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シナリオ詳細

<Je te veux>空を穿つ赤き星

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●天義の地にて
「もう知っているとは思うが――」
 と前置きをして、情報屋は語り出した。
「幻想王国を襲った冠位色欲の凶行はお前たちローレット・イレギュラーズの活躍でなんとか退けることができた。だがその代償と言うべきか、ギルドオーナーは行方不明になっている。オーナー代理となるのはユリーカ・ユリカ。
 彼女が告げるには、ラサ南部砂漠コンシレラにて終焉の獣ベヒーモスが動きを見せたという。
 動きと言ってもあのクソでかい怪物が歩き出したってわけじゃない。未だにうずくまったままだ。だがその背からぼろぼろと終焉獣が現れ始めてな、宙空に転移陣を作り出しては世界各国に転移していったとらしい」
「その事件はもう、あちこちでおきとるよな」
 そう返したのは火野・彩陽(p3p010663)。彼がいくつもの活躍をしたという天義の地にて、情報屋の話を聞いていた。
「その通り。転移陣によって海洋だろうが練達だろうが構わず出現できるようになった小型ベヒーモスがパンドラ収集器を狙って動き始めた」
「パンドラ収集器……ね」
 彩陽は自らの胸にさがる、ロッククリスタルのペンダントを手に取った。
 彼がこちらの世界に来た際に握りしめていたという出自不明のペンダントだが、これが彼のパンドラ収集器となっている。
「なら、これが狙われることもあるってことなんよね」
「ああ、というより……」
 情報屋が無言で部屋の扉前まで歩いて行くと、そのまま扉を開けて見せた。
 外には無数の転移陣。
 出現したのは、小型のベヒーモスたち。
「おお……」
「あんたのパンドラを嗅ぎつけて、こうしてやってきちまったらしい」

 しかしそこはローレットの情報屋。きっちり情報は探ってくれていたらしい。
「小型ベヒーモスは二人組で、仮に『レッドメイス』『ブルーメイス』と呼び名をつけた。
 攻撃能力に優れたレッドメイスと、回避能力に優れたブルーメイス。『晶竜封殺』の二つ名をもつあんたなら、レッドメイスを相手にする方が得意なんじゃあないか?」
「まあ、俺は回避の高い相手はどうも苦手やし」
「だろう? それと、住民避難は手配済みだ。街が多少壊される心配はあるが、人命より大事なものはないからな。他に質問は?」
「いや――」
 彩陽はコートを脱ぎ捨てると椅子にかけ、愛用の弓『剔地夕星』を手に取った。
 そして、矢をつがえる。
「これで充分」
 小型ベヒーモスを援護するように無数の終焉獣が飛び出しては暴れ始める。
 彩陽はその一体めがけ、矢を放った。

●そして幕が開く
「――というわけだ」
 情報屋はぜーはー息を荒げながらすべて話切ると、イレギュラーズたちが集まった酒場のテーブルに手を突いた。
 黙って差し出された水をがぶがぶ飲み、ドンとコップをテーブルに置く。そして口元を拭うと偶然そこに集まっていたイレギュラーズたちの顔ぶれを確かめた。
「ローレット・イレギュラーズの火野・彩陽が小型ベヒーモスに狙われてる。場所はすぐ近くだ。既に戦闘は始まってるはずだ。急いで向かってくれ!」

GMコメント

●シチュエーション
 火野・彩陽のパンドラ収集器が狙われています。
 既に戦闘は始まっており、急いで駆けつけなければならないでしょう。

※彩陽さんは既に戦闘を始めている扱いになりますが、全員が到着するまでもちこたえているものとして扱います。HPAPに若干の減少はありますが、大きく損なうことはないものとします。

●フィールド
 天義の街中です。店が並んでおり美しい街並ですが、終焉獣が暴れているためやや荒れ気味です。
 住民は急いで避難してくれたようで被害は出ていないようです。

●エネミー
・猿型終焉獣×多数
 二足歩行が可能な終焉獣で、鋭い爪での攻撃が可能です。
 連携が普通の終焉獣よりも堅く若干知能が高いという特性をもちます。
 小型ベヒーモスは暫く終焉獣に戦わせ様子見をするらしいので、できるだけ早くこれらを倒してしまいましょう。

