PandoraPartyProject

シナリオ詳細

がしゃ髑髏が夜を行く

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●飢餓魂魄
 その日村の墓守をしているクルタ老人は、やけに目が冴え眠ることができなかった。
 こんなことは今まで一度もなかった。内心に感じるモヤモヤはやがて不吉な予感を感じさせ、クルタ老人はついに我慢が出来ずベッドを飛び出した。
 ランタンの明かりを頼りに、裏山の管理している墓を見回ることにする。何も無ければそれで良い。暖かいコーヒーでも飲んでゆっくりと眠れるはずだ。
 草花を踏みしめながら昇る坂道。なんでだか、とても夢見心地で目に映るものが幻のようにも見えた。
 ――だからだろうか。
 隣を通り過ぎる女性の影に気づくことはできなかった。
「――はて? 今誰かが通り過ぎたような……」
 頭を押さえるクルタ老人は今一度足に力を入れるとフラフラと墓の方へと歩いて行った。
 とても長い時間が経ったような気がする。裏の庭に様子を見に行くようなもののはずだったのに、どうして?
 疑問は形にならず、ただ歩みを進める。そして気づく。草花を踏みしめる音の他に、耳障りな異音が繰り返していることに。
 ガチガチ……ガチガチ……。
 何の音だろうか、まるで硬質ななにかを鈍く響かせるような、異音。
 クルタ老人は急に怖くなって、やっぱり帰ろうと、身を翻そうとした。その時、墓場の空気が一変したように感じた。
 月光の輝きを受けて、現れるは髑髏の巨体。
 ゆっくり、ゆっくりと身体を引き摺り歩く。
「あ……あぁ……」
 この世ならざる異形を目にしたクルタ老人はランタンを落としてしまう。夜の静けさを破壊する一際高い金属音が響いた。
「ひと……ヒト……人……!」
 髑髏がその巨大な手を伸ばすと、指先から次々と骨の怪物が生まれてくる。それは生者を貪ろうとする死者の行進。
「わ、わあああ――!!」
 クルタ老人はついに我慢できなって大声を上げると走って逃げ出した。逃亡中何度も転び、靴もどこかへ行ってしまったが構うことはなかった。
 家に帰って頭を抱え怯え震える。
 どうか襲われませんように。それだけを望み神様に祈った。
 そうして夜が明けて――クルタ老人はあれが現実だったと思い知る。
 荒れた墓、巨大な何かが通ったような跡。それは墓から離れると突如痕跡が消えていた。
 クルタ老人は慌てて領主へと、自分の見た光景を伝える。
 奇しくも同じ時期、同様の報告が挙げられたばかりだった。
 領主へと持ち込まれたこの怪奇現象は、回り回ってローレットへと持ち込まれるまで、そう時間はかからなかった。


「がしゃ髑髏……或る世界にはそんな名前のヨウカイがいたそうね」
 依頼書を手にした『黒耀の夢』リリィ=クロハネ(p3n000023)が今回のターゲットを表してそう名付けた。
「巨大な髑髏の怪物が、夜な夜な、未練持つ死者の魂を吸い上げ吸収しているそうな。
 その戦闘力は未知数、その上自身の骨から無数のスケルトンを生み出すようね。とても厄介な相手だわ」
 リリィは依頼書の地図に記しを付ける。少しずつ移動するがしゃ髑髏が次に現れるであろうポイントに狙いをつけた。
「私のギフトによる情報も加味してだけれど、ここ幻想北部のオートパス村の墓地で間違いないと思うわ。
 あとは――遭遇した貴方達の腕の見せ所ね」
 墓を荒らすがしゃ髑髏。その目的が何処にあるのかは不明だが、野放しにして良いはずはなかった。
「時季外れの怪談話だけれど、頑張ってね」
 リリィに依頼書を手渡されたイレギュラーズは、さっそく準備へと取りかかるのだった――

