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シナリオ詳細

ガラシャラボスといのちを繋ぐおしごと

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●助けを求める声
 世界じゅうにバグ・ホールという穴があき、Bad End 8が同時多発的に世界を攻撃しているその一方でも、人々は生きていて、そしてどこかで助けを求めている。
「どなたか! どなたか助けていただけませんか!?」
 鉄帝国にあるローレット酒場――と通称されているその酒場に、一人の女性が駆け込んできた。
 ぜえぜえと呼吸を荒げた様子からして、よほど急ぎの仕事なのだろう。
 差し出された水を飲み干すと、女性はすこしばかり落ち着いた様子でカップを返した。
「申し遅れました。私はディケンズ村に住んでいたエリーシェと申します。
 バグ・ホールと今回の騒ぎを受けて私達ディケンズ村の住人は近くの別の村へと避難したのですが、食料物資が不足して……」
 避難所の生活というのは楽なものではない。被害規模が大きければそれだけ人が多くなり、場合によっては収容キャパシティを大きく超えてしまうこともある。
 それでも命には代えがたいとしてなんとか人々を受け入れたそうだが、やはりというべきだろう。避難所に備蓄されていた食料が底をついてしまったのだそうだ。
「領主様にかけあうことで、なんとか食料を手に入れることはできました。
 けれど……避難所までの道のりに強力な魔物が発生してしまったのです。
 これでは食料を届けることが出来ず、避難所の人達は……」
 またも表情を暗くするエリーシェ。当然だろう。折角の光明が魔物の発生によって閉ざされてしまったのである。
 だが、本当にすべての希望が閉ざされたわけではない。
「ここに来れば、助けてくださると聞いてきたのです。どうか私達を……ディケンズ村の皆を助けていただけませんでしょうか!?」

●護衛任務と魔物
「魔物の情報なら、あるぜ」
 そう声をあげたのはローレットと契約している情報屋だった。
 帽子を被りサングラスをかけた怪しい風貌だが、これまでいくつもの依頼で事前に情報を流してくれるなどして助けてくれた実力ある情報屋だ。
 彼は手帳をぱらぱらと捲ると魔物の情報を検索し始めた。
「この辺のこの季節に発生する魔物といえば、『ガラシャラボス』だな。
 巨大な熊にも似たシルエットをしていて、自らの影から武器を作り出して攻撃する能力を持っているという」
 ガラシャラボスはこの季節になると人里へと降りてきて食べ物を奪おうとする習性をもっている。
 食料を満載にした馬車など、おそらく格好の餌食となるだろう。
「しかもガラシャラボスは群れを形成し、リーダーとなる個体は特に強力な力を持っている。並大抵の冒険者では歯が立たないと言われるほどだ」
 情報屋は手元に置いておいた酒の入ったカップを手に取ると、口に近づけちびりと飲んだ。
「被害情報もいくつかあるぜ。森に入った所で奇襲を受けて食料を奪われただとか、森の影に潜んで姿を隠していただとかな。
 護衛をするなら、ディケンズの隣村――確かアルトロール村の避難所へ続く森があった筈だ。そこを通過する際に注意をしておくといいだろうな」
 護衛は数台の馬車で行われることになる。
 一台は食料を満載にしたエリーシェの馬車。残りは護衛隊であるあなたの馬車だ。
 隊列は自由だが、森を抜ける際は細い一本道を通ることになるので、エリーシェの馬車を挟んで前後を警戒するように進む必要があるだろう。

