PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<刻印のシャウラ>襲撃、ブリキット要塞!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●幻想占領
「偶然の挟撃。占領された町。軍隊化した盗賊……ね……」
 『黒猫の』ショウ(p3n000005)はクラッカーを片手に依頼資料を眺めていた。
 やってくるあなたに気づいて資料を置き、カフェのメニューブックを手渡してくる。
「やあ、受けてくれて助かるよ。下手したらそのうち幻想もローレットもなくなっちゃうくらい危ない事件なんでね」

 ラサで大暴れしていた大盗賊キング・スコルピオは幻想の暗部へと潜り戦力をたくわえていた。
 そうして束ねられた盗賊の大群はどこからか供給された高級武装を備え『新生・砂蠍』という軍隊へと化けていた。
 砂蠍は貴族国家である幻想の弱点をつくように弱い村々をちくちくと襲っては占領や略奪を進め国力を奪っていたが、それがついに本格的な軍事占領を仕掛ける段階へと入ったようだ。
「電撃作戦を仕掛けられてね、既に幻想の南部はだいぶやられてる。占領されてる町もあるし、少数の自警団でギリギリ抵抗してる所もある。
 貴族はどうしてるのかって? 勿論ブチギレして本気の兵を送る――はずだったんだけどね」
 肩をすくめるショウ。別の資料を見せてきた。
 そこに書かれていたのは鉄帝の軍が強烈な南下作戦を仕掛けてくるというものだった。
 幻想と鉄帝は永遠かと思えるほどながい戦争を続けている。その一部ではあるのだが、今回の派手さはまるで砂蠍に弱った幻想の隙を突くかのようだった。
「正々堂々真っ向勝負の鉄帝っぽくないよね? それはみんな思ったことだけど、裏はとれなかった。クリスチアンの諜報活動でやっとわかったのがこれだけなんだ。重要なのは、幻想が完全に破壊されないためには貴族の力を北側に集中しなきゃいけないってこと。そして、兵が動けない時のピンチヒッターが南部の問題にあたらなきゃいけないってこと。そのピンチヒッターは?」
 注文を決めたのか、ショウは指を鳴らしてウェイターを呼んだ。

●ブリキット要塞
 カフェの個室には8人近くのイレギュラーズがそろっていた。今回の作戦参加チームだ。
「さて、このチームにやってもらうのは『アーノルド要塞』の攻略だ。
 ここは南方貴族アーノルド氏が建設させた要塞なんだけど、砂蠍の軍隊に陥落してしまったんだ。
 従業員や貴族たちもとらわれてさらなる作戦の人質にと『保管』されている。
 見張りも万全で大勢で飛び込むのは無理がある状況でね……というわけで、この少数精鋭で夜襲をかけることになった」
 やり方はきわめてシンプル。
 正面から突っ込んでいって出てくる敵を全員倒してボスの首も取る、だ。
「といっても簡単じゃないよ。連中はこれまでのちまちました村獲りとは戦力が違う。戦闘に慣れた人員を揃えて装備もかなりいい。軍を統率してるのも……」
 といって見せた写真は、要塞にあがっている砂蠍の旗だった。
 エンブレムに並んでいる刀と魂のマークは、この軍を示すものだ。
「新生砂蠍・ブリキット部隊だ」

 ブリキットは死者の魂を食らう妖刀を装備した恐ろしい盗賊だ。
 彼のカリスマと恐怖によって統率された盗賊たちは恐ろしい戦力となるだろう。
「まず言っておこう。今回の依頼内容は『ブリキットの抹殺』だ。彼のもとにたどり着く前に敗れたり、彼の部下にあたる実力者たち相手に敗れてしまったら終わりなんだ。
 しかも敵陣への襲撃……最後の一人まで戦おうなんて思っちゃいけない。無事に帰ることを前提として、作戦を組んでくれ。
 それじゃあ……気をつけて」

GMコメント

【成功条件】
・成功条件:ブリキット部隊の総合戦力を半分まで減らすこと
・オプションA:ネームド部下三名の抹殺
・オプションB:全ての部下の抹殺
・オプションC:ブリキットの抹殺

 このシナリオはHERD難易度です。
 有効なプレイングの密度(≠文字数)、状況と自信のスペックにあった行動選択、(必要そうな)仲間へのフォロー。その全てが満たされている状態が目安としての成功ラインとなります。
 オプション要素を達成するにはその上で有効な工夫、クリティカルなプレイング、よく整ったステータスビルドなどなど……色々なものが必要になります。

