PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<Je te veux>行先を塞ぐだけが全てではない

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 ――最近色々と物騒だから見回りをしてみよう。
 そんな提案で、でっか君がいる南部砂漠周辺の集落を有志のイレギュラーズたちは見回ることにした。
 集落に問題が発生すれば解消し、次の集落へ。
 そんな日々を幾日か過ごしたある日のこと。
 とある集落で『敵』に遭遇した。
「一体なのかな。結構小さい」
「油断する、駄目。気をつけて」
 劉・雨泽(p3n000218)とチック・シュテル(p3p000932)の視線の先を『アポロトス』らしき――ずんぐりむっくりなワニが二足歩行したような存在がのっしのっしと歩いている。
「ああ、あれは!」
 通りがかりの普通のおじさんが突如叫んだ。
「あれはカベ・ドーン! まさかこの町に来ただなんて……!」
「ええっ、カベ・ドーンですって!?」
 何か知らないが近くに居たおばさんも叫んだ。
「壁ドンエネルギーを摂取できないと自ら壁ドンをして町を破壊するっていう!?」
「……壁をドンってされちゃうとどうなるの?」
 何となく気になった雨泽が尋ねてみれば、知らないのか!? と驚いた様子でおじさんが説明してくれる。優しい。
「カベ・ドーンがドンしたところからKDE(壁ドンエネルギー)が発生し、壁という壁……つまりは町を囲う塀に至るまで、粉砕されてしまうんだ!」
「へー……」
(それは大変だ)
 建前と本音がつい逆になったが、おじさんたちは気にしないらしい。
「自警団とかは倒そうとしなかったの?」
「とても硬い上に体力が高く、削り切るよりも先に町が崩壊してしまうんだ」
「そして崩壊すると次なる町を求め……」
 つまりは確実に滅ぼしていき、大きな町にでも行ったら更に大変なことになる。
「厄介じゃの~」
 騒ぎを聞きつけたのだろう、一緒に来ていた瑛・天籟 (p3n000247)が果実片手に呟いた。他のイレギュラーズたちの姿も彼の向こうに窺える。
「だが!」
 おじさんが言った。
「止める方法はある、のよね」
 おばさんも言った。このふたり、妙に詳しくて助かるな~と雨泽は思った。
 ふたりが言うには、壁ドンをすればいいとのことだった。
「うん?」
「……壁ドン?」
「壁ドン?」
 今、なんて?
 聞き返すのは雨泽だけで、チックと天籟は言葉がよくわからなかったようだ。
「つまり、こう……だよね」
 ちょっとごめんねと断ってから壁際にチックを立たせ、壁へと手を置いた。
 その瞬間、のし、のし、と歩いていたアポロトスが歩を止めた。
 しかも何故だか瞳を輝かせ、満足そうな表情をして此方をジッと見ている。
 雨泽たちに詳しいことは解らないのだが、誰かが壁ドンをしても微弱なKDEが発生するらしい。それを――おそらく壁ドンしたい! されたい! な人間の感情を帯びて誕生したアポロトスは察知し、糧としているのだろう。
 雨泽が壁から手を離しても、もうしないの? とジッとこちらを見ている。襲ってくる様子はない――が、アポロトスは存在するだけで滅びのアークを撒き散らす存在だ。
「……食べ過ぎたらどうなるんだろう」
「試してみるか? わしならいくらでも手伝うぞ!」
「…………。というわけだから、皆、ちょっと協力してくれないかな?」
 天籟を無視し、雨泽はこれも世界を救うためだからさとあなたたちへと呼びかけた。

GMコメント

 た、大変だー! 壁ドンしないと世界が滅んでしまう……!
 そういう訳なので二人一組になってください! ぼっちにならないように、EXで関係者、サポでお相手やNPCを呼べるようにしておきますね!

●シナリオについて
 壁ドンしろ! ください! 救われる命があるんです!
 あーーー、手でのドンも好きだし、足でのドンも好きだなーってカベ・ドーンが言ってました。本当です。
 どうしても相手が居ない場合はNPC『天籟』へどうぞ!

