PandoraPartyProject

シナリオ詳細

Create me!!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●お嬢様のわがまま
「ねえじぃや」
 透き通るような声で呼びかけられたのは、少女の傍にいた執事。老齢の彼は内心冷や汗を浮かべながら応じる。
 少女がこう声をかける時は、何かしらこちらが振り回される時だ。
「あのね、イレギュラーズと呼ばれる者達がいるでしょう?」
「おりますな。……して、その者達が何か?」
 イレギュラーズ。特異運命座標と呼ばれる属性を持つ者達。その中にはこの世界で生まれ育った者も、他の世界から呼び出されたという者もいると言う。
「この前、教えてもらったの。ある世界のお話ではお菓子の家が建っているそうよ」
 その後続けられるであろう言葉に嫌な予感しかない。
 窓の外を見ていた少女はくるりと執事を振り返り、満面の笑みを浮かべた。
「ねえじぃや。私、お菓子の家が見てみたいわ!」

●わがままの行き先
「甘いモノがたくさん! なのですよ!」
 そう声を上げたのはユリーカ・ユリカ(p3p000003)。ぴょん、とその場で小さく飛び跳ねる。
「皆さんの中にお菓子の家が出てくる様なおとぎばなしを知っている人はいますか? 今回はそんなお話を聞いた貴族からの依頼なのです」
 ユリーカがイレギュラーズ達に資料を配っていく。
 そこに描かれているのはクッキーやマシュマロなど――お菓子のイラスト。
「描かれているものはお邸の方が絶対用意してくれるのです。皆さんにはそれでおうちを作ってほしいのですよ」
 なるほど、資料に載せられている菓子は家を作る材料ということらしい。
 けれど、ここまでできているのなら組み立てまで邸の者で済ませてしまえばいいのではないだろうか。
 イレギュラーズの1人がそんなことを呟いた。
「それがどうも、どんなおうちを作ったらいいのかわからないみたいなのです。そのお邸のお嬢様はいつの間にか知っていたので、誰に聞いたかも不明なのですよ」
 邸の従業員達は又聞きでしかその話を聞いていない。貴族の住まうような邸なのか、それとも貧乏な者が住まう小さな家なのか。はたまたお城なのかもわからない、といった状態なのだった。
「ローレットに依頼してしまえば、多少違っても他の世界にはこういうお菓子の家もあると誤魔化せるそうなのです。なので、皆さんでお菓子の家を考えて作ってほしいのです」
 実際にお嬢様が聞いたお菓子の家でなくても良い。肝心なのは多数の意見。
「おうちを作っている間は、きっと甘い匂いがむんむんなのです! あっでも、つまみ食いはほどほどですよ!」

GMコメント

●目的
 お菓子の家を作る

●概要
・作業時間は1日(日中のみ)。天候は良いが少し寒い。
・場所は邸の庭。広さは十分。
・菓子(材料)は邸の者が提供する。拘りがある者は邸のキッチンを借りて作ることも可能。菓子は他に要望があれば資料に載っていなくても邸側で用意可能であり、キッチンも大抵の設備は整っている。
・邸で1番の力持ちが手伝いを申し出ている。カオスシードの男で、高い所にも手が届く。特に手伝う事がなければリプレイ登場なし。

●菓子(資料掲載情報)
・クッキー
 大きさ以外は変哲もないプレーン味のクッキー。
 100mほどの正方形。
 大人2人が乗っても壊れないお墨付き。どこで割っても綺麗に割れるので加工も容易。

・マシュマロ
 円筒形のマシュマロ。50cmほどの高さ。
 ふかふかな弾力性アリ。

・チョコ棒
 棒状のプレッツェルにチョコがコーティングされたお菓子。
 立てると細く長い。2mを超す。
 3,4本の束にすればなかなか折れない。

・アイシング
 白くてもったりとしたクリーム状のもの。
 乾けば固まる。かなり強力にくっつく。

●ご挨拶
 初めまして、或いは再びお目にかかれまして幸いです。愁です。
 今回は貴族のお嬢様のお願いを叶える依頼です。ちゃんと家になっていれば成功します。大きさは特に言われていませんので、皆さんでご相談下さい。
 また、建築などの知識も必要ありません。形が家である事が大事です。人が入れる大きさの家を作ったとしても、出入りが必ずできる必要はないのです。拘った部分があればそこは評価されます(描写します)。
 そしてユリーカも言っていましたが、つまみ食いはほどほどに。
 それではご縁がございましたらよろしくお願い致します。