・小型ベヒーモス『レッドメイス』
 攻撃力に優れた個体です。若干封殺が入れやすい性質をもっています。
 一撃が非常に重いため注意が必要です。

・小型ベヒーモス『ブルーメイス』
 回避に優れた個体です。できるだけ高い命中能力あるいは必中スキルで戦いましょう。
 数でせめて回避ペナルティを押しつける戦法も有効です。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • <Je te veux>空を穿つ赤き星完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2024年02月23日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)
鏡花の矛
ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)
【星空の友達】/不完全な願望器
武器商人(p3p001107)
闇之雲
カイト(p3p007128)
雨夜の映し身
刻見 雲雀(p3p010272)
最果てに至る邪眼
フーガ・リリオ(p3p010595)
青薔薇救護隊
火野・彩陽(p3p010663)
晶竜封殺
クウハ(p3p010695)
あいいろのおもい

リプレイ


「――ねえ」
 ズズ――と『最果てに至る邪眼』刻見 雲雀(p3p010272)の表情に影が差す。
「俺の可愛い弟弟子に、手を出した無粋な奴は一体誰?
 うん。いい度胸してるよねえ、人の身内に手を出すなんて。
 絶対に逃さないよ、お礼はたっぷりしなきゃ気が済まないもの。
 こんなことしてくれたんだから楽に死ねると思ってないよね?
 一匹残らず跡形もなく消してあげる。今更許しを乞うても遅いから」
 微笑んではいるものの、その目は決して笑っていなかった。情報屋から話を聞いて以来ずっとこの調子である。
 そんな彼の言葉をうけて『雨夜の映し身』カイト(p3p007128)は肩をすくめた。
「俺は『いらない』なら待ったは掛けないし。
 本人が『冷静』だって言うならそういうことにしておいてやるのさ、なぁ?
 ……俺もな、そういう風に『言い訳』してやらないとな、本音が出ちまいそうになるんだ。
 分かったか、『二番目の愛弟子』?」
「ん……」
 二人は町中を走り、現地へ急いでいた。
 場所は聞かずともわかる。人々が終焉獣の脅威から逃げようと走ってくるからだ。そんな人の波をかきわけて走る。
「いやぁ、彩陽ったら愛されてるわねぇ」
 雲雀たちの方をちらちらと見ながら微笑む『優しき水竜を想う』オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)。
「私もパンドラ収集器が取られそうになったけど、もうなりふり構わない印象あるわね。
 パンドラ収集器って大事なものであることも多いからどうあれ渡すわけにもいかないし、手伝ってあげるわ。
 敵の一掃なら得意技だもの、任せておいてくれていいわよ?」
「大切な仲間の火野さんと、彼のパンドラ収集器を狙うなんて……。
 終焉獣達、絶対に許せない。
 火野さんを守り、敵は全力で殲滅する!」
 ぎゅっと拳を握る『【星空の友達】/不完全な願望器』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)。
 そんな二人の様子を横目に、『闇之雲』武器商人(p3p001107)がヒヒヒと笑った。
「我(アタシ)の猫のモノに手を出そうとしたんだ。いけないコ。
 じゃあ、殺さねばね。我が眷属の安寧を脅かしたんだ。殺されても文句は言えまい?」
 猫というのは『あいいろのおもい』クウハ(p3p010695)のことだろう。
「彩陽の奴モテるようになったじゃねェか。
 だが、そう易々と渡しちゃやれねーな。
 収集器にしろ、命にしろ、奪おうってんなら俺の許可を得てからにしてもらおうか。
 俺のモノを奪おうとした罪は重いぜ?」
 ギラリと笑うクウハ。大鎌を手にしぐるんと回すと、逃げてくる人の波をモーセのごとく割った。
 いいぞ、と親指を立てて走る『君を護る黄金百合』フーガ・リリオ(p3p010595)。
「仲間の彩陽も狙われるとは……けど、狙う相手を間違えたようだな。
 彩陽には親友達がいて、師匠や兄弟子がいて、助けようと手を差し伸べる人達がいる。
 そして彩陽も強い。彩陽も生きようとする限り、簡単に弓を折る事なんてない。
 おいらはただ、支えるだけ!」