●『アポロトス』カベ・ドーン
 滅びのアークが人間の感情エネルギーを帯びて顕現したエネミー。
 つまり人間の壁ドンしたい! されたい! のエネルギーを帯びちゃったんですね。そんなこともあります。
 殆どの説明はOPで親切な通りすがりの人が言ってます。そういうことなんです。
 壁ドンエネルギー(KDE)を浴びすぎると許容量オーバーで消滅します。

●『する』『される』
 あなたはどっち?
 ここ、一番力をいれてプレイング書くところです!
 「する&する」等にならないよう、話し合ってくださいね!
 何か知らないけど、シチュエーションとか色々すごい方がKDEが出るそうなんでよろしくお願いします!

●お相手
 EXで関係者、サポでお相手を呼べます。
 一方通行にならないようにお相手の指定(名前+ID)をしてください。

●サポート
 一般参加者にお呼ばれした方だけじゃなく、サポ+サポでもOKです!
 文字数はイベシナと同じです。
 趣旨が異なる&一方通行の場合は描写されません。

●同行NPC
 下記に居ない壱花NPCは、推薦を出してみてください。
 OKな場合は参加します。

・劉・雨泽 (p3n000218)
 チックさんと恋仲になったので、彼以外にされたりしたりはないです。

・瑛・天籟 (p3n000247)
 フリー壁ドン枠。
 腕が短いので、する方は大変です。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はKDです。
 壁がDON★されます。

 Let's KabeDon!(๑•̀ᴗ- )✩


行動
 ドンを……

【1】する


【2】される

  • <Je te veux>行先を塞ぐだけが全てではない完了
  • 世界のためにも壁ドンが必要なんです!!!!!
  • GM名壱花
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2024年02月25日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談4日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

(サポートPC1人)参加者一覧(8人)

チック・シュテル(p3p000932)
赤翡翠
ジルーシャ・グレイ(p3p002246)
ベルディグリの傍ら
メイメイ・ルー(p3p004460)
約束の力
ルチア・アフラニア・水月(p3p006865)
鏡花の癒し
エルス・ティーネ(p3p007325)
祝福(グリュック)
ヤツェク・ブルーフラワー(p3p009093)
最強で最高のダチ
ニル(p3p009185)
願い紡ぎ
三鬼 昴(p3p010722)
修羅の如く

サポートNPC一覧(6人)

プルー・ビビットカラー(p3n000004)
色彩の魔女
ディルク・レイス・エッフェンベルグ(p3n000071)
赤犬
劉・雨泽(p3n000218)
浮草
テアドール(p3n000243)
揺り籠の妖精
瑛・天籟(p3n000247)
綵雲児
アラーイス・アル・ニール(p3n000321)
恋華

リプレイ

●DON★
 なんかそういうことになった。
 とりあえず足止めをするには誰かが早急にドンする必要がある。
「雨泽、ここに立って」
 そっと雨泽と視線を合わせた『赤翡翠』チック・シュテル(p3p000932)が壁際を指さした。
 そんな彼に対し、雨泽は首を傾げる。言わんとすることは解っている『僕がされる側なんだ?』だ。けれどもチックはこくんと頷き意思を示すと、大丈夫、やり遂げてみせる。必ずやかっこいい所を見せるのだ、とキリッとしてみせた。
(……恥ずかしい、けど。大丈夫)
 何度も自身に言い聞かせ、深呼吸をしてから壁に手をつく。視線はずっと雨泽から離さない。
「今はおれだけを、映して」
 ……とは言ったものの、チックは矢張り緊張していた。だって距離が近いし、贈った香水の香りはする。それだけでドキドキしてしまうのに雨泽は涼しい顔で――だからこそ、頑張らなくちゃと気合をこめた。
 じぃっと見てくる雨泽は何を思っているのだろう。面白そうに小さく笑った。
 空いている手で頬を軽く撫ぜ、顎に手を添える。今日の雨泽は砂地だからかピンヒールではないものの、背伸びをしなくてはチックは目的を果たせない。
「目を閉じて」
「どうして?」
「えっ」
 そう返されるとは思っていなかった。
「さっき見ててって言ったよね」
「う……でも……」
 顔を寄せたいと思っていること、知ってるくせに。
 他に人がいるから唇を重ねたりはしないけれど、少しでもドキドキしてほしいのに。
「僕はいつも見てるよ」
「え……?」
「見逃したら勿体ないじゃない」
 チックは目を閉じてるから気付いていないだろうけど。
 その言葉が『いつ』のことか。それを理解し、チックは真っ赤になった。
「次はチックも俺を見ていてよ」
 ドキドキさせようと思っていたのに、結局ドキドキさせられて。『次回』を想像し、チックは真っ赤になって口をパクパクさせることしか出来なかった。
「……偶には雨泽をリード……して、ドキドキさせたい……」
「ドキドキかぁ」
 素直に気持ちを吐露すれば雨泽は少し考える表情をして。
「多分、こういうことではしないかな。……でも、ドキッてしたことはあるって今思い出したよ」
「っ、……い、いつ!?」
 思わず身を寄せると雨泽にさっきより近いねと笑われ、チックは真っ赤になって慌てて離れた。
 そうして暫くしてから、はぐらかされたと気がついたのだった。