【フィールドデータ】
 アーノルド要塞へ正面から攻め込み、対応や伝達が行き渡る前に内部へ強行突破。
 その後大量に襲いかかってくる部下とブリキットと戦います。
 要塞の作りや人質の居場所などはこの作戦にはほぼ関係ないので、『より電撃的に突入できる前半』と『PC側撤退条件に至る前に敵のボスを倒しきる算段をつける後半』の二種類に分けてプレイングを書くことになります。
 必要になるスキルや工夫のしかた異なるので、別々に考えてみてください。
 時間は夜ですが明かりは充分あるものとします。

※撤退条件
 『PCの半数以上』がプレイングで宣言した撤退条件が全員共通のものとなります。
 誰も宣言しなかった場合はばらけすぎた場合は安全対策として『3名が戦闘不能時に撤退』が適用されます。

●前半
 一般盗賊とネームド盗賊『エナム』が守っている門に奇襲をかけ只管に殴り飛ばし、むりやり門を通過します。
 この時点で門は開いていますが、とにかく急いで門を通過しなければ閉じてしまうでしょう。
 (もし門が閉じるまでに通過できなかった場合、そのPCは孤立をさけるために自動徹底=戦闘不能扱いとなります)
 機動力があればあるほど有利です。フツーくらいだとあまり余裕がありません。最悪馬とか使ってください。
 時間的余裕はありませんこの時点で沢山敵を倒せていると後半が有利になります。

●後半
 門の内側。広いフィールドでの戦闘です。
 一般盗賊、ネームド盗賊『クリッツ』『ザイン』、ボスの『ブリキット』が新たに追加されます。
 ガチの対集団戦闘です。位置取り、味方同士のフォロー、最終的な着地点へのつなぎ方をしっかり決めて挑みましょう。

【エネミーデータ】
※このデータは情報屋からの情報と、前回戦った際のデータを総合しています
 体感ですがネームド部下はPCとタイマンはる程度。ブリキットは(かなり負傷していて部下にかなり庇われていたとはいえ)数人がかりで倒しきれなかった程度の強さです。

・一般盗賊
 15名前後の盗賊たちです。
 個体ごとの戦闘力は低いですがとにかく数がおりブロック・マーク・庇うなどを使ってネームド敵やブリキットを守るでしょう。
 こいつらを倒さないと地味に他の戦闘が厄介になります。

・エナム
 ネームド部下。魔術師。
 火力に優れ、近単、超貫、特特(レンジ2以内全員対象)の攻撃魔法を使う。
 高位の回復魔法もあり。

・クリッツ
 詳細不明。ナイフを装備した翼人。なんとなくスピードタイプっぽい。

・ザイン
 詳細不明。黒い全身鎧の人物。なんとなく防御がかたそう。

・ブリキット
 妖刀魂喰を装備した大盗賊。キザ。
 個人戦闘力もさることながら、殺した相手の魂を武器に喰わせて強化することができる。
 部下をあまり大事にしておらず、部下ごと斬り殺す姿が確認されている。
 そのうえ、戦いに面白さを持ち込むタイプ。

【アドリブ度】
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用くださいませ。

  • <刻印のシャウラ>襲撃、ブリキット要塞!完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2018年11月15日 21時15分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

御幣島 戦神 奏(p3p000216)
黒陣白刃
巡離 リンネ(p3p000412)
魂の牧童
イーリン・ジョーンズ(p3p000854)
流星の少女
七鳥・天十里(p3p001668)
鬼桜 雪之丞(p3p002312)
白秘夜叉
エイヴ・ベル・エレミア(p3p003451)
ShadowRecon
ルチアーノ・グレコ(p3p004260)
Calm Bringer
エッダ・フロールリジ(p3p006270)
フロイライン・ファウスト

