。
 これから交戦する相手は悪名高い『砂蠍』。とてもではないが、仲良くできそうな相手ではない。
 集まる街の住人達が不安そうに語り合う中、『雨宿りの』雨宮 利香(p3p001254)は小さく唸って。
「この規模、最早タダのごろつきではなさそうですねえ」
 この街の一角は現在、『新生・砂蠍』の2部隊によって制圧されている。
 事前情報によれば、数は合わせて30人弱。
「……脳筋盗賊団に騎士崩れ……砂蠍の部隊は全くバラエティ豊かな様で……ハ、笑えもしないッスね……」
 『傷だらけのコンダクター』クローネ・グラウヴォルケ(p3p002573)は、本気で悪態づく。
「……連携は兎も角、それ単体で厄介だってんスから……」
「全く、どうしてこうも面倒な案件が続くのかな。」
 クローネの言葉に、『蒼ノ翼』ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)も同意する。
 そいつらは、区画の住人30人ほどを人質としているのだ。
「街の人々を人質にするとは、卑怯な手を使うもので御座いますね」
 敵の行為を、『『幻狼』夢幻の奇術師』夜乃 幻(p3p000824)は、客観的に分析する。
「逆を言えば、卑怯な手を使わなければならないほど、僕達や貴族に怯えてるとも言えるでしょう」
 実際、幻が言うように、区画に散開して警戒する敵はさらなる侵攻の機を窺っている。
「2部隊相手とか、人使いが荒くないかね……。ぼやいても仕方ないか」
「またしんどい依頼にゃー……。まあ、やってやるけどにゃ!」
 ルーキスが不承不承といった態度で依頼の為に動き出すと、『リグレットドール』シュリエ(p3p004298)も多少この後の展開にげんなりしながらも、気合を入れる。
「やれやれ、なんというかこういうドンパチは俺の領分じゃないんですがね」
 『破片作り』アベル(p3p003719)も1つ嘆息し、気を取り直して。
「ま、いいサ。俺は俺の仕事をするだけですよ」
 今回の依頼も、アベルにとってはスコープから覗いて銃爪を引くだけのお仕事とのことだ。
 幻もまた相手は戦いを覚えただけの盗賊であり、所詮は烏合の衆でしかないと断言する。
「頭数が多ければ、必ず勝てる訳ではない事をみせて差し上げましょう」
 幻の言葉に同意するメンバー達は早速、捕まった人々の解放、そして、『新生・砂蠍』2隊の撃退へと当たり始めるのである。

 作戦を開始するにしても、こちらは駆けつけた街の自警団6人を合わせ、14人で倍の敵を相手にせねばならない。
「さて、どう動くべきかな」
「やることの確認をやろう」
 ルーキスの言葉を受け、ランドウェラは全員を集めて作戦会議を始め、取り急ぎ概要を幻が取り纏めていく。
 14人を人質班、挑発班、そして武力班の3つに分けての作戦。
 自警団6人と共に人質の救出に当たることとなった利香は、自警団メンバーに助力を仰ぐ。
「これ以上、犠牲を出す訳にはいきません、皆さん力を貸してください!」
 すると、彼らはこくりと頷き、全力を尽くすと利香に誓ってくれたのだった。

●盗賊どもをかく乱する為に……
 作戦は、唯一挑発班として動くレンが『新生・砂蠍』メンバーに接触するところからスタートする。
 忍び足で彼が接触したのは、いかにも下っぱという見た目のルボル部隊員だ。
「俺たちどうやら、アッシラ部隊に監視されてるようだ。苛立つな」
「ああ、上から目線で気にくわねぇ……」
 盗賊上がりの隊員達はレンに同意し、待遇の不満を漏らす。
 流れで彼は他の隊員や隊長ルボルの場所について聞き出し、この場を離れていった。
 その間、ルーキスの操る鴉がルートを確認し、レンに方向を示す。大勢の隊員はもちろん、隊長に出くわすわけにはいかない。
 また、シュリエもファミリアーで小鳥を召喚し、敵に気付かれぬ50m上空から超視力を使ってその配置を……特にアッシラ隊を観察していた。
 彼女は一旦その配置を把握した後、練達上位式でアッシラ部隊員を模した軽装騎士風の式神を作り出す。
 そして、その式神を頭の悪そうなルボル隊の1人にぶつけ、敢えて持たせた手紙を落とさせて走り去らせる。
「んあ……!?」
 それを読んだ隊員は手紙を手に、慌てて走り去る。隊長へと報告に向かったのだろう。
「……後は、どこまで脳筋かに頼るしかねーにゃ」
 そんな、シュリエの思惑に反して。
『特異運命座標達が近い内に街に到達する。予定通り交戦で盗賊上がり共を半壊させろ。我らも後に合流する』
 シュリエの作成した手紙を読んだ中年男は、にやりと笑う。
「なるほど、こいつは使えるな」
 隊を率いる大斧を担ぐガタイのよい男、ルボルはにやりと口元を吊り上げた。

