シナリオ詳細
ローラミスティと夢幻の花
オープニング
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深緑は森林迷宮、ハーモニアの隠里。
あなたはとあるハーモニアの案内を受け、この隠里へとやってきていた。
キノコ型の住居が並ぶこの隠里の風景は、きっと夜に見れば更に幻想的に映ることだろう。
風景に目を奪われていたあなたに声がかかる。
「ようこそいらっしゃいました。冒険者様……いえ、ローレットのイレギュラーズ様」
振り返ると、まず深い緑色の瞳があなたを見据えていた。瞳にはまるで新芽のような生命力が溢れ、その眼差しは自然との深い結びつきを感じさせる。
ウィンドブロンドの髪は風に靡く金髪で、彼女のどこか超然とした雰囲気を引き立てた。
「私はアリアと申します。この里で暮らす……そうですね、花の愛好家、と名乗っておきましょうか」
照れたように苦笑してみせるアリアと名乗る女。彼女はあなたを『こちらへどうぞ』と案内すると、キノコ型の建物の一つへと招き入れた。
建物へ案内され席へ着くと、アリアから深い緑色のお茶が差し出された。
ハーブと花をブレンドした茶らしく、香りからミントやラベンダー、ジャスミンの気配がある。
その色合いはどこか優雅で、貴族たちのお茶会に出されても不思議でない一級品のそれを思わせる。
「私の作った茶葉ですよ。お口に合うとよいのですが」
そう言ってまず口をつけるアリア。
伴って口をつけてみると、心が深く安らぐ気持ちが広がっていく。どうやらこのアリアという女性には茶の才能があるようだ。
「私は先ほども言った通り、花の愛好家です。珍しい花を見つけてはそれを集めることを生きる上での趣味としているのです。その趣味が高じて、ハーブティーの腕もあがったのですよ」
言われてから部屋を見回してみれば、様々な花が飾られている。一部はドライフラワーになっていたり、状態維持の魔法をかけて状態が保たれていたりした。
彼女の言葉は嘘ではないようで、世界のあちこちにあるような花が集まりその美しさを競っているかのように見える。
アリアは暫く世間話をした後、あなたにこう切り出した。
「そろそろ、依頼についてお話しましょうか。
私はあなたに、ある花を手に入れて欲しいと考えているのです」
花の名はエルフラワー。別名『夢幻の花』。
ローラミスティという森の奥に自生しているというその花は、精霊たちの試練や魔物との戦いを越えなければ手に入れることができない。
そう、つまりあなたの力が求められているということだ。
「ローラミスティで起こるのは、まずは精霊たちの試練です。
方向感覚を惑わせたり、幻を見せたり、時には同じ場所をぐるぐると迷わせたりという試練を与えるでしょう。
ですが注意深く観察したり、特別な技能をもってすれば試練を乗り越えることはできるはずです」
次に現れる魔物だが、アリアは『シャドウウィスプ』を例にあげた。
「シャドウウィスプは幽玄な光を灯した存在で、複雑な光のパターンを描いて人々と幻惑する力を持っています。
美しい魔物ですが、同時に危険な存在であるとして人々はこの森へは立ち入らないようにしているのです。
ですので、その更に奥に存在する魔物についての情報がありません。
噂程度でなら、まるで白銀の鱗に覆われた竜の如き存在が目撃されたと聞いたことがあるのですが……流石にこの森に竜はおりませんので、それに似た何かということでしょう。私達はこれを『シルバーレイス』と呼んでいます」
精霊の試練に打ち勝ち、更には魔物たちを退け、あなたは見事エルフラワーを手に入れることができるだろうか。
アリアはどうやらそれを確信しているようで、あなたに前金となる報酬を渡すと微笑んだ。
「どうかお気を付けて。いってらっしゃいませ」
- ローラミスティと夢幻の花完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2024年01月12日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
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ローラミスティの森へと続く、それは秘密の小道であった。
進む度に精霊の気配が濃くなっていくのがわかる。それだけに特別な場所で、隠された場所なのだろう。
