シナリオ詳細
ゲロリティ・ラプソディ~虹色ボミットソン~
オープニング
●それでは私が皆さんに腹パンかましますので皆さんはゲロを吐く演技を迫真の感じでお願いします
……何を言っているんだ? 否、何をやらせようとしてるんだ?
それが、『博愛声義』垂水 公直(p3n000021)が一同に言い放った言葉に対する一般的な反論であった。
その日、『幻想の農業の将来のためである』として休耕地に集められたイレギュラーズの前に現れたのは、革製のバンテージらしきものを両手に巻いた公直と、心から帰りたいオーラを撒き散らす『無明の明』ドルト・ペオン (p3n000035)であった。いつになくやる気で腕を回す彼が放った言葉に理解が追いつかない一同を前に、公直はあろうことか、ドルトの腹部にいやに堂に入ったボディブローを打ち込んだ。あ、あれボディっていうかリバーブローだ。
「公直殿、これ痛くな……ッウ、ううう、ウォボヴェェェェェェェェェ!!!!」
怪訝な目で公直を見たドルトは、一瞬の間をおいて空気を読んだようにめちゃくちゃ汚い声で吐き気を訴え始める。ほどなくして四つん這いになった彼女の口から吐き出されたのは、まさかの『虹色の液体』であった。
比喩ではない。
吐瀉物特有の胃液の匂いはなく(むしろフローラルだ)、色合いも蛍光色混じりの、虹だ。粘性は薄く、さらさらと地面へ広がっていく。
それがドルトの足もとに広がるや、地面にすうっと吸い込まれていった。
「ッゥエ、ゲッホゲホ……これ絶対非効率極まりないでございますよ?! キナ臭い状況が続く今やるべき任務なんでありますか?」
「絶対に必要だ」
ドルトの言葉に、有無を言わさず返した公直はバンテージを外すと、イレギュラーズに向けてそれを見せた。
「『レインボーアーチ』って魔法のアイテムだ。何故かその昔量産されたらしいが、色々問題含みで使われてない。これで相手の腹を殴り、殴られたほうが迫真の演技で『吐く演技』をすると、さっきのように虹色の液体が出る。肥料になる。ゲロった時の演技がうまいほど良い肥料になる」
つまり、じゃっかん土地が痩せ気味の休耕地にゲ……虹色の液体を撒いて次の耕作に備えろと?
「そうなる。ゲロじゃないけど体液を消費するから水分補給は随時やってくれ。殴る側と殴られる側に分かれて、まあ時折入れ替えてやってくれ。それと」
これで殴られても全く痛くないから、演技下手だったらガチで吐くことになるからやめてほしい。
何から何まで鼻につく言い方だったが、過不足無く無茶ぶりをしてきているので本当に……本当に何なのだろう、この依頼は。
まあでも全ては幻想の農耕の将来のためなのである。
- ゲロリティ・ラプソディ~虹色ボミットソン~完了
- GM名三白累
- 種別イベント
- 難易度VERYEASY
- 冒険終了日時2018年11月01日 21時05分
- 参加人数8/∞人
- 相談7日
- 参加費50RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●NGテイクが出なかったので全員仲良く虹色に染まれ
