シナリオ詳細
ぬこまくら捕獲依頼
オープニング
●ぬこ舎から逃げたぬこまくら
沈流・キンジロウは作家である。旅人《ウォーカー》である。
ただし作家という肩書きは、正確には、元の世界でのものである。齢は54を迎えた。代表作は『余はぬこまくらである』。
今日の沈流は、バルツァーレク領で、『ぬこまくら』という生き物を取材にきた。
「見覚えがあるような、ないような。尊(たっと)い」
沈流は、ぬこ舎の柵を開けて中に入った。
鼻髭を親指と人差し指でぐるぐるねじり、尊そうにその生き物を眺める。
『ごにゃー』
『ぶにゃー』
ぬこまくらという生き物は、無辜なる混沌の原生生物である。
ぬこにして大きすぎる、虎にしては小さすぎる。まくらのようにまんまるとしたぬこである。
呑気にあくびをして、平べったく香箱座りをしている。
寒い時期であるのに、まるで置きごたつの中に潜り込んだ趣であった。
「熱燗か、寝釈迦に寒梅、ぬこまくら」
一句降ってきた。
「『Care kills a cat(好奇心がぬこを殺した)』」
と続いて暗唱してみる。
沈流は、前にもこんなことがあったような気がすると首を捻った。
沈流が先ほど、飼育員と話をした際、時々、神隠しのようにどっかいったりもするが、気がついたら戻ってくる。という話を聞いた。
これをぬこ隠しというらしい。なにやらこれを題材として一本書けるだろうと考えて瞑想していると、ふと現実に引き戻される。
気がつけばぬこまくらが沈流をぐるっと囲んでいた。
なにやらただならぬ気配を感じる。
「余です」
と挨拶する。した途端。
『ごにゃーーー!』
『ぶにゃー!』
「ぬわーーーーー!!!」
柵を閉め忘れたと考えたときにはもう遅い。
●ぬこまくらを集めて戻す依頼
「もふもふなのですよ」
――ガタッ!
立ち上がった特異運命座標《イレギュラーズ》の一人がいた。
『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)が説明を続ける。
「まんまるに太ったぬこみたいな感じなのです。顔は鼻がつぶれているぶさかわいいのとか、鼻筋がとおった美人さんとか色々いるですが、顔や胴体すっごく伸びるです。ぶにーーーって」
「し、仕事の内容を教えてほしい」
席を立った一人が、口を手にあててうつむき加減に着席する。
『あまり難しい戦闘がなく、適度にスリリングな依頼』という拘りの者が卓に集っている。
「ぬこ舎から逃げ出したぬこまくらを捕獲なのです。32匹」
「ぬこ舎!? 32匹!?」
「はい。ぬこまくらさんたちは、これからペットショップに行ったり、王都で不眠でお悩みの方々の所に貰われていくのです。ですが変なおじさんの不注意で、ぬこ舎から逃げちゃったみたいなのです」
それを捕まえろという話か。
「きっと気が立っているのです。ボディプレスとか飛んでくるとおもうのです。ちょっとくらいの攻撃ならワガママボディで丈夫なのですが、殺傷しない攻撃なら完璧なのです!」
不殺推奨の捕獲依頼といったところだろう。
「あとこれも必要なのです。これがあると、のこのこ出てくるのです」
マタタビというセフィロトが支給された。
特異運命座標は、ぬこ舎周辺の地図をユリーカからもらった。
- ぬこまくら捕獲依頼完了
- GM名Celloskii
- 種別通常
- 難易度EASY
- 冒険終了日時2018年02月12日 20時40分
- 参加人数8/8人
- 相談5日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●ぬこをモフれば爪が立つ
ぼふ……っ!
