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シナリオ詳細

<Je te veux>鳳圏戦忌憚外伝:狙われた希望

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 鳳圏という、場所の話をしよう。
 あるとき、鉄帝国の一部族が独立を宣言した。普天斑鳩鳳王の名の下に作り上げられたその『国家』は、不自然なまでの兵力と不自然な平和を謳歌していた。
 だがそれが周辺部族から刈り取った命で作られた屍兵によるものであると分かった時に、ある戦士たちが立ち上がったのだった。
 それは鳳圏に忠誠を誓う一兵卒であり、同時に人々を鳳圏の脅威から救った英雄でもあった。
 そんな彼と仲間達による大きな戦いの末に、鳳王は打ち取られ国家の歴史は幕を閉じた。
 鳳圏は鉄帝国へと吸収されたが、その自治権を彼ら――『鳳の英雄』加賀・栄龍(p3p007422)らに預けることで実質的な自治状態を維持したのである。
 一兵卒から領主へと変わってしまった栄龍らの運命は、しかしつかの間の平和を齎してくれた。
 そんな折――世界に穴が空いたのだった。

「避難を! 住民の避難を急げ!」
 叫ぶ栄龍。彼が銃剣を手に取ると、兵士たちは住民の避難誘導に向けて走り出した。
 一方で栄龍は迫る歪な獣に向けて発砲。
 更に軍刀を抜くと獣たちを切り捨て始めた。
「何事かね」
 こんな戦場であるにも関わらず、両手を腰の後ろにやったまま悠々と歩いてくる榛名・慶一。
「大佐殿!」
「もう大佐ではないんだが……まだ慣れないかな?」
 軍が解散されてから彼の階級は一度はなくなったはずなのだが、栄龍はつい彼を大佐と呼んでしまうのだった。それが彼の骨身に刻み込まれた習慣であるかのように。
「連中、突然領地へ襲撃をしかけてきて……一体何者なのでしょうか」
 慶一は腰から抜いた拳銃で獣を撃ち殺すと、平然とした顔で述べた。
「終焉獣――終焉の獣だよ。世界の滅びに応じて現れたようだ」
「そんなものが……」
 目をぱちくりとさせる栄龍に、ならば説明しようと慶一は優しく柔和な笑みを浮かべた。

 世界の終わりを告げるかのように、世界各国にバグ・ホールなる穴が開いた。触れれば消滅してしまうというこの危険な穴は世界中を混乱させたが、真の混乱はこのあと起きた。
 世界中に終焉獣をはじめとする滅びの勢力が多発的に現れては襲撃を開始したのである。
 そしてそれが、鳳圏という場所にも及んだのだが……。
「今回は少々事情が違うようだね」
 見たまえ、と顎で示す慶一。その先にはずんぐりとした巨体をもつ獣の姿があった。
 その強さたるや凄まじく、鳳圏の兵隊たちを軽々となぎ払っている。
「あれの名は『小型ベヒーモス』。ラサ南部砂漠コンシレラにて復活したベヒーモスから生まれ、転移してきた怪物だよ。あれと同じものが領内に何体か出現しているようだな」
 慶一が語るには、この小型ベヒーモスの狙いは栄龍たちの持つパンドラ収集器であるという。
 これを奪って持ち帰り、パンドラを喰らって滅びのアークへ変えてしまうのだと。
 だが、まて。何体か?
「ええと、まさか……?」
「久慈峰・弥彦、橘・征史郎たちの部隊がそれらの対処に当たっている。私はこちらの対処にと思ったが……君に任せても良さそうだ」
 私は避難誘導に回るとしよう、と歩き出す慶一。
「任せても、いいかね? 領主殿」
「はっ――!」
 つい敬礼を返してしまった栄龍は苦笑して、そして頷いた。
 立場も、状況も、色々と変わってしまった。
 けれど変わらないものがある。
 この胸に抱く、その魂が叫ばせる。
「祖国のために――突撃ィ!」
 栄龍は、兵たちに下がるように命じると自ら終焉獣たちへと突撃していったのだった。

GMコメント

●シチュエーション
 一度は平和を取り戻した鳳圏。そこへ小型ベヒーモスをはじめとする集団が襲撃をしかけてきた。
 世界の終わりを体現したかのような怪物たちを撃退し、鳳圏の平和を再び取り戻すのだ!

