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シナリオ詳細

黒と蒼の人影

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 各地に現れている終焉獣。
 ワームホール、バグホールと合わせ、それらの及ぼす被害は深刻だ。
 状況把握を頑張っているユリーカ・ユリカは踏ん張ってくれているが、各地で起こっている事件はかなりの数に上っており、全てを把握するのは難しい。
「本当、どこにでも現れる厄介な連中さ」
 『海賊淑女』オリヴィア・ミラン(p3n000011)は嘆息しつつ、ローレットに集まったイレギュラーズへと説明を始める。

 現場は、幻想北東、天義との国境付近。
 一時、天義国内が混乱していた際、逃れてきた者達が多く集まるコエグという名の集落があり、集落民もそれを受け入れて共存していた。
「いまなお、神へと祈りを捧げる人々と貴族の多く住まう幻想の辺境民。思ったよりはうまくやっていたようさ」
 平穏を求めたい元天義民と富には執着しない幻想民。
 考えこそ違う部分もあったが、彼らは仕事を分担し、食料もうまくやりくりして集落の秋を迎え、順調に共存の道を歩んでいた。
「そんな折に、各地に現れた終焉獣がこの集落にも襲ってきたのさ」
 集落民からも終焉獣らしきものの目撃情報はあっていたが、いずれも人型。
 ただ、それは黒い影だったり、蒼白く光っていたりと異なる部分も。
 集落民はそれぞれが自分こそ正しいと主張していたが、地元民と元天義民でもそれぞれ分かれており、結論は出ていない。
 だが、幻想でも終焉獣の被害が増えていることはこの集落コエグにも届いており、集落民は不安がっている。
「集落民の話から、その居場所は特定している」
 どうやら、集落から離れた場所にある廃屋に潜んでいるとみられる。
 以前は老夫婦が住んでいたそうだが、幻想国内の混乱の折、遠方へと引っ越したのだとか。
「被害が出る前に討伐しておきたいね」
 簡単な地図を差し出すオリヴィアは、情報から敵についても推察する。
 各地に現れる終焉獣の指揮官個体、クルエラがいるのではないか、と。


 コエグは農業、林業と合わせ、貴族向けや天義向けの物品製作まで行う小規模ながらも幅広い産業に携わる集落だ。
 人々の活動域もそのおかげで広く、王都から天義の聖都まで幅広い。
 今は元天義民もかなり流れ着いていたが、地元民とうまく共存できており、収穫の秋を迎えて皆満足いく生活ができている。
 冬も乗り切りかけているこの時期になって、現れた不気味な人影。
 集落民も、王都や天義にて終焉獣による被害については耳にしていたが……。
 いざ自分達の生活圏に現れたとなれば、対応も変わる。
 幸い、幻想にはローレットがある。
 そこで、王都に用がある者に、その調査、場合によっては討伐を依頼することになったという。

 さて、依頼を受けたイレギュラーズはコエグ到着後、人々への聞き込みを行い、準備を整えてから問題の廃屋へと向かうことになる。
 廃屋内部には、全身真っ黒な人影、そして、蒼白い人影が3体ずつ、何か作業をしている。
 そして、それらに指示を与えていた漆黒の人影が……。
「招かれざる客か」
 そいつ……クルエラ、チアウェイはふわりと浮き上がって。
「貴様らはそのまま迎撃せよ」
 虚空へと消え去るチアウェイの意に従い、人影は皆入り口を見やって身構える。
 そんな内部の事情を知らぬまま、イレギュラーズは内部の人影……終焉獣どもへと攻撃を仕掛ける準備を整えるのだった。

GMコメント

 イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
 混沌中に出現が確認されている終焉獣。
 それらは人々の日常のすぐそこまで……。

●概要
 天義との国境付近にある集落コエグへと向かいます。
 集落付近で姿が確認される人型の終焉獣を討伐すべく、少し離れた位置にある廃屋へと乗り込みます。
 街道からも離れた位置にあるその廃屋はあばら家同然な上、元の住民も転居しているので配慮は不要です。
 廃屋付近は奥が岩場、側面の片側に林があります。
 廃屋内部に人型の終焉獣がいるようですが……。

