PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<Je te veux>小さき者と侮るなかれ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 ラサの南部砂漠地帯『コンシレラ』には覇竜領域への交易路が存在し、交易路の関所の役割を果たす『覇竜観測所』が南方に、西方には影の領域を観察する『終焉の監視者』の本拠が存在して居る。地下遺跡の財宝を狙って生まれたのかオアシス周辺には小さな集落があるものの、野生の獣やモンスターの姿があり――夢の都『ネフェルスト』から離れれば離れるほどに危険を伴う。
 ――そんな南部砂漠コンシレラに人知れず『山』が出来た。
 一般の人々には『そう』映るだろう。
 だがそれは『でっか君』であることをR.O.Oで目にしたことのあるイレギュラーズならば解る『山』であった。
(――どうにもきな臭い)
 真にそれがでっか君――『ベヒーモス』であるならば、ラサに住まう者として捨て置くことは出来ぬだろう。素早く移動が可能なルナ・ファ・ディール(p3p009526)は単騎でそれの確認へと向かい――
「おいおいおい、何だコイツ等は」
 でっか君の姿が遠目に確認できるくらいまで砂漠を進むと、ぽこりぽこりと砂の中から小型ベヒーモス――『ちっさ君』が現れた。
『がお』
『がおがお』
 影の仔黒獅子めいたちっさ君たちが吠える。
 きっと『あいつはてきだ』と言っているのだろうとルナが思うと同時に、大型犬ほどの黒獅子たちはルナへと襲いかかってきた。


 ラサのサンドバザールは、いつだって活気に満ちている。客と商人が織りなす言葉の波は漣のようにざわざわと広がり、活気ある呼び込みは人々に興味を抱かせ足を止めさせる。
 昨年は紅血晶の騒ぎや竜めいた存在で恐怖と混乱に満たされたサンドバザールにその影は無く、日々の平和を取り戻すことに尽力したイレギュラーズたちは『よかった』と思う者も多いことだろう。
「……アラ?」
 そんな平和なサンドバザールをぶらりと歩いて見て回っていたジルーシャ・グレイ(p3p002246)は知人の姿に気が付き、足を止めた。
 ミルクチョコレート色の肌の商人の少女――サマーァ。彼女を見掛けるのは珍しくなく、忙しそうでなければ声をかけるのもしばしばだ。けれどもジルーシャが足を止めたのはそれだけではなく――
「……料って言って…………風味とか……」
「へえ、そうなのか」
 彼女が何かの説明をしている相手。黒髪に黒服のスラリとした身長の男は、先日アラーイスの店で見た男であった。
「ハァイ♪」
 バザールの活気に飲み込まれないように高い声を意識して声を掛けながらひいらりと手を振り近寄れば、ふたり分の瞳が同時にジルーシャへと向けられた。
「あ、ジルーシャ。お買い物?」
「あれ、君。先日会った……?」
 ん? サマーァと男の視線が交わる。互いに『知り合い?』の顔だ。
「ええ、そう。覚えていてくれたの?」
「君の香りが気になったんだ。その香りって――」
「アラ、アタシの店を知ってくれているの?」
 嬉しいと破顔したジルーシャへ、男も君が作っているのかと嬉しそうな顔を向ける。
「アタシはジルーシャ。よかったらアンタの名前も聞かせてくれない?」
「俺はリベルタだ」
 これからもご贔屓に。なんてジルーシャが微笑んだ所で、「サマーァさん!」と少女たちの声が聞こえた。
「あ、エルスにフラーゴラ!」
 振られる手に大きく手を振り返したサマーァは買い物? とふたりへと笑むを向け、リベルタと名乗った男は「それじゃぁ俺はこれで。教えてくれて助かった」とその場を後にした。
「いいえ。今日はアラーイスさんとお茶をする約束があって……今の方はお客さん?」
「ううん、香辛料のことを聞かれたんだ」
 首を傾げたエルス・ティーネ(p3p007325)にサマーァは首を振り、香辛料の店と鶏肉を焼いている店を指さした。香りが気になるのだって。
「じゃあアタシはお使いがあるから」
 アラーイスへよろしくねと手を振ってサマーァは離れていき、「アタシもご一緒しても?」と問うたジルーシャとともにエルスとフラーゴラ・トラモント(p3p008825)はアラーイスの店へと向かった。