 ジッと静かにカベ・ドーンを観察していたプルー・ビビットカラー(p3n000004)の瞳が唐突に向けられ、それだけで『ベルディグリの傍ら』ジルーシャ・グレイ(p3p002246)の心臓がドキリと跳ねた。
 彼女はいつだって余裕たっぷりで、忙しないジルーシャの心の声が聞こえてしまっているんじゃないかと不安になる時が多いのだ。今だって『プルーちゃんをドキドキさせられるかも!』と胸中でキャーッと騒いでいたジルーシャは表情を取り繕うのに必死だ。頑張って、アタシの表情筋!
「これは世界を救うためなのよ、プルーちゃん」
「ええ」
 解っているわと微笑まれ、壁際へと移動したプルーに「どうぞ、してみて?」と促された。
 そう! やるのだ! 壁ドンを!
「――どう、かしら?」
「……ふふ、私よりもジルーシャの方が緊張して、ほら、頬がコチニールレッドになった」
「えっ」
 この思い出だけで一生戦えるくらいのドン! にするつもりだったのに。現実とは上手く行かないものである。頬が染まっていることを指摘されたジルーシャは頬に空いている手で自身の頬へと触れ、もうっと声を尖らせる。半分、照れ隠しだ。
「もう、からかわないでったら! ――アタシだって、男なのよ?」
 声を落として、彼女の耳元へ唇を寄せて。
 異性なのだと、意識をしてと、囁いた。
 けれどそれがどうしたのとプルーは返す。ジルーシャが異性であることは知っているし、それにジルーシャはプルーが拒絶するようなことは絶対にしない。そう知っているからこそ、プルーはいつものプルーのままなのだ、と。
「ねえ、ジルーシャ。今は私を独り占めしているのはあまり想像していないのかしら」
 ウィスタリアを映すベルディグリの彩が細まった。
 ウィスタリアとベルディグリ。ふたりの彩に染まるふたりは、ふたりだけが知っている。

 ――壁ドンをさせて欲しい。
 そう唐突に言い出した『約束の力』メイメイ・ルー(p3p004460)へ、アラーイスはふたつ返事を返した。けれど。
「わたくしでよろしかったのでしょうか?」
「……あの方は、た、たぶん困り果ててしまいます、ので……というか、わたしが限界になって、しまい、ます……」
「まあ……壁ドンなるものは斯様に難易度が高いものですのね?」
「因みにアラーイスさまは」
 好いた相手の姿を想像して頬を押さえたメイメイが気を取り直し、どういうものか知っているかと問う。
「ラサは細い道が多いでしょう? 稀に見掛けますわ」
 ナンパだったり商人同士の密談であったり、そういった類のものだ。
 知っているのなら大丈夫ですねと眉を下げたメイメイは、こちらへとアラーイスを手招いた。メイメイは大きくなってしまったから、高さ調整が大変だ。
「わたくしがこのブロックに乗りましょう」
「危なくはありませんか?」
「危ない時はメイメイ様が支えてくださいますもの」
 にっこりとした笑みに、メイメイはめぇと鳴いた。アラーイスが時折口にする我侭は、甘えてくれているからこそだと知っている。
「では、行きますね!」
 トンッと壁に手をついた。
 チラッとメイメイはカベ・ドーンを窺い『いかがでしょう』とハイテレパスを送ってみた。――すると。
『62433204310345151521723103!?』
『……?』
『1169! 2204812344036983922164047572411251!
 4212311215152172310321046503951333934525757234442394713403?』
『????』
 動物疎通が出来ない人のように、メイメイにはこのカベ・ドーンが何を言っているのかがわからない。……たぶん興奮してはいる。
「メイメイ様」
 見ていなければハイテレパスはできない。思わずカベ・ドーンを見つめていたメイメイの頬に少しひやりとする柔らかな手が触れた。
「こんな状態でわたくし以外を見つめているだなんて、いけないひと」
「め、めぇ」
「わたくしを腕の中に閉じ込めて居る自覚を持ってくださいませんと」
「あっ、アラーイスさまっ」
 ハイテレパスをだとか、ごめんなさいだとか言い募ろうとした唇へ、頬に触れていた指先が移動した。
「言い訳はいりません。わたくしだけを見ていて」
 ね? と問われたメイメイはアラーイスの甘い香りだとか蠱惑的な蜂蜜色だとか、普段気づかない事にも目が行って。少しドキドキしているのがバレない方法はないものかと必死に頭を悩ませるのだった。

