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シナリオ詳細

<崩落のザックーム>剣嵐と紅風

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●剣嵐のジャスミン
 剣の一振りによって嵐が起こり、無数の兵が吹き飛ばされていく。
 高い機動力によって攻撃を免れた『紅風』イルマ・フェンはザッと地面を引っ掻くように手を突くとブレーキをかけた。
「まさか、こんな形でスリルを味わうことになるなんてね」
 イルマは大地を蹴りつけると凄まじい機動力で接近し、男へと蹴りを見舞う。
 男は腕を翳し、蹴りを受け止めた。全身を覆う赤と青の鎧はどこか目に痛く、胸には美しい花が埋め込まれている。
「それは――?」
 花の美しさに一瞬気を取られるイルマ。
 が、男の剣の反撃を受けずに飛び退くだけの余裕はもっていた。
 間合いを開けてにらみ合う二人。
「これかい? この花は『滅石花(ほうせき)』さ。わかるだろう? この美しさが」
「――ッ!」
 イルマは咄嗟に口を塞いだ。
 花から放たれるのは滅びのアーク。それを花粉をまくようにしてふりまいているのだ。
「そしてわかるだろう? 私自身の美しさが!」
 剣の嵐が再び巻き起こる。
 衝撃はさらに広がり、イルマはうっかりと巻き込まれてしまった。
 身体が吹き飛ばされ、風に体中が切り裂かれる。
 痛みにこらえ、地面を転がるイルマ。
 このままでは全滅だ。そう察したイルマは兵たちに号令を下した。
「撤退! 命を守って下がりなさい! 殿はアタシが務めるわ!」
「しかし――」
「いいから行って!」
 慌てて走り出す兵たち。イルマは構え、そして相手をにらみ付ける。
「聞いてあげようじゃない。あなた、名前は?」
「ジャスミンさ。剣嵐のジャスミン。『滅石花の騎士』さ」

●『滅石花の騎士』
 『終焉の監視者(クォ・ヴァディス)』の一団が突如襲撃を受けたという報をうけて、仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)たちは彼らの拠点へと訪れていた。
「一体何があった」
「さあ、ね」
 出迎えたのは傷だらけのイルマだ。イルマと汰磨羈はいわゆる飲み友達である。
「イルマ……御主がそこまでやられる相手か」
「ここまでやられる相手、よ」
 ヤレヤレといった様子で顎肘をつくイルマ。振る舞いは余裕そうだが、怪我の具合は酷いものだ。一応戦えはするようだが……。
「情報が入ったぞ!」
 そこへ、ローレットの抱えていた情報屋が駆け込んできた。

 ラサの『南部砂漠コンシレラ』とその近郊に位置する終焉(影の領域)への交易路。
『終焉の監視者(クォ・ヴァディス)』と『覇竜観測所』が突如として襲撃された。
 それはなんと、魔女ファルカウが砂漠の民を毛嫌いしていることが原因の一つであるという。目覚めたばかりのベヒーモスを敵対対象として設定した終焉の監視者と覇竜観測所に対して怒りを向け、そして同時にかの全剣王ドゥマもまた怒りを向けているのだという。
 つまりは、目覚めたベヒーモスを狙うこの二つの勢力を潰そうという動きをBad End 8のうち二人が実行に移そうとしているのである。
 今回襲撃されたのはイルマ率いるチームで、実行犯は剣嵐のジャスミンを名乗っていた。

「『滅石花の騎士』っていうのは?」
「おそらく、『滅びへの種』で育った『滅石花(ほうせき)』を埋め込まれた『不毀の軍勢』だろう。ただでさえ強力なのに、滅びのアークをばらまく性質まで有しているタチの悪いエネミーさ」
「だが逆に言えば、そいつさえ倒せば滅びのアークをばらまくのを止められる、というわけだな?」
 汰磨羈の言葉に、イルマと情報屋がそれぞれ頷く。
「ジャスミンには配下の兵士たちも加わっていることだろう。それに放置していれば本拠地にまで殴り込んでくるに違いない。油断せずに、しかし確実に剣嵐のジャスミンを打ち取ってくれ」

GMコメント

●シチュエーション
 終焉の監視者(クォ・ヴァディス)に所属するイルマの一団が襲撃されました。
 これはベヒーモスを敵対対象とした終焉の監視者たちによる報復攻撃であるようです。
 放たれた刺客である剣嵐のジャスミンとその一団を倒しましょう!