GMコメント

 こんにちは。澤見夜行(さわみ・やこう)です。
 魑魅魍魎が夜を行く。
 百鬼夜行は殿の、がしゃ髑髏をご覧あれ。

●依頼達成条件
 がしゃ髑髏の撃破

■失敗条件
 がしゃ髑髏の撤退

●情報確度
 情報確度はAです。
 想定外の事態は起こりません。

●がしゃ髑髏について
 巨大な髑髏の怪物。
 およそ六メートルの体長で、足を引きずるようにして動きます。動きは遅いです。
 その手で相手を握りつぶす攻撃の他、大きな頭蓋骨の口を開き噛み付きもしてきます。
 伸ばした手から無尽蔵にスケルトンを生み出し攻撃の手駒とします。
 一度に生み出されるスケルトンは三体で、そう強くはないですが、一撃で倒すのは難しいでしょう。
 また、がしゃ髑髏はその巨大さからブロック・マークは有効ではありません。複数人で行えば効果も見込めますが、効果的とは言い難いでしょう。

 がしゃ髑髏は墓地に漂う魂魄や霊魂などを吸収しています。
 墓地から吸い上げるものが無くなったと判断すれば移動を開始し消え去るでしょう。
 戦闘開始から撤退が完了するまでにかかるターンは、二十ターンで、がしゃ髑髏行動時に撤退が完了となります。

●戦闘地域
 幻想北部のオートパス村にある墓地になります。
 時刻は深夜二時。
 墓石が乱立する状況なので足下に注意しましょう。
 周囲には目立つ障害物等はありません。戦闘に集中出来るはずです。

 そのほか、有用そうなスキルやアイテムには色々なボーナスがつきます。

 皆様の素晴らしいプレイングをお待ちしています。
 宜しくお願いいたします。

  • がしゃ髑髏が夜を行く完了
  • GM名澤見夜行
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年10月31日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

鳶島 津々流(p3p000141)
かそけき花霞
ポテト=アークライト(p3p000294)
優心の恩寵
御堂・D・豪斗(p3p001181)
例のゴッド
鬼桜 雪之丞(p3p002312)
白秘夜叉
不破・ふわり(p3p002664)
揺籃の雛
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
フローラ=エヴラール(p3p006378)
白き閃刃
モルセラ・スペアミント(p3p006690)
特異運命座標

