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シナリオ詳細

<神の王国>歪んだ理想

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●<神の王国>歪んだ理想
 闇の帳堕ちた天義の巨大都市『テセラ・二バス』。
 かの地に於ける闇の帳を越した先に拡がる遂行者達の『理想郷』。
 イレギュラーズ達の手によって、それらは砕かれた……と思ったのだが。
『チッ……またかよ』
 舌打ちするのは、『極夜』ペッカート・D・パッツィーア(p3p005201)。
 ついこの前討伐し、崩壊した筈の『夢哭の『アインハイン』』の理想郷。
 一度帰還し報告の後、再び神の国に足を踏み入れたのだが……同じ様なシスターとゼノグロシアンの子供達の光景が再び広がっていたのだ。
 確かに滅ぼしたはず……その手応えはその手に間違い無くあった筈なのだ。
 だが。
『ふふふ……さぁ、今日も幸せに過す日々を始めましょう♪』
 何処か嬉しそうなシスターの声色が、遠く離れたペッカートの所にも聞こえてくる。
 そして、そんな村を見つめるように、遥か上空にはアインハインの姿。
『……ボクの理想郷。それを、邪魔するあいつらは……絶対に許さないんだ……』
 決して声は荒げぬものの……明らかに怒気を孕んでいるのが分る。
 恐らく、彼はイレギュラーズ達を始末するために再び理想郷を作り、誘いだそう……という事なのだろう。
 彼にとっての理想郷……理想を映し出した人々と共に、イレギュラーズを殺す。
 ……そんな彼の歪んだ願いは、作り物の理想郷を鏡の如く映し出し、イレギュラーズの来訪を待つのであった。


「……という訳だ。どうやら奴も、掃討に頭に来ているみたいだ」
 戻りしペッカートの言葉……それを聞いたルリアは。
「……そうですか。本当危険な状況の中、確認してきて戴き、ありがとうございます」
「いんや、別にレの気紛れだから気にすんな。ま、という訳で……恐らく『アインハイン』とか言う遂行者は、ここで決着を付ける心づもりなんだろう。『自分の理想郷』で、な」
「はい……私もそう思います。他の所からも、遂行者らが『死んだらもう二度目は無い』、と言う言葉も聞こえてきておりますので……でも、となると……彼も全身全霊で、皆様を殺そうとしてくるかもしれません……」
「今迄アインハインは、のらりくらりと戦闘を躱す様な動きを見せていました……その実力は計り知れない所があります。ですが……彼を倒さない限り、理想郷の影響は神の国に大きく及びかねません。恐らく……最後の戦いになるでしょう。危険はありますが……どうか皆様、宜しくお願い致します」
 不安気に頭を下げるルリア。
 かなりの実力者であるのは間違い無いが……彼も命を賭して向かう野ならば、こちらも相応な覚悟の下に立ち向かわねばならないだろう。

GMコメント

 皆様、こんにちわ。緋月 燕(あけつき・つばめ)と申します。
 先日は一端退避した『夢哭の『アインハイン』』ですが……今回はもう逃げる事は有りません。

 ●成功条件
  遂行者アインハインを倒し、彼の理想郷を完全に打ち砕く事です。

 ●情報精度
  このシナリオの情報精度はBです。
  依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

 ●周りの状況
  幸せな人々が棲まう、教会のような街が舞台となります。
  今回は教会の所にアインハインは居り、逃げも隠れもしません。
  彼からしては、周りの人々は完全な『使い捨ての駒』であり、自分の私欲のために利用する気概です。
  単体でも強力な相手なのに、更に駒を利用して自分の有利な戦況を進めようとしますので、ご注意下さい。

 ●討伐目標
 ・『幸福な』異言を話す者 or 人語を話す者
   アインハインの理想郷で幸福に生きている人々です。
   前回に比べると、人語を解する物は少なくなっている様で……シスターと、大人1、2名程しか言語を解しません。
   他の人々は全て『異言』を話すだけで意思疎通は皆様とは出来ません。
   ただ不思議な力で異言を話す者達と、理想郷の人々は意思疎通が出来ますし、当然アインハインから下された命令は全て聞きます。(否定する事はありません)