 程なくして、レンはアッシラ部隊員と接触する。
「ルボルたちどうやら、矢張り蠍を裏切りそうだ」
「何……?」
 人数調整で入った者だと主張するレンの言葉に、アッシラ部隊員は顔を歪める。
 だが、ルボル部隊員とは違い、こちらは情報には慎重になっている。
「ルボルの野郎、蠍様を軽視してたぜ」
「そうか」
 素っ気無い言葉を返し、その隊員は去っていく。
 レンはこちらに余り手応えを感じなかったが、アッシラ部隊が侵入者情報を察して向かったこともあり、仲間と合流することにしていた。
 さらに、クローネはデマを広めようと偽者の密書を作り、さりげなくアッシラ部隊員が目に付く場所へとファミリアーに置かせ、その場から離れさせた。
『ルボル隊は手柄を一人占めする。イレギュラーズの襲撃に合わせて、味方だと思っているアッシラ隊を討ち取れ』
「ふむ……」
 それを手に、アッシラ部隊員は報告の為にと隊長の下に向かう。
「……脳筋のフリは流石に難しいが、……人心掌握術が少しでも役に立ってくれればいいんスがね」
 ファミリアーを通してクローネは隊員の背中を見つめつつ、そのファミリアーを自らの下へと戻すのだった。

●交戦の間に人質救出を
 さて、武力班となるイレギュラーズ達は敵……アッシラ部隊員が集まる場所に向かう。
 隊長はルボルと接触を試みているらしく、この場にはいない。人質のいる場所からも離れている為、奇襲するには絶好のチャンスだ。
「姿の見えん奴がどう出るか怖いな」
 ランドウェラは、ライナーなる少年がルボル部隊の絡んだ事件を気に掛け、瞬間記憶で覚えておいていた。なお、現状、その出現情報はない。
「備えあっては憂いなし、というやつさ」
 情報によれば、ライナーという少年は念力弾を使う長距離攻撃を好むらしい。だからこそ、ランドウェラはこの少年による不意打ちを警戒していたのだ。
 レンが戻ってきたタイミングで、ルーキスはファミリアーを空へ放ち、敵の挟撃、増援に備える。
 その上で、メンバーはアッシラ隊へと仕掛けるのだが……。
「やはり、敵か!!」
 アッシラ部隊は元騎士が集うという。どうやら、こちらの諜報活動は筒抜けだったらしい。
 一般的な倫理から外れ、下衆になり下がった盗賊団員達。
 しかし、レンはそいつらの在り方を否定しないと本人達に告げて。
「戦う為に生まれてきたのは、俺たちもお前たちも同じだろ?」
「貴様は先ほどの……っ!」
 隊員の1人がレンを見て叫ぶと敵は揃って槍や鉾槍を構え、イレギュラーズ達へと突きつけてきた。
「俺は俺の仕事をするだけ……と、言ってはみましたが」
 アベルは白銀のライフルを携え、敵から距離を取って。
「仲間に美人が多いんでね。死なれちゃ目覚めが悪いんですよ」
 互いがぶつかり始めたところで、彼はその引き金を引いた。
 その隙に、利香は自警団メンバーを連れて敵に気取られぬよう、別の街路を移動する。
 捕まる人々の恐怖、救援を求める祈る感情を探知し、利香は仲間が事前に当たりを付けた建物へと向かう。
 混乱する街中、どうやらルボル部隊も始まった戦いへと駆けつけていたらしく、彼女は警戒の感情もサーチして敵を避けて進んでいたようだった。

