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シナリオ詳細

グリボロスキーと夢の調べ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●『夢の調べ』
 水晶で作られたオカリナめいたこの美しい楽器は『夢の調べ』と呼ばれ、ポルナ霊樹集落において重要な意味をもつ。
 毎年精霊への感謝を述べる集落の祀りが行われる際に宝物庫より取り出され、巫女の演奏によって精霊への感謝が捧げられる。
 この楽器は儀式の道具であると同時に、人々と精霊を繋ぐ架け橋であり、そしてまた人々の心の寄りどころでもあるのだ。
「それが、グリボロスキーによって奪われてしまったのです。もうすぐ感謝の儀式が執り行われるというのに……」
 そう肩を落とし悲しげに語るのはポルナ霊樹集落の巫女、メディスである。
 ここ深緑は迷宮森林に位置するポルナ霊樹集落は、霊樹の恵みに生き、霊樹を支え暮らすという細々としながらも静かで安らかな生活が送られる平和な集落だ。
 そんな集落を精神的に支えている『夢の調べ』がなくなったとあれば、集落の者たちの心の乱れようも察することができる。
「グリボロスキーというのは――」
 と説明を加えてくれたのは、その場に同席した情報屋のザックスである。
「宝石のような瞳と羽冠をもつ鳥に似た亜人系モンスターのことだ。この辺りに生息していて人間とは相容れない。見つければ殺し合う関係……まあ、ゴブリンやオークのたぐいと考えて貰っても構わないだろう」
 グリボロスキーは見た目の美しさと数の少なさから好事家が剥製を求めたりすることもある程度にはモンスター界隈では有名で、美しいものを見つけるとそれを奪って住処に集めるという習性を持つことでも知られている。
「ま、光り物をあつめるカラスとかと一緒だな。それがちょっとしたガラクタ程度だったならよかったが、奪われたのが『夢の調べ』だったところが問題なんだ」
 どうやら『夢の調べ』を調律すべく技師のところへ持っていったその帰りに襲われ、奪われてしまったということらしい。
「どうかグリボロスキーから『夢の調べ』を取り戻してください。そうすれば、我々も心豊かに次の一年を迎えることができるでしょう」

 情報屋ザックスの話しによれば、グリボロスキーの洞窟はここから北にいった場所に存在するらしい。
 グリボロスキーは自然の力を操る能力があり、風の魔法や植物の魔法を使ってくる。
 またグリボロスキーは『舞う鳥』を意味する古代語でもある。その名の通り美しく舞うように戦い、手にした武器などでこちらを翻弄するように動くこともあるということだ。
「とはいえグリボロスキーが脅威なのは一般市民にとってのみの話でな。結構なレベル帯にいるローレットのイレギュラーズからすればそこまで脅威にならないだろう」
 ザックスは煙草を吸おうとしてポケットに手を伸ばし、ここが深緑内であったことを思い出して手を止めた。
 代わりにというべきかジャーキーを一本取りだして口にくわえる。
「洞窟の見張りを倒して内部へ進入。出てくるグリボロスキーたちを倒しながら奥へと進み、奴らの宝物庫にあたる場所から『夢の調べ』をゲットして帰ってくればOKだ。
 あー……しかしグリボロスキーにはいわゆる女王(クイーン)がいてな、そいつは一般のグリボロスキーと比べてかなり強力らしい。
 宝物庫までいくとなると遭遇する可能性もあるから、充分に注意しておいてくれ」
 情報は以上だ、といって巫女より渡された報酬のコイン袋を取り出してみせるザックス。
「これも仕事といっちゃあそれまでだが……集落の奴らの平和のためってのも、まあ悪くはないよな。いわゆるひとつの人助け、ってやつさ」

GMコメント

●シチュエーション
 亜人魔物グリボロスキーの洞窟へ突入し、霊樹集落の宝『夢の調べ』を取り戻しましょう。
 洞窟内で迷わないための工夫ややや長期戦向けの備えがあると安心して戦っていけることでしょう。

