PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<Je te veux>Back rooms hacker

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 犬型の胴体からライフルが生え、実弾を連射し始める。
 そんな異様な攻撃を受けたランドウェラ=ロード=ロウス(p3p000788)は素早く走り、六区の建物にライン状の弾痕を刻んでいく。
「あんまり領内を荒らさないでほしいんだけどなあ」
 鮮色(6区)。ここは幻想王国にあるランドウェラが任されている領地のひとつである。民にひたすらこんぺいとうを配っているせいかほのかに甘い香りのする町だ。
 そこへなぜこんな異様なモンスターが現れたのかと言えば、勿論理由がある。

 幻想王国を襲った冠位色欲の凶行を何とか斥けるに至ったイレギュラーズだったが、その中にギルドオーナーの姿はなかった。オーナー不在のギルドを支えるのは代理であるユリーカだった。そんな彼女が告げたのはラサ南部砂漠コンシレラでの変化だった。
 なんでもその地にて目覚めた巨大な怪物ベヒーモス。その背からぼろぼろと終焉獣たちが崩れるように現れ始め、それらは宙空に転移陣を開くと世界各国へと移動していったというのだ。
 ベヒーモスたちの狙いは各国に存在するパンドラ収集器。そう、イレギュラーズなら誰もが持っているこのパンドラ収集器を奪い、そして喰らい、滅びのアークにして吐き出すという。
 その影響だろうか、空中庭園のざんげが持つ空繰パンドラへのパンドラ蓄積も滞っているらしい。
 ローレットはこうした一連の事件に対応すべく動き出していた。
 そしてランドウェラもまた、自らのパンドラ収集器を囮として終焉獣をおびき出す作戦を考えついたのであった。

「よ、っと――!」
 飛び退き、転がるランドウェラ。
 それまでいた地面に打ち込まれた銃弾を回避すると、そのまま起き上がってジグザグに走り出す。
 銃弾を何発も外すこととなった犬型終焉獣は、ならばと牙を剥き出しにして食らいつく。
 だがそれすらもランドウェラの狙った動きであった。
 右腕を突き出し、がしりと相手の頭を掴むランドウェラ。
 瞬間、ダイヤモンドダストの魔術が発動し黒い腕がカッと魔力の光を放つ。
 すると犬型終焉獣の頭から素早く凍結していき、動きの鈍った犬型終焉獣に追撃の魔哭轟滅波を叩き込む。
 手のひらから放出された魔力の砲撃は凍り付いた犬型終焉獣の肉体を破砕しながら通り抜けていった。
「ふう、こんなところかな」
 額にうっすらと浮かんだ汗を袖で拭うと、ランドウェラは後ろへと振り返った。
「情報ありがと。こんぺいとう食べる?」


