シナリオ詳細
もっちりみっちり、ぴぃちちち
オープニング
●むぎゅぅ(画面の圧)
ぴぃちちち、ぴぃ! ぴぴぃ、ぴぃ!
「アラーイスさま」
バザールに響いた細く高い声に気がついて、メイメイ・ルー(p3p004460)が足を止めた。鳥がいますよ、なんてアラーイス・アル・ニール(p3n000321)へと声を掛けながら振り返り――唖然。ぽかんと口を開けて固まった。
「ぶんぶん鳥ですわね」
「……文鳥とはちがうのです、か?」
「ほぼ同じですけど、文鳥とは小さな鳥でしょう?」
ほら、とアラーイスが指をさす。どう見ても大きいでしょう?
普通の文鳥の、手に乗るようなサイズではない。多分、成人男性が両手を広げてぎゅむっと抱きつけるくらいには大きく、もこもこふっくらだ。
(大きな文鳥……)
大きくて白い文鳥。そんな飛行種の男の子をメイメイは知っている。海洋王国生まれの飛行種な彼は、代々貿易商を営む家の習わしに従い、若くして各地を行脚している。また何処かで会えるかも、なんて、メイメイは文鳥を見る度につい思ってしまうのだ。
そう、彼も確かこんな感じのふっくらもちもち具合で、何故だか甘い香りがしておいしそ――
「何やら甘い香りがしますわ」
「めぇ!?」
鼻の良いアラーイスが匂いのありかを探すように顔を動かして、思いを馳せていたメイメイの意識が戻ってくる。
「メイメイ様、下がって。近付いて来ます」
言われて見れば、通りの先を何かがバタバタと走ってきた。どうやら犬に追われているようだ。
危険だと思ったのだろう。アラーイスが少し強引にメイメイの体を押して騒ぎに巻き込まれないようにする。
「わあ!! あああああ!」
ドカーーーン! ガシャン!!
バタバタバタバタ! ぴぃぃいいい!
「あああ、何てことだ!」
「うう、誰か、助けてくれ!」
様々な音や声が混ざり合う。前者の声はぶんぶん鳥業者の声で、後者の声は――
「シューヴェルト、さま?」
或いは愛称でシュー君と呼ぶべきだろうか。今しがた思いを馳せていた人物の声に、メイメイは瞳を丸くした。
「その声は! 久しぶりだな、メイメイ! オイラを助けてくれ!」
「は、はい! 今お助けします!」
「すまない、メイメイ。犬が……」
「ふふ」
「メイメイ?」
「いえ、おかわりないことがうれしくて」
正座をしてもっちりと大福のようになっているシューヴェルトの前で、メイメイが小さく笑った。
「あ、アラーイス、メイメイ! 大きな音がしたけど、大丈夫?」
バザールをゲオルグ=レオンハート(p3p001983)とジークと楽しんでいたところ、大きな物音を聞いて駆けつけた、サマーァ・アル・アラク (p3n000320)が顔を出した。
ゲオルグの視線は静かにぶんぶん鳥へと向けられていて、そちらをチラと見たサマーァは「わ、大変だ」と呟いた。
一目見れば状況は解る。犬に追われたシューヴェルトがぶんぶん鳥業者が扱う大きな鳥かごにぶつかり、施錠が外れて通りにはぶんぶん鳥がぎっしりもっちりみっちりと溢れかえってしまっていた。
そして業者はというと、とても困った表情をしている。
そんな業者を見てアラーイスは「そうですわね、選別の必要があります」と呟いた。
「選別、ですか」
「アタシ知ってる。もふもふしてもふもふ具合で羽根の質を確かめるんだよね? こうぎゅむっと抱きついて、もふもふーってするの!」
ラサに住まう商人として、サマーァにもぶんぶん鳥の知識がある。はいはーいっと手を挙げてサマーァが答えると、偶然通りすがった人物から「え゛っ」と声が聞こえた。
「雨泽?」
チック・シュテル(p3p000932)と劉・雨泽(p3n000218)である。
「鳥ってもふっていいの?」
チックが見上げた横顔。雨泽の瞳は驚きと好奇心で輝いている。
「小さな鳥ではありませんので」
人手はあって困るものではない。第一市場はちょっとした騒ぎとなっているし、そうそうと仕分けて業者に引き渡したほうが良いだろう。
アラーイスから手を貸して下さいと微笑まれた雨泽はパッと明るい表情をし――それからハッとしたようにチックを見た。主に、翼を。
そうして神妙な顔でこう問うたのだ。
「これは浮気にはならない、よね……?」
飛行種的にはどうなのだろうか――。
「ひとまず、この状況をなんとかしましょう」
雨泽の代わりに手をパチリと合わせたアラーイスは、近くに居るイレギュラーズたちへと手伝ってもらえないかと声を掛けたのだった。
- もっちりみっちり、ぴぃちちち完了
- もふもふをもふもふするお仕事です。
- GM名壱花
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2024年03月10日 22時05分
- 参加人数10/10人
- 相談5日
- 参加費100RC
参加者 : 10 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(10人)
サポートNPC一覧(3人)
リプレイ
●
ぴぃちちちとぶんぶん鳥が鳴いている。
道は封鎖されてしまい、行き交う商人たちは驚いた表情をしてから苦笑し、迂回していく。
(本来ならば手早く済ませるべきなのだろう)
その光景を見て、『優穏の聲』ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)は冷静にそう思う。
……そう、思うのだが。
急いで手早くとなると、どうしたって扱いが雑になってしまう。
それはいけない。断じていけない。許されるはずがない!
