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シナリオ詳細

波輝のエーグレイト

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 舶来の商人、カイリー・マンソンを知らぬ者はそういない。
 彼女は海洋王国で活動する商人の中でも優れた才を持ち、一代でかなりの財を築き上げた成功者なのだから。
 だがそんな彼女にはある背景が存在していた。
 生涯をかけ、伝説に語られた秘宝『波輝のエーグレイト』を手に入れるという夢である。
「その夢を、あなたに託したいのよ。イレギュラーズ」

 海洋王国の冒険者酒場に現れたカイリーは人目をひいた。
 吹き抜ける風と広大な海を思わせる気品を纏い、銀の髪が風に靡くように広がっているからだ。
 彼女の目には深い海のような蒼さがあり、常に未知なる冒険への期待と夢に満ちているようである。
 そんなカイリーは酒場の個室へあなたを案内すると、周辺の海図を広げて見せた。
 最新の海図であり、かなり貴重なものだろう。これを易々と見せるということは、それだけあなたへの信頼が深いことがうかがえる。
「あなたに依頼するのは『波輝のエーグレイト』を手に入れること。
 そのために必要なのは、『安全な航海』と『守護者の試練』よ」

 まずは『波輝のエーグレイト』が納められているという海底神殿のあるポイントまで船で移動しなければならない。
 一泊二日の船旅になるため、それなりの準備も必要になるだろうし、なにより船旅を楽しむための工夫もあって然るべきだろう。
 港街では物資を安く手に入れることで船旅をより安全に過ごすことができるようになるだろう。船の中では料理ができれば仲間たちの士気はずっと上がるはずだ。
 演奏や舞踏などで皆を楽しませるのもいいだろう。
 一転、優雅に船の旅を満喫しきるというのもアリだ。なにせこの依頼の本番はこの船旅ではなく、『守護者の試練』にあるのだから。

 『守護者の試練』。それは遥か古代文明によって作られた精霊の試練である。
 海底深くに作られた古代遺跡の中に『波輝のエーグレイト』は納められているが、それを手に入れるには守護者たる精霊とその眷属たちとの戦いに勝利しなくてはならない。
 守護者の名は『ネウレス』。
 深淵の力を持った精霊であり、美しい海の波紋を纏ったような姿をしているという。
「ネウレスに関する情報は手に入れてあるわ。
 海の精霊にして秘宝の守護者ネウレスは水を操る能力を持っているの。
 だから遺跡内は海底にありながら空気が循環しているのよ。
 けれど油断はしないで。ネウレスは眷属たる『陸鮫』を召喚できるだけじゃなく、激流によって隊列を乱したり水の爆発によってとてつもないダメージを与えてきたりするらしいわ。依然にも傭兵をやとって『波輝のエーグレイト』を手に入れようと企んだ商人が傭兵の全滅という形で冒険を断念するくらいには手強いわね」
 けれど、とカイリーは微笑みを浮かべて続けた。
「あなたならこの試練を乗り越え、見事に『波輝のエーグレイト』を手に入れてくれる……私はそう信じられるのよ。静寂の青を手に入れたイレギュラーズである、あなたならね」

GMコメント

●シチュエーション
 優雅な船旅を満喫した後は海底神殿にて試練の戦いに挑みましょう。
 そして依頼人であるカイリー・マンソンへ秘宝『波輝のエーグレイト』を届けるのです!

●船旅パート
 優雅に船旅を満喫しましょう。
 できる仕事は実は沢山あるのですが、ここはあえて優雅にお楽しみ頂いて大丈夫です。
 港街では物資を安く買い込んでみたり、船で料理を振る舞ってみたり、楽器を演奏して楽しませてみたり、星空を見てのんびり酒でも飲んでみたりと一泊二日の船旅をご堪能下さい。

●ネウレスの試練パート
 秘宝の守護者ネウレスの試練をクリアする必要があります。
 簡易的な水中呼吸装置を使って海底遺跡へと入り、ネウレスの試練へと挑みます。
 遺跡内部は不思議と空気が循環しており、呼吸が可能です。

 エネミーとして以下の存在が出現し、これに勝利することで秘宝を手に入れることができます。

・陸鮫×多数
 空を飛ぶ鮫です。なかなかに狂暴ですが、最近だと騎乗動物にされることもあります。
 彼らは主にこちらの進行を妨害したり、ネウレスへの攻撃や付与を妨害するといった動きをしてきます。

