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シナリオ詳細

<終焉のクロニクル>雪辱の思いはしかし、白き異形に飲まれ逝く

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●屈辱の果てに
 『滅石花の騎士』という立場に驕りが無かったといえばうそになる。変容する獣が成熟したことで、勝利は間違いないと己を奮い立たせたことも事実である。だがしかし、アーバル・リリウムという男は悲しいかな、その優位を活かすにはあまりにも傲岸にすぎたのだ。
 影の領域に在って反転に至っていなかったのは単純に彼がそれほどの才覚を持ち合わせていなかったことにある。
 傲岸であるがゆえに己の敗北を認めることが出来なかった。哀れで非才な男であった。
 だからこそ、余地があった。
 取り憑き、奪い、貪るだけの屈辱に塗れた感情があった。
 悲しいかな、『七罪』亡き今、彼が反転する余地こそあれど彼をいざなおうと振り返る輩はいない。呼び声よりも先に終焉獣に見つかってしまった彼の哀れに他ならない。『滅石花』がありながらも、彼は哀れに人でなくなる。
 果たして、彼は影の領域に残されていた軍勢を率いて迎撃の為に猛った。

●〇〇〇総進撃! 使い尽くし貫き通せ!
「……と、まあ前回の戦いで我々は強力な個体を倒したけど、逃げ回るだけの弱虫を取り逃したわけだ。雪辱に来るだろうな」
 ラダ・ジグリ(p3p000271)の説明を聞きつつ、セレマ オード クロウリー(p3p007790)はじっとりとした視線を仲間達に向けた。火野・彩陽(p3p010663)は見なかったことにした。
「なあ」
「どうした。もう猶予はないんだぞ。Case-Dの顕現阻止のためには影の領域に飛び込まねばならない。砂漠から進軍するが」
「そうじゃないんだよ。なんであいつらがいるんだよ」
 セレマの視線の先は、真っ白だった。雪ではない。粘性生物・フミノがあろうことかヴィーザルの分とプーレルジールの分までいるのだ。
「好かれてるんじゃないです?」
「ふざけるんじゃないよ」
「冗談で言える話じゃないだろう。あれは治癒食料になるらしいと聞いた」
「詰まるんだよ喉に」
「『私たちは滑らかになった』って人文字……フミノ文字? を書いているが」
「ふざけるんじゃないよ」
 そういうことらしかった。

GMコメント

 最終決戦なんだから生きている奴を使い潰すのは当たり前なのよ。

●成功条件
 敵対者の殲滅

●失敗条件
 自軍すべての戦闘不能

●アーバル・リリウム
 もと、『滅石花の騎士』。以前の戦闘で敗北した屈辱と『滅石花』の影響、その他諸々の条件が重なったことで朽ちかけた精神に終焉獣が反応し寄生。いきおい不可逆的に終焉獣としての異形を獲得した。
 感情を封印したことで【精神無効】を獲得し、機動力に乏しい代わりにオールレンジに対応した技術を獲得。【飛】や【移】で射程を調整しつつ、強烈な一撃を見舞ってくる。
 相変わらずBS関連の付与は乏しいが、【スプラッシュ(特大)】の攻撃、【復讐(大)】や【摩耗(中)】の獲得、立ち回りの狡猾さが加わり厄介さは格段に上がった。

●不毀の軍勢×50
 今まで度々登場した軍勢達で、性質などは従来の個体と変化がありません。ただ数が多い上に多少なり治癒や付与、連携ができる(エゴの強い『最強』のくせに……)あたりが厄介で、アーバルと合わせて戦った場合、普通に8人+αで打倒するのは非常に困難な物量だといっていいでしょう。
 でしょうが、後述の情報を考えれば対等~やや不利くらいには押し返すことができるでしょう。
 なお、APもHPもゴリゴリに削りに来る攻撃をバリエーション豊かに使用しますので注意してください。

●ドロッセル=グリュンバウム (p3n000119)
 友軍その一。
 イレギュラーズの中央値やや上くらいの治癒術士として立ち回ります。
 この状態でこっぴどい敗北を喫する可能性は余りないですが、万が一の場合は彼女が真っ先に死にます。惨たら死します。

