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シナリオ詳細

<刻印のシャウラ>ブルトン攻防戦

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●新生砂蠍・黒蒼部隊
 幻想南部ブルトンの街は辺境に位置しながら、要所に渡る為の通過点にあって重要な街と言えた。
 今、そのブルトンの街に剣戟と怒号が響き渡っていた。
 『新生・砂蠍』。
 盗賊団の域を超えて軍隊化したその集団が、まさに占拠、占領を目論見ブルトンの街を襲っていたのだ。
 振るわれる盗賊達の凶刃が、抵抗する村人を血の海に沈め、街全体を恐怖に陥れる。
 しかし乍ら、重要拠点と言えるブルトンの街だ。そこに常駐する警備団の数は他の街に比べ多く精強だ。
 自警団の活躍によって、盗賊団は撤退を余儀なくされる。形勢はその結果を導きだすはずだった。

「はっ、街の自警団が頑張るじゃねーか。
 ちと、劣勢か? ったく、だらしねーな」
 黒衣に身を包み黒い眼帯を付けた若い男が、さも楽しそうに笑う。
 その様子を見た、隣に立つ青いドレスの少女が、半眼で隣の男――兄を睨めつけた。
「……兄様楽しそうね。
 ここを取れなきゃ私達の立場も危ういかもしれないっていうのに」
「わーってるよ、んなことは。
 しかしな、こうでかい戦いってのはワクワクするもんなんだよ」
「盗賊に身を落とした矢先、キングに拾ってもらえたからって得意になってるのね。
 ……それで、どうするのこの形勢。結構悪いよ」
 少女の問いかけに、男は豪快に笑って、
「当然、俺様がでる!
 全員皆殺しだぜ!」
「はぁー。言うと思った。
 結局それしかないものね。ミーシャは分かっていたの」
 呆れて物も言えない、そう言わんばかりに肩を落として見せる少女――ミーシャ。けれどすぐに得物――蛇腹剣を構えて、敵陣を睨めつける。
「お、やるきだなミーシャ」
「……兄様の背中を守れるのは私しかいないもの。
 めんどくさいけど、やるしかないわ」
「それでこそ、我が妹よ。
 ――よし、出るぞ。自警団なんぞ叩き潰してやるわ」
 大振りのシミターを携えた男が走り出す。その後をミーシャが追った。
「全員このヒュージ様に続け! ビビるこたぁねぇ! 一気に落とすぞ!!」
 男ヒュージの威勢に盗賊達が活気出す。
 黒と蒼に染まった盗賊達が、一本の槍のように自警団を穿つ。
 新生砂蠍・黒蒼部隊。
 若い夢持つ盗賊達の反撃が始まった――


 『新生・砂蠍』の国盗りは電撃的に開始された。
 幻想南部を狙い動く盗賊団は、その謎の資金力と人脈、盗賊王のカリスマで強化され並み居る幻想の警備団を撃破している。
 幻想南部の貴族領、街、村はその戦火に見舞われ、一部すでに落ちているという話だ。
 貴族はこれに対応したいが、『間が悪い事』に幻想北部国境戦で鉄帝が軍を動かす兆しを見せている。彼等に抜かれれば、国防上に致命的な問題を生じかねないので、貴族はこちらに対応せざるを得なかった。
「盗賊達と鉄帝。すごく連携しているように見えるけれど、その接点はないはずだし、鉄帝国(ザーバ)はそういうのを嫌うはずなのだけれど」
 顎先を指先で叩きながら、思案を呟く『黒耀の夢』リリィ=クロハネ(p3n000023)。依頼の背景を説明する彼女も事態の行き先を案じているようだった。
「そういうわけで、貴族も軍を動かすことができないので、イレギュラーズに協力を求めてきたというわけね。
 ここまではいいかしら?」
 リリィの確認に頷くと、改めて依頼の説明を始めた。
「こっちでは幻想南部の街ブルトンの自警団の援護に向かってもらうことになるわ。
 辺境とはいえ要所だから落とされないと思っていたのだけれど、新生砂蠍・黒蒼部隊という盗賊達の出現で、一気に形勢が傾いたわ」
 つまり、自警団側が一気に危機的状況になったわけだ。
「新興の盗賊団だったみたいだけどキングの傘下に入ったみたいね。そのリーダーである兄妹が凄腕みたいよ。
 ブルトンの街のその二人の登場で、押し込まれる形になったようだし、注意が必要な二人ね」
 当然その二人を護る盗賊達も士気は高く厄介だろう。ともかく油断のならない相手であることは間違いないのだ。
「黒蒼部隊はリーダーの兄妹二人と三十名の盗賊からなる部隊になるわ。
 人数的には不利だけれど、こちらも自警団十五名が援護してくれる。貴方達の力なら対処は出来るはずよ」
 数的不利を覆す作戦があれば、楽になるだろう。
 与えられた情報から、なにか案が出せればいいのだが――
「オーダーは盗賊団の撃退。
 全滅させる必要は無いけれど、後に遺恨を残すことになるでしょうし、狙えるなら全滅させたいところね。
 大変な戦いになるだろうけれど、どうか頑張ってきてね」
 そう言ってリリィは依頼書を手渡すと、忙しそうに駆けていくのだった。
 残されたイレギュラーズは早速準備を開始する――