●フィールド
・鳳圏領内
 背景にあるようなモダンな建築様式の洗練された街です。

●エネミー
・終焉獣×多数
 領内に溢れている大量の終焉獣です。これらをまずは撃退し、人々の安全を守りましょう。
 避難誘導やその他の雑務は他の兵たちがこなしてくれているので、戦闘に集中して大丈夫です。

・小型ベヒーモス『クレイモア』
 破壊力に優れた小型ベヒーモスです。
 小型といいながらその身体は人間の倍ほどは大きく、巨躯から繰り出す格闘能力と投擲などによる遠距離攻撃が脅威となります。
 また、抵抗力もかなり高いようなので力押しの作戦が有効です。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • <Je te veux>鳳圏戦忌憚外伝:狙われた希望完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2024年02月15日 22時25分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

エマ(p3p000257)
こそどろ
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
願いの星
エレンシア=ウォルハリア=レスティーユ(p3p004881)
流星と並び立つ赤き備
加賀・栄龍(p3p007422)
鳳の英雄
長月・イナリ(p3p008096)
狐です
カイン・レジスト(p3p008357)
数多異世界の冒険者
マグタレーナ・マトカ・マハロヴァ(p3p009452)
彼方への祈り
メリーノ・アリテンシア(p3p010217)
狙われた想い

リプレイ


 町中へと入り込んできた終焉獣たち。
 そんな様子を前に、『鳳の英雄』加賀・栄龍(p3p007422)は軍刀を握りしめる。
「見知った顔もいるな?皆集まってくれてありがとう、ぜひ力を貸してくれ。
 世界の滅びだかベヒーモスだか知らんが、そんなもんは関係ない。
 やっと戻った祖国の平和を脅かすんなら、ご退場してもらわなきゃな」
 その声に応えるように、『こそどろ』エマ(p3p000257)は曲剣『メッサー』を鞘から抜き放つ。
「あぁあ、なんだかどこもかしこも大変なことに……。とにかく食い止めねばッ!」
 慌てる様子のエマを落ち着けるように、『騎兵の先立つ紅き備』エレンシア=ウォルハリア=レスティーユ(p3p004881)が『滅刀アポカリプス』を鞘から大胆に抜刀。
「やれやれ、どこもかしこも終焉獣の襲撃ってか?
 まあ連中の好きにさせておくわけにはいかねぇからな! さっさと片付けるか!」
 その一方で、『狐です』長月・イナリ(p3p008096)もまた大太刀を抜いてくるりと構える。
「今回の敵は策を考える様な敵ではなさそうね
 問題は数が多い事と市街地戦になる事かしら?
 まぁ、まだ化け物で良かったわ。人型の敵、かつ軍民混在の戦場になると糞だからねー……。
 とりあえず被害を抑える為に頑張りましょうか」
 イレギュラーズたちの士気は充分にあるようだ。
 『願いの星』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)はそんな仲間達の様子を一通り確認しつつも、メイス『天の王に捧ぐ凱歌』を手に取った。
「ついに鳳圏にまで……トバリは大丈夫かしら?
 と、行けませんわね。心配するのは、全て終わった後!まずは目の前の敵を片付けましょう!
 マグタレーナもエマも気をつけて、危なくなったら遠慮なく呼んで頂戴ね!」
「えっ、呼んだら助けてくれるんですか!?」
「まあ、ここは持ちつ持たれつということで」
 『想光を紡ぐ』マグタレーナ・マトカ・マハロヴァ(p3p009452)が組んでいた両手を解き、背負っていた盾を装備する。
「なるほど鳳圏の英雄が先陣に立つのならば人々も心強い事でしょう。
 わたくしも平和を守るお手伝いを致します」
 かと思えば、『狙われた想い』メリーノ・アリテンシア(p3p010217)は大太刀の『カタバミちゃん』をぬらりと抜刀して笑顔を作った。
「終焉獣がいっぱいねぇ さ、お掃除しましょ。
 小難しいことは全部抜きね、もう単純に、カタバミちゃんを振り回せばいいだなんて!
 たのしいわあ! うふふ!」
 なかなか好戦的な仲間達だ。
 自分もまた片手剣を鞘から抜いて、『数多異世界の冒険者』カイン・レジスト(p3p008357)は苦笑する。
「全く、終焉獣にも少しは空気を読んで貰いたいよね……って愚痴っても意味は無いんだけどね。
 他の人達の頑張りを無駄にする訳には行かないからね。僕らも僕らの仕事をしようじゃないか!」
「では行こう、皆!」
 サッと掲げられた栄龍の軍刀。そこへ多種多様な剣が合わさるように掲げられる。ヴァレーリヤとマグタレーナもメイスと盾を翳してみせた。
 今再びローレットの力が合わさり、この鳳圏という地を守らんと動き出すのだ。