●敵
〇終焉獣:虚偽の人体(通称:人体)×3体
 全長2mほどの黒い人型。
 チアウェイを思わせる容姿ですが、クルエラ程の力はありません。
 ただ、他の人体部位型終焉獣の力のいくつかを所持する点は同じで、今回出現する個体は以下の能力を使用可能です。
・強風や荒波を操り、匂いを含めて相手を存在ごと吸い込む。
・気色悪い笑いで相手の戦意低下や浸食、異言を紡いで惑わす。
・跳躍してからの踏みつぶし、空間を蹴り裂いて浸食。

〇変容する獣(通称:変容)×3体
 青白い人型をした個体。
 こちらもチアウェイを思わせ、知能はかなり高くはなっていますが、ベースは獣です。
 体術を使う他、虚偽の人体を模して爪での薙ぎ払いや、剛腕での薙ぎ払いといった攻撃を繰り出します。

〇クルエラ:チアウェイ
 指揮官型終焉獣。全長2mほどの黒い人型。
 人の部位を象った終焉獣の内から幾つからの技を使う、指揮官に相応しき能力を持ちます。
 今回はイレギュラーズの来訪を察したのか、遭遇前に撤収したようです。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

 それでは、よろしくお願いします。

  • 黒と蒼の人影完了
  • GM名なちゅい
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2024年03月19日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)
【星空の友達】/不完全な願望器
ゴリョウ・クートン(p3p002081)
黒豚系オーク
モカ・ビアンキーニ(p3p007999)
Pantera Nera
皿倉 咲良(p3p009816)
正義の味方
エーレン・キリエ(p3p009844)
特異運命座標
囲 飛呂(p3p010030)
きみのために
レイン・レイン(p3p010586)
玉響
紅花 牡丹(p3p010983)
ガイアネモネ

リプレイ


 幻想北東部。
 イレギュラーズは王都を出て、目的地である集落コエグへと至る。
「チアウェイ……本当にどこにでも現れるね」
「ぶはははッ! 何か腐れ縁の気配がするねぇ!」
 中性的な青年『【星空の友達】/不完全な願望器』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)が小さく唸ると、大柄な黒肌のオークというべき体躯『黒豚系オーク』ゴリョウ・クートン(p3p002081)は豪快に笑って帰す。
「本当、あっちこっちで暴れてんな」
「ああ、終焉獣の活動は広範囲に及んでいる」
 一見すれば人間種とも感じさせる見た目の『点睛穿貫』囲 飛呂(p3p010030)に、色黒の肌をした長身の『Pantera Nera』モカ・ビアンキーニ(p3p007999)が同意する。
「人々が日常を脅かされると、不安で食事も喉を通らなくなる」
 飲食店を経営するモカは、それが原因で客足が遠のきかねないと現状を憂う。
「自分たちがいざ終焉獣を目の前にすると、やっぱ怖くなってきちゃうよねぇ」
 いつでも元気でハイテンションな『正義の味方』皿倉 咲良(p3p009816)は事前情報より、今回向かう集落コエグは王都から天義まで色々な分野で幅広く物品を提供している点を指摘して。
「そういう意味でも、狙われちゃう場所ではあるのかもね」
「この間は財宝……今回は貴族や天義への物品制作の産業……」
 人に近い容姿をしたクラゲの海種、『玉響』レイン・レイン(p3p010586)はこのところ、幻想で起きている事件について思い返す。
 前回は多分、貧困層やお金に困っている人がターゲット。
 今回は、お金持ちの人や普通の生活を送ってる人がターゲット……。
「どっちも……生活に根付いてるもの……」
 やや、自信なさげに推察するレインは、共通する終焉獣の狙いを考える。