「しかし……エリーシェさん、あんたも一緒に行くのかい? 正直危険だぜ。食料の運搬自体をローレットに任せるってわけにはいかねえのかい」
 情報屋の当然の問いかけに、エリーシェはスッと視線を下げた。
「確かにそうかもしれません……けれど、避難所には私の家族と村の皆がいるのです。家族と離ればなれになったままは……この時世、とてもつらいのです」
「そうかい。なら、別の質問だ。なぜあんたなんだ? まだ若いようだが、あんたが村の代表者なのかい?」
 情報屋の問いかけは、ある意味確信を得てのものであるように見えた。質問というより、ただの確認のようだ。
「その通りです。村長であった私の父は去年に亡くなり、その後を引き継ぐ形で私が村長のお役目を務めさせていただいています。それも一次的なもので、すぐに新しい村長を選ぼうという話はあったのですが、そこであのバグ・ホールが発生しはじめたのです。
 小さな村ですから、皆家族のようなもので……そんな人々が苦しむ姿は、見るに堪えません。皆を助けるために、私が志願したのです」
 胸からさげたペンダントを握りしめ、目を瞑って決意を固めるかのように言うエリーシェ。どうやら彼女は若き村長であるらしい。家族同然の村人たちのため、彼女は立ち上がることを決めたのだ。
「皆さん、どうか……この苦しい時期とは分かっていますが、力を貸して頂けないでしょうか。どうか、どうか、よろしくお願いします……!」
 エリーシェはあなたに深く頭を下げ、頼み込むのであった。

GMコメント

●シチュエーション
 若き村長エリーシェの頼みを受け、食料を満載にした馬車の護衛を引き受けることにしました。
 道中危険となるのは森に現れる『ガラシャラボス』というモンスター。
 このモンスターの襲撃から見事馬車を守り切り、避難所まで送り届けることができるのか……。それは、あなたにかかっています。

●エネミー
・ガラシャラボス
 影を武器に変えて戦う能力をもつモンスターです。
 外見は熊に似ており、そのままでも鋭い爪や牙で戦うことも可能です。
 主な攻撃方法は影を巨大な爪や顎に変えての攻撃で、これは神秘攻撃扱いになっています。
 一番恐ろしいのは影を自らに纏って攻撃するパターンで、これはリーダー個体が得意としているようです。
 リーダーには抑えをつけ、通常個体を倒して行ってから最後に協力してあたるというのがスムーズな倒し方になるでしょう。
 通常個体がどれだけ出現するかは今のところ不明です。

 また、ガラシャラボスは奇襲をしかけると言われており、馬車に奇襲をしかけられないように森の中をよく観察しておくのがよいでしょう。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • ガラシャラボスといのちを繋ぐおしごと完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2024年03月08日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

チャロロ・コレシピ・アシタ(p3p000188)
炎の守護者
海音寺 潮(p3p001498)
揺蕩う老魚
ゴリョウ・クートン(p3p002081)
ディバイン・シールド
モカ・ビアンキーニ(p3p007999)
Pantera Nera
皿倉 咲良(p3p009816)
正義の味方
エーレン・キリエ(p3p009844)
特異運命座標
囲 飛呂(p3p010030)
君の為に
レイン・レイン(p3p010586)
玉響