「これが『レインボーアーチ』だね。わたしも現物をみるのは初めてだよ! 確か……そう! 胃の内容物を殴った時に流し込む魔力で変換してなんか土地に行き渡りやすいようなアレコレをした結果、いい感じに栄養が行き渡るんだよね! 知っていたとも!」
「みずげい、っていうんだよね!」
レンジーがありあわせの知識と精一杯の知ったかで全力の解説を行ったが、Q.U.U.A.が一言に纏めてしまった。水芸。まあ、見た目は違わない。
「どうしてこうやって肥料を作ろうとしたのか、さっぱりわかんないよ……」
チャロロは説明を受けてもなお、理解が追いついていなかった。むしろ理解できる人間がここに居るなら呼んできてほしい。報告書を書いている今この時ですらそう思う。
しかしなんだ、チャロロは恐らく北の大自然とか知ってる系なので肥料の大切さは重々承知しているはずなので、『つくり』はともかく必要性は理解できる……と思う。一瞬、別の手段を口にしようとして黙り込んだのは内緒だ。
「レインボーアーチか、これ良いな。あ、ゲロの部分じゃなくて殴った相手にダメージを与えないところがな?」
黒羽の気持ちはわかる。凄くよく分かる。彼のスタンスを知る者ならこんなモン持って帰らせたらどうなるかよく分かる。シリアスシナリオでは効果を発揮しませんとか注記が要るアレになるので結局使えないやつだ。
他方、美由紀は乙女心を胸じゃなくて両手に携え、布地控えめな魔法少女っぽいコスプレで農地に現れるという暴挙に出た。
「美由紀知ってます! 薄い本でゲロ吐いてる女の子はこういう服装してるんです! クラスの男子が見てました!」
いや、腹パンされまくるアイドルとかケモミミ種族の本はしってるけど魔法少女ばっかりはちょっと識らないな。いやなんでもありません。ありませんってば。
「ミナサーン!? オウトゥ! するからと言っても慌てるコトナカレデース!!」
アフロは話し方がすでにアフロだった。崩れないバベルでも彼のアバンギャルドな口調は直せないらしい。
「このケドウィン様に吐けだぁ~? はっ、いいぜやってみな! お前にそれができるなら!」
ケドウィンはどこかに向かって渾身のポージングで啖呵を切ってみせた。出来るかどうかじゃない。お前(の吐瀉物)が(その)ママ(肥料)になるんだよ。
「おーっ、よくわからないけどリナリナいっぱい吐く! 吐く!」
リナリナは……もう何も言うまい。原始式マー〇イ〇ンになる未来しか見えないし多分画面恥(誤字ではない)要員なので気にしちゃいけない。
ちなみに、この光景を見守っていた情報屋は「処置なし」という顔で首を振り、リヤカーで樽と柄杓を用意した白カワウソは既に震えて使い物にならなかった。
むしろこの状況に怖気づかない彼らをどっからかき集めたのは教えてほしい。切に教えてほしい。
「美しいダンシングと、腹パンダイコのリズムにアワセテ!! ビブラァート! &コッブシィ!! 心構えとクフーがあれば! オールオッケーデース!」
ん? 今オール(なんでも)って言ったよね?
そしてここまで一同の状況を見ていた白カワウソは恐ろしいことに気付く。
「そ……その、申し訳ございませんが、先輩方のスタンスはどちらでありますか……?!」
『吐く側』
なんで! そういうところだけ! 思い切りがいいのよ!
