PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<終焉のクロニクル>音楽学校の戦い

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 Bad end8との戦いは熾烈を極め、状況は『神託の日』に向け刻一刻と悪化を続けていた。
 そんな中、混沌の滅びを確信的に決定づけてきた『神託』が遂に姿を現す、と空中神殿のざんげから最悪の『凶報』が届く。
「遂に、その時が来るでごぜーます」
 イレギュラーズをはじめとする混沌各国の軍は、マリアベル・スノウが生じさせたというワーム・ホールを通って影の領域へ。
 影の城にいるイノリたちを倒し、Case-Dの顕現を回避するための進撃を開始する。
 一方、魔種側もやられてばかりではない。
 人類圏に侵攻したBad end8の軍勢もまた、終局に向けて大暴れを開始していていた。


 海洋、リッツバーグより数十キロ。とある漁師街のはずれにある、とある音楽学校。
 不安な世界情勢の中、まもなく卒業の日を迎える同校は全校生徒が一丸となってメモリアル・コンサートの準備を進めていた。
「あれから2年ですか。時がたつのは早いものだ」
『未解決事件を追う者』クルール・ルネ・シモン(p3n000025)は、返事を先延ばしするため、学園長室の窓から春先の穏やかな陽射しを受けてうねる海を見た。
「子供たちは、とくにリックは真剣です。音楽家としてではなく、戦士として皆さんとともに世界のために戦いたいと……。反対してもあの子たちは我々の目を盗んで戦場へ向かうでしょう」
 ノスタルジックな旋律が床の下の方から聞こえてきた。
 2年前、この学校で起こった連続殺人事件をイレギュラーズが解決したことがある。
 その時に助けられた生徒が中心になって、お礼と感謝の気持ちを込めてイレギュラーズに送られた曲だ。
「だったら、予め子供たちを安全な戦場に、それもできるだけ後方に、と考えたのです」
「学園長、戦場に安全な場所なんてものはない。空中庭園に呼ばれた子もいるようだが、いまさら……ハッキリ言って足手まといだ」
「では、どうすればあの子たちを――」
 校舎が揺れ、ガラスが割れる音が響いた。
 一拍遅れて、悲鳴が続く。
 再び校舎が揺れた。
 煙が上がり非常ベルがけたたましく鳴る。
「なんだ?!」
 学園室の扉が乱暴に開かれた。
 顔を真っ青にした教師が駆けこんでくる。
「ま、魔物が! 魔物の大群が攻撃してきました! リックたちが立ち向かっています」
「バカ! すぐに呼び戻せ! 俺が説得に呼んだイレギュラーズたちがもうすぐやってくる。それまで校舎に立てこもって防衛に徹するんだ!」

GMコメント

魔物たちに襲われている音楽学校の生徒と先生を助けてください。
魔物は陸側から音楽学校を襲っています。
イレギュラーズは海側から、校舎を回り込んで魔物を撃破してください。

●依頼条件
・まだ生きている生徒と教師たちを守る。
・魔物を全て撃破する。

●場所
海洋
リッツバーグから数十キロ離れたところにある漁師街の音楽学校。街から少し離れている場所に立っています。
3階建ての白い校舎です。
現在、 クルールの指示で窓は目張りされ、出入口にバリケードが築かれています。
スキルのもつ一部の生徒がクルールの指示を無視して3階の窓から魔物を攻撃していますが、ほとんど効果がありません。
それどころか、まどからひっぱり出されて魔物に殺される生徒が続出しています。

●敵……魔物 小型のワイバーン、複数。
 人類圏に侵攻したBad end8の軍勢です。
 終局に向けて大暴れを開始、その一環で村や街を襲っています。
 するどいかぎ爪と牙で空から強襲。
 口からは火の玉を吐き飛ばします。

●その他
音楽学校にはクルールがいますが、彼は防衛に徹しています。戦力にはなりません。
3階で魔物たちを攻撃している生徒たちも戦力外です。
むしろはやめに辞めさせないと被害が出ます。

よろしければご参加ください。

  • <終焉のクロニクル>音楽学校の戦い完了
  • GM名そうすけ
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2024年04月06日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