『アイアムゴッド』御堂・D・豪斗(p3p001181)の顔面に、ぬこまくらのボディプレス、炸裂す。
膝が折れる。顔から地面に突っ伏し、流血す。広がる赤い液が、地を黒く染め上げて。
たちまち豪斗は、その場に崩れ落ちた。
「oh……ゴッド……ベリーゴッド」
特異運命座標《イレギュラーズ》が最初に向かったのは、ゴブリンの洞窟であった。
デンジャーなところから先に救出すべし、という方針で乗りこんだ洞窟の、光が届く入口付近にて、豪斗が斃る。
「っ! ……飼育員《ブリーダー》殿の言うとおり、中々動けるようでござるな……っ!」
『武者ガエル』河津 下呂左衛門(p3p001569)は、ぬこまくらのボディプレスの威力を目の当たりにして、センソ(ガマの油)の汗を垂らす。
下呂佐衛門は、此度の元凶である枕流の護衛を買って出ている。
身を挺すように右足を前に出したが、ぬこまくらは豪斗に突撃したので、前に出した右足を引っ込めた。
『ヒトデ少女』メリル・S・アステロイデア(p3p002220)は、崩れ落ちた豪斗に駆けよる。
「速い! 飛んでくる速さだけは! ぬこまくらなのに!」
豪斗の顔にへばり付いているぬこまくらを、餅のように引き剥がす。
『ぶにゃ~』
ぬこまくらは、鼻が潰れているデブぶさぬこであった。
メリルの両手にずしっとくる重さだ。感触はもちもちふかふかぶにぶにだ。
「ムニムニ……もふもふ」
たちまち魔性を感じた。
もちもちふかふかなものに、そ?っと顔を近づける。駄目だ抗えない……!
「ユズ ぬこ 友達 なりたい! スリスリ したい!」
『狼の娘』ユズ(p3p001745)の声で、メリルは我に返った。
危ないところだった。メリルはぬこまくらをもふもふした後、ユズにパス。
ユズはぬこまくらを抱っこしながら、疎通をはかった。
「(大丈夫 ユズ 敵じゃない)」
ぬこから少し視線を外しゆっくり瞬きを繰り返す。これはぬこへの親愛の意である。
つぎにニオイを嗅ぎあってみる。これは挨拶。
良く手入れされているような清潔な獣臭がした。
『ごにゃー』
ぬこ曰く。奥に仲間がいるという。自分は逃げてきたらしい。
『blue Moon』セレネ(p3p002267)も会話にまざる。
「大丈夫ですよ。ぬこまくらさんをみんな助けて、待ってる人達がいる安全なところに連れ戻しますからね!」
セレネも動物と意思を通わせる術を得ているため、自らのぬこ耳をぴこぴこさせながら、ぬこまくらをぷにぷにつつく。
「終わったら……もふもふさせて貰ってもいいでしょうか?」
『ぶにゃごにゃぶにゃっ』
おそらく肯定である。洞窟によく響く、クドい鳴き声のぬこまくらだ。
かくて、ユズとセレネを通して、『この奥だ』という情報が共有された。
『兎人形』Pandora Puppet Paradox(p3p002323)はぬこまくらの実物を見て、ためしにつついてみた。弾力が尊かった。
「ぬこまくら、何て可愛い生物だにぃ! 出来る限り傷つけず保護してあげにぇば」
むにむにむにむに。
「まず一匹か……この奥だってなら、さっさとゴブリンを探して、さっさと殺るとするかね」
『いっぴきおおかみ』クテイ・ヴォーガーク(p3p004437)は、ぬこ舎に寄ったときにあずかっていた首輪を、ぬこまくらに装着する。連れて歩くわけにはいかないから。カゴに入れようとした刹那。
「ぬこまくらああああ! ぜったい保護するにゃああああん!」
『cherie』プティ エ ミニョン(p3p001913)が取り出したるは、大きい土鍋であった。