 ランドウェラが囮作戦をとったといっても、ただ一人でふらついていた訳ではない。
 ローレットの情報屋に頼んで丁度良いタイミングを計っていたのである。
「あんたのおかげで民間人が襲われずに済んでるよ。といっても、この作戦がどこまで通用するかはわからないんだがな」
 ランドウェラの領内にあるカフェでくつろぎながら、そんなことを話す情報屋。
 元々ベヒーモスたちはパンドラの気配を嗅ぎつけてパンドラ収集器を奪いに現れている。それは実際誰のパンドラでもよく、たまたまイレギュラーズとして召喚されたことがあるだけの、ほぼ一般人とかわらないような人間が襲われることだって充分にあり得るのだ。
 そんな中、わざとランドウェラがパンドラ収集器をちらつかせることで終焉獣たちに居場所をつたえ積極的に自分を狙わせるという作戦をとってみたのである。
「ホントのところ……これは上手くいってるのかな? 連続で襲われてるからそう感じてるだけ?」
 コーヒーカップを手に小首をかしげるランドウェラ。
 対して情報屋は貰ったこんぺいとうを手のひらにおとし、数個まとめてぱくりと口に放り込んだ。
「さあな。俺もベヒーモスの考えは分からねえ。たまたまって線もあると思うぜ。けど『小型ベヒーモス』の姿がまだ見えないから、今のところは様子見ってところなんだろう。本格的に攻めてくるのはその時だろうし……今までの襲撃は戦力を計ってる段階だったんじゃないか?」
「戦力を計る、ねえ……」
 自分が相手の立場なら、ランドウェラほどの実力者が相手とわかったなら相応の戦力を叩きつけるだろう。
 しかもランドウェラはローレットの一員。本気でかかる段階になれば戦力を整えるのは容易に想像がつく。
「どの程度の戦力が来るかな……?」
 ちびちびとコーヒーをすすりながら、ランドウェラは情報屋の顔を見た。
 情報屋は苦々しい(口の中は甘ったるいが)表情を作り答える。
「小型のベヒーモスを数体、それに終焉獣を山ほど……って所じゃねえか。戦力を整えたローレットの恐ろしさはここのところの襲撃でいたいほどに理解しただろうしな。連中だってただ馬鹿みたいに安い戦力を送り込むだけじゃない筈だぜ」
「そっか……わかった。ならローレットに依頼を出そう。強力な戦力がいる」
「わかった、任せとけ!」
 情報屋はすっくとたちあがると、依頼書を手に取ったのだった。

GMコメント

●作戦
 ランドウェラの領地『鮮色(6区)』にて小型ベヒーモスたちを待ち構えます。
 出てくるまではカフェテラスでお日様を浴びつつ、こんぺいとうとコーヒーを楽しみつつ待ちましょう。
 転移陣で小型ベヒーモスたちが出現したら戦闘開始です。
 今回はおそらくかなりの戦力をぶつけてくるでしょう。気を引き締めて取りかかってください。

●フィールド
 町中ですが、保護結界が展開されているので街への被害は心配ありません。
 また、ランドウェラの呼びかけで既に住民は避難しているので民間人への被害もありません。

●エネミー
・犬型終焉獣×多数
 身体からライフルやショットガンといった実銃を出現させる能力を持った犬型の終焉獣たちです。
 数がかなりいるので纏めて消し飛ばすすべを用意しておくとよいでしょう。

・小型ベヒーモス『トリガーハッピー』×5
 両腕をガトリングガンや大砲に変えることができる能力をもった小型ベヒーモスです。
 攻撃力は非常に高く、激戦が予想されるでしょう。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • <Je te veux>Back rooms hacker完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2024年03月08日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ロジャーズ=L=ナイア(p3p000569)
同一奇譚
ランドウェラ=ロード=ロウス(p3p000788)
黄昏夢廸
アルム・カンフローレル(p3p007874)
昴星
モカ・ビアンキーニ(p3p007999)
Pantera Nera
長月・イナリ(p3p008096)
狐です
ヤツェク・ブルーフラワー(p3p009093)
人間賛歌
皿倉 咲良(p3p009816)
正義の味方
紅花 牡丹(p3p010983)
ガイアネモネ

