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シナリオ詳細

再現性東京202X:the beautiful weak day

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ある生徒のウィークデイ
 スマホのアラーム音に目を覚ます。お気に入りのミュージックは、今このときだけはけだるげだ。
 あと五分とスヌーズするも、近づく時間は待ってはくれない。
 少年はあくびをしながら起き上がり、壁際のハンガーにかかった学生服を見た。
 希望ヶ浜学園の制服はきっちりと上下がハンガーにかかり、袖を通されるのを待っている。
 パジャマを脱いでそれに着替える。しゅるりという衣擦れの音が、いつも通りだ。
 鏡を見て寝癖を直し、適当に支度を済ませるとスマホを掴んで家を出た。

 学校の授業は、正直に言ってだるい。
 教師の目を盗んでいかに眠れるかを試す場所だ。
 おかげで成績は酷いものだが、少年には諦観の心があった。
 黒板の前では歴史の授業が語られる。日本の歴史についての授業だ。それこそ、意味が無いのに。

 退屈な授業が終われば放課後だ。
 今日はどこに寄って帰ろうか。カフェ? ハンバーガーショップ? それともドーナツショップ?
 少年は一通り迷ったあげく、財布の中身を見つつドーナツショップへ向かうことにした。
 確か秋の新作ドーナツが発売されていた筈だ。スイートポテトをモチーフにしたドーナツだとか。味を想像しながら店へと入り、早速注文。
 味は……期待通り!

 鳴り響くスマートホン。
 画面を見れば、緊急招集の知らせがあった。
 さあ、いかなくては。
 向かうは一路、学園の校長室。

●ある生徒の秘密の時間
「よくきたな。待っていたぞ」
 ソファに腰掛け、煙草を吹かす黄泉崎ミコト校長。校長はにやりと笑い、タブレットPCの画面を見せてきた。
「『はいだら姫』という怪異だ。都市伝説が具現化した存在のようだな。元の都市伝説は?」
 尋ねてくる校長に対して首を横に振ると、いいだろうとタブレットPCを操作する。テレビ画面にキャストされたそれに映し出されたのは、希望ヶ浜地区にあるイントラネットだ。どうやらオカルトサイトらしい。
「黄昏時に現れ学生を捕まえるとそのまま引き摺って攫うという都市伝説だな。
 まあ、よくある怪談話だが……そいつが夜妖として力をもってしまったらしい」
 悪性怪異:夜妖(ヨル)。それはこの街に存在する怪異の総称である。
「はいだら姫は一見してよそ行きの服を着込んだ女性に見えるが、その身長は3m以上あり、長い腕から繰り出す怪力は人を引きずり回すのに充分だ。遭遇したら引きずり回されないように注意しておけよ。あるいは、あえてそうされて隙を作るのもいいだろう」
 では、いってこい。
 そう送り出された校長室から少年は出ると、スマホに表示されたマップアプリに従って夜妖『はいだら姫』の現れるスポットへと急ぐのだった。
 夜に沈む町の中へと。

 少年の日常と、非日常。
 その二つが、交差する。

GMコメント

 このシナリオではあなたの希望ヶ浜における『日常』と『非日常』をそれぞれ描くことができます。
 あなたは希望ヶ浜学園の生徒として、あるいは教師として特待生という形で仮の立場を与えられています。地区内にはあなた専用の宿舎などもあるでしょう。
 あなたの自宅での目覚めから放課後までの日常を、まずは描いてみましょう。
 そんなあなたの日常は、スマホに表示される呼び出し通知によって非日常へと切り替わります。
 校長室に呼ばれ夜妖の説明を受けたあなたは、すぐさまマップに表示されたスポットへと急行し、現れる夜妖と戦闘を繰り広げるのです。