●フィールド
 グリボロスキーの洞窟。
 亜人系モンスターであるグリボロスキーは人間よりも背が低いものが大半ですが、クイーン種になると人間よりも巨大となります。そのため洞窟も普通に歩いて通れる程度の広さがあります。
 ちなみにグリボロスキーたちは夜目が聞くため灯りのようなものはほとんどありません。ランタンなどの持ち込みを推奨します。

●エネミー
・グリボロスキー
 亜人系モンスターです。宝石のような瞳と羽冠が特徴で、風と植物の魔法を扱います。
 また格闘センスも高く、舞うように戦いこちらを翻弄するといわれています。

・グリボロスキークイーン
 いわゆるグリボロスキーの女王的存在であり、洞窟の主です。
 宝物庫を目指して進む関係上どこかで出くわすことになるでしょう。場合によっては宝物庫=クイーンの寝床なんてこともありえます。
 クイーンは一般的なグリボロスキーとは比べものにならないほど強力であり、風と植物の魔法を巧みに扱うほか、非常に高い回避や抵抗力をもつと言われています。
 クイーンと戦う際は取り巻きのグリボロスキーにも注意しつつ、仲間と協力して挑みましょう。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • グリボロスキーと夢の調べ完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2024年01月02日 22時15分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

クロバ・フユツキ(p3p000145)
深緑の守護者
ツリー・ロド(p3p000319)
ロストプライド
アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)
灰雪に舞う翼
ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)
月夜の蒼
ルナール・グリムゲルデ(p3p002562)
片翼の守護者
ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)
奈落の虹
ソア(p3p007025)
無尽虎爪
モカ・ビアンキーニ(p3p007999)
Pantera Nera

リプレイ


 洞窟へと至る道を進みながら、『月夜の蒼』ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)は依頼書を改めて読み直していた。
「どこにでも厄介事は湧いてくるねぇ。
 さくさくと回収したいところだけど、グリボロスキーが持ってっちゃったと。
 うーんまあ仕方ない、手早く制圧して祭器を返してもらおうか。
 今回は殲滅がお達しじゃないし。戦意を失ってくれれば追撃はしないでおこう」
「あぁ、うん。何時も通りと言えばそうだが、相変わらず難儀な仕事が多いな?」
 話を聞いて肩をすくめる『片翼の守護者』ルナール・グリムゲルデ(p3p002562)。
「難儀じゃない仕事なんてあった?」
「たまにはあっただろう?」
 なんてやりとりを交わしつつ、一方で『傲慢なる黒』クロバ・フユツキ(p3p000145)はやる気十分といった様子だった。
「集落の宝は取り返させてもらおう」
「相手はだいぶすばしっこい連中らしいが?」
 『Pantera Nera』モカ・ビアンキーニ(p3p007999)の言葉に、なあにと不敵に笑うクロバ。
「上等、俺はそういう手合いの相手は強い方だ」
「なるほど。頼りにさせて貰うことにしようか」
 グリボロスキーは洞窟に住まう亜人系のモンスターであるらしい。
 動きはすばしっこく、舞うように戦う姿とその見た目の美しさから若干特別視されることもあるとか。
 ルーキスが積極的に殺そうとしないのも、あるいはそんな理由かもしれない。
「けどやってることは悪いことだね。カラスみたいな習性と言えばそうだけど……大きさも大きいし、ヒトを傷つける力だってあるし」
 『灰雪に舞う翼』アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)の言葉はもっともだ。
 実際グリボロスキーは人間に敵対的なモンスターであることは変わりない。共存共栄という関係では決してないのだ。話し合いは通じないし、殺し合うことしかできない。
 その一方で、『カースド妖精鎌』サイズ(p3p000319)は『夢の調べ』について思いを巡らせていた。
「聞いた感じ水晶で作られたオカリナか……話を聞いた感じは特別な力はなさそうだな……」
「さあ、そうとも限らないよ」
 と返したのは『奈落の虹』ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)。
「まあ、極めて特別っていうんなら事前にそう説明されるだろうけれどね。特別な祭事に使われ続けてるなら、多少なりとも力がこもっているかもしれないよ。
 あとは……『思い入れ』とか、かな」
 ウィリアムのいわんとすることは、人の世では往々にしてあることだ。確かに水晶のオカリナなら作り直せば良いだけかもしれないが、それだけでは収まらない何かがあるからこそこうしてローレットへ依頼が回ってきたのだろう。
「それにさ、『夢の調べ』以外にもお宝があるかもしれないよね」
 光り物を集める修正が良い方に働けば、確かに宝石のような高価な品が見つかる可能性だってある。
 ソアはそんな期待に胸を膨らませているようだ。
 言っても魔物の巣なので期待はもてないが、宝物庫という言葉の響きがソアをワクワクさせるのである。
「おーたっから♪ おーたっから♪ あ、ついた!」
 そんなこんなで気付けば、一同はグリボロスキーの巣の前までたどり着いていたのだった。