人々が森に入らないようにしていると言われているが、それを証明するかのように森の入り口で小道は途切れて止まっていた。
「花を手に入れる為に試練、か。
簡単に手に入れられるのが一番楽ではあるが、それはそれとして沸き立つものがあるのは確かだ。
では――張り切って越えさせてもらおう!」
やる気を十分に燃やして語る『傲慢なる黒』クロバ・フユツキ(p3p000145)。
『ノットプリズン』炎 練倒(p3p010353)がその様子ににやりと笑う。
「男たるもの試練に燃えるという所であるな」
「燃えないか?」
「わからないでもないである」
胸を張ってみせる練倒。
「実のところを言うと、夢幻の花には余り興味がないであるが竜の様な魔物は実に気になるであるな」
「というと?」
「覇竜以外で竜が存在する可能性があるかもしれないとなると調査せずにはいられないであるな」
「竜はいないと言われていなかったか?」
「可能性の話である。何事も調べてみないとわからないである」
「確かに、な」
『記憶に刻め』マニエラ・マギサ・メーヴィン(p3p002906)も開いた手帳を読み直しながら呟いた。
彼女が手帳に記していたのは、隠里の人間の中でローラミスティに入ったことのある人間への調書である。といっても、多くの者が幻惑の魔法にやられて探索を断念したりシャドウウィスプに敗北して逃げ帰ったりと散々なものであった。
それでも竜のような魔物シルバーレイスの噂があるということは、ある程度の所までは突破できた者が居たということの証左であった。
「突破するのにそこまで特別な力は必要ないはずだ。シルバーレイスは流石に問題になるだろうがな」
「…………」
その一方で、『願いの先』リア・クォーツ(p3p004937)は自分の身なりを確かめてから剣の柄に手をかけていた。
(精霊の守る地に踏み入るのなら、気合い入れていかないと
そうでないと、フォウ=ルッテと茨紋にぐちぐち言われるものね
まぁそれは別にいいのだけど、精霊達に舐められる訳にはいこないからカッコ付けていかないと
玲瓏公を……母さんの後を継ぐものとして、ね!)
思えば色々と背負う立場になったものだ。自分一人、自由気ままというわけにはいかなかくなってきた。
そんな想いでキリッとしていると、横で『ベルディグリの傍ら』ジルーシャ・グレイ(p3p002246)がほくほくとした顔をしていることに気付く。
「あら、なんだか楽しそうね?」
「わかる? アタシも職業柄お花をよく扱うから、『夢幻の花』なんて聞いたらワクワクしちゃう。どんな香りがするのかしら……!」
ジルーシャの扱う香術の巧みさからも分かるとおり、ジルーシャの花に関する興味は深い。
「それに、アリアちゃんの淹れてくれたお茶、味も香りも素敵だったわー♪」
「確かに……美味しくて良い香りのお茶だったわ」
目を瞑れば思い出せるほど、あれは美味しいお茶だった。花好きが高じてと本人は言っていたが、茶のセンスもなかなかの才能であると思う。
「それじゃ、張り切っていってみましょうか」
ローラミスティの森へと踏み込んでみると、一気にあたりの雰囲気が変わった。
静謐さ、それと同時にどこからか観察されているような気配。
特別な場所に踏み込んだのだと、イヤでも分からされてしまう雰囲気が森にはあった。
「精霊たちの守る森、素敵ね。
少しだけ元の世界で生まれ住んでた森を思い出しちゃうわ。
ま、今回は私は侵入するいわば『人』の立場なのだけど」
どこか昔を懐かしむ雰囲気で目を瞑る『優しき水竜を想う』オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)。
「何だかとっても穏やかな雰囲気。
油断してるわけじゃないけどこういうお話は久しぶりかな。
オデットはこういう森に住んでたの?」
「雰囲気は近いかもしれないわ」
「そっかあ……」
うーんと伸びをしてみるソア。
「近頃は大変なことばっかりでいやになっちゃうけど、たまにこういう素敵な場所に来れるからいいよね」
「ン……」
『水月花の墓守』フリークライ(p3p008595)が同意でもするかのように目をチカチカとさせた。
「精霊達 コンニチハ。オ邪魔シマス。エルフラワー 欲シイ 来タ」
語りかけてみるが、反応はない。
いや、厳密にはある。