リプレイ


「皆さん! この度は集まっていただいて、本当にありがとうございます!」
 エリーシェは深々と頭を下げ、それを見た『黒豚系オーク』ゴリョウ・クートン(p3p002081)が豪快な笑顔を浮かべた。
「ぶはははッ、その心意気やよし! じゃあ俺らも気張って護衛しねぇとなぁ!」
「ああ。世界中が危機だ。同じような状況の村や集落は多いだろう。
 全てに救援の手を差し伸べるのは、ローレットだけでは難しいだろうが、行ける所だけでも救いたい」
 腕組みをしてこくこくと頷く『Pantera Nera』モカ・ビアンキーニ(p3p007999)。
 『特異運命座標』エーレン・キリエ(p3p009844)は刀をそっとなぞるように指を置いて、優しく頷いて見せる。
「若い身空で村長の務めを果たすのは重圧も多いだろうに、その中で懸命に己の務めを果たそうとする。
 エリーシェ村長、貴女は立派だ。安心してくれ、俺達の務めも果たしてみせよう」
「そんな、私なんて……」
 首を振るエリーシェ。その肩に『正義の味方』皿倉 咲良(p3p009816)がぽんと手を置いた。
「先代の村長さんが亡くなって、皆で頑張ろうって時にバグ・ホールかぁ。
 ようやく立ち上がろうとした時だからこそ、余計に村の人たちも不安に思っちゃうよね」
「そうなんです。皆不安そうで……」
「大丈夫!」
 ぽんと肩を叩いて咲良が笑顔を浮かべた。
「だからこそ、アタシたちがしっかりお手伝いして不安を拭わなきゃ!
 先代のお父さんから、ひとまず今の村長を務めるエリーシャさんに。
 この村がどう未来へ進んでいくかは分からないけど、受け継がれてきた想いを、途切れさせちゃいけない。
 アタシのお父さんから貰った形見のヘアピンもそうだけど、自分の親が残してくれたものは大切にしたいし、ね」
 咲良の言葉に、エーレンが『その通りだ』と頷く。
(一緒にってのは危ないけど、行きたい気持ちもわかる。
 仲良くて大切、そういう家族がバラバラってのは寂しいし……)
 『点睛穿貫』囲 飛呂(p3p010030)がその様子を眺めながらゆるやかに腕を組んだ。
「ああ、安心してくれ。物資も村長さんも、無事に村まで届けるさ」
「皆さん……」
 目を潤ませるエリーシェ。温かい空気が場に流れた。
「こんな時期だしみんな困ってるから気にすることないよ。
 みんなを助けるのがオイラたちのお仕事だし」
 『炎の守護者』チャロロ・コレシピ・アシタ(p3p000188)がにかっと笑って剣を掲げてみせる。
 大きく鋭く、そして強そうな剣だ。『機煌宝剣・二式』である。
「家族や仲間と離れ離れになったエリーシェさんも心細いだろうし……。
 あ、そうだ。オイラも少しだけど食料を持ってきたから、これも足しにならないかな?」
「お気持ちだけでもうれしいです。一緒に馬車に積み込みましょう」
「うん!」
 食材を馬車に積み込み始めるチャロロ。
 その様子を眺めながら、『揺蕩う老魚』海音寺 潮(p3p001498)は懐中時計をちらりと見た。
「護衛・配達のお仕事じゃな。
 これも大切な仕事じゃから苦しい時期に済まなく思う必要なぞ全くないぞ。
 どんと任せておきなさい。ところで……」
 今から出れば少しでもはやく村にたどり着くことができるが、森を抜けるのが夜になってしまうという難点があった。
 そのことを説明すると、エリーシャは不安そうに眉根を寄せた。
「「急がば回れ」という言葉があるそうじゃよ。
 一日一秒を争う事態ならまだしも、何かあったら村民さんが村長さんに無茶をさせてしまったと申し訳なく思うかもしれんよ」
「けれど……ううん……そうですね。皆さんがそう言うのであれば」
 不安そうにしながらも朝の出立を選ぶことにしてくれたらしい。
 その様子を見て、『玉響』レイン・レイン(p3p010586)は深く頷いた。
「エリーシェは……えらいね……。
 よし、よし……。
 一緒に頑張ろ……」
 そして、森に現れるというガラシャラボスについて考え始める。
「奇襲をかけたり……森の影に潜んでたりするって事は、知能があるんだね……。
 奇襲は多分……道が細くなる場所で襲ってくると思う……。
 その方が……獲物を狙いやすいし……こっちが逃げづらいと思ってるだろうから……。
 そうは……させないんだけど……」
「ふむ、確かにその通りじゃな」
 潮たちもその意見には賛成のようだ。森を抜ける際には細くなった道や茂みの多い場所を警戒するのがよいだろう、と。