チャロロ・コレシピ・アシタ(p3p000188)
炎の守護者
奥州 一悟(p3p000194)
彷徨う駿馬
亘理 義弘(p3p000398)
侠骨の拳
カイト・シャルラハ(p3p000684)
風読禽
シューヴェルト・シェヴァリエ(p3p008387)
天下無双の貴族騎士
イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色
獅子若丸(p3p010859)
百獣剣聖
紅花 牡丹(p3p010983)
ガイアネモネ

リプレイ


 波が岬の岩に打ちつける度に低い波音がとどろく。
「あれを見ろ。ワイバーンだ!」
 『風読禽』カイト・シャルラハ(p3p000684)の一言で、音楽学校の白い校舎の裏手に巨大な蝙蝠を思わせる鈍色の翼を認めた途端、イレギュラーズは全力で駆けだした。
 『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)は青いワイバーン、リオンに乗った。
「彼らを死なせてたまるか、急いで向かうぞ!」
 白馬シェヴァリオンに跨った『策士』シューヴェルト・シェヴァリエ(p3p008387)が、いち早く正門にたどり着く。
 黄、白、ピンク、紫、様々な色のラナンキュラスが咲く花壇の向こうに見える校舎は、異様な雰囲気に包まれていた。
 窓という窓が内側から板で塞がれており、校舎の裏側からは、バサバサとシーツを振るような音に加えて、時折ギチギチギチという歯を噛みする嫌な連打音が聞こえてくる。
「助けてっ」
「放せ、放せよ!」
 校舎裏で重なるボーイソプラノの悲鳴、続いて別の少年たちの怒鳴り声と矢を射る音がした。
「回り込む余裕はない。屋根を飛び越すんだ、シェヴァリオン!」
  シューヴェルトがあぶみを蹴ると同時に、『ガイアネモネ』紅花 牡丹(p3p010983)は片翼を広げた。
 続いてイズマが駆るリオンも急上昇する。
「屋根越え上等! かっ飛ばす。オレの推力舐めるんじゃねえ!」
 赤いロケットよろしく、地を蹴り、跳んだ牡丹が空を疾駆した。
 弾道の頂点で足元を見る。
 飛行種の少年が2人、ワイバーンに捕まっていた。
 校舎から離れたワイバーンを追撃するため、窓から身を乗り出したところで横から飛んできた別の個体に捕まってしまったのだろう。
 鉤爪の間に血にまみれた翼が見える。
 牡丹は怒りに身を震わせながら吠えた。
「このクソ野郎ども……。ぶっ飛ばしてやる、覚悟しろ!」
 イズマは状況を一瞬で把握すると、少年を後ろ脚で掴んでいる2頭のワイバーンに、強く響く声で言い放った。
「子供達を放せ!!」
 直後、イレギュラーズに捧げるシンフォニーを携帯するスピーカーから響かせる。
 校舎の中から無謀にもワイバーンを攻撃しているリックらに、イレギュラーズが来たことを知らせるためだ。
 イズマが奏でる勇壮な曲に乗り、カイトが放つ呪いの言霊が夢を食らう緋の鳥となってワイバーンたちの背に襲い掛かる。
「海洋の空は飛行種の領域だぜ、叩き落として地を這わせてやらあ!」
 ワイバーンたちは自分たちよりも高く空を飛ぶ者の存在に脅威を感じた。
 つい先ほどまでは自分たちが捕食する側だったのに――。
 やられる前にやってしまえ。
 鋭い牙がギザギザに並ぶ口を開けてカイトに襲い掛かるワイバーンを、シューヴェルト、牡丹、イズマが迎え撃つ。
 3階の窓からも矢や火の玉が飛ばされているが、こちらは当たるより避けられる方が多い。
「思っていたよりも数が多い。一体ずつ確実に仕留めるんだ」
 シューヴェルトは厄刀を振るった。
 シーツが引き裂かれるような音をたてて、鈍色の翼が破れる。
「仕上げだ。受け取れ」
 なおも空中に留まろうと無様に足掻くワイバーンに蒼脚を見舞い、地上へ蹴り落とした。
「輝くもの天より堕ちな!」
 牡丹はトリッキーな飛行軌道で的を絞らせず、ワイバーンたちを戸惑わせる。
「頭数ばかり揃えやがって……とにかく窓周りの生徒達へ攻撃させねえよう、こっちに引き付けるぞ!」
 イズマは演奏のテンポを早めて自身のテンションを高め、ゾーンに入った。
 夜空を抱く鋼の細剣を力強く振って退魔の曲を奏でながら、迫りくるワイバーンを次々と退ける一方で、窓に陣取って戦う生徒たちにも声をかける。
「よく頑張ったな、助けに来たぞ。あとは俺達が戦うから皆は下がれ!」
「でも友だちを助けなきゃ――」
 血しぶきが霧となって広がる中、三叉蒼槍を構えたカイトが少年を捕まえている二頭のワイバーンの間を急降下で抜ける。
「心配するな。助けるから無理無茶無謀なことせず大人しく待ってな! 出番のカーテンはもーちょい後だぜ!」
 カイト自身が纏う神風と生徒たちにかけた神風が乱気流を起こし、巻き込まれたワイバーンたちは空中制御能力を失った。
 すぐに少年を放さなければ落下の危険もあるというのに、強欲にも掴んだまま必死になって翼をはためかせる。
 そこへ――。
「フン、食い意地だけは一級だな。ならば、怒り、憤り、全てを込めた俺の拳も喰らうがいい!」
 必死に体勢の立て直しを図るワイバーンの眉間に、『侠骨の拳』亘理 義弘(p3p000398)の鬼のごとき剛健が叩き込まれる。
 頭蓋を粉砕されたワイバーンの筋肉が弛緩し、少年を掴んでいた後ろ脚の鉤爪が緩んだ。


