PandoraPartyProject

シナリオ詳細

大空FALCON WING

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●幻想の空を舞え
 幻想歓楽街の空を舞う数体のモンスターを見た。
 大きく広げた翼。鋭いくちばしと眼。
 偵察に打ち上げた小鳥を見るやいなや、半透明な魔術性サブマシンガンを発生させて射撃。空に弾幕の弧を描き、小鳥を血煙に変えた。
 『空を喰うもの』『睥睨せしもの』『ファルコン』などのあだ名で呼ばれるモンスターだ。
 こうなれば町の人々は外出を控え飛行郵便屋も仕事を休み、町経済は眠ったように静まりかえってしまう。
 砂蠍騒動で貴族の兵隊が出払った合間に起きたこのモンスター騒ぎ。
 それを解決すべく、貴族はついにローレットへの依頼を決断したのだった。

●ドッグファイト
「ようこそおいでくださいました。ローレットのイレギュラーズ様でいらっしゃいますね?」
 モノクルをつけた胸部の豊満な人物が、傾くように振り返った。
 顔半分を覆う長い黒髪がさらりとこぼれる。
 だがそれ以上に目に付いたのは、彼女の背より広がるクジャクめいた色鮮やかな翼であった。翼の動きがスカイウェザーであることを物語る。
「わたくしは当地の商工組合代表取締役を勤めますスカンダと申します。肩書きこそたいそうでございますが、ただの織物屋でございます」
 スカンダは秘書に目配せをしてコーヒーを配らせると、席について両手をゆるく組んだ。
「このたびローレットの皆様にお受け頂く依頼の説明を任されております。依頼内容はどこまでお聞きになっておりますか?
 ……そうですか、『ファルコン』……」
 スカンダは二度頷くと、手元に置いてあったブリーフケースを開き、中の資料を並べ始めた。

 『ファルコン』というのはあくまでこのモンスターについたあだ名のようなものである。
 正しい名前ははるか昔に喪われ、誰も呼ばないという。
 ここよりもう少し西の山に生息するという『ファルコン』は15体ほどの少数で群れを組み、自分より格上のモンスターを倒して餌にするという。
 方法として、生来に使える魔術を用いて大きな爪や機銃などを生み出し攻撃するというものがあり、この狩りの方法から現地民からもどこか人間くさいと親しまれている。
 弱点は高高度における空中戦で、50メートルオーバーの高度を飛行する際戦闘力が落ちるという。
「ですが不思議なことに、『ファルコン』は空中戦を挑まれるとつい乗ってしまうという習性をもちます。
 過去の資料によりますと、地上から射撃や打撃を用いて戦うチームと高高度空中戦を挑む飛行種チームに分けて駆除作戦を行なったところ、それぞれの戦力比を自分たちなりに判断して相当量の戦力を天地双方に割り振るという行動をとりました。
 決して効率的な行ないとは言えませんが、この修正を利用することでよりスムーズに駆除計画を進められると思われます」
 とても短く言うと、飛行戦闘が可能な人はして、できない人は地上に残ったやつと戦おうということである。
「兵不在の今、頼る先があってほっとしました。どうか、よろしくおねがいします」

GMコメント

【オーダー】
 『ファルコン』15体の駆除

【戦闘プラン】
 非常にざっくり言うと、『飛べる人は飛んで、飛べない人は地上から殴りかかろう』というものです。
 ファルコンは天地双方の戦力比に対応して群れを分断する習性をもつそうなので、地上チームと空中チームで作戦を分けて考えるのもよいでしょう。
(というか地上チームからは射撃も届かないので分けて考えるのが妥当です。ファルコンもわざわざ撃たれに来ることもないはずです)
 ※当シナリオにおいて、アクセサリアイテム『ジェットパック』を用いた簡易飛行では空中戦闘はできないものとします。

【ファルコン】
 空を飛ぶ大きな鳥のようなモンスター。
 機銃や爪などを魔術で形成して格闘および射撃を行なうもよう。
 ファルコンは50メートルオーバーの高高度を飛行する際に通常の空戦ペナルティに加え『クリティカル-30、ファンブル+10』のペナルティが発生する性質をもちます。
 そのため飛行可能なスタッフは高高度での空戦が推奨されています。ペナルティ込みで考えてもとっても有利です。
 この際、念のため空戦ペナルティを計算に入れてプレイングをかけるようにしてください。