リプレイ

●走れ
 幻想貴族の建設した拠点アーノルド要塞は今、新生砂蠍・ブリキット部隊によって制圧、占領されていた。
 そんな要塞の守りを今、正面突破しようと試みる一団がある。
「何も気にせず力を振るえる事に感謝しましょうかね。いえーつっこむぜー」
 戦神制式装備第五壱号および第七壱号を抜いて二刀流の構えをとった『黒陣白刃』御幣島 戦神 奏(p3p000216)。
 彼女が乗っているのは箱馬車の屋根であった。
 その周囲を軍馬やパカダクラに跨がって走る集団。
 ローレットのイレギュラーズである。
 正門の守りを固めていた盗賊兵の一人が『敵襲!』と叫び角笛を吹き鳴らす。
 退屈そうにトランプ遊びをしていた魔術師エナムが立ち上がり、遠くより接近する松明の列に目を細める。
 先頭をゆくのは軍馬を用いて馬車をひく『メルティビター』ルチアーノ・グレコ(p3p004260)である。
 彼は馬車から顔を出す七鳥・天十里(p3p001668)にハンドサインを送った。
 サングラス型のサイバーゴーグルを装着する天十里。
「悪者退治、悪者退治だ! さあ、鉛玉をプレゼントだよ、スピードあげて、ルチアーノくん!」
「了解、つかまってて!」
 見れば、こちらの襲来に応じて正面の門を閉じようとしている。
 とはいえこの要塞で訓練を受けていた兵ではない。あくまで占領した要塞である。盗賊たちはうまく操作ができないのかわたわたとした様子だった。
 その時間を稼ぐためにエナム率いる一団が砦正面に展開する。
 が、立ち止まるつもりなどない。
(ああ、大立ち回りだ。大掛かりな合戦だよ。まあ、私向きの仕事ではあるのかなー)
 『魂の牧童』巡離 リンネ(p3p000412)は楽器を背負ってからパカダクラで前屈みに構えた。馬車の後ろ。左右に仲間を展開し、リンネを中心とした扇状の陣形が作られる。
「それじゃ一発、ガツンといこうか」
 最前列に飛び出す漆黒の牝馬。操るは『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)。
 飛来する盗賊兵のライフル射撃をジグザグな走りで器用にかわしていく。恐ろしく優秀な騎乗戦闘技術だ。
(なるほど、本物の不死身。不死身のブリキット。いいわ、試してあげる――)
「神がそれを望まれる」
 完全な戦闘態勢へと入ったイーリンに続くように、『守護天鬼』鬼桜 雪之丞(p3p002312)もまたパカダクラ上で小太刀を抜いた。鍔から流れた水の魔力が刀身を膜のように覆っていく。
「魂喰らうは、刀だけではありませぬ」
 同じくパカダクラに跨がって前方に出る『ShadowRecon』エイヴ・ベル・エレミア(p3p003451)。
(この世界にきて私がこなしてきた仕事の中で最も難しいと言える依頼
だが必ず遂行してみせる)
 馬上でありながら対物ライフルを組み立て、設置し、馬の揺れと勢いを完全に自分と一体化させていく。
 スコープの中にぴったりと納める敵の姿。
「私達にはそれができるはず」
 トリガーに、指をかける。
「それではひとつ」
 『フロイライン・ファウスト』エッダ・フロールリジ(p3p006270)が馬車の中で両手をガチンと打ち合わせた。
「鉄帝『らしい』戦争を、お見せしたく存じるであります――突貫!」
 速度と勢いをつけた集団が、展開した盗賊兵などお構いなしに正門へと突入していった。