 終焉獣に取り囲まれつつも『晶竜封殺』火野・彩陽(p3p010663)はまるで絶望していなかった。
 背後から繰り出される爪の一撃を飛びのいて回避すると、矢を弓につがえて引き絞る。
 集まったエネルギーが氷の力を宿し、解き放った力は冷気を爆発させる。
「いやー……参った参った。敵は多いし味方はまだだろうし……うん。『前』の自分やったら早々に諦めてたやろねえ。……今はちょっとそういう訳にはいかんのよ。待っとる人もおるし帰る所もあるから」
 凍り付いた猿型終焉獣が封殺を受けて動きを止めた。
「せやから、ね。全部倒させてもらうで?」
 次の瞬間死角から猿型終焉獣たちが一斉に飛びかかる。
 が、それよりも早く『それ』は走った。
 雲雀の『アンジュ・デシュ』である。
 堕天の光が爆発し彩陽に襲いかかっていた終焉獣たちが吹き飛ばされる。
「お待たせ彩陽さん」
 振り返ってまず目に入った彼の表情に、彩陽はぞっと背筋を凍らせた。封殺マンより封殺してる顔であった。
「雲雀兄さん……あの、落ち着いてもろて」
「ん? やだなあ彩陽さん、俺はいつも通りだよ?」
(やだー絶対落ち着いてないやつだこれー)
 にこっと笑う雲雀に内心で叫ぶ彩陽。
 素早く雲雀は彩陽と背中合わせになると『流星流転』天墜災厄を発動。
 自らが操る血を変化させ高速で印を結ぶと、破滅の力が爆発して終焉獣たちを吹き飛ばす。
 一方で『アンジュ・デシュ』の力を込めた矢を放つ彩陽。
「よくがんばったね。回復するから!」
 フーガは戦闘用トランペット『日向の百合』を手に構えると美しい音色を奏で始めた。
 音楽が魔法となって『クェーサーアナライズ』と『幻想福音』の力を発動させる。
 彩陽のあちこちについていた傷が治癒され、傷口が塞がっていく。
 そのまま演奏を続けつつ、フーガは周囲の状況を観察した。
 猿型終焉獣たちはフーガたちの到着を受けて彩陽の包囲を既にやめている。挟撃になることを恐れたのだろう。
 一方でこちらをじっと観察している小型ベヒーモスの『レッドメイス』と『ブルーメイス』。おそらくこちらの手札を見るために猿型終焉獣に戦わせるつもりだろう。
(それでもこっちが勝つ。様子見をしたことを後悔させてやろう)
 視線で合図を送るフーガ。それを受けてクウハは『仰ぎ見よ、金の冠』を発動。
 猿型終焉獣の爪による攻撃を無効化すると鎌をくるりと回して斬り付けた。
 美麗な軌跡を描いて走った鎌が猿型終焉獣の肉体を斬り割いていく。
「ああ、敵ながら同情するぜ。
 だが自業自得ってヤツさ。
 飛んで火に入る夏の虫とはこの事だ。
 狙う相手を間違えたな?」
 ギラリと笑うとクウハは『幻罪の呼び声』を発動。周囲の猿型終焉獣たちを引きつけ始める。
 一方で武器商人は『結界術・人払い』と『保護結界』を展開して周囲を保護。
 『レガリア・レガリア』を自らに付与して力を高めると『頭を垂れよ、緋色の罪杖』を発動させた。
 影の茨の権能を解き放ち様子見していたブルーメイスを串刺しにする。
 腕を貫かれたブルーメイスはハッとして飛び退き武器商人から距離をとる。
 そんな武器商人を押さえ込むべく周囲の猿型終焉獣が爪を剥き出しにして斬りかかる。
 が、そんな無数の攻撃を軽やかに回避していく武器商人。
 さあどうぞと誘うようにカイトへと合図を送る。
 カイトは『葬送舞台・冷え切った雨帳』を準備すると氷戒凍葬『黒顎逆雨』を放った。
 地面より雨が降るという反転現象がおこり終焉獣たちの運命を歪めていく。
 それだけではない。強力な封殺効果によって猿型終焉獣の動きを封殺したのである。
「しかし、ここまで封殺持ちが集まるのも珍しいな。相手の動きが目に見えてとまってる。やりやすいったらねえな」
 カイトはにやりと笑い弟子たち――雲雀と彩陽を見やった。
 笑みを返してくる二人。
 彼らの絆を引き裂くことはたとえベヒーモスとてできないだろう。
「さあ、猿型終焉獣を一掃しよう!」