 これはあなたの美しき日常。その一幕となるでしょう。

●前半部:日常
 あなたはどんな場所に居を構えていますか? 一軒家が与えられているのでしょうか。
 それとも宿舎で寝起きしているのでしょうか。学園生活を十全に送れるようにと手配されたその宿舎には、あなた以外の生徒も暮らしていることでしょう。
 すこし退屈な授業を終えたあなたは、放課後の予定に心を弾ませます。
 現代日本をモデルとしたこの町は、現代日本によくあるカフェやレストラン、ファーストフードショップが溢れた都市です。放課後をエンジョイしましょう。

●後半部:非日常
 あなたをスマホもとい携帯端末aPhone(アデプト・フォン)が呼び出します。
 どうやらあなたはこの街に出現した夜妖との戦いを依頼されてしまったようです。
 出現した怪異の名は『はいだら姫』。
 怪力と巨躯が武器の恐ろしい怪異です。皆で力を合わせてこの怪異を倒しましょう。
 そして、この街の日常を密かに守るのです。

----用語説明----

●希望ヶ浜学園
https://rev1.reversion.jp/page/kibougahama
 再現性東京2010街『希望ヶ浜』に設立された学校。
 夜妖<ヨル>と呼ばれる存在と戦う学生を育成するマンモス校。
 幼稚舎から大学まで一貫した教育を行っており、希望ヶ浜地区では『由緒正しき学園』という認識をされいる裏側では怪異と戦う者達の育成を行っている。
 ローレットのイレギュラーズの皆さんは入学、編入、講師として参入することができます。
 入学/編入学年や講師としての受け持ち科目はご自分で決定していただくことが出来ます。
 ライトな学園伝奇をお楽しみいただけます。

●夜妖<ヨル>
 都市伝説やモンスターの総称。
 科学文明の中に生きる再現性東京の住民達にとって存在してはいけないファンタジー生物。
 関わりたくないものです。
 完全な人型で無い旅人や種族は再現性東京『希望ヶ浜地区』では恐れられる程度に、この地区では『非日常』は許容されません。(ただし、非日常を認めないため変わったファッションだなと思われる程度に済みます)

  • 再現性東京202X:the beautiful weak day完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年11月23日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

マカライト・ヴェンデッタ・カロメロス(p3p002007)
黒鎖の傭兵
十夜 蜻蛉(p3p002599)
暁月夜
メイメイ・ルー(p3p004460)
祈りの守護者
一条 夢心地(p3p008344)
殿
ノルン・アレスト(p3p008817)
願い護る小さな盾
ライ・ガネット(p3p008854)
カーバンクル(元人間)
佐藤 美咲(p3p009818)
無職
囲 飛呂(p3p010030)
きみのために

リプレイ

●『黒鎖の傭兵』マカライト・ヴェンデッタ・カロメロス(p3p002007)の日常
 スマートホンのアラームミュージックをスヌーズさせながら、マカライトはぼんやりとだけ考える。
(輝かしき学園生活……ってのは側から見ると凄い眩しいもんだ。
 もう学校なんて何年も前の話だからなぁ……あの頃は良かった。
 はぁ、今日も一日頑張るかぁ……)
 何回かのスヌーズを終え、布団から起き上がる。
「ってか何年で効かねえか……」

 マカライトのアパートは学園まで徒歩数十分。仮の住まいとしては充分過ぎる好立地だ。
 学園での扱いは歴史科目の教師だが、要は非常勤講師。主な仕事は用務員である。
「せんせーおはよー」
「ああ、おはよう」
 生徒と何気なく挨拶を交わしつつ、マカライトは用務員室へと向かう。
 希望ヶ浜学園は変な学校なので用務員も複数いるらしく、マカライト用のロッカーを開くとそこには用務員用のツナギがかかっていた。
 そいつを手に取り、着替えるマカライト。
 そして手に取るのは、掃除用具だ。
「これが定職、ってやつか」