リプレイ

●丑三つ時に現れるもの
 背筋に緊張を齎す冷たい風が吹きすさぶ。
 深夜。
 或る世界では丑三つと呼ばれたその時間は、混沌においてもどこか不気味さを漂わせる――まるで黄泉へと至るような――そんな静謐と、緊張を漂わせていた。
 そんな一歩踏み外せば非日常にも思える世界――オートパス村からほど近い墓地――へとイレギュラーズは進んでいた。
 用意したカンテラの明かりが弱々しく道を照らす。
 どこか心細い雰囲気を払拭するように――思い出すように『行く雲に、流るる水に』鳶島 津々流(p3p000141)が口を開いた。
「がしゃ髑髏かあ。僕も知っている存在が出てくるなんて、流石混沌だねえ」
 あやかしが跋扈する、現代日本と呼ばれる世界に”似た”世界より召喚された津々流にはその名は馴染み深いものだ。現れるであろう容姿も想像がついていた。
 とはいえ、混沌製がしゃ髑髏はどうにも意地が汚いようだ。墓場に漂う魂を吸収するというのは頂けない。
 被害が大きくなる前に、対処の必要があると津々流は考えた。
「妖怪とかそういった類いか?
 季節外れの怪談……秋に遭遇するとは思わなかったが、これ以上被害が広がる前に倒したいものだな」
 津々流の考えに同意するように、『優心の恩寵』ポテト チップ(p3p000294)が呟く。
 夏に怪談が多いのは納涼といった側面も多いかもしれない。話を探していけば、一年通して怪談というのはあるだろう。とはいえ、やはり季節はずれなのは否めないが。
 そんな怪談もカカッと笑って砕くのは『不知火』御堂・D・豪斗(p3p001181)、この人だ。全身を発光させながら、ずいずいと歩いて進む。
「デッドマンズのソウルを乱すはライフのサークルに反す!
 ゴッドワールドだけではなく、このワールドでもそうであろう!」
 混沌において、死者の魂がどのように輪廻転生の輪に組み込まれるかは実に興味深い話だが、ゴッドである豪斗との感性からすれば、やはり魂を奪い己を強大なものとするあやかしの存在は看過できぬものであろう。
 静かに眠る魂達が落ち着いて次の人生を歩めるよう、その眠りを妨げる外法の者は排除せねばならないのだ。
 そんな豪斗の背に捕まりながら辺りをキョロキョロと忙しなく見て回るのは 『永劫の探求<セラエノ>』アーリア・スピリッツ(p3p004400)だ。
「こここわくないわよぉ、なんていったってこっちにはゴッドもいるし聖なる水(お酒)だって飲んできたもの!
 でも心なしか寒いのは気のせいよねぇ……」
 強がって見せるが、やはり周囲の雰囲気に飲まれどこか心細さを感じさせる。アーリアの場合こういったときは飲み続けたほうがいい気もするが、酔いつぶれられても仕方ないので、豪斗を盾にぜひ怖がって貰いたい。
「がしゃ髑髏……他の世界にはそのような魔物もいるのですね」
 全身を発光させながら、他世界の妖怪――がしゃ髑髏なる存在に興味を持つ、フローラ=エヴラール(p3p006378)。仲間の話を聞けば、巨大なスケルトンが頭に浮かぶが、その呼び名や纏う雰囲気はやはりスケルトンとは異なるものだ。
 どのような相手か興味は尽きないが、目的不明の魍魎を放って置くわけにはいかない。その存在を確かめるより、討伐を優先するべきだろうと考えていた。
「各地を回って墓を荒らしていく行動――
 その割に墓地以外で見られていないのかしら? 土に潜っているのかそれとも……」
 イレギュラーズの中、がしゃ髑髏の存在よりも、その目的、行動原則に興味を持ち思考を巡らせていたのは『特異運命座標』モルセラ・スペアミント(p3p006690)だ。
 イレギュラーズとして初の依頼ながら、その思考は熟練のものにも思える。物事考える視点、その方向はかなり良いポイントを突いているだろう。
 そのような思考、思索の中進み続けたイレギュラーズは、オートパス村の墓場へと辿り着く。
 明かりもなくただ静かに墓石が並ぶ中を、ひたりひたりと歩む。
 吹きすさぶ風が肌を攫い、どこか言いしれぬ寒気を感じさせる。
「妙な気配はなさそうか――?」
 ポテトが保護結界を張りながら周囲へと視線を巡らせる。仲間達も立ち並ぶ墓石に視線を巡らせながら、生まれるわずかな緊張を少しずつ大きくしていった。
 ――風が、冷たい。
 その冷たい、風が、――がしゃり、と鳴った。
 ガチガチ……ガチガチ……がしゃり……がしゃり――
 夜の静寂を裂く、その異音。
 イレギュラーズが視線を向ければ、嗚呼、いつからそこに現れたのか、六メートルにも及ぶ巨体を引き摺る巨躯の骨。
「ひと……ヒト……人……!」
「現れおったな!」
 イレギュラーズが見上げれば、月光を遮る巨大な頭蓋。その伽藍の双眸が、確かにイレギュラーズを捕らえていた。
 ガチガチ……ガチガチ……がしゃり……がしゃり――!
 闇を震わす巨大な骨の手が、イレギュラーズを掴もうと伸ばされる。その横薙ぎを回避し間合いを取ったイレギュラーズは武器を構えた。
「ここは死んだ人が安らかに眠る場所。
 そんな場所を荒らすなんて『めっ』なのです」
 自分の数倍は在ろうかという巨大な骨を前にして、『揺籃の雛』不破・ふわり(p3p002664)は叱りつけるように言葉をかける。がしゃ髑髏なる妖魔妖怪を大人しく眠りにつかせるために、武器を強く握りしめる。
 そして、がしゃ髑髏を前にして、奇縁を強く感じる者が一人。
「こちらの世界にも、居りましたか。縁とはまこと、奇怪でございますね。
 がしゃ髑髏――拙も、そう呼ばれることもありました」
 漣の小太刀――蛟をユラリと抜き放つは夜叉子『朱鬼』鬼桜 雪之丞(p3p002312)。人骨なる怪物を前に、苛立たしさを覚え目を細める。
「――故に、滅しましょう。
 その在り様は酷く、拙の癇に障ります」
「――ガガチッチッ――去ラ……ヌカ……」
 屍と屍が鳴り響く。その不協和音が言葉となって鼓膜に響く。
「――ナラ……バ……喰ラウ……マデ――!」
 がしゃ髑髏の巨大な下顎骨が開く。暗礁を思わせる無明の闇が広がる。
 百鬼夜行は殿の、がしゃ髑髏との戦いが始まった――