 ・遂行者『夢哭のアインハイン』
   遂行者、戦闘能力は極めて高いです。
   今回は、絶対に退避する事は無く、皆様を『殺す』為だけに行動します。
   基本的な攻撃手段は単体攻撃に多数のバッドステータスを組み合わせたデバッファーの攻撃タイプの様です。
   彼の『神霊の淵』を露出する事で、強力な全体攻撃(デバフ付き)が可能になります。
   これを壊す事で、遂行者は消滅するでしょう。
   とは言え強力な相手故に、そう簡単に近づく事すら出来ませんので、良く皆様で作戦を相談する様に御願いします。
   
   それでは、イレギュラーズの皆様、宜しくお願い致します。

  • <神の王国>歪んだ理想完了
  • GM名緋月燕
  • 種別通常
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2023年12月18日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

奥州 一悟(p3p000194)
彷徨う駿馬
スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)
天義の聖女
彼者誰(p3p004449)
決別せし過去
ペッカート・D・パッツィーア(p3p005201)
極夜
カイン・レジスト(p3p008357)
数多異世界の冒険者
天目 錬(p3p008364)
陰陽鍛冶師
祝音・猫乃見・来探(p3p009413)
祈光のシュネー
金熊 両儀(p3p009992)
藍玉の希望

リプレイ

●理想郷にて
「ったく……またこうして此処に来る事になるとはなぁ……」
 肩を竦め、空を仰ぐ『極夜』ペッカート・D・パッツィーア(p3p005201)。
 晴天の空、何処までも続く青空……その光景だけで言うならば、理想郷である……と言えるかもしれない。
 『神の国』と呼ばれるこの地は、『遂行者達』によって作られた、仮初めの理想郷。
 勿論遂行者それぞれによって、その理想郷の姿は一つ一つ違うが、ここは『夢哭の『アインハイン』』が思い描く、平和な街に、小さな教会が添えるようにある理想郷。
 ……イレギュラーズ達の視線の先には、教会の庭で『異言』を口にしながら遊ぶ少年少女と、その親代わりのシスターが、平穏にかけっこをしている……そんな風景が見える訳で。
「幸せそうな人々が棲まう教会の様な街、か……結構広いな……」
 『彷徨う駿馬』奥州 一悟(p3p000194)は、広がる街並みを見渡しながら一言零すと、それに『決別せし過去』彼者誰(p3p004449)も。
「その様ですね……私は前回の光景という物を知りませんが、本当に……遂行者それぞれによって、理想の世界は違う者の様ですね」
「ああ、そういう事だ。ま、本来は前回俺達がしっかりと燃やして、嬉しそうに消えていったって言うのに……あの主人に再生されちまってまぁ……ってな所だ」
「そうですか……」
 ペッカートの言葉に、瞑目する彼者誰。
 誰かに死を与えられても、この理想郷においては再び復活する定め。
 それこそが、遂行者の彼が望む世界なのかは解らない。
 ただ、少なくともこの街が、再びこうして復活しているという事は……彼がこの街で再びイレギュラーズと相まみえる事を期待している、という事の証左でもあろう。
「アインハイン……自分の理想郷での決着……」
 と、『祈光のシュネー』祝音・猫乃見・来探(p3p009413)が零した言葉に『聖女頌歌』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)と『陰陽鍛冶師』天目 錬(p3p008364)、『数多異世界の冒険者』カイン・レジスト(p3p008357)らが。
「ええ……先の戦いでも無傷で、という訳ではなかったみたいだし。希望的観測かもしれないけど、余力はもう余り無いのかもしれないね。でも、それでも理想郷の戦いを望んでいる……と言うことは、この理想郷に自信があるのかな? それとも、背水の陣で自身を追い込んでいるのか」
「確かに……自らが望んだ理想郷に棲まう人々を捨て駒の尖兵にするとはね。自分の理想も忘れたんじゃ、そもそも理想郷にも意味は無い……果たして怒りに囚われた故か、ルストの呼び声の影響、か……? まあ、どちらにせよ、僕達のやることは変わらない。こんな理想郷は、誰のためにもならないからな」
「そうだね。残念だけど、僕等と相容れない理想郷を放置する訳には行かないからね。アインハインが全力で抗うと言うなら何より、こちらも全力で相手させて貰うのだからね!」
「うん。どちらにせよ、気をつけて戦いに望まないといけない。負ける訳にはいかないからね!」
「……そうだね。仲間は誰も殺させない……僕が皆を癒すから……みゃー……」
 ぐっと拳を握りしめるカインに、祝音もこくりこくりと頷いて、気合いを入れる。
 そんな仲間達の言葉にペッカートは。
「そうだな。中途半端に俺も首を突っ込んじまったし、されとて終わらない日常をこのまんまにしていいなんて事も無い。だからこそここで終わらせてやらねーと。まぁ任務が達成出来るんなら、俺は倒れてもいーしな」
「……」
 ペッカートの言葉に、ふるふると首を振るう祝音。
「んあ? 大丈夫だって。ま、何とかなる、何とかなる」
 笑い飛ばすペッカート……その心の内にはどんな思いがあるのかは、窺い知る事は出来ない。
 まぁ、少なくとも彼との因縁を、この場で決着を付けたいというのは間違い無い。
 ……そして。
「うっし。んじゃあとっとと行くとするぜよ!」
 と『藍玉の希望』金熊 両儀(p3p009992)が力強く言葉を紡ぎ、仲間達を鼓舞すると共に、更に彼の作り出した街へと距離を詰めていくのである。

