シナリオ詳細
<ラケシスの紡ぎ糸>花園へ通ずる道
オープニング
●
近い将来、世界は滅亡する。
外れることがないざんげの神託によって、無辜なる混沌の消滅は確定づけられてしまった。
この世界から、あるいは外の世界から呼び寄せられてイレギュラーズとなった者全て、等しくその滅びからは逃れられない。
それでも、滅びを蓄積させる魔種による凶行をイレギュラーズは幾度も退けてきた。
討伐させるべき敵はもう僅か。
未来を変える為、イレギュラーズは戦い続けなければならない。
混沌の滅亡が近い。
――ラサに現れる変容する終焉獣。
――終焉獣に憤るとみられる大樹ファルカウ。
――鉄帝に出現した奇妙な塔。
滅びの予兆は混沌中に出現する終焉獣だけではなく、特定地域に特定の異変が起こっている。
「覇竜にも異変が起こっているのは周知のとおりです」
『穏やかな心』アクアベル・カルローネ(p3n000045)は逃れようもない滅びに立ち向かうメンバー達に何とか抗う為の術を……依頼を探して提供する。
各地に出現するそれらを討伐することで、少しでも滅びを先送りできるはずだ。
「もちろん、その原因を叩く他ないのはわかっているのですが……」
滅びの元凶が直接動き出したならその限りではない。
その情報を得る為の時間を稼ぐ為にも、終焉獣を始めとした敵をできる限り叩いておきたい。
さて、改めて今回の依頼だが、覇竜の北に位置するデポトワール渓谷へ向かいたい。
「現状、ヘスペリデス北部、ヴァンジャンス岩山、そして今回向かっていただきたいデポトワール渓谷は強力なモンスターが生息しています」
ただ強いだけならわざわざ向かう必要はないが、昨今は終焉獣に滅びのアークに侵された亜竜……滅気竜が跋扈しているというから、放置できない。
覇竜観測所から入った報告によれば、ダンゴムシのような幼体の星界獣数体に人型の星界獣、それに滅気竜となった亜竜ランドイールが複数。
それらが一隊となり、南下して覇竜を目指しているのが確認されたという。
「すでに、カレルさん、シャインさんのペアが向かっています」
その2人だけで滅気竜に立ち向かうのは向こうみずにも程があるのではと指摘する者もいたが、そこは弱いながらも未来視の力を持つアクアベルだ。
彼女達の行く末をしっかりと視て、何が起こるかを伝えてから送り出しているという。
「現地で彼女達が待っています。できれば早く合流してあげてください」
微笑むアクアベルはそこで共に待つ、非常に心強い存在についても明かしたのだった。
●
花畑が広がるヘスペリデスより北。
荒廃した土地の広がる山肌を越えたイレギュラーズ一行はやがて多数の魔物の死骸が転がる渓谷に至る。
デポトワール渓谷、ここもまた凶暴な生物が多数棲息している。
腹を空かせた野生のモンスターどもが根城としており、この地へ迷い込んだ弱き生物を狙い、あるいは近場へと獲物を求めて徘徊しているのだそうだ。
グルルルル……。
アオオオォォォ、オオオオォォォ……。
どこからか聞こえてくる唸り声や遠吠え。
ひどく足場の悪い渓谷を進んでいたメンバーの前方に、獣を警戒する亜竜種少女ペアの姿が。
「待ってたよ」
「よかった、来てくれたのね」
『シェインの相方』カレル・タルヴィティエ(p3n000306)、『カレルの相方』シェイン・ラーティカイネン(p3n000307)は揃って笑顔を見せる。
変わらず寄り添い、仲良く手を繋ぐ2人を微笑ましく見ながらも、さらにその奥、周囲から聞こえる魔物の声に陰鬱として顔を顰める男性の姿に、メンバー達は気づく。
「……貴様らか」
一言、短くそう告げたのは、竜種、将星種『レグルス』ティフォン。
そして、傍には大柄なヒルの姿をした明星種『アリオス』ラードンの姿も。
「ティフォンどの、そろそろ限界かと」
竜種2人が威圧して止めていたのは、情報にあった獣の一隊。
「「…………」」