 地上で戦闘する場合はあまり特別気にする要素はありません。
 ファルコン側も地上戦闘においてペナルティ高度をわざわざ飛行しないので、高くとも3メートル弱の高度を維持することになるでしょう。
 射撃と格闘ができるほか、ちょっとクリティカル値が高いことが特徴です。
 個々の戦闘能力はこちらより低めですが、数はあるのでヘイトコントロール等を駆使してバランス良く戦いましょう。

【アドリブ度】
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用くださいませ。

  • 大空FALCON WING完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年10月31日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ラノール・メルカノワ(p3p000045)
夜のとなり
リジア(p3p002864)
祈り
ルチアーノ・グレコ(p3p004260)
Calm Bringer
華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)
ココロの大好きな人
エリシア(p3p006057)
鳳凰
ティスル ティル(p3p006151)
銀すずめ
シエル(p3p006444)
天空の狙撃役
ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)
奈落の虹

リプレイ

●東奔西走ギルド
 町の静けさにはわけがある。
 幻想東部。バルツァーレク領近辺は商業が盛んとされ毎日なにかしら賑やかな雰囲気にあるもので、こと秋となれば季節ものの移ろいや行楽にと商売人がなにかと走り回る時期でもある。
 しかし、町の上空をモンスターが編隊飛行をしているとなれば話は別だ。まるで空襲にでも脅かされるようにして、人々は家の中に引きこもっている。
 すべては今まさに天空を飛ぶモンスター『ファルコン』たちのせいだ。
 『砂狼の傭兵』ラノール・メルカノワ(p3p000045)は宿の窓からその光景を眺めつつ、顔を険しくした。
「依頼人の名前も討伐対象の名前も普通……馬鹿な…何かあるに違いない……」
「どうしたの? おかしな依頼を受けすぎて疲れてるの?」
 『舞闘剣士』ティスル ティル(p3p006151)に湯気たつマグカップを渡されてラノールは咳払いをした。
「コホン、あー……群れを成して狩りをする飛行生物か。仲間と連携を取れるほどの賢さがあるのなら、上手く飼いならせば鷹匠のように人と共存できるのかもしれないな。今回は見送るしかないが」
「どーだろ。猟犬みたいに一生かけるくらいなら、そういうのもあるかもね」
「うむ、鷹匠だな」
「それより気になるのは、わざわざ自分が不利になる戦い方をするって所かな。不思議じゃない?」
「言われてみればそうね」
 『お節介焼き』華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)がペンギン型のマシュマロをココアに落としながらじわじわ溶けるのを眺めていた。
「魔術や仲間との連携をとるだけの知能がありながら……か」
 生物は必ず自分の有利な状況で戦闘を行なう……というのは、案外人間側の思い込みであったりする。
 地球世界にもわざわざ不利な状況で狩りを行なう生物は多くおり、それは往々にして得意な環境に自分の天敵が存在することを示唆する。タフで知的で強靱な握力や鋭利な爪まで持ってるくせにわざわざ誰も喰わない毒みたいな草ばかり食べて毎日胃もたれしてるコアラとかいう生物もその一例だ。
 ファルコンもまた、できれば地上の飛ばない敵を狩りたいが、空のほうが幾分かマシな外的理由があるのだろう。

 『メルティビター』ルチアーノ・グレコ(p3p004260)が窓辺によりかかって空をのぞき見ている。
「戦闘機でも同じ名前を聞いたことがあるけど。まさしくその名の通りの戦いっぷりだね。空を飛べるのが羨ましいよ」
「人型の生物はなにかと空を飛びたがるな……」
 『生誕の刻天使』リジア(p3p002864)が地面から50センチほど浮いた状態でなにもない空気に腰掛けていた。
「しかし、珍しい災いもあったものだ。あれはさしずめ戦闘機……小型で群れを成すとなると面倒なのも納得ではある。あれを、破壊すればいいのだろう」
「ま、そういうことになるかな」
 『特異運命座標』ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)がファルコンの動きを観察しながら呟いた。
「何にせよ、届く範囲にいてくれるなら何よりだ。弾幕なら僕も得意だよ。全部まとめて撃ち落としてあげよう」
 マグカップの中身を飲み干して、ウィリアムはガラスのテーブルへと置いた。
 カチンという小気味よい音。