●希望郷
『いあぅあくぁああしざぁうぉがあいがずぉ?』
『あうあこがすきとはえぅがしすあぅ、まぅあぅんあぇえ!!』
『ええ。そうね。それじゃあ今日はかくれんぼにしましょうか? ん? 解りました。みんなはおいかけっこの方が好きなのですね……ふふふ』
 イレギュラーズ達が街の大広場の近くまでやって来ると共に、聞こえてきたのは……子供達の理解不可能な言葉の羅列と、それに応対するシスターの『人語』。
 全く違う言語のようなのに、ちゃんと意思疎通出来て居るのは不可解な光景……だけど、現にその受け答えは正しいようで、シスターの周りの子供達は奇声を上げながら逃げたり、追いかけたり……『おいかけっこ』をし始めている。
「ふむ? ……此処のもんは何言っとるかさっぱりわからんのぅ。これが理想郷だとは……なんとも可笑しなヤツが大将首なんじゃろうな」
「そうですね……けれども彼等が変わらずに此処に居るということ。この世界でしか生きられないということは……成長しない、未来無い子供、ということなのですよね。それはあまりにも、悲しくて寂しいではありませんか」
「そうじゃのう……」
 彼者誰の寂しげな言葉に頷く両儀。
 こうして楽しそうに遊んでいる姿……この光景は、アインハインの理想なのだろうか?
 そうとなると、あの子供達こそが、アインハインの幼少期の姿……なのだろうか?
 色々と考えればグルグルと思考が巡ってしまう……そんな悪循環。
 とは言えども、この理想郷を叩き潰さねば、平穏は訪れる事は無い。
「取りあえず遂行者アインハインは何処に居るんだろう? ……見える範囲には……居る様には見えないけどな」
「そうですね……恐らく、ですが……あの教会の中に居る様に感じます。狭い場所の方が、迎え撃つ方からすれば何かと好都合ですから」
「そっか……確かにそうだな。ってーと、仕掛けたら奴等、教会の中に引っ込んでくってことか。アインハインを囲って守られたらうっとうしいな……」
 彼者誰の言葉に頷きつつ、一悟は教会の大きさを見定め、更に錬、祝音の二人も式神やファミリアー、耳を欹てて、周囲から見つからないように出来る索敵を遂行する。
 ……その結果、至極普通の街にある、孤児院を併設した小さな教会。
 宿舎は別棟になっている様で……教会だけで言えば、さほど大きな構造ではない。
 ただ、孤児の数はまぁ多い様で……強力な戦力では無いにせよ、数の暴力で厄介な盾となり、立ち塞がることは間違いない。
 そして……アインハインの姿は、外部から観察する限り発見出来ないだろう。
「……取りあえず、周囲にアインハインは居ない様だね。寧ろ俺達のファミリアーやら式神の観察を敢えて泳がして居る、って事も十分考えられるかな」
「確かになぁ……ヤツのひねくれた性格からして、ありそーな話だぜ」
 カインの言葉に頷くペッカート、そして錬が。
「……取りあえず、裏口とかはあるけど、そこは狭くて一人二人位、しか入れなさそうだ。寧ろそれならば、真っ正面から突撃していった方がやりようはありそうだな」
「了解。ま、敵の壁は薄い方がいいだろうし、こっちから見つけて倒して行こう」
 一悟の言葉に皆も頷き、そして……両儀が先陣を切り、その広場に向けて声の爆弾を投下。
 突然の事に驚いてわーわー異言で叫ぶ子供達……それを避難誘導するかの如く、教会の中へ逃げる用に指示を与えるシスター。
 その間にイレギュラーズ達は広場へと飛び出し、教会に向けて駆ける。
 当然子供達の数は多くて、教会の入口に一気に入りきることは出来ない……でも、それこそ肉壁となって、イレギュラーズ達を教会に入れない為の盾……と変わる。
「まぁ、えい。言葉が通じんとしてもやる事は同じ。狙うんば、大将首ばじゃ。雑兵に構うちょる時間は無い! 死ねや」
 荒々しく両儀が子供達を薙ぎ払う様に攻撃すると、子供達は大した抵抗も出来ずに崩れ墜ちて行く。