●エネミー
・『不毀の軍勢』×多数
 全剣王の部下であり、ジャスミンの配下にある兵隊たちです。

・剣嵐のジャスミン
 『滅石花の騎士』。いるだけでヤバイくらい滅びのアークをまき散らす存在です。
 また、周囲の人間に毒のダメージを与える特性を持っています。
 これに対抗できるのはパンドラをもったローレット・イレギュラーズだけです。
 剣の腕が立ち、嵐を起こす技をもっています。
 非常に強力な敵です。

●味方NPC
・『紅風』イルマ・フェン
 元は凄腕の盗賊でしたが、今は足を洗って世のため人のため働いています。
 彼女の役割は斥候と警戒。どうやらその最中にジャスミンたちに狙われてしまったようです。
 高機動力・高反応を生かした機動戦術を駆使し、格闘魔術を武器とします。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • <崩落のザックーム>剣嵐と紅風完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2024年02月16日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

イーリン・ジョーンズ(p3p000854)
流星の少女
仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)
陰陽式
レイリー=シュタイン(p3p007270)
ヴァイス☆ドラッヘ
アッシュ・ウィンター・チャイルド(p3p007834)
Le Chasseur.
物部 支佐手(p3p009422)
黒蛇
メリーノ・アリテンシア(p3p010217)
そんな予感
火野・彩陽(p3p010663)
晶竜封殺
紅花 牡丹(p3p010983)
ガイアネモネ

リプレイ


「剣嵐のジャスミン……そんだけの手練れでありゃ、ここで首級を挙げとけば今後の戦が楽に進みそうですの」
 火明の剣を腰にさげ、『黒蛇』物部 支佐手(p3p009422)は不敵に笑う。
 『剣嵐のジャスミン』を打ち取ればそれだけ敵の戦力を削ることが出来る。逆に言えばこれだけの強敵を残しておくのは危険ということでもあるだろう。実に道理である。
 そんなことを考えつつ、支佐手はイルマの方を見やった。
「しかしイルマ殿、その傷では。下がっとった方がええと思いますが……」
 イルマはあちこち包帯を巻いており、治癒魔法で怪我は治ったとは言えなかなかの重傷具合だ。
「冗談。あそこまでやられてタダで引き下がれるもんですか」
 イルマの言いように肩をすくめる支佐手。
 一方で、『ガイアネモネ』紅花 牡丹(p3p010983)がイルマの背をぽんと叩いた。
「さあて、リベンジマッチと行こうぜ、イルマ!
 いや、リベンジっつうのはおかしいか?
 てめえは殿として守り抜いた上に生還してるんだからよ!
 一戦目も勝ちだ、勝ち!
 連勝と行こうじゃねえか!」
「あら、今度は嬉しいことを言ってくれるじゃない。汰磨羈? なかなかイイ奴らね、ローレットっていうのは」
「まあ、いろんな奴がいるからな」
 『陰陽式』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)はイルマの言葉に手を振って応える。
 そして腰の妖刀にそっと手をかける。
「調子づいて追い打ちを掛けにきたようだが。生憎、イルマも私たちもただ黙ってやられるようなタマでは無いのでね。
 この危機は、好機へと転じさせて貰うぞ?」
 『剣嵐のジャスミン』の率いる一団はこちらへと進軍してきている。
 これを迎撃し討ち取るのが今回の目標だった。
 戦力は充分。気合いも充分。ならば、進むのみである。

「へぇ、自分で美しいって言うなんてよほどね」
 一方で『ヴァイス☆ドラッヘ』レイリー=シュタイン(p3p007270)はジャスミンのことをそんな風に評価していた。
(私は汰磨羈殿の方が美しいと思うけどね。
 綺麗なスタイル、立ち姿をみて心で思う。彼女の持ってきた依頼だし絶対負けたくない……)
 などと思いながら、ふとイーリンの方を見る。美しいと言えば彼女もだ。
「いつも通り盾は任せて。司書殿」
「ええ、任せるわ」
 『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)にそう言われ、レイリーはにっこりと笑った。
 初めて彼女と出会ったときと比べると、このやりとりは随分な変化だった。当時の自分が聞いたらきっと首をかしげるだろう。
 けれどこれが、今の自分だ。
 そんな風に考えるレイリーの一方でイーリン自身は今回の作戦について色々と考えているようだった。
(あー、もう!
 敵の数が多すぎて外縁を制圧してから主首を討てないなんてねぇ!
 下策も良いところだけど、ここにいる連中で突破できなきゃ誰にもできないわよね。
 ……やってみせるわ)
 そしていつもの言葉を口にする。
「神がそれを望まれる!」