 さて、アッシラ部隊と交戦を開始したイレギュラーズ達。
 敵が扱うのは長物。その為、多少隊員達は距離をとってその切っ先をメンバーへと突き入れてくる。
 混戦になっていないのなら、格好の的。
「殲滅の時間のようだ!」
 ランドウェラは戦いに高鳴る鼓動と共に赤き彩りによって、周囲の仲間を鼓舞する。
 さらに、彼は痛みを覚えながらも右手で呪符を抱き、左手で魔力を発していく。
 丁度そこに駆けつけてきたルボル隊員の姿に、シュリエはほくそ笑んで。
「おおっと、そんなにルボル隊とやらを盾にしたいにゃー?」
 シュリエはルボル隊の不信感を煽りつつ、破壊のルーン『H・ハガル』を描いて不可避の雹を戦場へと降り注がせる。
「てめぇら、よくも……!」
「待て、落ち着け!!」
 ルボル部隊が詰め寄ってきたことで、アッシラ部隊はイレギュラーズへ攻撃に集中できなくなってしまう。
 その間により多くの敵を手早く削ろうと、『降魔の禁書』を手にしたルーキスは前方へと迸る雷撃を放つ。
 アベルもまた、白銀のライフル『白い死神』で敵を死の凶弾で撃ち抜く。流れ出る血に、隊員達は僅かに戸惑いもみせていた。
 そこへ、幻も召喚物を敵に向かわせ、アッシラ部隊員の身体を傷つけさせていく。
 順調に攻めているようにも見えるが、敵も元騎士らしくこちらの隙をついて的確な挟撃をしてくる。
 距離を取るメンバーが多いこともあってか、前衛の負担がかなり大きくなっていた。
 レン、クローネは相手の槍を浴びながらも、攻勢を強める。
 近場の1体を狙うレンは風の如く相手の態勢を崩し、素早く投げ飛ばす。
 クローネも有毒ガスの霧を発し、部隊に関わらず毒に侵して敵の体力を削いで行く。
 だが、やや遅れ、赤い軽装鎧を纏う隊長アッシラが登場したことで、状況が少しずつ変わっていく。
「……よくも、我等を翻弄してくれたな」
 アッシラが禍々しい鉾を携えたことで、レンはそいつの前に立ちはだかった。
「貴様の全力で頼む。俺も己の力を出し惜しみしない」
 自身がラドバウの拳士だと彼が名乗ると、アッシラも小さく唸って。
「ならば、試させてもらおうか」
 そうして、アッシラは真っ直ぐ飛び込んできたのである。

 一方、人質班の利香。
 彼女は無事に人質達が捕らえられた建物へと侵入。仲間達がうまく敵の気を引いているのか、こちらは次々に人々を解放していく。
「さあ、急いでください、敵が来ないうちに……!」
 ほとんどの人質を解放し、自分達もという算段となった頃、ゆっくり近寄る影が。
 利香は冷や汗を流しつつ、その影の前へと立ち塞がっていくのである。

●人質の安全を……!
 すでに、アッシラ部隊員は倒れる者が出始めていた。
 ランドウェラはアッシラ部隊の1人をルボル部隊員に押し込めるように、青い衝撃波を放って相手の衝突を誘う。
「アッシラ様は元騎士だというのに、人質を盾にしなければ正々堂々攻撃もできない軟弱者なのですか? プライドがない方なのですね」
 さらに、防御態勢を取る幻も、治癒魔術で仲間の回復に当たりつつアッシラを煽る。
「人質だと……?」
 交戦しながら、アッシラは幻の言葉でイレギュラーズ達の狙いを察する。
 また、大分交戦しているのに、ルボル本人が現れないこともアッシラだけでなく、イレギュラーズ達も気にかけていた。
 ルボル部隊員もちらほら駆けつけてくるが、アッシラ隊に睨みを利かせつつ、申し訳程度の支援しかしていない感がある。
 イレギュラーズ達もこれなら、アッシラ隊を全力で叩くことができる。
 もっとも、ルーキスなどは部隊に関わらず、ライトニングを放って両方を焼き払っていたが。
 ある程度連発したところで、ルーキスは漆黒の翼狼呼びへと切り替え、敵をその爪牙で倒していたようだ。
 アベルもまた魔弾を死の凶弾へと変え、密集する両部隊員を纏めて撃ち抜く。実に格好の的だ。
 クローネはアッシラ部隊員が減ってきたことで、アッシラを狙う。
 放った氷の鎖でできるだけ隊長の動きを封じようとし、シュリエもアッシラを抑えつつ『ルーン・H』で包み込む部隊員を1人、また1人と倒していく。
「……くっ!」
 レンは自らの拳で衝撃波を伴い、アッシラを攻め立ててはいた。
 しかし、相手もその力量を見せつけ、確実に鉾で彼の急所を貫き、その体から血を流す。
 シュリエも一緒になってアッシラを抑えていたが、相手が大きく鉾で纏めて切り払った一撃によって、2人は共に血飛沫を上げてしまう。
 途絶えかけた意識を、レンもシュリエも運命で繋ぎ止めようとしていた。
「砂蠍の皆さん、残念でしたね……!」
 そこに駆けつけてきたのは、傷を負ってやってきた利香だ。自警団も3人脱落していたが、もう3人は彼女に付いて来ている。
「頼みの綱の人質はもう、とっくに逃げ出してますよ!」
 彼女は人質を逃がしながらも、人質のカバーに入って逃がすのに回っていた。
 大柄な敵との交戦。そいつは大斧を振るい、自警団メンバーを次々に傷つけ倒していく。
 さらに、人質を守る利香の護りを打ち砕き、彼女を一度は地を這わせかける。
 それでも、利香も倒れまいと運命の力で立ち上がり、なんとか感情探査を使ってこの場へと駆けつけたのだ。
 さらに、ふわりと飛んで来た念力弾がアッシラへと何やら伝達した後、消え失せる。
「引くぞ。この区画は放棄だ」
 そこで刃を収めたアッシラは隊員を率いて、この場から離れていく。
 アッシラの深追いも考えるメンバー達だったが、そうも行かない。
「……ったく、しぶてぇ姉ちゃんだぜ」
 利香が相手にしていたのは、大斧を担いだ大男。隊を率いるルボル本人だった。