土鍋の中なら多少は安全だろうという、プティの策略である。
「……。それに入れるのか?」
クテイが言葉に窮しながら問うと。
「保護するにゃん」
と、プティは自信たっぷりに頷いた。
ぬこまくらは、土鍋をジッと見たのち、ぬこぬこと鍋の中で納まりよく納まった。
「ローレットでは語尾に『にゃん』とつけるのが流行っているのでござろうか……げ、ゲロにゃん」
下呂佐衛門は、センソの汗を手ぬぐいで拭って首を傾げながらつぶやくと。
「冬枯れの 洞にゲロにゃん ひびきけり」
と、枕流がげろにゃんの一句を重ねてきた。そういえば後ろにいたんだった。
続けておっさんが言う。
「余のせいです。ローレットの皆さんには、この度は申し訳ありません」
「な、なんの。お安い御用でござ候」
げろにゃんを聞かれたことが、ちょっぴり恥ずかしかった。
「危ないからきをつけてにぇ」
とPandoraが枕流に付け加えた。
「ここはゴッドの人助け、いやぬこ助けセンサーを以て、ヘルプを求めるにゃーんに応えるべきであろう!」
斃れた豪斗が「ゴッドハグによってユー達をホームへとウェルカムバックだ!」とウェルカム復活を果たし、洞窟を行く。
会話は途切れる。
洞窟、暗がり深くして、松明の灯火、明らかなるに。
ジジジと燃ゆる音が響くなかを、8人が足音を立てていく。
苔が張りついた壁。壁から垂れる水滴が、地面を濡らし、土の匂いが鼻孔をくすぐった。
『『『ぶにゃ~』』』
やがて、向こう側からぬこの鳴き声がした。エコーで響く。
「鳴き声、クドっ?!」
誰かが思わず音を漏らす。
●決戦、ゴブリン!
ゴブリンの居住区と怪しまれる場に出る。
松明を持ったセレネとPandoraが真っ先に入り、左右に散開す。
2つの明かりが場を照らすに、向こう壁まで10mほどの閉所であった。
壁に追い詰められたぬこまくらが三匹。にじり寄る小鬼。
「ゴブリン君には悪いけど、ぬこまくら君の為なんだ許せっ!」
プティが一息で言い切りながら飛翔する。中空できりもみ回転は金色のドリル。
ゴブリンの背中に突進す。
右回りだ。ゴブリンは左側頭部を地面に打ちつけて、バウンドして吹っ飛んだ。
持ち前の戦闘センスによって先回りしていたクテイ。
「あー、まじ、こうあれだな」
クテイが吹っ飛んだゴブリンの頭部をキャッチボールのように片手で?む。
そのままゴブリンの顔面を壁に押しつけ、2m近い身長から、下へすりおろした。
「もみじおろしより、ハッピーな粉がいいな。なあ?」
というクテイに対して、豪斗が嘆く。
「なんと! 彼らもいつかゴッドのフレンズになるやもしれんというのに! おおアガペに抱かれて安らかにスリープせよ!」
豪斗は追い払う程度で良いと考えていたらしいが、仲間が必殺効果つきの技で殺っちまった。
後ろから豪斗の肩にポンと手が置かれた。下呂佐衛門だ。首を横にふる。
「これだけ人里近くに住み着いているというだけで脅威にござろう。小鬼共がこちらに敵意があるようならば、この機会に討伐してしまうのが宜しかろう」
「敵意であるか!?」
ゴブリンどもはぬこまくらから特異運命座標に目標を変え、一斉に飛びかかってきた。
一匹が抜けてきて、豪斗へ。
「刮目せよ! 我がアガペ」
とっさに出した豪斗の神々しき光とワンドが、ゴブリンの打撃を打ち払う。
打ち払ったところへ下呂佐衛門が右足を前に出し、鋼色が袈裟斬りに。ゴブリンに浅からぬ傷をつける。
「オォォーーーーーン」
先行したプティとクテイが切り結ぶ中を、ユズと銀色の狼《マー》が加勢にいく。