 ヨゾラは突き出すように手をかざすと無数の星の瞬きを出現させた。それらは光の弾となり猿型終焉獣へと次々に飛んで行く。
 ドドドと音を立てて着弾と爆発をくり返す星光の砲撃。
 そんな砲撃を掻い潜った終焉獣が飛びかかりヨゾラに斬りかかる。
 斬り付けた傷口から血が吹き上がるが、ヨゾラは再び彼らから距離をとると『パラダイスロスト』を発動。
 足元から光が湧き上がり猿型終焉獣たちを包み込む。
 光はそのまま狂気をもたらし、わけもわからず猿型終焉獣は自らの首に爪を突き立てる。
「トドメよ!」
 オデットが指鉄砲を突き出すようにして構えるとプリズムの輪が指を中心に広がった。
 いくつも連なった光の輪。ずどんと放たれた魔力の砲撃が猿型終焉獣の一匹に着弾したかと思うとそこを中心に『ケイオスタイド』の魔術が広がった。
 激しい衝撃によって転倒する終焉獣。周囲の終焉獣たちも纏めて吹き飛び転倒し、ごろごろと転がって小型ベヒーモスの足元で止まった。
「…………」
 その様子を見下ろし、グルルと唸る小型ベヒーモス。
 瞬間、小型ベヒーモスの『ブルーメイス』『レッドメイス』双方から強烈な殺気がばらまかれた。
 咄嗟に身構えるオデット――へ、一瞬で接近してきたレッドメイスが硬化させた腕を繰り出してきた。
 両腕を交差させ光の結界を出現させるオデット。それらを突き破ってレッドメイスの拳がオデットを吹き飛ばした。
「オデット!」
 急いで治癒の魔法を発現させるフーガ。
(小型ベヒーモスが参戦してきた。ここからが本番ってわけか……!)
 トランペットを情熱的に演奏するフーガ。そんなフーガめがけてブルーメイスが殴りかかる。
(ヒーラー狙いか。そりゃ、観察してたもんな……!)
 こちらの戦いを観察していたならヒーラーであるフーガを狙ってくるのは当然といえば当然だ。
 が、こちらの仲間達とて伊達にこれまでの経験を積んできたわけではない。
 クウハが素早くフーガとの間に割り込んで結界を展開。
 殴りつけたブルーメイスの拳が止められる――が、その瞬間に結界が粉砕された。
(【ブレイク】攻撃……! まあ、そのくらいは用意してくるよな!)
 素早く結界を張り直すクウハ。
「簡単に抜けると思うなよ。まずはオマエらからだ」
 鎌を振り抜くクウハ。ブルーメイスは俊敏に攻撃を回避したが、構わず二発目の攻撃に移る。
 というより、本命の『幻罪の呼び声』を放つのが狙いであったようだ。
 それすらもブルーメイスは回避するが、そのぶんブルーメイスが追い詰められているのは確かである。
「そこだ――!」
 ヨゾラがタイミングを見計らって飛びかかり、拳に星の輝きを集め始めた。
「貴様等の愚行を悔やむんだね……全身全霊の、星の破撃でぶちのめす!」
 咄嗟にガード姿勢を取ったブルーメイスにヨゾラの拳が叩きつけられ、至近距離で魔力が爆発した。
 衝撃に吹き飛ばされるブルーメイス。建物の壁に叩きつけられた身体を起こしてヨゾラへと反撃を繰り出す。
 ヨゾラはハッとして魔力障壁を展開。星座のきらめきが描かれた障壁は一瞬にしてブルーメイスの拳に破られる。
 ヨゾラが与えたダメージに比するほどの衝撃がヨゾラを襲い、ヨゾラもまた派手に吹き飛ばされた。
 酒場の壁に叩きつけられ地面を転がるヨゾラ。しかし素早く手を突いて起き上がると二度目の『星の破撃』を拳に集めた。
 別名『夜の星の破撃(ナハトスターブラスター)』。
 襲いかかるブルーメイスの拳を一瞬の判断でかわすと、ねじ込んだ拳から魔力の爆発を放つ。ヨゾラ自身が光り輝きブルーメイスを吹き飛ばす。
 その瞬間を、オデットは決して逃さなかった。
「さっきのお返しよ!」
 厳密には違うかななどと思いつつも、オデットはブルーメイスへと駆け寄り小さな太陽を作り出した。
 手のひらに生まれた光の塊がプリズムを乱反射し、思い切り叩きつけた衝撃で爆発が引き起こされる。
 四方八方に漏れる光。くの字に曲がったブルーメイスはまたも吹き飛ばされ、地面をごろごろと転がった。