GMコメント

 こんにちは。澤見夜行(さわみ・やこう)です。
 新生砂蠍が本格的に動き始めました。
 黒と蒼に身を包む、黒蒼部隊を撃退しましょう。

●依頼達成条件
 盗賊団の撃退

●情報確度
 情報確度はAです。
 想定外の事態は起こりません。

●黒蒼部隊リーダーについて
 ・黒の葬送ヒュージ・バリストン
 黒蒼部隊の黒担当。兄。黒服に黒い眼帯を左目に付けている。
 ワイルドなその容姿通りの性格で、獣の如き攻撃性を持っている。
 付き従う盗賊のほとんどがヒュージに付き従っており実質的リーダー。
 大振りのシミターを愛用する。
 物理攻撃力、防御技術に秀でており、EXF、機動力も高い。
 特殊技、ヒュージスラッシュ(物至単:CT+20)を使用します。

 蒼の葬列ミーシャ・バリストン
 黒蒼部隊の蒼担当。妹。青いドレスに身を包む小躯の少女。
 物静かなその見た目から盗賊団のマスコットにも見えるが、その内には比類無き残虐性を隠し持っている。
 蛇腹剣を愛用し、レンジに囚われない動きで相手を翻弄します。
 回避値に優れ、反応、EXA値も高い。
 特殊技、ソニックエッジ改(物近列・乱れ・凍結・麻痺)を使用する。

●黒蒼部隊について
 数は三十名。
 砂蠍に所属し、その士気、戦闘能力は高い。
 物理攻撃力が高く、EXA値が高い。連続攻撃に注意が必要でしょう。
 
 主に以下のスキルを使用します。
 ・ショットガンブロウ
 ・ワイズシュート
 ・戦闘続行
 ・カプリースダンス

●自警団について
 十五名が盗賊達の相手をしています。
 盗賊よりも弱いですが、死にものぐるいで援護してくれます。
 大きな怪我を受けた者から撤退していきます。

●戦闘地域
 ブルトンの街中央広場になります。
 大きな遮蔽物等はなく、開けた場所での戦闘となるでしょう。

 そのほか、有用そうなスキルには色々なボーナスがつきます。

 皆様の素晴らしいプレイングをお待ちしています。
 宜しくお願いいたします。

  • <刻印のシャウラ>ブルトン攻防戦完了
  • GM名澤見夜行
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年11月15日 21時00分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

リオネル=シュトロゼック(p3p000019)
拳力者
デイジー・リトルリトル・クラーク(p3p000370)
共にあれ
ジーク・N・ナヴラス(p3p000582)
屍の死霊魔術師
サングィス・スペルヴィア(p3p001291)
宿主
アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)
蒼穹の魔女
ユゥリアリア=アミザラッド=メリルナート(p3p006108)
氷雪の歌姫
フローラ=エヴラール(p3p006378)
白き閃刃
藤堂 夕(p3p006645)
小さな太陽