『おいしいを一緒に』ニル(p3p009185)には壁ドンなるものが解らない。だから他の人達を見て、『二人一組の内、何方かが壁に手をつく』ということを理解した。
「テアドールはくわしく知っていますか?」
「壁ドンされると人は心拍が上がり通常ではない感情を抱くらしいです」
「通常ではない感覚、ですか?」
「はい。僕はまだその感覚は分かりませんが、ニルと一緒なら分かるかも知れません」
 カベ・ドーンにはその感覚が『おいしい』なのだろうか?
 通常ではない感覚とは何なのだろうか?
 ニルはヒトではないから分かることがこの先ないのだろうか?
(でもニルは、テアドールもおんなじがいい、です)
 テアドール(p3n000243)へお願いしますと告げれば、顎を引いたテアドールがニルを挟むように手を置いた気配が閉じた瞼の向こうでした。勢いで閉じてしまった瞳を恐る恐る開けば――テアドールの顔が近い。
 じいっと見上げてくるニルの瞳はキラキラとしていて、テアドールはそれを美しいと感じた。間近で見るニルも、自分だけを瞳に映してくれるニルも――そう考えれば、コアがむずむずとしてくる。
「はわ……コアのあたりがうずうず、そわそわします……」
「僕はむずむずします」
 むずむずとそわそわは、いっしょ?
 きっと、たぶん、そう。ふたりがそう、思うのなら。
「……あのね、テアドール」
 少し悩んで視線を逸し、けれども『でも』と思って視線を合わせ、ニルは口を開く。
「ニルは……ドンより、ぎゅってするほうがいいです」
 腕の中に閉じ込められているみたいで、テアドールだけの世界もいい。けれどぎゅってされた時の方が、ニルのコアはぽかぽかするのだ。
 恋はわからない。家族とも少し違う気がする。けれどニルはテアドールと一緒にお風呂に入ったり、一緒に眠りたい。ぎゅって抱きついて、コアだって触れ合わせたい。
「ぎゅ、ですか?」
「はい。テアドールがいやでなければ」
「ニルの望みを叶えてあげられるのは、僕も嬉しいです」
 壁に少し押さえつけるように、逃げ場を無くすように、距離を詰めて。
 ニルの手がテアドールの背に伸びて、ふたりの間に隙間がなくなった。
「コアのあたりがぽかぽかします」
 ニルの素直な言葉にテアドールも同意を返す。
 コアがぽかぽかして心地良くて、いつまでもこうしていたいと願ってしまう。
 その気持ちもきっと『おんなじ』だろう。