 補給や情報収集を終えた一行は問題の廃屋を目指す。
 廃屋はさほど集落から離れてはおらず、人々の不安が高まるのも必然だろう。
「辟易するけど、それ以上に奴らの好きにさせんのが嫌……ここもしっかり潰そう」
「幸い今回は周りにも一般の人達はいないし、サクッと倒しちゃいたいところだね!」
 飛呂、咲良の主張に頷く面々は、事前準備に動く。
 例えば、仲間と共に林へと身を隠す飛呂は廃屋内の状況を窺うべく、透視とエネミーサーチで終焉獣の姿と数を探る。
 その数は6体。
 飛呂は小声で、それらの情報を伝達する。
 モカもまた2体のファミリアー……ネズミを侵入させ、気配を消して音を立てずに敵の挙動にについて偵察する。
『蒼白い人影が3つ、黒い人影が3つ、戦闘態勢をとりつつ待機……といったところか』
 ハイテレパスを働かせ、モカもまた仲間達へと伝える。
 周囲を警戒している終焉獣どもは、人型となった変容する獣と、部位型の進化系である人型終焉獣だろう。
「ち、指揮官っぽいのには逃げられたか」
 燃える銀河のような片翼と影、左手が特徴的な『ガイアネモネ』紅花 牡丹(p3p010983)は予め聞いていた終焉獣の指揮官クルエラ、チアウェイの姿がないことに舌打ちする。
 わざわざ集落外れに潜んで何かをやっている連中を、警戒しないわけがないというのが牡丹の談だ。
「身の回りに置ける物……」
 そこで、改めて口を開くレインが推論を展開する。
 今まで終焉獣は人型や生き物の形が多かった。
 この先、物などに擬態して色々な国に紛れ込むようにならなければいい、と。
「そうなったら……国ごと……混乱しかねないし……対処できなくなりそうで怖い……」
 そうなった場合に何か、見分けがつく違いみたいなものが分かれば。
 レインが思案する傍で、牡丹が粗方把握したと腕に鳴らして。
「オレ達の接近に気付きながら一見ボロっちい廃屋に籠りっぱなしなのも気になるよな」
 外のほうが戦いやすくないかと疑問を抱く牡丹。
 内部に罠が仕掛けられていないかとかと思い、スキルを駆使して看破しようとしたが、そうしたものは確認できなかった。
「ま、グラードⅢで突っ込むなら、ちょっとした罠なら踏み倒せそうではあるがよ!」
 そのグラードⅢ……装甲蒸気車両を持ち込んでいた軽鎧姿の旅人男性、『特異運命座標』エーレン・キリエ(p3p009844)も作戦準備を進めて。
「こいつらが何をしていたのか知らんが……終焉獣の企みなどは打ち砕いておくに越したことはない」
 撤収したという指揮官チアウェイの足取りもつかめればいいが、まずは目の前の敵とエーレンは事態解決に意欲を見せる。
「奴は撤収したからぶん殴れないけど、虚偽の人体や変容する獣は全部倒すよ!」
 そう意気込むヨゾラも木々の陰に隠れつつ、戦況把握と周囲の警戒に努める。
 ここからは、そのヨゾラが面白いと語る作戦が決行される。
 

 飛呂がこの後の戦いの為、己を最適化して準備する前で、素早い咲良が先手を取って作戦行動に出るメンバーを牽引する。
 中心となるのは、エーレンとゴリョウ。
 エーレンのグラードⅢへとゴリョウ、牡丹が同乗していた。
「さあ、ダイナミックエントリーだ」
 すでに突入ポイントは先の偵察結果に加え、牡丹のナビゲートからなるべく重要な物がなさそうな正面からと定め、エーレンは一気に突撃する。
 誰が呼んだか、シャトルバス運行だ。
「カチコミだ、おらああ!」
「カチコミの時間だオラァッ!」
 牡丹の手前で盾を構えるゴリョウが共に叫ぶ。
 ダイナミックお邪魔しますと言わんばかりに突撃する面々。
「輝くもの天より堕ちなあ!」
 すでに保護結界を展開していた牡丹。
 林が燃えぬようにと配慮し、牡丹は燃える片翼と左手を駆使し、内部にいた終焉獣らに纏めて襲い掛かる。
 ゴリョウはというと己に後光を差し、強く存在感を示して終焉獣を強く惹きつける。
 敵が2人へと注意を払えば、エーレンは即座にバックして外へと飛び出した。
「バックしまぁす!」
 グラードⅢの動きにテンション高まる咲良が叫ぶ。
 そうして、外……仲間達の待機しているキルゾーンへ敵勢をトレインして引きずり出す。
 その間も、終焉獣らはヘイトを買う2人へと拳や蹴りを繰り出す。
 それらの打撃を盾で受け止めるゴリョウ。
 倒す必要など、彼は最初から考えてない。
 なぜなら、それは自身の仕事と捉えてはいないからだ。
「さぁ来たぜ、オメェさんらに『滅び』をもたらす奴らが!」
 ゴリョウの呼びかけに呼応するように、林に隠れていた面子が次々に姿を現す。