●キレイナフミノ+フミノ(異世界のすがた)×とてもたくさん
 友軍その二。……友軍?
 粘性生物であり非常食。生きてる状態でなんか飼育してたやつがピンチなのではせ参じたし、異世界からも現れてしまった。進化圧のせいかな(すっとぼけ)。
 特に手間をかけて加工しなくても普通に回復アイテムみたいな役割を担います。こいつを活用するとしないとでは難易度は天地くらいには変わりますので好き嫌いしている場合ではありません。なお、従来の欠点である「喉に詰まらせて【必殺】」という食物としての欠点は克服済みです。そうでないと最終決戦の体裁がとれないので。

●『パンドラ』の加護
 このフィールドでは『イクリプス全身』の姿にキャラクターが変化することが可能です。
 影の領域内部に存在するだけでPC当人の『パンドラ』は消費されていきますが、敵に対抗するための非常に強力な力を得ることが可能です。

  • <終焉のクロニクル>雪辱の思いはしかし、白き異形に飲まれ逝くLv:40以上完了
  • GM名ふみの
  • 種別通常
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2024年04月07日 22時20分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ラダ・ジグリ(p3p000271)
灼けつく太陽
ゴリョウ・クートン(p3p002081)
黒豚系オーク
黒星 一晃(p3p004679)
黒一閃
カイト(p3p007128)
雨夜の映し身
セレマ オード クロウリー(p3p007790)
性別:美少年
マッチョ ☆ プリン(p3p008503)
目的第一
火野・彩陽(p3p010663)
晶竜封殺
三鬼 昴(p3p010722)
修羅の如く

サポートNPC一覧(1人)

ドロッセル=グリュンバウム(p3n000119)
蒼ノ鶫

リプレイ

●許さん……絶対に許さんぞ……
「殺してやるぞ、イレギュラーズ。ここに辿り着いたからには生きて出られるなどと考えぬことだ」
「感情を封じて、逆に此方の陣容を乱しにかかり、その上で数で押し潰そうという腹か。全くもって悪知恵が回る」

 アーバル・リリウムと名乗った(仲間から聞かされた)終焉獣の激烈な殺気は、おそらくイレギュラーズ全体に対する怒りなのだろう。世界の終わりを止めるべく参じた彼等に、世界を終わらせんとするアーバルが敵意を向けるのは当然といえた。『目的第一』マッチョ ☆ プリン(p3p008503)もその強い敵意を正面から浴び、あれが危険な敵であるという直感はすぐに得たらしい。戦術は一見、強力な相手に瓦解されうるようでいて、統制さえとれれば危険だとわかる。それはいい。彼と追走撃を繰り広げた『灼けつく太陽』ラダ・ジグリ(p3p000271)や、なんだかんだで作戦失敗手前まで追い込まれた『晶竜封殺』火野・彩陽(p3p010663)らが苦い顔をして相手を見るのも致し方なし。


「……なあ」

 ないのだが、『性別:美少年』セレマ オード クロウリー(p3p007790)はそれらの仲間とは全く違うベクトルで苦い顔をして、仲間達の表情の変化に視線を巡らせた。

「アーバルとやら。お前に因縁も恨みもないが、我々の進路を阻むというのであれば容赦なく仕留める」
「ちょっとは同情したるけど、それだけや。今回は更に年貢の納め時って奴よ。せやからね。またね。位はいってあげるよ」
「世界が終わるか貴様らが終わるか、最後の賭けと行こうか。幸い全力でこの場は行けるからな!」
「敵は多数、こちらは寡兵、それでも一騎当千の皆さんとなら乗り切れる気がします……!」
「いやキミらなんでこの状況でさも『シリアスでござい』みたいな面構えで戦いに臨めるの?」

 『修羅の如く』三鬼 昴(p3p010722)は得物を握る手が常よりもバルクアップしたような印象を受け、この状況に奮起しているのが伝わってくる。彩陽も袖振り合う程度には縁のある相手だ。末路に思うところあるが、引導を渡すのが使命と感じ、アーバルを見据える。『黒一閃』黒星 一晃(p3p004679)もまた、一端の剣士としてこの戦場、強敵の存在に猛る心があるのだろう。状況が状況でなければ舌なめずりのひとつでもしそうな喜悦が声に混じっているように思えた。そんな仲間達の頼もしさに背を押されてか、『蒼ノ鶫』ドロッセル=グリュンバウム (p3n000119)も滅多に見せない奮起の様子を強く感じさせた。それはいい。非常にいい傾向だ。だが、セレマはそれどころじゃなかった。