 鮮やかな赤に、『祝福(グリュック)』エルス・ティーネ(p3p007325)の瞳が見開かれた。……忙しいはずなのに、どうしてこういう面倒事の時だけは来るのだろうか。
(絶対面白がっているでしょ……)
 エルスの視線の意味を正しく理解して笑むディルク・レイス・エッフェンベルグ(p3n000071)が憎たらしく思えるが、そこは惚れた弱み。もしかしたらに一縷の望みを賭けて、それが叶ったことに悦ばぬ恋する乙女はいまい。
 一通りの説明をして、さてどちらが……という問題に誰しも突き当たる。
 の、だが。
「早速壁に追いやらないで下さい?!」
「何か問題が?」
「問題ばかりです!」
 ああもう本当に! それがお望みだろうと言わんばかりの顔が憎たらしい。憎たらしいが見惚れてしまう程にいい男で、ときめいてしまう。ずるい男だ。
「こ、心の準備がですね……っ!」
 見栄え的にもディルクがしたほうが良いことだって、エルスはちゃんと解ってる。解ってるけど、でもって思ってしまうのだ。もう子供の姿ではないから大人の女性として意識して欲しいし、そんな女の心を察して欲しい。
(壁ドンひとつで何でこんなにも……冷静に、冷静になるのよ私……前にも経験はあるじゃない。大丈夫、一度経験はあるもの、その時の事を思い出し……いや、思い出したら余計……くっ!)
「しねぇのか?」
 はいはいと肩を竦めたディルクを前にして葛藤していれば、ニヤリと意地悪に上がる口角。笑わないでください! とすぐに噛みつけば、肩を揺らしてくつくつと笑われる。ああもう、ずっと手の平の上じゃない! 仕方ないでしょ、あなたみたいに経験豊富じゃないのだから!
(……でも、そろそろ観念しないと)
 折角来てくれたのにディルクの興が削がれるかも知れないし、それに今日は観客という名の世界の敵がいるのだ。どちらもきっと、そう長くは待ってはくれない。
(ええい!)
 エルスは壁へドンとした。だって今日はエルスがする側なのだから。
 けれどやっぱり。
「まあまあ頑張ったほうじゃねぇの?」
「~~~~~!」
 肩に大きな手の平が乗ったと思ったら、すぐに場所が入れ替わる。
 睫毛の動きがよく解るくらいの――口付けが出来てしまう距離。
 耳朶を擽る低い声に、エスニックな男の香り。
 全てにエルスの神経は向けられて、ずるい、と思う。悩むのはいつだってエルスだけ。それが惚れた弱みであるとは解っているけれど、稀には翻弄したいのに!
 面白そうに笑ったままの男の顔が近づいてきて――。
(ああ、もう。それもこれも弄びだって解ってるのに!)
 この熱に、この恋に、まだまだのぼせてしまいそう。

 ――たまには、こういう遊びもいいんじゃないか?
 呼び出した妻に少しだけ意地悪な笑みを浮かべた『最強のダチ』ヤツェク・ブルーフラワー(p3p009093)は、次の瞬間、目をひん剥いた。
 正直、理解が追いついていない。
 ヤツェクにとって妻のヘレナは銀の髪が陽光にキラキラと煌めきながら消えていきそうなほどに繊細なひとで、そしてイレギュラーズではない一般人だ。日差しにも弱いヘレナにはラサの陽光は眩しかろうと帽子に日傘と用意もしてきた。
 それなのに、彼女の手からは傘が転がり落ちているし、彼女の繊手はヤツェクの真横につかれている。――つまるところヤツェクは『ドン』されている。
「わたくしとて貴族の子女です、このように強く振る舞うことだって出来ます」
 諸手を少しあげて降参のポーズをするヤツェクの腰より少し上の辺りにある、最愛の妻の手。プルプルと体を小刻みに震えさせている彼女の手は力を籠めすぎているのだろう。指先が赤い。
 プルプルと震わせている細い体も愛おしいが、その先。白皙は赤に染まり、常よりも意思が籠もった眉をキリリと上げた表情。キッと挑むようにヤツェクを見つめる緑の瞳は――
「お、おい。ヘレナ。おい、泣くな!」
 ヘレナの涙にヤツェクはすこぶる弱い。愛らしい妻をもっと観察したいという気持ちが裸足で駆け去って、そんなに悪いことをしていまっただろうかと焦りで脳が支配される。
「何か悪いことしたか?」
「……違、ます。嬉しいのです」
 ホロホロと溢れる美しい涙を指先で拭いながら辿々しく紡がれる言葉をゆっくりと受け止める。こういうことが出来る関係になれたことが嬉しく、幸せ。その思いはヤツェクも同じであった。
 ああ、このひとはなんて愛おしいのだろうか。
「ヤツェク様……」
 ヘレナが背いっぱいの背伸びをする。
 そこで意図を汲めねば男が廃るし、最愛のプリンセスに恥なんてかかせない。
 唇が触れ合うまで、あと少し。