 敵の出現を今か今かと待っていたメンバー達。
 まずは飛呂が奇襲をかけ、進化が厄介な変容する獣……蒼白い人型の対処に乗り出す。
 数は6体でこちらが有利。
 とはいえ、味方の被弾を減らすのと、万一進化してもそもそも動けぬようにと、飛呂は素早く『狙撃銃:P-BreakerⅡ』の引き金を引く。
 鉛を掃射し、さらにラフィングショットを叩き込む。
 なお、廃屋は破壊してしまわぬよう、ヨゾラが保護結界を展開している傍で、レインも堕天の輝きを発して終焉獣らを照らす。
 『古語魔術』の一種とされる心得『Ariadne』もあり、レインは終焉獣の動きを制しようとする。
「全力発信オーライ!!」
 敵を煽るように叫ぶ咲良。
「「………………!!」」
 それによっていきり立つ終焉獣を、イレギュラーズは総出で迎え撃つ。


 終焉獣は6体、個々に盾役となる牡丹やゴリョウへと襲い掛かる。
 怒りで我を忘れたそれらはその身を凶器として叩き込んできていた。
 この戦いを自身の舞台というべく立ち回る牡丹は聖骸闘衣を纏って自己強化。
 彼女は時折空中を舞い、トリッキーな動きで獣どもの意表を突き、自身へと敵の視線を釘付けにしていた。
 それにより、牡丹は敵を一纏めにして仲間が一掃しやすくする。
 また、2種いる終焉獣は少しだけ機動力に差があり、獣の機動力を残す変容なる獣の方が先行して外へと出ていた形だ。
 エーレンもグラードⅢから多くの敵を巻き込んで勢いのままに終焉獣へと切りかかっていく傍で、ゴリョウがグラードⅢから飛び降り、敵へと吶喊する。
 彼は少し遅れていた虚偽の人体を纏めて抑えにかかるが、まずは変容する獣とぶつかる直前、ギフトによって細身となってすり抜けた彼は、直接人体へと肉薄してまたも存在感を示す。
 仲間達が抑えにかかる間、外で待っていたメンバーもさらなる攻撃に。
 咲良も奇襲に出ていて。
 彼女の着用する乙女の勝負服は機械式の外殻が備え付けられている。
 利き腕と反対側の装甲が厚く、胸当てと腿当てもあり、かっこよさに加えて実用性まで兼ね備えている。
 身軽に跳躍した咲良は敵の視覚より激しく蹴りを叩き込み、変容する獣の不意を突いて大打撃を与えていた。
 飛呂は距離をとり、同じく変容する獣へと弾丸をばら撒き、銃弾をその体へと埋め込み、あるいは撃ち貫いていく。
 レインも一旦は纏めて相手取り、アンジュ・デシュを放ち続けて敵の動きを鈍らせる。
 その間に、ヨゾラがそれらの獣へと星空の泥を巻き起こして一気に浴びせかけていく。
 変容する獣だけでなく、虚偽の人体をも巻き込むその泥は混沌に揺蕩う根源たる力。
 混沌の力を持って、混沌を滅ぼさんとする獣を、ヨゾラは撃ち滅ぼさんとする。
 そして、モカも運命の力を得て、身に着けた実戦武技……流星流格闘術で勝負を挑む。
 仲間達の攻撃を連続して浴びる変容なる獣へ、彼女は黒豹の如き誘導弾を発する。
 それは空中を掛け、虚偽の人体も巻き込んで襲う。
 思うように作戦が成功したイレギュラーズは、その後も一気に敵を切り崩そうと攻める。
「では改めて……鳴神抜刀流、霧江詠蓮だ。逃げられると思うなよ」
 グラードⅢから下車したエーレンもその最中で本格的な戦闘へと移り、居合で切りかかっていく。
「…………」
 変容なる獣は言葉を発さず、肉体言語を叩き込もうとしてくる。
 平然とこちらの攻撃に対し、剛腕を叩きつけ、鋭い爪で薙ぎ払ってくるが、牡丹は涼しい顔をしてそれらを受け止める。
「オレは硬い、オレは無敵だ!」
 まるで怯まぬ牡丹は実に心強い。
 ただ、獣は思わぬ一撃を広範囲に繰り出しており、モカが時折それを浴びていたようだった。
 その間、ゴリョウも笑いながら人体の攻撃を受け流し、直撃を避ける。
 人体はいくつかの部位型終焉獣の技を有しており、総合力もあって侮れぬ相手。
 人体型はほとんど交戦経験のあるゴリョウだ。
 放たれる強風や荒波は重量級の図体で踏ん張り、吸い込みは他の人体を壁とするように位置取って凌いでみせる。
「楽しみだぜ。その顔が引き攣るその時がッ!」
 そいつが時に不気味な笑みで笑うのに対し、ゴリョウは修羅道な笑みで返していた。