ゴブリンが、プティを叩き落とそうと棍棒を振るい、振るわれる腕に銀色の狼《マー》が噛み付く。続けてユズが飛びかかる連携。
「今のうちにぬこまくらさんを!」
セレネが後衛に呼びかけながら、クテイに加勢。
「いまのうちなのにぇ」
「うん!」
声を受けて、メリルとPandoraがぬこまくらの救助に走った。
かくてゴブリンとの決戦。ゴブリンといえども、幻想国内には様々な種類がいる。
同水準の『弱い敵』の代名詞たるスライムとて、犬のようなスライムもいれば、困難極まりない肉を溶かす本格派も在ろう。
今回のゴブリンは、幸いにして本格派ではない、ライトなゴブリンと感ぜられた。
「ユズ! ぬこ たすける!」
ユズと銀色の狼《マー》が閉所の壁を足場に、撹乱し――
「ぬこまくらにゃああああああああん!!!!」
ユズに気を取られたゴブリン、プティの飛行状態から下される大上段斬りをまともに受けてここに斃る。
残り二匹。
「いざ」
下呂佐衛門の鍔鳴りが高らかに。
「ゴッドは悲しい。ユー達ゴブリンと戦わねばならぬ事は、とても悲しい……」
かくて下呂佐衛門が葬ったゴブリンを、豪斗のアガペが抱擁す。残り一匹。
クテイが残るゴブリンの攻撃を封ぜんとして、しかし、ゴブリンは咄嗟に目標を変えた。
「お?」
『Gigygigigigigighaaaaaaa!!!』
最後の一匹が、ヤケクソとばかりに、ぬこまくらを攻撃す。
3匹のうち2匹はメリルとPandoraが各々回収したが、あと1匹というところで、ゴブリンの棍棒がぬこまくらを襲った。
『ぐにゃ???』
ぼかんのぶっとばされ、悲鳴をあげるぬこまくら。
「ぬこまくらさん!!」
「たいへんなのにぇ!」
メリルが駆け出して、ぬこまくらをモチっとスライディングキャッチす。
すぐにPandoraが、ぬこまくらに軟膏を塗って傷を癒やす。
「良かったのにぇ」
『ごにゃ?』
セレネの青金石《ラズライト》色なる碧眼が、松明の光に輝いた。
「……ごめんなさいね」
同じぬこ類のぬこまくらに心を痛め、悲しむか、怒るか、それともゴブリンに運命にも心を痛めるか。
葛藤混じりの短剣の煌きが、ゴブリンの洞窟を、ただの洞窟へと戻した。
●とかくにぬこはもふだらけ
原っぱ、雑木林に分かれて捜索する。
時間が経過するほど厄介になると怪しまれるのためだ。
ここで、都度戻る予定だったところを、枕流が、戦闘で何もできなかった点で責任を感じ、戻してきてくれるという。
原っぱを担当するのは、豪斗、プティ、セレネ、クテイだ。
見通しの良い原っぱにつく。
ラサから流れてくる西風は、海を横切って冷やされて、水気を帯びてしっとりしている。
空っ風と違い、骨身にしみない風の質である。
ものの果てなる空の色。緑の草の上には、まくらのようなぬこがひらべったく座ってくつろいでいる。
ここに、4本のセフィロト《マタタビ》が光って唸る。
「なるほど! ボディプレスとダークネスケイブで全体像は怪しかったが、こういった姿がヒューマン達に好まれるのだな!」
豪斗は物理的に光っている。ギフトである。
「土鍋はぬこまくらの護送用のほかに、ふふふ! これをするためのアレなのだ!」
プティがワクワク仕掛けたるは土鍋《アレ》であった。中にセフィロト。これぞ土鍋罠《ドナベ トラップ》。
「プティさんのように、積極的にしても良いのでしょうか?」
セレネは耳をぴこぴこさせている。
「あー……殺さないように手加減して戦うしかねーか」
クテイは、マタタビをハッピーな粉状にしている。
『ごにゃー』
『ぶにゃー』
『のぎゃー』
『ぶっふばると』
たちまちボディプレスが乱舞した!