「オドリャクソEXFゥ……」
「あいつらの存在をガン無視してなんか最終決戦だぞみたいなフリしてるけど絶対無理だろ? ボクは無理だからな!」
「助けになってくれるのは有難いが踊り食いなのかこれ……」
「ぶはははッ! 随分と愉快な援軍だねぇ! 治癒食料が自分から移動してきてくれるんだから有難いことこの上ねぇわ! 当然、美味しく食わねえとバチが当たるぜ!」

 そう、イレギュラーズの背後には大量の「フミノ」が控えていた。誰が呼んだか『異常な執着(フミノ)』。誰っつーかセレマなんだけど。驚くべきことにプーレルジールからも姿を表した同位体は、『死に難さ』の指標に対して酷く敵意を発露し、しかし倒され方で食感の変わる奇天烈な軟体生物なのである。セレマは憎い相手筆頭だが、自分たちに進化圧をかけて繁殖させたクソ恩人であるためこうして馳せ参じたというわけだ。戸惑うセレマをよそに食べ方に懸念を示すラダだったが、イレギュラーズ最強料理戦力である『黒豚系オーク』ゴリョウ・クートン(p3p002081)がバックについている時点でその懸念も露と消えた。

「なんだ……この珍妙な生命体っていうか……食料……これ、平仮名の方の人関係なくてむしろそこの美少年の後ろ側に……いやこれ以上はやめとこう!!!」
「それ以上要らん事口にしたら次のシーンでお前いいとこなしで倒れてるから本当にやめろよ」
「……最後の戦場だというのに、締まらん絵面よな」

 『雨夜の映し身』カイト(p3p007128)はよりにもよってこんな所に現れた場違いな援軍をして困惑の色を強くするが、あまりに危険な発言を口にしかけた為、セレマにやんわりと止められた。一晃はこの『締まらない』戦場にもつまらないとか、面白みがないだとかの不満を持たずに対応している時点でどことなく余裕すら感じられた。いい傾向なのだが相手からすれば堪ったものではない。

「我々を無視してよくもぐだぐだと宣えるものだ、疾く叩き潰してくれる!」
「うっせえなあ、こっちの状況考えろよ! 一歩間違ったらボクを殺しにかかる友軍背負ってんだぞ!」
「俺らもさ、色々あるから……」
「? フミノが厄介ながら有効な味方なのは事実だろう。兵站を揃えてきたことは褒められこそすれ責められる謂れはないはずだが」
「お前なんかつまんなくなったどころか一周回って面白くなってんじゃん……」

 アーバルが痺れを切らして怒鳴ると、セレマは即座に怒鳴り返した。両者に割って入るように彩陽が「まあまあ」みたいな素振りを見せるが、しかしこの状況に困惑しないはずがないのだ。プリンが不思議そうに首を傾げていることこそがなんかおかしいって思わなければならない。残念ながらこれはアーバルの雪辱の物語ではなく、イレギュラーズたちの奇縁がぴえんな物語なのだ。……だからもう始めちゃう? そうだね。

●でも強敵だからなんか戦法ひとつで勝てると思うなよマジでよ
「数の差ってモンがあるんだ、こっちが少し卑怯でも恨むなよ」
「卑怯も何も、積み上げてきた成果だからね。文句言われる筋合いもないし……数の差を押し返すぐらいは許してもらわんとね」
「黒一閃、黒星一晃! 一筋の光と成りて、滅石花の騎士を破砕する!」

 イレギュラーズは長い戦いの中で、互いを信頼することと、正しく連携と統率を行う術を身に着けている。そして、優れた連携は出足の早い者に付き従うことで最大限の効果を発揮する。セレマと彩陽の初手はまさにその典型例であり、出足の速さと妨害能力に優れた二人が軍勢を狙うことは必然中の必然だったといえる。相手は世界の終わりを望む邪悪の徒だ。セレマが放った術式は軍勢に継続的な負傷を強いて、さらに彩陽が行動不調を叩き込む。真っ当な敵であれば、この初手でパフォーマンスが大幅に落ちるはずだ。そこに加えて一晃の斬撃は、大抵の存在が一撃で倒れ伏してもおかしくはない。問題は激烈な燃費の悪さだが、フミノがいる以上問題にもならない。

「なんのォ……!」
「これしきで倒れるものかッ!」
「ぶはははッ、その意気は買うけどそれだけだぜ! 俺を倒してみな! できるならな!」
「攻撃が届くより前に撃ち落とされるのなら無意味だろうが、できるなら立ち上がってみるがいい」