 しばらく、林傍での交戦は続くが、イレギュラーズが有利な戦況は変わらない。
 桜色の傘を手にするレインが高めた神秘の力を籠めた渾身の魔力が魔剣となる。
 神すら滅ぼすというその一閃。
 だが、その身を大きく切り裂かれながらも変容なる獣はレインの一太刀に耐え、爪を振り上げる。
 そんな敵の弱点を、咲良はエネミースキャンで割り出して。
「人の姿をしている以上、首や胸部は補強しようがないよ」
 纏めて敵を捉えた咲良はそれらへと猛攻……アヴァランチ・ダウンを繰り出す。
 その殴打を浴びた1体が消し飛ぶも、残る変容なる獣は変わらずこちらへと突っ込んでくる。
「楽園追放……貴様等にはここで消えてもらう!」
 人型でありながらも、獣の如く攻め立ててくる敵に、ヨゾラは楽園追放――神聖秘奥の術式を発動する。
 終焉獣である以上、混沌に行ける者にとって敵でしかない。
 それらを打ち祓う光でヨゾラは包み込み、蒼白い体躯を強く灼いていく。
 仰け反る敵のうち1体を相手取った飛呂は、素早い獣の掃射でそいつの頭を撃ち抜くと、そのまま霧散するように消えていく。
 その後も、メンバーは順調に変容する獣を攻め落とす。
 数うちの安物を手にするエーレンだが、その抜刀術は鳴神抜刀流。
 抜くと同時に狙った変容なる獣を切り伏せ、見事に寸断し、消し飛ばした。

「…………」
 小声で囁き合う虚偽の人体。
 何か策があるのかもしれないが、ゴリョウはそうさせじと立ちはだかる。
 思った以上にしぶとい人体ども相手で傷が深まっていた彼だが、積極的受動回復と内気と外気の双方で自己回復をはかっていた。
 他メンバーも抑えにかかろうとするが、人体はしたたかに考えていたようで。
 黒豹のオーラを放つ構えを取っていたモカを見定めた敵が一気に仕掛けてくる。
 荒波を起こした1体がなおもモカを吸い込もうと吸引を仕掛けてくる。
 一度は踏みとどまる彼女だが、追撃とばかりに別の人体が踏みつぶしにかかり、空間ごと蹴り裂かんとしてきた。
 その威力は想像をはるかに超えており、モカの体を破壊しかねぬもの。
 彼女はなんとか五体こそ維持してはいたが、パンドラに縋り、膝をついていた。
 代わりとなって前に出る牡丹が身構えると、エーレンが再度ゴリョウと共にグラードⅢに乗り、シャトルバス運行で敵を引き付けようとする。
 これ以上やらせぬと盾役メンバーが人体の気を引く間に、ヨゾラが傷つく仲間の回復すべく無穢のアガペーを振りまく。
「誰も倒れさせないよ!」
 ヨゾラが奮起する傍で、咲良も用意していた自己回復手段を使うことも考えつつ、空へと跳ね上げて追撃する。
 だが、虚偽の人体は顔を歪めながらも着地し、次なる攻撃の為身構えた。
 紡がれる異言に歌で対抗していたレインはここぞと迫る。
 彼の手から発せられる無限の光。
 守りすら許さぬその一撃に灼かれ、虚偽の人体は消し飛んでしまう。
 仲間の癒しで立ち直ったモカが次なる人体へと終焉の武舞を見舞い、全身を叩きつけると、入れ替わるようにヨゾラが前に出て。
「虚偽の人体、虚無に還れ……星の破撃!」
 本体である『魔術紋』を強く煌めかせたヨゾラは拳に神秘の力を集約し、一気に叩き込む。
 大きく目と口を見開いたまま、2体目の人体も果て、その身を崩していく。
「…………」
 少し怯んだようにも見えた最後の人体だが、おそらくはチアウェイの意に従うべきと判断したのか、特攻してくる。
 悠然と構える盾役メンバーの後ろから、飛呂が狙撃銃に込めた特別製の弾丸をその人体へと撃ち込む。
 ――『SV:N』……『Snake Venom:Neurotoxin』。
 さすがの終焉獣も神経毒と名付けられたその一撃には耐えられず。
 しばしの硬直の後、他個体と同様にその身を崩壊させていったのだった。