一方、雑木林は、ユズ、メリル、Pandora、下呂佐衛門だ。
下呂佐衛門は、茂みをかき分けながら、ため息を一つついた。
「ううむ。拙者、犬や猫にはよく嫌われるのでござるよなぁ」
枕流がついていれば――『ぬこまくら』を寄せ集める才能があると見て――もっふもふを堪能できると企てたが、洞窟のぬこまくらを届けにいってしまった。
ところがどっこいしょ。次の瞬間、ぬこまくらが下呂佐衛門の顔面を襲った。
「ゲロにゃああああん!?」
潜みしぬこまくら、奇襲せり。
あ、いいにおいでござる。野生の獣臭をやわくしたようなそんな……。
だめだ力がぬけていく。これが防御無視――意識が弾けそう……という危機に真っ先に陥った。
「うごけるでぶぬこだにぇ」
Pandora、さっそく借りてきたおもちゃを放出する。
すると、ぬこまくら、ツチノコのごとく忍び寄ってきてPandoraにへばりついた。
かはっと出血す。
ぬいぐるみのようなPandoraに血液があるのか定かではないが、それっぽいものが飛び出した。鼻から幻覚が。
「ぱんどら たいへん!」
ユズがPandoraを介抱せんと駆け寄る。もちのようなぬこまくらをもちっと引きはがしPandoraの状況を確認する。
「……ありす……ありす」
Pandoraがやられてしまった。
なお、へばりついていたぬこまくらも、Pandoraのもふ感にごろごろ喉を鳴らしている。
借りてきたおもちゃより、よっぽど面白そうに見えたのだと怪しまれた。
「でたな! もふっとぶにーが魅力のぬこまくら!」
気合をいれたメリル。
木の上から飛び出してきたぬこまくらを華麗に回避!
回避したのもつかのま、別の一匹が後頭部にへばりついてきた。
ずしっと重い。頭の上でよじよじと態勢を立て直そうとしている。ヒトデ質な外ハネの髪に噛みついて咀嚼している。
「か、髪、気に入られた!?」
振り払おうとすると、横から滑り落ちてきて、ぬこまくらがメリルの顔に四足でぶら下がる形になる。
ここでぬこが二回行動、ぺしっとぬこぱんちが炸裂す。
短き時をかく短く駆け抜けるが如き戦い。
原っぱのほうも佳境を迎えた。
プティの土鍋トラップは成功。一匹確保。
セレネは両足にぬこまくらがへばりついて、「はわわわわ」と嬉しいような困っているような葛藤の音をあげる。
「こうなれば、ゴッドのゴッドヴォイスに賭けるしかない!」
原っぱならよく響く。豪斗のとっておきだ。たちまち、攻撃が集中して、トゥギャザーす!
「麗しきヒーロー&エンジェル達もゴッドハグを受けたいのならば遠慮する事は――bohfu」
ここでクテイ。ポケットの中のものを握る。
「あ、そうだ。なんかしんねーけど、なんにつかうんだろうな?」
実は、最初にぬこ舎に寄った際、交渉に成功し、ブリーダーから、とある秘密兵器を預かっていた。
向こうをみると、豪斗が顔面と両手にぬこまくらを張り付かせている。セレネは全部持って行かれて羨ましい感じの表情をしているのが見えた。
クテイはおもむろに、プティにそれを投げた。
「あ! ああああ!!! こ、これはああああああ!」
プティ、驚愕す!それはセフィロト《マタタビ》を超えるものだった。
クテイと同様、雑木林側にも、交渉に成功したものが一人。
下呂佐衛門、意識を取り戻し、ふところに忍ばせた秘密兵器を思い出す。
「今日こそ仕留めるとき!」
窒息しかけながら、組技の術でひっくり返し、それを用いる。
奇な! 秘密兵器、それは『みかんのかわ』!
二つ折りにして指で潰すと、猫がいやがる臭いの汁がスプラッシュする代物だ!
『ぶにゃー』
『ごにゃー』
『ぐにゃー』
『るーとヴィッひ』
超常。強烈。ぬこまくら、奔流にて苦悶せり。
これが反撃の狼煙。
豪斗がぬこまくらをもふもふする。
プティがぬこまくらをもふもふする。
セレネがぬこまくらをもふもふする。
クテイはハッピーな美味しいおかしいの粉をどう作るか考え始めている。
メリルがぬこまくらをもふもふする。
Pandoraが「ありす……ありす」から復活してぬこまくらをもふもふする。
下呂佐衛門は自分の目にもちょっと入って苦しんでいる。
ユズはともかく、人類の何倍も嗅覚がある銀色の狼《マー》が巻き添えを喰らっている。
この後、真面目に回収を行い、ぬこ舎に届けたのち、合流地点――最後の捜索ポイントである住宅街へ向かうのだった。
●決戦! ボスぬこまくら!