・ネウレス
 遺跡を守る高位精霊です。波紋のようなドレスを纏った女性めいた姿をしており、水を操る能力を持っています。
 突如激流を引き起こして隊列をかき乱したり、水の爆発を起こして大ダメージを与えてきたりとなかなかに厄介な敵ですので、戦う際には充分に注意してください。
 また、序盤はゆるやかに戦いますが徐々に回避・抵抗・攻撃力・CTが上昇していく性質をもっています。油断なく戦うようにしましょう。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • 波輝のエーグレイト完了
  • 優雅な船旅を、未知なる秘宝を求めて
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年12月15日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

十夜 縁(p3p000099)
幻蒼海龍
オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)
鏡花の矛
ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)
Lumière Stellaire
ヴァイオレット・ホロウウォーカー(p3p007470)
咲き誇る菫、友に抱かれ
モカ・ビアンキーニ(p3p007999)
Pantera Nera
レイン・レイン(p3p010586)
玉響
マリオン・エイム(p3p010866)
晴夜の魔法(砲)戦士
カトルカール(p3p010944)
苦い

リプレイ


「『波輝のエーグレイト』か、どんな宝なんだろうな。
 僕は生涯をかけるほどの宝ってやつがいまいち想像つかないけど、カイリーのキラキラした目を見てるとなんか協力してやりたくなるんだよな」
 そう語りながら市場を歩くのは『苦い』カトルカール(p3p010944)。
 コネクションを使って店を探し、船旅に必要な物資を安く仕入れようとしていた。
「船旅は一泊二日だから食糧に関してはあれこれ心配する必要はなさそうだ。嫌いなものとかはあるか?」
 馬車を引く馬をちらりと見てから、『玉響』レイン・レイン(p3p010586)が小さく首をふる。
「大丈夫……けど、コーヒーとか、お茶とかいるかも……」
「了解。確か縁が魚がだめだって言ってたから、多少保存の利く肉類とかを買っておくか。食材を用意して中で料理すればいいしな」
「うん……けど、沢山になっちゃった」
「そんなもんだ。今回は短い船旅だから心配する必要はないけど、長旅になるときはドライフルーツとか買っておくといいぞ。壊血病が怖いからな。練達に行けるならサプリメントがおすすめだな」
 カトルカールの知識にレインが感心の声を上げる。

 一方でこちらは『幻蒼海龍』十夜 縁(p3p000099)。
「夢を追うにも叶えるにも、それなりの準備は必要だろ? 是非とも良心的な値段で取引させてくれや」
「依頼人に早速交渉をするとは、やるわね」
 カイリー本人に対して緑は必要物資の交渉を持ちかけていた。実際カイリーは有名な商人だ。交渉相手としてはぴったりだろう。
 それに……。
(うまく乗せられたような気がしなくもねぇが……酒を奢ってもらっちまった以上は、引き受けねぇ訳にはいかねぇな)
 という具合で緑もやや乗り気なのである。
「ところで、その『波輝のエーグレイト』ってどんなものなのかな?」
 『双影の魔法(砲)戦士』マリオン・エイム(p3p010866)が交渉がある程度纏まったところで尋ねてみると、カイリーは苦笑しながら答えた。
「実は私も詳しくは知らないのよ。祖母の代に、ある『約束』が交わされてね。『波輝のエーグレイト』を手に入れることを娘である母に託した。けれどそれは母の代では叶わなくて、今私の代へと回ってきたの。ポイントは祖母の代から分かっていたから、きっと守護者を倒すという条件が叶わなかったのね。だから、今回は期待しているのよ」
「なるほど……ね」
 話を聞いていた『Pantera Nera』モカ・ビアンキーニ(p3p007999)が腕組みしながら頷く。
(優雅な船旅込みの仕事か、良い話じゃないか。
 それにカイリー・マンソン氏に恩を売っておくのは、今後の店舗経営にとって優位に働くだろう。期待に沿えるよう頑張ってみるか)
 などとやる気を出している一方で……。
(やれやれ、安全な船旅が出来ると謳われて来てみれば、それも含まれた試練とは。
 イレギュラーズに居て楽な仕事にはそうそうないものですね)
 『黄昏の影』ヴァイオレット・ホロウウォーカー(p3p007470)はやれやれと肩をすくめ船着き場へと歩き出すのだった。
 船着き場では既に合流していた『優しき水竜を想う』オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)と『医術士』ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)が手を振っている。
「船旅って素敵ね、風の精霊の声も水の精霊の声もよく聞こえそう」
 オデットはこの船旅を楽しむつもり満々のようで、オディールを召喚して船へと一緒に乗り込んでいく。
「私はヴァイオレットさんにカードを教えて貰うの。楽しみ~」
 ココロもワクワクとした様子で船へ乗り込んだ。荷物の積み込みも終わり、いざ冒険の旅へと……。