鳴き声こそ上げぬが、節足動物を思わせる岩を纏った幼体の星界獣に、人型の星界獣。
そして、さらに奥には電気ウナギのような滅気竜。
ランドイールと呼ばれる亜竜が滅びのアークによって変異したそれらは強力な電流を操るようになり、体格もあって暴れればそれだけでがけ崩れの恐れがあるのが面倒だ。
「こんな連中を花園へと入れるわけにはいかぬ」
「お供します」
前方へと向かっていく竜種達はハナから星界獣は相手にせず、危険な滅気竜だけに目標を見定めて攻め入る。
見る見るうちに竜の姿へと変わっていくティフォン。
それを、ラードンも追う。
竜種らが滅気竜のうち3体を奥で押し留める形となるが、それでも彼らの侵攻を避けた星界獣や、2体の滅気竜がこちらへとやってくる。
「竜種の2人はこうなることを想定していたよ」
「だから、わたくし達を抑えにしかったの」
カレル、シェインが戦闘態勢をとりつつメンバーへと告げる。
竜種達はほとんどこちらに気を払うことはない。
だが、逆に言えば、彼らは花園……ヘスペリデスへの道を守ることをイレギュラーズへと託したということ。
彼らの期待を無碍にするわけにはいかない。
まして、相手が混沌を滅ぼす存在ならば、イレギュラーズとしても見過ごせはしない。
「では、わたし達もいこうか」
「失望されないよう、踏ん張りませんと」
亜竜種少女ペアが主張するように、この場の敵を通さぬよう、イレギュラーズもまた身構えるのである。
- <ラケシスの紡ぎ糸>花園へ通ずる道完了
- GM名なちゅい
- 種別通常
- 難易度HARD
- 冒険終了日時2023年12月31日 22時35分
- 参加人数8/8人
- 相談6日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
(サポートPC1人)参加者一覧(8人)
サポートNPC一覧(2人)
リプレイ
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左右を岩壁で遮られる中で続くデポトワール渓谷。
普段から崖崩れが時折起こっているのか、足元も大小の岩が多数転がっており、足場はすこぶる悪い。
ヘスペリデスを出てしばらく、足場の悪さもあって多くのメンバーが低空飛行しつつその谷間を進むと。
「カレルさんとシェインさん、無事でよかった……!」
「気遣い嬉しいよ」
「今回はよろしくね」
喜びの声を上げる『【星空の友達】/不完全な願望器』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)に、カレル、シェインの2人は笑顔で答える。
そして、その2人が指し示す先にいたのは、2人の竜種だった。
「ティフォンとラードンが動いてくれてるのもありがたい」
ヨゾラが言うように、片方は人型をした男性、将星種『レグルス』ティフォン。
そして、巨大なヒルを思わせる明星種『アリオス』ラードンだ。
「よぉ、アルディ! 元気にしとったか! 今回もよろしゅう頼むぜよ!」
『藍玉の希望』金熊 両儀(p3p009992)がティフォンへと声をかけたが、それは違う竜種の名。
やや不機嫌な顔をするティフォンに、両儀は「こりゃ失敬!」と豪快に笑って返す。
「ラードンさんは森で戦って以来か、久しぶりだな。今度は協力できて嬉しいよ」
戦場となるこの一帯を広域俯瞰する『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)の呼びかけに、ラードンも小さく唸って応じる。
「しかし……ここにまで終焉の勢力が来るとはな」
そして、足場の悪いこの場で敵対する戦力をイズマは確認する。
敵は9体。
電気ウナギの如き亜竜……いや、滅気竜5体に、人型1体と甲殻類3体を思わせる星界獣どもだ。
ドラネコリーちゃんから戦場を見下ろす『相賀の弟子』ユーフォニー(p3p010323)は、両サイドの崖が崩れるリスクなどないかと考える。