なぜなら彼等は人々に愛されるふわもこアニマル! 見た目が愛らしいだけに留まらず! そのふわふわな羽根は人々が心地よく過ごせるよう、助けてくれる素晴らしい羽根だ! そんな彼等を雑に扱うことなぞできようか!
「失礼、私はモカ・ビアンキーニといいます。羽毛の質を確かめるために、もふもふさせていただきます」
見た目は冷静に、しかし内心ではふわもこ愛を爆発させているゲオルグのすぐ近くで、『Pantera Nera』モカ・ビアンキーニ(p3p007999)がぶんぶん鳥へと挨拶をした。礼儀正しい、それはとても良いことだ。
「ゲオルグだ。失礼させてもらう」
「挨拶! 挨拶したほうがいいかな?」
サマーァがハッとした表情をし、一緒にぺこりと頭を下げた。
「……後から、アラーイスさまのお耳と尻尾ももふもふさせていただいても?」
ふかふかのぶんぶん鳥とアラーイスを見比べて、ちょっと失礼だろうかと悩みながらも『掴んだぬくもり』メイメイ・ルー(p3p004460)は問うてみた。
「はい。メイメイ様のお耳に触れても良いのでしたら」
勿論ですと大きく頷いたメイメイは、シューヴェルトへ挨拶に行くと駆けていった。久しぶりに会えた喜びのハグと、それから最近の近況、未来へのエールを送るのだ。
「…………いいよ?」
雨泽の問いへかなりの間を空けてから応えた『赤翡翠』チック・シュテル(p3p000932)は雨泽の袖を引いて、屈ませて雨泽の額を両手で隠すとすぐに離れていった。
「雨泽様、うわきってなんですか……?」
追おうとした雨泽は『おいしいを一緒に』ニル(p3p009185)の問いに足を止め、目線を合わせるようにしゃがみ込む。
「おいしくないこと、かな。ニルの一緒に寝たい子がニル以外の子と寝ちゃうこと」
「それは」
ニルには一緒にお風呂に入ったり一緒に寝たい友人が居る。雨泽の言葉にコアへと手を添わせたニルは何とも言えぬ表情となった。
「ね、おいしくないでしょう?」
眉が下がったニルを見て腰を上げると、雨泽は小さく笑った。
「ニル、ぶんぶん鳥の『おいしい』は知りたくない?」
「! 知りたいです!」
途端にパッと明るくなったニルの表情に満足げな笑みを浮かべ、雨泽は「買い物しにいこうか」とニルを誘い、メイメイとの会話を終えた直後の混ざらないようにと身をシュッとさせている白文鳥ことシュー君を誘えば「僕も行こう」と『策士』シューヴェルト・シェヴァリエ(p3p008387)が挙手をした。
「シュー君といったな。こいつを着けておけ。なに、値段は気にするな」
業者に聞いたぶんぶん鳥の好物を雨泽が買う間に、シューヴェルトは素敵なアクセサリーを見つけたようだ。どうやら同じ名前のシュー君のことを気にかけているようで、貴族騎士らしく誠実に接している。
いいのか? と問うシュー君の手は、手羽である。なので、装着もシューヴェルトがしてあげる。
「似合っているだろうか!」
「ああ、よく似合っている」
白い羽毛によく合う赤い宝石のカメオにジャボタイ。ちょっとお洒落な感じなのも良い。
バザールを歩きながら、シューヴェルトはシュー君といくつか言葉を交わした。彼が海洋の商人の家の出であること。そして年は13歳で、見聞を広げるための旅をしていること。
「こうして出会えた縁だ。どうだ、僕の領地でも商売してみないか?」
「うん、そうだな。いつかオイラが大きくなったら、そうさせてもらえると嬉しいぞ!」
シュー君はいずれ女王お抱えの商人になるのだと、もふんとふかふかの胸を張っていた。