「これでよし」
 洞窟の見張りをしていたグリボロスキーにモカが気配を殺して近づき、よそ見をしている間に残像が生じるかのようなスピードで蹴りを繰り出し鎮めてしまった。
「他に見張りはいないらしいな。皆、洞窟へ入ろう」
 彼女たちの作戦は単純明快。巣の中をずんずん進んでいって総当たりで宝物庫を探そうというものだった。奇襲をするつもりもないので、あえて声を出して相手をおびき寄せる。
「ピピーイ!」
 甲高い声をあげてグリボロスキーが洞窟の奥から走ってくるのを、クロバは暗視能力でとらえていた。
「普通のグリボロスキーだな。だったら――」
 『死炎銃刀・黒刃』を分離させ、刀と銃剣による二刀流モードへとチェンジ。
「――裂・掠風花」
 舞うように飛びかかってくるグリボロスキーの鉤爪を弾くことで構えを崩し、深く踏み込んだクロバは至近距離からあ銃剣による斬撃を叩き込む。
 すぐに追撃に入るサイズ。
 『ソリッド・シナジー』と武器の本能が勝手に纏ってしまうという『冬白夜の呪い』で自己強化をはかると、『黒顎魔王』を放った。
 サイズの黒顎魔王がグリボロスキーを吹き飛ばし、洞窟の岩壁へと叩きつける。
 グリボロスキーはそれで力尽きたが、物音に気付いて集まってきた別のグリボロスキーが植物の魔法を行使。伸びてきたツルがサイズやクロバに絡みついて動きを阻害する。
 サイズはそれを切り払うと、再び黒顎魔王をはなって反撃を図った。
「これはどうかな」
 サイズは予め作っておいたキラキラするアクセサリーを放り投げる。グリボロスキーは一瞬そちらに気を取られ、その隙を突いてクロバとサイズは同時に攻撃を仕掛けたのだった。
「よし……と」
 クロバは洞窟の中で迷わないように壁に印を刻み込む。
「宝物庫っていうのはどういう場所なんだろうな。ボス部屋とイコールじゃないよな?」
 地面のすれ具合を確かめながら行く道を考えるサイズ。
「行ってみないとわからないが、罠には注意しておけよ?」
「だね、植物を使った罠があるみたいだ」
 モカとウィリアムがそれぞれ先導し、植物をつかった罠を解除していく。
 勿論罠は単体で作動するものでなく、それに連動してグリボロスキーが襲いかかるなどの利用がなされているようだ。物陰から飛び出してきたグリボロスキーが翼を羽ばたかせるような動きをすると、風の魔法が発動。真空の刃がモカを襲った。
 斬撃をまともにくらいつつも、反撃の『黒豹疾駆撃』を繰り出していく。
 モカの長い脚がグリボロスキーを蹴り飛ばし、返す刀ならぬ蹴りが別のグリボロスキーを突き飛ばす。
 何体も纏めてくるのが厄介なところだ。
 ウィリアムはといえば素早く後方へ離れ、『ソリッド・シナジー』で効率化した『ケイオスタイド』を発動。ウィリアムが地面にぺたりと触れると、遠隔で発動した魔方陣が穢れた泥の地面を生成。蹴り飛ばされたグリボロスキーたちが取り込まれ派手に転倒する。
「チャンス、かな」
 一体がそれで力尽きたのを確認すると、ウィリアムは素早く前に出て手のひらを翳した。
 巨大な魔方陣が眼前に出現したかと思うと、『フルルーンブラスター』の砲撃が至近距離で浴びせられる。
 その衝撃たるや、グリボロスキーが消し飛ぶレベルだ。
 そんな物音に反応して更に集まってくるグリボロスキーたち。
 ルーキスとルナールな顔を見合わせ、そして素早く対応を始めた。
「さて、仕事といきますか」
 ルナールは集団の注意を引くような形で『ブレイズハート・ヒートソウル』を発動。更に『レオパードヴァラー』を発動させて大量の魔法の攻撃をその身に浴びた。
「さ、足止めはお願いするよルナール先生! お兄さんのちょっと良いとこみーてみーたいー!」
「足止めも俺の仕事の一部だからな、任せておけ……良いとこが見せられるかは分からんがね」
 ルナールが簡単に倒せないと知るや、グリボロスキーたちは翼に真空の刃を纏って舞うように斬りかかってくる。
「おお、これが仕事で良かった。実にうちのルーキスの興味を刺激する見た目の敵だな?
 こんな仕事じゃなかったらコイツらを持って帰ると言い出しかねない……」
 一方でルーキスは『ソトースの銀鍵』を発動。発動した魔方陣に鍵をかけるかのような動作をした次の瞬間、激しい歪みがグリボロスキーたちを襲う。脚や腕をねじられその場に倒れるグリボロスキーたち。
「さて、どう向かってこようが問題はないさ。
 対範囲戦であれば専売特許だ、嫌という程味合わせてあげよう」
 ギリギリ生き残ったグリボロスキーがルナールへ斬りかかるも、ルナールはそれを手のひらで押さえつける形で防御。『グラシア・メンシス』の銃身を突きつけると、零距離で打ちまくった。
 痙攣するように踊るグリボロスキー。
 その姿にトドメを刺すべく魔術の球を発射するルーキス。貫かれたグリボロスキーはぐったりと倒れ、動かなくなったのだった。