リプレイ


「わーい。皆来てくれてありがとう! こんぺいとう多めにいれとくねぇ」
 皿にじゃらじゃらとこんぺいとうを流し込みながら、『黄昏夢廸』ランドウェラ=ロード=ロウス(p3p000788)は上機嫌に笑う。
 対して、それを受け取った『同一奇譚』ロジャーズ=L=ナイア(p3p000569)もまた独特の声をあげて笑った。
 ランドウェラの囮作戦に乗じてやってきた仲間のローレット・イレギュラーズたちである。
「で、我々は優雅に甘味を楽しみつつ連中の貌晒しを待てば好いのか。
 金平糖、私はホイップクリームの方が好みなのだが、悪くない代物。
 珈琲には蜂蜜とミルク、角砂糖を十、それにクリームが至高だと何故解せんのか。
 嗚呼、お客様は神様だ。混沌世界の神は何を思惟しているのか。
 陽の光を浴びる我が身も中々に真っ黒!
 茶会も終いにすべきか」
 相変わらず語りが独特で若干意味も不明だが、協力してくれることは確からしい。
「ランドウェラ君の領地にちっさ君が出てるって聞いたけど……銃火器が生えてる犬は可愛くないなあ!
 しかもハンドガンってレベルじゃなくて……ライフルにガトリング、大砲まであるって?
 俺、その手のものにはあんまり詳しくないんだけど……皆のことはしっかり守るからね!」
 金平糖とコーヒーの組み合わせを堪能しながらニコニコ笑う『昴星』アルム・カンフローレル(p3p007874)。
(アルムんやつ、ステラを思い出してるな、ありゃあ)
 『ガイアネモネ』紅花 牡丹(p3p010983)が苦笑してアルムの背を叩く。
「たく、しゃんとしろ、しゃんと!」
「うわ!?」
 背中を叩かれてびっくりするアルム。
 牡丹は仲間達の顔ぶれを確認すると、次にランドウェラの領地の地図に目を落とした。
「とりあえず、こっちは向かい撃てる状態だからな。陣地構築と罠設置は欠かせねえよな。
 敵の同士討ちを誘発しやすい&大型の火気が取り回しにくい狭い場所や閉所がいいか?
 射線を通しにくくさせるためには落とし穴やワイヤートラップ、ぬかるみトラップなど足場を奪うのもありか!」
 などと地図にちょこちょこと書き込んでいく牡丹。
「遮蔽物も盾っつうよりは一瞬でも射線を切ったり、こっちを見失わせるために設置だな! どうせ敵火力で吹き飛ばされるんだしよ!」
「なるほど、協力しよう。陣地構築と罠設置には心得があるからな」
 『Pantera Nera』モカ・ビアンキーニ(p3p007999)がこくりと頷いて続ける。
(しかしランドウェラさんも自らの領地とパンドラ収集器を囮にして終焉獣をおびき寄せるとは……なかなか豪胆な人だな。しかし犬に銃か。なんかゲームで見たことあるような)
 などと思いつつも罠の設置を進めていくモカ。
 一仕事終えたところで、ランドウェラから貰った金平糖とコーヒーで一息ついた。
「ふう……一仕事終えた後の金平糖とコーヒーは美味いな。
 疲れた脳と筋肉に、金平糖の糖分が染み渡る」
 一方で、『狐です』長月・イナリ(p3p008096)は地図を見ながらふむふむと頷いている。
「敵は重火器を中心にしているから、閉所に誘い込んで一撃、ってゲリラ的な戦い方が有利だけどうまくいくかしらね?
 まぁ、やるしかないわね。頑張って敵を叩き潰しましょうか♪」
 隣では『最強のダチ』ヤツェク・ブルーフラワー(p3p009093)がコーヒーを啜って苦い顔をしていた。
 コーヒーが苦いのではなく、状況が苦いのである。
「領地が襲われる……か。
 しかしわんころに武器ってのはなあ。確かに俺退いた世界にもそういう奴らはいたが。
 ちと、心の痛む姿というかなんというか。ま、やるんだがな。お、コーヒーおかわり。金平糖も美味いな」
「名物だからねえ」
「確かに、領地全体から甘い香りが……」
 『正義の味方』皿倉 咲良(p3p009816)がくんくんと空気のにおいをかいだ。ほんのりと金平糖が溶け込んだような空気をしている。
「それにしても、腕が銃ってホントに見た目が凶悪だねぇ……アタシ自信混沌に来てなかったらそんなヤバそうなの映画の中でのお話だもん」
 咲良は映画の中で暴れるモンスターを想像しつつ苦笑した。
「それはそうと、住民の方は避難されてるし保護決壊もあるしで動きやすい。これなら思いっきり戦えるぶんストレスフリーってやつだね!
 警戒も怠らないようにしつつ、やられる前にやっちゃおう!」