精霊たちがこちらを試すような、見守るような、そんな雰囲気がずっと感じられるのだ。
まずは精霊たちの試練を乗り越えろということだろう。
フリークライたちは頷きあうと、ローラミスティの森を進みはじめた。
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精霊の気配を強く、そして近くに感じる。
オデットは森を進みながらオディール(凍狼の子犬)を召喚。嗅覚を働かせて幻惑の謎に挑戦してみた。
「どう、オディール?」
しばらく周囲の臭いを嗅ぎ取っていたオディールはハッと頭をあげた。五感を共有しているオデットにはその理由がすぐにわかった。かすかにだが、花の香りが道のように続いているのだ。
「もしかしたらこれが目印かも。ソアは何か感じる?」
「うーんとね……」
ソアは自らのギフト能力『森の王』を使って森のヒトならざるものへと語りかけていた。
「すこし、お邪魔するよ? ボクたちは用があるの。荒らしたりしないから先に行かせて」
精霊たちは兎も角、森の側はソアを歓迎する気持ちを表したようで、同じく花の香りが感じられた。
「この道を辿ったらいいみたい。でも気をつけて、途中に敵が現れるかもって」
「ふむ、確かに」
「嫌な旋律を感じるわ」
練倒とリアがそれぞれ反応した。リアは『幻奏のクオリア』で目の前にあるなんでもない森の風景から『感情』の旋律を、練倒は敵意の感覚をそれぞれ感じ取っていたのだ。
「幻惑魔法で隠れたつもりであるか!」
飛びかかり、回し蹴りを放つ練倒。
それに応じて姿を隠していた単体のシャドウウィスプが姿を現した。
リアが剣を振り抜き、魔術を発動。奏でられた魔法的な複音がシャドウウィスプの身体を激しく揺らす。
と同時に、クロバとマニエラも動き出していた。
マニエラは『アイゼルネ・ブリガーデ』を発動。数体の仮想兵が姿を見せたかと思うとシャドウウィスプめがけ槍を突き出す。
集中攻撃をうけたシャドウウィスプにトドメをさそうとクロバが死炎銃刀・黒刃を分離。銃剣の連射を仕掛けながら距離をつめると刀による斬撃を叩き込んだ。
シャドウウィスプは攻撃に耐えきれず、消滅した。
「こんなところか」
「ン 罠 マダアル」
進もうとするクロバたちを止め、フリークライが前に出る。
精霊の仕掛けた方向感覚を鈍らせる罠を感知したようだ。
コンパスを取り出してみると、針はぐるぐると回っている。
これでは方角を割り出せない……が、フリークライは慌てずにジルーシャのほうを見た。
「ん、任せて頂戴」
ジルーシャは特別な、『紅蓮のコンパス』を取り出してみた。通常のものと違ってしっかりと方向を示す針。
「感覚を惑わす魔術にも心得があるわ。皆、アタシについてきて」
ジルーシャは念のためにと目印にできる香水を自分の手首に垂らすと、手を振って皆を先導していった。
するとどうだろう。ぱっと開けた場所に出て、そこからは自然とできた小道が続いているではないか。
「ふふーん、どう? アタシたち、結構やるでしょ?」
森に向けて問いかけるジルーシャ。精霊たちがフフフと笑って手を振った……ような気がした。
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罠を抜ければ大歓迎、というわけではどうやらないらしい。
「歓迎は歓迎でも、こっちの歓迎ってわけか」
クロバは銃剣を突きつけ眼前を睨む。大量のシャドウウィスプが出現し、複雑な光のパターンを描きながらこちらを幻惑しようと待ち構えていたのだ。
「上等だ。相手になる!」
銃を連射するクロバ。対して光の連射で反撃してくるシャドウウィスプたち。
クロバは幻惑の魔術を受けるが、すぐに距離を詰めて『滅・虚ロ斬雪』を発動。元の世界でクオン=フユツキが用いた奪魂の殺戮技術だ。一太刀浴びせた途端に幻惑の効果が回復する。
「集団で出てきたってことは、こっちが必要ね。オディール、さがって!」
オデットは『ケイオスタイド』の魔術を発動。ぴっと指さした先に光のサークルが出現したかと思うと、湧き上がる激しい光がシャドウウィスプたちの運命を塗り替えていく。
反撃しようと光を放とうとするシャドウウィスプだが、それが次々に不発に終わっていった。
そんな攻撃を逃れたシャドウウィスプがせめて確実に攻撃をあてようとオデットに迫る――が、オデットとてそれを想定していないわけではない。