 ジャスミンの軍隊を待ち構えるように布陣した『Le Chasseur.』アッシュ・ウィンター・チャイルド(p3p007834)たち。
 並み居る『不毀の軍勢』についつい眉を動かしてしまう。
「此の数ではちょっとした戦争、ですね。
 悠長にしている時間はなさそうですが……。
 其れすら皆さんにとっては望むところであるような気がしなくも、です」
 そう言いながらチラリと見やる仲間たち。
 『晶竜封殺』火野・彩陽(p3p010663)に至っては敵の数に軽く引いていた。
「いやあ……敵多い!!
 本命攻めるのに苦労しそうですわあ……まあ……1人やったらの話ですけどね。
 1人やないんならどうとでもやれるのは分かっとりますわ。
 ほな、いきましょ。目的を果たす為の戦いを」
 言われ、『狙われた想い』メリーノ・アリテンシア(p3p010217)が頷く。
「なぁんか、本当に「終焉」が近づいてるのね
 敵の攻撃の仕方も、八つ当たり気味に数でぶん殴ってくるし、嫌になっちゃう
 なんて。愚痴を言ってもどうしようもないものね、道を作りましょう」
 アッシュは銀の鋼糸を、メリーノは大太刀を、彩陽は弓をそれぞれ手に取り構える。
 戦いが、始まる。


 『不毀の軍勢』で構成された層は分厚い。
 これをまずは突破しなくては、ジャスミンに挑むことすら難しいだろう。
「雑魚が邪魔だっつうなら任せな、司書! ――『あまたの星、宝冠のごとく』!」
 そこへ真っ先に突っ込んでいったのは牡丹だった。
 敵陣に遠距離から【怒り】を付与し、自らその敵陣へと飛び込んでいく。
 無数の戦士が剣や槍、弓などで攻撃してくるが牡丹はその巧みすぎる回避能力ですべて避けきってしまう。
 その脅威がわかる戦士たちは牡丹の攻撃をなるべくかわそうと試みるが、この攻撃は【必中】効果と【鬼道】効果を持っていた。高い抵抗力でレジストしなければ逃げ切ることは難しい。瞬く間に大勢の戦士が牡丹の術中へと嵌まっていく。
 そこへ、『ダニッシュ・ギャンビット』と『完全逸脱』を起動した彩陽が攻撃にかかる。
「まずはこの大勢に……っと」
 今回は敵の数がとにかく多い。どんどん減らさなくてはこちらが不利になるだろう。
 例えばジャスミンの盾になる戦士が10人いるだけで10回分の攻撃が無効化されるようなものなのだ。その間にこちらにどれだけの被害が出るか。
 彩陽はまずはそんな軍勢の数を減らすべく、牡丹のかき集めてくれた戦士たちに向けて『我冀う。その力を奇跡と成す事を』を発動。
 周囲の霊力をかき集め矢に込めると、それを弓なりに放った。ドシュンという弓ではおきないよう激しい音がして飛んで行った矢は敵陣で霊力の爆発を引き起こし、そのうち数割ほどの兵士を封殺した。
 更なる追撃をしかけるメリーノ。
 『カタバミちゃん』を抜刀し、にっこりと笑うと『ソリッド・シナジー』を自らに付与。更に『SSSガジェット3.0b』も付与し自らを急加速させると敵陣へと突っ込んだ。
 豪快に振り抜いたカタバミちゃんの刀身が戦士たちの肉体を斬り割いて、腕や足を切り落としていく。
 そこからメリーノは踊るように剣を振り回し、周囲の戦士たちをばったばったとなぎ倒していった。
(司書ちゃんもたまきちゃんも道を開いてくれるし、レイリーちゃんが堪えてくれる。
 前線は上げたら揺るがないわ。まっすぐに進めばいいだけ)
 そう、作戦はシンプルだ。
