PandoraPartyProject

シナリオ詳細

地下非合法ファイトクラブ。或いは、血と汗と誇り、それから大金…。

完了

参加者 : 7 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●地下、熱い男たち
 歓声の雨が降る。
 肉を殴る音がした。
 飛び散る汗と血、それから怒号。
 再現性東京のとある場所。地下に深く降りた先にそれはある。
 ずらりと並んだ観客席と、その中央には四角いリング。
 闘技場である。
「っひょーい。これはまた、随分と手の込んだものを」
 観客席の一番後ろで、エントマ・ヴィーヴィー(p3n000255)は目を丸くしていた。猫のような彼女の瞳に宿る炎の名は“好奇心”。
 猫を殺すと評判のアレだ。

 非合法の地下闘技場が存在する。
 そんな噂を耳にして、エントマは遥々、再現性東京へと足を運んだ。
 ある冬の、雪の降る日の出来事である。
 外の寒さとはうってかわって、地下闘技場は暑かった。否、熱かったというべきか。
 リングの中で殴り合うのは2人の男。
 どちらも筋骨隆々とした屈強なファイターが、グラブも付けずに己の拳と体1つを武器として、威信をかけて殴り合っているのである。
 汗と血と、それから多額の金が舞い散る月に1度のお祭りだった。
 日常では滅多にみられぬ、武闘派同士のガチ喧嘩。オーディエンスは絶叫し、贔屓の選手にエールを送る。
 勝敗に金を賭けているのだろう。負けた選手に、とてもじゃないが聞いていられない罵倒が浴びせかけられる。
 勝者は栄誉と称賛、そして大金を手に入れて。
 敗者は誇りを挫かれる。
 それが地下闘技場の日常だ。
「さてさて、とはいえ……どうしたもんかな? 非合法だってんだから、ここの情報はローレットに報告しておくべきなんだろうけど」
 顎に手をあて、エントマは首を傾げてみせた。
 見たところ、地下闘技場のスタッフらしき者の姿が見当たらない。万が一、警察などが踏み込んで来た場合に備えて、どこかに姿を隠しているのだ。
 となれば、報告前にスタッフの隠れている場所まで見つけておくのが良いだろう。
 ついでに、例えば誰か知り合いを試合にエントリーさせて、金を稼ぐのもいいかもしれない。
「まぁ、稼いじゃってもそれは必要経費ってことで……仕方ないよね」
 誰に声をかけようか。
 そんなことを考えながら、エントマはそっと観客席を出て行った。

GMコメント

●ミッション
非合法地下闘技場の運営スタッフの居場所を探る

●ターゲット
・地下闘技場運営者
再現性東京にある非合法の地下闘技場。
それを運営する正体不明の不可解な組織が存在している。
正確な人数も不明、組織のリーダーも不明。
組織の詳細を探ることが、今回の依頼の内容となる。

●フィールド
再現性東京。
とある建物の地下深くにある闘技場が今回の舞台。
キャパ200から300ほどの観客席と、その中央には四角いリング。
月に1度、地下闘技場では非合法な賭け試合が行われている。
観客席とリング以外の設備は不明だが、胴元たる非合法組織の控室があるはずだ。


動機
当シナリオにおけるキャラクターの動機や意気込みを、以下のうち近いものからお選び下さい。

【1】地下闘技場の常連である
あなたは地下闘技場の常連です。
この日も遊びに来ていました。
観客としてか、選手としてかは分かりませんが……。

【2】エントマに雇われた
エントマに呼び出されました。
「暇なら遊びに行こう!」とのことでしたが、非合法の地下闘技場に連れて来られました。

【3】地下闘技場を調べていた
エントマとは別口からの依頼を受け、地下闘技場を調査していました。


地下闘技場攻略
地下闘技場を攻略します。
闘技場を運営している組織の者たちに怪しまれないよう、頑張っていきましょう。

【1】選手としてエントリーする
飛び込み参加のチャレンジャーとしてリングに立ちます。
武器無し、防具無し、反則無しのガチンコ勝負です。

【2】観客として調査する
観客席から、闘技場全体や選手の様子を観察します。
怪しまれないよう、幾らか賭けるのもいいでしょう。

【3】こそこそする
観客席とリングのあるメインホールを離れ、地下闘技場の調査に赴きます。
運営組織の控室を見つけて、組織の詳細を調べましょう。

  • 地下非合法ファイトクラブ。或いは、血と汗と誇り、それから大金…。完了
  • GM名病み月
  • 種別 通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年12月04日 22時05分
  • 参加人数7/7人
  • 相談0日
  • 参加費100RC