  • Create me!!完了
  • GM名
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2018年02月11日 21時50分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

フェスタ・カーニバル(p3p000545)
エブリデイ・フェスティバル
世界樹(p3p000634)
 
モモカ・モカ(p3p000727)
ブーストナックル
スガラムルディ・ダンバース・ランダ(p3p000972)
竜の呪いを受けしおばあちゃん
ノイエ・シルフェストーク(p3p001207)
駆けだし治癒士
九鬼 我那覇(p3p001256)
三面六臂
セリカ=O=ブランフォール(p3p001548)
一番の宝物は「日常」
エスラ・イリエ(p3p002722)
牙付きの魔女

リプレイ

●準備をしましょう
「お菓子の家……すごく夢のある話ね。執事さんの心中は察するに余りあるけれど」
 『ディンテ・ドーブルの魔女』エスラ・イリエ(p3p002722)はゆっくりと辺りを見回した。
「私の居た世界でもお話はあったわねぇ~」
 のんびりとした口調でそう告げたのは『竜の呪いを受けしおばあちゃん』スガラムルディ・ダンバース・ランダ(p3p000972)。
「小さな可愛らしいお菓子の家で、そこの住人さんがおもてなししてくれるお話よ~」
 スガラムルディのいた世界にも、勿論憧れる子供はいた。どの世界でもこういったことに憧れる気持ちは一緒である。
「うふふ、しっかりお手伝いしないと~」
「うんっ、皆でより良いものにしようね」
 『白衣の錬金魔導士』セリカ=O=ブランフォール(p3p001548)がその言葉に頷く。
 セリカもエスラ同様、内装や家具も参考にするつもりであたりを見回しながら進んでいる。見回す度、サイドで結んだ髪がふわりと揺れた。
 そうして観察している間にキッチンへ到着。
「ふふ、まずはキッチンでお菓子の住人さんを作るわよぉ」
 スガラムルディはにっこりと微笑み、エプロンをいそいそと付け出した。