●元盗賊団団長ルボル
 ルボルがわざわざアッシラの離脱を待って現れたのは、クローネの流布が当たらずとも遠からずといったところか。
 ただの脳筋かと思いきや、元盗賊団団長だったこともあって小細工する程度の頭は持っていたらしい。
「敵は疲弊してやがる。一気に行くぜ!」
 ルボルの掛け声は、10人程度残る隊員の士気を上げる。
 イレギュラーズ達も疲弊しており、ここが勝負どころ。
 シュリエがルボルにもブロックを行い、鴉の鳴き声の幻聴を起こして敵を攻め立てる。
 同じく、レンもルボルの抑えに当たって相手に拳を一発でも多く叩き込み、利香が疲弊する彼らの護りに動いてルボルを魅了しようと動く。
 幻もなんとか戦線を持たせようと回復を続けるが……、万全な状態のルボルはニヤ付きながらも激しく彼らの体を大斧で切りつけてくる。
 先に仲間の庇いに当たった利香が力尽き、続き、アッシラ戦での負傷が大きいレンが地を這ってしまう。
 気付けば、部隊員と交戦していた自警団メンバーも数体を撃破した後に全員が地を這っていたようだ。
「ハハハ、じっと待っていた甲斐があったぜ!」
 次々にイレギュラーズや自警団を倒し、ルボルは気分良さげに高笑いした。
 部隊員を徐々に倒していたことで、他メンバーもルボルの撃破へと移行していくが、敵は元盗賊団と思えぬほどの強さを誇る。
 抑え付ける相手へクローネは毒の薬瓶を投げつけ、アベルも愛用のライフルから弾丸を撃ち込み続けていく。
 だが、敵の大斧から繰り出される雷撃波がメンバーを纏めて灼き、クローネ、アベルの2人はパンドラの力を使って踏み止まることとなる。
 かなり苦しい状況もあり、攻撃の合間に回復を入れるメンバーも目に付く。
 ランドウェラは緑の柔らかな輝きを放ち、仲間達が少しでも戦えるようにと癒しに当たる。
 これ以上仲間が倒れぬようにと、ルーキスも天星と自然の力を宿す天球儀より零れ落ちる光で仲間を癒す。
 それでも、ルボルの猛攻に耐えるのは厳しい。
 シュリエは幾度目かの光明の白鴉で、ルボルの巨体を貫いた。
 敵は大きく状態を揺らがしたが、倒すには至らない。
「……残念だったな」
 口元から血を垂らしながらもにやりと微笑んだ敵は、人形の体躯を持つシュリエの身体に大斧を振り下ろす。
 裂かれた体からは霊力が流れ出し、シュリエは今度こそ意識を遮断してしまう。
 しかし、その機をアベルが逃さない。
 そこまで堅実な立ち回りをしていた彼は近づいてきたルボルへと追撃し、全身全霊で大喝を吐き出す。
「くそっ、この、俺、が……」
 ダメージが重なったルボルは血を吐いて膝から崩れ落ち、石畳の上にその巨体を横たえたのだった。

●街は解放したものの……
 なんとか『新生・砂蠍』を退けた面々。
 解放した街の人々は大いに喜び、イレギュラーズ達や自警団らへ礼の言葉を掛けてくれるものの、皆疲労困憊といった様子。
 手当てを受けるメンバー達を背に、ルーキスは最後まで敵の出現に警戒を怠らない。
「何事もなければ、それでいいしね」
 戦闘前、ランドウェラが言っていた少年らしき影はあったものの、今回は現れることはなかった。
 撤退したアッシラ隊を含め、『新生・砂蠍』が次の手を打ってくるだろうと、メンバー達は疑いもしないのだった……。

成否

成功

MVP

リカ・サキュバス(p3p001254)
瘴気の王

状態異常

リカ・サキュバス(p3p001254)[重傷]
瘴気の王
シュリエ(p3p004298)[重傷]
リグレットドール
レン・ドレッドノート(p3p004972)[重傷]

あとがき

リプレイ、公開です。
MVPは人質解放に尽力していただいたあなたへ。
ともあれ、お疲れ様でした。
ゆっくりとお休みくださいませ。

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