「敵の意図的破壊まで防げないけど……」
ヨゾラは竜種や自分たちの攻撃の余波による崖崩れを防ぐべく保護結界を展開する。
他にも、『竜剣』シラス(p3p004421)やイズマも同様に結界を張って崖崩れを防ぎにかかっていた。
その間に、竜に姿を変えたティフォンとラードンは前に出て、滅気竜3体を奥へと押し留める。
ただ、残りは彼らをすり抜け、こちらへと向かってくる。
こちらを一顧だにせぬ竜種達は、イレギュラーズに花園へと続くこの道の防衛を託したのだ。
「これはまたずいぶんと信頼されて――ふふ、なんとしても応えないとですね!」
「花園も他の場所も滅んでいい場所ではないのだから、守らなくてはな」
『奏でる言の葉』柊木 涼花(p3p010038)はこの状況に、やる気を燃え上がらせる。
イズマもまた頑張ってみせるとやる気になっていた。
「ベルゼーが築き上げた想いは竜種達に浸透して広がっているってことかな?」
「僕も頑張るよ……!」
微笑む『血風旋華』ラムダ・アイリス(p3p008609)もまた託されたからにはと気概を高めると、ヨゾラもいつも以上に魔術紋を強く輝かせていたようだ。
「まさか本物の竜種と当たり前に共闘する日が来るとはな」
思えば、遠くへきたもんだとシラスはしみじみするが、敵を前にそう長く感慨に耽ってもいられない。
「覇竜の地は譲りません。譲らないって言ったら譲りません。竜種のおふたりからの信頼だって裏切りません」
ユーフォニーもまた、ここを護るのは私達ですと、語気を強めていた。
向かい来る敵は竜種のおかげで6体まで減っている。
その中で、両儀は今回も面白そうな敵との戦いだと笑みを浮かべて。
「よし、決めた! 儂ぁ、1番歯応えがありそうな、アイツば相手にするぞ!」
両儀の見定める人型星界獣は、シラスもまた敵視しており、2人で応対する。
「お手伝いしに来たで」
そこに、『晶竜封殺』火野・彩陽(p3p010663)が駆け付け、素早く戦況把握に努める。
カレル、シェインもまたこの戦いに加わるようだ。
「カレルさん、シェインさん。ボクといっしょにあれやっつけよー!」
『無尽虎爪』ソア(p3p007025)が狙いをダンゴムシのような幼体星界獣へと見定めると2人は揃って頷く。
「さて、獣共……この先に広がる花園にキミ達はお呼びじゃない……疾く斬滅してあげるよ?」
不敵に笑うラムダは魔導兵器に手をかけて。
「さぁ、お仕事の時間だ」
不気味に唸る竜と獣へと、イレギュラーズは一気に飛び出す。
●
竜種らは滅気竜と激しい攻防を始めていて。
グオオオオオオ!!
アオオオ、オオオオオ……!
大地を揺るがさんばかりの体躯を持つ者達だ。
下手に立ち入ろうとすれば、それだけで体を潰されかねない。
ラードンもその身をもってランドイールを食い止めるが、2体を抑える異形の竜ティフォンはさすがだ。
(まぁ、支援なんて必要はなさそうだけどね?)
こんな輩に少しの時間であろうとも、この地を荒らされるのは嫌だろうと竜種らの気持ちを察するラムダは自分達の請け負う敵へと意識を向ける。
そんな竜種らにヘスペリデスへの道の防衛を任されたイレギュラーズ。
大剣を所持する中性的な人型をした星界獣には、シラスと両儀が向かう。
その剣技は誰かのものを模しているようにも感じられたが……。
「さて、イレギュラーズの誰を真似たやら」
呟きながらも、シラスは集中して内なる魔力を増幅させる。
そのまま、シラスは距離をとりつつ近術と格闘術式を合わせて攻め立てる。
殻のような肌へとダメージを与えていくのはもちろんだが、内部を痺れさせ、態勢を乱すことこそシラスの真なる狙いだ。
(これで両儀の攻撃もより深く刺さるようになるはず)
シラスの思惑通り、両儀が嬉々として人型星界獣へと近づく。
「中々に強そうじゃけぇ、ワクワクするぜよ!」