(なんともほのぼのした依頼であるな。たまにはこんな依頼も良いかもしれぬである)
 『三面六臂』九鬼 我那覇(p3p001256)は広い庭と日差しに目を細め、『散歩する樹』世界樹(p3p000634)に声をかけた。
「我輩である。脚立はここに置いておけば良いであるか?」
「うむ、そこで良いのじゃ」
 世界樹は手を止めて我那覇を見遣り、1つ頷く。脚立を置いた我那覇はその場にある物を見渡した。
「板が不足すると考えられるであるな……我輩、追加で運搬をしてくるのである」
 そう呟き、その場を去る我那覇。力仕事、縁の下の力持ちな役割を率先して請け負う背中は頼もしくある。だが。
(我輩、胃もたれしそうである。……お菓子なだけに)
 内心、女性達の傍を離れられてほっとしていた。
 奇しくも今回の依頼参加者、我那覇以外は女性のみ。共に仕事をすることに否やはない。……が、キャッキャウフフな空気は避けたかった。
 けれども受けてしまった依頼。たとえ絵面がほのぼのしていようと、完遂せねばならない。
(三面六臂である我輩は建材を多く持つことができるのである。その素晴らしさを伝えつつ、我は威厳を持ってやりきるのである)
 これから立ち向かうであろう女性達特有の空気に対し、決意を新たにする我那覇。
 そんなことは露知らず、家の建築を請け負った者達はといえば。
「アタイも昔絵本で見たあこがれのお菓子の家……それをほんとに作っちゃおうなんて、さすが幻想の貴族さんは豪勢だな」
 脚立や工具などの除菌作業をしていた『のうきんむすめ』モモカ・モカ(p3p000727)が邸の方を眺める。
 彼女の言葉に反応したのは『見習い治癒士』ノイエ・シルフェストーク(p3p001207)。
「私も病弱で外に出られない時、旅人(ウォーカー)さんから頂いた絵本を読んで、お菓子の家に憧れた経験があります。ぜーんぶお菓子でできた、可愛らしくも食べることが出来るお家。そんなお家があれば住みたくなるのも分かります」
 ノイエは淑やかに両手を合わせ、昔読んだ絵本に想いを馳せる。
 世界樹は脚立同士の間に板を渡すと「そうじゃのう」と呟き、モモカとノイエへにっと微笑みかけた。
「お菓子の家……夢を作るのじゃな♪」
「お待たせ! 描いてきたよー!」
 数枚の画用紙を片手に戻ってきたのは『エブリデイ・フェスティバル』フェスタ・カーニバル(p3p000545)。
「可愛いです!」
「出っ張りは小さいんだな」
「T字型……ほとんどI字型じゃの」
 画用紙を覗き込んだノイエ、モモカ、世界樹が口々に声を上げる。
 フェスタの描いた邸は、どことなくデフォルメされており愛らしい。けれど戦闘でも生かされるであろう観察眼によって、特徴はしかと捉えられている。
「フェスタさん、絵が上手なのですね」
「お散歩メモにイラストも描いてるの。鍛えられた美術力のおかげだよ♪」
 画力を褒められ、微笑むフェスタは満更でもない様子。
 日々の積み重ねの成果だ。
「よしっ、みんなですてきなお家を作ろうな!」
 気合いを入れるモモカに、応える女性達の声が続いた。

●甘いお家を作りましょう
 制作は建築と内装、外装の3つに分かれての作業となった。
 建築を担当するモモカと世界樹はクッキーの切り出しに取り掛かる。
「内装班と外装班は家ができないと動けないからのぅ。組み立ても先じゃな」
「工具は揃ってるぞ」
 モモカが先ほど綺麗にした工具を持ってくる。寸法を手早く正確に測ると、2人はクッキーを割り始めた。
「壁と床はこれで大丈夫かの。モモカ殿、屋根の切り出しも任せて良いかのぅ?」
「もちろん。正確に切り出すぞ」
 モモカの頼もしい声に世界樹は1つ頷き、傍で見ていたカオスシードの男性に声をかけた。
「マッスル殿、よろしくのぅ」
「はい」
 マッスルと声をかけられた男性は柔和に笑みを浮かべて1つ頷いた。
 本名はマッスルではない。だが、その外見と世界樹が最初に「マッスル殿」と言ったことで彼のあだ名が決定したとも言えよう。
 2人が組み立てを行なっている間にモモカは屋根の部分となるクッキーを切り出す。
「……形を作ってから外装班に持っていった方がいいのか?」
 モモカが首を傾げる。
 考えているのは鋭角の三角屋根だ。デフォルメされたその感じが合うだろうと、世界樹と話していたのである。
 答えたのは運搬のために待っていた我那覇だ。
「形を作ってからの方が楽であるし、正確に接着できると考えるである」
「じゃあ、こっちで作ってから持っていくぞ。我那覇、手伝ってくれるか?」
 モモカの問いに頷く我那覇。
「わかったである。……あ、少し待ってほしいである」
 きょとん、とするモモカの前で我那覇は3対の目を閉じる。そうしてしばし瞑想した我那覇は先ほどよりしっかりした目を菓子へ向けた。
「待たせたである。迅速に作って我輩は建材の運び手に戻るである」
「装飾もつけないといけないしな。頑張るぞ!」