リプレイ

●戦場への介入
「はっははー! 全員俺様に続けーッ!」
 黒き野獣、新生砂蠍・黒蒼部隊隊長ヒュージ・バリストンがブルトン中央広場に介入したことをきっかけに、拮抗していた盗賊と自警団の戦況が崩れ出した。
「……相変わらずの後先考えない突撃ね。
 兄様の援護にでるわよ。全員ついてきなさい」
 続く蒼き鞭が、猛獣を操るように振るわれる。
「くそ! あの二人だけ強さが桁違いだ!
 全員、あの二人を止めろーッ!」
 精強で知られるブルトンの自警団は一致団結してこの黒と蒼の脅威に立ち向かう。
 然りとて、その戦力比は覆ることはないはずだった。
「ハン、リーダーの二人なかなかやるな。
 そろそろ行かねーと、自警団が持たなくなっちまうぜ?」
 拳を鳴らす『拳力者』リオネル=シュトロゼック(p3p000019)が仲間達に声を掛ける。
 戦場を見渡せるその横合いから、イレギュラーズは突撃のタイミングを計っていた。
「当然すぐにでるのじゃ。ただし、タイミングを計る必要があるのじゃ。足並みも揃えねばならぬしの」
 喉の調子を確かめながら、『大いなる者』デイジー・リトルリトル・クラーク(p3p000370)がリオネルに待ったを掛ける。その横合いでは『屍の死霊魔術師』ジーク・N・ナヴラス(p3p000582)が式を生み出し準備を重ねていた。
「人間とは斯も恐ろしい……飽くなき欲望に駆られる人間達が」
 それは若くして盗賊家業に夢見た黒と蒼の二人を思うてか。呟くジークに『宿主』サングィス・スペルヴィア(p3p001291)が肩を竦めた。
「欲望のはけ口が盗賊稼業だなんて、碌な人間じゃないわよ。
 それに、子飼いの盗賊団って意地も誇りもない気がするわねぇ」
『弱者が強者に阿るのは正しいと思うぞ?』
 サングィスの突っ込みに返答せず、戦況を見守るスペルヴィア。
 『希望の蒼穹』アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)もまた、魔力障壁を展開しながら、それに倣う。
「どんな理由があったって、誰かを傷つけ奪い苦しめる理由にはならないよ。
 絶対に止めるんだ」
「因果応報ー。悪行にはそれ相応の結末が見えていましてよー」
 身体に魔力を充填させ、戦闘態勢に入る『特異運命座標』ユゥリアリア=アミザラッド=メリルナート(p3p006108)の間延びした声が黒蒼兄妹の結末を暗示する。
 その後ろでは、『お気に召すまま』フローラ=エヴラール(p3p006378)は思索に耽っていた。
(鉄帝と盗賊の関係は気になりますが、考えても仕方ありませんね――)
 そんな彼等の前に身体を乗り出して、『特異運命座標』藤堂 夕(p3p006645)が得意げに鼻を鳴らした。
「フフン、盗賊、海賊、山賊……悪い奴等に慈悲はない。
 今日の私は天眼通を持つ者ぞ、どんな奴でもかかってこい!」
「いや、アンタは後衛だろ」
 リオネルの突っ込みにもめげず夕はウィッチクラフトとファミリアーで使い魔を二匹呼び出し、中央広場を俯瞰する。
 そうして戦場を見れば、一度目の突撃を凌いだ自警団に、盗賊達が二度目の突撃を敢行するタイミングだった。
 イレギュラーズが顔を見合わせる。準備は十分だ。タイミングも良い。
「おし、いくぜ。
 黒い奴は別に倒しちまっても構わねーんだろ?」
「それはフラグというやつなのじゃ」
 お約束なセリフを後に残しつつ、満を持して、イレギュラーズがブルトン攻防戦へと介入する。
「――! 新手か!?」
「兄様、ちょっとマズそうな相手が来たわよ――」
 ヒュージとミーシャが気づくと同時、先頭を走るリオネルが再生能力を高めながら中央広場端にある時計塔へと駆け上り、反転、高所から跳躍とジェット噴射を用いてヒュージへと突撃する。
「……!(KILL!)」
 突撃中に叩きつけるリオネルの無言のメンチ切りからのキルサイン。それを即座に敵対行動ととったヒュージが青筋立てて唸りをあげる。
「上等だてめぇ……俺様に喧嘩売ったこと、後悔させてやんぜ。
 ミーシャ、指揮は任せたぞ!」
「はぁー。すぐこれなんだから……。
 ――負けるんじゃないわよ」
「はっ! 負けるかよ!!」
 リオネルとヒュージの接敵を合図に、イレギュラーズの戦いが始まった。