 ――――
 ――

「大変、大変!」
「どうしたの、サマーァさん」
 アラーイスの店でお茶を囲んでいると、慌てた様子で先刻別れたばかりのサマーァが駆け込んできた。狼耳を倒してフラーゴラが問えば、息を整えながらもサマーァは「すぐに助けがほしいの!」と声を上げた。
「誰かがたくさんの魔物っぽいものに襲われているって、商隊の人たちが!」
 南部砂漠から戻った商隊が、沢山の魔物に追われている人物を見た。素早く逃げ回る人物は商隊に気がつくと彼等に害が及ばないように進行方向を変え、「ローレットへ!」と言伝を頼んだのだそうだ。
 その報はローレットのラサ支部へ届けられた。ラサ支部へと戻っていたサマーァは此処に三名のイレギュラーズが居ることを知っていたから、此処へ人手を募りに来た、ということらしい。
「楽しく過ごしていたところをごめんね」
「あら、サマーァ様。お茶はいつだってできますのよ?
 それに皆様は凄腕の冒険者ですもの。すぐに帰ってきてくれましょう?」
 そうでしょうと視線を向けたアラーイスに、エルスたちは微笑んだ。
 すぐに問題を解決してみせましょう、と。

GMコメント

 ごきげんよう、壱花です。
 ちっさ君を倒しましょう。

●失敗条件
 パンドラ収集器を奪われる

●シナリオについて
 ルナさんはちっさ君たちに追いかけられています。1対1ならばルナさんひとりで倒せますが、多勢に無勢。ことを構えようとすれば次に倒れているのはルナさんです。それを正しく察し、ルナさんは機動力を活かし――そして集落や商隊へと向かわないように駆け回っています。走っているため疲れはありますが、大きな怪我はありません。
 他の皆さんは急いで夢の都『ネフェルスト』から南部砂漠地帯『コンシレラ』へと向かいます。ルナさんを見つけたら助けに来たことを告げ、戦闘を始めましょう。
 砂漠は広く、景色的には迷いやすく、砂は足をさらいます。ルナさん側で見つかりやすいような工夫や、ネフェルストからの救援組の工夫がありますと早く合流できるでしょう。

●ちっさ君 … 5体
 コンシレラに鎮座する巨大な終焉獣『でっか君』から溢れ落ちた欠片の存在。
 1体はLv100のイレギュラーズ(ルナさん)が数ターンで倒せる程度です。が、2体以上だと難しいかな……なくらいの強さです。
 でっか君や変容する獣やアポロトスがこれまで見てきたイレギュラーズの戦闘を模倣できます。故に、連携を取って戦うことが可能です。
 ちっさ君たちはパンドラ収集器を狙っています。パンドラの気配が解るので、隠していても何処にあるか解ります。誰かのを奪えたら撤退するようですが、『皆さんは彼等の目的を知りません』。

『がおがお』と鳴く個体はアタッカー。3体。色んなBSが使えます。
『がおおん』と鳴く個体はタンク。硬くて抵抗もあります。
『きゅぅん』と鳴く個体はヒーラー。単体、範囲、BS解除等行なえます。
 この見分けは、戦闘開始してからよく観察していればわかります。

●パンドラ収集器
 皆さんのパンドラ収集器の形をプレイングに記してくださると嬉しいです。
 もし、もしも。奪われたりポロリと見えた場合に描写が可能となります。(なければ「◯◯のパンドラ収集器」という描写になるかと思います。)