そいつは実際に、大剣を軽々と操り、両儀に叩きつけようとしてくる。
(そういえば、人型星界獣……食ったエネルギーの元の持ち主に似た姿になるらしいけど)
離れた場所からそいつを観察するヨゾラは、その姿が誰のものを模したのだろうかと気になっていた様子。
自分のものではないと確信するヨゾラは少なからず苛立つが、この場は交戦する2人に任せることに。
その武技は誰のものか特定が難しいが、星界獣としての生態に両儀は着目して。
「なるほど、中々の甲殻、生半可な攻撃なら通りそうに無いのぅ……普通なら、な?」
だが、両儀が挨拶代わりにと鬼の膂力による一撃を叩き込む。
手応えは十分と口元を吊り上げた両儀が紅黒の大太刀を叩きつけた場所にはすでに亀裂が走っていた。
少し距離を置き、岩を砕きながら進行するランドイール2体を他メンバーが食い止める。
「動きはこっちで止めとくから全力出してきてな!」
サポーターの彩陽がメンバーへと叫びかけ、力を込めた矢を連射してランドイールを纏めて射抜き、刹那動きを止めてみせた。
「覚悟しいや。一回たりとて動かしてやる気はないからな」
「そうですね、動きを止めませんと」
ユーフォニーもまた彩陽と同じことを考えており、ランドイールを食い止めにかかる。
何せ、全長5mもある元亜竜だ。
渓谷で暴れられるだけで周囲の崖が崩れる危険すらある。
加えて、仲間達にも多大なる被害を及ぼすことだろうとユーフォニーは踏む。
駆け出すユーフォニーは桜舞うように炎を操り、ランドイールの体を焼く。
だが、滅気竜も強大な力を秘めており、それらに抵抗した上で反撃の電撃を放ってくる。
「お前達の相手は俺だ、かかってこい」
相手へと名乗りを上げるイズマはすでに幻想を纏い、魔力障壁を張っている。
反動ダメージもあるが、さほどでもない。
巨躯の相手だろうと、イズマは真っ向からその力に立ち向かう。
その間にプロトコル・ハデスを発動し、破滅の魔眼を開くラムダがつかず離れずランドイールを攻め立てる。
ラムダの極技が冴え、幾多の剣閃がランドイールの体のあちらこちらから体液が迸る。
(やはり、ランドイール2体は先に倒したいところだね)
星界獣も厄介とあって、ヨゾラは広域の敵を捉える。
「呑み込め、泥よ……僕等の敵を全て飲み干せ!」
詠唱の間に、念の為とヨゾラは竜種2人を巻き込まぬよう範囲を調整してから、術式を発動させる。
混沌に揺蕩う根源的な力。
それが煌めく星空の如き泥となって敵陣へと浴びせかかった。
…………!!
それらにランドイールらが耐えるいとまに、涼花が仕掛ける。
(支援だけでなく、攻撃でも貢献しませんと)
パンドラ収集器でもあるギターをかき鳴らし、涼花は高めた精神力を音の波の如く発して浴びせかけていく。
それだけで倒せるほど、滅気竜は甘い相手でないのはもちろんのこと。
涼花は前線で耐える仲間達を援護すべく、涼花は演奏し、歌を響かせる。
激しい戦いの傍らで、ソアもまた奮戦する。
一歩前に出たソアは両手が地に触れそうな前傾姿勢をとる。
彼女にとっては、これが自然体なのだ。
本能を解放したソアは渓谷を転がる幼体星界獣が突撃するのを狙って
「ガァッ……!」
……!?
強い衝撃に身を竦めた星界獣。
見るからに堅そうなそいつには、やはりこういう攻撃が効きそうだとソアが考えた通り。
それだけではない。
ソアが気を引いている間に、カレル、シェインの亜竜種少女ペアが連携して。
シェインの突き出した杖の先端から放たれる雷が星界獣を撃ち抜いた直後、体を硬直させたそいつの周囲をカレルが舞い踊る。
まさに剣舞というべきカレルの技は、的確に殻の隙間を裂く。
そんな仲良しの2人の連携を、ソアは特等席で観覧しながらも、自らもまた手数を活かして星界獣を追い詰めるのである。
●
戦いが始まってしばらく。
依然、竜種らも滅気竜との交戦を続け、滅びの力を得た亜竜の力を実感する。
「…………」