●薙ぎ払う
「ブルトンの街の者よ、妾達は賊退治の依頼を受けたイレギュラーズじゃ。加勢する故、共に戦うのじゃ!」
 デイジーのスピーカーボムによる大声は、戦場で戦う自警団を鼓舞し活気を与える。
「ローレットの方達か! 助かる!」 
「妾達が来たからにはもう大丈夫じゃ。さあ、ここから巻き返すのじゃ!」
 思いも掛けない救援に、自警団から鬨の声があがる。傷付いた者も、今一度戦うために、立ち上がる。
「……多少は楽になるはずよ。
 貴方達の力も十分に戦力になるわ。力を貸して頂戴」
 血液に干渉する呪具的魔術によって、自警団の傷を癒やし鼓舞するスペルヴィア。これによって戦力の低下を防ぎ、多くいる盗賊達への攻撃材料を増やす。
「……回復なんて、また面倒なことしてくれるのね。
 いいわ、まとめて薙ぎ払ってあげる――!」
 蒼の鞭ミーシャが蛇腹剣を振るう。まるで意思でもあるかのように縦横無尽に蠢く斬撃が自警団に襲い来る。
「自警団の人は下がって! 援護をお願い!」
 飛び出すアレクシアがミーシャ目がけて突撃を敢行する。これに反応してミーシャは即座にバックステップを踏む。聖なる光を放ち立ちはだかる盗賊達に牽制を入れながら、アレクシアはなおも追いすがる。
「君の相手は私だよ! ここで倒させてもらうからね!」
「距離を詰めれば勝てると思っているのかしら。
 お生憎様、私に苦手な距離はないわ」
 蛇腹剣を一振りの剣へと変えると、アレクシアとの真っ向勝負に挑むミーシャ。この判断はアレクシアに取ってみれば僥倖だ。ミーシャを抑えることが勝利へと繋がると信じているからだ。
 蛇腹剣の鞭を受け流しながら、アレクシアがミーシャを挑発する。
「まだまだ! 君がこんなものなら、お兄さんの方も程が知れてそうだね!」
「――兄様をバカにしないで」
 殺気孕む視線が、アレクシアを射貫いた。
「少し離れるのじゃ」
 取り巻きの盗賊達と戦うデイジーが、自警団に警戒を促す。本来であれば挑発を行った仲間の援護で放ちたいディスペアー・ブルーだが、今回は敵を引きつける行動をする者がいなかった。
 散開する盗賊達の動きに多少効果が落ちるが、範囲攻撃による一掃を試みなければ、タコの手が幾つあっても足らなくなる。
 デイジーの呪歌に併せてフローラが走る。
「まとめてお相手致します! 
 ハァァ――ッ!!」
 裂帛の気合いと共に、絶大な威力を齎す暴風を作り上げる。中央広場に生まれた斬撃の暴風域が多くの盗賊達を巻き込み体勢を崩すと同時に、窒息させる。
「なんて力だ! あの女を止めろ!」
 その威力に危険性を感じた盗賊達が、フローラの進行を塞ぐように立ちはだかる。その動きも想定済みだ。盗賊達の攻撃を受け流しながらコンビネーションを見舞っていった。
「チィッ! 化け物揃いかよ……! なんなんだてめぇらは!」
 荒々しく吠えるヒュージに、対峙するリオネルが薄く笑う。
「誰でもねぇよ、しがない何でも屋さ」
 発光する左の拳がヒュージの身体を打つ。そのほとんどはヒュージの身体能力によって急所を外され対したダメージとはならないが、ヒュージの左目を覆う眼帯側を狙って放たれる右の拳が、深々と腹部に突き刺さる。
「――ガァッ!?」
 ただの拳ならば対したダメージにもならないだろう。だが、リオネルの拳には武器が宿る。打ち出される鉄杭の衝撃にヒュージの身体がくの字に折れた。
「”硬ぇ”って聞いてたんだが……”ハリボテ”じゃねーの。スカスカだぜ」
 ヘラヘラと笑いあおり立てるリオネルに、野獣の如き鋭い眼光が突き刺さる。
「ふざけやがって……ぶっ殺してやる!」
「兄様! あんまり熱くならないでよ!」
 様子を横目にみたミーシャからの声が飛び、「わかってるよ」とヒュージがか細く呟いた。
 自警団と肩を並べて、全体指揮を出すのは夕だ。
「はい、右翼側の盗賊を抑えてね!
 あ、中央はフローラ君の攻撃にあわせて追撃してして」
 戦闘開始前の堂々たる宣言通り、戦場を俯瞰する夕の指示は的確だ。そのお蔭もあって、自警団の動きもいつもよりキレが増している。
 そういった自警団のフォローをしながら、夕はヒーラーとして仲間の回復も忘れない。
 極彩色の紙片が魔導書より広がり、生み出された召喚物が仲間を支援し回復する。
 サングィスの血液干渉と併せて、イレギュラーズ並びに自警団を支え、戦線を維持するのに努めていた。
「さて、私も勤めを果たそうか」
 屍たるジークがその骨の手を振るえば、戦場に濃密な死の気配が訪れる。生み出される黒い瘴気がジークの手の動きに同期して、薙ぎ払われるように戦場を駆けた。
「ぐ……な、なんだ!?」
「髑髏が、髑髏の呪いだ!」
 皮膚に浮かび上がる黒い髑髏の斑模様に盗賊達の悲鳴が響いた。
 呪殺に呪殺を重ねるように、ユゥリアリアの美しき破滅の呼び声が響き渡る。
「苦しませるのは本意ではないですけれどー。
 皆さん仲良く倒れてくださいー」
 死へと導く呪いの歌声に、盗賊達が慌てふためく。
「みんな、出来るだけ散開して。
 後ろにいる者から狙っていきなさい」
 アレクシアに行動を制限されるミーシャは戦況不利と見て、できる限りの指揮を行う。しかしながら、”歴戦”の盗賊ではない彼等を、うまく統率することは難しい。
 結果として浮き足だった盗賊達を薙ぎ払うイレギュラーズの熾烈な猛攻は盗賊達の多くをまとめて打ち倒し、拮抗状態にあった盗賊と自警団の戦力バランスを破壊した。
 この状況に対して、黒蒼盗賊団を指揮する二人の若き盗賊の判断は、あまりにも遅かった。
 目の前の敵に集中した――そのようにさせた――こともあるだろう。また部下の盗賊のほとんどが力尽きた状況を前にして激憤し、撤退を考える余地が生まれなかったのかもしれない。
 どちらにしても、冷静に状況を確認できるようになったときには、もう兄妹二人しか両の足で立ってはいなかった。