●リベルタ
 黒髪の人。たぶん旅人。
 リプレイには出てきません。

●EXプレイング
 開放してあります。
 文字数が欲しい等ありましたら、可能な範囲でお応えします。

 それでは、イレギュラーズの皆様、宜しくお願い致します。

  • <Je te veux>小さき者と侮るなかれ完了
  • GM名壱花
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2024年02月19日 22時15分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)
鏡花の矛
サンディ・カルタ(p3p000438)
金庫破り
寒櫻院・史之(p3p002233)
冬結
ジルーシャ・グレイ(p3p002246)
ベルディグリの傍ら
エルス・ティーネ(p3p007325)
祝福(グリュック)
フラーゴラ・トラモント(p3p008825)
星月を掬うひと
ニル(p3p009185)
願い紡ぎ
ルナ・ファ・ディール(p3p009526)
ヴァルハラより帰還す

リプレイ


 ピューイ、ヒョロロ。空へと飛ばしたファミリアーが旋回し、高所からの視界を『駆ける黒影』ルナ・ファ・ディール(p3p009526)を授けている。砂塵ばかりが舞う黄土色の景色に動く点を見つけ、ルナは微妙に行き先を変えた。
『がお、がお!』
『がおおん!』
(ついてきているな)
 振り切りすぎないよう――ルナという獲物を諦めて他所へと終焉獣たちが向かわぬような絶妙な距離感を保つ。常人であれば必死に逃げても追いつかれてねじ伏せられるであろう機動を持つ終焉獣――ちっさ君相手に調整が出来るのは、それだけルナが砂漠慣れと、誇れる脚を有しているからだ。その上、手の内の全てを見せては居ない。終焉獣という滅びのアークで編まれた獣たちは『データを持ち帰る』。己等が滅ぼすヒトという存在を、そして邪魔だてするイレギュラーズたちを学習し、成長していく習性があった。
(まあ、この砂漠で走り負けるわけがねぇんだが)
 隠れた目元の下、口角を釣り上げる余裕すらある。がうがうと鳴く二体のちっさ君は他の二体よりも狩り慣れしているような、ただ追うだけではない行動を取る。
 ――まるでヒトのように『個性』があるようではないか。
 滅びの獣のくせにヒトを真似ようだなんて、笑わせてくれる。
 チラと肉眼でちっさ君たちを確認したルナは、増援が来るまでの間、コイツ等を観察してやろうと思った。

 ――誰かが魔物を引き付けてくれている。
 それが誰であるか、砂塵の中を急ぐイレギュラーズたちは知らない。
「商隊の人たちを巻き込まないように囮になるなんて、すっごく格好いいじゃない、その人!」
 だから『ベルディグリの傍ら』ジルーシャ・グレイ(p3p002246)は砂埃まみれになろうとも、快活に笑う。だってそれだけその人がローレットを、仲間たちなら意を汲んでくれると信を置いてくれている証だから。
「そうだな。まずはちゃちゃっと見つけて、そのかっこいい奴の顔を拝んでやろうぜ!」
「そうね、砂なんかに負けてられないわ」
 明るく笑った『金庫破り』サンディ・カルタ(p3p000438)が目の上に手の庇を作って遠くを見る。黄土色ばかりの景色に、時折見える小さな点は人。大抵連なってるから商隊だろう。「オディールも頑張ってね」と『優しき水竜を想う』オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)が『凍狼の子犬』に呼びかければ、あん! と元気な声が返った。
「やあ、砂ばっかりだね」
 砂漠の砂は丘のようになっており、地面にいてはなかなか遠くまで見通せない。砂にすぐ足を取られる上に段差のある砂漠で飛行が出来るというのは体力温存にも繋がるし、砂丘とて飛び越えられる。故に上空へ飛翔して見た『冬結』寒櫻院・史之(p3p002233)は超視力があったら商隊くらいは見えたかなと小さく笑った。
「ねえ、怖いものは見なかった?」
 砂を巻き上げごうと吹く風の中に、キャラキャラと笑う風精霊を見つけた。オデットが優しく呼びかければ、風精霊はくるりとオデットの周りを周ってみせる。とても楽しいのだろう。自然とオデットは笑みを浮かべる。
「怖がっていた子は居ない?」
 ジルーシャが言葉を続ければ、精霊たちが『あっち』というように指をさす。楽しくて忘れていたけれど、少し怖い目にあったらしい。
「向こうね、ありがとう。大丈夫よ、アタシたちが何とかしてみせるわ」
「向こうは……」
 ジルーシャが示した方角。その方角に、『祝福(グリュック)』エルス・ティーネ(p3p007325)が反応し、『星月を掬うひと』フラーゴラ・トラモント(p3p008825)も三角の耳をそちらへ向けた。ラサに住まうイレギュラーズならば、砂漠に現れた『異変』も耳に入っていることだろう。
「ラサをこれ以上……好き勝手になんてさせないんだから……!」
 終焉にも覇竜にも近い土地柄ゆえ、様々な脅威が度々訪れる。
 けれどこの地はもう、異世界からの旅人であるエルスにとっても愛する土地。
 どんな脅威が来ようとも、全て大鎌の錆にしてくれるまで。