●以下の描写が今後どのような悪影響を及ぼしても当方は一切の責任を持ちません
「きゅーあちゃんもレインボーするよ! さあ!」
さあ、じゃねーよ。ドルトが恐る恐る振りかぶってQ.U.U.A.の腹部に拳を当てると、次の瞬間、彼女は後方に吹き飛んだ。涙目で自分じゃないと首を振るドルトだが安心してほしい、セルフで衝術をカマしたのだ。喉奥からせりあがる、酸っぱくもなくフローラルなそれをぶちまけながら、Q.U.U.A.は錐揉み回転とともに虹の液体をぶちまけた。
回転速度が早すぎて吐いてる状態が見えないのも芸術点が高い。散布範囲が広く技術点も高い。
惜しむらくはそんなモン誰も求めてなかったってことだ。
「これぞ大道芸、スピニングレインボー! どうだ!」
次の準備をしながらキメ顔だが、どうだじゃなくて……。
「――つまり、どういうことかと言うとだね」
「舌、噛むでありますよ?」
レンジーの大演説にドルトは容赦がなかった。
「嘔吐する演技を゛ン゛ぉごごァォォォんえろえろえろ……んっぷ、お゛えぇぇぇ……ろろろろろ…………んっぷ……ふう……と、このようにすれば栄養がこの土地に行き渡っていくんだよ!」
容赦のない腹パンで突如として吐く演技を繰り広げたレンジーの顔中虹だらけであった。鼻と喉は繋がってるし、なんなら涙袋から鼻にいくのだから逆流もある。つまり顔から出ている体液全部が虹色なのである。……憐れな。
「ロッパー!! ロッパー!!!!」
「はい『こみ上げてる感』が足りない! もうちょっと喉の奥から!」
他方、殴られるたび景気よく吐き出すリナリナは世辞にも演技がうまいとは言えなかった。レンジーの厳しい指導によって彼女が現代人並のゲロを吐けるようになるまで大体樽一個分消費しているが、どうせ樽5個くらいは消費する予定だったのでいいんじゃないだろうか。
「さぁ、イキマースよ! ワンッ! ツー! ワンッ! ツー! スリー! フォー!」
特定運命座標よりむしろダンス指導員の方が合ってそうなアフロのリズムに合わせ、ドルトは彼の腹を叩いた。何を勘違いしたか、「ワン」からリズミカルに5回位。
「オロロッ! オロロッ! オロロロルォロ!」
見事な三三七拍子に合わせて吐き出された虹に、ドルトはこの日一番の笑顔を見せた。
「もっと! もっとキレ良くやるところを見せてほしいであります!」
「オフコース! オンガク、即ち、オトは! オウトなんかにクッシマセーン!」
アフロ、多分2時間後くらいに「オウトには勝てマセーン、デシタ……」とか言うコースに入ったと思うけど多分本人気づいてないし、まあ、いっか。
「吐く演技なら沢山見たから大丈夫です! さあ!」
美由紀の自信満々な様子に押され気味の白カワウソは、彼女の腹部におそるおそる拳を当てる。
「うぼぉ……え゛え゛え゛っっっ……」
瞬間、裏返る眼球。折れる体。プロのボディブローもかくやといった風情で体を折り、美由紀は虹を撒き散らす。ドルトの目が恐怖に濁った。そして美由紀は折れ曲がった姿勢のまま倒れ込み。
「え゛ろ゛え゛ろ゛ぉっ……」
びくん、びくんとこまめに痙攣を繰り返しつつ、胃の内容物と体液を虹に変えて口の端から流れ出す美由紀の姿は全てを捨てた80'sバラドルだって絶対やらない状態だった。これに加え、『レインボーアーチさえ効果があるなら』さらに上を狙っていたと彼女が語ったら……一同はしばらく固形物が食べられなくなりそうだ。
「おいおいビビっちまったのかぁ~? 俺の番が来る前に夜になっt」
「えいであります」
「ぐぼろろおろろr、お゛ろ゛ぉぉぉ」
ケドウィンの精一杯の前振りに応えるように、ドルトは彼の腹を殴った。
力のこもってない一撃に対し、許しを請うように膝を折った彼は相手に対する暴力の向け方のみならず、許しの請い方も心得ているらしい。アウトローってすごいんだね。
「へッ、まだまだこんなもんじゃ」
「えい」
「オロロロオロロ」
ケドウィンの前振りを覚えたドルトによる容赦ない殴打がどれだけ続いたかは……あまり語りたくない。
「ぐ、うぅ、うぶ、ゥヴォロロロロロ!!」
「オッ――う、ッゥ、オブッ……エレレレロロロオロロロ」
その頃。
チャロロと黒羽は、示し合わせたかのように互いの波乱を小突き、吐く演技を繰り返していた。
チャロロの演技はどんどん吐き出すように、黒羽のそれはたっぷりとタメを作った後で一気に吐き出す静と動の組み合わせ。両者いずれも劣らぬ演技の巧みさを見せている。
虹色の吐瀉物を地面に撒き散らし、時折水分補給を交えつつ両者は気遣わしげに互いの腹を小突き回す。
やってることはとんでもなくファジーなのだが、これも真面目にこの土地の未来とかを考えた結果なのである。流石に年1回のペースでこんなことをしているわけではないが。
「かんせい! レインボーえき!」
Q.U.U.A.は持ち込んだ道具をひたすらに混ぜ、虹色の液体を作っていた。間違いなく飲むのはおすすめできない液体なのだが、人工知能っていうのはそんなもん飲んでも大丈夫なのだろうか。一気に胃袋(?)に流し込んだ彼女は、飲み干してから僅かに顔をしかめた。
「オエっ……」
あ、これガチの吐き気だ。描写したら年齢制限つくやつだ。
すかさずフォローに入ったレンジーの一撃に合わせ、演技ではないガチの吐き気がQ.U.U.Aの喉に、腹に襲いかかる! だが一発もらっているから虹色で済んでいるようだ! すげえなアイテム!