「うーん、ここさっきも来た気がする?」
「確かに、印がついているな」
 クロバのつけた印を見つけ、ソアは目をぱちくりとさせた。暗視スキルを発動させているので印がばっちり見えるのだ。
「ぐるっとまわる構造になってたみたいだね。どう思う?」
 アクセルに問いかけられ、ソアはうーんと唸る。
「急ぐ話ではないから、しらみ潰しにしても良いのだけれど……。
 でも、外敵が入ってきたら、宝物庫やクイーンのこと当然守ろうとするよね?
 新しい足跡が集まっていく先があれば、それがきっと当たりだと思う」
「うん、いい考えだと思う。足跡を探ってみようか」
 アクセルは先ほどから暗視と透視のスキルを発動させてグリボロスキーの奇襲に備えてくれていた。物陰から飛び出したグリボロスキーに手痛い攻撃を食らっていないのはそのためである。
「そろそろエコーロケーションが済んだ頃じゃない?」
「ん、そうだね」
 アクセルが振り返ると、ウィリアムが頷いて頭をとんとんと叩いた。
「洞窟内の構造は大体分かってきたよ。もう迷わないと思う」
「てことは――」
 ソアの問いかけに、アクセルたちがこくんと頷く。
「宝物庫はきっとこっちだ!」
 進む先。それを守るように待ち構えていたグリボロスキーたちが植物の魔法を唱えた。壁からはえた花が毒を吐き出す。
「わぷっ!」
 毒をくらったソアだが、そんなことで動きが止まったりなどしない。受けた毒の威力を二段階にわたって緩和させると、ソアは毒の魔法を唱えたグリボロスキーへと爪の攻撃を放った。
 飛び出す一瞬に紫電のスパークが走る。
 更にアクセルが『神気閃光』を発動。次なる攻撃を回避しようとしたグリボロスキーめがけ指揮棒を振り抜くと、無数の閃光がホーミング弾のように飛んで行ってグリボロスキーへと着弾、爆発していく。
「さあ、この先だよ!」
 アクセルが踏み込んだその先には――。