 ふうわり、薫る香りを風の中にみつけた。
 ラサという水が貴重な土地柄、ラサの民は香水で体臭を消すことが多い。だが、ルナは煙草も香もやらない。それに、こんな砂漠のど真ん中で香りが届くことなんて『普通ならばありえない』。ただびとで、あるならば。
 身に纏う香りが数メートル先まで届くような強いものであるならば、側にいる者にはかなり辛いものがあろう。普通の風では霧散して消えるだけだから風精霊の力を借りて、そして微かな香りを拾う超嗅覚。それで微かに香りの尻尾を掴めるレベル。
(ジルーシャか)
 覚えのある香りに彼が近い事を知ったルナは『魔晶式信号弾』を空へと放った。
 少し間を置き、大きな音と光が砂丘の向こう側から上がる。ファミリアーで近くに商隊が居ないことを確認すると、ルナはちっさ君たちを振り切らんと駆け出した。

「信号弾です!」
 二羽のファミリアーを操っていた『おいしいを一緒に』ニル(p3p009185)が短く叫んだ。昼間の空でも見つけやすい色にしてくれているのだろう。少し前にも見えた信号弾らしき光を辿ってやってきたニルたちは、次の信号弾が近かったことでワッと纏う気配が明るくなった。
「ニルさん、準備を!」
「はい!」
 フラーゴラとともに担いできた『アシカールパンツァー』は、小柄なふたりにはかなり大きい。構えて準備をして、頷き合う。そうして同時にトリガーを引けば――
「……耳をふさぐのを忘れてしまいました」
 射程があったからまだ良かったものの、空に放たれた光と音にニルとフラーゴラの体がふらりと揺れ、傍に居た仲間たちが支えた。
 けれど、その効果は絶大であったのだろう。
 遠くからでも解るそれを見つけた誰かが、すごい速さで駆けてくるのを超視力で捉える。
「誰か、こちらへ……あっ、ルナ、様? のよう、です!」
「あの土埃か」
「俺にも見えたよ」
 すぐにファミリアー越しにニルがハイテレパスをもってルナへ話しかける。合流しようとサンディと史之ももうもうとあがる土埃へと向かわんとした――が、ルナの詰める疾さが速すぎる。
「囮になってくれてたのってアンタだったのね、ルナ」
「ルナさん、お疲れ様。それであなたを追っていた敵は?」
 横を通り過ぎたルナへと声を掛けるジルーシャも、エルスも。視線は彼が駆けてきた方向へと向けている。何かに追われていたと聞いたのに、その何かがまだいない。
 急には止まれず随分と行き過ぎた分をルナが戻ってきても、まだちっさ君たちは遠い。けれど随分と引き離したにも関わらず、ちっさ君たちは追いかけてきている。
「執念、なのかなぁ」
 フラーゴラが小さく口にするその横で、喉を潤す時間はありそうだと史之が差し出した飲み物でルナは喉を潤した。
「数は四体。一体ずつでもそこそこ強い。二体は狩りが得意そうだ」
 攻撃を仕掛けてみたが、一体でかなり手強かった。
「素早く仕留めるためだろう。喉を狙ってきやがった」
 ルナの足が早すぎたおかげで、合流したイレギュラーズたちは軽く情報を得てから迎え撃つ事がかなうのだった。