 窓の内に生徒たちの悲鳴が響く。
「うわああ!」
「きゃあああ!」
 折れた翼で飛ぶこと叶わず、頭から落下する少年を腕で抱き留めたのは『彷徨う駿馬』奥州 一悟(p3p000194)だ。
「セーフ。怖かったな、もう大丈夫だ。みんなのところへ戻ろうぜ……とその前に」
 一悟は少年を抱きかかえたまま、得物を横取りしようと近づいてきていたワイバーンに光の柱を叩き込む。
 墜ちるワイバーンとすれ違うようにU字上昇し、開いた3階の窓から校舎に飛び込んだ。
「一悟さん?!」
「ようリック、元気そうだな。2年ぶり? みんなも久しぶりだな」
 一悟は恐怖と出血でぐったりしている少年をリックたちに預けた。
 すぐに怪我の手当をするようにいう。
「とりま、窓から離れてくれ」
「一悟さん、あぶない。後ろ!」
 窓を背にする一悟の背中を、カイトがばら撒いた怒りに囚われなかったワイバーンたちが狙う。
 突然、ボッという音が弾けて、先陣を切って突っ込んできた2頭が一悟と少年たちの視界から消えた。
 義弘のタックルを受けて全身の骨を粉々に砕かれたワイバーンが、窓のすぐ外を水平に吹っ飛んでいく。
「おい、俺の目の前で誰が勝手をしていいって言った」
 義弘は窓の前に陣取ると、眼光を鋭くしてワイバーンたちに啖呵を切った。
「おまえさんらの相手はこの俺たちだ。死にたい奴からかかってこい」
 隣の開け放たれた窓の前には牡丹が陣取る。
「遠慮はいらねえぜ。まとめて来い!」
 2人は拳を軽く握った利き腕を前に出し、ファイティングポーズを取った。
 戦う壁となった2人の後ろを通り、シューヴェルトとイズマが窓から校舎に跳び込んでいく。
「すまない。しばらく時間を稼いでくれ」
「彼らを避難させたら僕たちも参戦します」
 シェヴァリオンとリオンはすぐに戦場を離れた。
 その間にもう一体、少年というエサを確保したワイバーンが逃げ出した。
 『炎の守護者』チャロロ・コレシピ・アシタ(p3p000188)が逃げるワイバーンの前に回り込む。
「どこへも行けないよ。なんでかって? それはオイラが――」
 チャロロはワイバーンとの距離を一気に詰めた。
 まず機煌重盾でワイバーンの大口を叩いて牙をかわし、宝剣を頭に叩きつける。
「倒すからさ。……っと」
 チャロロはすぐに少年をつかんで離さないまま墜ちるワイバーンを追った。
 魔物がどうなろうと知ったことではないが、このままでは捕まっている少年まで大ダメージを受けてしまう。
「捕まえた」
 地面に激突する寸前に、ワイバーンの後ろ脚を両手で掴み、落下をくい止める。
「お願い、獅子若丸さん! こいつにとどめを」
「承知したである」
 『百獣剣聖』獅子若丸(p3p010859)は、意識を取り戻したワイバーンが逆さ吊りのまま撒き散らす火の玉を軽々と跳んでかわす。
「覚悟!」
 鈍色の首を射程に捉えるや、 獅子若丸は鯉口を切った。
 音もなく大剣が鞘から滑り出ると、地表から伸びあがってワイバーンの首筋を襲う。
 弧を描いて伸び飛んだ斬撃は、ワイバーンが火の玉を吐くより早く頸動脈を切り上げた。
「我が名は獅子若丸である。我が爪は鋭く、牙は長く。我が心には義があり、慈悲がある。だが、子供を獲物とする者には、その牙を剥くまで容赦しないである!」
 獅子の咆哮は、地に降り立ち何かを貪っていたワイバーンたちの意識を引きつけた。
 赤く染まった口を開いて奇声を発し、獅子若丸目がけて集まってくる。
「チャロロ殿、はやくその子を校舎の中へ。ここは吾が引き受けるである!」
「ありがとう。すぐ戻ってくるよ」
 チャロロは死んだワイバーンの後ろ足の中から少年を助け出した。
 ぐったりとしている少年を背負って飛ぶ。
(「――あ」)
 チャロロは上昇しながら、校舎の際に横たわるものを見つけてしまった。
 下唇を強く噛んで込みあげてくる感情を抑え、3階の窓を目指す。
 地上のワイバーンたちが離れた後に残されていたのは、イレギュラーズが駆けつける前に捕らわれた少年たちの遺体だった。