 学校の清掃をしていると、たまにサボりの生徒を発見することがある。
 マカライトはサボりを許さない派だ。表面上やんわりと注意しておきつつ、あとでバレないよう担任の講師に場所をガッツリ報告しておくのである。
 その一方で生徒との距離は近く、昼休みや放課後に顔を出す生徒には茶菓子を勧めたりする程度の付き合いはできていた。
「さて、今日はこんなところか」
 夜も更けてきた頃合いだ。今日は帰りに居酒屋にでも寄っていこうか……。
 そう考えた矢先、ポケットの中からスマホが鳴り響いた。
 着信音ですぐに気付く。
「定職に就くとこれがあるんだよなぁ……」

●『暁月夜』十夜 蜻蛉(p3p002599)の日常
 一軒家の扉が開く。ここは蜻蛉が希望ヶ浜での住まいとしている家である。
 さて今日も頑張りますかとばかりに「よし」と気合いを入れて、家の鍵をかちゃんと閉める。

「蜻蛉先生おはよー」
「かげちーおはよ」
 蜻蛉は生徒と距離の近い教師だ。というより、生徒と仲良くなれるように蜻蛉の方から奮闘を重ねていた。
 おかげで彼女を『しげちー先生』と呼ぶ生徒が現れる程度には仲良くなれている。そのつもりである。
 とはいえ立場は新米教師。担当科目は、美術。
「先生、これどう?」
「のびのび描けてるわ。とっても素敵」
「しげちー、これ見て」
「ここの影は、こやって」
「先生って、保健室にいたほうが似合う」
「どういう意味やの?」
 そんな具合で授業を進めていけば、あっというまに放課後がやってくるものである。

 放課後になると、蜻蛉は画材を使って絵を描き始める。
「こら、そこ! 覗かんといて。覗いたら……先生に食べられてしまうよ。んふふ♪」
 彼女が何を描いているのかは、公然の秘密。けれどのぞきは厳禁なのである。
 そうこうしていると、授業を終えたらしいメイメイが美術室へとやってきた。
「蜻蛉先生」
「あら」
 筆を持つ手を止めて、蜻蛉はメイメイを迎え入れるのだった。

●『ちいさな決意』メイメイ・ルー(p3p004460)の日常
 希望ヶ浜学園高等部所属、メイメイ。
 学校の宿舎の中で、その一日は始まった。
 ピピピッというアラーム音。目覚まし時計に手を伸ばせば、もうすぐ登校の時間だ。
 羊柄のおふとんから這い出して、ベッドからあしを下ろせばほわほわの頭は結構な具合にはねている。
 まずはお手入れ……と鏡の前でブラシをてにせっせと髪を整える。
 そうしていれば、やがて時間はやってくるもの。メイメイはトーストをサクサク囓って手早く食べると、学園へと向かうのだった。

「蜻蛉先生おはよう」
「あら、おはよう」
 馴染みの『蜻蛉さま』はここでは先生だ。顔を合わせればこんな風に挨拶もする。
 そして学友たちとも。
「おはようメイメイちゃん。今日も髪型きまってるね」
「そう……です?」
 なんて具合に、いつものように教室へと吸い込まれていく。
 どこにでもある、普通の日常。けれど授業はやっぱり覚えることが多くて、近づいている期末テストの結果が憂鬱だ。
 イレギュラーズとして活動しながら期末テストも受けるなんて大変すぎると思いつつも、この希望ヶ浜での日常を楽しんでもいたりして。

 お昼は購買部でパンを買う予定。
「まだおばちゃんと呼ぶには早いっスからねー次言ったら焼きそばを全部紅生姜にしまスよー」
「あ、美咲さま……」
 最近無職になったらしいという美咲が購買部でバイトしていた。深くは触れない方がいいのだろうか、と思いつつ注文するのは焼きそばパンとコロッケパンと、更にメロンパン。
「ふふー……大勝利……」
 これだけあれば、今日は完璧である。