 明けて、朝。
 宿の主人に見送られつつ馬車が出る。ゴリョウのドレイクチャリオッツを先頭にしての馬車編成だ。
 警戒姿勢も充分である。
 まずチャロロの感情探知。飢えや殺気といった感情を探知して皆に知らせるのが役割だ。
 次に低空飛行しながら馬車の周囲を旋回してくれている潮。
 こちらは植物疎通を通してガラシャラボスのような大型の存在が踏み荒らした形跡がないかを調べてくれていた。
 と同時に、ポチをエリーシェに預けてくれている。不安になったら抱っこすれば心が落ち着くぞ、と。
 空からの視点という意味では、ゴリョウの広域俯瞰も欠かせないだろう。森の中といえど何かが近づけば多少は分かるというもの。それに温度視覚を合わせることで植物と動物の区別もつけることができる。
 更にはモカの暗視、超視力、聞き耳で周囲の様子を探り、探索スキルで隠れた敵を見つけ出そうと努力してくれている。
 他にも咲良のエネミーサーチは有効だ。敵が近づけばそれだけで感知することができるのだから。
 更にはレインが小鳥を飛ばしてファミリアー化し、先行して様子を確かめてもくれている。
 エーレンに関しては更に強力だ。
 エネミーサーチ、超視力、暗視、更にエコーロケーションまで用いて警戒を強めてくれていた。
 それに関しては飛呂も優秀である。
 ハイセンス、温度視覚、エネミーサーチをそれぞれ発動させて周囲を観察してくれていた。
 ここまで警戒を強めていれば、見つからないものでも見つかろうというもの。
 茂みに隠れていたガラシャラボスはかなり早期に発見することができたのだった。
 問題は、そのガラシャラボスをしっかりと退治できるかという点なのだが。