 だが、軍勢もさるもの。奇跡的所作で避けた者や味方を盾に避けた者など、連携という名の利己的行動により初手を凌いだ者は少なくはない。が、間隙をおかずにゴリョウが動けるものを引き寄せたことで彼等の陣容は見事に崩れていく。もう少し冷静であれば、と悔いる暇も与えられず、ラダの銃撃の雨にさらされる彼等は不幸だといえよう。その第一波を抜けて術杖を掲げて治療を行った姿には、流石に一同が驚愕したが……。
 アーバルは総崩れになり得る軍勢の体たらくには些かも驚かなかった。そうなるだろうな、と諦めに似た感情とともに駆け出す。狙いは語るまでもない――が、彼は咄嗟に身をひねり、得物で以て飛来する一撃を弾き飛ばした。魔術を逸らし、それに秘めた悪意をも弾いて見せた姿はカイトの心胆を寒からしめた。

「そっちは通行止めだぜ、騎士サンよ。今の一発を無駄にしちまったのは……なんなんだよ本当」
「善く練り上げられた、悪意の術なのだろうな。不意打ちの機を逃さないのも見事。だが、大勢としての機が悪かった。以前の私であればよかったのだがな」
「褒め言葉には聞こえねえぜ!」
「当然だ、倒すべき相手の当然の修練は認めても、褒めそやすのは愚弄だからな」

 褒め殺しか或いは悪意ありきの言説か。カイトの実力を認めつつも淡々と戦力分析を行い、反撃とばかりに強烈な悪意を振りかざす。この男は、終焉獣は、あまりにも冷徹無比な獣なのだと思わせる。速度に長けた者達に比べれば一歩も二歩も劣るが、距離のとり方は巧みなもので、この状況が続けばジリ貧に追い込まれる可能性も充分あり得た。一人か二人が相手ならば。

「距離を離すつもりなら、こちらから詰めてやる。逃がす気はないぞ、アーバル」
「誰を狙おうとしたかは興味がないが、思い通りにいくとは思わないことだ」
「面倒な連中だ……声ばかり大きい有象無象が……」

 昴が数名の軍勢を蹴散らし、冷静に踏み込んできたプリンと並び間合いを詰める。近くに在るイレギュラーズは耐久力で近接攻撃に無駄を生み、遠間の敵を照準しても邪魔をされる。なんという理不尽。それでも蹴散らすべく猛威を振るうアーバルの姿は必死ですらあった。そして、その破壊力は着実にイレギュラーズの消耗を誘う。
 軍勢の数は順当に減っているものの、そも一晃やカイトの燃費の悪さをフミノでカバーしている状況下で、加速度的に疲弊するとなればその危険性も伝わるだろう。
 とかく状況は宜しくない。彼等の活躍目覚ましい裏で、なおもそれだ。ドロッセルの表情があからさまに曇るのも、疲労で膝を震わすのも致し方ないところだろうか……?
 だが諦めないのは、イレギュラーズ達や終焉の軍勢だけではなかった。
 奴らも、この戦況を懸念していたのだ。

●『フミ々の黄昏《カタスロフミノ》』(なにそれ?)
 混沌のフミノの誰かがふと思った。

『EXFPCの数が半分になったら、我々は飢えて死ぬのだろうか……』

 混沌のフミノの誰かがふと思った。

『EXFPCの数が100分の1になったら、クソシナリオの数も100分の1になるだろうか……』

 誰かが ふと思った。

『混沌(みんな)の未来を守護らねば……』

 そんなフミノ達の意思が一つになったとき、奇跡は……否、混沌は起こった。

「……嘘だろ?」
「あれが……そうだったな、巻き込まれたが最後、抗えたイレギュラーズはいなかったな」

 セレマが愕然とした声で呟き、プリンは得心がいったと言わんばかりの表情で頷く。
 カタストロフミノ(フミ々の黄昏)。世界中に散っていたフミノ達が、セレマが連れ込んだ数倍の質量のそれが襲いかかる。影の領域にいかにして突入したかは、この際どうでもいい。
 こんな状況を作ってしまった以上、あとは状況に流されるしかないのである。

「動きも鈍らせて封殺叩き込んで、これ以上ないまでに鈍らせてるのにそれでも突っ込んでくるとか庇い合ってんのか!? 冗談じゃな、い、いやアレなんなん?」
「軍勢が只管に邪魔だったが、やはり最後まで冷静に戦うことはなかったな。……だが、貴様等は強敵だった。それは認めざるを得ない」
「知ってた知ってた。こういう展開になるってことは割と分かってたんだけど、俺はもう少し真剣に戦いたかったんだよね。わかる? 最終決戦ぐらいは格好良くさ……」