相手の力を感じながらも、ティフォンは斧状にした腕でランドイールを薙ぎ払う。
2対1とはいえ、力の差は歴然。
ラードンもまたタイマン勝負ではあったが、全身で敵へと噛みつくラードン側に分がある。
ランドイールが全力で抵抗していたのは間違いないが、滅びの力を持てしても太刀打ちできる相手だったようだ。
多くが足場を気にして飛行するイレギュラーズ。
数々の難敵を倒してはいるが、手強い亜竜が滅びを纏ったことで気の抜けぬ相手となっているのは間違いない。
イズマは自らの強化を怠らず、それらの繰り出す尻尾や電撃を受け止める。
合間にイズマは個別にランドイールを己の夢想で浸食させ、破滅へと導こうとする。
アオオオォォ……。
不気味に唸る滅気竜は侵攻を止めず、イレギュラーズを蹂躙しようとする。
ユーフォニーが青い瞳でそいつを見つめつつ、さらなる桜の花びらのような炎を舞わせ、無尽蔵なのかとも思える滅気竜の体力を削ぐ。
なかなか抵抗力の高い相手だが、ユーフォニーが一時的にでも片方の力を封じることができれば、もう一方を徹底的にメンバーが攻撃を集中させる。
低空飛行するラムダは瞬時に危険を察知して空中へと放たれた電撃を避け、ユーフォニーとアイコンタクトを取って滅気竜の首を裂く。
そこから流れ出す夥しい量の血。
そうして、ラムダは滅びを纏った獣へと逆に終焉を刻み込む。
傍で無駄なく支援していこうとやや前のめりになっていた涼花だったが、その彼女が滅気竜のターゲットとなってしまう。
突撃してきたランドイールがじたばた暴れるだけで、岩場で潰されかけてしまう涼花。
自身よりパンドラが零れ落ち、涼花はやはり侮れぬ力を持つことを肌で感じていた。
(味方は誰も落とさせない)
仲間の陰に代わり、演奏する手を強める涼花はヒーラーとして、自身を含めたメンバーを全力で癒し、支援する。
ただ、涼花に注意を払っていたことで、ランドイールに生まれた隙をつき、魔術紋を光り輝かせたヨゾラが神秘の極撃を打ち込み、一気に弱らせていた。
ヨゾラも熾天宝冠で傷つく涼花を支えていたが、彼は合間を見て亜竜種少女ペアも気がける。
(恋愛の邪魔をする気もないし、百合の間に挟まるつもりもないけど……)
仲の良い彼女達が死ぬのだけはごめんだと、ヨゾラは幼体星界獣と対する彼女らにも癒しをもたらす。
幼体星界獣はソアが主となって対し、少女ペアが連携して敵に傷を与えていた。
シェインの放った炎ごと、獣を寸断するカレル。
「2人とも息がぴったりだね、見惚れちゃった!」
負けじと、ソアが両手で硬い星界獣を薙ぎ払い、頭部を飛ばして仕留めてしまう。
さらに転がってくる1体を、ソアが身を挺して受け止める。
馬力を出してソアを轢き潰そうとする星界獣だが、カレル、シェインペアがそれを許さない。
ソアの要望通り、そのまま押し切らんとカレルが軽やかに刃を舞わせた後、シェインの雷が撃ち貫き、完全に沈黙させた。
「ねえ、まだ戦える? 滅気竜もやっつけにいかない?」
「「ええ、もちろん」」
ソアの呼びかけに、2人も声を揃えて返す。
人型星界獣も手練れの剣士を模したと思われるが、シラスと両儀の攻めにたじろぐ様子がうかがえた。
「誰の技を持っていようが関係ないね」
多少の覇気で人型が圧倒しようとしても、シラスは聖骸闘衣で受け流し、手数で魔術と格闘術を叩き込んでいく。
「くぅ、シラスとやら、おまんも最高の強者じゃのぅ!」
攻撃直後に立て直すタイミングなどで、両儀が彼の強さを肌でビリビリと感じる。
両儀もまた対抗するように、対城技に武の奥義と惜しみなく自らの技を見せつける。
空間に溶け込んでからの一閃。
甲殻を割られて血を流す人型が刃で切り上げてくるが、両儀は傷など厭わず追撃する。
両儀が正面から攻め込むのに合わせ、シラスが破邪の結界で人型を封じ込める。
「……小手先無用の力一つの攻撃を真似るんなら、相応の力を用意するべきじゃったのぅ!」