●強行突破
「全く、門の担当は何をやってるんだかな」
 被っていたフードを払い、魔術師エナムは魔法銃に炎の魔術弾を装填した。
 その周囲では武器を構えた盗賊兵たちがそれぞれ戦闘姿勢にはいっている。ライフルを構えた者は既に射撃を開始していた。
「焦って突っ込むな、迎え撃て。足止めすれば勝てる。いいな?」
「そりゃー! こーんにーちわー!!!」
 馬車が真正面から突っ込んでくる――かに見せかけて、ルチアーノは急速にブレーキをかけた。勢い余って放り投げられたのは屋根に立っていた奏である。
 奏はこれ幸いとばかりに刀を広げ、コマ回しの如く盗賊兵たちへ突っ込んでいった。
 迎撃。というより身体を張った足止めだ。
 最前線に出たエナムの盾になるようにカイトシールドを構えて飛び出してきた。
 直撃はしないまでも激しく盾を削っていく奏の剣。
 一般の盗賊兵も奏ほど強くは無いが雑魚と侮れない程度には能力があるようで、奏の攻撃をばっちり耐えきってみせた。
 いや、そのくらいでなくては砦など戦力出来まい。ローレットの一チームまるごと投入して夜襲もかけまい。
 そしてむろん、こちらも侮ってなどいない。
「退いて頂きます」
 雪之丞がパカダクラに跨がったまま突撃。
 防御姿勢の盗賊団を無理矢理蹄鉄で踏みつけると、気合いと共に木立を振った。
 豪鬼喝によって一部の盗賊兵が吹き飛ばされていく。
 が、エナムは無事だ。それを守っている一般盗賊も健在である。
 反撃の炎が走る。
 エナムは軽やかにステップを踏んで移動すると、奏と雪之丞、そしてもう一人の仲間を巻き込むラインを確保して炎の魔砲を解き放った。
 直撃。身体が身体から肉がそげて飛んでいくのではと思うほどの衝撃に晒される。
 エナムの動きを制限していない今、自由に移動してラインをとれるのだ。
 が、ここまで徹底して陣形を組んだリンネたちがそれを意識しなかったとは思えない。エナムの動きを制限することや、盗賊たちを範囲攻撃で遠くから放火して殲滅する作戦をとろうと思えばとれた筈だが……。
「機動力に振り切っている。もはや、俺たちが眼中にないのか? ……ここは突破されるとみたほうが良さそうだな」
 エナムの予想通りと言うべきか、リンネは味方への強化効果を展開しながらも新規に赤の熱狂を発動。命中と回避に強い全体補正をかけつつ、そのまま突破を目指して身を屈めた。
 槍を持って牽制にかかる盗賊。その頭上をイーリンの馬が飛び越えていく。
 振り向きざまに放った魔砲がエナムを巻き込んで他の盗賊たちを吹き飛ばしていく。直撃した盗賊が軽く消し飛ばされた。
「なんて威力してやがる」
 部下を無理矢理盾にして攻撃をしのいだエナムはあがる黒煙に小さくむせた。
 それを尻目にイーリンが門を突破していく。
 やっと要領をえた盗賊たちが門を閉め始めていった。
 だがまだ時間はある。イーリンはそう確信して後続によびかけた。
「ギリギリまで打てるわ。集中砲火」
「了解」
「任せて」
「こんな派手なの久しぶりかも」
 エイヴが対物ライフルを、天十里が中折れリボルバー拳銃を、ルチアーノがロングバレルピストルをそれぞれ構えた。
 真っ先に放たれたのはルチアーノの銃弾だった。ホローポイント弾が肉盾を失ったエナムに直撃。
 魔術防御壁を展開しつつも大きくのけぞったエナムに、天十里がここぞとばかりに銃撃を叩き込んだ。
 防御が大きく崩れる。
 ニッと笑った天十里が、エイヴに合図のウィンクを送った。
「キツイ戦いだけど、笑顔を忘れずに。ねっ」
「……」
 エイヴは口の左端で微笑以下の笑みを浮かべると、よく狙い澄ましたライフル弾を発射した。
 エナムの腹を貫いていくライフル弾。腹をえぐり取るレベルの損壊によって血が爆発するように吹き出ていく。回復不能な致命傷だ。
 まずはそれを直すべく盗賊がキュアイービルの魔術を施すが、それを尻目にエイヴたちは防衛ラインを突破。
 少しでも数を減らそうと銃撃をしかけてくる盗賊兵たち。対してエッダは防御の構えをとった。
 飛来する無数の銃弾が錬鉄徹甲拳の表面をはねていく。
 陰陽の円を描くように振るわれる腕が鉛の波をかき分けるかのように進み、エナムへと迫っていく。
 (状況的な偶然はあるものの)周りの一般盗賊を減らさなかったことでエナムも攻撃に制限をかけられていた。
 二丁の魔法拳銃で狙いを定めるエナム。
 馬車から飛ぶエッダ。
 左腕のガードで銃撃を受けると、右腕の掌底で螺旋を描いて打ち出した。
「一人、貰っていくであります」
「ぐお――っ!?」
 腹を打ち抜かれ、正門脇の石壁に激突するエナム。
 閉じようとする門の内側へ、周りの一般盗賊たちが慌てて駆け込んでいった。それに追い立てられるようにして門の内側へと飛び込むエッダ。
 飛び込み前転でギリギリ潜り込むと……。
「おっとお? 夜襲とはイキなことしてくれるじゃねえの」
 妖刀魂喰を担いだブリキット。そして黒い大鎧を纏ったザイン。
 要塞の見張り台から翼を広げて降下してくるクリッツ。
 そして残る一般盗賊兵たちが取り囲んだ。
「来て貰って悪いが、ここで死んで貰うぜ。安心しな、魂は可愛く飼ってやるよ」
 浮かび上がる無数の魂。とらわれた苦しみゆえか、無数の顔が浮かんでは助けを求めるように叫び声を上げていた。
「こいつらみたいに、な」