 ちっさ君たちとの交戦はイレギュラーズたちに有利な形――事前付与による強化と1T分の先攻から始まった。
「砂漠に現れた山みたいなやつがでっか君……だったか?」
 R.O.O.においてそう呼ばれる存在はローレットの記録にある、全てを食らう滅びの獣ベヒーモス。そこから零れ落ちた存在であるならばと『ちっさ君』と呼称がつけられたんだったか、とサンディは記憶を渫った。終焉獣たちはその都度違うからモンスターとしての知識やパターンは解らない。だが、ちっさ君というでっか君から零れ落ちた存在のデータを今日集めることは可能だ。データを持って返りたいところだと、サンディは抜け目なく瞳を光らせる。
「でっか君とちっさ君……可愛らしい呼び名の割に随分可愛くない敵ね……」
「鳴き声は可愛い気がしない?」
 ラサに危険を及ぼす相手である以上遅れをとるつもりのないエルスが武器を振るいながら眉を寄せれば、史之が小さく笑う。伴侶が好きそうな鳴き声をしている、と。
「ルナさんが言っていた狩りが得意そうな個体はあの『がおがお』言っているのっぽいね。……がおがお言うのは可愛く鳴かないようだね」
 がおがお、がおがお、がおおん、きゅぅん。
 きゅぅんと鳴いた個体へと試しに《H・ブランディッシュ》を叩き込まんと近寄らんとすれば、尻尾を丸めて涙を浮かべてきゅぅんと鳴くちっさ君の前へ『がおおん』と鳴く個体が勇ましく立ちはだかった。
「連携、するんだね」
 まるで私たちみたい。
 がおがお鳴く個体の内一体が《怒りの日》によってフラーゴラへと狙いを定めており、次のタイミングではもう一体へと《怒りの日》を向けた。すると、四体の中での反応が早いのだろう。『がおおん』に守られた『きゅぅん』がBS解除と何らかの付与を行ったようだった。
「行動……役割がそれぞれ違うみたい」
 日頃から得手不得手で役割分担を行うイレギュラーズたちには、ちっさ君たちの個体それぞれの役割が見れば解る。だが、イレギュラーズたちは倒す順番の意思疎通をしなかった。オデットと史之とジルーシャとニルは『きゅぅん』を狙い、【怒り】付与を主として引き寄せんとするフラーゴラは回復を。その他のイレギュラーズは近い個体へ――サンディは数を減らすべく、標的を『きゅぅん』に切り替えた。
『がおおん!』
 しかし、『がおおん』が攻撃を通さない。遊撃する『がおがお』は移動してしまうから『きゅぅん』の傍に付きっきりで守っており、『きゅぅん』と『がおおん』の治癒魔法が『きゅぅん』を庇って負った傷を癒やしていく。
「あっ……!?」
「っ!」
 がおがおと鳴く二体に襲いかかられ、オデットが髪を抑え、後方へと跳ねたエルスが胸元を抑えた。エルスの手の中には切れたチェーンと――落とさぬよう慌てて押さえた『太陽と月の恋』。
「び……っくりしたわ……」
 大丈夫かと叫んだサンディへ、オデットが頷き返す。リボンが割かれ、切れた数本の金糸をはらりと回せながら結んでいた髪が降りた。
(……水晶を狙った?)
 それは光の妖精たるオデットが光が当たるような位置で常に身につけている大切な水晶――パンドラ収集器。
 パチッとエルスとオデットの目があった。
 きっと同じことを考えた。
 ふたりは告げる。
「「皆(さん)、パンドラ収集器を守って!」」
 ふたりの声に仲間たちは自身のパンドラ収集器へと手を伸ばしかけ、止める。場所を教えるわけにははいかない。――だが。
「なるほどな」
 ルナは合点がいった。首を狙っていたのではなく、鬣に隠した収集器を狙っていたのだ、と。なれば、隠していても彼奴らは嗅ぎ分ける。何処にあるか解っているのだろう。ただ露出していて取りやすそうだったからエルスとオデットが狙われたにすぎない。
 その旨を告げれば、イレギュラーズたちは眉を寄せた。
 大抵の場合、それは大事なかたちだから。
「ニルの宝物は、あげません。これはたいせつなものです」
 友人から貰ったお揃いのネックレスを、服の上からギュッと握りしめる。……きっと狙われれば共にコアが傷つくであろうに、ニルはそこに隠している。
「俺もあげられないね」
 命の次に大切な、銀に赤い石の嵌った結婚指輪。依頼に出た時に何かあって無くしてしまわないように、史之もチェーンに通して服の下に隠している。
「…………俺、今まで投げてたけど」
 思わず微妙な顔をしてサンディが呟けば、驚きの視線が幾つか刺さる。袖口のポケットに隠して悪者へえいっと投げてるカードだ。奪われたり損なったりしないように収集器を変えるべきか、帰ったら検討すべきかもしれない。
「収集器なんて集めて、どうするの?」
「皆様のたいせつなもの、とってはいけません!」
 フラーゴラが再度【怒り】をがおがおの一体へ付与すると、メッと叱りつけるようにニルが漆黒の泥をちっさ君たちに纏わせた。
「盗られたってスリ返すけどな!」
「もう十分解っているとは思うが、俺の脚から逃げられると思うなよ」
 怪盗に黒き砂漠の獅子は頼もしい。
 自身が狙われることを承知で【怒り】を付与するフラーゴラは瞳を細めた。
 ――まなうらに初恋の相手……養父の姿がよぎったからだ。
(私のパンドラ収集器は白バラ)
 『今』好きな人との思い出の花は沢山あるけれど、でも、初恋の人の好きだった花がフラーゴラのそれなのだ。
 もう会えない人への想いはここに。
 これは誰にも渡せはしないもの。
「私が皆を守るよ……! 皆も、皆のパンドラ収集器も!」
 ひとつだって欠けさせはしないと、フラーゴラはちっさ君を引き寄せ続けた。