 廃屋を根城としていた終焉獣を掃討したイレギュラーズは、ヨゾラの手当てを受けつつ体を休める。
「何か重要な手がかりを発見できるかもしれない」
 モカはそう言いながらも、仲間達へと軽食を振る舞う。

 程なく、一行は廃屋調査へ。
「指揮系統だからなのかもしれないけど、先に逃げるリーダーって気に食わないからさ」
 咲良もやはり、手掛かりを得て早く倒さなければ、またどこかで被害が出るかもしれないと考え、その外壁、周囲をくまなく調べる。
 エーレンも傍で、秘密の構造物がないかと、アナザーアナライズや音の反響で探っていた。
 内部は、発光するゴリョウが照らす中で捜索を進める。
「俺はチアウェイっての知らないけど、聞いた感じ色々やってるようだし」
 何か企てている為の情報をと飛呂は直観を働かせ、遮蔽物の向こうに隠れた物がないかと見渡す。
 確かに地下室は存在したが、元の住民が食料を貯蔵にするのに使っていた跡らしい。
 なお、屋内で確認できたのは、数冊の書物、走り書き。
 それらから考えられたのは、終焉獣が知恵を付けていたことだろうか。
「戦法、兵法書……? 戦略指導でもしてやがったのか……?」
 先の戦いで、人型終焉獣は下位の部位型を指揮していたという話を牡丹は思い出す。
 また、変容する獣も、四つ足から少しずつ進化し、人型へとなっていたフシがある。
「どれほどの知恵を付けていたのか確かめていた……?」
 終焉獣であるクルエラが自身と同等の存在を育てていたのだろうかと、咲良も考えるが、果たして。
 林にはバグ・ホールがあるらしい。
 腰を据えて調べたいところだが、近づけば消滅するとも言われ、近づくこともままならぬ非常に危険な代物だ。
 瞬間記憶こそしていたレインだが、満足に調べることもままならず、レインは歯痒さも感じていたようだ。
「チアウェイ、集落の方に行ってないと良いけど……」
 ヨゾラがそう示唆したこともあり、メンバーは集落コエグへと戻ることに。

 しばらくして、コエグが無事だったことに確認する面々。
 後光を輝かせるゴリョウが集落民らへ、怪しい人影の掃討を報告すると、皆ホッとしていたようだ。
 住民らの不安を解消し、メンバーは終焉獣やバグ・ホールの脅威を感じながらも、報告の為にローレットへと戻ることにしたのだった。

成否

成功

MVP

エーレン・キリエ(p3p009844)
特異運命座標

状態異常

なし

あとがき

 リプレイ、公開です。
 MVPはシャトルバス運行の肝となっていた貴方へ。
 この後、最終決戦へと移行することとなります。
 皆様のご武運をお祈りしております。
 今回はご参加、ありがとうございました。

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