「船に僕が連れられてるのか……僕が船を連れてるのか……。
 うーん……頭がぼーっとする……」
 レインは船からのばしたロープと浮き輪を繋ぐと、浮き輪にはまってちゃぷちゃぷと泳いでいた。
 幸い帆船だったのでスクリューのようなものはなく巻き込まれる心配はなかったが、思いのほか速いスピードで進む船に随分とスリリングな思いをしたものであった。
 ついでとばかりに網を持って、海の魚を網にかけてゲットしていたらしく、レインは手に入れた魚と一緒に船へと戻ってきた。
「おう、おかり」
 出迎えるカトルカール。既に料理の準備を終えていたららしく、マリオンと一緒にキッチンから顔を出した。
「魚……とれたよ」
「そりゃあよかった。早速料理して夕飯に出そうぜ」
 カトルカールが作ってくれたのは生春巻きやフォーといった料理。
 『シレンツィオのアジアン・カフェ『漣』でも食えるからよろしく頼むぜ』とはカトルカールの宣伝文句であった。
 一方でマリオンが作ったのは魚のフライや刺身。
「倉庫の食材よりは、当然、その日に釣り上げた魚の方が鮮度が良いよね。
 シンプルに焼いても良いし、フライも捨てがたいかな?
 お鍋なんかにしても、温まって良いかもだね。
 とは言っても向き不向きがあるから、手に入る魚次第だけどね」
 ということで主にフライと刺身ができあがった。
「そうだ。あとで縁の所に持っていこうかな。折角数少ない男同士だしね」
「ああ、それなら僕の生春巻きにしておきな。彼は魚がだめらしいから」
「そう? 助かるよ」
 縁の仕事は船の操舵だ。メンバーの中で操船技術と航海術を持っているので任せておけば問題無いだろう。
「ま、そう心配しねぇでも、絶望の青の頃の海を思えば大抵のモンは危険の内にも入らんさ」
 などと呟いていると、マリオンがお酒とつまみを持ってきてくれた。
「お、気が利くねぇ」
「折角だからと思ってね」
 もらった酒をくいっと一杯。
「これで依頼達成なら最高だったんだがねぇ」
 などと、緑は非憎げに笑ってみせたのだった。

「ヴァイオレットさん、カード占い教えて~!」
 ココロがわくわくした顔でそう告げると、ヴァイオレットはふっと笑ってタロットカードを取り出して見せた。
「ココロ様、占いにご興味が? ふむ……まぁ、良ければお教え致しましょう。
 タロットカードは絵柄の正逆で意味が変わる……というのはご存知かと思われますが。
 大事なのは「その意味をどう解釈するか」でございます。
 同じカードでも、読み手によって解釈が変わります。答えは、自らの心の内にあるのかもしれませんね……」
 そう言いながらも美麗な手付きでカードを混ぜ、並べていくヴァイオレット。
「まずは何を占いましょうか?」
「健康運、金運……あっ、あの人のとの関係がどうなるかとか」
「あの人?」
「え、誰とか、ってのは内緒ですよ!」
 わたわたと手をバタつかせるココロ。ヴァイオレットは微笑を浮かべて頷くと、手元のカードを捲り始めるのだった。

「明日の天気は……っと……」
 甲板に立ち、空を眺めるオデット。するとオディールが足元にやってきて、ワンッと元気よく声をあげた。
「ん、おなかすいた? それじゃあ……」
 と林檎を取り出してオディールへとパスする。ジャンプして器用にキャッチしたオディールは、林檎を美味しそうに囓り始めた。
 一方のオデットはデッキの手すりに寄りかかり、海の精霊のさらさらとした声に耳を傾ける。
「この辺りは精霊の気配が濃いなあ……」
 そんなふうにしていると、音楽が聞こえてくる。
 モカが船に持ち込んだ電子ピアノを使って演奏を始めたのだ。
「今日は料理の代わりに、こちらをお届けしよう」
 モカが演奏するのは試練を前にした冒険者たちに贈る、勇気の出るジャズ。ピアノを奏でながら歌うモカの姿に集まった仲間たちは手拍子を贈り、ヴァイオレットはここぞとばかりにダンスを披露し始める。
 ヴァイオレットらしい妖艶で美しいダンスだ。