「はー……ふっかふかで気持ちいいわー……」
ふっかりもっふり。包み込み柔らかさは純度100%の優しさのよう。
幸せそうにぶんぶん鳥へと顔を埋めた『ベルディグリの傍ら』ジルーシャ・グレイ(p3p002246)へ、アラーイスがくすりと笑った。
「この子たちの羽根で作ったふかふかな枕と寝香水とか、とても人気ですのよ」
「リラックス効果が抜群でしょうね」
やっぱりもうあった! そう思うのは、逞しき商魂から。
けれどもこれだけふかふかで寝入りやすい香りも合わされば、それもさもありなん。次の誕生日のプレゼントはそれにしましょうか? なんてアラーイスが笑い、気の早い話にジルーシャもんふふと笑みを返した。
「こっちのアンタは……アラ、ちょっとゴワゴワかしら。大丈夫? 何か悩んでたりしない?」
言葉を交わしながらも、選別する手は休まない。
けれど気になるのは毛並みの悪い子の方。改善手段はないかと考えてしまう。
(やっぱりお手入れ方法とか? ……そういえばアラーイスちゃんはいつも耳も尻尾も綺麗よね)
「……ジルーシャ様?」
じっと見つめすぎたのだろう、アラーイスにささっと尾を隠された。冬毛でもこっとしているけれど、アラーイス自身とて冬服で着膨れているから容易だ。
「触ったりなんてしないわ!?」
「女性の尾は髪と一緒ですのよ」
「綺麗だと思って……ね、いつもどんな風にケアしているの?」
お洒落の話に転がりだしたころ、シューヴェルトへの挨拶を終えたメイメイも混ざりだす。
「ふわ……こ、これは、肌触りが柔らかくてまるでそよ風に吹かれているかのような軽い感触……」
ふかふかな羽毛に顔を埋めるメイメイの表情が可愛いのか、アラーイスがニコニコしている。そのことに気付いたメイメイは「この子の弾力がすごくて、ですね……!」なんて言い訳なんかもして。けれどもアラーイスもジルーシャも、微笑ましげな表情のまま変わらない。
「ほ、本当ですよ! アラーイスさまも、触ってみて下さい」
「わたくしはメイメイ様をいつでも信じております」
「本当にもふもふなんですから!」
微笑ましい表情から変わらないことにメイメイはめぇぇと鳴いた。
「蜻蛉さん、今日は猫さんのお姿なのですね」
「取って食うたりしませんよって、大丈夫。爪も牙も出しませんよって、んふふ♪」
黒猫姿の『暁月夜』十夜 蜻蛉(p3p002599)と、そんな彼女へ首を傾げた『ひまり』。何度かちらりちらりと視線が行くのは、いつもは自身より背丈のある蜻蛉が小さな黒猫だから、抱っこしたいのかもしれない。
「あら、ま」
「ふふ、蜻蛉さんからすると大きい、ですね」
自分の方が大きいからか、ひまりは少しお姉さんな気分。
「あっ」
「逃げちゃいましたね」
「うちのこと怖いんやろか」
猫と鳥だから? 首をふたりでこてりと傾げれば、業者の男が「結構臆病な子が多いんです」と教えてくれる。人は普段お世話をしてくれる存在として認識しているが、普段見かけない動物は怖い、と。けれど害が無いことが解ればおとなしい、とも。
ひまりと蜻蛉は顔を見合わせる。猫も害がないと解ってもらうべきか、だが野生の猫のことを考えればぶんぶん鳥の今後のためには警戒心は必要だ。
故にふたりは逃げない子を中心にもふっとしていくことにした。
「しっかりしたお羽やわ、あなたはこっちやよ」
ふかりと沈んで、蜻蛉が断言。
「普段どんなお手入れしとるのやろか。うちにも教えてくれる? あなたはこっち」