 カチンという小気味よい音をたてて、『特異運命座標』シエル(p3p006444)の脚部が展開。飛行モードに変形すると、宿の屋根より飛び上がった。
「空を自由に飛びたい私としてはこういう空を占領する魔物は何としても退治しておきたい所ですね。制空権の確保は自由における重要事項です」
「空は自由であるべき、か?」
 『鳳凰』エリシア(p3p006057)は深く呼吸を整えると、炎の翼を大きく、そして一瞬だけ広げた。
「よかろう、かつては鳥を統べた神、鳳凰として相手してやる。今は翼を畳み地を駆けるのみだが……な」
 畳んだ翼の炎を、自らの右手の上に渦巻くように集め始める。
「そちらは頼んだぞ」
 ぴょんと屋根から飛び降りるエリシア。
 シエルは『了解』と唱えて、天空へ向け垂直に飛び上がった。

●空と地上を分けるもの
 天空にて編隊を組んで飛行していたファルコンたちは、地上と空にわかれて展開したイレギュラーズたちを見て鳴き声を交わした。
 うち半数が大きなターンをかけて急降下を開始。
 地上に展開するルチアーノたちへと狙いを定める。
 むろん、真上から攻める愚行は犯さない。地上2メートルの高度で低空飛行をかけながら、旅客機がホイールを展開するような手際で魔術機銃を顕現した。
「くるよ、弾幕だ」
「望むところ、だよ。迎え撃とう」
 ルチアーノは半身に構えて拳銃を突きだしウィリアムもまた魔導書を閉じた状態で突きだした。
 ウィリアムの魔導書が開き、描かれた不思議な植物図がうねりはじめ、ウィリアムの眼前に無数の幻花を開かせる。
 そのすべてが銃身となり無数の魔術弾を発射。
 一方でルチアーノの拳銃をフルオート状態にして連射。空にしたマガジンを足下に落として高速リロード、更に連射。
 対するファルコンたちも顕現させた機銃で弾幕を張り始める。
 交差する銃弾の嵐。
 ざざんという窓を大雨が打ち付けるような音にはじまり、ばぎんというえもいえぬ衝撃どうしがぶつかり合って爆ぜる音が連鎖する。
 銃の数はファルコンたちのほうが上だ。しかしこちらには連携する腕があった。
「あまり無理をするではないぞ。幾らでも回復はしてやれるが、な」
 エリシアは手のひらにのった炎を握りつぶすと、炎の翼を大きく広げてルチアーノを包んだ。
 銃弾に対するカウンターヒールがはたらき、無数の銃撃が焼却されていく。
 焼けた銃弾は黒炭となって落ちては解けるように消えた。
 エリシアの手元にある炎はたえず沸き続けている。彼女の望む限りいくらでも炎の翼を広げることができるだろう。
 ファルコンたちが低空飛行のまま距離を詰め、装備を機銃から爪へと変更していく。半透明な魔術の爪が発光し、人間の頭を握り潰さんばかりに巨大化した。
「私の出番のようだな」
 ラノールは得意の魔特区を担ぐと舗装された道をダッシュ。木箱や屏や窓の縁やパイプや屋根……町のあらゆるものを足場にして駆け上がっていくと、ファルコンたちに呼びかけた。
 大きくカーブしてラノールを狙うべく集中していくファルコンたち。
 爪による攻撃と機銃による射撃にわけるべく展開していく。
「身のこなしに自信はあれど、集中されるとさすがに辛いな! 撃墜は頼むよ!」
 爪に腕をつかまれたまま、集中する銃撃をマトックで無理矢理弾こうとするラノール。
 ふと見上げると、空戦チームがちょうどファルコンと接触する頃合いだった。