 イーリンたちのコンビネーションアタックによって道を切り開き、強引にこの大群を突破。ジャスミンに接敵しまずは脅威となるジャスミンを叩くという作戦である。
 そのためにもこの戦士たちをいちいち相手にしている暇はない。
 支佐手はそんな仲間たちを更に押し込むべく『名乗り口上』を発動。かなりの命中力で放たれたそれは多くの戦士たちを巻き込み、彼らのヘイトを一身に集め始める。
(わしの役割は、まず取り巻きの敵を引きつけて、他の味方が側背を突かれんようにすること……)
 剣を手に次々に斬りかかってくる戦士たち。首を狙って振り込まれた横一文字斬りを屈んでかわすと、次に上段から撃ち込まれた攻撃を転がって回避。
 戦士たちの輪から抜けたその先でも更に肩口を狙って剣が撃ち込まれるが、それを『火明の剣』で受け止めた。
 黒蛇の構成員が任務を遂行する際に用いる、水銀を塗布した巫術用の剣だ。つまりはこうして斬り合うための剣ではなく、詠唱を簡略化するための装備だ。無論、通常の剣としても使用できるのだが。
「敵の層はまだ厚いようですね。では……」
 アッシュは両手の五指につけた銀の指輪を光らせる。
 指輪からはワイヤーが伸び、まるで巨大な操り人形でも操作するかのように美しく舞い始める。
 その舞いはそのままワイヤーの操作へとつながり、群がる大量の敵戦士たちへと絡みついてはその動きを拘束していく。
 といっても【体勢不利】程度だが、ここまで防御力を落とされればひとたまりも無い。そう、この後に繰り出される超級の攻撃に対しては。
「一点突破を図るわ。道を作るのは汰磨羈だけじゃないわよ!」
 満を持してというべきか。イーリンはラムレイに飛び乗ると『月読狩』を発動。
 イーリンの背負った無数の光が武具となって次々と射出され、防御力の弱った戦士たちに直撃していく。
 層が厚いと言っても『あのとき』程ではない。次々に倒れていく戦士たちの向こうには、光の剣を撃ち払うジャスミンの姿があった。
「見えた――!」
 ラムレイを一気に走らせるイーリン。
 と同時に、ムーンリットナイトに跨がっていたレイリーが両腕から装甲を展開。
「私はヴァイス☆ドラッヘ! 鉄帝のアイドル騎士よ。滅石花の騎士よ、勝負しましょ! どちらが美しいかを!」
 そう叫びながらジャスミンに戦いを挑んで見せた。
 ジャスミンはフッと笑うと剣を振り込み、嵐を引き起こす。
 竜巻が出現し、レイリーへと直撃。だがレイリーは己の高い防御能力で耐え凌ぐと、相応のダメージこそ受けたものきっちり持ちこたえてみせた。
「ほう? なかなか」
 男性にしては高めの声で囁くジャスミン。
「ジャスミン様、お下がりください!」
 かと思えば周囲の戦士たちがすぐさま道を塞ぎ、ジャスミンを庇うように陣形をとりはじめる。
 だがそれを計算していない汰磨羈たちではない。
「御主、敵群を掻い潜って目標を達成するのは十八番だろう? 共に首(おたから)を獲りに行くぞ!」
「ええ、腕が鳴るわね!」
 イルマとコンビを組み、走り出す汰磨羈。
「道はこちらで切り開く。突っ込め、レイリー!」
 『グラビティ・ゲート』を付与した『ケイオスタイド』を発動させると、群がった戦士たちを纏めて吹き飛ばしにかかった。
 そこは流石に『不毀の軍勢』。全員を一度にとまではいかないものの、一部を吹き飛ばすには充分な衝撃であったらしい。
 再び露わとなったジャスミンめがけ、イルマとレイリーが思い切り突進していく。