「ほっ、よ――っと」
 跳躍を駆使して素早く屋根の上によじ登り、エマは町の様子を確かめた。ぐるっと見回し、状況を探る。
「マグダレーナさん、私たちはこっちの路地を攻略しましょうか」
 そう呼びかけると、飛行によって同じく屋根の上にやってきたマグダレーナがこくりと頷いた。
 超聴力で聞き耳を立て、エコーロケーションで様子をうかがっていたマグタレーナである。どの程度の数が攻め込んでいるか既に察しがついていた。
「この数なら二人で対応できるでしょう。行きましょう」
 エマと自分に『ソリッド・シナジー』を付与して長期戦に備えると、二人で路地へと飛び降りていく。
 そこで待ち構えていたのは終焉獣たちであった。見た目は複数の獣が混ざったような不気味さで、グオオと唸ってこちらを威嚇してくる。
 が、そんな威嚇で怯むようなエマたちではない。
「さあて、早速お仕事しましょうかね」
 メッサーを振り抜き最初の一体の首を切断すると、続く数体がエマへと飛びかかってくる。だがエマの回避能力ならそれらをすべて避けきることなど造作も無い。跳躍とスピンを駆使してすべての攻撃を器用に回避すると、反撃をそれぞれの終焉獣へと繰り出していく。
「お見事」
 こうなると回復の必要もなさそうだ。マグダレーナは『殲光砲魔神』を放つと、エマに食いつこうとしていた終焉獣を吹き飛ばしたのだった。
「そちらも」
 着地と同時にすぱんと終焉獣の腕を切り飛ばしつつ、エマはマグダレーナに称賛の言葉を贈った。

 ヴァレーリヤは自動車の横転した大通りを猛烈に走る。
 そして停車してある自動車を踏み台にして跳躍すると、飛びかかってきた終焉獣をメイスで思い切り殴り倒した。
 一撃で地面に沈む終焉獣。返す刀ならぬメイスで横から飛びかかってきた終焉獣にメイスを叩きつけると、それもまた一撃で吹き飛んでいった。
「なかなかやるわね。一撃の重さが半端ないわ」
 イナリはそうヴァレーリヤを評価しつつ、自分もまたタチを握って振り返る。
 自らに『デスティーノ・コイントス』を付与し、終焉獣へと急接近。逃げる人々を追いかけようとしていた個体を優先的に狙っての攻撃だ。
「行かせないわよ」
 すぱんと相手の足を切り飛ばして動きを止めると、そのまま首を狙って斬りかかる。
「怪物なら容赦なく斬り捨てられるわね! 何匹の首を飛ばせるか勝負してもよかったわね!」
「私はその勝負のりませんわよ!?」
「わかってるわ。けどスコアを意識するのって割とアリじゃない?」
「かもしれませんわねえ」
 メイスを手に、くるりと回してみせるヴァレーリヤ。かなり重たいそれを、小柄な彼女はゆうゆうと振り回してみせる。
 そうしていると、遠くからまた新たな終焉獣の一団が迫ってきていた。
 イナリは大太刀を、ヴァレーリヤはメイスをそれぞれ構え、迎撃に走り出す。

「ここにゃ何の縁も所縁もないがな、終焉獣に襲われてるとあっちゃ見捨てては置けねぇな。手伝うぜ、栄龍!」
「ああ、助かる……!」
 大太刀を構えて終焉獣へと走るエレンシア。タンッと地面を蹴って翼を広げると低空飛行状態となって路地を抜けていく。
 曲がり角を急速にカーブした後、そこで待ち構えていた終焉獣にこちらから斬りかかった。既に俯瞰視点で待ち構えていることを察していたからである。
 更に数匹の終焉獣が飛びかかるも、それを予期していたエレンシアは大太刀を握って大回転。すべてをなぎ払ってしまう。
 一方で、路地の奥へと突き進んだ栄龍はあちこちから湧くように現れた終焉獣たちに軍刀を構える。
 榛名慶一に伝授された技を、今こそ解き放つ時だ。
「――皇翔鳳圏!」
 四方八方に剣を放ち、全方位から襲いかかる終焉獣たちを次々に迎撃していく栄龍。
「俺は単独で迎撃にあたるつもりだ。この路地で別れよう」
「おう、気ぃつけてな!」
 手を振るエレンシアに頷き、栄龍は路地を走って行く。
 走って、走って、戦い抜く。それは栄龍にとってのかつての日常であった。違いがあるとすれば、自分が突撃して死ぬための捨て駒でないことだ。戦って、生き抜かねばならない。
 それが彼の再生能力となって、傷付いた体をじわじわと回復させていく。
「おい、ちゃんと息の根止めねえと、倒れねえぞ、俺ァ。
 どうしてだか、なんぞ…ただ壊すだけのお前らには分からねえだろうがよ」
 それでも激しい消耗に、アクアヴィタエをがぶ飲みして耐える。
 戦え、生きろ。そして終焉にあがくのだ。