●黒蒼盗賊団の最後
 イレギュラーズはこの盗賊達を逃すようなことを一切考えていなかった。
 徹底的にマークし、逃亡経路を塞ぎ込み、一切の容赦なく、追い詰めていた。
 ヒュージとミーシャの二人は、イレギュラーズを警戒しながら、挑みかかる自警団を一人ずつ打ち倒していく。一人ずつ、確実に数を減らし、どうにか活路を得ようと模索していた。
「……すまんな、ミーシャ。まさか楽勝と思った戦いでこんな事態になるとはな」
「兄様、バカ言わないで。
 まだ、まだ終わってないわ――!」
 蛇腹剣を振るいイレギュラーズを牽制するミーシャの瞳は、まだ死んではいなかった。
「フニャチンヒュージ様は、素手相手にビビって妹の後ろに隠れちまうってかぁ?」
「はっ! 好きに言ってろ。
 てめぇの方こそ、拳がさがってんぞ」
 互いに舌戦を交わすが、その実二人ともダメージを与え合い血に塗れている。そう、イレギュラーズに取り囲まれてなお戦場に立つ二人の戦闘能力は高く、特に二人の相手をしていたリオネルとアレクシアはパンドラの輝きによって難を逃れた状態だ。
 他の面々も盗賊達との戦い、そしてたびたび放たれたミーシャのソニックエッジ改によって見逃せないダメージを負っている。
 状況的にイレギュラーズの有利は揺るがないが、油断など出来る状況ではないのは確かだった。
 ジリ、とヒュージが後ずさる。背に立つミーシャが背後へと向かおうとすれば、
「おっと此処から先は通行止めだ」
 と、ジークが虚空に闇の爪痕を刻みつける。
「フフン、もう逃げ場はないよ。覚悟するんだね!」
 ビシっと誰よりも後ろから指さす夕。
 そんな夕の指示によって、まだ動ける自警団達が、さらに戦場を囲み鳥かごを作り出す。
「進退窮まったわね。さあどうするのかしら」
『まさか降参などとは言うまいな』
 スペルヴィアとサングィスの言葉を前に、ヒュージが笑う。
「そのまさかだ。
 はい、俺達の負け。降参。もう悪い事はしませーんってね」
「……ちょっと兄様?」
 妹の冷たい視線を受けながら、不敵にヒュージは笑う。
 だが、イレギュラーズにとってそんな言葉に意味はなかった。
「残念だけど、禍根を後に残すつもりはないよ!」
「油断させるつもりかもしれませんがー、その手の話は通用しませんよー」
 アレクシアとユゥリアリアのにべもない言葉に、一つ目を伏せたヒュージが肩を竦める。
「……血も涙もねぇ奴等だ。
 ――夢見たのが悪いのか、夢見せた奴が悪いのか。何にしても選んだのは俺、ということか」
「兄様?」
「――やるぞ、ミーシャ。
 こいつら殺して、もう一度、もう一度やり直しだ」
 飄々とした雰囲気は一変し、これまで以上の怒気と殺気孕んだ野獣のごとき視線で睨めつける。
「気をつけろ、マジでくるぞ」
 警戒を促す言葉、それと同時にヒュージが吠える。
「俺等兄妹からタダで奪えるもんがあると思うなよ――ッ!!」