 50メートルオーバーの高度。暴風に煽られる高さだ。ファルコンたちは編隊を維持するべく翼をするどくして風をつかむ。
 一方のリジアは眼前に破壊のフィールドを展開。
 四つの翼をわずかに発光させ、迎撃すべく目を見開いた。
 ファルコンたちは機銃を顕現させて弾幕を張り始める。
 しかしリジアは腕を組んで顎を上げるのみ。彼女の眼前に展開したフィールドが銃弾を破壊し粒子に変えて周囲に散らしていく。
 運動エネルギーすらも破壊(拡散)していくリジアに、ファルコンたちは考えを変えた。命中精度を少しでもあげるべく武装を魔術爪にかえたのだ。
 いざ突撃――と思ったその瞬間、リジアとファルコンたちの間を暴風が突き抜けた。
 否。凄まじい速度で飛行するシエルがエネルギーブレードを纏った手刀でファルコンを切りつけ、そのままファルコンたちの攻撃が一切届かない範囲まで急速離脱していったのだ。いわゆる『手番待機・100mから接近・攻撃→(次ターン超反応で先手をとって)攻撃・100m移動で離脱』による完璧なヒット&アウェイである。
 大体の一撃離脱はせいぜい40m離脱が限度。走って追いかけて殴れる距離だ。射撃の射程も含めれば全く逃げ切れていないとも言える。しかしシエルはその2倍以上の距離を一気に離脱できるため、この戦術が可能だった。むろん、それだけ広大なフィールドであることも条件にはいる。
 まとめると、天空はシエルの自由を最大限に約束していた。
「わーお、やるわね」
「私たちも負けてらんないよ。援護よろしく……!」
 翼を広げ風をつかんだティスルは、一気にファルコンたちの集団へ突撃。あえて敵機集団の中央を陣取って刀を抜いた。
「さあ、来なさい! 喰えるものなら喰ってみろ!」
 慌てて反転したファルコンが爪を繰り出すが、ティスルはそれを刀で防御。背後から繰り出される爪を鞘でもって防御。
 その直後に二連続でファルコンの爪がティスルの腕と足を掴み、締め付ける。
「大丈夫なの? 回復は?」
「今はいい、やっちゃって!」
 ティスルの呼びかけに応えて、華蓮は両手を突き出した。
「言葉に甘えて。なけなしの魔力、一発くらいは行かせてもらうのだわ!!」
 膨大な魔力が華蓮の周囲を渦巻き、爆ぜるようにまっすぐなビームを放った。
 ティスルの真横をかすめるようにして走ったビームが、取り囲むファルコンたちを二機分まとめて貫いていく。
 衝撃を受け、バランスを崩して数メートル転落しかけるファルコン。
 リジアはうむと頷いて、破壊の術を行使した。
 腕を左から右へ振るだけで、眼前の領域が斜めに切断、破壊された。
 まっぷたつになったファルコンがきりもみ回転しながら墜落していく。
「内と外、両側から破壊する……か」
 ちらりと眼下をみやれば、地上で戦闘しているチームがファルコン相手に駆け回っているのが見えた。

 ファルコンは効率を求めない。
 奇妙な話だが、ただコアラ的隙間思想に則ったものとばかりは言えない何かが、彼らの中にあるように思えた。
 エリシアはそれを、自らを単身追いかけてくるファルコンを見て思った。
「私だけをただ一人狙うとは」
 炎を纏わせたロッドで爪を弾く。
 受けたダメージは少なくないが、エリシアの肉体の内側から燃え上がる炎は彼女の傷を焼くように消し去り、美しい素肌へと代謝させていく。
 熱とは生命。生きることは熱いこと。死や傷に縁深いように思える炎もまた、生命の力なのだ。
 傷口から吹き出た炎をそのまま矢にかえて、エリシアはロッドを弓に見立てて構える。
 ターンして再びの攻撃を試みるファルコン――と、そのずっと向こうにて仲間と交戦しているファルコンが重なる一瞬を見極めた。
「神の雷をくれてやろう! 心して受けるが良い!」
 ファルコンを貫いた炎の矢がそのまま遠いファルコンへと突き刺さる。
 それは、ちょうどウィリアムと戦っていた個体だ。
「しかし魔力は幾らでも湧いてくるけど……体力もつかな」
 ウィリアムの故郷、大樹の里に伝わる命の種は、飲み込んだ者に魔力の花を咲かせるという。
 土と水と光と風から生命を作り出し無限に近く伸び続ける木々の力を、ウィリアムは今自らに宿していた。
 魔術によって生まれた木の枝がしなり、つるをかけることで弓弦となる。更にしびれ毒の花をつけた水仙の根を矢としてつがえ、ウィリアムはファルコンへと狙いをつけた。
 銃撃――を、無視する。自らの肉体を抜ける魔術弾の痛みをこらえ、ファルコンと更にもうひとつが重なるタイミングを見極め、至近距離まで迫った瞬間に――放った。
 こうしてエリシアの火矢とウィリアムの毒矢が交差し、それぞれの眼前で墜落した。
 そんな奇跡のようなラインを交差するように駆け抜けるウィリアム。
 道幅の狭い屋根から屋根へと飛び移り、本来なら足を滑らせそうな赤煉瓦の屋根で転がる。
 迫る爪を肩でうけ、カウンターにマトックを突き立てる。
 ファルコンの肉体をつるはしの牙が破壊し、貫通し、そのまま民家の屋根に縫い付けるがごとく落とした。
「おっと、いかん。後で謝っておかねば……」
 そんな彼の真上を通り抜ける別のファルコン。
 狙いは狭い道を走るルチアーノを頭上から射撃することだった。
 石畳の道をはね迫るように狙いをあわせていく機銃射撃。
 走りながら振り返ったルチアーノ。その目には、不思議な余裕が隠れていた。
 素早く身を反転。
 袖の下から飛んだ針がファルコンに刺さり、大きく飛行姿勢を崩す。
 ブレーキをかけたルチアーノに、直接突っ込んでいく形となったファルコン。ルチアーノは腰にさげた刀を抜き、すれ違うようにして相手を切断した。
 吹き上がる血しぶきが、仕立屋の看板をぬらす。