●闇震わす屍 其はがしゃ髑髏
 がしゃり……がしゃり――!
 奇怪な音を立てて、緩慢に動く骨が、次から次へと彷徨う骨――スケルトンを生み出していく。
 生み出されたスケルトンはまるで何者かの意思に従うように、イレギュラーズへと迫り、嬲り、その身を喰らおうと白骨の顎を咬む。
 事前情報から、がしゃ髑髏は某か墓場のエネルギー――魂のようなものを吸収し、その後去るということがわかっている。
 逃せば、いずれ大きな災いとなって戻ってくるだろうことは予測できる。故に、イレギュラーズはなんとしてでも、ここでがしゃ髑髏を消滅させたいと考えていた。
 その為の作戦、役割分担は、悪くないものと思われた。
 がしゃ髑髏へのアタックを津々流、豪斗、ふわり、フローラとし、特に豪斗とふわりの対アンデットに対する優位は、がしゃ髑髏及びスケルトンどちらを相手にしても心強い。
 そしてそのアタックを支えるのは、支援・回復役のポテトと、敵視を稼ぐ雪之丞だ。ポテトの祝福によって継続的なアタックを維持することができたし、その敵視を一身に稼ぐ雪之丞の活躍は、仲間達を安心させるに足る働きだったと言えよう。
 無尽蔵に増えるスケルトンを相手取るアーリアとモルセラもその役目は期待以上に熟していただろう。
 アーリアの封印は残念ながら効果を認めることができなかったが、その分スケルトンを複数体巻き込む甘い菫色の囁きは、確かな効果と共にスケルトン達を封殺し、自由にさせることはなかった。
 モルセラは、そのアーリアの攻撃を補佐しながら鋭い観察眼を持って戦いに望む。特にがしゃ髑髏の発生に核になるものがあるのではないか? という推察と、それに即した聖水をがしゃ髑髏が抱える虚無へと投げ込む行為は、真実的を射ているかのようにがしゃ髑髏を苦しみの中へと誘った。
「もう、次から次へと沸いてくるわねぇ……!
 後半のことを考えるとそろそろ範囲は難しいかもぉ」
 神聖さを帯びるエクストリーム鏡開きでスケルトンの頭蓋を叩き割って行動不能にするアーリアは愚痴る。役割分担をすれど、がしゃ髑髏の撤退前にその攻撃を集中する算段のイレギュラーズは、余力を残しておく必要があるのだ。
 範囲攻撃の手数が減れば、その分スケルトンは続々と増えていく。そう脅威な相手ではないが、囲まれれば然しものイレギュラーズも無事ではいられないだろう。
「墓地の中をウロウロと動くわね……。
 このっ、邪魔よ――!」
 邪魔なスケルトンを衝術で吹き飛ばし、味方が動けるスペースを作るモルセラ。墓場の中を彷徨うように動くがしゃ髑髏に翻弄されながら、しかしその動きを妨げようと立ち回る。
 周囲をよく見ているモルセラは、ポテトのサポートも行い、イレギュラーズの体勢を磐石のものとしていた。ただ当然ながら、サポートに回ればその分手数は減ってしまう。少しずつスケルトン達が増えていくのを感じていた。
「皆さん、離れて下さい! これなら――!」
 フローラが至近で戦う仲間に注意を喚起し、簡易飛行によって一気に敵陣へと切り込む。月光の魔力を湛える両手剣を大きく旋回させれば、生み出されるは戦鬼の暴風。スケルトンを巻き込みながらがしゃ髑髏にもダメージを与えていく。
 こうしたフローラの範囲攻撃は、続々と増えていくスケルトンを消耗させるのに一役買っていた。アーリア、モルセラ、そしてフローラの三人によって、どうにかスケルトンに囲まれずにイレギュラーズは戦えていたのだ。
 そうしてイレギュラーズがスケルトン達を消耗させて戦っている最中、がしゃ髑髏の動きに変化が見られた。百秒が経とうという頃合いだ。
「この方向……墓地から出ていく――?」
「皆さん、時間です! 作戦通りがしゃ髑髏を狙いましょう!」
 モルセラががしゃ髑髏の動きを見抜き、フローラが作戦が後半に入ったことを伝える。イレギュラーズの一斉攻撃が始まった。
「ユー達のパゥワーをフルタイムに示せ!
 皆最後までスタンドアップして戦い抜こうではないか!」
 仲間達を鼓舞し、そして、自らの名乗りで増えすぎたスケルトンを引きつけるのは豪斗だ。
 がしゃ髑髏の引き摺る足を狙うフローラに呼応し、豪斗もまた足を狙って遅滞を試みる。この試みは悪いものではなかったが、残念ながら大きく影響したとは言い難い。
 しかし、豪斗の放つ聖なる光が不浄なるこの者たちにショックを与えたことは間違いなく、その効果によって仲間達の放つ攻撃をより良い物に変化させていた。