「皆、もう気付いてるな? 戦闘準備だ!」
 ゴリョウが馬車から飛び降りて戦闘陣形を取り始める。
 ガラシャラボスも知性があるだけあってエリーシェや食料を真っ先に狙うということはしない。
 その周囲を囲むように展開したイレギュラーズたちを無視してもいいことはないとわかっているのだ。
 気付かれたことも理解しているようで、奇襲に失敗したガラシャラボスたちは素直に路上に現れこちらへと爪を構え始める。
 が、これはあくまでポーズだということを皆知っている。ガラシャラボスの本当の攻撃方法は影を爪や顎に変えて攻撃するというものなのだ。
「備えて、来るよ!」
 攻撃を察知したチャロロが素早く飛び出し、『名乗り口上』でガラシャラボスを引きつけにかかる。
 比較的弱いガラシャラボスの一部はチャロロの誘引にかかり、影を爪化して襲いかかってきた。
 盾を翳し、攻撃を弾くチャロロ。
「ほーら、こっちだ! かかってこい!」
 そのまま敵を引きつけにかかると、剣に『レオパードヴァラー』の力を乗せて斬りかかった。
「それ、こいつもじゃ!」
 潮が『衝撃の青』を放ってガラシャラボスをチャロロの方に吹き飛ばすと、続けてチャロロに治癒の魔法をかけ始めた。
 癒やしの光を纏った小さなサメの幻影がチャロロへと飛んで行き、ガラシャラボスによってつけられた傷を治癒し始める。
 そんなヒーラーの存在に気付いたのだろう。ガラシャラボスの中でもリーダーとおぼしき個体が自らに影を纏わせ、潮へと接近を始めた。
 が、それを許すゴリョウではない。
「ぶはははッ! こっから先は通行止めだ! 悪ぃが俺らの壁は厚いぜぇ!」
 『招惹誘導』を発動させながらリーダー個体にタックルを浴びせた。
 火焔盾『炎蕪焚』を前に出してのタックルは流石にリーダー個体もこたえたようで、どすどすとたたらを踏むと今度はゴリョウめがけて影の爪を繰り出してくる。
 爪の攻撃を盾でなんとか受け流し、ぶははと笑うゴリョウ。
 その間にモカはチャロロが集めていたガラシャラボスたちめがけて『黒豹疾駆撃』を放った。
 気功によって生み出された黒豹がガラシャラボスたちの間を駆け抜け、そして牙と爪で次々に斬り付けていく。
 集団から外れたガラシャラボスがそんなモカを脅威と見なしてから襲いかかってくる。
 が、モカは冷静に攻撃を見極め、素早く飛び退くことで影の爪を回避。
 更なる影の顎が足に食らいつくが、素早くそれを解放させた。
「強力なリーダー個体は一頭だけみたい。あとは力を合わせて一気に倒しちゃおう!」
 咲良がエネミースキャンを用いてガラシャラボスたちの戦力を調べてくれた。
 そうしている間にも襲いかかってくるガラシャラボス。
 影が変化し、爪となって咲良を斬り割きにかかる。
 咲良はそんな攻撃を蹴りによって弾くと、一気に距離を詰めてガラシャラボスの鼻っ面をスニーカーで蹴飛ばした。
 『スーパーノヴァ』の力が乗った蹴りは凄まじく、ガラシャラボスが派手に仰向けに倒れる。熊を蹴倒すなど、常人離れした攻撃だ。
「いいぞ、その調子だ」
 エーレンは自分を狙った影の爪を剣で切り払って迎撃すると、自分を狙っていたガラシャラボスへと急接近。
「鳴神抜刀流、霧江詠蓮だ。大事な食糧だ、お前たちには奪わせない。――鳴神抜刀流・衰滅之手引『散華』!」
 要を一瞬で見抜いたエーレンはすれ違いざまにガラシャラボスを斬り付け、そのままの勢いで周囲のガラシャラボスたちを斬り付けて走りぬける。
「皆さん、後ろに!」
 そんな中で、エリーシェが叫んだ。
 ハッとレインが振り返ると、後方の馬車へと回り込んだガラシャラボスたちの姿があった。
 ならばと傘をくるりと回すレイン。『アンジュ・デシュ』の魔法を発動させる。
 堕天の呪いを帯びた輝きが、海月の群れの姿を成して飛んで行く。
 ガラシャラボスたちは咄嗟に影の刃を作り出して迎撃しにかかるが、それをすりぬけてぶつかった輝きが強烈な【石化】や【呪い】の効果となってガラシャラボスたちを苦しめ始めた。
「よく止めた」
 馬車の幌の上に飛び乗った飛呂がライフルを構え、狙いを付ける。
 狙いはガラシャラボスの額……いや、目だ。
 トリガーを引けば、『狙撃銃:P-BreakerⅡ』が正確に弾を発射し、正確な回転をもって目標の右目へと命中。堅い頭蓋骨の隙間を縫うようにして飛び込んだ弾丸が弾ける。
 無論、その一発だけで終わりではない。
 飛呂は常人が息つく数秒の間に素早く狙いを変えながらガラシャラボスの胸に、腕に、足に、腹に、次々に弾丸を命中させていった。
 思わぬ攻撃に【足止】をくらったガラシャラボスたちが次々に倒れる中、リーダー個体がゴリョウを派手に吹き飛ばす。
「ぬお……!?」
 一瞬だけ宙を舞い、そして地面を転がるゴリョウ。
「ったく、なんて怪力だ!」
「これは一斉にかかった方がいいのう」
 潮はゴリョウに治癒の魔法をかけてやりながら、他のガラシャラボスたちが倒されたことを確認、仲間たちを呼び寄せる。
 対するリーダー個体はもう一度攻撃をしかけるべくゴリョウに突進をしかけていた。
「そうはさせるかよ!」
 ゴリョウは同じ攻撃を二度受けるかとばかりに四海腕『八方祭』で殴りかかる。
 至近距離で打ち込まれた攻撃に一瞬ひるむガラシャラボス。
 そこへ、更なる攻撃が立て続けに浴びせられた。
 まずはチャロロとエーレン。
 二人は剣をとると全く同時に斬りかかった。
「そこだ!」
「――鳴神抜刀流・太刀之事始『一閃』!」
 左右から交差する二人の剣は、影を鎧のごとく纏ったガラシャラボスの影を破壊する。
 強い【雷陣】効果を受けたガラシャラボスが痺れて動きを鈍らせたのを確認すると、チャロロとエーレンは返す刀で更に斬り付けた。
 タンッと木の幹を蹴って三角跳びをするモカ。そして馬車の幌から跳躍し宙返りをかける咲良。
 モカの鋭い蹴りと咲良の跳び蹴りが全く同時にガラシャラボスの頭部と腹へと叩き込まれ、【乱れ】【凍結】【麻痺】、さらに【恍惚】の状態がガラシャラボスに浴びせられる。
 ここぞとばかりに飛びかかるレインと、サッと身体を翻して狙いをつける飛呂。
 レインは畳んだ傘を剣のように見立てて魔力を集め、カッとその『刀身』を輝かせた。
 と同時に飛呂は素早くライフルをリロードさせ、一度に二発の強力な弾を発射する。
 レインの『斬撃』が浴びせられるのと、飛呂の射撃が浴びせられるのはほぼ同時。凄まじい衝撃がガラシャラボスを襲い、その巨体を吹き飛ばした。
 ドウッという重い音と共に地面に倒れ伏したガラシャラボス。
 レインたちは身構えたが……それ以上、ガラシャラボスが起き上がることはなかったのだった。