次の瞬間、両儀はそいつを真っ二つに切り裂くと、星界獣は音もなく崩れ落ちていった。
「両儀よう……食い足りなくねえか?」
シラスはそれだけでは収まらず、有り余る元気で滅気竜と対することに決めた。
残るは滅気竜のみ。
気づけば、竜種2人は合わせて滅気竜3体を追い込んでおり、討伐間近といったところ。
一方で、イレギュラーズは、滅びの力をまざまざと体感することとなる。
順調に敵の力を封じていたユーフォニーだったが、傷が深まった片割れが暴れ狂う。
「崖が……気を付けてください……!」
それに伴って崖崩れが起き、ユーフォニーが仲間へと注意を喚起したところに滅気竜が襲い掛かる。
刹那、岩に叩きつけられたユーフォニーは運命力で踏みとどまり、改めて千彩を纏う無数の欠片を浴びせかける。
アオオォォ……。
ようやく、弱々しく嘶いたランドイールは大きな体を岩の上に横たえ、動かなくなった。
「俺らも混ぜろよ」
残り1体となったところで、シラスと両儀が躍り込む。
竜種が相手している滅気竜に興味を持っていたシラスは早速、研ぎ澄ました体力から雷光の如き魔力撃を横っ腹に叩き込む。
まだ、ランドイールは体力が残っており、全身から雷光を発して集まるイレギュラーズに浴びせかけようとした。
彩陽がその力を封じようと、堕天の輝きで照らす。
確かに、彩陽の一撃は滅気竜の力を封じてはいた。
だが、そいつはすぐに態勢を整え直すのが厄介だ。
イズマはランドイールの尻尾を受け止め、竜鱗片をちらつかせて怯ませようとする。
それでも、巨体から繰り出される打撃に電撃を受けるイズマを、涼花が号令を上げ、奏でる旋律によって恩寵を与える。
イズマが前線を支える間、カレルやシェインも加わり、後方からその尻尾を焼き、切りかかると変わらぬコンビネーション。
他メンバーに気を取られているところに、今度はソアがランドイールの体を真横からズタズタにしていく。
「ふふーっ、余所見してるから!」
うまく亜竜種少女ペアと連携できたと、ソアは満足げだ。
シラスも続けと攻撃を重ねようとするが、人型星界獣との交戦で思った以上に体力が減っていたらしく、思わぬ尻尾の強撃にパンドラを直接削らせてしまう。
「これ以上、荒らさせないよ……!!」
そこで、逆にヨゾラがランドイールを星の破撃で殴りつける。
さながら、星の光が瞬くかのような彼に対し、ランドイールはもがき苦しみながらも全身を雷光で包む。
「おーい、おまんら! 良い事思いついた! 今から試すから離れちょれ!」
そこで、両儀が仲間に呼びかけ、敢えて崖を崩す。
崩れる心配をするなら、いっそ崩して利用するという発想の転換をした両儀。
落石がランドイールへと襲い掛かるが、相手はじたばた暴れてそれを破壊する。
だが、抵抗もそこまで。
落石を軽やかに避けたラムダが一気に接敵する。
ラムダの振るった魔導機刀「八葉蓮華」による連撃によって、ランドイールの首が宙を舞った。
声すらなく崩れ落ちる滅気竜。
それを、自分たちの相手していた滅気竜を倒した竜種達も視認していたようだ。
涼花の手当てを受けていたシラスは倒れる滅気竜を見回して。
「手強いな。亜竜なんて山ほどいるだろ? あいつら全部こんな化物になったら竜種でも手を焼くんじゃないか?」
シラスは数えられぬほどいる亜竜の滅気竜化を危惧せずにはいられないのだった。
●
滅気竜と星界獣を仕留め、イレギュラーズ一行は武器を納める。
ヨゾラはカレルやシェインの状態を診た後、竜種らの傷を気がける。
「ヘスペリデスへの侵入も防げたかな」
ヨゾラの言葉に、カレル、シェインも嬉しそうに頷く。
「……まだ終わらぬはずだ。気は抜けぬ」
「はっ」
終焉の方角を見つめるティフォンに、ラードンが小さく返事する。
直接、会話しようという態度ではないが、間違いなく竜種は人へと歩み寄っているとラムダは感じて。
(人と竜が協力し合うベルゼーが夢想した情景が此処にはあるってところかな?)