「床もこんなものかの。おーい、待たせたのじゃー」
 モモカと話していた際、床を2人以上乗っても問題ない強度にしたい、という話が上がったのだ。クッキーを重ねることで強度は上がったように思う。
 世界樹の声に他の面々が顔を上げた。
「大丈夫ー! 追加のお菓子の確認もおっけーだよ♪」
 少し離れたところから手を振って答えたのはフェスタだ。その他にはドーナツが握られている。
「それでは外装を始めましょう。家の第1印象は外装で決まる、と言っても過言ではないと私は考えています!」
 ノイエが力強く断言する。
 そこへやってきたのは屋根作りの手伝いを終えた我那覇。ノイエの手元を見て口を開いた。
「その重たげな建材、我輩が持っていくである」
「本当ですか? ありがとうございます」
 ノイエがふわりと我那覇へ微笑みかける。
「皆、持ち場に着くといいである。我輩が運搬するであるよ」
 我那覇の言葉に頷き、動き出す一同。
 菓子の袋を担いだ我那覇は、誰もいなくなったそこで一息つくと再び瞑想した。
 少しでもメンタルの回復を図ってのことである。気休め程度かもしれないが、やらないよりマシだろう。
「……さて、持っていくである」

「ノイエちゃん、ここドーナツ飾っていいかな? あとで窓を作るぞーって目印!」
「はい。では、そこにはマーブルチョコレートを置かない方が良さそうですね」
 頷くノイエを横目に、アイシングでドーナツを飾り始める。
 ドーナツとドーナツの間に、以前依頼でもらったキャンディも飾っていった。
(あ、キラキラキャンディは内装にも使えそうかな? 持っていってみよーっと)
「あ、こっちは花形で飾るからマーブルチョコレート置いて大丈夫だよー」
「わかりました」
 フェスタの言葉に、ノイエは装飾の手を止めてそちらを見る。
「わ、それ可愛いね♪」
「ふふ、童話が好きなんです。こういった装飾も喜ばれるかと思いました」
 色のついたアイシングで描かれたのは童話に出てきそうなアイテムの数々。それをマーブルチョコレート1つ1つに描き、壁へ付けているのである。
「全部描くの?」
「いえ、そうなると大変ですから……でもいくつかに描かれているのも、違いがあって面白いと思うんです」
「うん、そうだね! あ、モモカちゃん」
 頷いたフェスタが顔を上げると、ちょうどモモカがやってくるところだった。
「屋根が固まったから装飾できるぞ」
「まあ、ありがとうございます。これが終わったら装飾を付けに行きますね」
 微笑みかけるノイエの隣で、ぽんっとフェスタが両手を合わせる。
「そうだ、窓を作りたいんだけど切り出してもらっていいかな?」
「お、いいぞ。ノコギリはっと……」
 ノコギリ片手に移動するモモカとフェスタ。窓を開けたいという位置でフェスタが止まる。
「ここのあたり! できるかな?」
「多分できると思うぞ。……前にとーちゃんが木造りの倉庫とか作ってたの、もっと見とけば参考になったかな……」
 あまりこれまで建築などをしたことがなかったようで、ぼそりと後悔の念を吐き出すモモカ。軽くノコギリでクッキーの表面を傷つけ、目安を作る。
「こんなもんで大丈夫か?」
「うんっ、大丈夫! お願いします!」
 そうして切り出された丸い穴。そこへフェスタが用意してもらった薄い飴をはめ込む。
「わ、バッチリだよモモカちゃん!」
「そうか? なら良かったぞ」
 フェスタの嬉しそうな言葉に、モモカは少し照れ臭そうに笑った。