「蜻蛉さん、すごいです。専門家みたいです」
ひまりが瞳を輝かせていたから、蜻蛉はコロコロと鈴音を転がして。
「ひまりちゃんも、ささ。とっても気持ちええよ」
「で、では……!」
緊張した面持ちで、ひまりもえーいっと飛びついた。
「少し怖がっているみたいだな、望乃」
「そうみたいですね、フーガ」
ぶんぶん鳥への動物疎通で解るのは知能的に感情くらいであった。業者やイレギュラーズたちが落ち着けさせているとは言え、犬が来たこと、それからガシャーンとなったことに怯えるぶんぶん鳥はまだ居る。『世界で一番幸せなお嫁さん』佐倉・望乃(p3p010720)も亜竜の角や翼、尾を隠し、怖くないよと示しており、『世界で一番幸せな旦那さん』フーガ・リリオ(p3p010595)はそんな望乃の姿にうんうんと頷いていたりなんかする。
どうしようかと視線を合わせたフーガと望乃は、ぶんぶん鳥にもリラックスしてもらおうと歌を披露した。
「わ、望乃。すごいな」
どうやら歌は好きらしい。一緒にぴぃちぃと歌いだし、微笑ましさにフーガが目を細める。
「少しは落ち着きましたか?」
ぴぃと元気に鳴くぶんぶん鳥の姿にふたりはまた顔を見合わせて笑い、ふかふかのもふもふ――否、選別に精を出す。
「むむむ。こちらは、ちょっと判断に迷いますね……フーガ、一緒にもふもふしてもらっても良いですか?」
「お、いいぞ! 一緒にもふもふしよう!」
夫婦なのだから、迷ったら相談! そして一緒に解決。
ふたりで一緒にぎゅうと抱きつけば、少し前まで互いにぶんぶん鳥へ抱いていた嫉妬心もどこかへ行ってしまうのだ。
――けれどもそうできない者もいる。
(……雨泽を困らせる、しちゃった)
表情を隠すようにもふんとぶんぶん鳥へと抱きついたチックの気持ちは複雑だった。
真っ白の羽が羨ましくて、その羽毛に雨泽が嬉しそうに触れるのが本当は嫌で、だから『嫌の合図』を出した。表情からも察されただろう。少し困った顔をさせてしまった事に胸が苦しくなる。
ふわふわなものに触るのは気持ちいい。チックも好きだし、雨泽がふわふわな生き物が大好きな事も知っている。
『好き』を奪いたくない。だから、『いいよ』。
(でも……)
彼がそうしている所は見たくなくて、ずっとぶんぶん鳥のみを目に映して『お手伝い』で頭をいっぱいにしようとしていた。
「チック」
名を呼ばれてドキリとした。表情はもう大丈夫だろうか、また嫌な気持ちにさせないか、不安になる。
「コレあげてみて」
「……果物?」
「そう。業者の人に聞いて買ってきたんだ」
「……『お手伝い』、は?」
「もふもふ? してないよ。ご飯係をすることにした」
「どう、して?」
隣にしゃがんだ雨泽はきょとんとした。
近い距離、ふたりの会話は他の人には聞こえないだろう。
「君が嫌がることを僕はしたくないって伝えたよね」
「……っ」
「君は僕の恋人で、だから我慢しなくて良いとも最近伝えたばかりだよ」
ちゃんと伝わってなかった?
問うてくる雨泽を、チックは瞳を見開いて見つめるばかりだ。
「じゃあ、そういうことだから」
気にしてそうだからとわざわざ来てくれたのだと解る。何と声を掛ければ良いかチックが悩む間に、彼は果実の入った器を手に立ち上がる。そうしてから、言わないといけないことを思い出した表情をした。
「後から、ちゃんと覚悟していてね」
「後から?」
「チックの翼なら触って良いんでしょ?」
「っ」
大胆なことを言ってしまった気がする!