 転移陣が開き、犬型の終焉獣がどさどさと地上へ降り立つ。
 どこか甘い香りのする街並だ。パンドラの気配は、確かにある。
 それに誘われるようにして歩き出した犬型終焉獣たちの動きを、ジャラッという鎖の音が一瞬だけ止めた。
 ぴんとはられた鎖の高さは犬型終焉獣の胴体ほどの高さにあり、潜るにも飛び越えるにも一手間かかる邪魔な作りだ。その一方で、咲良にとっては簡単にまたぎ越えられる高さであった。
「本当に出てきた! さあ、やっちゃおう!」
 凄まじい反応速度で駆け寄り、回し蹴りを放つ咲良。
 スニーカーを履いた靴に纏った紫電が激しい衝撃と共に解き放たれ、犬型終焉獣たちを纏めて蹴散らしていく。
「終焉獣のやってることって、人の家に上がり込んで家具壊してたり家族を攻撃したりするようなもんだからね。ちょっとおいたが過ぎるよね!」
 更に咲良は『アッパーユアハート』を発動。周囲の終焉獣たちの注意を自分に引きつける。
 対する犬型終焉獣は身体からどぷっと音を立ててショットガンを出現させると、咲良めがけて一斉に射撃を開始した。
 流石の彼女とてここまでの攻撃を一斉に受けたらタダでは済まない。危ない――かに思われたところで、ロジャーズが間に割り込んで銃撃を引きうけた。
 更には『名乗り口上』を発動。場の半分ほどの終焉獣を自らに引きつける。
 こちらの防備は堅いも堅い。『ルーンシールド』と『マギ・ペンタグラム』を自らに付与して無効化結界を展開したかと思うと、その内側に【HP鎧1015】【BS無効】からなる特殊な結界を展開。よしんば無効化結界を割れたとしても容易にはダメージを通すことはできないだろう。
 もしダメージを通せたとしても、四万台におよぶ大量のHPを減らすことは非常に難しい。
 『狙うだけ損』をする相手であり、【怒り】の付与など受けてしまえばそれこそ行動を封殺されたようなものである。
 ロジャーズが独特の笑い声をあげる中、モカが犬型終焉獣たちめがけて『黒豹疾駆撃』を発射。つまりは黒豹を象った気功で生み出す誘導弾が飛んで行ったのである。
 まるで食らいつくように直撃した気功弾が爆発し、周囲の終焉獣を纏めて吹き飛ばしていく。
 ここで狙いをつけるべくは仲間が【怒り】を付与していない、自由になっている敵だ。
 モカは『デスティーノ・コイントス』と『狂イ梅、毒泉』を自らに付与すると、群れを成して襲いかかってくる犬型終焉獣に再び『黒豹疾駆撃』を放った。
 反撃のライフル射撃が浴びせられるも、モカは素早くバリケードの後ろへと隠れる。
 予め設置しておいたバリケードに銃弾が吸い込まれるようにぶつかり、その裏に隠れたモカは不敵に笑って更なる攻撃を試みる。
 ホームグラウンドにかなりの手を加えていただけあって、非常に戦いやすいフィールドだ。
「さてと、本気出すためにも多少は削って貰わないとね」
 ランドウェラがにっこりと笑い、敵陣へとあえて飛び込んでいく。
 身体からショットガンを生やした犬型終焉獣の一斉射撃を浴びて体力をごりごりと削られたランドウェラは、回復しようと杖を握るアルムに『待て』のサインを送って笑いかける。
 『チートスキル』や『地獄変』『開眼妙技』といった底力系のスキルを発動させるのが狙いなのだ。
「さあて、勢いもついてきたことだし、行こうか!」
 ランドウェラは腕をぶんと振ると『魔哭轟滅波』の魔術を攻勢。
 転移陣から飛び出してきた小型ベヒーモ『トリガーハッピー』の突き出した砲台化した腕めがけ解き放つ。