 チャロロが背負う傷ついた少年をいち早く中に引き入れようと、イレギュラーズの制止を振り切って、生徒たちが窓に群がる。
「おい、よせ!」
「下がって!」
 生徒たちの騒ぎ声に気を魅かれた一部のワイバーンが、上空でヘイトを稼ぐカイトの元を離れ、窓目がけて飛んできた。
  地上で獅子若丸を囲っていたワイバーンの一部もその動きに加わる。
 背中を向けたまま、義弘は子供たちを一喝した。
「この状況で庇いながら動いてやれるほど余裕がある訳じゃねえ。おとなしく引っ込んでろ!」
 チャロロが中に入ろうとするが、生徒たちが邪魔で入れない。
「おねがい、ここは下がって!」
 牡丹は怒鳴った。
「おい、てめえら! 周りをよく見ろ! てめえらの勝手でどれだけ被害と犠牲が出た!? てめえらが憧れたヒーローは! むやみやたらと犠牲を出すもんだったのかよ!?」
 返事がないことに怒りを覚えつつ、違うだろ、と畳みかける。
「怒りも許せねえのも分かる! けどな! 死ぬな! 護れ! 空はオレ達に任せろ」
 渋々ながら窓から離れ始めた生徒たちを、チャロロを含めたイレギュラーズ4人がかりで教室の中に押し込める。
 ワイバーンたちはもう目の前だ。
「牡丹、フォローしてくれ」
「いいぜ、行きな」
 義弘は窓から離れ、仲間と子供たちを攻撃に巻き込まないようにした。
 ワイバーンの小隊と接触する瞬間に体を螺旋状に捻りながら、恐ろしい咆哮を上げる。
 八岐大蛇のごとく暴れる姿はまるで災厄そのもの。
 回転しながら繰り出される無数の拳は、周囲の敵を軽々と叩き潰し、血の渦を作り出す。
 辛うじて義弘の攻撃を避けられたワイバーンも、窓をくぐり抜けることなく、すぐに仲間の後を負うことになる。
「真っ直ぐ飛んでぶっ飛ばす!」
 牡丹は全身に炎を纏うと、赤い弾丸となってはぐれワイバーンに真っ向から突っ込んでいった。
 気づいたワイバーンが口をあけて火の玉を吐き出そうとするが、もう遅い。
 牡丹と高速でぶつかった衝撃で、頭から尻尾までぎゅっと圧縮されてぶっ飛んでいく。
「眼の前で犠牲が出ても今は止まらねえ。悔いるのは後だ、次、こい!」
 校舎の中では生徒たちの説得が始まっていた。
 まずシューヴェルトが体から光を発して、威風堂々と生徒たちの注目を集める。
「君たちはこの貴族騎士が守って見せる! だから僕たちを信じて避難しろ!」
 アニキカゼを吹かせたチャロロが前に出る。
「もう犠牲が出たのを見たよね? きみたちにはまだ早いよ! あとはオイラたちイレギュラーズに任せて!」
 イズマは生徒たち一人一人の顔を見回した。
「敵に立ち向かう勇気は素晴らしいが、無謀なことは止めてくれ。未来の戦士なら大人より先に死ぬな。敵は俺達で倒すから、君達には安全確保を頼むよ」
 でも、と口ごもりながら、生徒たちがリックを盗み見る。
 どうやらリックが3階で戦う生徒たちのリーダーらしい。
 きっとまなじりをけっして一歩前に出てきた。
「ボクたちにもできることがあるはずです。一緒に戦わせてください」
 一悟はリックに説得の的を絞った。
「一緒に戦いたいって気持ちはありがたいけど、リック、お前が怪我したり死んだりしたら、天国にいるお前のお姉ちゃんが悲しむだろ。ピアだって悲しむぜ」
 リックだけでなく、その場にいる生徒たちみんな顔を臥せる。
 父や母、大切な人たちの顔が頭に浮かんだのだろう。
「皆も世界のために戦いたいならまず生き残れ。ここで死ぬような真似はするな!」
 イズマが最後の一押しをすると、生徒たちは怪我人を連れて1階に降りることを承諾した。
「いい判断だ。よし、ワイバーンたちを片づけに行くぞ」
「シューヴェルトさん、みなさんと先に出て。念のためだけど、いま塞がれている窓が壊れないように、オイラ保護結界を張るよ」