●不死身のブリキット
 彼女たちを褒め称えやすいように、解説を交えねばならない。
 まず正面突破の際迷わず馬を選択し、一部は馬車による機動力の代行を行なったこと。そして陣形を展開できるようにか(もしくは最初からそのつもりだったか)複数の馬に跨がって陣形を作った。
 この時点で門が閉じる前に突入するための時間短縮はかなりの割合で達成されており、『通せんぼをしたくらいで馬が止まってくれない(最悪蹴られて死ぬ)』という事情ゆえに盗賊たちは単独でのブロックに失敗した。戦において騎馬兵が長く使われた理由でもある。
 一方のエナムは複数でブロックにかかるよりもダメージを与えて迎撃するべきと判断して魔砲での攻撃を選択。自らの盾を残す都合上自分を中心とした範囲攻撃を使えなかった。兵が極端に減ってからこのスタイルに切り替えるつもりだったようだ。
 対してイーリンたちは範囲攻撃で盗賊兵の集団に対抗するのだが、奏が一番手で『ぽこちゃかパーティ!』による突入を図ったため天十里やルチアーノが一般盗賊たちを攻撃しようにも味方をモロに巻き込むことになってしまう。結果としてエナム単体への集中攻撃を選択することになった。
 エナムはスキル構成上『単体では強く味方が多いと更に強い』という特徴をもつが『周りの味方を無視して自分を強行突破されると弱い』という弱点を持っていた。
 結果、エナムを倒しつつ多くの一般盗賊を残し、イーリンたちは砦への突入を果たしたのであった。
 できれば壁際に扇状に展開して防御を固めたかったが、前方からブリキットたちが、後方からは一般盗賊たちが詰めている以上円形に展開せざるをえず、リンネ・エイヴ・天十里といった後~中衛チームを中心とした星形陣形を組むことになった。
 星形陣形の安定性はだびんちおじさんも認めてるくらいなので、なかなか悪くない状況である。
 どう安定するかは、これから説明していこうと思う。