 しつらえたかのように広い空間が広がっていた。
 真っ暗な空間だというのに、まるで煌めいて見えるようなそれは、グリボロスキークイーンの存在によるものだ。
 グリボロスキークイーンはばさりと翼を羽ばたかせると黄金の煌めきを放つのである。
 そしてグリボロスキークイーンの後ろには、沢山のキラキラしたガラクタが転がっている。
「ここが宝物庫……クイーンはそこで待ち構えてたってわけだね」
 ソアが構え、そして早速走り出す。
「こいつさえやっちゃえば後は楽だよね?」
 対するグリボロスキークイーンは『ピピーイ』と甲高い声を発して取り巻きをけしかけると、自らも風の魔法を唱え始める。
 無数の風の刃がソアを襲うが、それをソアは気合いではねのけ急接近。爪による『ミキサー』を繰り出した。
 高速回転から繰り出される爪の連続斬撃を受け、羽毛でそれを軽減させるグリボロスキークイーン。更なる攻撃を仕掛けるべくモカとサイズが追撃に出た。
「全力を出さねば対抗できないだろうな」
 モカは『デスティーノ・コイントス』で自らを強化すると、相手の至近距離まで一瞬で移動し『胡蜂乱舞脚』を繰り出した。
 その猛烈な連続キックを舞うような動きで受け流していくグリボロスキークイーン。
 サイズは『ソリッド・シナジー』を自らにかけ直して強化すると、『黒顎魔王』をグリボロスキークイーンへと放った。
 翼を交差させることで攻撃をガードするグリボロスキークイーン。
 バッとその両腕を広げた途端、周囲に大量の花が咲いて神経毒をばらまき始める。
 モカとサイズは毒を受けたが、それを見ていたアクセルが治癒魔法で対抗。二人の毒を解除していく。
「気をつけて、相手は巧みに魔法を使ってくるよ!」
「ピピイッ!」
 再び甲高い声が響いたかと思うと、サイズやモカめがけて取り巻きのグリボロスキーたちが殺到し始めた。
 流石にこの数を相手にするのは骨が折れるだろう。
 そんなときに前に出たのはルナールだった。
 『ブレイズハート・ヒートソウル』を放り込んで注意を引くと、間へ割り込んで防御を固めた。
 腕に風の魔法で刃を纏って次々に斬りかかるグリボロスキー。ダメージがかなりかさんでしまったが、ルナールは自力で回復を図る。
「あぁ、この手の回復まで使い出すと本当に器用貧乏極まれりってヤツだな?」
 それだけではない。白銃で至近距離から銃撃を叩き込むとグリボロスキーを一匹ずつ倒して行く。
「足止めと露払いは私達に任せてもらって大丈夫」
 ルーキスはそこへ『ソトースの銀鍵』や『ケイオスタイド』を次々にぶち込んで殲滅すると、グリボロスキークイーンへと向き直る。
 ルーキスを遠距離型だとみたグリボロスキークイーンが一気に距離を詰めてきたのだ。
「それは大きな勘違いだよ」
 ルーキスは『禍剣エダークス』を発動。高純度の魔力を凝縮。宝石を核として仮初の剣へ凝華させる。
 グリボロスキークイーンが自らの失敗を察した時にはもう遅い。
 一閃と同時に魔力を暴走させ、砕け散る剣の爆発がグリボロスキークイーンを吹き飛ばした。
 派手に飛ばされ、ごろごろと地面を転がるグリボロスキークイーン。
 だがすぐにおきあがって風の魔法を発動させた。
 仲間たちへと大量の『風の砲撃』がぶつかり、その身を吹き飛ばしていく。
 そんな中を駆け抜けたのはウィリアムだった。
 『熾天宝冠』と『クェーサーアナライズ』で仲間の治癒を行いつつ、グリボロスキークイーンへと接近。
 グリボロスキークイーンが風の刃を羽根に纏わせ斬りかかろうとするその一瞬。
 ウィリアムは魔力による障壁を展開してグリボロスキークイーンの斬撃を弾いた。
「――ッ!」
 突き出す手のひら。広がり展開する魔方陣。
 至近距離から繰り出される『フルルーンブラスター』がグリボロスキークイーンを吹き飛ばす。
 更に飛び込んでいったのはアクセルとクロバだ。
「オイラが回復で支える。飛び込んで!」
 アクセルは持ち前の治癒の魔法を唱えると、指揮棒型の杖を大胆に振った。
 五線譜状の光がクロバへと纏わり付き、治癒の力を発動させる。
 グリボロスキークイーンが苦し紛れに放った大量の風の刃がクロバへと突き刺さるが、それを次々に治癒していく。
「リズムを読んで! ダンスの要領だよ!」
「避けようと思っても遅いぜ、この剣戟はお前の運命を捉える一閃だ――避けられるはずがないだろう!!」
 回避しようと飛び退くグリボロスキークイーンだが、二刀を合体させた『死炎銃刀・黒刃』による『終ノ断・生殄』を繰り出した。
 凄まじい命中精度で繰り出された刃から、グリボロスキークイーンは逃れることが出来ない。
 まるでそうなることがずっと前から決まっていたかのように、クロバの剣はグリボロスキークイーンの首へと吸い込まれていく。
 そして、すぱん――と首をはねとばした。