ベルゼーの思い描く情景には遠いかもしれないが、これは確かな一歩のはずだとラムダは確信する。
そんな竜種らに、ユーフォニーが呼びかける。
「ティフォンさんとラードンさんは星界獣や滅気竜、終焉のこと、詳しいですか?」
ただ終焉獣らに迎え撃っているだけでは、根本的な解決にはならない。
そう考えていたユーフォニーは、滅びといえば終焉領域、やはり終焉に乗り込むべきではないかと考えていたのだ。
「この前黄金のリンゴが好きなアルディさんに聞いたら、他の竜種に聞いてみた方がいいと言われまして」
何か知っているでしょうかと改めて問うユーフォニー。
ベルゼーは彼女を一瞥しただけで虚空を見上げて。
「我らを……この世を侵す脅威だ」
どこまで知っているのか把握しかねたが、竜種ですらも抗えぬ何かがそこにはあるのだろうとメンバーは察したのだった。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
リプレイ、公開です。
MVPは敢えて崖崩れを戦略として組み込んだ貴方へ。
今回はご参加、ありがとうございました。
GMコメント
イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
<ラケシスの紡ぎ糸>のシナリオをお届けします。
ベルゼーの遺志を組み、彼の愛した地を守ろうと竜種らも動いているようです。
●状況
デポトワール渓谷へと向かいます。
元々、腹をすかせた野生のモンスターの根城でしたが、ここにも滅気竜や星界獣の出現が確認されています。
渓谷内は斜面や突き出す岩などが多く、岩の間から水の流れを感じさせるような場所です。
足場が安定している場所が少なく、移動にも一苦労します。
渓谷とあり、10~15m幅の両脇の崖は30m以上あります。
現場到着時、2体の竜種が敵を威圧し、抑えています。
イレギュラーズの来訪もあって事態が動き出します。
竜種と協力しつつ、敵勢力……終焉獣、滅気竜、星界獣の混成隊を撃破していただきますよう願います。
●敵×6(+3)体
〇滅気竜
覇竜に生息する亜竜が滅びのアークに触れて変化した存在です。
・ランドイール×5体(うち、3体は竜種が相手してくれます)
全長5m程の亜竜。
地上へと上がった電気ウナギが亜竜と化した個体と見られます。
じたばたと暴れる他、前方に向かっての突撃、長い尻尾の叩きつけ、薙ぎ払い、電撃放出(直線、放出)と多彩な攻撃を繰り出します。
なお、その体躯もあって、若干ですがそれらの後方は道が均されているようです。
もっとも、竜種2人がそこで滅気竜3体と交戦していますが……。
また、渓谷で暴れられると両サイドの崖が崩れる恐れがあるのが怖いところです。
〇人型星界獣×1体
成人人間種と同等の体格をしており、中性的な印象を抱かせます。
主にイレギュラーズの残留エネルギーを喰らって進化した個体です。
甲殻で覆われたような鎧に加え、肌の質感も甲殻を思わせます。肌は薄橙色で限りなく人に近い印象を抱かせます。
自身の体と同等の質感の大剣を所持。
どこから学んだのか、イレギュラーズの中で、近距離攻撃を模したような技を繰り出すことが確認されています。
〇星界獣×3体
幼体であるようです。全長1.5m程度。
甲殻類のような見た目をしていることが多いようですが、岩を背負ったダンゴムシに近い姿をしています。
転がって突撃してきたり、岩を飛ばしてきたり、直接のしかかってきたりと見た目以上に多彩な攻撃を仕掛けてきます。
●NPC
〇竜種
面倒な滅気竜を3体相手してくれます。
・将星種『レグルス』:ティフォン
全長6.5mほど。人間の姿とった彼はかなりの美男子。
本来の姿は、複数の蛇の尾を下半身として持ち、背には大きな翼、腕を大きな斧状に変化させることもできます。
〇明星種『アリオス』:ラードン
全長5mほど。巨大な黄色い体躯のヒルを思わせる見た目をしています。
森を守護する若き竜。黄金のリンゴの守護者でもあります。
人の姿こそとることができませんが、強力な力を有しています。
〇亜竜種少女ペア
以下2人、同行します。
フリアノン出身、互いを友情以上の感情を抱くペア。
イレギュラーズ側で共闘します。
・カレル・タルヴィティエ(p3n000306)
赤いショートヘアの長剣使い女性。
軽装鎧を纏い、剣舞で周りを魅了しながら相手を殲滅します。
・シェイン・ラーティカイネン(p3n000307)
緑のロングヘアを揺らす術士の少女。
樹でできた長い杖の先端にはめ込んだ魔力晶から炎や雷、治癒術を使います。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
それでは、よろしくお願いします。
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