 夜はそんな風にふけていき、やがて朝がやってくる。
 そう、試練の朝が。


 ネウレスの遺跡。あえてそう呼ばれている場所がある。
 海底に存在する神殿で、内部には空気が循環していた。
「こんにちは、守護者ネウレス。あなたの試練を受けに来たの」
 オデットの語りかけに、ばしゃりと音をたてて巨大な陰が姿を現す。水でできているようなその身体はぼんやりと人型のシルエットに見え、周囲は眷属の陸鮫たちが飛び回っている。
「いいでしょう。その力、『波輝のエーグレイト』に相応しいか……見せてごらんなさい」
 早速といった具合に飛びかかってくる陸鮫の群れ。
 オデットは『ケイオスタイド』の魔術を行使すると、早速反撃に出た。
 空中に生まれたプリズムカラーの光が陸鮫たちを渦の中に巻き込んでいく。
 それでも無理矢理に突破を図った陸鮫にモカが飛びかかる。
 茨の鎧とディープインサイトで強化をはかったモカの、『黒豹疾駆撃』が陸鮫たちを襲う。要は気功で生み出す誘導弾である。
 陸鮫のひとつに命中したかと思うと激しい爆発を起こし、そこへレインが『ワールドエンド・ルナティック』を発動。大量の小さな海月の群れが幻影として現れたかと思うとぱちぱちと弾け陸鮫たちを襲った。
 なんとか反撃を試みる陸鮫だが、前に出たのがあろうことかヴァイオレット。
 ヴァイオレットは噛みつきを行おうとする陸鮫たちを華麗に次々と回避し、更にはネウレスの放つ水の爆発をも次々と回避してしまった。
 ヴァイオレットを狙うのは不利と早速判断したネウレスたちが次に狙いを付けたのはココロだった。
 隊列を乱すべく激流がぶつかり、僅かにできた隙を突くかのようにネウレスの水の爆発が連続して巻き起こる。
 その中を、ココロは懸命に駆け抜けて防御。展開した巨大な貝殻型の魔術障壁が水の爆発を受け止める。
「反撃だよ……っ!」
 すらりと抜いた『ウルバニの剣』。込めた魔法の光が刀身に宿り、ネウレスめがけぶつけられる。
「お前さんほどじゃねぇが、俺もこの手の術には覚えがあってな。試してみるかい?」
 『操流術・引潮』で陸鮫を巻き込み切り払った縁はそのまま冷気を纏った刀でネウレスめがけて斬りかかる。
「流れるだけじゃなく、偶には「止まる」ことも必要だろ?」
「――ッ」
 ネウレスが若干苦しげにしたところで、マリオンの『チェインライトニング』がネウレスの頭上で爆発した。
「さあ、このまま連続でいくよ」
 マリオンは魔術を放出する構えをとると、『殲光砲魔神』をネウレスや陸鮫を同時に攻撃できるようにぶっ放していく。
「アンタの能力が十分上がるのと僕がアンタの行動力を奪い切るの、どっちが速いか試してみるか?」
 そうして出来上がった隙をついて飛びかかるカトルカール。
 手にしたショットガンを至近距離で打ちまくり、ネウレスを大きくのけぞらせた。
「かなり、強いようですね。でしたら――」
 ネウレスは両腕を大きく動かすように舞うと、フィールド内に次々と上下左右への激流が巻き起こった。
 隊列をかき乱される中、天井に壁をついてキッとネウレスに視線を向けるカトルカール。
「ここは短期決戦狙いで行くぞ!」
 そのまま天井を蹴って飛びかかると、ショットガンでの連射を浴びせていく。
 相手は水でできているとはいえどうやらキッチリ効いているらしく、ネウレスは痛みにもがくように身体をねじる。
 そこへ追撃の『オーラクラッシュ・オーバーレイ』。ネウレスの魔力を摩耗させていく作戦だ。
 どうやらそれによって激流を起こせなくなったらしく。今度は水の槍を次々に作ってはなってくる。
 マリオンは水の槍をジグザグの走行で回避すると、今度は至近距離から『殲光砲魔神』を発射。ネウレスの巨大な水の身体に穴を開ける。
 それ以上の攻撃をさせるものかとネウレスは腕を振り、と同時に一発の激流がマリオンを吹き飛ばした。
 吹き飛ばされつつも空中で身を捻り、再びの『殲光砲魔神』。
 そこへレインは一気に距離を詰め、傘に自らの魔力を集中させた。
 『神滅のレイ=レメナー』と呼ばれる必殺の近接魔術だ。
 傘を剣に見立てて斬り付けたレインによって、ネウレスは派手に吹き飛ばされ遺跡の壁に激突する。
 そこへ追撃とばかりに跳躍し、『胡蜂乱舞脚』を叩き込むモカ。
 連続して繰り出される蹴りをネウレスは水の膜を作って防御したが、その膜を次々と蹴り破っていく。
 そしてモカの蹴りがついにネウレスに届いたところで、ヴァイオレットが短剣を手に飛びかかった。
 『リヴェルガングニール』という近接格闘術だ。突き出した短剣がネウレスのボディに深々と突き刺さり、中心にあるコアのようなものに触れる。
 ビビビッ、とネウレスの全身が震え、拒絶するようにヴァイオレットとモカを吹き飛ばす。
 決着のチャンスだ。
 ココロは再びウルバニの剣に魔法を込めると走り出し、縁もまた刀を握って走り出す。
 オデットは拳にぎゅっと太陽のパワーを集めると、ネウレスめがけて一気に走った。
 ココロの斬撃、緑の斬撃、そしてオデットの拳がそれぞれネウレスへと命中し、そのボディを震わせる。
 限界だったのだろう。
 内側からぶるぶると震えたそのボディは、思い切り破裂して消えてしまった。