 放課後、美術室で絵を描く蜻蛉先生の元を訪れた。
「蜻蛉先生」
「あら」
 手を止めて、こちらを見る蜻蛉。
 今日はどんなお喋りをしようかな……と考えながら歩いて行くと、ふとポケットの中のスマホが着信のメロディを流し始めた。
 それはメイメイと蜻蛉の両方同時。
 二人は顔を見合わせて、画面に表示されたものを見て、もう一度顔を見合わせた。
「行きましょか」
「はい……」

●『殿』一条 夢心地(p3p008344)
「怪異じゃ夜妖じゃ都市伝説じゃと、どやつもこやつも校長もまったく分かっておらぬ。
 学生の本分は一に勉強、二に勉強じゃ。よくわからぬモノと戦っておる場合では無~い!」
 夢心地は希望ヶ浜の歴史教師。このアバンギャルドな見た目で歴史教師なのだから、人気が出ないはずはなし。
 その上性格もこの通りなので、生徒たちからは一定の評価(?)を獲得していた。
「期末試験も迫る秋の夕暮れ……麿がやるべきは無論、超・超難易度の試験問題を作ることよ。
 これさえ解ければいかなる難関大とて突破可能。
 されど油断しておったら全員零点じゃぞ~~。なーーーっはっはっは!」
 職員室で期末テストの問題作りをする夢心地。人気がイマイチなところで止まる理由がこれであった。
 夢心地の出すテストは超難問。小テストであろうとも気を抜かないその姿勢は生徒たちから悪鬼のごとしと囁かれていた。とはいえ、夢心地の問題集に慣れた生徒たちはきっとこの先の進路でもそう悩まずにすむだろうと、夢心地は考える。
 なにせ若いうちの苦労は買ってでもしろいわれるくらいなのだから。
 そんな調子で問題集を作りまくっていると、マナーモードにしていたスマホがぷるぷると震え始める。
「なんじゃー。電話がぷるぷるぷるぷるうるさいのう」
 手に取ってみると、それは校長からの通話らしい。
「はいだら姫~?ンモーこの忙しい時に……麿は今手が離せないので無理じゃぞ」
 ピッと通話を切ってやったが、切った直後にまたかかってきた。
「なんじゃーーーー!! わかっとるわかっとる! パッと行ってパッと懲らしめてくるぞえ!」

●『願い護る小さな盾』ノルン・アレスト(p3p008817)の日常
 宿舎で目を覚ましたアレストは、短い支度を済ませ、眠い目を擦りながら朝食のパンにかじりついていた。
 宿舎を出ればクラスメイト。
「あ、おはようございます。……えっ、もうこんな時間ですか!? ま、まってくださーいっ」
 どうやらのんびりしすぎていたらしい。慌てて駆け出すアレストだが、どうやら登校時間には間に合ったらしい。
 ほっと息をつきながら椅子に座れば、授業の開始。
 授業は……楽しい。アレストにとって知らないことばかりで。
 ついでに外もいい天気とくれば、楽しい気持ちと合わさってうとうとしてきちゃうことも。
(ねてません。ねてませんよ……? ただちょっと気持ちよくて……先生にバレて怒られちゃうかも……すやぁ……)

 眠気との戦いに無事勝利(?)したアレストは、お昼休み。
「幻想のご飯に比べてどれも美味しくて迷ってしまいますが、今日はカレーにしましょう」
 学食のカレーを一口、二口、ぱくりぱくり。満腹で受ける午後の授業は、きっとアレストにとって子守歌になるだろう。

 そんなこんなで、放課後。
 憂鬱な期末テストのことはとりあえず忘れて、気になっていたクレープ屋さんで新作メニューに挑戦することにした。
「おいし~!」
 秋の新作メニューは大当たりだ。大口で噛みついて、満足そうに笑みを浮かべる。
 そうしていると……。
「あっ、呼び出し……」
 aPhoneを手に取ると、校長室へのお呼び出し。要件は勿論『アレ』だ。
 アレストはぱくぱくと手早く新作スイーツを食べきると、席を立つのだった。