参加者 : 7 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(7人)

亘理 義弘(p3p000398)
侠骨の拳
ペッカート・D・パッツィーア(p3p005201)
極夜
モカ・ビアンキーニ(p3p007999)
Pantera Nera
不動 狂歌(p3p008820)
斬竜刀
ウルズ・ウィムフォクシー(p3p009291)
母になった狼
イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色
ルブラット・メルクライン(p3p009557)
61分目の針

リプレイ

●レディー……ファイッ!
「あ、エントマだ」
 再現性地下東京。
 どこにあるとも知れぬ非合法地下闘技場で、『極夜』ペッカート・D・パッツィーア(p3p005201)は見知った顔を見つけて思わず破顔した。
「やっぱり不運というよりは爆弾に突っ込む猫なんじゃねぇの」
 非合法と言うぐらいだ。この地下闘技場はきな臭い。きな臭いからこそペッカートはここにいるわけで、そもそも「武器無し、防具無し、反則無し」の殴り合いを見世物にして、金を賭けさせるなんて催しがまともなものであるはずもない。
「さて、それじゃあやろうか? 誰から行く?」
「誰でもいいぜ。俺にとっちゃあおあつらえ向きな依頼だ。せいぜい暴れて目を引き付けてやるさ」
「非合法の闘技場に出る位なんだ。観客席まで吹き飛んだって死にゃしないだろうし思いっきり殴れそうだな」
「しかし、再現性東京にこんな場所があるとは、驚いたな」
 エントマに同行しているのは『侠骨の拳』亘理 義弘(p3p000398)に『暴れ博徒』不動 狂歌(p3p008820)、そして『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)の3人だ。
 いずれも劣らぬ武闘派揃い。
 これは一波乱あると予想して、ペッカートは移動を始めた。

 血と汗が飛び散って男がリングに倒れ込む。
 背丈は180センチを超え、その身は引きしまった筋肉に覆われていた。だが、彼は負けたのだ。顎に膝蹴りを叩き込まれて、白目を剥いてマットに沈んだ。
 歓声とブーイングを浴びながら、もう1人の男が高く拳を掲げた。
「さぁ、次の挑戦者は誰だ!」
 マスクを被った2メートル超えの巨漢である。この地下闘技場の人気選手の1人であり、その正体は不祥事で引退を余儀なくされたプロレスラーだとも言われているが真偽のほどは不明である。
 地下闘技場の試合形式には2種類があった。
 1つは、運営が組んだ対戦カードを行う“マッチ戦”。
 もう1つは、人気選手が飛び入り参加の腕自慢たちと試合を行う“サドンデス”。
 現在行われているのは、後者である。
「うおー! 人を殴りたいっす!」
 観客たちのざわめきを割って、リングに跳び上がったのは『持ち帰る狼』ウルズ・ウィムフォクシー(p3p009291)。彼女がリングに立つと同時に、観客席が大いに沸いた。
 地下闘技場では珍しい若い女性のファイターだ。
 加えて、ウルズは“正体不明の酔いどれ拳士”として知られる地下闘技場の常連だ。
「いいのかい? 女だからって手加減はしねぇぜ?」
「望むところっす!」
 顔の横に両の拳を揃えて構えたファイティングポーズを取りながら、ウルズはにたりと悪辣な笑みを浮かべて見せた。
 人を殴って、殴り倒せば、金を貰えるというのだから、こんなに割のいいことは無い。

「野蛮なことを……」
 リングで殴り合うウルズとプロレスラーを眺めながら、『61分目の針』ルブラット・メルクライン(p3p009557)はため息を零した。
「そう言うなら帰ればいいのに」
 そんなルブラットの隣に『Pantera Nera』モカ・ビアンキーニ(p3p007999)が腰を降ろした。視線をそちらに向けないまま、ルブラットはもう1度、小さな吐息を零す。
「そうもいかない理由があってね。貴方も試合に出るのかい?」
「あー、いや。本当は戦いたいんだけどね」
 声を潜めて言葉を交わす。
 2人の視線はリングの方に向いているが、意識だけは絶えず四方へと飛ばしていた。2人とも、リングで行われている試合が目的ではないのだ。
「いやほら私は有名経営者だから。練達名声が222もある有名人だから」
 目立つことに不都合があるのだ、と。
 モカは言外にそう伝えた。
 どうやらルブラットとモカの2人は、同じ穴の狢というやつであるらしい。