 彩陽が行動を全力で鈍らせ、相手の足並みをかき乱したことは事実だ。されど、数の暴力と連携の力技によってその効果を最小限に留めてきた相手の厄介さといったらない。だが、庇い合うということは確実に倒せる対象が少なくとも半数ずつ生まれ、行動に乱れが出るということでもある。それだけでも妨害に走った彼の功労は多大だった。……だったが、一晃の淡々とした声は彩陽の焦りをあっさり吹き飛ばすだけの破壊力があった。影の領域に地平線など望むべくもないが、しかし白い地平が生まれているのだ。カイトは事態を即座に飲み込んだが、許容できるかは別問題だった。口からフミノ(美形メロンソーダ味)がこぼれ落ちる。

「ゴリョウー!! なんとかならねぇのこれええええええええ!!!!!」
「ぶはははッ! ここにある連中程度なら調理しきれたかもしれねえがアレは無理だなあ!」

 カイトの絞り出すような叫びは確かにゴリョウに届いたが、その場の全員を飲み込むであろう奔流はさすがに捌けないと見え、諦めに首を振った。軍勢の数はだいぶ減ったが、残念ながらこれから一気に減るだろう。死因は圧死か窒息死。運命に守られない連中なぞ、所詮はそんな終わりしかないのだ。

「アーバル、戦い方を変えた割にはつまらない立ち回りをするのだな。どこまで行ってもその性根は治らなかったと見える」
「最適な距離で戦うやり方は決して卑怯でもつまらなくもないが、かと言って今まで戦った強敵ほどの威圧感は感じられなかったな。やはり、半端な覚悟しかなかったのか」
「何とでも罵るがいい。どんな終わりだろうと、どんな状況であろうと、敵は敵、我等は我等だ。世界の終わりに立ち会う以上、最悪道連れも已む無し。倒せると思っているなら、笑止……、!?」

 アーバルの声には強い決意が籠もっていた。最善最適の立ち回りを己に課しつつ、しかしイレギュラーズ『複数名』相手との力量を埋めきる自力までは得られなかったらしい。感情を封じたことで決意の重みが足らず、冷徹になったが故に情熱が総身に回らず、結局は中途半端に留まったのが彼の敗因なのだろう。それでも、ラダと昴を向こうに回し、時間稼ぎに思考をシフトさせた判断は素晴らしかった。……その時間稼ぎこそが、カタストロフミノなどという冗談めかした幕引きを呼ばなければ。

「抗おうとするから呑まれるのだろう。今においてはちょうど良い……はあっ!」
 プリンは波と押し寄せるフミノめがけて駆け出すと、己の別側面たる姿を露にする。小型船を投げつけ颯爽と飛び乗ると、勢いそのままに操り、仲間達を次々と引き上げた。いきおい、軍勢で息のあるものを船で轢き逃げ、アーバル達三人の戦闘に割って入る。

「諦めろ、アーバル。貴様はこの船のシミとなってフミノの群れに飲まれ、誰かの命を繋ぐのだ」
「冗談、では、ない……お前達の未来を奪うのが我々の使命、未来の糧になれなどと……」
「ああ、無理無理。格好つけようったってそうはいかないよ。相手、フミノだぜ? この状況で誉ある死なんて無理だから。アレ、誉を洞窟に捨ててきた種族だから」
「馬鹿な――」

 本当にバカバカしい。
 惨たらしい轢殺音を残し、赤いシミはすぐに真っ白になった。

「ぶはははッ、どうだいドロッセルの嬢ちゃんも!」
「……食べないとだめですか?」
「疲れてるだろう。あんな馬鹿げた戦場で魔力切れ寸前まで立ち回ったのだから食べないと保たないぞ」
「う、うぅ……!」
「絶望してるじゃんか。やめろよ」
「でも俺らも食ったんだし、一人だけ食べないのも理不尽やない?」
「案外美味だから食べた方がいい。腹が減っては戦はできぬという」
「ゴリョウ、精一杯美味くしてやれよ……」

 めでたしめでたくもなし。

成否

成功

MVP

セレマ オード クロウリー(p3p007790)
性別:美少年

状態異常

セレマ オード クロウリー(p3p007790)[重傷]
性別:美少年

あとがき

 大変お待たせいたしました。
 一部イクリプスの使用で消耗が増えています。

 最後の最後にこんなオチに……。

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