周囲の光を集め、輝く太陽の拳を作り出す。そして繰り出すオデットパンチは近づいてきたシャドウウィスプを一撃のもとに葬る威力であった。
「来なさい、リドル」
ジルーシャは自らの影からチャーチグリムを呼び出した。
漆黒の毛並は闇に溶け、真紅の双眸には業火が灯り。その牙は鋭い。駆け出したチャーチグリムはシャドウウィスプへと食らいつき弱点となる部位(?)を食いちぎった。
派手に食いちぎられたシャドウウィスプが反撃をしかけてくるが、ジルーシャは振りまいた香水の魔法によって光を屈折。防御する。
陽炎のように揺らめく姿の内側から次なる魔術が発動した。
特殊な木の根から採取されるという魔術的香りがシャドウウィスプたちの足元に出現したかと思うと、運命をその香りで塗り替えてしまう。
オデットがそうしたように、こちらのシャドウウィスプたちも攻撃が次々と不発に終わってしまったようだ。
ならばとトドメの一撃を放つジルーシャ。『《香術》バシリスクの睥睨』だ。
昏く重い香りを作り出し、蛇の王と呼ばれる存在を喚び寄せる。視線はシャドウウィスプたちを石へと変え、蓄積したBSの分だけ派手な爆発を起こして砕けていった。
そんなジルーシャたちを脅威と見なして集中攻撃を仕掛けてくるシャドウウィスプたち。
が、そうはさせまいとフリークライは間に割り込んで仲間を庇うと、自らを目立たせつつ仲間へ治癒の魔法を放った。
土壌となるフリークライの体表から花が咲き、花が散り、舞った花弁が傷口に触れた途端にそれを癒やす。
「ガーハッハッハ、その光は幻惑の効果があると聞いていたであるがスゥーパァーインテリジェンスな頭脳を持つ吾輩は惑わされぬである」
そんな中を突っ切っていくのは練倒だ。何発もの光の幻惑魔法を喰らっているが、精神耐性をもつ彼には効かない攻撃だ。
受けるダメージもフリークライによって治癒されていく。
「通してさえくれれば戦う必要はないのであるが邪魔をするというのなら正面から試練とやらを突破しようではないか」
シャドウウィスプたちが集合し、極太の光線を放ってくる。対象はフリークライだ。
それを庇うように立ちはだかる練倒。
手錠をはめた両腕を翳しガード姿勢をとると、光線を一人で受けきった。
「よく受けた」
マニエラが反撃の『アイゼルネ・ブリガーデ』を発動。
仮想の兵士たちが次々と召喚されたかと思うと、集合していたシャドウウィスプの集団へと殺到。手にした槍で攻撃を仕掛け始める。
「纏まってくるならば結構、全て薙ぎ払うのみ、近くのやつは……頼んだ」
「頼まれたー!」
ソアは『狩人の爪』を発動。むき出しにした虎の爪でシャドウウィスプを切り裂くと、止まらぬ連撃で次々とシャドウウィスプを切り裂いて行く。
反撃として放たれた光の乱反射を、しかしソアは腕でばしんを払いのける。幻惑の効果も、どうやらレジストできたようだ。もし幻惑されても仲間の回復に頼れば問題ないだろう。
「効かないよ!」
それそれ! と身体を高速回転させ爪での連撃を再び繰り出すソア。
そこへシャドウウィスプが集合してくるが、マニエラの『パラダイスロスト』が発動。シャドウウィスプたちは受けたBSによって混乱したのか味方打ちをし始める。
ぶん、とリアは剣をふり魔術を発動。まるで指揮棒を振ったかのように奏でられた魔術敵音楽が鳴り響き、煌めく五線譜が飛んで行く。
苦し紛れにシャドウウィスプが光を飛ばしてくるが、リアはそれを剣で軽々と弾いてしまった。よしんば直撃したとしても、高い抵抗力を有する彼女を幻惑することはできないだろう。
「この子たち程度なら、これで充分ね」
魔法的音楽がより大きく鳴り響き、飛んで行った五線譜がシャドウウィスプたちを次々に撃墜していった。
●
小道を進んでいくと、ついに開けた場所へとたどり着いた。
と同時に、シルバーレイスを発見する。
「む、これは……」
うなりをあげる練倒。シルバーレイスは白銀の鱗をもつ、竜のようなと言われても不思議でない容姿の――精霊であった。
周囲を観察してみると、保護結界めいたものが既にはられているのが感じられる。どうやらシルバーレイスが張った結界のようだ。
「よくここまでたどり着きました。最後の試練を受けなさい。さすれば、エルフラワーを得る権利を差し上げましょう」
「うむ!」
練倒は早速先制攻撃をしかけた。
「竜の様な魔物と聞いていたであるがその力が如何程であるか是非吾輩に見せてもらおうではないか」