 シューヴェルトが窓に姿を見せるなり、シェヴァリオンが駆け飛んできた。
 背に飛び乗り、手綱を握る。
「カイト君たちは僕と義弘君で助ける。牡丹君はそのままここを守ってくれ。イズマ君は獅子若丸君の手当てを」
「わかった」
 リオンを呼び戻して騎乗したイズマが、ワイバーンに取り囲まれつつも獅子奮迅の働きをしている獅子若丸に恩寵の光輪を投げおろす。
 続いて窓から飛び出した一悟が獅子若丸包囲網に駆け寄り、業火を纏わせたトンファーを振るって退路を切り開いた。
「獅子若丸、よく頑張ったな。こいつらは俺たちが始末する。一旦、下がってくれ」
「すまん、頼むである」
 チャロロが怒り狂いながらなおも、ボロボロに切り裂かれた翼を広げて獅子若丸を追うワイバーンの前に飛び込む。
「オイラが相手だ!」
 前に構えた機煌重盾でワイバーンの体当たりを一旦受け止め、鈍色の体が仰け反ったところへ反撃の一撃を叩き入れた。
 獅子若丸の手当てをイズマに任せ、一悟と牡丹、チャロロは横に並んで壁を作る。
「返り討ちにしてやろうぜ!」
「おう!」
 イズマは獅子若丸を校舎の壁にもたれかからせると、3人の後ろから黄金色の光を矢のように放って仲間を援護した。
 合間に「幻想楽曲オデュッセイア」を歌う。
 神秘を纏った歌声が響き渡ると、仲間たちの傷は不思議な力で癒されていった。傷口からは光が溢れ出し、傷がみるみるうちに消えていく。
 怒涛の攻撃を繰り出して地上のワイバーンを殲滅する上空では、激しい空中戦が繰り広げられていた。
 カイトはワイバーンの爪を回避し、すり抜けざまに三叉蒼槍を鈍色の背中に突き刺す。
「竜よりも高く飛べる空の王を舐めるなよ!」
 だがワイバーンもその程度では致命傷にならず、翼を羽ばたかせて一旦距離を取ろうとする。
「逃がすかよ」
 翼を畳んで急降下しつつ、逃げ出したワイバーンの下に潜り込むと、カイトは槍を鋭く突き上げた。 一転、急上昇して敵の背を取り、三度槍で突いて落とす。
 視界の隅に接近する影を認めたカイトが、神風の力を借りて鋭い爪の攻撃を回避した。
 シューヴェルトが、的に逃げられたワイバーンに呪詛の刃をすかさず放って仕留める。 
「貴族騎士流抜刀術、『翠刃・逢魔』!」
 義弘は剛腕を振るい、カイトを中心に密集しているワイバーンたちを散らす。
 距離を取らされたワイバーンたちが一斉に、怒りに任せて口から火の玉を吐きだした。
 その多くを回避するも、一部が命中し、義弘が炎に包まれる。
「義弘!」
「俺にかまうな。やれ、カイト」
 カイトは義弘を助けるべくイズマが下から猛スピードで空に戻ってくるのを確認すると、目配せでシューヴェルトに離脱を促した。
 仲間たちを巻き込まないように、そして確実に残っているワイバーンを倒すために、今一度呪いの言葉をばら撒いて己に敵意を引きつける。
「その醜いツラもいい加減見飽きてきたぜ。海洋の空から消えてくれ」
 蒼穹をバックに大きく広げられた風読禽の翼が、次第に赤く、太陽のように輝いていく。
「失せろ!!」
 力強い羽ばたきひとつで、赤く輝く羽根を広範囲にばら撒いた。
 まるで緋い雨のように周囲に広がった羽根が、ワイバーンの背や首、翼に触れると同時に爆発する。
 ワイバーンたちは絶叫しながら炎と破片を空中にまき散らし、次々と地に墜ちていった。
 