 とは言え流石に数が多く、まだまだ肉壁となる子供達の数は多数。
 まるで漏斗の如く、少しずつ教会の中へと逃げていく子供達とシスター……それを引き付ける様彼者誰は。
「私が相手します……掛かってきなさい」
 と声高らかに宣言する。
 いつもならば、その声で敵陣を引き付けられただろう……だが、子供達には、上手くその効果は及ばなかったようで、逃げるのを抑えることは出来ない。
「……効果がない、ということですか」
「ああ……ってことは、やっぱり中に居るって訳か。となると、出来うる限り早急に数を減らす必要があるな」
「了解」
 一悟の言葉に頷き、錬は広域を範囲に収めた漆黒の雫で、全体的に体力を削り、更にペッカートも。
「キミらが何を考えて居るのか判らないけど、押し通るから通して貰うぜ」
 と、敵を判別した火焔の大扇で的確に殲滅する。
 二人の攻撃で、教会の入口に密集している子供達は排除し、消え失していき……続けてイレギュラーズ達が一斉に教会の中へ突入。
『やぁ……いらっしゃい。来てくれたんだねぇ……ボクの理想郷に』
 教会の中に響き渡る、澄んだ声。
 今迄に何度も聞いていたその声の主は……教会の一番奥のド真ん中、宣教台に腰掛けていた。
「おー……アインハイン。顔も見たくないと言っておきながら、わざわざ呼び寄せるような行動をして。お前、Mなのか?」
 ニヤリと笑みを浮かべながら声を掛けるペッカートに、アインハインはあっはっは、と笑い飛ばしながら。
「なーにさ。君達を呼び寄せたのは他でもない、さ。ボクの……ボクの理想郷を穢し、壊そうとするのはどうしても許せなくってねぇ? ……むしろ呼んであげたのさ。天誅を下すために、ね」
 その口ぶりは、今迄のように巫山戯ているような感じでは無い。
 真剣、かつ……その裏からにじみ出る、『怒り』の様なものを、その口ぶりからは感じ取る事が出来、軽く脚が竦む。
 でも……それに負けじと両儀は。
「はん。神の作うて貰うた世界で神気取りとは、ほんに滑稽なヤツじゃけの」
 敢えて挑発してみせるが、アインハインは。
『神気取り? 何を言ってるのさ。間違い無く、ボクは此処では『神』さ……ほら」
 パチンと指を鳴らすと、イレギュラーズと自分の間でおろおろしていた子供とシスター達を、自分の近くに足を向けさせる。
『ウうぁああうばぅうああ……』
 更に異言なる子供達は……彼に傅き、そして……嬉々たる表情を浮かべる。
『コイツらを倒さない限り、ボクには近づけない、近づかせない……そう。そしてこうすれば……』
 更にもう一つ、彼が片手を掲げ、振り落とす……すると、漆黒の闇が渦巻き、イレギュラーズの立っていた場所に炸裂。
 爆風で飛び散る教会の椅子の木片が、イレギュラーズ達に当たり……子供達含めて、傷付ける。
「っ……凄い力を、あんなに簡単に……」
 スティアが唇を噛みしめながら耐える一方で、祝音は後方から仲間達へ癒しを届ける。
 そして、その爆風が一端落ちついたところで、祝音は彼に向けて。
「キミは……護るんじゃなくて、駒にするんだね……」
 静かに告げるが、アインハインは大して気に掛けた様子も無い。
『当たり前さ……君達を殺す為に、こいつらには犠牲になってもらうのさ……ボクの、昔のように……!』
 その言葉と共に、彼の胸元に僅かに煌めく『何か』が、鈍い光と共に、更に漆黒が蠢き、漆黒の炎がろぐろをまいて、教会の中を走り回る。
 周囲が炎に包まれ、子供達の悲鳴が響く。
「酷い事を……!」
 スティアはそう言いながら、アインハインに向けて進軍。
 とは言え間に立ち塞がる子供とシスター達は、暑さに苦しみ悶えていても、決してアインハインの前からは離れない……いや、離れられない。
 苦しみの声を挙げながらも、彼を守る肉壁として立ち塞がり続ける。
 ……そんな彼等の妨害を止める為に。
「ペッカート君……村人達を……」