●ミッション・スタートッ!
 義弘たちと別れたエントマの元に、へらへらとした軽薄な笑みを浮かべたペッカートが近づいて来る。
「出場する奴いるんだろ? そんで、そっちは所謂、陽動ってやつだ」
 エントマはぎょっとした顔をして、視線を素早く左右へと巡らせた。
 ペッカートの言葉を、誰かに聞かれてしまったのではないかと危惧したからだ。
 その様子を見て、ペッカートはくっくと肩を揺らす。内緒の取引を持ち掛けているのに、それを誰かに聞かれるようなヘマはしない。
「仕事か? 協力してやるから誰が出るのか教えてくれよ。儲けたら山分けしてやるから」
 右手の人差指と親指で輪を作りながら、ペッカートはエントマの肩に身を寄せる。いかにも悪辣な笑みを浮かべて、ペッカートは声を潜めて言葉を続けた。
「ここの運営絡みか? だったら、1度、外に出た方がいいな。連中がいる部屋には、このフロアからじゃ行けねぇ」
「……なんでそんなこと知ってるわけ?」
「そりゃおめぇ、こんな場所だもの。誰が、幾ら儲けて、どこに溜め込んでるのか気になるだろ?」
 気になるからと言って自分で胴元にちょっかいをかけなかったのは、そうするだけのメリットがペッカートには無かったからだ。
 だが、イレギュラーズが絡んで来たのなら話は変わる。そう遠くないうちに、地下闘技場は終焉を迎える。
 であれば、最後に1度ぐらい、大きく儲けてみるのも悪くないでは無いか。きっと、ペッカートはそんなことを考えたのだろう。
「悪い取引じゃないだろ? ところで、モカやルブラットも見かけたが、アレもエントマが連れて来たのか?」
「……うん?」
 聞き慣れた名だが、たぶんエントマとは別件だ。
 どうにも知らないところで少し面倒な話になっていそうだ、とエントマは顔色を悪くした。

 開始のゴングが鳴った瞬間、ウルズは跳んだ。
 伸ばした両手で、対戦相手の頭を掴む。その顔面に躊躇なく膝を叩き込み、まずは鼻の骨を砕いた。先制シャイニングウィザード。
 頭を掴んだまま、よろめく男の背後に素早く回り込んで再び跳躍。
「てめぇ! ちょこまかと!」
「いやぁ、酔ってその辺のおっさん殴ったらおまわりさんが面倒なんすよ」
 膝を男の後頭部へと押し当てて、その顔面をリングに向かって叩きつけた。
 カーフブランディングと呼ばれるプロレス技だ。
 リングが揺れた。
 男の身体が何度か震えて、それっきりピクリとも動かなくなる。
 静寂が満ちた。
 開始からわずか数秒で、地下闘技場の人気選手がマットに沈んだのだから、観客の誰もが我が目を疑ったのだろう。
「たまには暗殺拳を使わないで殴りあいたくなるんすよねー」
 倒れた男をリングから蹴り落としながら、ウルズは口元を拭う。その目には、酒と暴力にすっかりと酔った怪しい色香が灯っている。
「でもまだ暴れ足りないっす。さぁ、次の相手は……あれ?」
 次の対戦相手を呼ぼうとしたウルズの視線が、右へ左へと泳ぐ。リングの四方から、数人の屈強な男たちが現れたからだ。
 控室に待機していた地下闘技場の選手である。
「調子に乗り過ぎだ、お嬢ちゃん」
「上の命令なんだ。悪く思うなよ。こっからは、4対1の残虐ショーだ」
 つまりはリンチだ。
 人気選手に大怪我を負わせ、興行を台無しにしたウルズに対して“地下闘技場の運営者”は強い怒りを抱いているらしい。
 或いは、これを商機と見たか。
 若い娘が、寄って集ってズタボロにされる姿を見たいという観客も多いだろう。
「あー、そういうやつっすか。いっすよ。全員、まとめてかかって来ても……って、あれ?」
 けれど、しかし……。
「大の男が寄って集って。見ちゃいられねぇなぁ」
 リングに上がろうとする男たちの前に、義弘が立ちはだかった。
「あぁ、俺も暴れたいしな」
「たしかに4対1はフェアじゃない」
 さらに2人……狂歌とイズマが、その横に並ぶ。
 2人とも、戦闘準備は出来ている。すぐにでもリングに上がって、殴り合いでも何でも出来る。
 何が起こっているのかと、観客たちがざわついた。ついでにウルズも、何が起こっているのか分からず首を傾げた。事態の全容を把握しているペッカートは口笛を吹いて、にたりと嫌な笑みを浮かべる。
 自分1人で、4人ともぶちのめすつもりでいたからだ。
「4対4だ。正々堂々、やろうじゃねぇか」
 かくして、なし崩し的に始まったのは、地下闘技場の精鋭とイレギュラーズによるチーム対抗戦である。