「冒険者たちよ、認めましょう。その力、『波輝のエーグレイト』を手にするに相応しい」
 誰もいない遺跡の中に声が響く。
 レインがきょろきょとと辺りを見回してみるが、それらしいものは何もない。
 が、突如として遺跡の中心に光が集まった。
「精霊の力だわ」
 オデットが呟く。
 集まっていく無数の光が形をなし、ひとつのティアラのような形状の物体を創り出していく。
 中心には透明で輝くクリスタルが鎮座し、クリスタルは波紋のような模様をもち不思議な光を放っている。
 それを包み込むように伸びる銀色の蔓と葉のような金属が、ティアラの形状を創り出していた。ティアラは不思議なことに常に水がぱらぱらと散っているような幻影を纏っている。
「これが、『波輝のエーグレイト』?」
「そのようだな……」
 カトルカールがゆっくりと歩いて行くと、彼の手元に『波輝のエーグレイト』がゆっくりと降りてくる。
「綺麗な宝物だね。船旅の最後にはぴったりだったよ」
 マリオンが言うと、モカがこくりと頷く。
「確かに、ね」
「良いものを見られました。これを持ち帰れば、依頼は成功ということですね」
 ヴァイオレットもどこか満足げだ。
 その一方で、ココロは宙空に向けて問いかけた。
「守護者ネウレス。なぜ宝を守っていたのです? あなたにとって、これは何なのですか?」
「『約束』――ですよ」
 ネウレスはそう短く語った。
 それは100年も昔に刻まれた約束である。
 ネウレスと戦えるだけの戦士をこの場所に連れてくるという、ある人物との約束なのだと。
「それは、約束が果たされた証。きっと、あなたがたはこの世界の希望となるでしょう」
「世界の希望……ねえ……」
 縁がぽつりと呟く。もしかしたらネウレスは世界の滅びをなんとなくだが察していたのかもしれない。それで100年も前からその準備をしていたと……。
 気が長い話だが、あながち間違いではないのである。
「守護者ネウレスよ、願うのならまた会ったときにあなたと仲良くさせていただけると嬉しいのだけど」
 オデットが声をかけると、ネウレスはどこか優しく声を返した。
「良いでしょう。また、この遺跡に遊びにいらっしゃい」

 こうして、船と精霊の物語は幕を閉じた。
 100年前の約束の物語も、また。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete

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