「逃しは、致しませぬ。
 本能で、邪魔されたと思うのであれば、拙を、しかと見るが良いでしょう」
 雪之丞が小太刀片手にスケルトンの合間を駆け抜けがしゃ髑髏へと接近する。霊気を籠め、硬質化した手が凜とした柏手を打ち鳴らす。同時、がしゃ髑髏へと吸い込まれるだけの灯火――霊魂ともいえるもの達が雪之丞へと吸い寄せられる。
 己に課した制約により、それを喰らうことはできないが、獲得した魂を奪われ、がしゃ髑髏の本能がそれを許さなかった。
 一時、撤退する足を止め、雪之丞へと振り返る。
「その隙は、逃さないよ……!」
 無数の見えない糸でがしゃ髑髏に呪縛を与えていた津々流が、一気に距離を詰める。走りながら放つは青き衝撃。暗闇切り裂く青が動きを止めたがしゃ髑髏に直撃する。続けて近距離より放つは鮮やかな火花。無数の赤が暗闇に輝き、がしゃ髑髏へと襲いかかる。
 比較的、威力の小さい津々流の攻撃だったが、連続行動の手数によって、それを補うことができた。自らの精神力が続く限り、青と赤の力を叩きつける津々流――その勢いにふわりも後を追う。
「回復はポテトお姉さんにお任せするのです。覚悟完了済みなのです」
 スケルトンに襲われ、その身に大きな傷を負いながらも、ふわりはがしゃ髑髏へ向け聖なる光を放つ。
 その神秘攻撃力と不浄を許さない強き意志は、確かな力となってがしゃ髑髏に叩きつけられる。
 ふわりは、がしゃ髑髏のスケルトンの増加を止めるべく、その巨大な手に注目していた。狙いは悪くないようにも思えたが、残念ながらその巨大さ故か、手の破壊には至らなかった。効果が認められないと分かればしっかりと狙いを変える様は、聡明なふわりだからこそか。
 堅実に、ダメージディーラーとしての役目を果たすふわりの活躍は十分なものと言えるだろう。
 こうしたイレギュラーズの集中攻撃によって、がしゃ髑髏の骨にヒビが入り、ボロボロと砕けていく。
 しかし、それでも消滅までには至らない。
 ゆっくりと、しかし確実に墓場からの撤退を進めるがしゃ髑髏。同時に生み出されるスケルトンは増え続け、三十近い数が戦場を跋扈する。
「くっ……これは――!
 モルセラ、回復に回ってくれ。手が足りない――!」
 一人イレギュラーズを支えるポテトの悲鳴は当然と言えた。一人あたり四体近いスケルトンがイレギュラーズを攻撃している。
 そう強くはない相手だが、囲まれてしまえばイレギュラーズと言えど耐えきることなどできないのだ。
 前衛で戦う者から次々とパンドラの輝きを宿して復活し、後がなくなってくる。これをポテトの責任と取るのは酷だろう。むしろよくここまで持たせたと褒めるべきだ。
 モルセラと共にポテトが必死にイレギュラーズを支える。
 後の無くなったイレギュラーズだが、当然がしゃ髑髏も余裕があるわけではない。どちらが先に倒れるか、勝負だ。
「ヲ……ヲォ……ヒト……ひと……人ォ――!」
 這いずり逃げるように墓場の外へと向かうがしゃ髑髏。スケルトンに囲まれながらイレギュラーズが追いすがる。
「邪魔よぉ!」
「逃がしません――!」
 アーリアの青き衝撃がスケルトンを弾き飛ばし、空中より肉薄するフローラが戦鬼となって暴風を生み出す。
 カラカラと音を立ててスケルトン達が消し飛べば、見事にがしゃ髑髏への道が開ける。
 津々流が見えない糸でがしゃ髑髏を縛り上げ、動きを止めることに成功すると、豪斗とふわりが距離を詰める。
 襲い来るスケルトン。
 柏手が鳴り響き、いくつかの注意が雪之丞へと向けられる。捨て身の行動をとった雪之丞を含め、イレギュラーズの幾人かが殺到するスケルトンの波に飲まれるが、その合間を縫って、豪斗とふわりががしゃ髑髏を射程に収めた。
「フィニッシュである!」
「終わりなのです」
 二条の光が、不浄なる魍魎を清め葬り去る。
「オヲォォ……消エ……ル……」
 巨大な骨が光に飲まれ、その端から消滅していく。
 ガチガチ……がしゃり――
 異質な音を立てていた風が止み、静謐が戻れば、そこには最初からなにも無かったかのように、暗々とした闇が広がるのみとなった。
「終わったか――?」
 纏わり付く骨が動きを止めて、消えたがしゃ髑髏と同じように消滅していく。
 静けさの戻る墓地で、イレギュラーズは魍魎たるがしゃ髑髏を討伐することができたのだと、実感するのだった。