 ガラシャラボスの森を抜けてしまえば、あとはそれほど苦労することは無かった。
 一応の警戒は続けつつ、一行はシェルターのある村へと到着。
 運び込んできた食料物資を卸し始める。
「皆さん、本当にありがとうございました。これで皆助かります!」
 感激したように言うエリーシェに、しかしゴリョウは首を横に振った。
「ぶははッ! まだ仕事は終わってないぜ。ここからは料理人の出番だ!」
 そう言い放つと、ゴリョウは村の料理担当を集めて料理講義を始めたのだった。
「かつての鉄帝動乱の際、俺が所属してたザーバ派では「徹底して食材の無駄を省く」ことで結果的に生産力を向上させていた。そのノウハウを教えるぜ!
 食えねぇと思える部位も、やり方次第で可食なのさ!
 俺のゴリョウ専極・一茎秘訣書が火を噴くぜぇ!」
 早速実践しようということで、炊き出しが開始される。
「あ、オイラも手伝う!」
 チャロロが駆け足で炊き出しチームへと駆け寄っていく。
 その様子を眺め、レインはほっと息をついた。
 人々の顔には安堵の色が見える。それは食料が届いたという安堵のみならず、イレギュラーズが来てくれたという安心感もあるように見える。
 実際、そうなのだろう。この危険な世界の中、頼れるのはローレット・イレギュラーズたちだけなのだから。
「ゴリョウの料理……楽しみ……。
 料理の匂いは好き……。
 嗅いだことない匂いだと……少しわくわくする……。
 湯気、陸に来てから好きになったし……。湯気みたいに気持ちもあったかくてゆらゆらする……
 嬉しい……気持ち……」
 レインがほっとしたように呟けば、モカもこくりと頷き炊き出し班へと歩いて行く。
「さて、私たちも手伝うか」
「そうだね! 折角来たんだし!」
 駆け足で炊き出しチームのところへ向かう咲良。
 そんな様子を見ていたエーレンと飛呂も、顔を見合わせてから後に続いて歩き出した。
「若き村長さん、これからも頑張るんじゃよ」
 潮はエリーシェの肩をぽんと叩いてやると、皆に続いて歩き出した。
 こんな世界ながらも、笑顔がある。
 それは間違いなく、ローレット・イレギュラーズたちの護った笑顔なのだった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete

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