 陣形勝負で生きるのは反応速度と機動力。それがないなら全方位に防御を固めた陣形を組むのがよいとされている。中国やインドの盾と槍が主体だった時代の話である。
 一方現代(?)の混沌ではどうかと言うと、
「かかってこい、であります!」
 五角形のブリキット側。
 エッダは防御と迎撃の姿勢をとって一般盗賊兵たちに見得を切った。
 【怒り】付与はごく僅か(特殊抵抗分を含めると一般盗賊1~2人程度)ではあったが、敵側の火力を分散するという意味で効果を出していた。
 攻撃を強力に受け流し、反撃の拳を僅かながらも打ち込んでいく。
 奏はスタミナを使い果たし早速格闘攻撃にシフトしていたが、詰め寄る一般盗賊をしのぐ形で邪魔されていた。
「おーあーいむすかーりー。そーあーいむすかーりー」
 なんとか詰め寄ってザインを優先して攻撃したいが、ザインはといえば奏の時折届く攻撃を強力に防御し、生まれた傷を一般盗賊の投げるポーションで回復するという安定性を見せていた。
 防御を突破するすべが必要だ。ここで生きてきたのが、ルチアーノと天十里の攻撃。そして星形陣形だった。
 星形の一部。つまるところ五角形の一辺に敵がそこそこ集中する状態を想像してみてほしい。
 中央に位置取った天十里は中距離対応した『六発目の幸運』を、ルチアーノは至近距離から豪鬼喝を使用した。
 ルチアーノの描いた辺のラインを衝撃が走り、追撃するように天十里が連射した銃撃が盗賊たちを打ち抜いていく。
 その一部がザインだった。
 こうなってくると包囲した側であるブリキットたちの方が不利になってくる。
 リンネが中央からステータスアップ系の支援をしながらヒールオーダーをひたすらに連打し、周囲五角に展開している仲間が前方と後方の両側の敵に対応して防御と迎撃をする一方、仲間は列攻撃による火力の一点集中が可能だった。
 不都合な点があるとすれば、貫通系の攻撃で複数を対象に納められないところだが、イーリンもエイヴもこれを(聡明にも)複数を攻撃する手段とはみなしていなかった。
 味方を肉盾扱いするザインやクリッツたちを、盾ごと打ち抜くための手段としたのだ。星形陣形はこういうときでも斜線を通しやすいのでとても便利である
「邪魔よ――!」
 イーリンの魔砲がザインとそれを庇う一般盗賊をまとめて貫いていく。
 鎧を破壊されてよろめいたザインが後方の味方によびかけてポーションを投げるように指示した――その瞬間、エイヴが炸裂する弾を発射。
 鎧の内側で炸裂した弾が激しい出血をおこし、味方の回復程度ではフォロー不能な傷が開いてしまった。
 エイヴは神業のような高速リロードでさらなる射撃。傷口にもう一発のライフル弾を撃ち込むと、ザインの巨体はずずんと音を立てて倒れた。
「ザインの旦那? ゲゲッ、やべえ……!」
 軽口を叩きながらも天十里たちの射撃を回避していくクリッツ。
 彼の斬撃を、エッダたちが引き受けるように打ち払っていった。
 一般盗賊の撃破はあくまで『ついで』だ。
 条件を満たすにはエナム、クリッツ、ザインのネームド三名を撃破するだけでも事足りる。もっといえば、この三名を撃破することでブリキット盗賊団は致命的な打撃をうけることになる。
 雪之丞たちの狙いは、はじめからそこにあった。
 そしてそれはそこそこに難しいことではあったが、最初から丁寧に組み上げた作戦がそれを可能にしてくれた。
「お覚悟を」
 雪之丞がクリッツに飛びついた。
 頭上を飛び抜けていこうとしたクリッツが墜落。引き抜いたナイフが雪之丞の小太刀に払われる。
 服と翼を土だらけにしながら地面を転がったクリッツはナイフを逆手にもって攻撃をしかけるが、雪之丞はそれを流れるような小太刀さばきで払っていった。
 互いの刃が幾度となく打ち合う。
 その末に、銃声が数発。
 仲間たちの銃撃がクリッツの頭を通過していったのだ。
 クリッツはそこそこに整った顔面の上半分を失って倒れた。
 息をつくルチアーノ。
 未だ煙ののぼる銃口にフッと息を吹きかけると、『mission completion』と呟いた。
 そう。彼らの目撃は『ここまで』だ。
 直後にブリキットの放った魂弾がルチアーノの胸を貫き、不思議な軌道を描いて近くの一般盗賊二名とその先にいた奏を貫いていく。
「チッ、案外やるじゃねえかよ、ローレットとやら。刻まれちまったぜ、俺のココに」
 こめかみをつついて語るブリキット。しかし彼は口ぶりとは裏腹にその場を離脱しようとしていた。
「逃がさない」
 特殊弾を装填したエイヴがブリキットめがけて射撃をしかけるが、割り込んだ盗賊によって阻まれる。
「サンキュー。戦って死ねば英雄だ。逃げた奴は……わかるよな」
 ブリキットは部下の一般盗賊兵たちにそう告げると、戦場を離脱した。
 あわよくば狙えればよい、くらいに思っていたイーリンたちは無理に追いかけはしない。
 残った一般盗賊たちを相手取るのもそこそこに、乗り捨てて置いた馬車や馬にのって要塞からの撤退をはじめたのだった。

 翌朝、アーノルド要塞は無人となっていた。
 物資を持ち出す余裕もなかったのか、ブリキット盗賊団の持ち込んだ食料や弾薬、殺された部下の死体が転がるのみ。
 大将であるブリキットは既に撤退し、どこかへと雲隠れしてしまった。
 誰が見ても明らかだ。
 ローレットの、勝利であった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 丁寧な作戦と密度ばっちりのプレイング。
 整ったキャラクタービルド(特にイーリンさんの整い方が作戦に対して完璧でした)。
 いざというときのフォロープレイング。
 それに加えて突入時における工夫された有効アイテムの投入と、(一部ながら)それを有利に利用できる能力。
 ……等々を総合して判定しまして、『成功判定+アルファ』とします。

 herd案件だけあってちょっと要求ハードルも高かったのですが、成功条件クリアに加えてオプションAのクリア、オプションBも半分以上達成しました。
 ブリキットは現場から撤退しましたが、多くの部下を失ったことで砂蠍内での立場も失うでしょう。ある意味死ぬより酷い末路が予想されます。

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