 ちっさ君は、個体としては強かった。
 歴戦のイレギュラーズであるルナと同等くらい。その上、役割分担もしあう。
 けれども倍の数で押されれば、彼等に未来はない。
「尻尾巻いて逃げたりはしないんだな」
 ナイフを煌めかせたサンディがそう口にすれば、「そうみたいだね」と史之が最後の一体へ太刀を振るった。
 最後の一撃は、至近距離からのニルの全力《フルルーンブラスター》。
 ちっさ君はさらりと粒子となって消えること無く、石化をし、そこに一輪の花を咲かせた。
 咄嗟にニルが手を伸ばす。
「あ」
 けれど指先が届くよりも先に石化した体が崩れ、花は崩れた体の中に埋もれてしまった。
「……触らないほうがいいかもな」
 滅びの獣が咲かす花だ、何か害があってはいけないとサンディが告げる。わからんけど、と。
「滅びのアークで出来てそうだしね」
 史之も顎を引き、そうねぇとジルーシャも相槌を打った。
 花は綺麗だったが、きっとそれだけではないのだろう。
「さ、帰ろっか」
 砂まみれの体をはたきながらフラーゴラがニッコリと笑えばニルは崩れたちっさ君から視線を上げ、元気にはい! と頷いた。
「アラーイス様がパイを焼いて待っていてくれると言っていました」
 急遽出かけることとなったイレギュラーズたちが帰ってきたら、腹を空かせているかもしれないからとアラーイスは無事の帰還を祈ってフラーゴラの手を取ってから「是非ニル様も」と微笑んでいた。いっぱいいっぱい頑張りましたと杖を握りしめれば、「良い報告を早く届けたいわね」とエルスも微笑む。温かなお茶とパイが待っていて、帰るのがとても楽しみだ。
「パイか。ミートパイだといいんだが」
 走り回れば流石に腹は減る。ガシガシと鬣をかいたルナとともに、イレギュラーズ達は帰路へとついたのだった。

成否

成功

MVP

ルナ・ファ・ディール(p3p009526)
ヴァルハラより帰還す

状態異常

なし

あとがき

フラーゴラさんの反応とルナさんの防御技術を三度見くらいしました。
皆さんのパンドラ収集器の形を知れて楽しかったです。

お疲れ様でした、イレギュラーズ。

PAGETOPPAGEBOTTOM