 それからはもう大変だった。
 クイーンの死によって発狂し集まってくるグリボロスキーたちを相手取って時間を稼ぐ間、サイズがガラクタの山の中から『夢の調べ』を捜索。なんとか見つけ出した後は洞窟のなかを強行突破で抜けていくという派手な逃走劇があったのだった。
「ふう、もうちょっと楽だったらなぁ。ルナール先生もお疲れ様、流石に長丁場はしんどいねぇ」
「楽な仕事なんて滅多に無い、気がするな? そんな仕事があれば喜んで夫婦で行きたいところだがね」
 ルーキスとルナールはそんな風に言い合い、ソアはお宝が眠っていたかもしれない宝物庫(厳密にはその洞窟)を残念そうに振り返る。
「あーあ、お宝あったかもしれないのに」
「まあ、所詮はカラスのようなものだ。ガラクタだけだったろうさ」
 モカがクールに言い切ると、ウィリアムも苦笑してそれに同意した。
「それで、『夢の調べ』はどう?」
「よくは分からないけど、ちょっと魔法の力は感じるかな。壊れてたら修理しておくよ」
 サイズが『夢の調べ』を手に言う。
「何はともあれ、目的は達成したわけだ。お宝集めは残念だったけど」
 クロバが苦笑して肩をすくめ、アクセルがそれに同意するように頷く。
「それじゃ、集落に帰ろうか!」
 こうして、彼らはポルナ霊樹集落へと戻っていったのだった。
 グリボロスキーの巣の中には、今だガラクタが沢山詰まっている。そこに高価な宝石が埋まっているかもしれないという、ひとつまみの浪漫を残して。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete

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