もふん! チックの顔はまたぶんぶん鳥の羽毛に埋められた。
もっふりふかふかは、幸せだ。
そんなこと出来ないと突っぱねる者でなければ、きっと簡単に虜になってしまう。
(こころがふわふわします)
ぶんぶん鳥はふかふかで、もふんとすれば心がふわふわ。
何よりもふもふして幸せそうな皆の姿。あんなにキリッとして見えるゲオルグだってぶんぶん鳥の羽毛に顔を埋めているし、モカもとても口角が上がって嬉しそう。もふもふされているぶんぶん鳥にはマッサージのように思えているのか、ぶんぶん鳥だって嬉しそう。沢山の幸せは、笑顔は、ニルの『おいしい』。
ふかふかで、ふわふわで、ゆるゆるで……。
「適宜休憩を取った方が良いな」
涼し気な顔に小さな羽毛をくっつけたゲオルグがそう口にして、ニルはハッと意識を覚醒させた。ふかふかにうっとりしていたらいつの間にか瞼が重くなって――眠たくならないはずなのに、少し寝ていた。
「これはいけないね、眠くなっちゃう」
どうやらモカも寝そうになっていたらしい。コアの異常でも何でも無く、誰にも起きることなのだと、ニルは密かにホッと息を吐いた。
「結構選別したな」
「そうだねー……あ、ジーク!」
ぽふん☆と呼び出された羊の『ジーク』にサマーァが笑顔になる。
「似たような質感のもふもふばかりさわっていると次第に慣れてしまって感覚が麻痺し、ちゃんと判別できなくなってしまうからな」
感覚をリセットするためにも他のもふもふが必要なのだともふもふのプロが言うものだから、サマーァもニルも「そうなんだ!」の表情をした。
「休憩? じゃあ今の内にぶんぶん鳥にご飯をあげよう」
「ニルもあげたいです!」
先刻ニルと買った果実が入った器を手にやって来た雨泽は「今日も可愛いもこもこだね」とジークを撫でた。
「ゲオルグもモカもどう? 食べやすい大きさに切ったから、手に乗せてあげれるよ。あ、ジークも食べる? はい」
小さな両手で果物を受け取るジークが可愛くて、サマーァが幸せそうに笑っていた。
「ぶんぶん鳥さん、『おいしい』ですか?」
ニルが果物をあげながらぶんぶん鳥に話しかけている。
ぶんぶん鳥の表情を見れば幸せそうで、果実を与えるゲオルグの胸も暖かくなった。
「人用のお菓子とお茶もあるよ」
モカがお茶とお菓子の用意もしてくれていて、ジークをもふもふしたりして休憩をして――またもふ……真剣に選別を行っていく。
「アラーイスさまは、ふわふわで、綺麗……」
「メイメイ様も柔らかです」
メイメイはアラーイスの尾。アラーイスはメイメイの尾に触れた。メイメイの尻尾は小さくてスカートの中なので、また今度触らせてくれるらしい。
暖かくふかりとしたものに触れると、自然と笑みが浮かぶ。
「アラーイスさまの所にも、ちゃんと帰ってきます、から、ね」
柔らかなアラーイスの表情に胸を暖かく満たしたメイメイはアラーイスを抱きしめて告げるとその腕に指先が触れ、「はい」と静かな声が帰ってきたのだった。
「もち、ふわ、ぎゅー♪」
「わたしももちふわしてますか?」
「望乃からは薔薇の甘い香りがするし、髪もふわふわだ」
おいら専用のもちふわだと告げれば、愛しい妻が笑顔で肯定してくれる。
けれど、隙だらけではいけない!
「フーガもぎゅーっ! です!」
「わっ!」
反撃の好き好きぎゅーっ! に、フーガが嬉しそうに笑った。
もふもふもぎゅーもたくさんして、心が満たされると何だかとても眠くなる。
気付けば望乃がうとうとしていて、フーガの口からもふあとあくびが溢れた。
ちょっとくらい休憩してもいいかな? いいよね?