 同時刻、別室。
 モニターに映ったリングの様子を見やりながら、1人の男が紫煙を燻らす。
「……きな臭いな」
 モニターに映っているのは、地下闘技場の精鋭4人と飛び入り参加のチャレンジャー。地下闘技場においては実力が全てだ。男と女が殴り合うような試合も稀にはあるし、盛り上がるのなら、こういったイレギュラーな事態はむしろ望むところである。
 だが、それはそれとして、どうにも今回は様子がおかしい。
「見張りを強化しておけ。多少、怪しまれても構わない」
 長年、裏稼業に従事して来た勘だろう。
 既に手遅れであることを除けば、彼の読みは正しいと言えた。

 何が起こっているのか理解できなかった。
 壁に背中を付けて周囲を警戒していたはずなのに、どうして自分は“背後”から口を塞がれているのか。
 困惑、恐怖、そして驚愕。目を白黒させながら、ジャージ姿の男がもがく。
「少しだけ、静かにしていてくれるだけでいいんだ」
 くぐもった声が聞こえた。
 視界の隅に見えるのは、ペストマスクを被った誰かの顔だった。
 ずるり、と。
 どうやらその者は、壁から這い出ているようだ。とてもじゃないが、人の身で成せることでは無い。
「怪しい者じゃない。眠っていてくれ」
 薬品の匂いがした。
 その者が身に纏っているのは白衣だろうか。
 ペストマスクを被った医者が“怪しくない”なんてことは無いだろう。そう言いたいが、口を塞がれているので無理だ。
 意識が遠のく。
 意識が途切れる、その寸前……女性の声を聞いた気がした。

「これで何人目だ?」
 気絶した男をロッカーの中に押し込みながら、モカは問う。
 見張りをしていたルブラットは、マスクの嘴に手を当て少し思案した。
「スタッフらしき者なら3人。一般客が2人……だろうか」
「見張りが多いな。そろそろ騒ぎになりそうだ」
 人と言うのは、そこにいるだけで意味がある。そして“そこに居たはずの人”が消えた時、必ず何かの痕跡が残る。
 元々、見張りが多いのか。
 それとも、今夜が特別なのか。
 その辺りの判断は付かないが、どうにも地下闘技場の胴元たちはなかなかどうして警戒心が強いらしい。
「このまま静かに仕事を終えられればいいが」
 モカがそう呟いた、その直後……。

『は!? いやいや! ちょっと道を間違えちゃっただけだってば! まって、怪しい者じゃないから! 行方不明者? 知らないって!!』

 誰かの叫ぶ声がした。
 誰かと言うか、エントマである。彼女の声はよく響くし、よく通る。
「静かに……は難しそうだな」
 ルブラットはそう呟いて、すっと影の中へと姿を潜らせた。

 ボクサーという人種は、その拳で人を殺せる。
 人体の急所を正しく理解し、的確に打ち貫く高速の拳はまさに凶器そのものである。
 脇腹に1発、胸の中心に1発、そして顎に1発。
 続けざまにジャブを当てられ、狂歌はよろめいた。
 瞬間、キュとリングを擦る音がして、ボクサーが姿勢を低く前進を開始。一瞬のうちに狂歌の懐に潜り込むと、抉るようなアッパーカットを顎へ向かって繰り出した。
 ボクサーは、にやりと笑んだ。
 彼にとっての必勝パターンだったのだろう。急所を打って、怯ませてからのアッパーカットは、これまでに数多くの闘士をリングに沈めてきたはずだ。
 だが、しかし。
「なんだ、思ったよりやるじゃねぇか」
 歯を食いしばり、首の筋肉に力を入れて狂歌はアッパーカットを耐え抜いた。口腔内を怪我したのか、唇の端から血が滴る。
 だが、脳は揺れていない。
 狂歌の意識は途切れていない。
「細々としたのは苦手だからな。派手に暴れて動きやすいようにしようかね」
 そして狂歌は、男の顔面にヘッドバットを叩き込む。