 家屋に隠れ潜んでいた終焉獣が飛び出してくる。が、それは既に『わかっていた』ことだった。
 カインは握っていた剣を翳して終焉獣の噛みつきをガード。そのまま剣に魔力を込めると強引に剣を押し込んで相手の頭部を切り飛ばす。
「悪いけど、こういう戦闘は得意じゃないんだよね」
 そう言うと、潜んでいたもう数匹を見つけ出して『殲光砲魔神』の魔術を放つ。
 急いで飛び出そうとした終焉獣たちが魔力の光線に焼かれて次々と倒れていく。
「すごーい、どうやって見つけたの?」
 身を潜ませていたメリーノはカインの背後を狙おうとした終焉獣にカタバミちゃんで斬りかかった。
 笑顔のまま繰り出した剣は終焉獣の小さくない身体をいとも容易く切断し、血を吹き上げさせる。
「なあに、そう難しいことじゃないさ。今回の場合、相手の狙いは奇襲くらいなものだからね。逆に奇襲がしやすい場所に狙いをつければ見つけられる」
「あー、ちょっとわかるかも」
 自分も自分で奇襲を仕掛けている立場なので、隠れやすい場所や狙いやすい場所の目星はつけられる。相手も同じ事を考えているなら、逆に『狙いやすく』なってやれば相手も顔を出すという寸法なのだろう。
「おっと、また来たみたい」
 エネミーサーチで敵の接近を感知したメリーノが剣を構える。
 カインはやれやれと肩をすくめ、魔力を手の中に込め始めた。