住宅街、挟み撃ちで仕掛けるも、ちょっと大きいぬこまくらが、あっさりプティの土鍋に納まった。
他のぬこまくらも、ボディプレスやぬこぱんちなどで抵抗を試みてきたが、極力、直接攻撃はしないという方針のもと、みかんのかわはノーカウントで、戦いは終わりをつげた。
ぬこ舎へ戻ると、枕流が茶の用意をしていた。
礼のつもりらしい。器はすこぶる大きいが、40℃ほどのぬるま湯で、3,4滴垂らした茶であった。
「『ぬこまくら、逃げてかしこし、ローレット』……ぬこまくらは春の季語でしたかね?」
「ゴッドに相応しい讃美のポエムに感謝する!」
豪斗は、ゴッドヴォイスをした喉を茶で潤す。
茶自体は、舌にずっと甘みが残るような、甘露でうまいものだった。茶を飲んで、あとはぬこまくらとふれあいタイムだ。
「幸せな時間でした。マーさんも、お疲れ様でした」
セレネがぬこまくらを一匹抱っこしながらユズの相棒に労う。銀色の狼《マー》も鳴き声一つで応ずる。
ユズは、ぬこまくらと戯れて仲良くなった。動物疎通をもつセレネもそのとおり。
プティは動物疎通こそ持っていないが、上を飛んでいると、ジャンピングぬこ合掌を喰らいそうになったりしている。
「私はぬこじゃらしではない??」
実際に合掌に当たって墜落している。くやしいのでまた土鍋をしかけてみたりもする。
メリルはやはり、良く登られて髪の毛を狙われる。
「む?! まけないよ!!」
ぶにーーーってしたい! と思ってたメリル、ここで叶う。
ふわっとした感触に、ぶに???っとのびるモチモチ感。
「ああ?」
顔をぬこまくらに埋めてみる。窒息しかける。離す。もう一回埋めてみる。エンドレス。
逆に、Pandoraは顔を埋められていた。
「にひっ。もうまけない! なんどでも蘇るのさ??ってああ??」
と、ころころ転がされていった。
「……げろ、にゃん」
ぬこ池や、蛙とびこむ、なにがしか。
下呂佐衛門も終わったという満足感の中で茶を一杯すする。傍らにぬこまくらが一匹か。
終わってみたら、嬉しさだけが残る一件だったと感ぜられた。
なお、クテイは夕暮れの街に。菓子を買いにいったらしい。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
Celloskiiです。
遅くなりまして申し訳ありません。
強敵と戦う等の事件性はありませんが、呑気でバカバカしいタイプのクエストで、枕流もぬこまくらもいずれまた出ると思います。
お疲れ様でした。
GMコメント
Celloskiiです。
基本的にコメディですが、それぞれの地形にどう対応するかなどの要素あります。
戦闘が苦手でしたら分担するのも良いでしょう。
以下詳細。
●目的
『ぬこまくら』32匹を捕まえてぬこ舎に戻す
●状況
時間:昼
場所:ぬこ舎周辺
地形:
雑木林
原っぱ
住宅街
ゴブリンの洞窟
●エネミーデータ
『ぬこまくら』×32
あまり素早くないです。
習性は大体ぬこと同じです。
A:
空中殺法 物遠単 防御無視 攻撃時に自分も移動
ぬこぱんち 物近単 【魅了】
P:
ワガママボディ 死亡判定に超補正。ほぼ死なない。
ゴブリン×4
特異運命座標の1/4位の強さです。
出血攻撃をしてくるくらいです。
●支給品
松明、ロープ、せみのぬけがら等、常識的範囲なら大体は使って大丈夫です。
●味方?データ
枕流・キンジロウ
旅人。作家。昔の千円札の人物に似ているおっさんです。
言えば雑用など何かしてくれると思います。
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