 と同時にトリガーハッピーの腕からの砲撃。両者の攻撃は相殺する形で爆発し、互いが腕を翳して衝撃を散らすように構えた。
「射撃主体なら、閉所におびき寄せるわよ。まぁ、小型ベヒーモスは戦車みたいなものよね。随伴歩兵役を引き離せば市街地での戦車なんて幾らでも叩きようがあるわ!」
 イナリは物質透過を用いてトリガーハッピーの後方へと回り込むと、『狐火・改』を放って注意を引きつけた。
「さあ、こっちよ!」
 イナリを中心とした周囲の空中にいくつもの狐火が出現、手にした大太刀を振り抜いたと同時にまるで意志を持ったかのようにホーミングして次々とトリガーハッピーへと叩きつけられていく。
 流石にダメージが痛いのか腕を翳して防御姿勢をとったトリガーハッピー。イナリはそれを確認しつつ路地の向こうへと走り、角を曲がった。
 追いかけて走り出すトリガーハッピー。
 その一方で、分断された犬型終焉獣たちを狙っておびき寄せにかかったのは牡丹だった。
「『輝くもの天より堕ち』なあ!」
 片翼を翻して注意を引きつけると、牡丹へと犬型終焉獣たちが一斉に群がっていく。
 一匹が飛びかかり牙による食らいつきを仕掛けるが、牡丹は派手に跳躍してバリケードの向こう側へと飛び退いた。
 銃撃を浴びせるにも射線が切られた状態である。仕方なく迂回した犬型終焉獣がショットガンによる攻撃を浴びせようとするが、直前で牡丹が銃身を蹴りつけることで大きく狙いがそれ、牡丹に攻撃が当たらない。
 そこへ転移陣を通って更なるトリガーハッピーたちが出現。こちらに銃口を向けてくる。
「おっと危ねえ! 一匹はオレが引き受けるぜ!」
 牡丹はより強力な『あまたの星、宝冠のごとく』を使ってトリガーハッピーを引きつけると、大通りへと走り出した。
 それを追って走り出すトリガーハッピー。
 残ったトリガーハッピーを相手にすることになったのはアルムとヤツェクだ。
「うわっと!?」
 腕をガトリングガンに変形させたトリガーハッピーの攻撃をバリケードの裏側に滑り込んだことでかわすアルム。
 が、バリケードはじわじわと破壊されつつあった。強敵相手には持ちこたえられないらしい。
「強力な小型ベヒーモスがこんなに……なんとか押さえ込んで個別に倒さないとだね!」
「だな。準備はいいか? カウンターヒールの容量だ」
「わかってる!」
 アルムは飛び出し、杖をくるくると回しながら銃撃に対抗した。
 物理的に杖の回転で弾こうとしているのではなく、展開した魔術障壁で対抗しようというのだ。そこに治癒の魔法を流し込んで銃撃で割られたそばから障壁を足していく。
「な、なんとかやれそう! バフをお願い!」
「そりゃあよかった。任せな」
 ヤツェクはギターを奏でることで自身に『ホーリークラウン』『口笛と軽口』を付与。そして『詩歌顕現』をアルムや仲間たちにかけてやることで強化を図った。
 そして魔槍『歌劇』を手にするとアルムに続いて飛び出した。
「さあこっちだ、相手になるぜ!」
 『ホーリークラウン』の効果を受けた『おれに続け!』を発動。
 ヤツェクは槍を回転させることでもう一体のトリガーハッピーの放つ銃撃を物理的に弾くと、そのまま一気に懐へと飛び込んだ。
 一瞬、ヤツェクの手に銀色の剣が握られたかのように見えた。
 だがそれは幻覚であったらしい。槍による強烈な突きが炸裂し、トリガーハッピーの身体が吹き飛ばされる。
「一体ずつ着実にだ。慎重にやるぞ!」