(貴族のお嬢様のお願いって突拍子もないけど、純粋ね……良くも悪くも。孤児院を燃やすように言われた依頼もあったけれど、こういうほわっとしたお願い事って安心する)
 マシュマロとアイシングでソファを作りながら、エスラはふとそんなことを考えた。
 幻想の貴族にも様々な思考の持ち主がいるようだ。
「エスラさん、絨毯ってこんな感じでどうかな?」
 そこへ声をかけたのはセリカだ。そちらを向いたエスラは目を瞬かせる。
「……随分と薄くできたのね」
「うん、頑張ったよ!」
 その驚きを褒め言葉と受け取ったセリカが満面の笑みを浮かべる。
 元々はマシュマロだったものだ。それが掌並に薄く伸ばされているのだから、エスラが驚くのも無理はない。
「エスラさんのソファもいい感じだね」
「そうかしら。じゃあ、あとはタンスとか棚ね」
 残りのやることを考え始めたエスラの隣で、セリカも同じように考え始める。
「うーん、チョコの扉は作ったから……あっ、壁!チョコレートとクッキーを織り交ぜた感じにするんだ。あとはマカロンとか他のお菓子も使えそうだよね」
 丁度他の場所へ建材を運び終わった我那覇が通りかかり、お菓子を持ってきてほしいと頼むセリカ。
「任せるである」
 そういってその場を立ち去った我那覇。入れ替わりにやってきたのは建築作業が終わり、どことなく暇そうなマッスルである。
「マッスルさん、高いところの作業をお願いしてもいいかな?」
「ああ、勿論。だいぶ出来上がってきましたね」
 そういって家を見るマッスルに釣られれば、そこにはもうすぐ完成しようとしているお菓子の家の姿。
「できたわ〜、住人さんクッキーよぉ」
 そこへスガラムルディがたくさんのクッキーを抱えて戻ってきた。
 デフォルメした人型にはアラザンのおめめが可愛らしく乗っている。顔の部分はアイシングだ。
 髪や服はカラーシュガーできらきらと彩られている。
 掌から二の腕程度の大きさの住人さんクッキーはとても愛らしい。
「内装への設置しようかと思うの〜。扉の前でお出迎えしてたり、椅子にお客さんが座るとき邪魔にならないところに座ってたり。生活感があって可愛らしいんじゃないかしら〜」
「いいと思うわ。手伝うわね」
 エスラが頷き、人形を半分程度持つ。
 スガラムルディの手元を覗いたセリカは目を瞬かせた。
「あれっ、このハートやお星さまは?」
「ふふ、これも装飾用よ〜。飾ってもらっていいかしら〜?」
 おっとり微笑むスガラムルディに、セリカは笑顔で快く頷いた。

「アイシングつけたぞ」
「うむ、じゃあ屋根をつけるかの」
 モモカの声に世界樹が頷き、数人がかりで装飾された屋根を持ち上げる。
 ノイエによって装飾された屋根は、最初より重い。壊してしまうことのないよう、慎重に上げていく。
「マッスル殿、そーっとじゃぞ」
「うっす!」
「我那覇はもうちょっとこっち寄り……そうそう、そんな感じだぞ。隙間風が入らないようにな」
「ここであるな」
 マッスルと我那覇も手伝いに加わっており、ゆっくりと屋根をアイシングのついた接着部分へ下ろす。
 屋根を乗せた家は倒れることもなく。

「「「完成ーー!!!」」」

 複数人の声が、庭に響き渡った。

●ティータイムを楽しみましょう
「まあ……まあ! すごいわ!」
 庭へ出てきたお嬢様は、その完成した家を見て目を輝かせた。
「屋根にマカロンが沢山! それに降りかかっているのは……雪かしら!」
「はい。家の温かみを強調しようと思いました。雪だるまもいますよ」
 ノイエが丁寧に答え、玄関を指し示す。そこにはスガラムルディの住人さんクッキーと共に、マシュマロでできた雪だるまが鎮座していた。
「ふふ、早く家に入りたくなっちゃうわね! でも外もカラフルでとっても素敵!」
 お嬢様はそういうと外をゆっくり回り始めた。
「マーブルチョコレートに、飴、ドーナツ……あら、角はマシュマロなのね!」
 角のマシュマロは装飾ではなく壁の一部だ。中心にチョコ棒を通したマシュマロへ切り込みを入れ、クッキーを噛ませている。
「これは入れるのかしら?」
「うむ、4人程度で満員じゃがな」
 お嬢様の問いに世界樹が頷いて答える。その答えにお嬢様の目が輝いた。
「入ってみたいわ!」
「あっ、アタイもー!」
「私も入ってお菓子の家を堪能したいな♪」
 お嬢様の言葉に続き、勢いよく挙手したのはモモカとフェスタ。あと1人入れる、というところでおずおずと挙手したのはノイエだった。
「あの……私も、良いでしょうか?」
「勿論よ!」
 笑顔でお嬢様が頷く。
 外で彼女らが入っていく姿を見守った面々は、中から漏れるお嬢様の歓声に顔を綻ばせた。