 尋常ならざる加速で、アレクシアの首を獲ろうと大振りのシミターを横薙ぎに振るう。爆発的な火力を齎すその一撃は、アレクシアの魔術障壁すらも切り裂いて、防御を無視する一撃を叩きつける。
 寸前で首を切り離されることは避けたが、大量の血が噴き上がる。誰よりも素早い反応を見せるスペルヴィアが血液干渉によって即座に傷を塞ぐも、アレクシアの意識は戻ってこない。
「チッ! てめぇ――!」
 リオネルの妖拳(ヘクセンファウスト)がヒュージの胸に突き刺さる。文字通り心臓を打ち貫く一撃に、しかしヒュージが口角を上げた。血を吐きながら倒れることはない。
「再生ばかりしやがるてめぇは最後だ!
 ミーシャやれ!!」
 兄の言葉に妹が即座に反応する。
 振るわれる蛇腹剣が、神速を持って斬撃の嵐を起こす。リオネルは反射的に倒れた盗賊を盾にした。
 一撃、二撃、三撃――! ミーシャの行動は止まることを知らない、夥しい程の連続攻撃が、取り囲んでいた夕、そしてスペルヴィアに襲いかかる。
 鬼神の如き猛攻を前に、地に倒れ伏すスペルヴィア。
「まだ、やられるわけにはいかないよ!」
 パンドラの輝きを宿し、耐え凌ぐ夕。倒れない夕にミーシャが歯噛みする。
 猛攻が終わると同時に、ジークとユゥリアリアが動く。
「鬼気迫るとはこのことかね。だがしかし――」
「これ以上はやらせませんー」
 地面より生み出された土塊の拳がヒュージを殴りつけ、ユゥリアリアの生み出した深き闇がヒュージを蝕み暗闇に閉ざした。
「まだだ、まだ倒れねーぞッ!!」
 暗闇に包まれながら大振りのシミターを我武者羅に、しかし鋭く振るう。叩きつけられたジークが、パンドラへと縋る。
 死にもの狂い、壮絶な表情を浮かべるヒュージは敵ながらにして、痛ましい。
「これ以上苦しむ必要はないでしょう。
 ――お覚悟を」
 フローラが振り下ろす暴君の如き大戦斧が、苦痛無き致命の一撃をヒュージにもたらした。
「兄様――ッ!」
「すまねぇ……ミーシャ」
 妹への謝罪を残し、黒き野獣ヒュージ・バリストンは絶命する。
 兄の死を前に震えるミーシャ。
 デイジーが容赦なく言葉を突きつける。
「兄の死を前に逃げ出すか。
 所詮、見た目通りのお飾りといったところかの。妾達は寛大故、疾く失せるが良い。
 兄の背中も守れぬか弱い者なぞ、逃げたところで何も出来はせぬ故。
 賊共もお主の兄も程度が知れるという者じゃ」
「……馬鹿言わないで頂戴。
 生きるも死ぬも、共にと誓い合った仲よ。兄様を置いてなんて行くわけ無いじゃない」
 ミーシャは薄く笑うと蛇腹剣を構える。
 身構えたイレギュラーズを前に、ミーシャが口を開いた。
「兄様、今行くわ。……いつまでも二人でいましょうね」
 一度、蛇腹剣が振るわれる。
 それはヒュージとミーシャを守るように結界となってイレギュラーズを遠ざけた。
 その結界の中心で、ミーシャは倒れたヒュージに寄り添うように、そっと自決するのだった。
 ブルトンを巡る攻防戦は、その瞬間を持ってブルトン自警団、そしてイレギュラーズの勝利で幕を下ろした。