「ああ……言われなくても解ってるさ」
 祝音の言葉にペッカートは頷き、こちらも焔扇で対抗して道を切り拓き、更に祝音も。
「呑み込め、泥よ……作られた村人達を、終わらせる為に!」
 混沌たる汚泥で足元を覆い隠し、動きを制限、そして一悟も。
「どちらが本物でどちらが偽物か、オレは決めつけない。お前たちにとってここは理想郷。でも、オレたちにとっては世界を破滅させる歪みなんだ。わりぃけど、オレはオレの正義を貫かせて貰うぜ!」
 と爆裂一拳を振るいて、道を切り裂く。
 そう三人が道を切り拓いたところに、更に彼者誰が進軍し、左右から再び道を塞ごうとする少年達を抑えるよう、名乗りを上げて引き付ける。
「今の内に……!」
 咄嗟に叫んだ彼者誰に従い、スティア、カイン、錬、両儀の四人はアインハインへと更に接近。
『来るな……っ!』
 当然ながらアインハインは別の子供達を嗾け、その勢いを抑えつけようとする。
 だが錬、カインの二人が二枚盾となり、狭まる道を強引にでも切り開き、どうにか維持。
 間に子供達が入り込んで、両者分断される形となるが……アインハインに攻撃が届く位置までは、何とか辿り着く。
『くそっ……!! 役立たずの『オモチャ』共が!!』
 怒れる彼の叫びは、燃え盛る炎に反映されて、更に熱波がイレギュラーズと子供達の体力を削る。
 ……だが、その言葉に敢えて乗らず両儀は。
「ああ、えいえい。何を宣おうと儂にはどーでもえい。兎に角……死ねや」
 と吐き捨てるような仕草をして、魔術と格闘の併せ技を叩きつける。
『ぐ……っ!』
 流石に避けられず、その攻撃を喰らったアインハインが数歩後退。
 更にスティアが追撃するように間髪入れず。
「貴方の理想を、押しつけるような真似はさせません……!」
 と意思を魔力に換え、先程鈍く光った所を狙い済まして放つ。
『……嫌だ……っ! うう……!!』
 思わず零れた、アインハインの弱音。
 身を捩る事で、その攻撃は光りし所には当たらなかったが、肩は射抜かれ、痛みに苦悶する。
 まるで、傷痕を守る為の様な動き。
 それを横目で見ていたカインが。
「あれが『神霊の淵』か?」
 と声を上げると、アインハインは。
『知るか……っ!!』
 更に己が怒りを燃え上がらせると共に、再びその手を掲げる。
 再び鈍い輝きが起こり、更にその手に渦巻く『負の気配』を作り出し……それをスティアに投げ放つ。
 直撃は避けるものの、負の感情に苛まれ、動きが鈍る。
 更に其処へ、子供達が取り囲むように動く。
「くっ……しっかりせぇ!」
 咄嗟に両儀が、密集しようとする子供達を力尽くで引き離し、薙ぎ払う。
「何……だったの?」
 ありとあらゆる負の感情の去就。
 蔑まされ、罵倒され、殴られ、蹴られたような……そんな声と、衝撃。
「大丈夫か?」
 錬が強く肩を叩く……そして、数秒後に正気を取り戻したスティア。
「……大丈夫」
 それが……アインハインが今迄に感じていた苦痛や経験なのだろうか。
 勿論、それを彼が語る事は無い……ただただ、イレギュラーズを殺そうと、今は行動している。
「アインハインさん……貴方」
『うるさい……っ!!』
 完全なる拒絶を叫ぶ彼……スティアは瞑目し。
「……解りました。容赦はしません」
 覚悟を決めたように、再び意識を集中。
「両儀さん、カインさん……牽制を御願いします」
「了解……頼むね」
 カインがスティアの肩を軽く叩き、そして二人は子供達を押し退け、アインハインに近接。
 彼の動きを制限する様、牽制の連続攻撃を嗾け、そしてその隙にスティアが真っ正面に対峙。
『くるなっ、くるなくるなくるなっ!!』
 子供の様に、声を荒げる彼の胸元に光る……小さなロザリオ。
 そこを狙い済まして、スティアの神を滅する一閃が放たれる。
『……ああああああ!!!』
 当然、避ける事は出来ず……その一閃は、ロザリオを打ち砕いた。