「すごかったわ……とてもすごかったわ! あのお家は私の邸がモチーフだったのね!」
 赤いマシュマロ絨毯。
 チョコ棒を幾重にも渡した額縁。
 飴でできた窓。
 あらゆる場所がお菓子でできていたことに興奮冷めやらぬ、といった様子である。
「ふふっ……お菓子の家は見て楽しむだけじゃなくて、食べて楽しむこともできるのです。お嬢様、執事さん、よろしければ一緒にお菓子の家でお菓子を食べませんか?」
「おいしそうだけど、今食べちゃうのは勿体無いかも……」
 ノイエが提案すると、側で甘い匂いを堪能していたモモカが眉尻を下げてそう告げる。
 とても甘い、いい匂い。外観も可愛らしく、見る者を幸せにするお菓子の家である。勿体無いと思うのも道理であった。
 依頼主、その主へ視線が集まる。執事がお嬢様を見ると、お嬢様は目を瞬かせた後首を傾げた。
「あら、それではお菓子の家を食べるのではなく、ここでアフタヌーンティーをしてはいかがかしら?」
 それはいい、とイレギュラーズ達が沸く。
 執事が飲み物の用意を、と邸へ戻った。
「それなら住人さんのクッキー余ったから、皆で一緒に食べちゃいましょう~」
 スガラムルディがその両腕に住人クッキーを抱えて提案する。
 余った建材で簡単なテーブルを作り、立食アフタヌーンティーだ。
「この建材、食べてしまってもいいであるか?」
 我那覇が余った菓子を指して問う。
 依頼は完遂できたのだ。食べられるのなら3つの口でやけ食いする所存である。
「勿論よ。あ、じぃや! 先ほどこっそり焼いていたケーキがあるでしょう」
「ほ、……まだ内緒にしていたはずでしたが」
 ティーセットを取って戻ってきた執事は苦笑を浮かべると、ケーキを取りに再び邸へ。
 そして再び戻ってきた執事も交えて、アフタヌーンティーが始まった。
 住人クッキーの残っている量に、セリカは隣に立つスガラムルディをちらりと見遣る。
「……スガラムルディさん、この事見越して多く作ってたの?」
「ふふ、どうかしら〜」
 にこにこと微笑むスガラムルディからは、その真意は読み取れない。
「ほら、セリカさんも食べてみて〜。美味しいわよぉ」
 住人クッキーを渡されたセリカ。齧るとクッキーの甘さとアラザンの食感がとても良い。
(うーん……まぁ、美味しいしいいか!)
 何も悪い事はないし、と結論づけたセリカの隣では、紅茶を飲むエスラの姿。
(普通に暮らしてたらこんなの自分で作ろうってなかなか思わないし、参加できてよかったわ)
 金持ちの道楽と言ってしまえばそれまで。けれど、金持ちでなければこれは作ろうと思っても難しい。
「あらっ、葉っぱの生えている貴女は旅人(ウォーカー)かしら!」
 お嬢様に興味を持たれたのは元の世界で樹木だったという世界樹だ。
「わたいは大っきな樹だったのじゃよ」
 まぁ、と興味津々な瞳を向けるお嬢様。
「何々ー? 異世界の話かな?」
 そこへ話に混ざってきたのは同じように異世界から召喚されたフェスタだ。
「もしかして貴女もなの? 異世界のお話、聞いてみたいわ!」
 お嬢様の言葉にフェスタは是を返し、その場がトークで盛り上がる。

 アフタヌーンティーは斜陽が一同を照らすまで続いたという。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 お菓子の家作り、お疲れ様でした。リプレイが遅くなり申し訳ありません。

 プレイングを書く際に、楽しく考えていただけましたら何よりです。
 皆さんの豊富なアイデアに、プレイングが届いてとても驚きました。

 この度はご縁を頂き、ありがとうございました。

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