「ルチアさん! 壁ドンってどういうことですか!?」
「あら。来たわね、鏡禍」
『高貴な責務』ルチア・アフラニア(p3p006865)が飛ばしたファミリアーからの連絡を受け、空中神殿を経由して夢の都にたどり着き、パカラクダをかっ飛ばしてやってきた鏡禍・A・水月(p3p008354)がぜえぜえと息を荒らげている。
 そう、唐突に連絡が来たのだ。
 ルチアさんが壁ドンされる? → 誰に? 許せない。
 ルチアさんが壁ドンする? → 誰に? 許せない。
 つまるところ、ルチアに壁ドンするのもされるのも、鏡禍以外は駄目なのだ。
「ルチアさん」
 早速鏡禍は壁際にいるルチアを覆うように両手でドン! とした。
「こうやってルチアを誰にも見せたくないし、逃がしたくないな」
 女性はこういうものが好きだとか本で読んだ。だからルチアも喜んでくれるんじゃないかと、今日の鏡禍は強気だ。『さん』も付けない!
 実際、ルチアにも効果があった。気恥ずかしさを感じているし、いつもよりも強気な姿勢の彼に腰が引けている。表情を意識して引き締めなければ顔に出ていたかも知れない。
 だが、ルチアにもプライドがある。
 ルチアの指が、トンと鏡禍の胸に触れた。
「今日は珍しく、積極的にがっついてくるのね」
 トン、トン。
 プライドで強かな顔を見せるルチアと、先刻までの余裕は何処へやらすぐにカアッと赤くなる鏡禍。
「鏡禍、屈んで」
「……え? はい」
 腰を落とした鏡禍の腕の囲いをするりと抜け出したルチアが背後を取り、鏡禍がどうしたのだろうと振り返る。
「えっ」
 鏡禍の両手を右手で壁に固定したルチアは、左手を鏡禍の顎に添えて――反撃に出た。
「可愛い可愛い愛しい人。貴方には、こちらの方が似合っているわ」
「る、るるるるルチアさん……」
 反撃は見事成功。真っ赤になった鏡禍はもうずるいとしか、格好良くも可愛い愛妻に言えない。

 壁ドンとは、相手の顔面を鷲掴みにして壁に叩きつけることによって大ダメージが狙える打撃攻撃である。更に相手を壁に押し付けたまま引き摺れば背面全体を卸し金で卸すような追加のダメージも与えられ――違います。
「何? 壁ドンを知りたい?」
 わしもよくは知らんのじゃけどの~と天籟に説明された『修羅の如く』三鬼 昴(p3p010722)は、彼の説明になるほどと顎を引いた。
(壁際に追い詰めた相手に、至近距離で渾身の一撃を放ちつつ、敢えて外すことで恐怖を煽る精神攻撃だったのだな)
 理解した面持ちで昴は天籟を壁際へと立たせると、軽く準備運動を始めた。
「待て」
「どうした?」
「何か嫌な予感がするんじゃが」
 風邪でも引いたのだろうか。昴は首を傾げながら破砕の闘氣と金剛の闘氣を纏う。
「待て待て! その構えおかしいじゃろ!」
「安心しろ。当てはしない」
 深呼吸をした昴は全身の筋肉を意識して血流と共に氣を巡らせ、極限まで高められた氣を右の拳に収束させていく。
 天籟の顔が青ざめていくが、気にしない。
「待て待て待て! 待つのじゃ!」
 狙うのは顔面から拳ひとつ分右の壁。
「チェストォオオオオッ!!!」
「ぎゃああああああああ!!!」
 ドォォォンと壁は粉砕され、天籟は――。
「待てと言うただろうに……!」
 腐っても亜竜集落ペイトの師範代兼里長の護衛。口に入った砂埃をぺぺぺと吐き出しながら、まずはそこに座れと昴に説教を始めた。

「あれ、いつの間にか居なくなってる」
 カベ・ドーンが消滅していることに雨泽が気がついた。
 イレギュラーズたちはそれぞれの壁ドンに夢中になっていて気付かなかったのだが、多分4組目くらいの時には『無理……てぇてぇ……圧倒的感謝……』みたいなポーズでジュワァと消えかけていたらしい。
 戦わなくても倒せる。そんなことも、ままあるものだ。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

な、なんて手強い敵だったのだ……。
BS【羞恥】が付与されてしまっていたら(カベ・ドーンはなにもしていない)解除に数日かかるかもしれません。
壱花がカベ・ドーンだったら心に焼き付けるだけで収まらず、ピンナップにして「見て!!!」って言ってましたね……危ない危ない。

今日も世界が救われました。ありがとう、イレギュラーズ!

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