●悲壮郷
「ふぅ……終わったみたいだな」
 息を吐く一悟。
 周りを取り囲んでいた多数の子供とシスターは……まるで幻だったかの様に姿を消した。
 更に居た筈の教会も、街も……全てが幻かの如く消え去り、空は暗転。
 清々しかった景色は全てが真逆の陰鬱たる気配に変わり果て……そして静寂に包まれる。
「アインハインを倒した事により、彼の掛けて居た幻が全て消え失せた……という事なのかもしれねぇな」
「だろうなぁ……正直ヤツの理想ってのは、良く解らなかったケド」
 一悟の言葉に頷くペッカート。
 ……そんな仲間達の言葉に対し、瞑目し……トドメを刺したアインハインの居た地面を撫でるスティア。
 すると……砂の下から、破片となったロザリオの金鎖の破片。
「……どうしたの?」
 と祝音がスティアを心配する様に声を掛ける。
「……ううん。何でもない。みんな、お疲れ様。無事に遂行者を討伐出来たね! 報告しに、急いで帰ろうか!」
 振り返り、笑顔を見せる彼女。
 祝音はそんなスティアの仕草に……何となく気づいたようで。
「そうだね……帰ろう」
 そして、皆が帰路へと向かう中……祝音は、一人立ち止まって。
「……さよなら、アインハイン。安らかに……ねむって……」
 と、誰へも聞こえない位に小さな声で……哀しき遂行者へ言葉を紡いだ。

成否

成功

MVP

スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)
天義の聖女

状態異常

なし

あとがき

皆様ご参加頂きまして、ありがとうございました。
遂行者アインハインは撃破されました。
彼が何故遂行者だったのか、その理由はこのリプレイの中にちりばめられています。
復活する事はありませんが……彼のひねくれた性格が何故生まれた之か、少しでも感じ取ってくれれば……嬉しいです。

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