だってこんなにもぶんぶん鳥はふかふかで、あたたかなのだもの。
気付けば、沢山のイレギュラーズたちが眠りに落ちていた。
ニルもメイメイもサマーァもチックも気持ちよさそうにすやすやと眠っていて、雨泽が「後でもふらせてくれるって言ったのに」とぼやく姿にアラーイスが小さく微笑む。
やはり人はもふもふには勝てないのかもしれない。イレギュラーズとて例外はなく、圧倒的ふかふかの前にはあまりにも無力。起きているのはゲオルグとモカとシューヴェルトとジルーシャと――
「あら?」
アラーイスがひまりの腕の中で黒猫が寝ていることに気がついた。
しぃっとひまりがいつもよりお姉さんな表情で微笑んで、ジルーシャとモカが眠る蜻蛉に微笑ましげに咲う。
「続きは、起こさないように」
サマーァの腕の中ではジークもすやすやと夢の中。
彼等の眠りを妨げぬように静かに告げたゲオルグは、残り少しのぶんぶん鳥の仕分けをしていく。
何せ彼はこの道のプロ。日々ジークをもふり、もふもふを愛でるもふもふマスターだ。
どんなに心が弾もうとも、見目は――静かに、冷静に。
そしてこの素晴らしき仕事を確実に成し遂げるのだ――。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
もっふり! ふかふか!
お疲れ様でした!
GMコメント
ごきげんよう、壱花です。
もふもふした……いえ、これはお仕事。お仕事ですよ。
●やれること
もふもふ!
●シナリオについて
ぶんぶん鳥の選別をしましょう!
もふっと抱きついてもふもふします。うーん、もふ度が高い……いや、どうなんだろう……こっちのほうがもふ度が……みたいな感じで、もふ度が一定以上高い子とちょっとゴワゴワかなぁみたいな子を選別していきます。うっかりしていると何だか眠たくなってしまうので、これは大変な仕事ですよ。気を引き締めてかかってください!
●ぶんぶん鳥(とり)
飛行種ではありません。大きな鳥です。
もふ度が高い質の良い羽毛の子は、高級羽毛布団やクッションになります。アラーイスの部屋のふかふかクッションもぶんぶん鳥の羽毛が使われています。
大切に飼育され、大きい胸部の良質の羽毛だけを選んで、優しく採取されます。大切に育てるほど羽毛のツヤや柔らかさが良いのだとか。
●シューヴェルト
白文鳥の飛行種の男の子です。
ぶんぶん鳥と見分けがつかなくなると困ると業者に言われたので、ちょっと離れています。甘い香りがするので、ぎゅむっとすると癒やし度満点です。
オイラのせいで……! と責任を感じているので、少しくらいもふもふしても許してくれるでしょう。選別に疲れていないか? と気にかけてくれます。
●もふもふ
ぶんぶん鳥の選別することが主目的ですが、人数がいるので全員が頑張らなくてもきっと大丈夫です。
お互いにOKを出している間柄なら、誰かをもふってもいいと思います。
(プレイングにその旨記載されていないとGMにはわかりません)
●同行NPC
・劉・雨泽(p3n000218)
ローレットの情報屋。
もふりたい!!!!!!!
でも鳥をもふることが浮気なら、我慢します。
・サマーァ・アル・アラク (p3n000320)
アルアラク商会の孫娘でイレギュラーズ。
もふもふ大好き! ジークとぶんぶん鳥、どっちももふりたい。
・アラーイス・アル・ニール(p3n000321)
狼の獣種の少女。アルニール商会の主。
もふもふ尻尾の持ち主です。女性にならもふられても大丈夫です。
●EXプレイング
開放してあります。
文字数が欲しい、関係者さんと過ごしたい、等ありましたらどうぞ。
可能な範囲でお応えいたします。
●ご注意
ひとや鳥の嫌がることはしてはいけません!
以下、選択肢です。
交流
誰かと・ひとりっきりの描写等も可能です。
同行している弊NPCは話しかけると反応しますが、他の人の行動によっては添った行動を取ることが難しい場合もあります。いかなる場合でもNPCが動くと文字数が吸われます。
ぶんぶん鳥以外をもふったりもふられる場合は【2】か【4】を推奨します。
【1】ソロ
私はもふもふのプロである。
話しかけないでほしい。プロなので真剣に向き合いたい。
【2】ペアorグループ
ふたりっきりやお友達、関係者と。
【名前+ID】or【グループ名】をプレイング頭に。
一方通行の場合は適用されません。お忘れずに。
【3】マルチ
特定の同行者(関係者含む)がおらず、絡めそうな場合、参加者さんと交流。(ソロ仕様なひとり完結型プレイングはソロとなる場合が多いです。)
【4】NPCと交流
おすすめはしませんが、同行NPCとすごく交流したい方向け。
なるべくふたりきりの描写を心がけますが、他の方の選択によってはふたりきりが難しい場合もあります。
交流したいNPCは頭文字で指定してください。例【N雨】
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