●戦いは終わらない
 ブルトンの中央広場、その端で、イレギュラーズは地面に腰付けて戦いを振り返る。
「あまり考えたくないけど、キング・スコルピオが来なかったら……あの二人の生き方も違ったのかな」
 死に際を聞かされたアレクシアが、二人を思い言葉を零す。
「フン、どのみち盗賊稼業に身を窶していたことに変わりはねぇよ。
 どんだけ大義名分があろうが、外道働きに差はねぇぜ」
「うん……」とアレクシアが小さく頷く。理解し、納得し、欲望に身を任せ破滅した二人を憐れに思う。
「砂蠍の勢いが止まらなければ、同じような者が生まれるかもしれないわね」
『外道へと引きずり込むカリスマ性か。恐ろしい者だな』
「幻想侵攻。すぐ終わると良いのですけどー」
 新生砂蠍に対応する依頼は多く出ていた。今まさに同時にその対応が行われている。
「早く終わればいいのにね」
「まったくじゃな」
「はい、そうですね……」
 夕の言葉にデイジーとフローラが頷いて、空を見上げた。
 傾き始めた陽を眩しく思いながら、この後も続くであろう戦いを予感し、目を細めた。

成否

成功

MVP

アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)
蒼穹の魔女

状態異常

なし

あとがき

澤見夜行です。

とってもプレイングの殺意が高くてリプレイのような結果となりました。
おかしいなぁ勝利条件に殺害とは書かなかったはずなんだけど……。
ちょっと気に入ってた兄妹が即退場したことを恨んだりはしていません。本当だよ?

MVPは妹の抑え役として役目をはたしたアレクシアさんへ。抵抗高くて強かったです。
特段の威力で盗賊達を暴風に巻き込んだフローラさんには称号を贈らせて頂きます。

依頼お疲れ様でした! 素敵なプレイングをありがとうございました!

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