 空を8の字に飛行するシエル。
 交差エリアで翻弄されているのは一機のファルコンだ。
 ハメるだけではつまらない。珍しく気分のたかまったシエルは必死に回避するファルコンの横をすり抜けて、後ろを向いた反転姿勢のまま低速飛行した。
 敵意をむき出しにして追跡してくるファルコン。
 対するシエルはあろうことか両手両足をフルに使って空中ブレーキ。反対方向に噴射したエネルギーで移動速度が零以下と化したシエルに、ファルコンは激突しそうになった。
 咄嗟に爪を展開して対処を試みるファルコン――の翼が、すぱんと切断される。
 ティスルが真上からの倍速急降下突撃によって刀を振り込み、隙だらけとなったファルコンの翼を切断したのだ。
 翼を斬られて飛び続けられる鳥はいない。咄嗟に身を反転させやぶれかぶれの銃撃をしかける。
 ティスルはそれを翼にうけバランスを崩したが……。
「ただで墜ちると……思わないで!」
 落下の際にファルコンに刀を突き刺し、首を掴んで固定。
 至近距離から乱射される銃撃に耐えつつ、もつれあうように落ちていく。
 ……が、ティスルが地面まで墜落することはなかった。
「大丈夫、修復したのだわ!」
 煉瓦の屋根がせまる中、ティスルをかっさらうように飛んだ華蓮が治癒魔術をしかけて翼を修復させたのだ。
 魔術の幕で穴を塞がれた翼は再び風をとらえ、一方墜落していたファルコンはそのまま煉瓦屋根へと激突。命を散らす。
 その光景を見下ろして、華蓮はほっと息をついた。
 その時である。
 真上からの銃撃。
 二人別々の方向に散るようにして逃れた華蓮たちの真上から、太陽を背に迫るファルコンの姿があった。
 回避した華蓮たちに目をつけ、ターン。だがそんなファルコンの横をかすめるように飛んでいくリジアが、挑発的に手招きをした。
「飛び交うように襲い来るならばこちらも飛び交おうではないか。生き物の翼と天使の翼、どちらが飛ぶことに優れているなどというのは考えたこともなかった故に……」
 標的変更。ファルコンはリジアの後ろをとって銃撃。
 リジアはバレルロールをしかけて銃撃を回避すると、急激なインメルマンターンをしかけた。
 対応に遅れたファルコンの、真上をとる。
 この世の空中戦においてその限りではないが、ファルコンの生態上真上は完全な死角。リジアは目を細め、破壊の光を解き放った。
 パッ、と、ファルコンの肉体がばらばらに破壊される。

●かくして空は晴れて
 町が賑わいを取り戻している。
 戦闘が終わってほんの10分のことだ。
「素晴らしい仕事ぶりでございました。これで我々も仕事にはげめるというものです」
 モノクルをつけた胸部の豊満な人物、依頼人のスカンダ氏が雄クジャクの羽根飾りがごとき扇子をひろげて美しく微笑んだ。
 真に強きは人間社会か。モンスターの空襲におびえ身を潜めていた人々は、そんなものなど無かったかのように働いている。
 まるで、雨のあがった晴れ空のごとくに。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete!

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