「私を暴くと謂うのか。成程、貴様等は私を覗き込んだ!」
 トリガーハッピー複数体を相手にしたロジャーズが、真の姿を露わにした。
 その怪物めいた姿は見る者を恐怖させるに充分である。
 対してトリガーハッピーたちは自分達がかなり無駄な時間をとらされていたことに気がついた。
 ロジャーズの無効化結界を割り、HP鎧を貫通し、膨大なHPを削りきるまでに要した労力は凄まじく、そしてそれだけに他のユニットを攻撃していればもっと戦果を上げられたことに気付いたのだ。
 だがもう遅い。
「ありがとう! 回復するね!」
 アルムの治癒がロジャーズへと浴びせられ、怪物めいたロジャーズが無効化結界を張り直しながら更に迫る。
 自分達の損失に気付いたトリガーハッピーはロジャーズを狙うのをやめ、アルムやイナリたちへと狙いを変え始める。
「うわ! やばいやばい! こっちに気付いた!」
 路地を曲がって建物を壁にするアルム。がつがつと壁を削るような音がするのは気のせいだろう。
「そのまま引き寄せておけ! 弱体化させる!」
 モカが『終局舞曲』を発動。見る者が見とれてしまうほどの蹴りを叩き込み、トリガーハッピーに【恍惚】状態をもたらした。
 そこからの流れるような『残影百手』。【泥沼】と【停滞】の状態異常を浴びたトリガーハッピーがのろのろと後じさりをする。
 モカにせめてもの反撃にと腕を砲台化させ砲撃を放つ。
 咄嗟に防御姿勢をとって飛び退くモカ。
 その瞬間、近くの壁を透過したイナリが現れ、大太刀を構えた。
 ハッとして振り向くトリガーハッピー。だがもう遅い。『ブレイクリミットオーダー』を付与したイナリは倍加した『ルーラーゾーン』を解き放っていた。
 クリティカル必至の一撃がトリガーハッピーに吸い込まれ、その身体を激しく爆発四散させるトリガーハッピー。
 イナリが『次!』と叫ぶと同時、ランドウェラは飛び出していた。
「そこだ――!」
 『糸切傀儡』を繰り出して魔力の糸でトリガーハッピーを絡め取る。
 更にぴたりと右腕でトリガーハッピーに触れると、『雷撃槍擲』を発動させた。
 腕を通して発射された雷撃がトリガーハッピーを貫通し、もう一体のトリガーハッピーへと浴びせられる。
 がくりと膝をつき燃え上がったトリガーハッピーを無視して、『ダイヤモンドダスト』の魔術を発動させるランドウェラ。
 浴びせられた氷結の力に弱体化させられたトリガーハッピーめがけ、ヤツェクの槍が迫る。
「こいつが終われば今度こそ祝杯だ。勿論、酒でな」
 凍り付いたトリガーハッピーの肉体に深々と突き刺さる槍。
 見事に決まったその攻撃は衝撃を伴い。トリガーハッピーを不自然なまでに吹き飛ばす。
 壁に激突したトリガーハッピーが地面に転がるその横で、牡丹は残った最後のトリガーハッピーの攻撃をかわし続けていた。
 いや、交わし続けることがかろうじてできていたと言うべきだろうか。
 流石の強敵相手にダメージはかさみ、一度は危ない状態に陥っていたのだから。
 だが調子を取り戻し『万雷ノ舞台』で更に回避能力を引き上げた牡丹は無敵であった。
「咲良、今のうちに決めちまえ!」
「うん、まかせて!」
 トリガーハッピーの砲撃を回避する牡丹。その一方で民家の屋根から飛んだ咲良は宙返りからの踵落としをトリガーハッピーへと叩き込んだ。
 『デッドリースカイ』の力がこもったその一撃は、ただの踵落としとは思えない衝撃をトリガーハッピーに与え、その頭部をべこんとへこませた。
 よたよたとふらついた後、うつ伏せに倒れながら爆発四散するトリガーハッピー。
 飛び退き着地した咲良は、ふうと息をついて額の汗を拭ったのだった。


 こうして、ランドウェラ領に再び平和が訪れた。
 強敵の襲来も、しばらくはないだろう。
 そしてこれだけの強敵を引っ張り出したということは、囮作戦は成功したとみて間違い無かった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete

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