 栄龍が遭遇したのは、正しく怪物であった。
 小型ベヒーモス『クレイモア』。人間の倍ほどの巨躯をもつこの二足歩行型終焉獣は、圧倒的な力量差を感じさせていた。
 だが、退くわけにはいかない。
「後ろには、俺の民がいるんだよ……!」
 銃剣を構え、連続発砲。そのまま突撃を仕掛け武器を軍刀に持ち変える。
 栄龍の鋭い剣がクレイモアへと放たれる――が、それは相手の巨躯によってはねのけられた。
「なっ――!?」
 腕の一振りによって冗談のように吹き飛ばされ、自動車の側面に激突する栄龍。
 そこへクレイモアの更なる追撃が――と、その時。
「ひひひ、いいタイミングですねえ」
 エマがその独特な笑いを響かせたと同時、『飛梅』によって急速接近。
 クレイモアの足を強引に切りつけると、返す刀で『雪月花』を解き放った。
 鋭く食い込んだ刃が傷口を広げ、相手に【恍惚】状態を負わせる。その状態のまずさに気がついたクレイモアがハッとした様子で周囲を伺うと――。
「――『主よ、天の王よ。この炎をもて彼らの罪を許し、その魂に安息を。どうか我らを憐れみ給え』!」
 聖句が聞こえたかと思った途端、突如として炎の渦がクレイモアを襲った。ヴァレーリヤの『太陽が燃える夜』だ。
 凄まじい衝撃をともなった炎に吹き飛ばされ、その巨躯が転がる。
 建物の壁に思い切り激突したクレイモアは、その体をおこそうとしたところにイナリが追撃を仕掛ける。
 大太刀から放たれる『三光梅舟』。連続で繰り出された剣がクレイモアの体を派手に斬り割き血を吹き出させる。
「皆……」
 体を起こそうとした栄龍を引っ張り上げて助けるマグダレーナ。彼女は手から伝うように治癒の魔法を唱え、栄龍の傷を治療していく。
「空から栄龍さんが戦っている様子が見えましたので、急いで駆けつけたのですよ」
「ああ、助かった……他の皆は?」
「それなら」
 ご覧下さいと顎を動かすマグダレーナ。つられて見れば、エレンシアが建物を飛び越えて飛行し、直滑降めいた角度でクレイモアに突っ込んでいくのが見えた。
「へっ、図体のデカい化け物なんざこちらは死ぬほど相手して来てんだよ! てめー如き相手じゃねぇっつーの!」
 飛行の速度と体重、そして剣の重量を乗せた強烈な一撃を叩き込むと、そのまま回転をかけて連続で斬り付けるエレンシア。
 かと思えば、通りを曲がって走ってきたカインが『殲光砲魔神』を発動。
「射線を通すよ、よけて!」
 凄まじい魔術の砲撃がクレイモアを襲ったかと思うと、そのまま『鮮血乙女』を発動。魔空間が出現しクレイモアを包み込み始める。
 強引に破り抜けようとするクレイモアだが、そこへメリーノが思い切り斬りかかった。
 『カタバミちゃん』の鋭い刀身がクレイモアの腕へ食い込み、そのまま強引にばすんと切り落としてしまう。
 腕を落とされたことで脅威を感じたのか、クレイモアは近くに落ちた煉瓦を拾って飛び退き、そして煉瓦を投擲。
 凄まじい速度で飛んできた煉瓦の直撃をくらうも、しかしメリーノは笑顔のままだった。
「攻撃の手を緩めないようにね」
 メリーノが再び距離を詰めにかかり、斬撃。
 それに合わせるようにイナリが後方へ回り込んで背を切りつける。
 胸と背を同時に切られたクレイモアが悲鳴のような声をあげ、そして振り返りながらイナリを思い切りなぎ払う。
 が、その穴を即座に埋めるようにエレンアシアが回り込んだかと思うと、クレイモアの足を狙って刀を打ち込んだ。
 がくりと体勢を崩すクレイモア。そこへ決定的な斬撃をエマが転がりながら打ち込んでいく。足の健にあたる部分を切断されたのだろうか。派手にその場に転倒したクレイモアは、急いでその体を起こしにかかる。
 が、それを許さないカインとマグダレーナ。
 距離をとっての魔術砲撃を一斉に浴びせることで起き上がろうとするクレイモアを牽制する。
 更にはヴァレーリヤが飛びかかり、クレイモアの顔面めがけてメイスを叩き込んだ。
 ゴッという鈍い音がして地面に頭をめり込ませるクレイモア。
「おおお……!」
 そこへ、剣を握った栄龍が駆け込んでいく。
 最後の一撃。それをクレイモアへと飛び乗り、胸へと深々と突き刺す。
「この国は今が大事なんだよ。邪魔するんじゃねぇ!!」
 クレイモアは暫く暴れたが、それだけだ。多少もがく程度で、栄龍を振り払うこともできずにそのままがくりと息絶えたのだった。


 エマやヴァレーリヤたちが町の消化や救助活動に動き始めている。
 『栄龍の故郷ですもの。放って置くわけにも行かないでしょう?』とはヴァレーリヤの弁である。
 エレンシアやメリーノ、イナリたちもそれに加わって手伝いを初めるなか、マグタレーナやカインたちも『喜んで』と加わっていく。
「また、皆に助けられてしまったな……」
 栄龍がほうっと息をつく。
 すると、榛名がふらりと姿を現した。
「た――榛名殿! お疲れ様です!」
 大佐呼びはしなかったものの、つい敬礼をしてしまう栄龍。
 榛名は微笑み、そして手をかざして休むようにジェスチャーした。
「他のエリアも片付いたようだよ。栄龍君、そちらも、うまくやったようだね」
「はっ――あ、ええと!」
 どう答えたものか迷いつつ、そして肩をフッとおとす。
「そうですね。皆のおかげです。鳳王との戦いの時といい、また助けられました」
「恩を、返したいと思うかね?」
「はい」
 この言葉は、自然と漏れた。
 今は終焉。世界の滅びが迫っている。誰もが力になれる時だ。
「ならば……行くと良い。世界の滅びに抗う力は、いくらあっても足りないだろうからね」
 優しくそう述べる榛名に、栄龍はこくりと頷いた。
 世界は滅びかけている。それに抗う戦士たちが、ここにいる。
 そして栄龍もまた、その戦士の一人であったのだった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete

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