●夜行く風は留まらず
 静けさの戻った墓地で、イレギュラーズは傷を癒やし一息つく。
「なんとかなってよかったねぇ。一時はどうなることかと思ったけど」
「そうだな。……ああ、本当に皆無事でよかった」
 津々流の言葉に頷くポテトが、ギフトを用いて周囲の植物を育て花を咲かせる。静かに眠っていた魂達へ供えるように、小さな花を墓に置いていく。
「スケルトンもダァイしたようであるな!
 その身もろとも消えるとはなんとも奇怪である!」
「喰ろうた魂も、解放されたようでございますね」
 周囲を漂う白い御魂を確認する雪之丞が、安心したように呟いた。
「騒がしくしちゃったの、ごめんなさい」
 礼儀正しく墓に手を合わせて一礼するふわりは、暗がりを照らす豪斗とフローラの二人を羨ましげに見る。”発光”がどうにもお気に入りのようだ。
「lalala――……」
 墓地に響く歌声はアーリアのものだ。せめて鎮魂歌でも、と歌うその声は魅惑の声である。
 さざめく魂達は、誘われるかのように周囲を蠢き、墓石へと還っていく。
「恐ろしい相手でした。
 あのような怪物――ヨウカイというのは多いのでしょうか」
 墓地に異常がないか見て回ったフローラが、他所の世界に伝わる妖異妖怪について思考する。無辜なる混沌にすら出てくるようなモノなのだとしたら、更なる出現が考えられるからだ。
「自然発生とは考えにくいわね。
 だから――……、これかしらね」
 鎮魂を終え、周囲へと注意を向けたモルセラが、太い異質な骨と、一枚の紙で形作られた人形(ひとかた)を発見する。
 それらが意味することは――やはり、何者かによる儀式や、召喚によるものなのではないかと推察することができるだろう。
 だとすれば、今後も同じような事件、事案が発生する可能性は高い。
 吹きすさぶ、肌を攫う生ぬるい風が、不吉な予感を感じさせるのだった。
 鎮魂を終えたイレギュラーズがオートパス村へと戻ろうと歩みを進める。
 がちがち……がしゃり――……。
 夜を行く風が、どこかで異質な音を奏でた気がした――

成否

成功

MVP

不破・ふわり(p3p002664)
揺籃の雛

状態異常

なし

あとがき

澤見夜行です。

作戦もよく練られていて役割分担もバッチリでした。少々スケルトンへの攻撃が少ないかな? とも思いましたが、なんとかなりましたね。
がしゃ髑髏撤退までの猶予はほとんどなく、結構ギリギリでした。
描写外での戦闘不能、復活によるパンドラの消費がありますが、名誉の負傷と思ってくださいな。

MVPは小さい身体で一番のダメージを稼ぎだしたふわりちゃんへ。よくがんばりました!
そして最後の最後まで敵の注意を引きつけた雪之丞さんには称号を贈ります。

依頼お疲れ様でした!

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