放ったのは勿論『竜核活性・咆哮』。声に魔力を乗せて飛ばす衝撃波だ。
ゴオウと吠えた練倒の衝撃がシルバーレイスに伝わり、びりびりと周囲の空気までもが震える。
そんな中で飛び込んでいったのはオデットだ。
「――陽光の恵み!」
自らの魔力を剣の形に固め、そこへプリズムカラーの光を集めていくオデット。
オデット基準でいえばグレートソードにあたる大きな光の剣を作り出すと、それをシルバーレイスへと叩きつけた。
反撃に繰り出されたのは白銀の炎。いや光のブレスだった。
咄嗟に防御するオデットたち。
追撃はさせまいと、ジルーシャが『ケイオスタイド』の香術を発動。
土の香りがシルバーレイスを包み込むも、シルバーレイスはそれを翼を羽ばたかせることで払いのけてしまう。
「だったら――」
ジルーシャは一気に距離を詰めると、手首に香水を垂らして『アイン・ソフ・オウル』の魔術を発動させた。
二本指をスッと払うと光の刃が放たれ、強烈な斬撃となって走る。
シルバーレイスの白銀の鱗を貫通して打ち込まれた光は、ブシャアと血のごとき白い光を噴き出させた。
「私はか弱いからな、一撃は重くないだろう……が、何度も当たれば、いたいぞ?」
マニエラは『パラダイスロスト』と『鮮血乙女』の重ねがけ魔術を発動。巨大な血色の槍を作り出すと投擲。シルバーレイスに突き立った槍に、悲鳴のごとき声があがる。
「ふっふーっ、ボクたちはなんと本物の竜種となだって戦ったことがあるからね。何が出てきても後れを取るつもりはないよ」
そう言ってソアは『纏雷』を発動。本気モードとなったソアは紫電を後に引きながら強烈な爪の斬撃と回し蹴りのコンボをシルバーレイスへと叩き込んでいく。
ドガガガガと多段ヒットする爪の回転攻撃にシルバーレイスは呻き、再び光のブレスを放ってきた。
今度は直撃させまいと盾になるフリークライ。
自らの身体にバキバキとヒビが入る感覚が走るが、すぐに治癒の魔法を込めることで治療した。
どうやら『デウス・エクス・マキナ』を使うほぼの場面ではなさそうだ。が、回復を途切れさせたらこちらが一気に瓦解する。それだけの激しいダメージがフリークライを襲っていた。
その一方で、戦いは終わりをむかえつつあった。
リアが剣に纏わせた五線譜を振り抜くように放つと、『マグナス・オーケストリオン』の魔術が発動。煌めく五線譜がシルバーレイスへとぶつかり、次々と爆発を起こしたのだ。
「逃すと思うなよ――お前が試練として立ちはだかるのならば上等だ、この剣を以て征するまでッ!」
更にクロバが突進。剣を合体させ大型ガンブレード形態に変えると、シルバーレイスの首を切り落としてしまった。
ザッとブレーキをかけるクロバとリア。
交差した二人の後ろで、シルバーレイスは『お見事です』と呟いて消えていったのだった。
その後。
一行はフリークライの土壌にエルフラワーを植え替えると、ローラミスティの森を後にした。
花の保存状態の良さに依頼人のアリアが飛び上がって喜んだのは、また別の話である。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
――mission complete
GMコメント
●シチュエーション
精霊たちの守る不思議な森『ローラミスティ』へと挑み、夢幻の花を手に入れましょう。
●フィールド
・ローラミスティ
精霊たちの守る美しき森です。幻惑の魔法が常にかかっており、不用意に立ち入ると出てこられなくなるとも言われています。
その実体は精霊たちの住処であり、悪戯好きの精霊の罠や試練が待ち構える場所なのです。
●エネミー
・シャドウウィスプ
道中に多数出現するモンスターです。
光によってこちらを幻惑する能力があり、時には混乱等のBSがかかってしまうこともあるでしょう。
また、光を発射することで攻撃を行うとされています。
・シルバーレイス
白銀の鱗をもつと言われる未知の魔物です。
竜でこそないですが、竜に似た外見とかなりの強さがあると思われます。
エルフラワーを手に入れる際の最大の障害となるでしょう。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
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