「そぉ。キミ、回避が自慢なの。じゃあこいつは躱しきれるかい?」
 そんなブルーメイスの隙だらけな有様にトドメをさしにかかったのは武器商人だった。
 『我らの災禍に祝祭を』を発動。天空に作り出した蒼き槍の一射。
 流星の如く世界を灼く槍はブルーメイスへと深々と突き刺さり、その肉体を暴れさせた。
 散々に追い詰められ、そこへ復讐の力がこもった武器商人の槍をくらえば誰だってひとたまりもない。ブルーメイスとて例外ではないのだ。
 四肢が爆ぜるように吹き飛び、沈黙するブルーメイス。
 それを見たレッドメイスは武器商人へと思い切り殴りかかった。
 仇討ちのつもりだったのだろう。素早く防御の姿勢をとった武器商人だがそのまま派手に吹き飛ばされることになる。
 が、レッドメイスの判断は間違っていたと言わざるを得ないだろう。
 なぜならカイトとその一番弟子、そして二番弟子の攻撃が控えていたからだ。
「俺だって雲雀程じゃねぇけど、『手』を出されたら『手』が出るモンなんだ。
 誰だって『大事なものに手を出されたら』そうやって示すものなのは――。
 その『頭』でも分かることだろ? 分からないならとっとと、潰れ果てな?」
 カイトは氷戒凍葬『紅蓮封檻』を連射。
 その領域を極限まで圧縮することによって産まれた殺戮の結界がレッドメイスを捕らえ、極寒により流血させる小さな紅蓮地獄へと導く。
 高威力の【滂沱】攻撃を受けて派手に血を流すレッドメイス。その動きは大きく鈍り、目に見えて封殺されていることがわかった。
 そこへ雲雀の更なる攻撃。
 『禁呪血・蒼怨穿紅』――印を結んだ瞬間に放たれた血の矢が絶対零度の力を持ってレッドメイスへと突き刺さった。
 グオオと苦痛の呻きをあげるレッドメイスは更なる封殺の力によって押さえつけられ、苦しみもがきその状態から抜け出そうとする。
 が、そこへ更に彩陽の矢が放たれた。
 無論ただの矢ではない。穿天明星――天を穿てと、天に輝く最も明るい星をも穿て。と、祈りを込めて作られた矢だ。
 近距離まで近づいて放った矢は激しい封殺の力を宿し、レッドメイスの動きを更に封じていく。
 血の矢と穿天明星が次々と突き刺さり、身動きがごれなくなっていくレッドメイス。
 なんとか反撃をしようと腕を振るも、その鈍った腕は誰にもあたらず空振りする。
 まるで身動きのとれなくなったレッドメイスにカイト、雲雀、彩陽が取り囲んでの一斉攻撃。一方的すぎて相手が哀れになるほどの猛攻であった。
 やがて手も足もでなくなったレッドメイスは地面に手を突き、がくりとその場に崩れ落ちたのだった。
「ふう……一件落着、っと」
 額の汗を拭って息をつく彩陽。そこへ仲間達が集まっていく。


「彩陽さん大丈夫かい? リリオさんの治療で怪我は問題ないと思うけど。
 無事ならいいんだ。よく一人で持ち堪えて……頑張ったね」
 頭を撫でる雲雀。彩陽はされるがままに撫でられていた。
 内心では照れているのか、しかしポーカーフェイスを崩さない。
 その内心が分かるのか、カイトはくすりと笑って肩をすくめた。
 微笑ましい風景を、ヨゾラとオデットもにこやかに眺めている。
 すると、クウハの両隣に武器商人とフーガが並んだ。
「どうだい?」
「なんやかんや彩陽にも沢山の縁に恵まれたんだな。依頼報告終わったら、美味しいもんでも食って帰ろう」
「……だな」
 クウハは腕組みをして微笑む。
「迷子の野良猫みたいだった奴が随分と立派になったモンだ
 「居場所になってやる」と言ったのは俺だが、気の許せる奴も、居場所も、多いに越したことはない。
 今夜はご馳走でも作ってやろう」
 そして歩き出し、撫でるどころかこねるところまでいっている彩陽に呼びかける。
「何でも作ってやる。何が食いたい?」

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete

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