 『ヴァイスドラッヘンオーゲン』。
 それは白き竜の瞳を模した紅い宝玉を核とした杖である。その瞳は、戦うべき相手も、護るべき者も、共に戦う仲間も、戦場全てを見渡すかのような――。
「剣嵐のジャスミン!」
 真っ先に突っ込んでいったレイリーはそのまま『白竜舞台』を発動。ジャスミンの繰り出す剣を展開した装甲でもって弾き返す。
「私から目を背けるの? 私の美しさを直視できないのね」
「見え見えの挑発だ。けれど、受けて立ってあげようじゃないか!」
 ジャスミンは再び剣の嵐を引き起こした。
 巨大な竜巻が複数出現しレイリーや仲間たちを巻き込み始める。
 そんなレイリーに庇われる形で狙いをつけるイーリン。
「頃合いか、否、頃合いにしてみせる……!」
 解禁した『天照狩』を解き放った。
 掲げた剣に光が纏い、巨大な剣の如き光を振り下ろせばジャスミンへと強烈な衝撃が走る。
 それは見事に、ジャスミンにカバーが入らない絶好の瞬間であった。
「くっ……!」
 強烈な攻撃を剣で受けるジャスミン。さすがに無傷とはいかないようで、その身体が吹き飛ばされ一度地面を転がる。
 が、すぐにその身体を起こし、周囲の戦士たちがカバーに入った。
「邪魔するんじゃ――ねえ!」
 牡丹が片翼を広げ気合いを溜めると、その気迫を集団に向けて叩きつけた。
 ジャスミンは抵抗できたものの、周囲の戦士たちは牡丹に吸い寄せられるかのように襲いかかってしまう。
 手にした槍を牡丹の腹めがけて突き出す戦士。しかし牡丹はくるりとその場でスピンしながら槍の先を弾いて回避。短剣を抜いた戦士が逆手に持ったそれで斬りかかるも、牡丹は紙一重のところで身体を反らして回避してしまう。
 が、そこは数と質の両方を備えた『不毀の軍勢』。徐々にだが牡丹に攻撃をかすりはじめた。
 が、ジャスミンの盾を剥ぎ取るという意味では充分な戦果だ。
「イーリンたちが騎兵隊っつうならこちとら航空猟兵の盾なんでな!
 不毀の軍勢なんざに遅れを取ってたまるかよ!」
「そこっ……!」
 彩陽が身をかがめ、矢を連続で発射する。
 最初の二発は剣で切り払ったものの、三発目の矢が足に刺さってジャスミンはチッと舌打ちを漏らした。
 焦った周囲の戦士たちが集まってくるが――それはむしろ彩陽の歓迎すべき状況だった。
「お前らは身動き一つ。取れると思わんでな」
 立ち上がり、矢に再び霊力を込めて解き放つ。
 爆発が起こり、その場にいた戦士たちに亡霊が絡みついていった。
「こ、これは……!?」
 無理矢理に動きを封じられ、ジャスミンを庇うことすらできなくなった戦士たち。
 こうなってしまえばジャスミンは無防備だ。
「受け続けるのってしんどいものねぇ」
 メリーノが猛烈な速度で突っ込み、カタバミちゃんを大上段に振り上げた。
 そして、振り下ろす。
 剣の重量が充分に乗った一撃を、ジャスミンはなんとか自らの剣で受け止めた。しかしダメージは免れなかったようで腕に走る衝撃に歯を食いしばっている。
「やられっぱなしじゃ、腹もたつでしょうし。目一杯ぶん殴っちゃっていいわぁ!」
「ありがと!」
 そのタイミングでイルマが急接近。ジャスミンの顔面を思い切り殴りつけた。
「ぐっ!?」
 殴り飛ばされよろめくジャスミン。
 距離をとってメリーノの追撃を逃れたものの、鼻から流れた血を拭って怒りに顔を赤くした。
「おのれ……美しいこの私に、血を流させたな……!?」
「「ジャスミン様!」」
 周囲の戦士が再び集まろう――とした矢先。
「生憎と、ここを通すわけにゃ行きませんので。もうしばし、わしに付き合うて頂きます」
 割り込んだ支佐手に思わず足を止めた。
 放った魔術は『黄泉比良坂の果実』。
 深淵の鏡に敵を映すことで発動する呪詛の巫術だ。
 突然粘ついた泥が鏡からあふれ出し、更に泥からは死者が這い出して腐った手で戦士たちを引き込み始める。なかば骨となった顎で食らいついて行動を阻害するその術に、戦士たちはその動きを封じられた。
 ジャズミンの守りはまた崩された。
 ならばとアッシュは背負っていたライフルを手に取り、構える。
 込めた弾は『界呪・四象』。サイトを片目で覗き込み、トリガーをひく。
 ズドンという音と共に放たれた弾は回転しながらジャスミンへと走り、咄嗟に翳した剣とぶつかった。
 が、それで弾かれるほどヤワな弾ではない。ぎゃりぎゃりと火花を散らして抵抗したかと思うと、その場で爆発。顕現された四象の力がそのまま衝撃となってジャズミンを襲った。
 至近距離でおきたそんな爆発に思わず吹き飛ばされるジャスミン。
「イルマが世話になったな。──ところで御主、"熨斗付けて返す"という言葉を知っているか?」
 汰磨羈が妖刀『愛染童子餓慈郎』を構え急接近。
 咄嗟に起き上がったジャスミンが剣で受けよう――とした矢先、その腕を背後に回り込んでいたイルマががしりと掴んで止めた。
「なっ――!?」
 驚きに目を見開く。そして、汰磨羈の刀がジャスミンの腹に深々と突き刺さった。
 かふっと血を吐くジャスミン。
 汰磨羈は静かに剣を抜き、吹き上がる鮮血を見つめた。

「て、撤退――!」
 『不毀の軍勢』のなかの一人が叫ぶ。おそらく副官を務める人間だろう。
 ジャスミンが倒されたことを切欠に、不利を悟って逃げを選んだのだろう。悪くない判断だ。
 深追いするつもりもない汰磨羈たちは撤退を許し、その場に残ったのだった。
「イルマ。気は晴れたか?」
 静かになった戦場で、問いかける。
 すると一陣の風が吹き、イルマの髪を揺らした。
「ま、おかげさまでね?」

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete

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