 牡丹は生徒たちの両親を必要以上に悲しませないよう、生徒たちの遺体をエンバーミングして、ラナンキュラスの花で作られたベッドに安置した。
 シューヴェルトが鎮魂の祈りを唱える。
「オイラたちがもうちょっと早くきていれば……」
 チャロロが花を手向けながら涙を流す。
 クルールに連れられて校舎の外に出てきた生徒たちと一緒に、義弘と獅子若丸も花を手向けて冥福を祈った。
 イズマはリックの傍に3階で戦っていた生徒たちを呼び寄せた。
「音楽家かつ戦士である先達として助言する。大事なのは自分の力量を見極めて、正しく堅実に強くなる事だ。そうして力をつけたなら、次は一緒に戦おう」
 一悟がリックの肩を叩く。
「敵と直接やりあうだけが戦いじゃない。音楽で味方を鼓舞するのも立派な戦い方のひとつだぜ」
 カイトはわざと明るい声を出して、しゅんとしている生徒たちを活気づける。
「メモリアル・コンサートには俺も呼んでくれよ? 大丈夫だ、ちゃーんと開催もできるようにするし、俺もちゃんと戻ってくるからな! 返事は?」
 生徒たちは、涙混じりの声を揃えて「はい」と返事した。
 もう大丈夫だ。
 イズマは生徒たちの目を真っ直ぐ見つめる。
「皆の活躍を楽しみにしてるよ。卒業おめでとう」

成否

成功

MVP

カイト・シャルラハ(p3p000684)
風読禽

状態異常

カイト・シャルラハ(p3p000684)[重傷]
風読禽

あとがき

皆さんの説得で音楽学校の生徒たちは前線に立つことを諦めました。
魔種たちとの戦いはイレギュラーズに任せ、物資の運搬やその護衛など、後方支援に徹すると約束。
特に音楽で味方を鼓舞する活動に力を入れるようです。
最後の戦いもみなさんの力できっと勝利すると信じて。

MVPは海洋の空の守護者に。

ご参加ありがとうございました。

PAGETOPPAGEBOTTOM