●『カーバンクル(元人間)』ライ・ガネット(p3p008854)の日常
 希望ヶ浜学園に複数ある保健室。その先生のひとりは、ライである。
 彼はペット可のアパートで人間らしい(?)暮らしを営んでいた。
「ん、もう朝か」
 ライの朝は早い。人目につくことをさけようとするためだ。
 職場についたら手袋を着用し、爪で怪我をさせないように配慮する。
 といっても、ライの役目は保健室で待機して具合の悪い奴がやってきたら対応するというものだ。
 怪我をしたら絆創膏を貼り、必要なら回復魔法を使うといった具合に。
 たまにだが、単に悩みを持っているらしい生徒が相談に来ることもある。
 そういうときは、ライは全力で相談に乗るようにしていた。『俺もアイツらくらいの年齢の時には色々辛かったから』ということらしい。
 唯一の悩みは、この見た目でマスコット扱いされることがあることくらいか……。

「さて、今日も一日やりきった、な……」
 保健室で待機する生活というのは楽なようで実は大変だ。
 ただぼーっと待っているわけではなく、必要な作業は外から分からないくらいに多い。
 合間合間にそれらの作業をこなし、その上で生徒たちにいつでも対応できるというのが『保健室の先生』という職業なのである。
 なので放課後にもそこそこに忙しい時間を送っているのだが……。
「おっと、緊急招集か」
 スマホに表示された画面をちらりと見やって、ライは席を立つ。
「夜妖の討伐もアイツらを守るためには重要な仕事だ、気合い入れないとな」

●『無職』佐藤 美咲(p3p009818)の日常
「あ゙ぁ……くっそ眠い……無職の朝は早いってやつスねー……」
 00機関をクビになった美咲は無職である。
 といってもローレット所属のイレギュラーズなので仕事にはまあまあ事欠かないし食っていくのに困らないのだが、急に暇になるというのは精神にくるものである。
 早いというわりには九時頃に目を覚まし、バイト雑誌を片手に目玉焼きと米で朝食をとる。
 雑誌に醤油をこぼしたりなんかして、よくある無職の朝である。

「今日のバイトは希望ヶ浜の購買(ヘルプ)でしたっけ。
 きらっきらした青春をまだ残している学生共にパンを売りつけまスか」
 頭に例の奴を装着し、購買に立つ。群がる生徒の注文を聞きつつ小銭とパンを交換しつづける時間。想像した以上にハードだが、想像した以上にルーズだ。
「はーい、焼きそばパンは120円スよー。
 まだおばちゃんと呼ぶには早いっスからねー次言ったら焼きそばを全部紅生姜にしまスよー」
 といった具合に冗談を飛ばす余裕があるのは、大変よいことである。

 バイトを終えたら買い出しの時間。
「うっわ、また野菜が値上げしている。
 いい加減もやしとじゃがいもの組み合わせは飽きてきましたねー。
 誰なんスか? 「炭水化物はいくらあっても良い」なんて言って海洋から大量に持って帰ってきたのは?」
 などとぶつくさ文句を言いながら財布を開く。
(機関は気に食わない職場だったけど、こう、減りゆくタンス貯金とにらめっこしていると公務員だったなぁって気はしまスねー。
 舞氏あたりにヘルプ頼むか?でも、やめた職場の後輩に月3回頼み事言うのも……。
 それよりは別のスーパー巡って半額惣菜探しを……)
 などと考えていると、スマホに着信。
「さて、タイミングが良いんだか悪いんだか」
 少なくとも、仕事にはありつけそうだ。