「……ふう。これってりょな? とかいうんですよね?」
ひとしきり演技を終えた美由紀が水分補給がてら公直に問いかける。返ってきたのは、返事ではなく非常に反応に困った時の表情であった。
……で、まあ。
たった8人ながらも際限なく吐瀉物を撒き散らしまくれば、アイテムの効果もあって農地にいきわたる栄養はやはり多く。
全員あわせて相当な無理をした気がするが、その分の成果は出た……というべきなのだろう。
「オッ、オロ、ロロロ、ロ!」
アフロは手拍子を取りながら嘔吐というすごいことをさらりとやってのけているが、こんな場でこんな行為でさえなければ一時代築けただろうに。惜しい才を使い潰してしまった……。
その傍らではリナリナがひたすら飲んだ端から虹色大噴射であったが誰も気にしていないので、よしとする。
……ちなみに。
その後数名にローレットから非常に不名誉な認定証が送りつけられたことは念の為付記しておく。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
シナリオの構想が持ち上がったのが9月末。公開まで間をおいたらタイミングが最悪だった気がしないでもないです。
なんか皆さん、その……強く生きてくださいね?
あと折角300文字もあるんだから吐瀉パターンが4~6個来るかなとか思った時もありました。皆しゃべっちょ(方言:語りたがり)だな。私としては嬉しいけど。
GMコメント
(虹色の液を)吐けッ、(幻想の未来のために)吐くんだッ!
そんな依頼です。
●情報確度
Aです。想定外の事態は(イレギュラーズ同士でのあれこれ以外では)起こりません。
●達成条件
休耕地の栄養を満たす程度に虹色の液体を撒き散らす
●『レインボーアーチ』
革製のバンテージ、というかナックルダスターというか、そういう系のアイテム。装備した場合のすべての攻撃に【無】が追加される。
殴られたがわが吐く演技をすることによって、虹色の液体が吐き出される。
吐く演技が迫真の演技であればあるほど液体の栄養価はあがり、農耕地の肥料として適切になる模様。
なお、体の水分をもっていかれることは確実だが、体内の栄養が奪われるわけではないので、水分補給さえすれば大丈夫。
さらに言えば胃液とか混じらないので、一日吐き通しでも食道にダメージがいかないオマケつき。
●現場
幻想、王都近辺の休耕地。豊作だったけどその分栄養足りてないんだよなー来期の収穫が心配だなー(棒
●プレイング書式
1行目 同行者とか参加タグ(単一参加者のタグとかは無いと助かります)
2行目 アドリブの可否と程度、絡みの可否。何が何でも吐きたくないなら「吐瀉NG」と書いてください。
3行目 殴る側or吐く側(最終的に全員吐いてもらうので初期描写です)
4行目 プレイング本文(派手に殴ろうとしたり派手に吐くフリが望ましいです)
以上、宜しくおねがいします。
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