「やりづれぇ」
 そう呟いた巨躯の男が、イズマの左へ回り込む。
 繰り出した掌打が、イズマの喉を強かに打った。抉るような一撃だ。筋肉の鎧を着たかのような体躯を見るに、きっと彼は力士崩れの闘士だろう。
「鋼は生まれつきだ、許せ」
 喉を張られたイズマは、衝撃に抗うような真似はせず身体を後方へと逸らす。
 そして、リングロープに背中を預けた。
 リィン、と鈴に似た音が鳴る。
 イズマの首から痣が消えた。
「あ“?」
 次の瞬間、イズマの身体がゆらりと揺れた。まるで蜃気楼のようだ。
 力士崩れの闘士は思わず我が目を疑う。
 蜃気楼を纏ったイズマの体格が、実際よりも何倍も大きく見えたからだ。あまりの迫力に脚が竦んだ。
 その隙をイズマは見逃さない。
 ロープが戻る反動を利用しての急加速。鋼の腕で男の喉輪を締めあげながら、左腕で脇腹を打った。衝撃が肺に伝わり、男の呼吸が僅かに乱れる。
「大した選手だ」
 一瞬、男の巨躯が脱力したところを、一気呵成に押し込んだ。
 激しい音を立て、巨躯の男がリングに沈む。随分と強く叩きつけたので、きっと暫くは体が痺れて立てないだろう。
 荒い呼吸を繰り返しながら、汗に塗れたイズマは問うた。
「この手の場所に来そうな人に心当たりがあるんだが……知らないか? パンダなんだが」
「知らねぇ……パンダが見たけりゃ、上野に行けよ」
 天井に視線を向けたまま、巨躯の男はそう吐き捨てた。

●プロフェッショナル
 義弘と殴り合っている男、どうにもカタギじゃないようだ。
 振るわれる拳、繰り出される蹴り、叩き込まれる頭突き……そのすべてに技術は無く、けれど洗練された純粋な暴力と威圧感があった。
 トレーニングではなく、実戦で鍛えた戦闘スタイル。己の身体と、時にはリングのマットさえも武器とした豪放磊落な戦い方には覚えがあった。
 義弘が任侠の世界で生きていた時分に、何度もこういう手合いと喧嘩したことがある。
「なつかしいもんだ」
 殴り合い、蹴り合い、最後に頼れるのは根性だけ……そんな泥臭く、熱い喧嘩を想起する。義弘はシャツを破り捨てると、背中の入れ墨を大衆に晒した。
「さぁ、かかってこいや!」
 仕事のことは、少しの間、忘れるとしよう。
 今はただ、古く懐かしい気質の男との喧嘩を楽しむことに集中しよう。

 エントマの手を引っ張って、ルブラットは暗闇の中を駆けていた。
「あのぉ、調べものがあるんだけど?」
「問題ない。そちらは既にモカ君が手を回している」
 ところは闘技場のあるフロアの1階上。
 狭い通路と、幾つかの小部屋があるだけの質素なフロアだ。もっとも、既にルブラットが電気系統を破壊したため、辺りは真っ暗闇である。
「どうにも君が絡むとスマートに事が運ばない」
「それ、本当に私のせいかな?」
「……貴方のように、何もかもを騒ぎに変える者は時々、いるのだよ」
 そう言ってルブラットは、懐からメスを取り出した。
 通路の先に、人の気配がしたからだ。

 頬を冷や汗が伝う。
 首に突きつけられたナイフの感触が、男から冷静さを奪う。
「……殺さないのか?」
 声の震えを押さえながら、彼は問うた。背後でくすりと笑う声がした。
「そういう指示は受けてないからね。今日のところは挨拶のようなものだよ」
 男の口から葉巻が落ちた。モカはそれを踏み消して、モニターの方へ視線を向ける。
 喝采をあげる観客と、勝利を誇る義弘の姿が映っている。
 今夜の興行は、きっと大成功だろう。
「それにしても……くっ、やはり華やかなリングで戦いたいッ!」
 なんて。
 そんなことを憤りながら、モカは男の首に手刀を叩き込む。

「しゃーっ! このやろーっす!」
 殴ってはポーズを決めて雄叫びを上げる。
 殴られては、笑みを浮かべて殴り返す。
 まるで獣の戦いだ。
 或いは、酔っ払いの喧嘩のようだ。
 だが、ウルズと対戦相手の放つ熱気にあてられて、観客たちのボルテージは上昇していく。まさしく狂乱。ある種の儀式にも似たトランス状態。
 血と暴力に人は酔うのだ。
「ついでに金も懸かってるとなりゃ、冷静じゃいられねぇよなぁ」
 なんて。
 今日の儲けを計算しながら、ペッカートは笑うのだった。 

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

お疲れ様です。
地下闘技場に関する情報を持ち帰ることに成功しました。
エントマは逃げていただけですが……。

依頼は成功です!

この度はご参加、ありがとうございました。
縁があれば、また別の依頼でお会いしましょう。

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