●『点睛穿貫』囲 飛呂(p3p010030)の日常
「うわ、歴史のテスト範囲がえげつないな……」
 期末テスト前となった飛呂。彼は高校三年生。つまりは受験生である。
 世の中で一番勉強してる時間といっても過言ではない受験生、である。
(イレギュラーズの活動も成績落とさないの条件でやらせてもらってたから、普段からやってはいたぞ。
 でも、受験となるとやっぱもっとしっかりやっとかないとって不安になるんだよ、職員室行って先生に聞いたりさ)
 がりがりと問題集にペンを走らせる飛呂。
 そんな中でふと窓の外をみやれば、それは晴れた空と町の風景。
(平穏で、ずっと再現性にいる友達もいて、再現性に外があるっていうのは見ただけじゃわかんなくて。
 滅びだとかなんだとか、たまに本当にあることなのかわかんなくなる)
 世界は曰く、滅びに近づいているらしい。
 あちこちに現れる終焉獣。それに伴って現れる怪物たち。
 それらを倒して回るのは、世界を救うためだとわかってはいるけれど……。
「俺の日常は、結局ここにあるのかもな……」
 受験。勉強。学校生活。そして滅ぶ世界。
 どちらも日常で、どちらも世界だ。
「まあ、とりあえず……今はこっち、だな」
 超難問だらけの歴史の問題集と格闘しながら頭を悩ませる。
 などと考えていると、スマホがなり始める。
 思考が、カチリと切り替わった。
「校長先生も、生徒使いが荒いな」
(少し感傷的になってたけど、俺にとっては再現性の普通も、その裏側の危険も、外の滅びも、全部日常とその延長線上にあるものだ)
 そうだ。日常を守るために……。

●彼らの非日常
 現れた怪異の名は『はいだら姫』。
「ひ、姫さま、こちらにおいで下さい、な」
 メイメイはあえて学生服のまま現場へやってくると、早速『ブラックドッグ』をはいだら姫へと解き放った。
 飛びかかる妖精たちを邪魔そうにその長い腕で振り払うはいだら姫。
 メイメイに襲いかかろうとしたその瞬間、
 蜻蛉の魔法が襲いかかる。
「今日はせっかくの”先生”やし? ええとこ見せれるように頑張りましょ。んふふ♪」
 花弁の形をした毒の魔石が生成され、はいだら姫へと叩きつけられる。
 怒りを露わに振り返ったはいだら姫に、更なる挑発をしてみせる蜻蛉。
「姫いうくらいなんやから、もう少しおしとやかにした方がええと思うんよ」
「回復の必要はなさそうだな。一気に攻めるぞ」
 ライは額の宝石をカッと光らせると『魔光閃熱波』を発動。赤い光が破壊の魔術となってはいだら姫へと叩きつけられる。
 両腕を翳して防御しようとするはいだら姫だが、そこへ美咲のはなった爆弾が張り付いた。ハッとしたはいだら姫が振り払おうとした瞬間に、爆発。
「コレまでの経験は身についているもので。スパイ以外の社会人経験が無い身としては戦闘のほうが慣れた仕事になりまスねー」
 爆発にのけぞった隙に、飛呂は素早く射撃を浴びせた。
「俺たちの日常に、あんたはいらないんだ」
 足や腕を撃たれて動きを封じられるはいだら姫。
 こうなってしまえばこっちのものだ。
 夢心地が刀を抜いて斬りかかる。斬りかかりつつも飛呂に問題を出してきた。
「今戦っておるはいだら姫も怪力の持ち主じゃが、陰徳太平記に怪力の逸話も残る安芸国の武将は誰じゃ?」
「え、今!?」
「時間切れじゃ! 正解は坪井元政!」
 斬り付けたはいだら姫が怒りの声をあげ、反撃の打撃を繰り出してくる。
「ぬおっ」
 派手に吹き飛ばされる夢心地。だがアレストが駆け寄り、すばやく治癒の魔法を唱え回復する。
「もう一度噂の波に消えてくれ」
 追撃をしかけようと飛びかかったはいだら姫だが、マカライトの放つ『フェンリル・ドライブ』がはいだら姫を食いちぎり、そしてかき消してしまった。
 それ以上の気配がないことを確認して、スマホを取り出すマカライト。
「これで仕事は終了、だな。今度こそ居酒屋に寄っていくか……」
 こうして、彼らは散り散りに、日常へと戻っていく。
 なにげない、しかし誰かに守られた日常へと。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete

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